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特許7358354手すり又は他の細長物品にスプライスドジョイントを形成する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】手すり又は他の細長物品にスプライスドジョイントを形成する方法
(51)【国際特許分類】
   F16G 3/10 20060101AFI20231002BHJP
   B29C 65/26 20060101ALN20231002BHJP
   B66B 23/24 20060101ALN20231002BHJP
【FI】
F16G3/10 B
B29C65/26
B66B23/24 A
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2020529330
(86)(22)【出願日】2018-11-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 CA2018051522
(87)【国際公開番号】W WO2019104434
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-11-24
(31)【優先権主張番号】62/591,954
(32)【優先日】2017-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509198284
【氏名又は名称】イー エイチ シー カナダ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】EHC Canada,Inc.
【住所又は居所原語表記】1287 Boundary Road,Oshawa,Ontario,L1J 6Z7, Canada
(74)【代理人】
【識別番号】100123858
【弁理士】
【氏名又は名称】磯田 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】230115864
【弁護士】
【氏名又は名称】永島 孝明
(74)【代理人】
【識別番号】100149168
【弁理士】
【氏名又は名称】若山 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】クロスビィ,カーヴィー ウェイン
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】バットウェル,レジナルド アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ケニー,アンドルー オリヴィエ
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06086806(US,A)
【文献】特開2008-265892(JP,A)
【文献】特開2000-351570(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第02920508(FR,A1)
【文献】米国特許第10124992(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2017/0166420(US,A1)
【文献】特開平11-079639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16G 3/10
B29C 65/26
B66B 23/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動手すりにスプライスドジョイントを形成する方法であって、
前記手すりは:概ねC字型の断面を有し、かつT字型スロットを画定する熱可塑性本体;前記熱可塑性本体内の前記T字型スロットの上方にある伸長抑制材;及び前記T字型スロットの内側を巡るスライダ織物層を含み、前記手すりは、第1の端部及び第2の端部を含み、前記第1の端部及び前記第2の端部はそれぞれ、前記端部の端面から延在する前方部分と、前記前方部分に隣接する後方部分とを含み、
前記方法は:
前記第1の端部及び前記第2の端部の前記後方部分及び前記前方部分それぞれにおいて、前記熱可塑性本体の上部セクションを、前記熱可塑性本体のショルダ部分と、前記スライダ織物層と、前記ショルダ部分を一体に接合する前記スライダ織物層の上側の熱可塑性材料の層とを含む底部セクションから分離するための、第1の水平切断を設けるステップ;
各前記端部に関して、前記前方部分から少なくとも前記ショルダ部分を除去し、前記スライダ織物層の前方部分及び前記熱可塑性材料の層を含む中央部分を残すステップ;
前記スライダ織物層の前記前方部分及び前記熱可塑性材料の層を、必要な形状に切断するステップ;並びに
前記第1の端部及び前記第2の端部を一体に組み立てて、成形用スプライスドジョイントを形成するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記スライダ織物層の前記前方部分の上方の前記熱可塑性材料の層は、前記スライダ織物層からタブ部分を形成できるよう十分に薄く、前記タブ部分には、前記T字型スロットの内部寸法を維持しながら、前記スライダ織物層の別の部分に重なって接着されるように、前記熱可塑性材料の層の一部が組み込まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スプライスドジョイントは中心線を備え、前記第1の端部及び前記第2の端部それぞれに関して、前記前方部分及び前記後方部分は、前記スプライスドジョイントの前記中心線の各側に設けられ、前記第1の端部及び前記第2の端部の前記後方部分の前記底部セクションは互いに当接して一体に接合される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の端部及び前記第2の端部それぞれに関して、前記前方部分及び前記後方部分を通って延在する前記第1の水平切断が設けられ、また前記前方部分及び前記後方部分を通って延在する、前記伸抑制材の上方の第2の水平切断が設けられ、前記第2の水平切断の終わりに垂直切断を設けることによって、前記第1の端部及び前記第2の端部それぞれから上皮層が除去され、前記第1の水平切断及び前記第2の水平切断はそれぞれ、前記伸長抑制材を含む第1及び第2の混交層を残す、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の端部及び前記第2の端部それぞれに関して、概ね垂直で長手方向に延在する切断を提供するステップであって、前記切断は、前記第1の端部及び前記第2の端部それぞれの前記中心線から前記端面まで、前記熱可塑性材料の接合層を通って、前記T字型スロットの縁部の上方に隣接して、延在し、これにより前記ショルダ部分を前記スライダ織物層から分離できる、ステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記スライダ織物層の縁部は、前記ショルダ部分の前記熱可塑性材料に埋め込まれ、
