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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】車両用構造部材
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/04 20060101AFI20231002BHJP
【FI】
B60R19/04 M
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020135609
(22)【出願日】2020-08-11
(65)【公開番号】P2022032110
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2022-06-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 明祥
【審査官】大宮 功次
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-265738(JP,A)
【文献】特開2016-000558(JP,A)
【文献】特開2018-075956(JP,A)
【文献】特開2017-047818(JP,A)
【文献】特開2017-007450(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺形状に形成され、当該長尺形状の長尺方向に直交する断面形状において、中央部に位置する天板部と、当該天板部の両端部からハ字状に拡開屈曲形成される縦壁部と、当該縦壁部の両端から更に外方に向けてL字状に屈曲形成されるフランジ部とにより形成されるハット型断面形状がプレス成形により形成される車両用構造部材であって、
前記縦壁部と前記フランジ部との屈曲形成角が87°~94°であり、
前記天板部の前記断面方向における幅長が、当該車両用構造部材における長手方向の両端部から中央部にかけて次第に幅狭に形成される天板部徐変構成と、
前記フランジ部の前記断面方向における幅長が、当該車両用構造部材における長手方向の両端部から中央部にかけて次第に幅広に形成されるフランジ徐変構成と、を有する、車両用構造部材。
【請求項2】
長尺形状に形成され、当該長尺形状の長尺方向に直交する断面形状において、中央部に位置する天板部と、当該天板部の両端部からハ字状に拡開屈曲形成される縦壁部と、当該縦壁部の両端から更に外方に向けてL字状に屈曲形成されるフランジ部とにより形成されるハット型断面形状がプレス成形により形成される車両用構造部材であって、
前記フランジ部の長さが11mmより長く形成されており、
前記天板部の前記断面方向における幅長が、当該車両用構造部材における長手方向の両端部から中央部にかけて次第に幅狭に形成される天板部徐変構成と、
前記フランジ部の前記断面方向における幅長が、当該車両用構造部材における長手方向の両端部から中央部にかけて次第に幅広に形成されるフランジ徐変構成と、を有する、車両用構造部材。
【請求項3】
長尺形状に形成され、当該長尺形状の長尺方向に直交する断面形状において、中央部に位置する天板部と、当該天板部の両端部からハ字状に拡開屈曲形成される縦壁部と、当該縦壁部の両端から更に外方に向けてL字状に屈曲形成されるフランジ部とにより形成されるハット型断面形状がプレス成形により形成される車両用構造部材であって、
前記縦壁部と前記フランジ部との屈曲形成角が87°~94°であり、
前記フランジ部の長さが11mmより長く形成されており、
前記天板部の前記断面方向における幅長が、当該車両用構造部材における長手方向の両端部から中央部にかけて次第に幅狭に形成される天板部徐変構成と、
前記フランジ部の前記断面方向における幅長が、当該車両用構造部材における長手方向の両端部から中央部にかけて次第に幅広に形成されるフランジ徐変構成と、を有する、車両用構造部材。
【請求項4】
請求項1~3の何れかの請求項に記載の車両用構造部材であって、
前記天板部には凹ビードが形成されており、当該天板部の前記断面方向における前記凹ビードの幅長と、前記フランジ部の前記断面方向における幅長は、当該車両用構造部材の長尺方向で見て相反関係として形成されている、車両用構造部材。
【請求項5】
請求項4に記載の車両用構造部材であって、
