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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】リニア駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/06 20060101AFI20231002BHJP
   F16H 25/20 20060101ALI20231002BHJP
   F16H 35/00 20060101ALI20231002BHJP
   F16D 41/066 20060101ALI20231002BHJP
   F16D 41/12 20060101ALI20231002BHJP
   F16D 41/02 20060101ALI20231002BHJP
   F16D 41/06 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
H02K7/06 A
F16H25/20 H
F16H35/00 H
F16D41/066
F16D41/12 A
F16D41/02 Z
F16D41/06 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020053569
(22)【出願日】2020-03-25
(65)【公開番号】P2021153374
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000105659
【氏名又は名称】ニデックコンポーネンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊井戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】阿部 純一
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-068644(JP,A)
【文献】特開2002-372123(JP,A)
【文献】特開平3-112338(JP,A)
【文献】特開2017-149538(JP,A)
【文献】特開2008-138708(JP,A)
【文献】特開2002-087611(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/00 - 7/20
F16H 25/20
F16H 35/00
F16D 41/066
F16D 41/12
F16D 41/02
F16D 41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
前記モータのロータの回転力により回転し、前記ロータの回転中心部分を貫通し、前記ロータに対してスラスト方向に動作する軸と、
前記軸を中心部分に固定した板形状のフランジと、
前記軸が所定範囲の最上点又は最下点を超える方向への前記フランジの回転は停止させ、前記フランジの前記回転と逆の回転は停止させない一方向回転手段と、
前記軸が前記所定範囲の最上点又は最下点で、前記一方向回転手段を介して、前記フランジと接触する接触部品と
を備えることを特徴とするリニア駆動装置。
【請求項2】
前記一方向回転手段は、前記フランジの回転方向により、前記フランジとの摩擦係数が異なる摩擦異方性物質を含むこと
を特徴とする請求項1に記載のリニア駆動装置。
【請求項3】
前記一方向回転手段は、一方向に回転し、前記一方向と逆方向に回転しないワンウェイクラッチを含むこと
を特徴とする請求項1に記載のリニア駆動装置。
【請求項4】
前記ワンウェイクラッチは、前記軸と共に回転する内輪と、前記内輪の外周に位置する外輪とを含み、前記内輪は、前記外輪と相対的に、一方向に回転し、前記一方向と逆方向に回転しないこと
を特徴とする請求項3に記載のリニア駆動装置。
【請求項5】
前記ワンウェイクラッチは、前記軸と共に回転する下側部品と、前記下側部品の上に位置する上側部品とを含み、前記下側部品は、前記上側部品と相対的に、一方向に回転し、前記一方向と逆方向に回転しないこと
を特徴とする請求項3に記載のリニア駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、リニア駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、モータによる回転力により、軸を直線運動させるリニア駆動装置が知られている。例えば、アメリカン・ワインディング・ストップ機構を用いて、可動軸の直線移動ストロークを規制するリニア駆動装置が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4136333号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、リニア駆動装置において、軸の直線動作を制限する構造を設ける場合、軸が制限された状態から通常の直線動作に復帰させることについては充分に考慮されない。
