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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】部品実装機および部品収容状態判断方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/08 20060101AFI20231002BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
H05K13/08 Q
H05K13/04 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020077686
(22)【出願日】2020-04-24
(65)【公開番号】P2021174878
(43)【公開日】2021-11-01
【審査請求日】2022-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】岡嵜 真一
【審査官】森林 宏和
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-149770(JP,A)
【文献】特開2011-232275(JP,A)
【文献】国際公開第2015/097865(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00 - 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を収容するトレイを収納位置に収納するトレイ収納部と、
前記収納位置と供給位置との間で前記トレイを搬送するトレイ搬送部と、
前記トレイ搬送部によって前記収納位置から前記供給位置に搬送された前記トレイから部品を取り出して基板に実装する実装ヘッドと、
前記トレイを撮像する撮像装置と、
前記撮像装置が撮像した画像に基づき、前記トレイにおける部品の収容状態を判断する制御部と
を備え、
前記実装ヘッドが前記供給位置に位置する前記トレイからの部品の取り出しを終えた後に、前記撮像装置が前記トレイを撮像し、前記トレイ搬送部が前記供給位置から前記収納位置へ前記トレイを搬送し、
前記制御部は、前記画像に基づき、前記トレイにおける部品の収容状態が異常であると判断すると、前記トレイを前記トレイ収納部へ向けて搬送して前記トレイ収納部に収納するトレイ収納搬送を停止する部品実装機。
【請求項2】
作業者への報知を実行する報知部をさらに備え、
前記制御部は、前記画像に基づき、前記トレイにおける部品の収容状態が異常であると判断すると、前記報知部に異常の発生を報知させる請求項1に記載の部品実装機。
【請求項3】
部品を収容するトレイを収納位置に収納するトレイ収納部と、
前記収納位置と供給位置との間で前記トレイを搬送するトレイ搬送部と、
前記トレイ搬送部によって前記収納位置から前記供給位置に搬送された前記トレイから部品を取り出して基板に実装する実装ヘッドと、
前記トレイを撮像する撮像装置と、
前記撮像装置が撮像した画像に基づき、前記トレイにおける部品の収容状態を判断する制御部と
を備え、
前記実装ヘッドが前記供給位置に位置する前記トレイからの部品の取り出しを終えた後に、前記撮像装置が前記トレイを撮像し、前記トレイ搬送部が前記供給位置から前記収納位置へ前記トレイを搬送し、
前記撮像装置は、前記供給位置と前記収納位置との間に設けられた撮像範囲を有し、前記トレイ搬送部の搬送によって前記供給位置から前記収納位置へ向かって前記撮像範囲を通過する前記トレイを撮像する部品実装機。
【請求項4】
前記トレイ搬送部によって搬送される前記トレイの位置に関する情報を出力するエンコーダをさらに備え、
前記撮像装置はラインセンサであり、前記トレイ搬送部によって搬送される前記トレイを前記エンコーダの出力に同期して撮像する請求項1ないし3のいずれか一項に記載の部品実装機。
【請求項5】
前記撮像装置はエリアセンサである請求項1ないし4のいずれか一項に記載の部品実装機。
【請求項6】
前記撮像装置は、平面視において、前記トレイ収納部より前記供給位置側に配置される請求項1ないし5のいずれか一項に記載の部品実装機。
【請求項7】
前記撮像装置は、前記トレイ収納部内に配置されている請求項1ないし5のいずれか一項に記載の部品実装機。
【請求項8】
前記撮像装置は、前記実装ヘッドに伴って移動する請求項1ないし7のいずれか一項に記載の部品実装機。