当該車両用構造部材は車両バンパ装置におけるバンパリインフォースメントである、車両用構造部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用構造部材に関する。特に、車両のバンパ装置に装備されるバンパリインフォースメントとして好適な車両用構造部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等車両には、各種の車両用構造部材が装備される。その一つに、長尺形状の長尺方向に直交する断面形状がハット型断面形状の構造部材がある。図14は一般的なハット型断面形状の車両用構造部材114を示す。車両用構造部材114は、天板部120と、縦壁部122と、フランジ部124とを有して構成され、通常は、プレス成形により形成される。なお、図14は断面形状を模式的に示したものである。
【0003】
図14に示すように、天板部120は断面形状における、図14で見て、上方部に位置する部位である。縦壁部122は天板部120の両端部からハ字状に下方に拡開屈曲形成される部位である。フランジ部124は当該縦壁部122の両端下方から更に外方に向けてL字状に屈曲形成される部位である。なお、天板部120には凹ビード126が形成されている。これらの各部位が、周知のプレス成形の曲げ成形あるいは絞り成形により所定形状に形成される。
【0004】
従来の一般的な車両用構造部材114は、プレス成形により形成されることから、ハット型断面形状は、プレス型の抜き勾配を確保した負角のない断面形状とされており、縦壁部122は天板部120の両端部からハ字状に下方に拡開屈曲形成されている。そして、フランジ部124は天板部120と平行に配設された形態となっている。そのため、縦壁部122とフランジ部124の断面屈曲角度α1は90度以上となる。普通にはα1は97°程度となっている。また、フランジ部124の長さは、従来、通常では、11mm以内の長さとなっている。これは、車両用構造部材114が配設される断面空間は、図14に2点鎖線の仮想線の枠Xで示すように、他の構造部材が配設される関係から比較的狭い空間に制約されることによる。
【0005】
この種の車両用構造部材114の代表例としては、車両用バンパ装置のバンパリインフォースメント114がある(下記特許文献1及び特許文献2参照)。車両用バンパ装置のバンパリインフォースメント114は車両衝突時に衝突荷重を受ける構造部材であることから、曲げ強度が要求される。
【0006】
車両用構造部材であるバンパリインフォースメント114の曲げ強度は、一般的に、CAE解析による3点曲げ解析により評価される。図12及び図13は3点曲げ解析による評価方法を示す。図12はバンパリインフォースメント114に荷重を負荷する前の状態を示し、図13は荷重を負荷した後の状態を示す。3点曲げ解析は、図12に示すように、長尺形状のバンパリインフォースメント114を、当該バンパリインフォースメント114が支持される位置(バンパ支持構造18に相当する位置(図2参照))に支持部材118を配置して支持する。そして、バンパリインフォースメント114の中央部位置の上方からインパクター150により荷重をかけて、インパクタ―150への反力を測定するものである。
【0007】
解析条件の一例を説明すると、支持部材118、118間のピッチを1000mmとし、インパクター150を10km/hで強制変位させる。この解析条件により、図12に示す状態から、インパクター150を変位させ、バンパリインフォースメント114に荷重をかける。すると、図13に示すようにインパクター150によりバンパリインフォースメント114は下方に湾曲変形する。この変形時におけるインパクタ-150に生じる反力を測定して、バンパリインフォースメント114の曲げ強度を評価する。
【0008】
その評価結果は、一般に、図11に示す「3点曲げF-S線図」で評価される。この「3点曲げF-S線図」はインパクター150の下方へのストローク(mm)に対する反力荷重(KN)で表される。上述した従来の一般的なバンパリインフォースメント114の断面形態による場合の「3点曲げF-S線図」は、図11の線図Yで示される。
【0009】
ハット断面において、この「3点曲げF-S線図」の曲げ強度の評価としては、線図における最大荷重が大きく、かつ、最大荷重に至るまでのストロークが短い方が良く、この評価を良くするための各種方策が、従来から各種提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2017-47818号公報