前記方法は、前記スライダ織物層の前記縁部を前記ショルダ部分から分離できるようにするための、長手方向の切断を提供するステップを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の端部及び前記第2の端部それぞれに関して、前記T字型スロットの上部を横断して延在する前記スライダ織物層の一部を、前記中心線に沿って切断するステップ、並びに前記スライダ織物層の前記ショルダ部分内に延在する部分を、前記中心線における前記手すりの断面に対して45°の角度で延在し、かつ前記T字型スロットの前記上部の前記中心線から、前記中心線の端から離れるように傾斜する平面内で、切断するステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記スライダ織物層を回転研磨ツールで切断するステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記長手方向の切断を、前記スライダ織物層内の前記45°の切断まで延長するステップを含む、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記伸抑制材を、複数の細長伸抑制部材として提供するステップ;前記第1及び第2の混交層内に長手方向の切断を行い、複数の細長片を提供するステップであって、各前記細長片には少なくとも1つの前記細長伸抑制部材が組み込まれる、ステップ;及び前記細長片を異なる長さに切断するステップを含み、前記第1の端部の第1の混交層はオス型パターンを形成し、前記第2の端部の第2の混交層は、前記オス型パターンに対して相補的な、対応するメス型パターンを形成する、請求項4~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の端部及び前記第2の端部それぞれの前記細長片は、5つの異なる長さのうちの1つへと切断され、前記長さのうちの1つは、前記スプライスドジョイントの前記中心線に対応し、前記長さのうちの2つは、前記中心線より短く、前記長さのうちの2つは、前記中心線よりも長い、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1及び第2の混交層と前記底部セクションとの間の、少なくとも1つの熱可塑性材料プライ層と、前記第1及び第2の混交層の上方の少なくとも1つの熱可塑性材料プライ層とを設けるステップを含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の端部及び前記第2の端部から除去された前記上皮層を置換するための置換用キャップを提供するステップを含む、請求項4~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記置換用キャップは、前記第1の端部の前記端面と前記第2の端部の前記端面との間の間隔よりわずかに大きくなるように切断される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
少なくとも前記置換用キャップを所定の位置に付着させるために、前記置換用キャップの端部、並びに前記第1の端部及び前記第2の端部の縁面を、加熱して軟化させるステップを含む、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
少なくとも1つの前記熱可塑性材料プライ層に関して、加熱デバイスを用いて前記熱可塑性材料プライ層及び下に張られた熱可塑性材料を加熱するステップ、並びに少なくとも前記熱可塑性材料プライ層を所定の位置に付着させるために、圧力を印加するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記熱可塑性材料プライ層はヒートガンで加熱され、圧力はローラを用いて印加される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
組み立て済みの前記スプライスドジョイントは金型に入れられ、前記方法は:組み立て済みの前記スプライスドジョイントを、少なくとも30秒の期間にわたって170℃超の温度まで加熱することにより、様々な熱可塑性構成要素を溶融させて一体に接着して、完全なスプライスドジョイントを形成するステップ;及び組み立て済みの前記スプライスドジョイントを冷却した後、前記金型から取り出すステップを含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記金型は、組み立て済みの前記スプライスドジョイントを取り囲む2つの金型部品と、前記手すりの前記T字型スロット内にフィットするコア要素とを含み、前記コア要素は、前記T字型スロット内に、浮いた状態で設置される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記コア要素に対して圧力を供給して、前記コア要素を、前記手すりの上部に向かう方向に付勢するための、アクチュエータを提供するステップを含み、組み立て済みの前記スプライスドジョイントを少なくとも加熱する間、前記アクチュエータは前記コア要素に圧力を印加する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
組み立て済みの前記スプライスドジョイントを冷却した後、前記金型部品を分離して、組み立て済みの前記スプライスドジョイントを解放し、前記アクチュエータは更なる圧力を印加して、前記コア要素を前記金型部品のうちの一方から離れるように付勢する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
移動手すりにスプライスドジョイントを形成する方法であって、
前記手すりは:概ねC字型の断面を有し、かつT字型スロットを画定する熱可塑性本体;前記熱可塑性本体内の前記T字型スロットの上方にある伸長抑制材;及び前記T字型スロットの内側を巡るスライダ織物層を含み、前記手すりは、第1の端部及び第2の端部を含み、前記第1の端部及び前記第2の端部はそれぞれ、前記端部の端面から延在する前方部分と、前記前方部分に隣接する後方部分とを含み、
前記方法は:
前記第1の端部及び前記第2の端部の前記後方部分及び前記前方部分それぞれにおいて、前記熱可塑性本体の上部セクションを、前記熱可塑性本体のショルダ部分と、前記スライダ織物層と、前記ショルダ部分を一体に接合する前記スライダ織物層の上側の熱可塑性材料の層とを含む底部セクションから分離するための、第1の水平切断を設けるステップ;
各前記底部セクションに関して、前方部分を除去して、後方部分を残すステップ;
前記底部セクションの前記後方部分の対面する表面を加熱して、前記熱可塑性材料を溶融させるステップ;並びに
前記第1の端部及び前記第2の端部をマンドレル上に設置し、前記第1の端部及び前記第2の端部を共に摺動させることによって、前記底部セクションの前記後方部分を互いに当接させることにより、前記底部セクションの溶融した前記熱可塑性材料を一体に融合してジョイントを形成するステップ
を含む、方法。
【請求項23】
前記マンドレルに、少なくとも1つの断面スロットを設けるステップ;
前記熱可塑性材料を溶融させるために十分な温度まで加熱された、加熱されたパドルを提供し、前記パドルを前記マンドレルの前記スロット内に設置するステップ;
前記底部セクションの前記後方部分が前記パドルに当接するように、前記底部セクションの前記後方部分を前記パドルに対して繰り出すことにより、前記熱可塑性材料の溶融を引き起こすステップ;並びに
前記パドルを除去し、前記底部セクションの前記後方部分が互いに対して当接するように、前記第1の端部及び前記第2の端部を一体として摺動させることにより、前記底部セクションの溶融した前記熱可塑性材料が融合してジョイントを形成するステップ