【請求項9】
前記実装ヘッドは、前記撮像装置から独立して移動する請求項1ないし7のいずれか一項に記載の部品実装機。
【請求項10】
供給位置に位置するトレイに収容される部品を実装ヘッドにより取り出して基板に実装する工程と、
前記実装ヘッドが前記供給位置に位置する前記トレイからの部品の取り出しを終えた後に、撮像装置により前記トレイを撮像する工程と、
前記実装ヘッドが前記供給位置に位置する前記トレイからの部品の取り出しを終えた後に、前記供給位置からトレイ収納部内の収納位置まで前記トレイを搬送する工程と、
前記撮像装置が撮像した画像に基づき、前記トレイにおける部品の収容状態を判断する工程と
制御部が前記画像に基づき、前記トレイにおける部品の収容状態が異常であると判断すると、前記トレイを前記トレイ収納部へ向けて搬送して前記トレイ収納部に収納するトレイ収納搬送を停止する工程と
を備える部品収容状態判断方法。
【請求項11】
供給位置に位置するトレイに収容される部品を実装ヘッドにより取り出して基板に実装する工程と、
前記実装ヘッドが前記供給位置に位置する前記トレイからの部品の取り出しを終えた後に、撮像装置により前記トレイを撮像する工程と、
前記実装ヘッドが前記供給位置に位置する前記トレイからの部品の取り出しを終えた後に、前記供給位置からトレイ収納部内の収納位置まで前記トレイを搬送する工程と、
前記撮像装置が撮像した画像に基づき、前記トレイにおける部品の収容状態を判断する工程と
を備え
前記撮像装置は、前記供給位置と前記収納位置との間に設けられた撮像範囲を有し、トレイ搬送部の搬送によって前記供給位置から前記収納位置へ向かって前記撮像範囲を通過する前記トレイを撮像する部品収容状態判断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品収納部の収納位置に収納されたトレイを供給位置に搬送してトレイに収容された部品を基板に実装する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
部品を基板に実装する部品実装機では、特許文献1~3に示されるように、トレイ型の部品を供給する部品供給装置を用いる場合がある。かかる部品供給装置は、トレイ収納部の収納位置に収納されるトレイを供給位置に引き出して、実装ヘッドによりトレイから取り出した部品を基板に実装する。そして、部品の取り出しが終わったトレイは、供給位置からトレイ収納部の収納位置に戻される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-107205号公報
【文献】特開2013-243273号公報
【文献】特開2000-277985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば実装ヘッドがトレイからの部品の取り出しに失敗して、実装ヘッドからトレイに部品が落下すると、トレイでの部品が散らばったり、トレイに収容される部品の個数が本来の個数からずれたりとった異常が発生する場合がある。前者の異常が発生すると、トレイ収納部にトレイを収納した際に部品がトレイとトレイ収納部との間に挟まるおそれがあり、後者の異常が発生すると、トレイに収容される部品の残数管理を適切に行えなくなるおそれがある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、部品を収容するトレイをトレイ収納部の収納位置に戻すにあたって、トレイにおける部品の収容状態を判断することを可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る部品実装機は、部品を収容するトレイを収納位置に収納するトレイ収納部と、収納位置と供給位置との間でトレイを搬送するトレイ搬送部と、トレイ搬送部によって収納位置から供給位置に搬送されたトレイから部品を取り出して基板に実装する実装ヘッドと、トレイを撮像する撮像装置と、撮像装置が撮像した画像に基づき、トレイにおける部品の収容状態を判断する制御部とを備え、実装ヘッドが供給位置に位置するトレイからの部品の取り出しを終えた後に、撮像装置がトレイを撮像し、トレイ搬送部が供給位置から収納位置へトレイを搬送する。
【0007】