【文献】特表2008-542094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、バンパリインフォースメントの車両用構造部材を配設するための断面形状の配設空間は、前述もしたように隣接する他の構造部材の配置の関係から制限された空間となっている。このため、曲げ強度の向上を図るために、断面形状を大型化することは望めない。そして、構造部材の板厚を厚くすることも、車両の重量増加となり、燃費上望ましくない。
【0012】
このため、対策として、プレス成形を前提とし、質量を上げずに3点曲げ強度を向上するには、高強度材への変更が考えられるが、成形性やコストアップの問題があり望ましくない。
【0013】
而して、本発明は上述した点に鑑みて創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、プレス成形のため負角のない断面形状を前提とし、板厚を変えずに質量を上げずに曲げ強度を向上させる車両用構造部材の断面形状を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明に係る車両用構造部材は、次の手段をとる。
【0015】
本発明の第1の発明は、長尺形状に形成され、当該長尺形状の長尺方向に直交する断面形状において、中央部に位置する天板部と、当該天板部の両端部からハ字状に拡開屈曲形成される縦壁部と、当該縦壁部の両端から更に外方に向けてL字状に屈曲形成されるフランジ部とにより形成されるハット型断面形状がプレス成形により形成される車両用構造部材であって、前記縦壁部と前記フランジ部との屈曲形成角が87°~94°である、車両用構造部材である。
【0016】
本発明の第2の発明は、長尺形状に形成され、当該長尺形状の長尺方向に直交する断面形状において、中央部に位置する天板部と、当該天板部の両端部からハ字状に拡開屈曲形成される縦壁部と、当該縦壁部の両端から更に外方に向けてL字状に屈曲形成されるフランジ部とにより形成されるハット型断面形状がプレス成形により形成される車両用構造部材であって、前記フランジ部の長さが11mmより長く形成されている、車両用構造部材である。
【0017】
本発明の第3の発明は、長尺形状に形成され、当該長尺形状の長尺方向に直交する断面形状において、中央部に位置する天板部と、当該天板部の両端部からハ字状に拡開屈曲形成される縦壁部と、当該縦壁部の両端から更に外方に向けてL字状に屈曲形成されるフランジ部とにより形成されるハット型断面形状がプレス成形により形成される車両用構造部材であって、前記縦壁部と前記フランジ部との屈曲形成角が87°~94°であり、前記フランジ部の長さが11mmより長く形成されている、車両用構造部材である。
【0018】
本発明の第4の発明は、上述した第1の発明~第3の発明の何れかの車両用構造部材であって、前記天板部の前記断面方向における幅長が、当該車両用構造部材における長手方向の両端部から中央部にかけて次第に幅狭に形成される天板部徐変構成と、前記フランジ部の前記断面方向における幅長が、当該車両用構造部材における長手方向の両端部から中央部にかけて次第に幅広に形成されるフランジ徐変構成と、を有する、車両用構造部材である。
【0019】
本発明の第5の発明は、上述した第4の発明の車両用構造部材であって、前記天板部には凹ビードが形成されており、当該天板部の前記断面方向における前記凹ビードの幅長と、前記フランジ部の前記断面方向における幅長は、当該車両用構造部材の長尺方向で見て相反関係として形成されている、車両用構造部材である。
【0020】
本発明の第6の発明は、上述した第1の発明~第5の発明の何れかの車両用構造部材であって、当該車両用構造部材は車両バンパ装置におけるバンパリインフォースメントである。
【発明の効果】
【0021】
上述した本発明の手段によれば、プレス成形のため、板厚を変えずに負角のない断面形状を前提とし、質量を上げずに曲げ強度を向上させる車両用構造部材の断面形状を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】自動車車体に対するバンパ装置の配置位置を示す概略図である。
図2】バンパリインフォースメントとバンパ支持構造との配置関係を左斜め後方から見た斜視図である。
図3】第1実施形態のハット型断面形状を示す模式図である。
図4】第1実施形態のハット型断面形状が内倒れした状態を示す模式図である。
図5】第2実施形態のハット型断面形状を示す模式図である。
