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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】2液型コーティング組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/04 20060101AFI20231002BHJP
   C09D 175/06 20060101ALI20231002BHJP
   C09D 175/08 20060101ALI20231002BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20231002BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20231002BHJP
   C08G 18/42 20060101ALI20231002BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
C09D175/04
C09D175/06
C09D175/08
C09D7/63
C09D7/61
C08G18/42
B29C45/00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020180759
(22)【出願日】2020-10-28
(65)【公開番号】P2022071678
(43)【公開日】2022-05-16
【審査請求日】2023-08-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】川合 貴史
(72)【発明者】
【氏名】神野 修輔
【審査官】堀 洋樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-190958(JP,A)
【文献】特開2008-184522(JP,A)
【文献】特開2017-185480(JP,A)
【文献】特許第6250220(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
C08G 18/00-18/87
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤および硬化剤を含む2液型コーティング組成物であって、
前記主剤は、ポリオール、硬化触媒および光輝性顔料の粒子を含み、
前記硬化剤は、イソシアヌレート化合物を含み、
前記ポリオールの水酸基価は、300mgKOH/g以上1000mgKOH/g以下であり、
前記硬化触媒の含有量は、前記ポリオール100質量部に対して0.25質量部以上10質量部以下であり、
溶媒の含有量は、30質量%以下であり、
前記光輝性顔料の粒子の凝集体は、前記光輝性顔料の粒子全体の20質量%以下である、2液型コーティング組成物。
【請求項2】
前記イソシアヌレート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体を含む、請求項1に記載の2液型コーティング組成物。
【請求項3】
前記ポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよびポリカーボネートポリオールよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1または2に記載の2液型コーティング組成物。
【請求項4】
前記イソシアネート化合物のイソシアネート基当量と前記ポリオールの水酸基当量との比:NCO/OHは、0.5/1以上2/1以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の2液型コーティング組成物。
【請求項5】
前記硬化触媒は、Bi、Zn、Al、ZrおよびSnよりなる群から選択される金属元素を含む有機金属触媒を少なくとも1種含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の2液型コーティング組成物。
【請求項6】
インモールドコーティング用である、請求項1~5のいずれか一項に記載の2液型コーティング組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2液型コーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
工業製品などの表面には、種々の役割を持つ塗膜が形成されている。塗膜により、被塗物が保護されると同時に、美しい外観および優れた意匠が付与される。塗膜は、一般的に、有機溶媒および/または水性溶媒などの溶媒を含む塗料組成物をスプレー塗装した後、乾燥させることにより形成される。しかし、近年、スプレー塗装時の溶媒の飛散や、乾燥工程における溶媒の大気放出、COの発生等が問題視されつつある。さらに、スプレー塗装は乾燥工程を必須とするため、生産性が低下し易い。