本発明に係る部品収容状態判断方法は、供給位置に位置するトレイに収容される部品を実装ヘッドにより取り出して基板に実装する工程と、実装ヘッドが供給位置に位置するトレイからの部品の取り出しを終えた後に、撮像装置によりトレイを撮像する工程と、実装ヘッドが供給位置に位置するトレイからの部品の取り出しを終えた後に、供給位置からトレイ収納部内の収納位置までトレイを搬送する工程と、撮像装置が撮像した画像に基づき、トレイにおける部品の収容状態を判断する工程とを備える。
【0008】
このように構成された本発明(部品実装機、部品収容状態判断方法)では、実装ヘッドが供給位置に位置するトレイからの部品の取り出しを終えた後に、撮像装置によりトレイが撮像されるとともに、供給位置からトレイ収納部内の収納位置までトレイが搬送される。そして、撮像装置が撮像した画像に基づき、トレイにおける部品の収容状態が判断される。こうして、部品を収容するトレイをトレイ収納部の収納位置に戻すにあたって、トレイにおける部品の収容状態を判断することが可能となっている。
【0009】
また、制御部は、画像に基づき、トレイにおける部品の収容状態が異常であると判断すると、トレイをトレイ収納部へ向けて搬送してトレイ収納部に収納するトレイ収納搬送を停止するように、部品実装機を構成してもよい。これによって、異常が発生したまま、トレイ収納搬送が実行されるのを防止できる。
【0010】
また、トレイ収納部はトレイを上下移動させるトレイ上下移動を実行可能であり、制御部は、画像に基づき、トレイにおける部品の収容状態が異常であると判断すると、トレイをトレイ収納部へ向けて搬送してトレイ収納部に収納するトレイ収納搬送を実行する一方、当該トレイ収納搬送後におけるトレイ上下移動を禁止するように、部品実装機を構成してもよい。これによって、異常が発生したまま、トレイ収納搬送後にトレイ上下移動が実行されるのを防止できる。
【0011】
また、作業者への報知を実行する報知部をさらに備え、制御部は、画像に基づき、トレイにおける部品の収容状態が異常であると判断すると、報知部に異常の発生を報知させるように、部品実装機を構成してもよい。これによって、作業者は、異常の発生を把握することができる。
【0012】
また、撮像装置は、供給位置と収納位置との間に設けられた撮像範囲を有し、トレイ搬送部の搬送によって供給位置から収納位置へ向かって撮像範囲を通過するトレイを撮像するように、部品実装機を構成しても良い。かかる構成では、トレイ収納部へのトレイの収納と並行してトレイの撮像を効率的に実行できる。
【0013】
なお、撮像装置は、ラインセンサでもよく、エリアセンサでもよい。前者の場合には、トレイ搬送部によって搬送されるトレイの位置に関する情報を出力するエンコーダをさらに備え、撮像装置はトレイ搬送部によって搬送されるトレイをエンコーダの出力に同期して撮像するように、部品実装機を構成してもよい。
【0014】
また、撮像装置の配置は種々想定される。例えば、撮像装置は、平面視において、トレイ収納部より供給位置側に配置されてもよいし、撮像装置は、トレイ収納部内に配置されてもよい。
【0015】
また、撮像装置は、実装ヘッドに伴って移動するように、部品実装機を構成してもよいし、実装ヘッドは、撮像装置から独立して移動するように、部品実装機を構成してもよい。後者の場合には、トレイの撮像のために実装ヘッドの動作が制限されることがないため、実装ヘッドによる部品の実装を効率的に実行できる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、部品を収容するトレイをトレイ収納部の収納位置に戻すにあたって、トレイにおける部品の収容状態を判断することが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明に係る部品実装機の一例を模式的に示す平面図。
図2図1の部品実装機が具備するトレイ部品供給機構の構成を模式的に示す側面図。
図3図1の部品実装機が備える電気的構成を示すブロック図。
図4図1の部品実装機で実行される部品実装の一例を示すフローチャート。
図5図4の部品実装で実行されるトレイ供給動作の一例を示すフローチャート。
図6図5のフローチャートに従って実行されるトレイ供給動作を模式的に示す図。
図7図4の部品実装で実行されるトレイ収納動作の一例を示すフローチャート。
図8図7のフローチャートに従って実行されるトレイ収納動作を模式的に示す図。