図6】第3実施形態のハット型断面形状を示す模式図である。
図7】第4実施形態のバンパリインフォースメントの長手方向における断面形状の変化形態を示す全体斜視図である。
図8】第4実施形態のバンパリインフォースメントを前面方向から見た全体平面図である。
図9】車両用構造部材のその他の適用個所を説明するための自動車車体のフロント部位の骨格を示す斜視図である。
図10】車両用構造部材のその他の適用個所を説明するための自動車車体の側面部位の骨格を示す斜視図である。
図11】3点曲げ解析の評価を表す「3点曲げF-S線図」である。
図12】3点曲げ解析におけるバンパリインフォースメントに荷重を負荷する前の状態を示す斜視図である。
図13】3点曲げ解析におけるバンパリインフォースメントに荷重を負荷した後の状態を示す斜視図である。
図14】従来の車両用構造部材におけるハット型断面形状を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態の車両用構造部材は、自動車等車両のバンパ装置に装備されるバンパリインフォースメントである。なお、図の説明における左右、上下、前後等の方向表示説明は、特に指定しない限り、当該図における方向を示す。また、同じ部材が左右位置にある場合に区別して表示する場合は、右側の部材には当該符号の後尾にRの符号を付して示し、左側の部材には当該符号の後尾にLの符号を付して示す。
【0024】
<バンパ装置10とバンパリインフォースメント14>
先ず、車両用構造部材であるバンパリインフォースメント14が装備される車両用バンパ装置10の配置構成を説明する。図1は自動車におけるバンパ装置10の配置位置を示す。バンパ装置10は、通常、自動車車体12の前部と後部の位置に、自動車車体12に対して幅方向に配置される。図1において、自動車車体12の前方を矢印Fで示し、後方を矢印Rで示した。
【0025】
バンパ装置10は、長尺形状のバンパリインフォースメント14と、バンパ被覆部材16と、バンパ支持構造18とからなる。バンパリインフォースメント14はバンパ装置10の強度上の心材として配設される。バンパ被覆部材16はバンパリインフォースメント14の全面を被覆するように配設される。バンパ被覆部材16はバンパ装置10の最外面に配設され、見栄えを考慮した構成とされている。通常、意匠の成形に適する樹脂製で形成される。
【0026】
バンパ支持構造18は、バンパリインフォースメント14の長手方向(自動車車体で見て幅方向)の両側部の位置で、自動車車体12のフレーム部材(図1には不図示、後掲の図9に符号36で示されている)と、バンパリインフォースメント14との間に配設される。そして、このバンパ支持構造18によりバンパリインフォースメント14で受ける衝突荷重を自動車車体12に伝え、自動車車体12で支持される。なお、以後に説明する実施形態は、自動車車体12の前部に配設されるバンパリインフォースメント14の場合を例にして説明する。
【0027】
図2はバンパリインフォースメント14とバンパ支持構造18との配置関係を左斜め後方から見た状態を示す。バンパ装置10は図1に示すような構成であることにより、自動車の正面衝突によりバンパ装置10の中央部位置に作用する衝突荷重は、先ずは、バンパ被覆部材16で受けて、これをバンパリインフォースメント14で支える。そして、バンパリインフォースメント14に作用した荷重は、バンパリインフォースメント14の両側部に配設されたバンパ支持構造18を介して自動車車体12により受けられる。
【0028】
次に、バンパリインフォースメント14における長手方向に直交する方向の断面形状の各実施形態について説明する。先ず、各実施形態に共通するバンパリインフォースメント14の断面形状の基本形態を説明する。基本形態は従来と同じ形態であり、ハット型断面形状に形成される。ハット型断面形状は、従来構造でも説明し、以後の各実施形態にも示されるように、天板部20と、縦壁部22と、フランジ部24とを有して形成され、プレス成形により形成される。プレス成形は、周知の曲げ成形、あるいは絞り成形により行われる。したがって、各実施形態とも、ハット型断面形状は、プレス成形上、負角のない断面形状として形成される。
【0029】