【0005】
本発明の実施形態の目的は、軸の直線動作を制限し、軸が制限された状態から通常の直線動作に復帰させ易いリニア駆動装置を提供することにある。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、軸の直線動作を制限し、軸が制限された状態から通常の直線動作に復帰させ易いリニア駆動装置を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係るリニア駆動装置は、モータと、前記モータのロータの回転力により回転し、前記ロータの回転中心部分を貫通し、前記ロータに対してスラスト方向に動作する軸と、前記軸を中心部分に固定した板形状のフランジと、前記軸が所定範囲の最上点又は最下点を超える方向への前記フランジの回転は停止させ、前記フランジの前記回転と逆の回転は停止させない一方向回転手段と、前記軸が前記所定範囲の最上点又は最下点で、前記一方向回転手段を介して、前記フランジと接触する接触部品とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施形態に係るリニア駆動装置の構成を垂直方向に切断した断面図。
図2】第1実施形態に係る軸の構成を示す斜視図。
図3】第1実施形態に係る軸動作制限部を水平方向に切断した断面図。
図4】第1実施形態に係るフランジの上面を示す平面図。
図5】本発明の第2実施形態に係るリニア駆動装置のワンウェイクラッチが効いている状態の構成を垂直方向に切断した断面図。
図6】第2実施形態に係るリニア駆動装置のワンウェイクラッチが効いていない状態の構成を垂直方向に切断した断面図。
図7】第2実施形態に係る軸動作制限部を水平方向に切断して、ロック状態のワンウェイクラッチの構成を示す断面図。
図8】第2実施形態に係る軸動作制限部を水平方向に切断して、ロック解除状態のワンウェイクラッチの構成を示す断面図。
図9】本発明の第3実施形態に係るリニア駆動装置のワンウェイクラッチが効いている状態の構成を垂直方向に切断した断面図。
図10】第3実施形態に係るリニア駆動装置のワンウェイクラッチが効いていない状態の構成を垂直方向に切断した断面図。
図11】第3実施形態に係る軸動作制限部におけるワンウェイクラッチの内部を上から図示した平面図。
図12】第3実施形態に係るワンウェイクラッチのロック状態の構成の側面を示す断面図。
図13】第3実施形態に係るワンウェイクラッチのロック解除状態の構成の側面を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るリニア駆動装置10の構成を垂直方向に切断した断面図である。図2は、本実施形態に係る軸1の構成を示す斜視図である。図面において、同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
リニア駆動装置10は、軸1、ロータ2、コイル3、ヨーク4、取付板5、ナット6、2つの軸受7,8、及び、軸動作制限部20を備える。なお、リニア駆動装置10は、電源の供給又は電気信号の送受信等のための配線を電気接続するコネクタ部を備えてもよい。ここでは、軸動作制限部20側を上とし、ナット6側を下として、説明する。
【0010】
軸1は、スラスト方向に動作することにより、下側の先端に設けられたボール11で、リニア駆動装置10の操作対象物を押圧する。軸1は、上側部分1a及び下側部分1bが一体に結合された形状である。軸1は、リニア駆動装置10の全体を垂直方向に貫いてはみ出る長さの棒形状である。上側部分1aの断面は、円形の両端をそれぞれDカットしたような小判形状である。下側部分1bの断面は、円形である。下側部分1bの先端にボール11が設けられる。下側部分1bの先端部分の側面には、雄ねじ12が形成される。下側部分1bの側面の全てに、雄ねじ12が形成されてもよい。
【0011】
ロータ2、コイル3、及び、ヨーク4は、モータを構成する。ヨーク4の内部には、ロータ2の外周面に対向するように複数のコイル3が配置される。コイル3を通電することで、ロータ2が回転し、軸1に回転力を加える。例えば、モータは、クローポール型PM(permanent magnet)モータである。
【0012】
ロータ2の外周面には、コイル3と対向するように、マグネットが設けられる。ロータ2は、円柱形状の回転中心部分に、軸1が貫通する穴が設けられる。ロータ2の上側に設けられる穴は、軸1の上側部分1aがスラスト方向に移動でき、かつ、ロータ2の回転力を軸1に伝えられるように、軸1の上側部分1aの断面よりも一回り大きい小判形状に形成される。ロータ2の下側に設けられる穴は、軸1の下側部分1bがスラスト方向に移動できるように、軸1の下側部分1bの断面よりも一回り大きい円形に形成される。
【0013】
取付板5は、板形状であり、ヨーク4の下面に取り付けられる。取付板5の中心部分には、軸1が貫通する穴及びナット6を取り付けるための穴が設けられる。取付板5は、外周から径方向に延びるように、リニア駆動装置10を他の機器に実装するための形状が設けられてもよい。