図9】トレイカメラの配置の変更例を模式的に示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明に係る部品実装機の一例を模式的に示す平面図である。同図および以下の図では、水平方向であるX方向と、X方向に直交する水平方向であるY方向と、鉛直方向であるZ方向とを適宜示す。部品実装機4は、基板BをX方向(基板搬送方向)に搬送する搬送部41を備える。この搬送部41は、X方向に並列に配置された一対のコンベア411を有し、コンベア411によって基板BをX方向に搬送する。これらコンベア411の間隔は、X方向に直交するY方向(幅方向)に変更可能であり、搬送部41は、搬送する基板Bの幅に応じてコンベア411の間隔を調整する。この搬送部41は、基板搬送方向であるX方向の上流側から所定の作業位置(図1の基板Bの位置)に搬入するとともに、作業位置で部品Eが実装された基板Bを作業位置からX方向の下流側に搬出する。
【0019】
搬送部41のY方向の一方側(Y方向の矢印側)では2個の部品供給部42がX方向に並んでおり、各部品供給部42では、複数のテープフィーダ421がX方向に並ぶ。部品供給部42では、X方向に並ぶ複数の部品供給箇所422が設けられており、各部品供給箇所422に供給すべき部品Eを供給するテープフィーダ421が、各部品供給箇所422に対応付けられて着脱可能に装着される。つまり、各テープフィーダ421に対しては、集積回路、トランジスタ、コンデンサ等の小片状の部品Eを所定間隔おきに収容したキャリアテープが巻き付けられた部品供給リールが配置されており、各テープフィーダ421は部品供給リールから引き出されたキャリアテープを間欠的に送り出すことで、その先端部の部品供給箇所422に部品Eを供給する。
【0020】
また、部品実装機4では、Y方向に延びる一対のY軸レール43と、Y方向に延びるY軸ボールネジ44と、Y軸ボールネジ44を回転駆動するY軸モータMyとが設けられ、X軸レール45が一対のY軸レール43にY方向に移動可能に支持された状態でY軸ボールネジ44のナットに固定されている。X軸レール45には、X方向に延びるX軸ボールネジ46と、X軸ボールネジ46を回転駆動するX軸モータMxとが取り付けられており、ヘッドユニット47がX軸レール45にX方向に移動可能に支持された状態でX軸ボールネジ46のナットに固定されている。したがって、Y軸モータMyは、Y軸ボールネジ44を回転させてヘッドユニット47をY方向に移動させることができ、X軸モータMxは、X軸ボールネジ46を回転させてヘッドユニット47をX方向に移動させることができる。
【0021】
ヘッドユニット47は、X方向に直線状に並ぶ複数の実装ヘッド48を有する。各実装ヘッド48に対しては、Z軸モータMzおよびR軸モータMr(図3)が取り付けられている。Z軸モータMzは実装ヘッド48をZ方向に昇降させ、R軸モータMrは実装ヘッドをZ方向に平行な回転軸を中心に回転させる。
【0022】
実装ヘッド48は、Z軸モータMzの駆動により部品Eに向けて下降することで、実装ヘッド48の下端に装着されたノズルを部品Eに接触させる。この状態で、実装ヘッド48はノズルに負圧を発生させて、部品Eを吸着する。さらに、実装ヘッド48は、Z軸モータMzの駆動により上昇することで、部品Eを取り出す。そして、実装ヘッド48は、X軸モータMxおよびY軸モータMyの駆動により移動して、基板Bの実装箇所に部品Eを上方から対向させると、R軸モータMrの駆動により回転して実装箇所に対して部品Eの回転角度を合わせる。さらに、実装ヘッド48はZ軸モータMzの駆動により実装箇所に向けて下降することで、ノズルに吸着する部品Eを実装箇所に接触させる。この状態で、実装ヘッド48はノズルの負圧を解除して、部品Eを基板Bの実装箇所に実装する。
【0023】
また、ヘッドユニット47には、基板カメラCbが取り付けられている。この基板カメラCbは、ヘッドユニット47と一体的に移動することで、基板Bに設けられたフィデューシャルマークを上方から撮像する。そして、実装ヘッド48が基板Bに部品Eを実装する際にはフィデューシャルマークを撮像した結果に基づき、実装ヘッド48が保持する部品Eと基板Bとの位置合わせが実行される。
【0024】
また、部品実装機4は、搬送部41のY方向の他方側(Y方向の矢印の反対側)に、2個のトレイ部品供給機構5を備える。2台のトレイ部品供給機構5は、X方向に並んで配置され、共通する構成を具備する。
【0025】