ハット型断面形状を図3に示す第1実施形態のハット型断面形状を用いて説明する。図3で見て、ハット型断面形状は、上方部位置に天板部20、両端部位置にフランジ部24、この天板部20とフランジ部24とを連結する縦壁部22とから形成される。縦壁部22は天板部20の両端部から下垂して形成されており、図3で見て、左側の縦壁部22Lと右側の縦壁部22Rとからなる。左側と右側の両縦壁部22L、22Rは下方に向けてハ字状に拡がる形態として拡開屈曲形成される。すなわち、図3で見て、負角が形成されない山形状の傾斜形状に形成される。
【0030】
フランジ部24は縦壁部22の下端部から左右方向の外方に向けて延伸して形成されており、左側のフランジ部24Lと右側のフランジ部24Rとからなる。左側のフランジ部24Lは左側の縦壁部22Lの下端に接続して形成され、右側のフランジ部24Rは右側の縦壁部22Rに接続して形成される。
【0031】
本実施形態のバンパリインフォースメント14は、板厚一定の通常の鋼板が用いられている。なお、天板部20には、形状的に強度を高めるために、天板部20の幅方向の中央位置に長手方向に凹ビード26が形成されている。
【0032】
<第1実施形態のハット型断面形状>
第1実施形態のハット型断面形状は図3に示される。図3に示されるように、第1実施形態のハット型断面形状の特徴とする形態は、縦壁部22とフランジ部24との屈曲形成角α2が直角(90°)に形成される構成である。なお、図3で2点鎖線の仮想線で示される枠Xは、図14の従来構成に示す枠Xと同じであり、周囲の構造部材により制約されて、ハット型断面形状の配置が許容される空間枠である。したがって、枠Xの範囲内にハット型断面形状は収めて配置する必要がある。以後の各実施形態においても同様である。
【0033】
図3において、破線で示すフランジ部24は前述した従来構成における縦壁部22に対する配置位置を示している。両者の対比から分かるように、従来構成のフランジ部24の縦壁部22に対する屈曲形成角α1(図14参照)は、フランジ部24が天板部20と平行に配設され、縦壁部22がハ字状に形成されていることから、90度以上となっている。通常では約97°程度となっている。これに対して、第1実施形態では87°~94°となるように屈曲形成してプレス成形するものであり、この点が特徴とする構成である。なお、本実施形態の図示例では直角の90°となっている。
【0034】
<第1実施形態の作用効果>
図4は第1実施形態のハット型断面形状を、図12図13に示す3点曲げ解析をした場合の、ハット型断面形状の変形状態を示す。図4に示すように、天板部20の中央部に荷重Fが作用すると、縦壁部22は内倒れ変形する。そして、この内倒れ変形により、図4で見て、縦壁部22が天板部20に対して垂直位置状態となった状態においても、縦壁部22とフランジ部24の角度α2は直角の状態を維持している。このように、内倒れして縦壁部22が垂直状態になった際のフランジ部24とのなす屈曲形成角が直角であることにより、荷重Fの入力方向に対して、フランジ部24は直角状態で荷重を受けることになり、曲げ強度の向上を図ることができる。
【0035】
第1実施形態のハット型断面形状によれば、図11に示す「3点曲げF-S線図」は、線図H1で示される。線図H1によれば、従来の一般的なハット型断面形状における線図Yに対して、第1実施形態の最大荷重は大きくなっていることが分かる。
【0036】
<第2実施形態のハット型断面形状>
第2実施形態のハット型断面形状は図5に示される。図5に示されるように、第2実施形態のハット型断面形状の特徴とする形態は、フランジ部24の長さが従来の11mmより長く形成される構成である。図5に示す実施形態の場合のフランジ部24の長さは21mmであり、従来より10mm長く形成されている。なお、フランジ部24の長さは11mm以上~30mm以下が好ましい。
【0037】
第2実施形態のフランジ部24は長く形成される関係から、2点鎖線の仮想線で示される枠X内に配設されるハット型断面形状は、その分、天板部20の幅長が短く形成される。従来の一般的なハット型断面形状は破線で示されており、破線と実線で示す違いから分かるように、本実施形態における天板部20の幅長の縮少分は、従来の凹ビード26の幅長または、天板部20の幅長を縮小する事により吸収する構成となっている。
【0038】
<第2実施形態の作用効果>
第1実施形態のハット型断面形状のフランジ部24の長さは、従来の通常の長さ11mmより長く形成される。これにより、荷重作用時にハット型断面形状が内倒れ変形する際に、最も変位するフランジ部先端の動きを低減させることができて、すなわち、縦壁部22の内倒れを低減させることができて、曲げ強度の向上を図ることができる。
【0039】