を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記ジョイントの周りの前記熱可塑性材料を冷却した後、いずれの過剰な前記熱可塑性材料を除去するステップを含む、請求項22又は23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の端部及び前記第2の端部に、第2の水平切断及び垂直切断を設けることにより、前記第1の端部及び前記第2の端部から上皮層を除去し、前記第1の端部及び前記第2の端部の前記前方部分及び前記後方部分に混交層を残すステップを含み、前記混交層は、前記底部セクションの前記後方部分が互いに対して当接した状態で前記第1の端部及び前記第2の端部を一体として摺動させることができるように、前記ジョイントから離れる方向に曲げられる、請求項22~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記ジョイントの形成後、前記混交層のうちの一方にオス型パターン及びメス型パターンのうちの一方を切断し、もう一方の前記混交層に、相補的なメス型パターン又はオス型パターンを切断するステップを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
移動手すりにスプライスドジョイントを形成する方法であって、
前記手すりは:概ねC字型の断面を有し、かつT字型スロットを画定する熱可塑性本体;前記熱可塑性本体内の前記T字型スロットの上方にある伸長抑制材;及び前記T字型スロットの内側を巡るスライダ織物層を含み、前記手すりは、第1の端部及び第2の端部を含み、前記第1の端部及び前記第2の端部はそれぞれ、前記端部の端面から延在する前方部分と、前記前方部分に隣接する後方部分とを含み、
前記方法は:
前記第1の端部及び前記第2の端部の前記後方部分及び前記前方部分それぞれにおいて、前記熱可塑性本体の上部セクションを、前記熱可塑性本体のショルダ部分と、前記スライダ織物層と、前記ショルダ部分を一体に接合する前記スライダ織物層の上側の熱可塑性材料の層とを含む底部セクションから分離するための、第1の水平切断を設けるステップ;
各前記端部に関して、前記前方部分から少なくとも前記ショルダ部分を除去し、前記スライダ織物層の前方部分及び前記熱可塑性材料の層を含む中央部分を残すステップ;
前記スライダ織物層の前記前方部分及び前記熱可塑性材料の層を、必要な形状に切断するステップ;
各前記ショルダ部分に対して、平行な内縁部及び外縁部を有するサドルを設けるステップ;
各前記ショルダ部分において、前記サドルの前記外縁部の位置に関する線をマークするステップ;
各前記サドルについて、前記外縁部を、前記ショルダ部分上にマークされた前記線と整列させ、前記サドルの前記外縁部に隣接する位置において前記サドルを加熱し、前記サドルを前記ショルダ部分に対して押圧して、前記サドルを固定するステップ;並びに
前記サドルが前記T字型スロットの内側に密接して設置されていることを確認し、前記サドルの前記内縁部をスライダ織物に固定するステップ
を含む、方法。
【請求項28】
各前記サドルは、前記内縁部と前記外縁部との間に延在して概ね台形の形状を形成する傾斜縁部と、前記内縁部及び前記外縁部に対して垂直に延在して前記台形を切り取る縁面とを含み、各前記サドルはバイアスカットされている、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記手すりの外側の熱可塑性材料から取られたカバー材料のストリップを提供するステップ;
各前記ストリップを、前記組み立て済みスプライスドジョイントに沿って、前記サドルの前記外縁部上に延在するように設置するステップ;及び
前記ストリップを加熱して、前記ストリップの前記熱可塑性材料を、前記組み立て済みスプライスドジョイントの前記熱可塑性材料に少なくとも付着させ、前記サドルを固定するステップを含む、請求項28に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2017年11月29日出願の米国仮特許出願第62/591,954号に対する優先権を主張するものであり、上記仮特許出願の内容は、その全体が参照により本出願に援用される。
【0002】
本開示は概して、断面が一定である手すり又は他の細長物品にスプライスドジョイントを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
これ以降の段落は、これらの段落中に記載されたいずれの事項が先行技術又は当業者に公知の技術の一部であることを認めるものではない。
【0004】
特許文献1は、エスカレータ又は動く歩道のための手すりにジョイントを形成するための金型及び方法を開示している。手すりは一般にC字型の断面を有してよく、これは内部の概ねT字型のスロットを画定する。手すりは押出成形によって形成され、T字型スロットの周りに延在する第1の熱可塑性材料の層を含む。第2の熱可塑性材料の層は、上記第1の層の外側の周りに延在して、手すりの外側プロファイルを画定する。スライダ層はT字型スロットを裏張りし、第1の層に接着される。伸長抑制材は、第1の層内に延在する。第1の層は、第2の層よりも硬質な熱可塑性材料から形成されていてよい。特許文献1の内容は、その全体が参照により本出願に援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第6,086,806号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
導入
以下の段落は、以下の更に詳細な説明に読者を導入することを目的としたものであり、請求対象の主題を定義又は限定することを目的としたものではない。
【0007】
本開示の一態様によると、移動手すりにスプライスドジョイントを形成する方法が提供され、上記手すりは:概ねC字型の断面を有し、かつT字型スロットを画定する熱可塑性本体;上記熱可塑性本体内の上記T字型スロットの上方にある伸長抑制材;及び上記T字型スロットの内側を巡るスライダ織物層を含み、上記手すりは、第1の端部及び第2の端部を含み、これらはそれぞれ、上記端部の端面から延在する前方部分と、上記前方部分に隣接する後方部分とを含み、上記方法は:上記第1の端部及び上記第2の端部の上記後方部分及び上記前方部分それぞれにおいて、上記熱可塑性本体の上部セクションを、上記熱可塑性本体のショルダ部分と、上記スライダ織物層と、上記スライダ織物層の上側の熱可塑性材料の層とを含み、かつ上記ショルダ部分を一体に接合する底部セクションから分離するための、第1の水平切断を設けるステップ;各端部に関して、その上記前方部分から少なくとも上記ショルダ部分を除去し、上記スライダ織物層の前方部分及び熱可塑性材料の層を含む中央部分を残すステップ;上記スライダ織物層の上記前方部分及び熱可塑性材料を、必要な形状に切断するステップ;並びに上記第1の端部及び上記第2の端部を一体に組み立てて、成形用スプライスドジョイントを形成するステップを含む。
【0008】