図2図1の部品実装機が具備するトレイ部品供給機構の構成を模式的に示す側面図である。トレイ部品供給機構5は、複数の部品Eを収容するトレイTを用いて、部品E(トレイ部品)を実装ヘッド48に供給する。このトレイTには、複数の部品収容部Tcが水平方向に並んで形成されており、例えば複数の部品収容部Tcが格子状に並んで、各部品収容部Tcに部品Eが収容される。その結果、このトレイT上では、複数の部品EがX方向およびY方向に二次元的に整列する。ただし、トレイTの具体的な構成は、ここに説明した例に限られない。トレイ部品供給機構5は、複数のトレイTをZ方向に並べて収納するトレイ収納部51を備える。トレイ収納部51は、ハウジング511と、ハウジング511と内に配置されてZ方向に昇降する昇降マガジン512とを有する。昇降マガジン512では、複数のスロット513がZ方向に並んでおり、各スロット513にトレイTが収納される。具体的には、トレイTはパレットPの上に載置された状態でスロット513に収納されており、パレットPは、例えば磁力等によってトレイTを所定箇所に保持する。
【0026】
また、トレイ部品供給機構5は、複数のスロット513のうち、挿脱高さHに位置する対象スロット513に対してパレットPを挿脱するトレイ搬送部53を備える。このトレイ搬送部53は、対象スロット513内の収納位置Lbと、当該収納位置Lbより搬送部41側の供給位置Laとの間でトレイTをY方向に搬送する。具体的には、トレイ搬送部53はベルトコンベア531を有し、対象スロット513から取り出したパレットPを供給位置Laに向けて搬送することで、パレットP上のトレイTを収納位置Lbから供給位置Laに搬送する。さらに、供給位置Laに停止していてトレイTを保持するパレットPを収納位置Lbに向けて搬送することで、パレットP上のトレイTを供給位置Laから収納位置Lbに搬送する。
【0027】
また、トレイ部品供給機構5は、ベルトコンベア531によってY方向に搬送されるトレイTを上方から撮像するトレイカメラCtを備える。トレイカメラCtは、X方向に延設された直線状の撮像範囲Rcを撮像するラインセンサである。平面視において、トレイカメラCtは、トレイ収納部51の外側、換言すればトレイ収納部51より供給位置La側に配置されており、トレイカメラCtの撮像範囲Rcは、平面視において供給位置Laと収納位置Lbとの間に位置する。そして、トレイカメラCtは、ベルトコンベア531の搬送によって撮像範囲RcをY方向に通過するトレイTを撮像する。
【0028】
図3図1の部品実装機が備える電気的構成を示すブロック図である。図3に示すように、部品実装機4は、部品実装機4の全体を統括的に制御する制御部61を備える。この制御部61は、プロセッサ等で構成された演算部611と、HDD(Hard Disk Drive)等で構成された記憶部612とを有する。この制御部61は、上述のX軸モータMx、Y軸モータMy、Z軸モータMzおよびR軸モータMrで構成されるヘッド駆動機構Mhによる実装ヘッド48の駆動を制御することで、実装ヘッド48に基板Bへの部品Eの実装を実行させる。なお、制御部61は、例えばFPGA(Field-Programmable Gate Array)により構成してもよい。
【0029】
また、制御部61は、基板カメラCbによる基板Bのフィデューシャルマークの撮像を制御するとともに、フィデューシャルマークの撮像結果に基づきヘッド駆動機構Mhを制御することで、上記の基板Bと部品Eとの位置合わせを実行する。
【0030】
さらに、上述のトレイ搬送部53は、ベルトコンベア531を駆動するコンベアモータMcと、コンベアモータMcの回転位置を出力するエンコーダEcとを有する。そして、制御部61は、エンコーダEcの出力に基づきコンベアモータMcを制御することで、コンベアモータMcによって搬送されるトレイTの位置を制御する。
【0031】
特に、制御部61は、トレイカメラCtによるトレイTの撮像を、エンコーダEcの出力に基づき制御する。具体的には、エンコーダEcは、トレイカメラCtのラインセンサの1ライン分の幅だけトレイTがY方向に搬送されたことにより出力する。制御部61は、エンコーダEcの出力に基づき、トレイカメラCtのラインセンサの1ライン分だけトレイTがY方向に搬送されたことを確認し、撮像範囲Rcを通過するトレイTの撮像をトレイカメラCtに実行させる。これによって、トレイカメラCtは、ベルトコンベア531によって搬送されるトレイTを、エンコーダEcの出力に同期して撮像して、複数ライン分のトレイ画像Itを撮像する。こうして、トレイカメラCtによって撮像されたトレイ画像Itは、記憶部612に保存される。
【0032】