【0014】
ナット6は、取付板5を介して、ヨーク4の下面に取り付けられる。ナット6は、中心に貫通した穴が設けられた円柱形状であり、下面の外周はテーパー形状である。ナット6の穴の下側部分の内周面には、軸1の下側先端部分に設けられた雄ねじ12と噛み合うように雌ねじ61が形成される。ナット6の穴の上側部分は、空間が形成されるように、下側部分よりも径が広い。ナット6の上側部分に形成される空間に、軸受7が設けられる。
【0015】
軸受7,8は、軸1のラジアル方向の変動を抑制する軸受である。なお、軸受7,8は、どのような構成でもよい。
【0016】
軸動作制限部20は、軸1が予め決められた所定範囲を超えてスラスト方向に動作しないように制限する機構を備える。軸動作制限部20は、軸1が作用する側(ボール11側)と反対側に設けられる。
【0017】
軸動作制限部20は、ケース21、カバー22、フランジ23、及び、摩擦異方性物質24を備える。
【0018】
図3は、第1実施形態に係る軸動作制限部20を水平方向に切断した断面図であり、カバー22の裏面側(内側)を示す。図4は、第1実施形態に係るフランジ23の上面を示す平面図である。
【0019】
ケース21は、軸動作制限部20の側面及び底面を覆う。ケース21は、ヨーク4の上面に取り付けられる。ケース21は、円筒形状で、軸1がスラスト方向に動作するように貫通する穴が中心部分に設けられた底面で塞がれる。ケース21の上面の外周部分には、カバー22を嵌め込むための溝等の形状が設けられる。ケース21には、軸受8などを取り付けるための穴又は形状が設けられてもよい。
【0020】
カバー22は、ケース21の上面を塞ぐように取り付けられる。カバー22は、円板形状であり、軸1がスラスト方向に動作するように貫通する穴H1が中心部分に設けられる。カバー22は、ケース21と一体に形成されてもよいし、ケース21の底面を塞ぐように取り付けられる構成でもよい。
【0021】
フランジ23は、円板形状であり、軸1が貫通する穴H2が中心部分に設けられる。なお、フランジ23は、板状であれば、外形は円形に限らず、どのような形状でもよい。フランジ23は、軸1に固定して取り付けられる。
【0022】
摩擦異方性物質24は、カバー22の裏面に穴H1の外周を囲むようにリング状に設けられる。摩擦異方性物質24は、フランジ23の回転方向により、フランジ23との摩擦係数が異なる材料で作られる。具体的には、軸1が上に移動する方向にフランジ23が回転する場合、摩擦異方性物質24とフランジ23の間の摩擦は大きい。一方、軸1が下に移動する方向にフランジ23が回転する場合、摩擦異方性物質24とフランジ23の間の摩擦は小さい。
【0023】
摩擦異方性物質24は、固形物でもよいし、グリース又はオイル等の流動性の物質でもよい。例えば、摩擦異方性物質24が流動性の物質の場合、摩擦異方性物質24をカバー22に塗布する。なお、摩擦異方性物質24は、フランジ23とカバー22の間に設けられれば、どのような形状でもよいし、どのように設けてもよい。
【0024】
次に、軸動作制限部20の機能について説明する。
フランジ23は、軸1と共に、回転しながら上下に移動する。軸1がスラスト方向の所定範囲の最上点に位置すると、フランジ23が摩擦異方性物質24を介して、カバー22の裏面に接触する。さらに、軸1が上に動く方向にフランジ23が回転しようとすると、摩擦異方性物質24により、カバー22とフランジ23との間の摩擦力が増大する。これにより、フランジ23は、回転を継続できなくなり停止する。したがって、軸1は、これ以上、上に移動しなくなる。
【0025】
フランジ23が摩擦異方性物質24を介してカバー22に密着した状態から、軸1が下に移動する場合、フランジ23は、軸1が上に移動するときと逆回転する。このとき、摩擦異方性物質24の特性により、カバー22とフランジ23との間の摩擦力は減少する。これにより、フランジ23は、回転を継続し、カバー22と密着した状態から滑らかに離れる。したがって、軸1は、所定範囲の最上点の状態からでも、速やかに下に移動する。
【0026】
ここでは、摩擦異方性物質24をカバー22の裏面に設け、軸1の所定範囲の最上点を超える動作を制限したが、同様に、ケース21の底面に摩擦異方性物質24を設け、軸1の所定範囲の最下点を超える動作を制限するようにしてもよい。また、摩擦異方性物質24は、カバー22の裏面の代わりにフランジ23の上面に設けてもよいし、ケース21の底面の代わりにフランジ23の下面に設けてもよい。さらに、フランジ23は、軸1の所定範囲の最上点又は最下点で、ケース21又はカバー22に限らず、どのような部品と摩擦異方性物質24を介して接触するようにしてもよい。
【0027】
本実施形態によれば、軸1の所定範囲の最上点で、フランジ23がカバー22と摩擦異方性物質24を介して接触することで、軸1の最上点を超える動作を制限することができる。また、フランジ23が回転しながら摩擦異方性物質24を介してカバー22に密着しても、摩擦異方性物質24の特性により、フランジ23が逆回転することで、フランジ23がカバー22から滑らかに離れることができる。したがって、軸動作制限部20による軸1の停止状態から通常の直線動作に復帰させ易くすることができる。