本開示の別の態様によると、移動手すりにスプライスドジョイントを形成する方法が提供され、上記手すりは:概ねC字型の断面を有し、かつT字型スロットを画定する熱可塑性本体;上記熱可塑性本体内の上記T字型スロットの上方にある伸長抑制材;及び上記T字型スロットの内側を巡るスライダ織物層を含み、上記手すりは、第1の端部及び第2の端部を含み、これらはそれぞれ、上記端部の端面から延在する前方部分と、上記前方部分に隣接する後方部分とを含み、上記方法は:上記第1の端部及び上記第2の端部の上記後方部分及び上記前方部分それぞれにおいて、上記熱可塑性本体の上部セクションを、上記熱可塑性本体のショルダ部分と、上記スライダ織物層と、上記スライダ織物層の上側の熱可塑性材料の層とを含み、かつ上記ショルダ部分を一体に接合する底部セクションから分離するための、第1の水平切断を設けるステップ;各上記底部セクションに関して、その前方部分を除去して、その後方部分を残すステップ;上記底部セクションの上記後方部分の対面する表面を加熱して、上記熱可塑性材料を溶融させるステップ;並びに上記第1の端部及び上記第2の端部をマンドレル上に設置し、上記第1の端部及び上記第2の端部を共に摺動させることによって、上記底部セクションの上記後方部分を互いに当接させることにより、上記底部セクションの溶融した上記熱可塑性材料を一体に融合してジョイントを形成するステップを含む。
【0009】
本開示の別の態様は、移動手すりにスプライスドジョイントを形成する方法を提供し、上記手すりは:軸と、概ねC字型の断面とを有し、かつT字型スロットを画定する熱可塑性本体;上記熱可塑性本体内の上記T字型スロットの上方にある伸長抑制材;及び上記T字型スロットの内側を巡るスライダ織物層を含み、上記手すりは、第1の端部及び第2の端部を含み、これらはそれぞれ、上記端部の端面から延在する前方部分と、上記前方部分に隣接する後方部分とを含み、上記方法は:上記第1の端部及び上記第2の端部の上記後方部分及び上記前方部分それぞれにおいて、上記熱可塑性本体の上部セクションを、上記熱可塑性本体のショルダ部分と、上記スライダ織物層と、上記スライダ織物層の上側の熱可塑性材料の層とを含み、かつ上記ショルダ部分を一体に接合する底部セクションから分離するための、第1の水平切断を設けるステップ;各端部に関して、上記底部セクションの上部において、上記手すりの上記軸に対して垂直な中心面内に中心線をマークするステップ;上記底部セクションの上記前方部分の少なくとも上記熱可塑性材料を除去するステップ;上記手すり端部の周りにマークされた上記中心線を、上記スライダ織物層に転写するステップ;上記T字型スロットの上部における上記中心面との交点から、かつ上記前方部分から離れる方向に、上記中心面に対して45°の角度で延在する平面内において、上記ショルダ部分の内側の上記スライダ織物に、傾斜線を設けるステップ;並びに上記傾斜線と上記中心面との間の上記スライダ織物を除去するステップを含む。
【0010】
本開示の別の態様は、移動手すりにスプライスドジョイントを形成する方法を提供し、上記手すりは:概ねC字型の断面を有し、かつT字型スロットを画定する熱可塑性本体;上記熱可塑性本体内の上記T字型スロットの上方にある伸長抑制材;及び上記T字型スロットの内側を巡るスライダ織物層を含み、上記手すりは、第1の端部及び第2の端部を含み、これらはそれぞれ、上記端部の端面から延在する前方部分と、上記前方部分に隣接する後方部分とを含み、上記方法は:上記第1の端部及び上記第2の端部の上記後方部分及び上記前方部分それぞれにおいて、上記熱可塑性本体の上部セクションを、上記熱可塑性本体のショルダ部分と、上記スライダ織物層と、上記スライダ織物層の上側の熱可塑性材料の層とを含み、かつ上記ショルダ部分を一体に接合する底部セクションから分離するための、第1の水平切断を設けるステップ;上記底部セクションの前方部分を除去することによって、上記底部セクションの上記後方部分を互いに当接できるようにするステップ;上記前方部分及び上記後方部分を通って延在する、上記伸長抑制材の上方の第2の水平切断と、上記第1の端部及び上記第2の端部それぞれから上皮層を除去するための、上記第2の水平切断の終わりに垂直切断とを設けるステップ;混交層内の上記伸長抑制材を切断して、相補的な端部パターンを形成するステップ;複数の熱可塑性プライ層を、上記混交
層と上記底部セクションとの間、及び上記混交層の上方に設けるステップ;上記混交層の上方に置換用キャップを設けるステップ;並びに組み立て済みの上記スプライスドジョイントを金型に入れ、上記スプライスドジョイントに温度及び圧力を印加して、上記第1の手すり端部及び上記第2の手すり端部の熱可塑性材料並びに上記プライの熱可塑性材料を一体に融合させるステップを含む。
【0011】
本開示の更なる態様は、移動手すりにスプライスドジョイントを形成する方法を提供し、上記手すりは:概ねC字型の断面を有し、かつT字型スロットを画定する熱可塑性本体;上記熱可塑性本体内の上記T字型スロットの上方にある伸長抑制材;及び上記T字型スロットの内側を巡るスライダ織物層を含み、上記手すりは、第1の端部及び第2の端部を含み、これらはそれぞれ、上記端部の端面から延在する前方部分と、上記前方部分に隣接する後方部分とを含み、上記方法は:上記第1の端部及び上記第2の端部の上記後方部分及び上記前方部分それぞれにおいて、上記熱可塑性本体の上部セクションを、上記熱可塑性本体のショルダ部分と、上記スライダ織物層と、上記スライダ織物層の上側の熱可塑性材料の層とを含み、かつ上記ショルダ部分を一体に接合する底部セクションから分離するための、第1の水平切断を設けるステップ;各上記端部に関して、その上記前方部分から少なくとも上記ショルダ部分を除去し、上記スライダ織物層の前方部分及び熱可塑性材料の層を含む中央部分を残すステップ;上記スライダ織物層の上記前方部分及び熱可塑性材料を、必要な形状に切断するステップ;各上記ショルダ部分に対して、平行な内縁部及び外縁部を有するサドルを設けるステップ;各上記ショルダ部分において、上記サドルの上記外縁部の位置に関する線をマークするステップ;各上記サドルについて、上記外縁部を、上記ショルダ部分上にマークされた上記線と整列させ、上記サドルの上記外縁部に隣接する位置において上記サドルを加熱し、上記サドルを上記ショルダ部分に対して押圧して、上記サドルを固定するステップ;並びに上記サドルが上記T字型スロットの内側に密接して設置されていることを確認し、上記サドルの上記内縁部を上記スライダ織物に固定するステップを含む。
【0012】
本明細書で開示される教示の他の態様及び特徴は、当業者には、本開示の具体例に関する以下の説明を吟味することで明らかになるだろう。
【0013】
本出願に含まれる図面は、本開示の装置及び方法の様々な例を例示するためのものであり、教示の範囲をいずれの方法で限定することを意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、切断の形成を示す、手すりの端部の図である。
図2図2は、切断の位置を示す、手すりの端面図である。
図3図3は、上皮層の除去を示す。
図4図4は、上皮層の除去を示す。
図5図5は、マンドレル上に設置された手すりの端部を示す斜視図である。
図6図6は、マンドレル上に設置され、上部層が後方に曲げられた、手すりの端部を示す斜視図である。
図7図7は、マンドレル上に設置された手すりの端部、及びショルダ部分の分離を示す斜視図である。
図8図8は、スライダ織物層の切断を示す斜視図である。
図9図9は、スライダ織物層の切断を示す斜視図である。
図10図10は、パワーツールによるスライダ織物層の縁部の除去を示す斜視図である。
図11図11は、タブを形成するためのスライダ織物層の切断を示す斜視図である。
図12A-12B】図12A及び12Bは、ヒートパドルの使用を示す側面図である。
図13図13は、混交パターンを形成する前の、一体に組み立てられた端面の斜視図である。
図14図14は、一体に組み立てられた端部、及び混交パターンの斜視図である。
