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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】トレイ
(51)【国際特許分類】
   B65D 21/028 20060101AFI20231002BHJP
   B65D 5/22 20060101ALI20231002BHJP
   B65D 5/42 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
B65D21/028
B65D5/22 C
B65D5/42 J
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020070247
(22)【出願日】2020-04-09
(65)【公開番号】P2021167203
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2023-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000115980
【氏名又は名称】レンゴー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100177644
【弁理士】
【氏名又は名称】児玉 和樹
(72)【発明者】
【氏名】坪田 晶博
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-171648(JP,A)
【文献】登録実用新案第3222571(JP,U)
【文献】登録実用新案第3216799(JP,U)
【文献】特開2009-280266(JP,A)
【文献】特開2005-170419(JP,A)
【文献】実開昭59-55111(JP,U)
【文献】米国特許第6098873(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 21/028
B65D 21/032
B65D 5/22
B65D 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に積層可能なトレイ(1,2)であって、
底壁(10)と、
前記底壁の第1方向の端部に立設される第1側壁(11)と、
前記第1側壁の第1方向に直交する第2方向の端部に連設され、前記第1側壁との境界で折り曲げられて第1方向に沿って延設される折込片(12,40)と、
前記底壁の第2方向の端部に立設させた外壁(25)の内側に内壁(27)を折り返し、前記折込片を内包する二重壁となる第2側壁(15)と、を備え、
前記第2側壁には、上方に向けて突出する積層凸部(32)が形成され、
前記底壁には、前記積層凸部に対応する位置に積層穴(30)が開口し、
前記折込片の下端には、案内片(24)が連設され、
前記折込片が前記第2側壁に内包された状態で、前記案内片は前記積層穴に配置され、
複数の前記トレイを積層するために、下方の前記トレイの前記積層凸部を上方の前記トレイの前記積層穴に差し込む過程において、前記積層凸部は、前記積層穴に配置された前記案内片に接触し、前記案内片を外側または内側に曲げながら前記積層穴に差し込まれることを特徴とするトレイ。
【請求項2】
前記積層穴は、前記底壁から前記外壁にかけて開口し、
前記案内片は、前記外壁の厚さよりも長い延出寸法に形成され、
前記積層穴に配置された前記案内片は、外側に曲げられることで前記積層穴の上縁内周面に覆設されることを特徴とする請求項1に記載のトレイ。
【請求項3】
前記案内片は、案内折線(L11,L12)を介して前記折込片に連設され、
前記内壁には、前記積層穴に対応する位置に内側嵌合穴(31)が開口し、
前記案内片が前記積層穴に配置された状態において、前記案内片の下端は前記底壁の底面以上に位置し、前記案内折線は前記外壁に開口した前記積層穴の上縁の近傍または前記内側嵌合穴の上縁の近傍に位置していることを特徴とする請求項1または2に記載のトレイ。
【請求項4】
前記底壁には、前記積層穴とは異なる位置にロック穴(33)が開口し、
前記内壁には、前記外壁の内側に折り返された状態で前記ロック穴に係合するロック凸部(34)が形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のトレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下に積層可能なトレイに関する。
【背景技術】
【0002】