第2実施形態のハット型断面形状によれば、図11に示す「3点曲げF-S線図」は、線図H2で示される。線図H2によれば、従来の一般的なハット型断面形状における線図Yに対して、最大荷重に至るストローク線図の立ち上がりが早いことが分かる。
【0040】
<第3実施形態のハット型断面形状>
第3実施形態のハット型断面形状は図6に示される。図6に示されるように、第3実施形態のハット型断面形状の特徴とする形態は、縦壁部22とフランジ部24との屈曲形成角α2が87°~94°であり、フランジ部24の長さが11mmより長く形成される構成である。すなわち、この第3実施形態のハット型断面形状の構成は、上述した第1実施形態と第2実施形態を組合わせた構成である。なお、本実施形態の図示例では屈曲形成角α2は直角の90°となっている。
【0041】
図6には枠X内に、実線で示すハット型断面形状と、破線で示す従来の一般的なハット型断面形状が示されている。この実線と破線で示すハット型断面形状の違いから、第3実施形態の構成は、縦壁部22とフランジ部24との屈曲形成角α2が直角であり、フランジ部24の長さが従来より長く形成される構成であることが明らかである。
【0042】
<第3実施形態の作用効果>
第3実施形態のハット型断面形状の構成は、上述した第1実施形態と第2実施形態を組合わせた構成であることから、上述した第1実施形態と第2実施形態の作用効果が相乗されて曲げ強度の向上が図られる。したがって、図11に示す「3点曲げF-S線図」は、線図H3で示される。線図H3によれば、従来の一般的なハット型断面形状における線図Yに対して、最大荷重は第1実施形態と同様に大きくなっている。そして、最大荷重が得られるストローク線図の立ち上がりも、第2実施形態と同様の立ち上がりとなっており、従来の一般的なハット型断面形状の場合に比べ急激な立ち上がりのストローク線図となっている。
【0043】
<第4実施形態(バンパリインフォースメント14の長手方向における断面形状の変化形態)>
次に、第4実施形態について説明する。第4実施形態はバンパリインフォースメント14の長手方向における断面形状の変化形態である。図7および図8に第4実施形態のバンパリインフォースメント14が示される。図7はバンパリインフォースメント14の全体を示す斜視図であり、図8はバンパリインフォースメント14の全体を前面方向から見た平面図である。
【0044】
第4実施形態は、バンパリインフォースメント14の天板部20が天板部徐変構成で形成され、フランジ部24がフランジ徐変構成で形成される構成である。天板部徐変構成は、天板部20の断面方向における幅長Tが、バンパリインフォースメント14の長手方向の両端部から中央部にかけて次第に幅狭に形成される構成である。図7及び図8で見て、天板部20の幅長Tは端部位置がT1とされており、中央部位置がT2とされており、T1位置からT2位置に向けて幅長が漸減する形態として形成されている。
【0045】
フランジ徐変構成はフランジ部24の断面方向における幅長Kが、バンパリインフォースメント14の長手方向の両端部から中央部にかけて次第に幅広に形成される構成である。図7及び図8で見て、フランジ部24の幅長Kは端部位置がK1とされており、中央部位置がK2とされており、K1位置からK2位置に向けて幅長が漸増する形態として形成されている。
【0046】
なお、第4実施形態は、前述した第1実施形態乃至第3実施形態のハット型断面形状を有して構成される。そして、天板部20には凹ビード26が形成されており、凹ビード26の断面方向における幅長Bと、フランジ部24の断面方向における幅長Kは、バンパリインフォースメント14の長尺方向で見て相反関係として形成されている。すなわち、凹ビード26の幅長Bが幅狭の場合には、フランジ部24の幅長Kを幅広とし、逆に、凹ビード26の幅長Bが幅広の場合には、フランジ部24の幅長Kを幅狭としている。これにより、バンパリインフォースメント14のハット型断面形状を長手方向の範囲において略一定の断面空間で形成するようにしている。
【0047】
すなわち、図7および図8において、長手方向における端部位置においては、凹ビード26の幅長B1が幅広の場合には、フランジ部24の幅長K1は幅狭に形成される。そして、中央部位置において、凹ビード26の幅長B2が幅狭の場合には、フランジ部24の
は幅長K2は幅広に形成される。この凹ビード26の幅長Bとフランジ部24の幅長Kとの関係を、請求項4では当該車両用構造部材の長尺方向で見て相反関係として形成されている、として表現した。