図15図15は、一体に組み立てられた端部、及び上部のキャップの配置を示す斜視図である。
図16図16は、タブの位置を示す下からの斜視図である。
図17A図17Aは、サドル及びサドルテンプレートの平面図であり、図17Bは、ジョイント上にサドルを配置する様子を示す、下からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
請求対象の発明それぞれの実施形態の例を提供するために、様々な装置又は方法を以下に記載する。以下に記載のいずれの実施形態も、いずれの請求対象の発明を限定するものではなく、またいずれの請求対象の発明は、以下に記載されているものとは異なる装置及び方法を包含し得る。請求対象の発明は、以下に記載のいずれか1つの装置又は方法の特徴全てを有する装置及び方法、あるいは以下に記載の装置又は方法のうちの複数又は全てに共通する特徴に限定されるものではない。以下に記載の装置又は方法は、いずれの請求対象の発明の実施形態ではない場合がある。本文書で請求されていない、以下に記載の装置又は方法において開示されるいずれの発明は、別の保護手段、例えば継続中の特許出願の主題である場合があり、出願人、発明者、及び/又は所有者は、いずれのこのような発明を、本文書中でのその開示によって破棄する、放棄する、又は公共に開放することを意図していない。
【0016】
本開示では、様々な要素又は構成部品を、「第1の(first)」及び「第2の(second)」、あるいは「上側(upper)」及び「下側(lower)」として示す場合がある。一般に、金型組立体及び他の構成部品はいずれの配向でも使用でき、「上側」及び「下側」という言及は利便性のためのものであることが理解されるだろう。金型組立体は、手すりを反転位置で成形することに関して説明される場合があるが、手すりのジョイントは一般に、手すり及び金型の構成部品がいずれの配向にある場合にも形成できることが理解されるだろう。
【0017】
更に、金型組立体の様々な構成部品及び手すり端部は、「下側」及び「上側」等の配向を示す記述によって識別される場合があるが、これは理解を容易にするためだけのものであり、これらがこのような配向で使用される又は存在することは必須ではない。特に、手すりは、通常の使用において把持するために利用できる上面である表面を有するが、スプライスドジョイントの成形時、以下に詳述するように手すりは反転される。いずれにせよ、手すりの設置時、手すりは元の位置に戻る走行の際に反転する。
【0018】
以下に記載の方法は、多数の別個のステップを含み、いくつかのステップは特定のシーケンスで実施する必要がある。他のステップはそのような制約を受けず、いずれの順序で実施できる。以下に記載のシーケンスは、状況によっては特定の利点を提供できるが、これは限定的なものではない。
【0019】
方法のステップは、ヒートパドル及びヒートガンの使用を必要とすることになる。これらは昇温に時間を要する場合があるため、最初のステップは、ヒートパドル及びヒートガンをオンにしてこれらを予熱することとなり得る。ヒートガンは、手すりに使用される材料に応じて、例えば350℃の温度に設定できる。
【0020】
図示されているように、初期のいくつかのステップは、ここでは第1の手すり端部10
0及び第2の手すり端部200として示されている手すり端部の準備を必要とする。第1の手すり端部100及び第2の手すり端部200の対応する部分には、1XX及び2XXのような、同様の対応する参照番号が与えられている。
【0021】
手すりは全体として参照番号10で示される。手すり10は熱可塑性本体から形成され、概ねC字型の断面を有し、この断面は内部のT字型スロット12を有する。手すり10の熱可塑性本体は、第1の熱可塑性材料の層14及び第2の熱可塑性材料の層16を含んでよい。細長い伸長抑制材18が、第1の熱可塑性材料の層14内に平面状に延在する。伸長抑制材18は様々な個数であってよく、また単一の伸長抑制材要素、例えば鋼鉄製テープを含んでよく、また多様な材料から形成できる。伸長抑制材18は、鋼鉄製ワイヤとして形成してよく、簡潔さ、分かりやすさのために、以下の方法の説明では「ワイヤ」として識別する場合もあるが、いずれの好適な伸長抑制材を使用できることを理解されたい。
【0022】
スライダ織物層20が設けられ、これは、T字型スロット12を公知の方法で裏張りすることによって、手すり10と、手すりが設置されるガイドとの間の摩擦の低減を提供する。
【0023】
最初のステップとして、各手すり端部100、200は、伸長抑制材18を含む混交層104、204から上皮層102、202を分離するため、及びこれらの混交層104、204を、106、206で示されている底部セクション内の手すりの本体の残りの部分から分離するために、水平切断を必要とする。
【0024】
上皮層102、202及び混交層104、204は、手すりの複数の部分の上部セクション112、212を含む。工場の環境で製造される製造時スプライシングに関しては、この切断はバンドソーを用いて実施してもよい。図1に示すように、バンドソーを用いた切断のために手すりを90°(度)回転させ、続いてバンドソーが垂直平面内において切断を実施する。手すりのスプライシングが現場で、即ち手すりの設置場所において実施される場合、これらの切断はナイフを用いて実施してもよい。
【0025】
これらの切断を実施したら、第1の手すり端部100及び第2の手すり端部200を、スプライシング用マンドレル40上へと摺動させることができる。スプライシング用マンドレル40は、T字型スロット12の内部寸法に対応する寸法を有し、これにより、手すり端部100、200に対する緊密なフィットを提供する。スプライシング用マンドレル40はまた、スプライスプロセスにおける切断及び他の操作を容易にするために、多数の水平な予備切断溝42を備える。
【0026】
図1~4に示すように、本方法の第1のステップは、上皮層102、202の除去である。上皮層102、202を除去するために、金属製直角定規をストレートエッジとして使用でき、またユーティリティナイフを用いて、伸長抑制材18を切断又は切り傷を付けることがないように注意しながら、熱可塑性材料を切断できる。
【0027】
どちらの手すり端部100、200にも、混交層104、204の端から10mmの位置において、混交層104、204の端を横断して90°でマークを付ける。図5の135に示すように、ワイヤカッターを用いてこの線に沿って切断し、混交層104、204の10mmのピースを廃棄する。
【0028】
混交層104、204は、所望の混交パターンの形成のために切断する必要がある。後で説明される図14は、20本のワイヤ18及び14本のワイヤ18を備える手すりに関する例示的な混交パターンを示す。図14に示すように、20本のワイヤのための混交パ
ターンは、メス型端部パターン50及びオス型端部パターン52を有する。図示されているように、ワイヤ又は伸長抑制材18は、54で示されている混交パターンの端から0、63、125、188、及び250mmの長さに切断される。14本のワイヤ又は伸長抑制材18を備える手すりに関しては、混交パターンの端から測定して0、65、137、及び250mmという、4つの異なる長さが存在してもよい。
【0029】
図14に示すように、各混交パターンは、ナイフを用いて混交層104、204の長さに沿って作製された垂直切断によって形成される。これらの長手方向の切断を作製した状態で、ワイヤカッターを用いて、ワイヤ18の一部及び対応する熱可塑性材料を切除し、図14に示されているパターンを残す。以下で詳述するように、手すり端部100、200のうちの一方のスライダ織物層20は、タブ130を有するように形成される。これもまたメス型混交パターン50を有してもよい。