上下に積層可能な紙箱(トレイ)が知られている(特許文献1)。この紙箱は、底板の両側縁に連設された一対の側板と、側板の両側縁に連設された二対の端板片と、底板の両端縁に連設された一対の外端板と、一対の外端板の外側縁に連設された一対の頂板と、一対の頂板の外側縁に連設された一対の内端板と、備えていた。また、紙箱には、二対の抜き孔が底板から外端板にわたって設けられ、二対の突片が頂板から外端板にわたって設けられていた。2つの紙箱を積み重ねると、下方の紙箱の突片が上方の紙箱の抜き孔に嵌合していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実開昭51-143623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した紙箱では、突片の先端が抜き孔の縁部等に引っ掛かり易く、突片を抜き孔に差し込み難いという問題や突片が損傷するという問題があった。したがって、複数の紙箱を円滑に積み重ねることができなかった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、円滑に積み重ねることができるトレイを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するため、本発明は、上下に積層可能なトレイであって、底壁と、前記底壁の第1方向の端部に立設される第1側壁と、前記第1側壁の第1方向に直交する第2方向の端部に連設され、前記第1側壁との境界で折り曲げられて第1方向に沿って延設される折込片と、前記底壁の第2方向の端部に立設させた外壁の内側に内壁を折り返し、前記折込片を内包する二重壁となる第2側壁と、を備え、前記第2側壁には、上方に向けて突出する積層凸部が形成され、前記底壁には、前記積層凸部に対応する位置に積層穴が開口し、前記折込片の下端には、案内片が連設され、前記折込片が前記第2側壁に内包された状態で、前記案内片は前記積層穴に配置され、複数の前記トレイを積層するために、下方の前記トレイの前記積層凸部を上方の前記トレイの前記積層穴に差し込む過程において、前記積層凸部は、前記積層穴に配置された前記案内片に接触し、前記案内片を外側または内側に曲げながら前記積層穴に差し込まれる。
【0007】
この場合、前記積層穴は、前記底壁から前記外壁にかけて開口し、前記案内片は、前記外壁の厚さよりも長い延出寸法に形成され、前記積層穴に配置された前記案内片は、外側に曲げられることで前記積層穴の上縁内周面に覆設されてもよい。
【0008】
この場合、前記案内片は、案内折線を介して前記折込片に連設され、前記内壁には、前記積層穴に対応する位置に内側嵌合穴が開口し、前記案内片が前記積層穴に配置された状態において、前記案内片の下端は前記底壁の底面以上に位置し、前記案内折線は前記外壁に開口した前記積層穴の上縁の近傍または前記内側嵌合穴の上縁の近傍に位置してもよい。
【0009】
この場合、前記底壁には、前記積層穴とは異なる位置にロック穴が開口し、前記内壁には、前記外壁の内側に折り返された状態で前記ロック穴に係合するロック凸部が形成されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数のトレイを円滑に積み重ねることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1実施形態に係るトレイを示す斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るトレイのブランクを示す平面図である。
図3】本発明の第1実施形態に係るトレイを組み立てる過程を示す斜視図である。
図4】本発明の第1実施形態に係るトレイを積層する過程を示す断面図である。
図5】本発明の第1実施形態に係るトレイを積層した状態を示す断面図である。
図6】本発明の第1実施形態に係るトレイを積層した状態を示す斜視図である。
図7】本発明の第1実施形態に係るトレイであって、積層したトレイを分離する過程を示す断面図である。
図8】本発明の第2実施形態に係るトレイのブランクを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。なお、図面に示すFr、Rr、L、R、U、Dは、前、後、左、右、上、下を示している。前後方向(第1方向)、左右方向(第2方向)および上下方向は互いに直交している。本明細書では方向や位置を示す用語を用いるが、それらの用語は説明の便宜のために用いるものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。また、方向や位置を示す用語は、トレイを組み立てて使用する状態における方向や位置を基準にしている。
【0013】
[第1実施形態]
図1および図2を参照して、第1実施形態に係るトレイ1について説明する。図1はトレイ1を示す斜視図である。図2はトレイ1のブランク5を示す平面図である。