また、部品実装機4は、作業者に報知を行う報知部63を備える。この報知部63はディスプレイを有し、ディスプレイに報知内容を表示する。なお、作業者への報知方法は、ここの例のディスプレイへの表示に限られず、例えばスピーカを用いて音声により報知を行ってもよい。
【0033】
図4図1の部品実装機で実行される部品実装の一例を示すフローチャートであり、図5図4の部品実装で実行されるトレイ供給動作の一例を示すフローチャートであり、図6図5のフローチャートに従って実行されるトレイ供給動作を模式的に示す図であり、図7図4の部品実装で実行されるトレイ収納動作の一例を示すフローチャートであり、図8図7のフローチャートに従って実行されるトレイ収納動作を模式的に示す図である。図4図5および図7のフローチャートは制御部61の制御に基づき実行される。
【0034】
図4の部品実装のステップS101では、トレイ供給動作(図5)が実行される。ステップS201では、トレイ供給動作の対象となるトレイ収納部51内のトレイTが挿脱高さHに位置する。そして、収納位置Lbから供給位置LaへのトレイTの搬送が開始される(ステップS202)。図6の「ステップS202」の欄では、搬送開始直前の状態が示されている。そして、トレイTが撮像範囲Rcに到達するタイミングに応じて、トレイカメラCtがトレイTの撮像を開始して、撮像範囲Rcを通過するトレイTがトレイカメラCtによって撮像される(ステップS203)。図6の「ステップS203」の欄では、トレイTが撮像範囲Rcを通過している途中の状態が示されている。そして、トレイTが供給位置Laに到達すると、ベルトコンベア531による搬送が停止して、トレイTが供給位置Laに停止する(ステップS204)。その結果、図6の「ステップS204」の欄に示すように、トレイTが供給位置Laに供給される。
【0035】
ステップS205では、演算部611は、ステップS203によって撮像されて記憶部612に保存されているトレイ画像Itに画像処理を実行して、トレイTにおける部品Eの収容状態を取得する。ステップS206では、演算部611は、この収容状態が正常であるか否かを判断する。具体的には、記憶部612には、トレイTにおける部品Eの残数が記憶されている。この部品Eの残数は、トレイTが最初に収容していた部品Eの個数(初期個数)から、部品実装において当該トレイTから取り出された部品Eの個数を減算することで算出される。そして、演算部611は、トレイ画像Itが示すトレイT上の部品Eの個数と、記憶部612に記憶される部品Eの残数とが一致するかを判断する。そして、前者が後者より少ない場合には、例えばトレイTの搬送途中で部品EがトレイTからこぼれた可能性があるため、演算部611は収容状態が異常である(ステップSS206で「NO」)と判断する。あるいは、トレイT上において部品Eの姿勢がずれていたり、部品Eが斜め上方に傾いていたり、部品Eの表裏がひっくり返っていたりすることが、トレイ画像Itにより示される場合には、演算部611は収容状態が異常である(ステップSS206で「NO」)と判断する。
【0036】
演算部611は、これらの異常のいずれかが発生しており、トレイTにおける部品Eの収容状態が正常でないと判断すると(ステップS206で「NO」)、ヘッド駆動機構Mhの動作を停止して、実装ヘッド48による部品実装を禁止する(ステップS207)。また、演算部611は、異常が発生した旨を報知部63に報知させる(ステップS208)。
【0037】
一方、演算部611は、これらの異常のいずれも発生しておらず、トレイTにおける部品Eの収容状態が正常であると判断すると(ステップS206で「YES」)、図4のフローチャートに戻る。なお、ステップS204と、ステップS205、S206との実行順序は図5の例に限られず、図5の逆でも構わない。ステップS207とステップS208の実行順序についても同様である。
【0038】
ステップS102では、実装ヘッド48が基板Bに部品Eを実装する部品実装を実行する。また、この部品実装では、実装ヘッド48は、供給位置LaのトレイTから部品Eを取り出して基板Bに実装する。ステップS103では、供給位置LaのトレイTからの部品Eの取り出しを実装ヘッド48が終了するか否かが判断される。終了しない場合(ステップS103で「NO」の場合)には、ステップS105に進む一方、終了する場合(ステップS103で「YES」の場合)には、トレイ収納動作(ステップS104)が実行される。具体的には、供給位置LaのトレイTを交換する場合や、供給位置LaのトレイTにおける部品Eの残数がゼロになった場合には、部品Eの取り出しを終了すると判断して(ステップS103で「YES」)、トレイ収納動作(図7)が実行される(ステップS104)。