【0030】
手すり端部100、200をマンドレル40に設置したら、混交層104、204を後方に折り畳み、またハンドクランプで保持してもよく、これによって、残りの底部セクション106、206を露出したままとする。
【0031】
図5に示すように、底部セクション106、206の上面115、215には、スライダ織物層20及びポリウレタンのカバー層の上部を全体的に横断して90°で中心線116が引かれる。20本のワイヤのための混交パターンに関して、線116は、第1及び第2の手すり端部それぞれの端から125mmの位置に引かれることになる。
【0032】
残りの本体部分、即ち底部セクション106、206を形成する切断により、薄い中央部分114、214で接続されたショルダ部分113、213を有する各本体部分106、206が得られる。中央部分114、214は、スライダ層20の前方部分の上方に、熱可塑性材料の薄層を含む。
【0033】
図6に示すように、中心線116、216から、スコーリング線118、218が手すりの長さに沿って作製され、概ねここで、スライダ織物20はスプライシング用マンドレル40の周りで下向きに曲がる。これらの線118、218の切断にあたっては、スライダ織物20を切断してしまわないよう注意する必要があり、これらの線118、218は、ショルダ部分113、213の熱可塑性材料を、スライダ層20が無傷のまま、中央部分114、214から分離させる役割を果たす。
【0034】
次に、1対の小型デバイスバイスグリップ、又は1対のプライグリッパを用いて、各ショルダ部分113、213を把持し、図7に示すように、切断又はスコーリング線118、218の下側のショルダにおいて、下に張られたスライダ織物20から引き離す。
【0035】
図2に示すように、スライダ織物20の縁部22は、第2の熱可塑性層16のポリウレタンに埋め込まれ、上述のステップは、スライダ層20の縁部をポリウレタンから取り外すことを意図したものではない。
【0036】
各手すり端部100、200の切断端からおよそ30mmの位置から、ショルダ部分113、213のポリウレタンを、上で詳述したように、取り外したら、手すり端部100、200をマンドレル40から取り外して裏返し、図8に示すように反転位置でマンドレル40に係留する。
【0037】
続いて、中心線116、216を、手すりのショルダの周りからショルダ部分113、213の上部へ、そして手すりの腹側へと手動で転写することにより、スライダ織物20の内部に、117で示されるようにマークする。
【0038】
図8に示すように、手すり端部100と同様の手順をもう一方の手すり端部200にも適用し、マーク119を、中心線117上の、ショルダ部分113のリップ(lip)の内側5mmの位置に設ける。このマーク119から、必要な距離、例えば20又は25mmを中心線116から戻るように測定して、マーク120をリップの上部に作製する。続いて、マーク119及び120を直線122で接続し(この「直線」とは、中心線17における手すりの軸に対して垂直な平面に対して45°の角度にあるという意味であるが、図面では湾曲しているように見える)、これをショルダ部分113の両側に対して実施する。
【0039】
例えばDremel(商標)、回転研磨ツール、又はスライダ織物層20の線状部分を研削若しくは他の方法で除去する他のツールを用いて、線を直線122に沿ってトレースする。
【0040】
ユーティリティナイフを用いて、図9及び10に示すように、ショルダ部分113の縁部に沿って、124で示されている長手方向の切断を実施する。これらの切断は、手すり端部100の両側について、中心線116マイナス25mmの位置から手すりの切断端までである。ナイフは垂直方向に傾斜させることができ、またナイフが、ポリウレタン又は熱可塑性材料内に埋め込まれたスライダ織物層20の縁部を確実に捉えるようにする必要がある。
【0041】
手すりの切断端から開始して、1対の小型バイスグリップを用いて、織物をスロート(throat)領域、即ちT字型スロットの内側から、及びリップ領域の周りにおいて、除去する。これにはてこ作用が必要となる場合があり、織物層20は中心線116まで除去され、これには、既に中心線から25mm切断された領域が含まれる。
【0042】
Dremel(商標)又は他の好適なツール(例えばDremel(商標)ビット199番)を用いて、スライダ織物層20の残りの織物をショルダ部分113に沿って除去する。熱可塑性材料のカーカスのあまりに深い位置まで切断することなく、線に沿って織物だけを除去するために、ツール138は図10に示すように位置決めする必要がある。使用時に発生し得るスプライスの破損を防止するために、全ての織物をこの領域から除去する必要がある。
【0043】
続いて第1の手すり端部100を、通常の正立位置に戻し、摺動させてスプライシング用マンドレル40上に戻す。中心線116と第1の手すり端部100の端面との間の織物端部126は、ショルダ部分113を全く有しない状態となる。図11に示すように、2つの平行な線128が、Dremel(商標)ツールによって切断されたコーナーから、スプライスの端に向かって、ユーティリティナイフを用いて引かれる。中心線116から15mmを測定し、スプライスの端に向かって45°で切断を実施する。金属製の大工用直角定規等を用いて、この線を横断して切断を行い、角度付きのタブ130を形成する。
【0044】
他の手すりでは、中心線116から織物層を有する第1の手すり100の端部に向かって90°で25mmを測定する。この線を横断して切断を行い、25mmの位置に長方形のタブを形成する。
【0045】
第2の、又は他の手すり端部200に関しては、織物20は、金属製の大工用直角定規等を用いて、中心線216において90°で切断される。
【0046】
タブ130のサイズは、最小で15mm×25mmである必要がある。残りの織物は廃棄してよい。
【0047】
ユーティリティナイフを用いて、中心線116においてショルダ部分113を除去する。切断中、イソプロピルアルコール又はエチルアルコールを刃に対して用いて、潤滑を提供できる。クランプを用いて、ショルダ部分113をマンドレル40に対して保持することにより、切断をまっすぐに維持するのを助けることもできる。鋸引き動作を用いて手すりの変形を回避してもよく、これによって不均一な切断が形成される。良好な溶接を保証するために、以下に詳述するように、直角の切断を達成する必要がある。
【0048】
ショルダ部分113を切断したら、後で良好な溶接を達成できるように、リップの底部までのこの切断が、手すりの通路に対して可能な限り垂直であることを保証する必要がある。
【0049】
良好に作製されていないショルダ部分113を通るいずれの切断に関しては、切断面をマンドレル40の中央スロット44まで移動させる必要があり、そしてショルダを、中央スロット44の縁部をたどりながら、ユーティリティナイフを用いて鋸引き動作で直角に切断する必要がある。この切断を実施している間、ユーティリティナイフが中央スロット44の平坦な表面をたどるように、ショルダ部分113をマンドレル40に対してしっかりと保持する必要がある。ここでもイソプロピルアルコールを潤滑剤として使用できる。
【0050】