【0014】
図1に示すように、トレイ1は、底壁10の周縁部に前壁11、後壁13および一対の側壁15を立設させ、全体として略直方体状に形成されている。底壁10上には被包装物(図示せず)が載置され、トレイ1は被包装物を収容した状態で上下に積層可能に形成されている。
【0015】
トレイ1は、図2に示すブランク5を組み立てることで形成されている。ブランク5は、1枚の紙製の段ボールシートを抜型等で打ち抜いて形成されている。段ボールシートは、例えば、波状の中しん9Aに表ライナ9Bと裏ライナ9C(図1参照)とを貼り合せた両面段ボールシートである。なお、図2は、表ライナ9B側を示している。本明細書では、段ボールシートの中しん9Aと平行な方向を「段方向」と呼び、段方向に直交する方向を「流れ方向」と呼ぶこととする。図面に示す「X」は「段方向」を示し、「Y」は「流れ方向」を示している。
【0016】
[ブランク]
図2に示すように、ブランク5は、底壁10と、前壁11と、一対の前折込片12と、後壁13と、一対の後折込片14と、一対の側壁15と、を備えている。底壁10は、流れ方向(第1方向)に長い略長方形状に形成されている。前壁11は底壁10の流れ方向(第1方向)の一端(前端)に連設され、後壁13は底壁10の流れ方向の他端(後端)に連設されている。一対の側壁15は、底壁10の段方向の両端に連設されている。なお、一対の前折込片12、一対の後折込片14および一対の側壁15は、それぞれ左右対称に形成されているため、以下の説明では、特に明示した場合を除き、1つの前折込片12等について説明する。
【0017】
<前壁>
第1側壁の一例としての前壁11は、前外壁20と、前額縁部21と、前内壁22と、を有している。
【0018】
(前外壁、前額縁部)
前外壁20は、略長方形状に形成され、第1折曲線L1を介して底壁10の流れ方向の一端に連設されている。前額縁部21は、第2折曲線L2を介して前外壁20の先端に連設されている。前額縁部21は段方向に細長い略長方形状に形成され、その流れ方向の寸法(延出寸法)は段ボールシートの厚さよりも若干長く設定されている。
【0019】
(前内壁)
前内壁22は、略長方形状に形成され、第2折曲線L2を介して前額縁部21の先端に連設されている。換言すれば、前内壁22は、一対の第2折曲線L2(前額縁部21)を介して前外壁20の先端に連設されている。前内壁22の流れ方向の寸法(延出寸法)は、前外壁20の流れ方向の寸法よりも僅かに短く設定されている。前内壁22の先端側の段方向の両端には、一対の係合凸部23が段方向に互いに離れるように突設されている。前内壁22の先端側には、一対の補助折線L10が前内壁22の角部を略三角形状に区画するように斜めに形成されている。
【0020】
<前折込片>
一対の前折込片12は、段方向に長い略長方形状に形成され、第3折曲線L3を介して前外壁20の段方向の両端に連設されている。前折込片12の流れ方向の寸法(幅)は、前外壁20の延出寸法よりも長く形成されている。前折込片12の段方向の寸法(延出寸法)は、底壁10の流れ方向の寸法以下、且つ当該寸法の半分よりも長く形成されている。
【0021】
前折込片12の前内壁22側(根本側)の角部は、略円弧状にカットされている。前折込片12の先端外側(上側)には、略長方形状の前上凹部12Uが凹設されている。また、前折込片12の内側(下側)には、根本側を除いて、略長方形状の前下凹部12Dが凹設されている。
【0022】
(案内片)
前下凹部12D内において、前折込片12の先端内側(下端)には、案内折線L11を介して案内片24が連設されている。案内片24は、前上凹部12Uの輪郭よりも小さな略長方形状に形成され、前上凹部12Uに直下に配置されている。案内片24は角部を丸めた略長方形状に形成されており、案内片24の先端(下端)は前折込片12の根本側の下端と略一致している。案内片24の段方向の寸法(延出寸法)は段ボールシートの厚さよりも若干長く設定されている。案内片24は、後述する積層穴30の内側に配置可能な大きさに形成されている。
【0023】
<後壁>
後壁13は、略長方形状に形成され、第1折曲線L1を介して底壁10の流れ方向の他端に連設されている。後壁13の流れ方向の寸法(延出寸法)は、前外壁20の延出寸法よりも長く(前折込片12の幅と略同一に)設定されている。
【0024】
<後折込片>
一対の後折込片14は、略長方形に形成され、第4折曲線L4を介して後壁13の段方向の両端に連設されている。後折込片14の段方向の寸法(延出寸法)は、底壁10の流れ方向の寸法の半分よりも短く形成されている。後折込片14の内側(下側)には、根本側を除いて、略長方形状の後下凹部14Dが凹設されている。
