(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】固形W/O化粧料組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/06 20060101AFI20231002BHJP
A61K 8/19 20060101ALI20231002BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20231002BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20231002BHJP
A61K 8/894 20060101ALI20231002BHJP
A61Q 1/04 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
A61K8/06
A61K8/19
A61K8/73
A61K8/81
A61K8/894
A61Q1/04
(21)【出願番号】P 2020540655
(86)(22)【出願日】2019-02-06
(86)【国際出願番号】 JP2019004255
(87)【国際公開番号】W WO2019156123
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2022-01-07
(32)【優先日】2018-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000001959
【氏名又は名称】株式会社 資生堂
(74)【代理人】
【識別番号】100092901
【氏名又は名称】岩橋 祐司
(72)【発明者】
【氏名】グエン,レチュ
(72)【発明者】
【氏名】田島 祥二
(72)【発明者】
【氏名】ルー,ミシェル
【審査官】阪▲崎▼ 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-088513(JP,A)
【文献】特開2005-194248(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0233220(US,A1)
【文献】米国特許第06042815(US,A)
【文献】特開2010-173997(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0321578(US,A1)
【文献】特開2017-128512(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00~8/99
A61Q 1/00~90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成物の総質量に対して、6質量%~16質量%の少なくとも1つの疎水性ゲル化剤、及び
組成物の総質量に対して0.2質量%~0.5質量%の少なくとも1つの親水性ゲル化剤を含む、
1)ゲル化系と、
5:1~1:1の質量比でPEG-12ジメチコン及びPEG-10ジメチコンを含む、
2)乳化系と、
を含み、
疎水性ゲル化剤は、炭化水素スチレンゲル化剤及び疎水性鉱物性ゲル化剤を含
み、
親水性ゲル化剤は寒天を含む、固形W/O化粧料組成物。
【請求項2】
炭化水素スチレンゲル化剤の量は、組成物の総質量に対して4質量%~10質量%の量の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
疎水性鉱物性ゲル化剤の量は、組成物の総質量に対して1質量%~10質量%の量の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ゲル化系は、1:0.5:0.005~7.5:5:1の質量比で存在する、炭化水素スチレンゲル化剤、疎水性鉱物性ゲル化剤、及び親水性ゲル化剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
水をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
少なくとも1つのワックスをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも1つの溶媒をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1つの保湿剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも1つのテクスチャーパウダーをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
少なくとも1つの顔料をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
組成物が口紅である、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
組成物の総質量に対して0.2質量%~0.5質量%の量で少なくとも1つの親水性ゲル化剤を含む、組成物の総質量に対して、9質量%~50質量%の水相と、
組成物の質量に対して6質量%~16質量%の量で少なくとも2つの疎水性ゲル化剤を含む、組成物の総質量に対して、50質量%~91質量%の油相と、