スプライスを組み立てるために、スライダ織物層の端が中央スロット44の縁部と並ぶように、手すり端部100、200を両方ともスプライシング用マンドレル40上へと摺動させる。次のステップにおいてタブ130が干渉しないこと、又は損傷しないことを保証するために、タブ130を第1の手すり端部100の下に押し込む。
【0051】
図12Aに示すように、ヒートパドル70のために十分なスペースを2つの手すり端部の間に配置できるよう、手すり端部100と手すり端部200との間に間隙を設ける。
【0052】
ヒートパドル70を所望の温度まで加熱し、必要に応じて、ワイヤブラシを用いて清掃できる。ヒートパドル70を端部100と端部200との間に配置し、25mmの重複が損傷しないことを確認して、スロット44に挿入する。端部100、200をヒートパドル70に対して押し付ける。第1の手すり端部100及び第2の手すり端部200の端面が溶融して、1mmのマッシュルーム効果が提供される程度まで広がり始めたら、図12Bに示すようにヒートパドル70を取り除き、手すり端部100、200を素早く、5~10秒にわたってぴったりと一体に押し付けて、これらの端部を一体に接着する。
【0053】
良好な接着を保証するために、以下の要素が考慮され得る:(a)溶融が完全に均一である;(b)端部が極めて迅速に一体に押し付けられている;(c)2つの端部を一体に押し付けながらの溶接中、ショルダが互いに対して適切に整列されている;及び(d)2つの手すり端部100、200を一体に溶接した後、得られたジョイントを、手で曲げて割れを目視でチェックすることによって検査する;ジョイントが割れた場合、スプライスを分離して再溶接し、再試験しなければならない。
【0054】
図13を参照すると、混交層104、204が後方に保持された状態で、本体プライ層140、240を挿入して、切断ステップによって失われた熱可塑性材料を補うことができる。
【0055】
その上方にタブ230が存在することになる第2の上面212には、中心線216から25mmの位置に線をマークする。本体プライ240を準備し、混交層204の下に挿入する。本体プライ240は線242において切断される。角度付きのタブが設けられている場合、本体プライ240は更に、244において45°の角度で切断され、これにより
、この本体プライ240は、タブ130を越えて延在せず、下に張られたタブに対応する形状を有する。
【0056】
これに対応して、第1の手すり端部100に関しては、本体プライ140が設けられ、これもまた、混交層104の真下に取り付けられている。本体プライ140は、中心線116まで延在するように切断されている。
【0057】
ヒートガンによって、本体プライ層140、240を、下にある手すりの本体部分106、206に溶接する。ヒートガンは、350°の温度に設定してもよい。ヒートガンは、各プライと、下に張られた熱可塑性材料との間に向けることにより、熱可塑性材料を加熱でき、その後、例えばローラ、例えば2インチローラを用いて熱可塑性材料を圧延する。閉じ込められた空気がスプライスドジョイント内に空所を発生させる可能性があるため、圧延する際、全ての空気が確実に排出されるように注意してもよい。この時点では、完全な溶接を実施するのではなく、本体プライ層140、240を所定の位置に付着させるだけでもよい。
【0058】
ユーティリティナイフを用いて、ショルダ部分113、213から上記マッシュルーム効果をトリミングできる。
【0059】
次に、ハンドクランプを取り外すことによって混交層104、204を解放できる。続いて、図14の混交パターンをまだ形成又は作製していない場合は形成又は作製できる。
【0060】
このとき、混交パターンは、最初にオス型端部パターン52を形成することにより形成してもよい。次に、オス型端部パターン52をテンプレートとして用いて、メス型端部パターン50を切断できる。混交層の端部を、重ならないように1mmの間隙を設けて一体に突き合わせる。
【0061】
必要に応じて、第3及び第4の熱可塑性材料のプライを混交層の上方に設けることができ、これらのプライは、様々なスタイルのものであってよく、また様々な寸法(厚さ)のものであってよい。通常は第3のプライが存在し、場合によっては第4のプライが存在する。
【0062】
必要に応じて、2つの混交層104、204の端部パターンが少なくとも、下に張られた熱可塑性材料に確実に付着させるために、ヒートガン及びローラを使用できる。
【0063】
ヒートガンを用いて、所定の位置に溶接される又は付着させられることになる混交層104のメス型端部の第1の脚の下側を加熱する。同様の手順を、メス型端部の第2の脚に対して使用して、これを所定の位置に溶接するか又は付着させ、またいずれの場合においても空気を排出する。混交層のオス型端部に関しても同様の手順がたどられる。
【0064】
スプライスドジョイントを完成させるために、図15に示すようなキャップ160を準備する。キャップ160は、除去した上皮層102、202に対応する手すりの長さから、ピースを切断することによって準備される。従ってキャップ160は、上皮層102、202の厚さに、バンドソー又は他の切断ツールによって除去されたいずれの材料の厚さを足し、上で詳述したようなプライの挿入によって効果的に置換されたいずれの材料に関する許容差を引いたものでなければならない。
【0065】
組み立てられたままの状態のスプライスは、手すり端部100、200の垂直な端縁132、232の間に空間を残している。キャップ160は、この空間の距離よりもわずかに長くなるように切断される。
【0066】
キャップ160を設置するために、キャップ160の一方の端をスプライス領域の上に位置決めし、ここで、キャップ160の端が縁面132、232の端から数mmだけ離間して対面するようにする。ヒートガンを用いてキャップ160の端面及び対面する縁面を加熱する。十分に加熱したら、端面を、高温の縁面に対して押し付ける。加熱は、材料の溶融を引き起こさないようなものであってよい。キャップは平らにしなければならず、また空気が閉じ込められる可能性があるすきまを有してはならない。
【0067】
スプライスの他端では、キャップがまっすぐであり、スプライス領域の中央にあることを保証するために、キャップをチェックする必要がある。メタルカーボン製直角ガイド及びユーティリティナイフを用いて、キャップ160を、2つの対面する縁面132、232の間の空間よりわずかに長くなるようにトリミングする。例えばキャップ160は、他方の縁面に重なることによって、1mm超過して延在できる。キャップはその後、上方に膨張し得る。
【0068】
この他端について、ヒートガンを用いて、キャップ160の端面と、他方の手すり端部のより一層対面した縁面とを加熱する。次にキャップを縁面に対してしっかりと押圧する。ここでも、キャップを過熱しないように、及び材料の溶融を引き起こさないように、ただしキャップを平らにして空気が閉じ込められないように、実施してもよい。
【0069】
最後に、スプライス領域を清掃し、スプライスに保護フィルムを設ける。保護フィルムは、設置するまで表面を清浄に保って保護するためのものである。保護フィルムは設置前に除去されることになる。保護フィルムは、押出成形中に手すり全体に貼付される透明なプラスチックフィルムである。スプライシング中にフィルムを除去し、スプライシングが完了したら新たなセクションを追加する。
【0070】
次に、スプライスドジョイントを反転させ、手すりを、図16に示すように手すりの腹側の内部が上を向く反転位置で係留できる。
【0071】