【0025】
<側壁>
第2側壁の一例としての側壁15は、側外壁25と、側額縁部26と、側内壁27と、を有している。
【0026】
(側外壁)
外壁の一例としての側外壁25は、第5折曲線L5を介して底壁10の段方向の端部に連設されている。側外壁25は略長方形状に形成され、その段方向の寸法(延出寸法)は後壁13の延出寸法と略同一である。側外壁25の前側の角部は、前折込片12と同様に、略円弧状にカットされている。
【0027】
底壁10の流れ方向の略中央には、一対の第5折曲線L5に沿って一対の積層穴30が開口している。詳細には、積層穴30は、底壁10の段方向の端部から第5折曲線L5を横断して側外壁25にかけて開口している。積層穴30は、側外壁25側の角部を丸めた略長方形状に形成されている。また、底壁10の後側(積層穴30とは異なる位置)には、一対の第5折曲線L5に沿って一対のロック穴33が開口している。ロック穴33は、略長方形状に形成されている。
【0028】
(側額縁部)
側額縁部26は、第6折曲線L6を介して側外壁25の先端に連設されている。正確には、側額縁部26は、側外壁25の湾曲部分の除く側外壁25の先端に連設されている。側額縁部26は流れ方向に細長い略長方形状に形成され、その段方向の寸法(延出寸法)は段ボールシートの厚さよりも若干長く設定されている。
【0029】
(側内壁)
内壁の一例としての側内壁27は、第6折曲線L6を介して側額縁部26の先端に連設されている。換言すれば、側内壁27は、一対の第6折曲線L6(側額縁部26)を介して側外壁25の先端に連設されている。側内壁27は、側額縁部26を軸にして側外壁25と略線対称に形成されている。
【0030】
側内壁27の先端前側の角部には、係合凹部28が略矩形状に切り欠かれている。側内壁27の流れ方向の略中央には、内側嵌合穴31が開口している。内側嵌合穴31は、側額縁部26を軸にして積層穴30と略線対称となる形状に側内壁27の先端から切り欠かれている。正確には、内側嵌合穴31は、積層穴30よりも段方向に長く(大きく)形成されている。また、側内壁27の先端側には、ロック穴33に対応する位置にロック凸部34が突設されている。ロック凸部34は、段ボールシートの厚さ程度突き出した矩形状の突起である。
【0031】
側額縁部26および側外壁25には、積層凸部32を区画するための凸状切断線32Aが形成されている。凸状切断線32Aは、側額縁部26等の流れ方向の略中央において、側内壁27から側額縁部26を横断して側外壁25に膨出するような略U字状に形成されている。凸状切断線32A(積層凸部32)は、内側嵌合穴31と略同一形状(略同一の大きさ)に形成されている。凸状切断線32Aは、段ボールシートを厚さ方向に切断して形成されている。一対の第6折曲線L6は、凸状切断線32Aで分断されており積層凸部32には形成されていない。積層穴30と内側嵌合穴31と積層凸部32(凸状切断線32A)とは、段方向に1列に並設されており、トレイ1を組み立てた状態で互いに対応する位置に形成されている。
【0032】
なお、第1~第6折曲線L1~L6は、段ボールシートを裏ライナ9Cから凹ませた汎用罫線である。補助折線L10および案内折線L11は、段ボールシートを表ライナ9Bから凹ませた逆罫線である。汎用罫線は裏ライナ9Cを内側に向けるように段ボールシートを折り曲げる(正折りする)機能を有し、逆罫線は表ライナ9Bを内側に向けるように段ボールシートを折り曲げる(逆折りする)機能を有している。なお、以上説明した複数の折曲線L1~L6,L10,L11は、汎用罫線や逆罫線に限らず、段ボールシートを所望の向きに折り曲げるための線であれば如何なるものでもよい。
【0033】
[トレイの組立]
次に、図1および図3を参照して、トレイ1の組立作業について説明する。図3はトレイ1を組み立てる過程を示す斜視図である。
【0034】
トレイ1は、裏ライナ9Cを上方に向けたブランク5を適宜折り曲げることで組み立てられる。ここでは、一例として、作業者がトレイ1を組み立てる場合について説明する。
【0035】
図3に示すように、作業者は、前外壁20を第1折曲線L1に沿って上方に折り曲げ、前外壁20を底壁10の前端に立設させる。また、作業者は、一対の前折込片12を第3折曲線L3(前外壁20との境界)に沿って内側に折り曲げ、一対の前折込片12を前後方向に沿って延設させる。作業者は、後壁13を第1折曲線L1に沿って上方に折り曲げ、一対の後折込片14を第4折曲線L4に沿って内側に折り曲げる。前折込片12と後折込片14とは、互いの先端同士を向き合わせ、第5折曲線L5上に配置される。前折込片12の前下凹部12Dと後折込片14の後下凹部14Dとは、底壁10の積層穴30およびロック穴33に対応して配置される。また、前折込片12の案内片24は、積層穴30の内側に配置される。