【0039】
ステップS301では、供給位置Laから収納位置LbへのトレイTの搬送が開始される。図8の「ステップS301」の欄では、搬送開始直前の状態が示されている。そして、トレイTが撮像範囲Rcに到達するタイミングに応じて、トレイカメラCtがトレイTの撮像を開始して、撮像範囲Rcを通過するトレイTがトレイカメラCtによって撮像される(ステップS302)。図8の「ステップS302」の欄では、トレイTが撮像範囲Rcを通過している途中の状態が示されている。そして、トレイTが収納位置Lbに到達すると、ベルトコンベア531による搬送が停止して、トレイTが収納位置Lbに停止する(ステップS303)。その結果、図8の「ステップS303」の欄に示すように、トレイTが収納位置Lbに収納される。
【0040】
ステップS304では、演算部611は、ステップS302によって撮像されて記憶部612に保存されているトレイ画像Itに画像処理を実行して、トレイTにおける部品Eの収容状態を取得する。ステップS305では、演算部611は、この収容状態が正常であるか否かを判断する。ステップS305での判断基準は、上記のステップS206での判断基準と同じである。
【0041】
演算部611は、上記の異常のいずれかが発生しており、トレイTにおける部品Eの収容状態が正常でないと判断すると(ステップS305で「NO」)、トレイ収納部51の動作を禁止する(ステップS306)。具体的には、ステップS306では、供給位置Laから収納位置Lbに向けてトレイTを搬送するトレイ収納搬送の実行後におけるトレイ上下移動が禁止される。このトレイ上下移動は、トレイTを上下に移動させる動作であり、換言すれば、昇降マガジン512を昇降させる動作である。また、演算部611は、異常が発生した旨を報知部63に報知させる(ステップS307)。
【0042】
一方、演算部611は、上記の異常のいずれも発生しておらず、トレイTにおける部品Eの収容状態が正常であると判断すると(ステップS305で「YES」)、図4のフローチャートに戻る。なお、ステップS303と、ステップS304、S305との実行順序は図7の例に限られず、図7の逆でも構わない。ステップS306とステップS307の実行順序についても同様である。
【0043】
ステップS105では、部品実装が完了したか否かが判断される。そして、部品実装が完了するまで(ステップS105で「YES」となるまで)、ステップS101~S104が繰り返される。
【0044】
以上に説明した実施形態では、実装ヘッド48が供給位置Laに位置するトレイTからの部品Eの取り出しを終えた後に(ステップS103)、トレイカメラCt(撮像装置)によりトレイTが撮像されるとともに(ステップS302)、供給位置Laからトレイ収納部51内の収納位置LbまでトレイTが搬送される。そして、トレイカメラCtが撮像したトレイ画像It(画像)に基づき、トレイTにおける部品Eの収容状態が判断される(ステップS304、S305)。こうして、部品Eを収容するトレイTをトレイ収納部51の収納位置Lbに戻すにあたって、トレイTにおける部品Eの収容状態を判断することが可能となっている。
【0045】
また、トレイ収納部51はトレイTを上下移動させるトレイ上下移動を実行可能である。これに対して、制御部61は、トレイ画像Itに基づき、トレイTにおける部品Eの収容状態が異常であると判断すると、トレイTをトレイ収納部51へ向けて搬送してトレイ収納部51に収納するトレイ収納搬送を実行する一方、当該トレイ収納搬送後におけるトレイ上下移動を禁止する。これによって、異常が発生したまま、トレイ収納搬送後にトレイ上下移動が実行されるのを防止できる。
【0046】
また、作業者への報知を実行する報知部63が具備されており、制御部61は、トレイ画像Itに基づき、トレイTにおける部品Eの収容状態が異常であると判断すると(ステップS305で「NO」)、報知部63に異常の発生を報知させる(ステップS307)。これによって、作業者は、異常の発生を把握することができる。
【0047】
また、トレイカメラCtは、供給位置Laと収納位置Lbとの間に設けられた撮像範囲Rcを有し、トレイ搬送部53の搬送によって供給位置Laから収納位置Lbへ向かって撮像範囲Rcを通過するトレイTを撮像する。したがって、トレイ収納部51へのトレイTの収納(ステップS301、S303)と並行してトレイTの撮像(ステップS302)を効率的に実行できる。