【0003】
そこで、スプレー塗装に代わる塗装方法として、金型内で塗装を行うインモールドコーティングが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002-292638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、光輝感に優れるとともに、インモールドコーティングに適した2液型コーティング組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は下記態様を提供する。
[1]
主剤および硬化剤を含む2液型コーティング組成物であって、
前記主剤は、ポリオール、硬化触媒および光輝性顔料の粒子を含み、
前記硬化剤は、イソシアヌレート化合物を含み、
前記ポリオールの水酸基価は、300mgKOH/g以上1000mgKOH/g以下であり、
前記硬化触媒の含有量は、前記ポリオール100質量部に対して0.25質量部以上10質量部以下であり、
溶媒の含有量は、30質量%以下であり、
前記光輝性顔料の粒子の凝集体は、前記光輝性顔料の粒子全体の20質量%以下である、2液型コーティング組成物。
【0007】
[2]
前記イソシアヌレート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体を含む、上記[1]に記載の2液型コーティング組成物。
【0008】
[3]
前記ポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよびポリカーボネートポリオールよりなる群から選択される少なくとも1種である、上記[1]または[2]に記載の2液型コーティング組成物。
【0009】
[4]
前記イソシアネート化合物のイソシアネート基当量と前記ポリオールの水酸基当量との比:NCO/OHは、0.5/1以上2/1以下である、上記[1]~[3]のいずれか一項に記載の2液型コーティング組成物。
【0010】
[5]
前記硬化触媒は、Bi、Zn、Al、ZrおよびSnよりなる群から選択される金属元素を含む有機金属触媒を少なくとも1種含む、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の2液型コーティング組成物。
【0011】
[6]
インモールドコーティング用である、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の2液型コーティング組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光輝感に優れるとともに、インモールドコーティングに適した2液型コーティング組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
光輝感を有する塗膜(以下、光輝性塗膜と称する場合がある。)が提案されている。光輝性塗膜は、光輝性顔料を含む塗料により形成される。光輝性顔料は、微細な粒子として塗料に配合される。光輝性塗膜の発色性は、光輝性顔料の分散性に影響される。光輝性顔料が塗膜中で均一に分散し配列していると、光輝性塗膜の発色性が向上し、光輝感が得られる。しかし、インモールドコーティングのように溶媒量の少ない塗料を用いる場合、光輝性顔料は特に凝集し易く、分散性が低下し易い。
【0014】
本実施形態では、光輝性顔料の粒子の凝集体を、光輝性顔料の粒子の20質量%以下にする。つまり、光輝性顔料の粒子を高度に分散させる。その結果、光が塗膜によって反射され易くなって塗膜の発色性が向上し、優れた光輝感が得られる。
【0015】
本実施形態に係る2液型コーティング組成物は、インモールドコーティング用として好適に用いられる。ただし、本実施形態に係る2液型コーティング組成物を、インモールドコーティング以外のコーティング方法において用いることを排除するものではない。例えば、2液型コーティング組成物は、オープンプレスコーティングに適用され得る。
【0016】
本実施形態に係る2液型コーティング組成物は、塗装物品の最外に位置する塗膜や、被塗物との間に介在する中塗り塗膜および/またはベースコート塗膜の材料として用いられ得る。本実施形態に係る2液型コーティング組成物により塗装物品の最外に位置する塗膜を形成する場合、被塗物と当該塗膜との間に他の塗膜(例えば、プライマー層)を設けてもよい。
【0017】
[2液型コーティング組成物]