【0036】
次に、図1および図3に示すように、作業者は、一対の側外壁25を第5折曲線L5に沿って上方に折り曲げ、一対の側外壁25を底壁10の左右両端に立設させる。続けて、作業者は、一対の側額縁部26と一対の側内壁27とを第6折曲線L6に沿って一対の側外壁25の内側に折り返す。また、作業者は、側内壁27のロック凸部34を底壁10のロック穴33に嵌合(係合)させる。この状態で、側外壁25と側内壁27とは、前折込片12と後折込片14とを内包する二重壁(側壁15)となる。ロック凸部34がロック穴33に係合することで、二重壁となった側壁15が起立姿勢に保持される。また、後折込片14が側壁15に内包されることで、後壁13が起立姿勢に保持される。また、各側内壁27を折り返す過程で、積層凸部32は凸状切断線32Aに沿って側額縁部26および側外壁25から刳り貫かれ、側内壁27(側壁15)の上端から上方に向かって突出する。
【0037】
前折込片12が側壁15に内包された状態で、案内片24は積層穴30(の内側)に配置される。この状態において、案内片24の下端は底壁10の底面以上に位置している。つまり、案内片24は底壁10よりも下方に突出していない。また、案内折線L11は、側外壁25に開口した積層穴30の上縁に略一致する位置に配置されている。
【0038】
次に、図1および図3に示すように、作業者は、前額縁部21と前内壁22とを第2折曲線L2に沿って前外壁20の内側に折り返す。この際、前内壁22の一対の係合凸部23は一対の側内壁27に干渉(接触)するため、前内壁22は一対の補助折線L10に沿って逆折りされながら折り返される。前内壁22が前外壁20の内側に対向配置されると、一対の係合凸部23は一対の側内壁27の係合凹部28に嵌合(係合)する。前外壁20と前内壁22とは二重壁となる前壁11を構成し、前壁11は底壁10の前端に立設される。また、前折込片12が側壁15に内包され、且つ係合凸部23が係合凹部28に係合することで、前壁11が起立姿勢に保持される。
【0039】
以上によって、トレイ1が組み立てられる(図1参照)。作業者は、組み立てたトレイ1の底壁10の上に被包装物を載置する。
【0040】
[トレイの積層作用]
次に、図4ないし図6を参照して、複数のトレイ1を積み重ねる手順(積層作用)について説明する。図4はトレイ1を積層する過程を示す断面図である。図5はトレイ1を積層した状態を示す断面図である。図6はトレイ1を積層した状態を示す斜視図である。なお、ここでは、説明を簡単にするために、2つのトレイ1を積み重ねる場合について説明する。また、以下の説明では、便宜上、下方に配置されたトレイ1を「下段トレイ1(D)」とも呼び、下段トレイ1(D)の各構成には符号「(D)」を付加し、上方に配置されたトレイ1を「上段トレイ1(U)」とも呼び、上段トレイ1(U)の各構成には符号「(U)」を付加することとする。また、下段トレイ1(D)と上段トレイ1(U)とに共通する説明では、(D)や(U)を省略した符号を使用する。また、以下、説明を簡単にするため、特に明示した場合を除き、1つの積層凸部32や1つの積層穴30等について説明する。
【0041】
図4に示すように、作業者は、床(または台)に置いた下段トレイ1(D)の上方に上段トレイ1(U)を同じ向きに配置し、上段トレイ1(U)を下降させる。作業者は、上段トレイ1(U)の底壁10(U)に開口した一対の積層穴30(U)に、下段トレイ1(D)の一対の積層凸部32(D)を差し込む。
【0042】
2つのトレイ1を積層するために、積層凸部32(D)を積層穴30(U)に差し込む過程において、積層凸部32(D)は、積層穴30(U)に配置された案内片24(U)の内面(裏ライナ9C)に接触する。積層凸部32(D)は、案内片24(U)を外側に押し退けながら差し込まれて行く。案内折線L11(U)は側外壁25(U)に開口した積層穴30(U)の上縁と略一致しているため、案内片24(U)は、側外壁25(U)に押し当てられ、積層穴30(U)の上縁を支点として案内折線L11(U)で外側に折れ曲がる(逆折りされる)。このように、積層凸部32(D)は、案内片24(U)を案内折線L11(U)に沿って外側に折り曲げながら積層穴30(U)に差し込まれる。
【0043】
図5および図6に示すように、案内片24(U)は案内折線L11(U)で折れることで下方から上方に向かって内側に傾斜した姿勢になり、積層凸部32(D)は傾斜した案内片24(U)に接触しながら相対的に上方へスライドし、内側嵌合穴31(U)に嵌合する。つまり、傾斜した案内片24(U)は、積層凸部32(D)を内側嵌合穴31(U)へと導くガイドとして機能する。