【0028】
(第2実施形態)
図5は、本発明の第2実施形態に係るリニア駆動装置10Aのワンウェイクラッチ25が効いている状態の構成を垂直方向に切断した断面図である。図6は、本実施形態に係るリニア駆動装置10Aのワンウェイクラッチ25が効いていない状態の構成を垂直方向に切断した断面図である。
【0029】
リニア駆動装置10Aは、図1に示す第1実施形態に係るリニア駆動装置10において、軸動作制限部20を軸動作制限部20Aに代えたものである。軸動作制限部20Aは、第1実施形態に係る軸動作制限部20において、摩擦異方性物質24をワンウェイクラッチ25に代え、フランジ23をフランジ23Aに代えたものである。その他の点については、リニア駆動装置10Aは、第1実施形態と同様である。
【0030】
フランジ23Aは、第1実施形態に係るフランジ23において、ワンウェイクラッチ25の中央部に嵌合する凸形状部231が設けられたものである。凸形状部231は、軸1よりも一回り大きい円柱形状であり、軸1を中心として、フランジ23Aの表面に設けられる。軸1が上に移動して、凸形状部231がワンウェイクラッチ25の中央部に嵌合することで、ワンウェイクラッチ25が効くようになる。
【0031】
図7は、本実施形態に係る軸動作制限部20Aを水平方向に切断して、ロック状態のワンウェイクラッチ25の構成を示す断面図である。図7は、軸1が所定範囲の最上点に位置し、さらに軸1が回転して上に移動しようとしている状態を示している。図8は、本実施形態に係る軸動作制限部20Aを水平方向に切断して、ロック解除状態のワンウェイクラッチ25の構成を示す断面図である。図8は、軸1が所定範囲の最上点から下に移動している状態を示している。
【0032】
ワンウェイクラッチ25は、軸動作制限部20Aのカバー22の裏面に設けられる。なお、ワンウェイクラッチ25は、ここで説明するものに限らず、どのような方式又は構造のものでもよい。ワンウェイクラッチ25は、内輪251、外輪252、3つのローラ253、及び、3つのスプリング254を備える。
【0033】
内輪251は、外輪252に対して相対的に一方向にのみ回転し、逆方向には回転しない。内輪251の中心部分に、フランジ23Aの凸形状部231が嵌合すると、軸1が内輪251に接続される。これにより、軸1の回転力が内輪251に伝達される。
【0034】
外輪252は、カバー22に固定される。外輪252の内周側には、周方向で等間隔に3つのポケットPTが形成される。ポケットPTは、内輪251の外周にほぼ直方形状が少し斜めに接するような形状で凹むように形成される。
【0035】
各ポケットPTには、1つのスプリング254の一端に1つのローラ253が取り付けられた構成が収納される。各ポケットPTの長手方向の一端の内側には、ローラ253が付けられていないスプリング254の一端が固定される。各ローラ253は、内輪251に接触するように取り付けられる。
【0036】
図7に示すように、軸1が左回り(反時計回り)に回転しようとすると、各ポケットPTのローラ253が内輪251の外周に接触し、スプリング254の弾性力により、ローラ253がスプリング254と反対側のポケットPTの角に押し込まれて固定される。この状態で、各ローラ253が内輪251と接触することで、内輪251は、これ以上回転できなくなる。このようにして、軸1の回転力がロックされる。
【0037】
図7に示す状態から軸1が右回り(時計回り)に回転すると、図8に示すように、内輪251も右回りに回転し、各ローラ253が内輪251との摩擦力により各ポケットPTの中央に移動する。ポケットPTの中央に位置するローラ253と内輪251との間の摩擦力は小さい。したがって、軸1の回転力がロックされた状態からでも、容易にロックが解除され、軸1は、抵抗なく逆回転して、下に移動することができる。
【0038】
ここでは、ワンウェイクラッチ25をカバー22の裏面に設け、軸1の所定範囲の最上点を超える動作を制限したが、同様に、ケース21の底面にワンウェイクラッチ25を設け、軸1の所定範囲の最下点を超える動作を制限するようにしてもよい。また、ワンウェイクラッチ25は、カバー22の裏面の代わりにフランジ23Aの上面に設けてもよいし、ケース21の底面の代わりにフランジ23Aの下面に設けてもよい。
【0039】
本実施形態によれば、内輪251と外輪252が相対的に一方向に回転するワンウェイクラッチ25を用いることで、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0040】
(第3実施形態)
図9は、本発明の第3実施形態に係るリニア駆動装置10Bのワンウェイクラッチ26が効いている状態の構成を垂直方向に切断した断面図である。図10は、本実施形態に係るリニア駆動装置10Bのワンウェイクラッチ26が効いていない状態の構成を垂直方向に切断した断面図である。
【0041】