本実施形態に係る2液型コーティング組成物は、主剤および硬化剤を含む。主剤は、ポリオールと硬化触媒と光輝性顔料の粒子とを含む。硬化剤は、イソシアヌレート化合物を含む。主剤および硬化剤を混合することにより、ポリオールとイソシアヌレート化合物とが反応して、硬化塗膜が得られる。主剤および/または硬化剤はそれぞれ、混合前に加温および/または真空脱気されてもよい。これにより、両者を混合して得られる2液型コーティング組成物に含まれる水分量が少なくなって、得られる塗膜の外観が向上し易くなる。
【0018】
(主剤)
主剤は、ポリオール、硬化触媒および光輝性顔料の粒子を含む。ポリオールは、塗膜形成樹脂である。ポリオールは、例えば加熱によって硬化剤と反応して、三次元の硬化塗膜を形成する。以下、2液型コーティング組成物に含まれるポリオールを含む硬化性の樹脂を、塗膜形成樹脂と総称する場合がある。
【0019】
以下、各成分について詳述する。
〈光輝性顔料〉
光輝性顔料は、塗膜に光輝感を与える。粒子状の光輝性顔料(以下、光輝性粒子と称する場合がある。)が塗膜中に均一に配列することにより、光輝感は高まる。
【0020】
本実施形態に係る2液型コーティング組成物において、光輝性粒子の多くは一次粒子として分散している。具体的には、2液型コーティング組成物において、光輝性粒子の凝集体の占有率は、光輝性粒子全体の20質量%以下である。
【0021】
凝集体は、複数の光輝性粒子(一次粒子)が凝集することにより形成される、いわゆる二次粒子である。二次粒子が少ないことは、光輝性粒子が高度に分散していることを示す。2液型コーティング組成物中において、光輝性粒子が高度に分散していると、得られる塗膜中において、光輝性粒子は均一に配置され、発色性が向上する。凝集体の全光輝性粒子に占める割合は、10質量%以下が好ましく、0%がより好ましい。
【0022】
2液型コーティング組成物により形成される硬化塗膜あるいは薄膜状の主剤の拡大画像から算出される全光輝性粒子に占める凝集体の面積割合を、2液型コーティング組成物に含まれる全光輝性粒子に占める凝集体の質量割合とみなしてよい。
【0023】
凝集体の上記面積割合は、次のようにして求められる。まず、試料(例えば、主剤をプレパラートで挟んで得られる。)をビデオマイクロスコープで観察し、その観察視野(例えば、倍率500倍以上1500倍以下程度)において、外縁が明瞭に確認できる光輝性粒子の総面積を算出する。次に、同じ観察視野内の全光輝性粒子から、外縁が明瞭に確認できる凝集体を選出して、その総面積を算出する。凝集体の総面積を光輝性粒子の総面積で除すことにより、全光輝性粒子に占める凝集体の面積割合が求められる。
【0024】
一次粒子径が大きい光輝性粒子は、塗料を調製する際、撹拌シェアがかかり易く、分散性が高くなり易い。そのため、光輝性粒子、特に、表面処理されていない光輝性粒子(以下、未処理光輝性粒子と称する場合がある。)の一次粒子径は、大きい方が望ましい。未処理光輝性粒子の一次粒子径は特に限定されず、その材質に応じて適宜設定される。未処理光輝性粒子の一次粒子径は、例えば、20μm以上である。この場合、分散性が向上して、粒子同士の凝集がより抑制され易い。未処理光輝性粒子の一次粒子径は、25μm以上が好ましく、28μm以上がより好ましい。
【0025】
表面処理された光輝性粒子(以下、処理光輝性粒子と称する場合がある。)の一次粒子径は、未処理光輝性粒子より小さくてもよい。処理光輝性粒子の一次粒子径は特に限定されず、その材質に応じて適宜設定される。処理光輝性粒子の一次粒子径は、例えば、20μmより小さくてもよい。表面処理(代表的には、樹脂被覆または金属被覆)された光輝性粒子同士は、物理的な距離が大きくなり易く、また、表面処理剤の作用によって凝集が抑制され易いためである。処理光輝性粒子の一次粒子径は、3μm以上であってよい。これにより、粒子同士の凝集がより抑制され易い。処理光輝性粒子の一次粒子径は、5μm以上が好ましく、6μm以上がより好ましい。
【0026】
2液型コーティング組成物に存在する凝集体の径(二次粒子径)は特に限定されないが、光輝感の観点から小さいほど好ましい。
【0027】
各粒子の径もビデオマイクロスコープから算出できる。上記と同様に観察視野を設定して、光輝性粒子(例えば、アルミニウム粒子)の一次粒子を選出する。一次粒子の面積と同じ面積を有する円(相当円)の直径を、その一次粒子の直径とみなす。すべての一次粒子の直径を算出し、これらの平均値を、一次粒子の粒子径とする。凝集体の粒径も同様にして算出できる。
【0028】
光輝性粒子の含有量は特に限定されない。光輝性粒子の濃度、すなわち、2液型コーティング組成物の固形分100質量%に対する光輝性粒子の質量割合(PWC:質量%)は、例えば、0.5質量%以上20質量%以下であってよい。光輝性粒子のPWCは、3質量%以上が好ましい。光輝性粒子のPWCは、15質量%以下が好ましい。2液型コーティング組成物の固形分は、溶媒を除く全成分である。
【0029】