【0044】
以上によって、上段トレイ1(U)は下段トレイ1(D)に積層された状態になる。この状態で、底壁10(U)の下面は、一対の側壁15(D)の上端面(側額縁部26(D))の上に積載されている。
【0045】
以上説明した第1実施形態に係るトレイ1では、積層穴30に配置された案内片24が外側に折れる構成とした。この構成によれば、案内片24(U)は上方から下方に向かって広がるように傾斜するため、積層凸部32(D)を案内片24(U)にガイドさせながら積層穴30(U)に差し込むことができる。換言すれば、案内片24(U)は下方から上方に向かって内側に傾斜するため、積層凸部32(D)を案内片24(U)に接触させながらスライドさせることで、積層凸部32(D)を内側嵌合穴31(U)に導くことができる。これにより、複数のトレイ1を円滑に積み重ねることができる。
【0046】
仮に、積層穴30(U)を大きく開口させれば、積層凸部32(D)を円滑に差し込むことができるが、積層凸部32(D)と積層穴30(U)との隙間が大きくなるため、下段トレイ1(D)に積層した上段トレイ1(U)が横方向にずれることがある。これに対し、第1実施形態に係るトレイ1によれば、積層穴30(U)を必要以上に大きくする必要が無く、案内片24(U)が折曲部分の復元力によって積層凸部32(D)を押えた状態になるため、積層したトレイ1の横ずれを抑制することができる。
【0047】
また、第1実施形態に係るトレイ1によれば、積層穴30に挿入された案内片24が底壁10の底面よりも下方に突き出すことがないため、複数のトレイ1を適正に積層することができる。
【0048】
また、第1実施形態に係るトレイ1によれば、案内折線L11が側外壁25に開口した積層穴30の上縁と略一致しているため、積層穴30の上縁を支点にして案内片24を案内折線L11に沿って容易に折り曲げることができる。
【0049】
また、第1実施形態に係るトレイ1によれば、側内壁27を底壁10にロックするための構造(ロック穴33、ロック凸部34)が複数のトレイ1を積層するための構造(積層穴30、積層凸部32、内側嵌合穴31)とは異なる位置に設けられているため、複数のトレイ1を積層する際に、積層凸部32がロック凸部34に干渉する等の問題を回避することができる。
【0050】
[トレイの積層分離作用]
次に、図7を参照して、積層された2つのトレイ1を分離する手順(積層分離作用)について説明する。図7は積層したトレイ1を分離する過程を示す断面図である。
【0051】
作業者は、積層穴30(U)に配置された(露出した)案内片24(U)を案内折線L11(U)に沿って外側に略直角に折り曲げ、側外壁25に開口した積層穴30の上縁内周面に当接させる。案内片24(U)は、側外壁25(段ボールシート)の厚さよりも長い延出寸法に形成されているため、外側に折り曲げられることで積層穴30の上縁内周面に覆設される。
【0052】
作業者は、積層穴30の上縁内周面を覆った案内片24(U)の下面に指を掛け、上段トレイ1(U)を引き上げる。これにより、積層凸部32(U)が積層穴30(D)(内側嵌合穴31(D))から相対的に引き抜かれ、上段トレイ1(U)が下段トレイ1(D)から分離される。
【0053】
仮に案内片24が存在しない場合、作業者は積層穴30の上縁内周面に手を掛けることになる。積層穴30の上縁内周面は側外壁25の厚さ(段ボールシート1枚分の厚さ)しかないため、作業者は指を掛け難いだけでなく、トレイ1を持ち上げた際に積層穴30(の輪郭)が変形したり、積層穴30の上縁内周面が作業者の手に食い込んだりすることがあった。
【0054】
これに対し、第1実施形態に係るトレイ1では、案内折線L11で折れた案内片24が積層穴30の上縁内周面を覆う構成とした。積層穴30の上縁内周面を案内片24で覆うことで、作業者が指を掛けることができる面積を増加させることができる。これにより、積層穴30の上縁内周面が作業者の手に食い込むことが抑制され、作業者の手への負担を軽減することができる。さらに、作業者は積層されたトレイ1を持ち上げる際に案内片24に確りと指を掛けることができ、積層されたトレイ1の分離作業を円滑に行うことができる。
【0055】
なお、第1実施形態に係るトレイ1では、一対の案内片24が一対の前折込片12に設けられていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、前折込片12と後折込片14の延出寸法を変更するなどして、一対の案内片24が一対の後折込片14に設けられてもよい(図示せず)。また、例えば、一対の案内片24は、1つの前折込片12と、その前折込片12の対角に位置する1つの後折込片14とに設けられてもよい(図示せず)。さらに、各々の側壁15に、積層穴30と積層凸部32と内側嵌合穴31とをそれぞれ2つずつ設けた場合、4つの案内片24が一対の前折込片12と一対の後折込片14とに設けられてもよい(図示せず)。