リニア駆動装置10Bは、図1に示す第1実施形態に係るリニア駆動装置10において、軸動作制限部20を軸動作制限部20Bに代えたものである。軸動作制限部20Bは、第1実施形態に係る軸動作制限部20において、摩擦異方性物質24をワンウェイクラッチ26に代えたものである。その他の点については、リニア駆動装置10Bは、第1実施形態と同様である。
【0042】
図11は、本実施形態に係る軸動作制限部20Bにおけるワンウェイクラッチ26の内部を上から図示した平面図である。図12は、本実施形態に係るワンウェイクラッチ26のロック状態の構成の側面を示す断面図である。図12は、軸1が所定範囲の最上点に位置し、さらに軸1が回転して上に移動しようとしている状態を示している。図13は、本実施形態に係るワンウェイクラッチ26のロック解除状態の構成の側面を示す断面図である。図13は、軸1が所定範囲の最上点から下に移動しようとしている状態を示している。
【0043】
ワンウェイクラッチ26は、軸動作制限部20Bのカバー22の裏面に設けられる。軸1が上に移動して、フランジ23の上面がワンウェイクラッチ26の下面に接触することで、ワンウェイクラッチ26が効くようになる。なお、ワンウェイクラッチ26は、ここで説明するものに限らず、どのような方式又は構造のものでもよい。ワンウェイクラッチ26は、上側円板部261、下側円板部262、2つの係止部263、及び、2つのスプリング264を備える。
【0044】
下側円板部262は、上側円板部261に対して相対的に一方向にのみ回転し、逆方向には回転しない。下側円板部262の下面(クラッチ端面)にフランジ23が接触すると、フランジ23が下側円板部262に接続される。これにより、軸1の回転力が下側円板部262に伝達される。
【0045】
上側円板部261は、下側円板部262の上に積み重ねられるように取り付けられる。上側円板部261の下面側(内側)には、係止部263及びスプリング264を取り付けるための窪みが設けられる。
【0046】
係止部263は、根本部分を支点として薄板上の先端が上下に動くように、上側円板部261の窪みに取り付けられる。各係止部263は、ワンウェイクラッチ26がロック状態となる回転方向と逆方向側に先端が位置するように、下側円板部262の径方向と垂直に配置される。
【0047】
スプリング264は、係止部263の先端と上側円板部261の窪みを接続するように取り付けられる。スプリング264は、係止部263の先端を下側円板部262側に押し付ける方向に、弾性力による圧力を加える。
【0048】
下側円板部262の上面側(内側)には、係止部263の先端が嵌まる形状の窪みが設けられる。この窪みの係止部263の先端側は、係止部263の先端の厚みと同程度の深さで、係止部263の先端が嵌まるように直角に近い段差に形成される。この窪みの係止部263の根本側は、傾斜角度の低いなだらかな斜面に形成される。
【0049】
図12に示すように、フランジ23と共に下側円板部262が右方向に回転しようとすると、係止部263の先端が下側円板部262の段差に引っ掛かり、下側円板部262は、これ以上回転できなくなる。これにより、フランジ23も回転できなくなり、軸1の回転力がロックされる。
【0050】
図12に示す状態から下側円板部262が左方向に回転すると、図13に示すように、係止部263は、下側円板部262に形成されたなだらかな斜面を根本側から登り、先端が上に跳ね上がる。したがって、軸1の回転力がロックされた状態からでも、容易にロックが解除され、軸1は、抵抗なく逆回転して、下に移動することができる。
【0051】
ここでは、ワンウェイクラッチ26をカバー22の裏面に設け、軸1の所定範囲の最上点を超える動作を制限したが、同様に、ケース21の底面にワンウェイクラッチ26を設け、軸1の所定範囲の最下点を超える動作を制限するようにしてもよい。また、ワンウェイクラッチ26は、カバー22の裏面の代わりにフランジ23の上面に設けてもよいし、ケース21の底面の代わりにフランジ23の下面に設けてもよい。
【0052】
本実施形態によれば、上側円板部261と下側円板部262が相対的に一方向に回転するワンウェイクラッチ26を用いることで、第1実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0053】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、構成要素を削除、付加又は変更等をしてもよい。このような実施形態が上述した実施形態と直接的に異なるものであっても、本発明と同様の趣旨のものは、本発明の実施形態として説明したものとして、その説明を省略している。
【符号の説明】
【0054】
1…軸、2…ロータ、3…コイル、4…ヨーク、5…取付板、6…ナット、7,8…軸受、10…リニア駆動装置、20…軸動作制限部、21…ケース、22…カバー、23…フランジ、24…摩擦異方性物質。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13