光輝性顔料としては、金属粒子(アルミニウム、クロム、金、銀、銅、真鍮、チタン、ニッケル、ニッケルクロム、ステンレス等)、マイカ、金属酸化物、パール顔料、金属あるいは金属酸化物で被覆されたガラスフレーク、金属酸化物で被覆されたシリカフレーク、グラファイト、ホログラム顔料およびコレステリック液晶ポリマー挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0030】
〈他の顔料〉
主剤は、光輝性顔料以外の他の顔料を含んでよい。
他の顔料としては、例えば、着色顔料および体質顔料が挙げられる。
【0031】
着色顔料としては、例えば、アゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料および金属錯体顔料等の有機系着色顔料:黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラックおよび二酸化チタン等の無機系着色顔料が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0032】
体質顔料として、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレーおよびタルクが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。着色顔料および体質顔料の含有量は特に限定されず、顔料の種類、目的等に応じて適宜設定すればよい。
【0033】
〈ポリオール〉
ポリオールは、塗膜形成樹脂である。ポリオールは、例えば加熱によって硬化剤と反応して、三次元の硬化塗膜を形成する。ポリオールは、1分子あたり水酸基を2またはそれ以上有する。これにより、得られる塗膜の硬度が高くなり易い。ポリオールは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0034】
主剤は、1分子あたり3以上の水酸基を有するポリオール(A1)と、1分子あたり2つの水酸基を有するポリオール(A2)とを含むことが好ましい。ポリオール(A1)とポリオール(A2)との割合は特に限定されない。ポリオール(A2)の割合は、ポリオール(A1)およびポリオール(A2)の合計の50質量%以下であってよく、40質量%以下であってよく、30質量%以下であってよい。
【0035】
ポリオールの水酸基価は、300mgKOH/g以上1000mgKOH/g以下である。ポリオールの水酸基価が上記範囲内であることにより、主剤および硬化剤を混合した際、ポリオールとイソシアネート化合物との反応速度が大きくなる。そのため、塗装品を金型から速やかに離型させることができて、生産性が向上する。また、反応の際、ある程度の反応熱が生じるため、特に樹脂基材に対する塗膜の密着性が向上し易くなる。
【0036】
2種以上のポリオールが含まれる場合、各ポリオールの水酸基価および質量割合に基づいて算出される、みかけの水酸基価が300mgKOH/g以上1000mgKOH/g以下であればよい。すなわち、主剤は、水酸基価が300mgKOH/g未満のポリオールおよび/または水酸基価が1000mgKOH/gを超えるポリオールを含んでよい。
【0037】
ポリオールの水酸基価(みかけの水酸基価を含む。以下、同じ。)は、350mgKOH/g以上がより好ましく、500mgKOH/g以上がさらに好ましい。ポリオールの水酸基価は、800mgKOH/g以下がより好ましく、700mgKOH/g以下がさらに好ましい。
【0038】
ポリオールの種類は特に限定されない。ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリレートポリオールおよび多価アルコールが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、ポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールおよびポリカーボネートポリオールよりなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0039】
ポリエステルポリオールは、分岐構造を有することが好ましい。分岐構造を有するポリエステルポリオールは、例えば、3価またはそれ以上の多価アルコール化合物に、2またはそれ以上の多価カルボン酸を反応させ、必要に応じて上記反応を繰り返すことにより調製される。
【0040】
ポリエステルポリオールの市販品としては、例えば、デスモフェンVPLS2249/1(住化コベストロウレタン株式会社製)、デスモフェン800(住化コベストロウレタン株式会社製)、デスモフェンXP2488(住化コベストロウレタン株式会社製)、クラレポリオールP-510(株式会社クラレ製)およびクラレポリオールF-510(株式会社クラレ製)が挙げられる。