【0056】
また、第1実施形態に係るトレイ1では、前壁11が二重壁であり、後壁13が一枚の壁であったが、本発明はこれに限定されない。例えば、前壁11が一枚の壁で、後壁13が二重壁であってもよい(図示せず)。
【0057】
また、第1実施形態に係るトレイ1では、ロック穴33が積層穴30とは異なる位置に開口していたが、本発明はこれに限定されない。積層穴30をロック穴33として使用し、ロック凸部34が積層穴30に係合してもよい(図示せず)。この場合、複数のトレイ1を積層する際に積層凸部32(D)がロック凸部34(U)に干渉しないように、積層穴30(ロック穴33)の大きさ等を調整することが好ましい。
【0058】
[第2実施形態]
次に、図8を参照して、第2実施形態に係るトレイ2(ブランク6)について簡単に説明する。図8はトレイ2のブランク6を示す平面図である。なお、以下の説明では、第1実施形態に係るトレイ1と同一または対応する構成については同一の符号を付し、同一または対応する説明は省略する。
【0059】
第2実施形態に係るトレイ2(ブランク6)では、前壁11と後壁17とが二重壁となっている。
【0060】
<前壁>
トレイ2では、前内壁22の段方向の両端に、第7折曲線L7(逆罫線)を介して一対の第2の前折込片40が連設されている。前内壁22と一対の第2の前折込片40との境界には、一対の係合凹部41を形成するための一対の切込線41Aが切り込まれている。段方向の一方の前折込片12および第2の前折込片40は、他方の前折込片12および第2の前折込片40よりも長く形成されている。案内片24は、第2の案内折線L12(汎用罫線)を介して段方向の一方の第2の前折込片40の先端側に連設されている。
【0061】
<後壁>
後壁17は、後外壁45と、後額縁部46と、後内壁47と、を有している。後外壁45は第1折曲線L1を介して底壁10の後端に連設され、後額縁部46は第2折曲線L2を介して後外壁45の先端に連設され、後内壁47は第2折曲線L2を介して後額縁部46の先端に連設されている。後壁17は、底壁10を軸にして前壁11と線対称に形成されている。
【0062】
後外壁45の段方向の両端には、第4折曲線L4を介して一対の後折込片14が連設されている。後内壁47の段方向の両端には、第8折曲線L8(逆罫線)を介して一対の第2の後折込片48が連設されている。後内壁47と一対の第2の後折込片48との境界には一対の切込線41Aが切り込まれている。段方向の一方の後折込片14および第2の後折込片48は、他方の後折込片14および第2の後折込片48よりも短く形成されている。すなわち、一対の後折込片14および一対の第2の後折込片48は、底壁10を支点にして一対の前折込片12および一対の第2の前折込片40と点対称に形成されている。案内片24は、第2の案内折線L12を介して段方向の他方の第2の後折込片48の先端側に連設されている。すなわち、一対の案内片24は、対角に位置する第2の前折込片40と第2の後折込片48とに設けられている。
【0063】
なお、一対の側内壁27の流れ方向の両端には、トレイ2を組み立てた状態で、一対の係合凹部41に係合する一対の係合凸部49が突設されている。
【0064】
トレイ2を組み立てるには、作業者は、前外壁20および後外壁45を起立させ、前内壁22および後内壁47等を内側に折り返し、各前折込片12,40と各後折込片14,48とを互いに接近するように折り曲げる。作業者は、各前折込片12,40と各後折込片14,48とを包むように二重壁となる側壁15を形成する。なお、トレイ2の積層作用および積層分離作用は、第1実施形態に係るトレイ1と同様である。
【0065】
以上説明した第2実施形態に係るトレイ2によれば、複数のトレイ1を円滑に積み重ねることができる等、第1実施形態に係るトレイ1と同様の効果を得ることができる。
【0066】
なお、第2実施形態に係るトレイ2では、一対の案内片24が第2の前折込片40および第2の後折込片48に設けられていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、一対の案内片24は、前折込片12および後折込片14に設けられてもよい(図示せず)。また、一対の案内片24は、一対の前折込片12、一対の第2の前折込片40、一対の後折込片14または一対の第2の後折込片48に設けられていればよい(図示せず)。さらに、各々の側壁15に、積層穴30と積層凸部32と内側嵌合穴31とをそれぞれ2つずつ設けた場合、4つの案内片24が一対の前折込片12と一対の後折込片14とに設けられてもよいし、一対の第2の前折込片40と一対の第2の後折込片48とに設けられてもよい(図示せず)。