【0048】
第4実施形態によれば、バンパリインフォースメント14の長手方向における断面形状の空間を大きくすることなく、一定の空間形状の大きさで形成することができる。
【0049】
<その他の実施形態>
以上、本発明の特定の実施形態について説明したが、本発明は、その他各種の形態でも実施できる。
【0050】
例えば、上記実施形態の車両用構造部材は、自動車等車両のバンパ装置10に装備されるバンパリインフォースメント14であったが、図9及び図10に示す自動車の各種構造部材にも適用可能である。図9に図示する、センターピラー28、ドアベルトラインリインフォースメント30、ロッカーアウターリインフォースメント32、及び、図10に図示するドアサイドインパクトプロテクションビーム34等にも適用可能である。
【0051】
なお、上述した各実施形態の車両用構造部材は、テーラード接合された車両用構造部材にも適用可能である。
【0052】
また、上述した各実施形態においては、天板部20に形成する凹ビード26の深さは、特に説明しなかったが、長さ方向に一定の深さ形態であってもよいし、長手方向に深さが変化する形態であってもよい。
【0053】
また、凹ビード26は断面方向において、1箇所のみの配置形態であったが、深さの浅いビードを別に天板部20の面に形成した形態であってもよい。
【0054】
<「課題を解決するための手段」に記載した各発明の作用効果>
なお、最後に上述の「課題を解決するための手段」における各発明に対応する上記実施形態の作用効果を付記しておく。
【0055】
先ず、第1の発明によれば、車両用構造部材の縦壁部とフランジ部との屈曲形成角は直角に形成されて配設される。このため、天板部へ荷重が作用して、ハ字状の縦壁部が内倒れ変形して、縦壁部が荷重作用方向と同方向になった際に最大荷重を受けるが、この際のフランジ部の角度が90°であるので、従来より曲げ強度の向上を図ることができる。
【0056】
次に、第2の発明によれば、車両用構造部材のフランジ部の長さが11mmより長く形成される。これにより、フランジ部の長さが従来のフランジ部の長さより長くなるので、天板部へ荷重が作用して、ハ字状の縦壁部が内倒れ変形する際に、最も変位するフランジ部先端の動きを低減させることができて、従来より曲げ強度の向上を図ることができる。
【0057】
次に、第3の発明によれば、車両用構造部材の縦壁部とフランジ部との屈曲形成角が直角であり、フランジ部の長さが11mmより長く形成される。すなわち、第1の発明と第2の発明とを組み合わせた構成である。したがって、第1の発明と第2の発明の作用効果を同時に得ることができて、従来より曲げ強度の向上をより図ることができる。
【0058】
次に、第4の発明によれば、車両用構造部材は、長手方向の両端部から中央部にかけて幅狭に形成される天板部徐変構成と、長手方向の両端部から中央部にかけて幅広に形成されるフランジ徐変構成とを有する。これにより、車両用構造部材の長手方向における断面形状の空間を大きくすることなく、一定の空間形状の大きさで形成することができる。
【0059】
次に、第5の発明によれば、第4の発明における車両用構造部材は、天板部には凹ビードが形成されており、当該天板部の断面方向における凹ビードの幅長と、フランジ部の断面方向における幅長は、当該車両用構造部材の長尺方向で見て相反関係として形成される。これにより、第4の発明を好適に実施することができる。
【0060】
次に、第6の発明によれば、車両用構造部材は車両バンパ装置におけるバンパリインフォースメントに好適に適用される。
【符号の説明】
【0061】
10 バンパ装置
12 自動車車体
14 バンパリインフォースメント(車両用構造部材)
16 バンパ被覆部材
18 バンパ支持構造
20 天板部
22 縦壁部
24 フランジ部
26 凹ビード
28 センターピラー
30 ドアベルトラインリインフォースメント
32 ロッカーアウターリインフォースメント
34 ドアサイドインパクトプロテクションビーム
36 フレーム部材
H1 第1実施形態の3点曲げF-S線図
H2 第2実施形態の3点曲げF-S線図
H3 第3実施形態の3点曲げF-S線図
Y 従来の形態における3点曲げF-S線図
F 前方
R 後方
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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