【0041】
ポリエーテルポリオールは、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールおよびそれらのブロック体が挙げられる。ポリエーテルポリオールを、多価アルコール化合物に、エチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドを付加することによって、調製してもよい。上記手順により、1分子あたりのOH官能基数が2価、3価またはそれ以上であるポリエーテルポリオールを調製することができる。
【0042】
ポリエーテルポリオールの市販品としては、例えば、三洋化成工業株式会社製サンニックスシリーズが挙げられる。具体的には、サンニックスGP-250、サンニックスGP-400、サンニックスPP-200およびサンニックスGP-600などが挙げられる。
【0043】
ポリカーボネートポリオールは、例えば、多価ポリオールに炭酸ジメチルを反応させることによって、調製することができる。
【0044】
ポリカーボネートポリオールの市販品としては、例えば、デュラノールT5650E(旭化成株式会社製)、C-590(株式会社クラレ製)およびETERNACOLL PH-50(宇部興産株式会社製)が挙げられる。
【0045】
多価アルコールとして、例えば、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、プロピレングリコール、テトラメチレングリコールおよびペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0046】
ポリオールの重量平均分子量(Mw)は、特に限定されない。ポリオールのMwは、水酸基価等に応じて、適宜設定すればよい。
【0047】
主剤は、平均水酸基数が3未満のポリオールを含んでもよい。主剤は、ポリオール以外の他の塗膜形成樹脂を含んでもよい。塗膜形成樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂およびカルボジイミド樹脂が挙げられる。他の塗膜形成樹脂は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0048】
〈硬化触媒〉
硬化触媒は、硬化反応を促進する。硬化触媒は特に限定されない。促進効果の観点から、硬化触媒としては、例えば、Bi、Zn、Al、ZrおよびSnよりなる群から選択される金属元素を含む有機金属触媒の少なくとも1種が好ましい。なかでも、Bi、Zn、AlおよびZrよりなる群から選択される金属元素を含む有機金属触媒の少なくとも1種が好ましい。
【0049】
Biを含む有機金属触媒として、例えば、ビスマスカルボン酸およびその塩が挙げられる。Znを含む有機金属触媒として、例えば、亜鉛錯体触媒が挙げられる。Alを含む有機金属触媒として、例えば、アルミニウム錯体触媒が挙げられる。Zrを含む有機金属触媒として、例えば、ジルコニウムキレート触媒が挙げられる。Snを含む有機金属触媒として、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテートなどのジアルキルスズジカルボキシレート;ジブチルスズオキサイドなどのスズオキサイド化合物;2-エチルヘキサン酸スズなどのスズカルボン酸塩が挙げられる。
【0050】
Biを含む有機金属触媒の市販品としては、例えば、K-KAT 348(楠本化成株式会社製)、K-KAT XK-640(楠本化成株式会社製)が挙げられる。Zrを含む有機金属触媒の市販品としては、例えば、K-KAT 4205、K-KAT XC-9213、K-KAT XC-A209、K-KAT 6212(以上、楠本化成株式会社製)が挙げられる。Alを含む有機金属触媒の市販品としては、例えば、K-KAT 5218(楠本化成株式会社製)が挙げられる。Znを含む有機金属触媒の市販品としては、例えば、K-KAT XK-314、K-KAT XK-635、K-KAT XK-639、K-KAT XK-620(以上、楠本化成株式会社製)が挙げられる。Snを含む有機金属触媒の市販品としては、例えば、TVS TIN LAU(日東化成株式会社製)が挙げられる。
【0051】
硬化触媒の含有量は、例えば、塗膜形成樹脂100質量部に対して0.25質量部以上10質量部以下である。これにより、塗膜形成樹脂の硬化反応が速やかに進行する。よって、インモールドコーティングによる層形成により、外観および物性に優れた塗膜が得られる。硬化触媒の含有量は、塗膜形成樹脂100質量部に対して0.5質量部以上がより好ましい。硬化触媒の含有量は、塗膜形成樹脂100質量部に対して7質量部以下がより好ましい。
【0052】
(硬化剤)