【0067】
なお、第1および第2実施形態に係るトレイ1,2では、前壁11に前額縁部21が設けられていたが、本発明はこれに限定されない。前額縁部21が省略され、前内壁22が前外壁20の上端に連設されてもよい(図示せず)。これと同様に、側額縁部26が省略され、側内壁27が側外壁25の上端に連設されてもよい(図示せず)。さらに、第2実施形態に係るトレイ2では、後額縁部46が省略され、後内壁47が後外壁45の上端に連設されてもよい(図示せず)。
【0068】
また、第1および第2実施形態に係るトレイ1,2では、積層凸部32が側内壁27の上端から上方に突出していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、凸状切断線32Aが側外壁25から側額縁部26を横断して側内壁27に膨出するように形成され、積層凸部32が側外壁25の上端から上方に突出してもよい(図示せず)。
【0069】
また、第1および第2実施形態に係るトレイ1,2では、案内折線L11および第2の案内折線L12(以下、「案内折線L11等」という。)は案内片24を外側に折り曲げるように形成されていたが、本発明はこれに限定されない。案内折線L11等は案内片24を内側に折り曲げるように形成されてもよい。そして、積層凸部32(D)は、積層穴30(U)に配置された案内片24(U)に接触し、案内片24(U)を案内折線L11(U)等に沿って内側に折り曲げながら積層穴30(U)に差し込まれてもよい(図示せず)。
【0070】
また、第1および第2実施形態に係るトレイ1,2では、案内折線L11等が側外壁25に開口した積層穴30の上縁と略一致していたが、本発明はこれに限定されない。案内折線L11等は、側外壁25に開口した積層穴30の上縁の近傍に位置していればよい。また、案内片24が案内折線L11等で内向きに折れるのであれば、案内折線L11等は内側嵌合穴31の上縁の近傍に位置してもよい。本明細書で「近傍」とは、例えば、積層穴30等の上縁と一致する位置よりも僅かに(例えば数mm程度)上方または下方に位置することを含む意味である。
【0071】
また、第1および第2実施形態に係るトレイ1,2では、案内片24が案内折線L11等を介して前折込片12や第2の後折込片48(以下、「前折込片12等」という。)に連設されていたが、案内折線L11等は省略されてもよい(図示せず)。この場合、案内片24は、前折込片12等との境界で折れるか、自身の弾性によって曲がる(撓む)ことになる(図示せず)。
【0072】
また、第1および第2実施形態に係るトレイ1,2では、積層穴30が底壁10から側外壁25にかけて開口していたが、本発明はこれに限定されない。積層穴30は少なくとも底壁10に開口していればよい。また、内側嵌合穴31が側内壁27に開口していたが、内側嵌合穴31は省略されてもよい。
【0073】
また、第1および第2実施形態に係るトレイ1,2では、案内片24が略長方形状に形成されていたが、本発明はこれに限定されない。案内片24は、例えば、三角形や五角形等四角形以外の多角形状でもよいし、半円形状でもよい(図示せず)。
【0074】
また、第1および第2実施形態に係るトレイ1,2は、紙製の両面段ボールシートで形成されていたが、これに限らず、片面段ボールシートや複両面段ボールシート、または厚紙、若しくは樹脂製の板(シート)等で形成されていてもよい。
【0075】
なお、上記実施形態の説明は、本発明に係るトレイにおける一態様を示すものであって、本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の技術範囲は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明は技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよく、特許請求の範囲は技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施態様を含んでいる。
【符号の説明】
【0076】
1,2 トレイ
10 底壁
11 前壁(第1側壁)
12 前折込片(折込片)
15 側壁(第2側壁)
24 案内片
25 側外壁(外壁)
27 側内壁(内壁)
30 積層穴
31 内側嵌合穴
32 積層凸部
33 ロック穴
34 ロック凸部
40 第2の前折込片(折込片)
L11 案内折線
L12 第2の案内折線(案内折線)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8