【0048】
また、実装ヘッド48を保持するヘッドユニット47に取り付けられた基板カメラCbとは別にトレイカメラCtが設けられており、実装ヘッド48は、トレイカメラCtから独立して移動することができる。そのため、トレイTの撮像のために実装ヘッド48の動作が制限されることがないため、実装ヘッド48による部品Eの実装を効率的に実行できる。
【0049】
以上に説明したように、本実施形態では、部品実装機4が本発明の「部品実装機」の一例に相当し、実装ヘッド48が本発明の「実装ヘッド」の一例に相当し、トレイ収納部51が本発明の「トレイ収納部」の一例に相当し、トレイ搬送部53が本発明の「トレイ搬送部」の一例に相当し、制御部61が本発明の「制御部」の一例に相当し、報知部63が本発明の「報知部」の一例に相当し、基板Bが本発明の「基板」の一例に相当し、トレイカメラCtが本発明の「撮像装置」の一例に相当し、部品Eが本発明の「部品」の一例に相当し、エンコーダEcが本発明の「エンコーダ」の一例に相当し、トレイ画像Itが本発明の「画像」の一例に相当し、供給位置Laが本発明の「供給位置」の一例に相当し、収納位置Lbが本発明の「収納位置」の一例に相当し、撮像範囲Rcが本発明の「撮像範囲」の一例に相当し、トレイTが本発明の「トレイ」の一例に相当する。
【0050】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、図7のトレイ収納動作を次のように変形してもよい。この変形例では、制御部61は、トレイ収納搬送に伴ってトレイTが収納位置Lbに到達する前に、トレイ画像Itに基づきトレイTにおける部品Eの収容状態が異常であると判断すると、実行中のトレイ収納搬送を停止させる。これによって、異常が発生したまま、トレイ収納搬送が継続されるのを防止できる。
【0051】
また、トレイカメラCtの配置を変更してもよい。図9はトレイカメラの配置の変更例を模式的に示す側面図である。図9の例では、トレイカメラCtは、トレイ収納部51のハウジング511内に配置されており、トレイカメラCtの撮像範囲Rcも、平面視においてハウジング511の内側に位置する。
【0052】
また、トレイカメラCtがトレイTの撮像に用いるセンサは、ラインセンサに限られずエリアセンサでもよい。また、トレイカメラCtとしては、トレイTの二次元画像を撮像する二次元カメラや、トレイTの三次元画像を撮像する三次元カメラを用いることができる。三次元カメラとしては、複数のセンサを用いて各センサの視差に基づき三次元形状を撮像するカメラ、一次元のレーザ変位計を用いて三次元形状を撮像するカメラ、線上の光パターンを照射して光切断により三次元形状を撮像するカメラ、あるいは位相シフト法によって三次元形状を撮像するカメラを用いることができる。
【0053】
あるいは、トレイTの撮像に基板カメラCbを用いても構わない。かかる場合では、実装ヘッド48を保持するヘッドユニット47に伴って基板カメラCbが移動する。そこで、ヘッド駆動機構Mhによってヘッドユニット47を駆動することで、供給位置Laと収納位置Lbとの間で搬送されるトレイTに基板カメラCbを上方から対向させることで、基板カメラCbによってトレイTを撮像できる。
【0054】
また、トレイTを撮像するタイミングは、実装ヘッド48が供給位置Laに位置するトレイTからの部品Eの取り出しを終えた後であればよく、例えば、供給位置Laに位置するトレイTを撮像してもよいし、収納位置Lbに位置するトレイTを撮像してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
この発明は、部品収納部の収納位置に収納されたトレイを供給位置に搬送してトレイに収容された部品を基板に実装する技術全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
4…部品実装機
48…実装ヘッド
51…トレイ収納部
53…トレイ搬送部
61…制御部
63…報知部
B…基板
Ct…トレイカメラ(撮像装置)
E…部品
Ec…エンコーダ
It…トレイ画像(画像)
La…供給位置
Lb…収納位置
Rc…撮像範囲
T…トレイ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9