硬化剤により、ポリオール等の塗膜形成樹脂が架橋されて、得られる塗膜の耐食性および耐久性が向上する。
【0053】
硬化剤は、イソシアヌレート化合物を含む。イソシアヌレート化合物は、イソシアネート化合物の三量体であって、環構造を有する。
【0054】
イソシアネート化合物は特に限定されず、2液反応型組成物の硬化剤として公知のものが用いられる、イソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、メタキシリレンジイソシアネート(MXDI)等の芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、テトラメチレンジイソシアネート、2-メチル-ペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチル-ペンタン-1,5-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート(IPDI)、シクロヘキシルジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートを挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種またはそれ以上を併用してもよい。
【0055】
なかでも、粘度が比較的低い点で、脂肪族ジイソシアネートが好ましく、HDIがより好ましい。これらのイソシアネートの三量体は、ポリオールとの反応性が特に高い。そのため、インモールドコーティングによるコーティング層形成方法に、より好適に用いられる。
【0056】
イソシアネート化合物のイソシアネート基当量とポリオールの水酸基当量との比:NCO当量/OH当量は、0.5/1以上2/1以下が好ましく、0.9/1以上1.2/1以下がより好ましい。当量比が上記範囲内であると、硬化性が高く、特にインモールドコーティングによるコーティング層形成用として好適に用いられる。
【0057】
硬化剤は、イソシアヌレート化合物以外の他の硬化剤を含んでいてよい。他の硬化剤としては、例えば、アミノ樹脂、上記イソシアネート化合物の単量体またはダイマー、上記イソシアネート化合物のビウレット体、上記イソシアネート化合物のブロック化物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0058】
硬化剤の含有量は、例えば、塗料組成物の樹脂固形分の35質量%以上90質量%以下である。硬化剤の上記含有量は、45質量%以上が好ましく、55質量%以上がより好ましい。硬化剤の上記含有量は、85質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。
【0059】
(溶媒)
溶媒の含有量は、30質量%以下である。本実施形態によれば、このように溶媒が少量であって粘度の高い組成物中においても、光輝性粒子の凝集は抑制される。そのため、光輝感を有する塗膜を、インモールドコーティングによって形成することができる、溶媒の含有量は、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、0%であってよい。
【0060】
溶媒は特に限定されない。溶媒は、通常、有機溶媒である。有機溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのエステル系溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、メチルメトキシブタノール、エトキシプロパノール、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコール-t-ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、メトキシブタノール、プロピレングリコールモノブチルエーテルなどのエーテル系溶媒;メタノール、エタノール、ブタノール、プロピルアルコールなどのアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;スワゾール、シェルゾール、ミネラルスピリットなどの脂肪族炭化水素系溶剤;キシレン、トルエン、ソルベッソ-100(S-100)、ソルベッソ-150(S-150)などの芳香族系溶剤が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0061】
〈光安定剤〉
主剤は、光安定剤を含んでもよい。これにより、耐候性が向上するため、2液型コーティング組成物は、外装体の塗装に好ましく用いられる。光安定剤は、紫外線によって生じるアルキルラジカル(R・)やパーオキシラジカル(ROO・)を効率よくトラップする。光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系化合物(HALS)、ヒンダードフェノール系化合物が挙げられる。なかでも、HALSが好ましい。