そして、接着プライのピースを挿入する。接着TPUプライは本体プライとは組成が異なり、極めて薄い(0.25mm)。これは、TPU接着剤の薄層を備えたスライダ織物の層を含み、同一の材料を用いて以下に詳述するサドルが形成される。接着TPUプライは、タブ130に比べて長さがおよそ15~20mm、幅が1~2mm大きくなるように切断され、タブ130の下に配置される。
【0072】
ブロー速度が比較的遅いヒートガンを用いて、接着プライをタブ130の下側で加熱し、続いてタブ130を手すりの腹側に押し付けて、タブ130をスライダ織物20に接着する。次に、タブを超えて延在する接着剤をタブの縁部まで圧延して、タブと上記腹側との間の段差を充填するビードを形成する。
【0073】
タブ130を手すり端部のスライダ20に接着した状態で、第1の手すり端部100及び第2の手すり端部200の接着によって生成されたいずれのマッシュルーム効果を、回転ツールを用いて、リップの上部から腹側のスロート領域内のスライダまでトリミングして除去できる。上記材料を除去することによって、スプライスがかさ高くなりすぎず、金型に正しくフィットすることを保証する。
【0074】
手すりのリップに形成された、スライダの縁部が除去されたキャビティ124は、手すりカバー材料のストリップで充填され、ヒートガンを用いて接着される。
【0075】
そして接着層を含む新しい未使用のスライダ織物を得て、これを切断してサドル150
を形成する。このサドル材料は、TPU接着剤で予備コーティングされ、また上述のようにタブを所定の位置に固定するために使用されるプライと同一の材料である。図17Aは、サドルの形状を示し、またサドルを切断するための、図17Aに示されているサドル150と同一の形状を有するサドルテンプレートが提供されている。サドルテンプレートは、大工用直角定規等を用いて、サドル材料上に45°で整列される。バイアスは、長手方向に対して45°、即ち線152、154に対して45°である。サドル150は、織物材料からテンプレートの形状に切断される。図17Bに示すように、マーク162を、矢印で示されているように、手すりのショルダ上のリップの面から12mmの位置に作製して、サドルの縁部を整列させる。
【0076】
サドル150は、末端の三角形が切除された台形と考えることができる。従ってサドル150は、手すり内でのその位置に関して、互いに対して平行な内縁部152及び外縁部154とこれら内縁部152及び外縁部154それぞれに対して垂直な2つの端縁156とを有する。2つの傾斜縁部158によってサドル150の形状が完成される。
【0077】
次にサドル150を、ショルダ部分113上に、溶接ジョイントを中心として配置し、サドルの外縁部154は、上述のように作製された12mm位置のマークと整列される。サドルを保持し、ショルダ部分113及びサドルの接着剤に熱を印加する。溶接部分を中心とし、かつ12mm位置のマークと整列されるように、サドル150をショルダに対して下向きに押圧する。材料は、適切な接着が得られるよう十分に加熱する必要がある。ヒートガンを用いてサドルの織物側を加熱してもよく、またサドルを、上部リップ上で、スロート領域に対面してスロート領域内に入るように折り曲げ続けてもよい。全ての縁部は可能な限りまっすぐでなければならない。サドルをスライダ織物に完全に接着させることが望ましくない場合があるため、接着剤は過熱してはならない。この点、加熱の主要な役割は、サドル150をより柔軟にすることである。
【0078】
上述のステップを、スプライスドジョイントのもう一方の側のサドル150に対して繰り返す。
【0079】
サドル150を手すりの腹側に押し込んだ後、リップの面を覆うように前進してしっかりと押圧されたサドル150の縁部に熱を印加することにより、金型内にスプライスを配置したときにサドルが適切に位置決めされることを保証する。
【0080】
キャップ160の作製に使用した手すりのピースを用いて、両方のサドル150を所定の位置とした状態でサドル150の縁部を封止するためのカバー材料のストリップ170を得ることができる。この目的のために、手すりの上記ピースを上下逆にする。
【0081】
カバー材料のストリップ170は、手すりのピースを得て、手すりのショルダの長さに沿って3つ又は4つのスポットをマークすることによって得ることができる。これらは、グリースペンシル又は他の取り外し可能なマーキングデバイスを用いて、ショルダの周囲5mm及び18mm(この位置からカバー材料がリップの上部に落ち込む)において測定してマークできる。続いてユーティリティナイフを用い、このストリップ170に対する縁部を決定するために上述のマークを使用して、カバー材料のストリップ170をショルダから除去できる。材料のストリップの厚さは1.5mm以下であってよい。
【0082】
これらのストリップ170は、例えば長さ200mmに切断される。図17Bに示すように、これらのピースはそれぞれ、サドルを中心とする。一部の手すりに関して、カバーピースの長さは、サドル縁部を約10mm超えている必要がある。
【0083】
ヒートガン(最高温度が350℃未満であってよい)を用いて、カバー材料のピースを
サドル150のうちの1つの各側部に付着させ、例えば14mmであるピースの幅の中心がサドル150の縁部上となることを確認する。ヒートガンを用いて、カバーピースのサドル縁部を加熱して固着させた後、ピースのショルダの縁部を加熱して固着させてもよい。ピースをサドルの側部に付着させるのが比較的困難となる場合があり、そのような場合には、カバーピースだけが溶融し、かつサドル150の材料が溶融しないような加熱で開始することが好ましくなり得る。サドル材料の溶融は、スプライスの早期破損につながる恐れがある。
【0084】
カバーピースの役割の1つは、サドルの接着剤の封止を支援して、該接着剤の脱落を防止することである。
【0085】
完成したスプライスを成形するために、例えば2017年11月29日出願の米国仮特許出願第62/591,971号、及び対応する国際出願「手すり又は他の細長物品にスプライスドジョイントを形成するための金型組立体(MOULD ASSEMBLY FOR FORMING A SPLICED JOINT IN A HANDRAIL
OR OTHER ELONGATE ARTICLE)」(各文献の内容は、その全体が参照により本出願に援用される)に開示されているような、コア要素を備えた適切な金型を選択する。コアをスプライスの位置においてT字型スロット12に挿入する。コアが固着しているように思われる場合、スプライスから取り外す際、又は接着剤を手すりの腹側から除去して、スライダタブの端に間隙が残る場合には、スライダタブ及びサドルの位置において離型剤をコアに塗布できる。
【0086】
コアを手すりに挿入する前に、ショルダ及びサドルをヒートガンで緩やかに加熱して、これらをより柔軟にすることにより、コアの周りでの手すりの緊密なフィットを支援できる。
【0087】
コアは、これをスプライス領域の中央に配置し、パテナイフを用いてコアを前方のショルダへと押し込むことによって挿入でき、コアの挿入は、挿入プロセス中にサドルのうちのいずれかが動かないように実施する必要がある。
【0088】
以上の説明は、1つ以上の装置又は方法の例を提供しているが、他の装置又は方法も添付の請求項の範囲内となり得ることが理解されるだろう。
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図12B
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図17A
図17B