【0062】
HALSの構造は特に限定されない。HALSは、例えば、分子内に、1以上のピペリジン骨格(代表的には、2,2,6,6-テトラアルキルピペリジン骨格)を有する。このようなHALSは、1種を単独で、2種以上を組み合わせて用いられる。
【0063】
好ましいHALSとしては、具体的には、HOSTAVIN(登録商標)3058(クラリアントケミカルズ株式会社製、pKb=11.4、分子量449、N-CO-R型)、Tinuvin(登録商標)123(以下、BASF社製、pKb=9.6、分子量737、N-OR型)、Tinuvin152(pKb=7.0,9.4、分子量757、N-OR型)、Tinuvin5100(pKb=9.6)が挙げられる。
【0064】
好ましいヒンダードフェノール系光安定剤としては、具体的には、Irganox 1010、Irganox 1035、Irganox 1076、Irganox 1135、Irganox 1726、Irganox 1035、Irganox 1076、Irganox 1135、Irganox 1726(いずれもBASF社製)が挙げられる。
【0065】
〈紫外線吸収剤〉
主剤は、紫外線吸収剤を含んでもよい。これにより、耐候性が向上する。紫外線吸収剤(UVA)は、光安定剤に替えて、あるいは光安定剤とともに用いられる。なかでも、UVAと光安定剤とを併用することが好ましい。これにより、耐候性はより向上する。
【0066】
UVAとしては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物およびベンゾエート系化合物が挙げられる。UVAとしては、具体的には、Tinuvin326、Tinuvin384-2、Tinuvin900、Tinuvin400、Tinuvin405、Tinuvin460、Tinuvin477、Tinuvin479(いずれもBASF社製)が挙げられる。
【0067】
(その他)
2液型コーティング組成物は、必要に応じて他の成分を含んでもよい。他の成分としては、例えば、コーティング分野および塗料分野において通常用いることができる添加剤が挙げられる。具体的には、各種顔料、表面調整剤、粘性調整剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、消泡剤、触媒助剤、防錆剤、沈降防止剤、分散剤等が挙げられる。 これらの添加剤は、主剤に添加されてもよいし、硬化剤に添加されてもよい。添加剤の量は特に限定されず、必要に応じて適宜設定できる。
【0068】
[インモールドコーティング]
インモールドコーティングは、金型内でコーティング層を形成する方法である。インモールドコーティングにおいて、塗装体は、被塗物の表面と、金型のキャビティ表面および/またはコア表面との間に、上記2液型コーティング組成物を注入する工程と、注入された2液型コーティング組成物を硬化する工程と、を備える方法により製造される。硬化工程は、金型内で行われてもよい。
【0069】
インモールドコーティングによれば、金型内でコーティング層が形成されるため、被塗物とコーティング層との間にゴミ等が付着することや、コーティング層の内部にゴミ等が混入することが抑制される。また、被塗物の表面状態の影響を受け難いため、金型の模様を高精度でコーティング層に転写することができる。加えて、コーティング組成物に含まれる溶媒量が少ないため、溶媒を除去するための乾燥工程を要せず、生産性が向上する。さらに、ダレやワキの抑制された厚いコーティング層を形成することができる。
【0070】
樹脂製の被塗物もまた、同じ金型内で成形されてもよい。この場合、塗装体は、金型内で樹脂製の被塗物を成形する工程と、得られた被塗物の表面と、金型のキャビティ表面および/またはコア表面との間に、上記2液型コーティング組成物を注入する工程と、注入された2液型コーティング組成物を硬化する工程と、を備える方法により製造される。硬化工程は、金型内で行われてもよい。
【0071】
金型に注入される際の2液型コーティング組成物の粘度は、100mPa・s以上500mPa・s以下が好ましい。必要に応じて、2液型コーティング組成物の主剤および/または硬化剤を加温して、粘度を調節してもよい。
【0072】
樹脂製の被塗物は、熱可塑性樹脂であってもよく、熱硬化性樹脂であってもよい。上記樹脂製の被塗物を構成する樹脂として、例えば、ポリプロピレン(PP)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリカーボネート(PC)/ABS樹脂、PC/アクリロニトリル・エチレン-プロピレン-ジエン・スチレン共重合体(AES樹脂)、AES樹脂、PC/ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、PC/ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、PC樹脂、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂、GF-PBT樹脂、GF-ポリアミド(PA)樹脂、ノリル・GTX樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC樹脂)、アクリロニトリル・スチレン・アクリル(ASA)樹脂、炭素繊維強化プラスチック(CFRP樹脂)、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP樹脂)が挙げられる。
【0073】
上記2液型コーティング組成物によって形成されるコーティング層は、優れた光輝感を備える。そのため、得られる塗装物品は、例えば、自動車の外装、建築用途に好適に用いられる。特に、得られる塗装物品は、ルーフレール等の自動車部品に好適に用いられる。
【実施例
【0074】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、質量基準による。
【0075】
[実施例1]
ポリオール(サンニックス GP-250、三洋化成工業株式会社製、水酸基価670mgKOH/g、平均水酸基数3)100部、硬化触媒(K-KAT XK-640、楠本化成株式会社製、Biを含む有機金属触媒)3部(有効成分量)、光輝性粒子(シルビーズ M-300CP、旭化成株式会社製、未処理アルミニウム粒子、一次粒子径30μm)を混合して、主剤を調製した。表中、光輝性粒子の量は、2液型コーティング組成物の固形分100質量%に対する光輝性粒子の質量割合(PWC)として記載されている。
【0076】
別途、硬化剤として、イソシアヌレート化合物(デスモジュールN3600、住化コベストロウレタン株式会社製、HDIのヌレート体)218部を準備した。
NCO/OH=1.0/1.0であり、2液型コーティング組成物としての溶媒含有量は0%であった。
【0077】
適量の主剤をプレパラートで挟んで、ビデオマイクロスコープ(キーエンス社製、装置名VHX-6000)で観察した。観察視野内において、2以上の光輝性粒子が密着した凝集体と、それ以外の一次粒子とに区別した。凝集体が全光輝性粒子に占める質量割合を、上記のようにして算出した。
【0078】
[実施例2~12および比較例1~6]
各成分の種類および量を、表1および表2に記載の通りに変更したこと以外は、実施例1と同様の手順により、主剤および硬化剤を調製し、凝集割合を算出した。
なお、実施例2、3、6、8および比較例1、2、5、6においては、有機溶媒である酢酸エチルを主剤に混合した。表1および表2には、溶媒量を、2液型コーティング組成物に対する割合として記載している。
【0079】
上記表中の成分は、以下の通りである。
(ポリオール)
サンニックスGP-400:三洋化成工業株式会社製、ポリエーテルポリオール、水酸基価400mgKOH/g、平均水酸基数3
デスモフェンVPLS2249/1:住化コベストロウレタン株式会社製、ポリエステルポリオール、水酸基価512mgKOH/g、平均水酸基数3以上
【0080】
(光輝性粒子)
シルビーズ M-150CP:旭化成株式会社製、未処理アルミニウム粒子、一次粒子径15μm
シルビーズ M-100CP:旭化成株式会社製、未処理アルミニウム粒子、一次粒子径10μm
アルミペースト CP-R515H:旭化成株式会社製、樹脂被覆アルミニウム粒子、一次粒子径15μm
アルミペースト CP-R705H:旭化成株式会社製、樹脂被覆アルミニウム粒子、一次粒子径7μm
XIRALLIC T60-21 WNT SOLARIS(登録商標) RED:メルク社製、金属被覆マイカ粒子、一次粒子径19μm
IRIODIN ULTRA 7205 WNT:メルク社製、金属被覆マイカ粒子、一次粒子径30μm
【0081】
実施例1~12で調製された2液型コーティング組成物により作製される塗膜は、光沢があり、良好な光輝感を呈している。一方、比較例1~6で調製された2液型コーティング組成物により作製される塗膜は、光沢に劣り、光輝感に欠けている。
【0082】
【表1】
【0083】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の2液型コーティング組成物は、インモールドコーティングによるコーティング層形成方法などの、従来のスプレー塗装とは異なる塗装方法において好適に用いることができる。本発明の2液型コーティング組成物によれば、光輝感に優れる塗膜が得られるため、特に、外装用として好適に用いられる。