5:1~1:1の質量比でPEG-12ジメチコン及びPEG-10ジメチコンを含む少なくとも1つの界面活性剤と、を含み、
少なくとも1つの親水性ゲル化剤は寒天を含み、
少なくとも2つの疎水性ゲル化剤は、炭化水素スチレンゲル化剤及び疎水性鉱物性ゲル化剤を含む、固形W/O化粧料エマルション。
【請求項13】
請求項1に記載の組成物をケラチン表面に適用する方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2018年2月7日に提出された米国仮出願第62/627,454号の優先権を主張し、仮出願は引用をもって本明細書に組み込まれているものとする。
【技術分野】
【0002】
本発明は、固形W/O化粧料組成物に関し、特に、水及びゲル化系(gellifying system)を含有する組成物の改良に関する。
【背景技術】
【0003】
現在入手可能な固形化粧料(スキン製品及びカラー化粧料)の多くは、物理的な化粧料の特性(硬度、テクスチャー(質感)(texture)等)、及び化粧料製品の使用に関する消費者の総合的な経験を改善するように設計されている。典型的には、化粧料の固体構造を作り出し、維持するために、高レベルの固化ワックス(例えば、組成物の総重量の15%よりも多く)及び粉末/充填材(フィラー)(例えば、組成物の総重量の20%よりも多く)が使用されており、一般的にこのような製品は水を含まない。消費者にとって残念なことに、高レベルのワックス及び/又は粉末は、最終製品を非常に硬くて粘着性にし、皮膚に乾燥効果を引き起こし、その塗布は堅くて不均一に見せ、その結果美観が損なわれる。
【0004】
保湿効果を高めるために、一部の固形化粧料には高レベルの水分と保湿剤が含まれている。それらは液体又はゲルの形態で入手可能である(例えば、リップグロス、リップジェル、リップタトゥー、リップラッカー、ジェルアイライナー、ジェルクリーム等)。典型的には、水系製品は、色の見た目と長続き効果のために染料を含んでいるが、これは消費者にとって残念なことに、皮膚の長期的な着色をもたらすことになる。着色は取り除くのが難しく、皮膚を刺激し、乾燥させる可能性がある。既知の水系スティックも存在する。しかしながら、それらは少量の水を含み、顔料又は多量の水を含まないが、それらは不安定である(例えば、時間の経過によって割れる、高温で発汗する/水を漏出する、不快な臭いを発生する)。
【0005】
長期間の保湿効果と冷却効果を提供しながらも、同時に柔らかく、時間経過しても(割れたり高温で発汗したりせず、かつ水が蒸発しない)安定した構造を維持し、滑らかで、クリーミーで、空気のようなテクスチャーを維持する、改善された固形化粧料組成物が依然として必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第5,928,655号
【文献】米国特許第5,756,082号
【文献】欧州公報第1,112,325号
【文献】米国特許第6,528,073号
【文献】米国特許第6,280,750号
【文献】米国特許第5,567,426号
【文献】米国特許第9,023,334号
【文献】米国特許第8,597,621号
【発明の概要】
【0007】
本発明は、少なくとも1つのゲル化系及び少なくとも1つの界面活性剤系を含む、安定な固形油中水型(W/O)乳化組成物に関する。
【0008】
一実施形態において、本発明のゲル化系は、少なくとも1つの疎水性ゲル化剤と少なくとも1つの親水性ゲル化剤の組み合わせを含むことができる。
【0009】
さらなる実施形態において、ゲル化系は、少なくとも2つの疎水性ゲル化剤と、少なくとも1つの親水性ゲル化剤と、を含む。
【0010】
別の実施形態において、少なくとも2つの疎水性ゲル化剤は、例えば、スチレン系コポリマー及び鉱物性ゲル化剤(無機性ゲル化剤)(mineral gellants)を含み、一方、親水性ゲル化剤は、例えば、少なくとも1つの熱可逆性多糖(thermoreversible polysaccharide)を含む。
【0011】
少なくとも2つの疎水性ゲル化剤の特定の組み合わせ(例えば、炭化水素スチレンコポリマー及び疎水性鉱物性ゲル化剤を含む)により、組成物の堅く滑らかなテクスチャーを得ることができる。同時に、親水性ゲル化剤に閉じ込められた水は、長続きする保湿効果に加えて、適用時に瞬間的な冷感及びはじける感覚(an instant cooling and bursting sensation)を提供する。すべてのゲル化剤の組み合わせにより、長持ちする着色効果及び快適な着用感が得られる。
【0012】
安定性の問題を解消するために、本発明の一実施形態において、組成物は、14以下のHLB値を有する少なくとも1つの非イオン性界面活性剤を含む少なくとも1つの界面活性剤系を含む。
【0013】
安定性の問題に対する別の解決手段は、少なくとも1つのポリグリセロールエステルに加えて、約2から約14のHLB値を有する少なくとも2つの非イオン性界面活性剤の混合物を含む少なくとも1つの界面活性剤系を導入することによって解決された。
【0014】
特定の例示的な実施形態において、少なくとも2つの非イオン性界面活性剤は、限定はされないが、ポリエチレングリコールジメチコン界面活性剤から選択される。
【0015】
非イオン性界面活性剤の特定の組み合わせは組成物の安定性を提供しており、このことは、組成物が時間が経過しても固体でクリーミーさを保ち、顔料が均一に分散され、割れやひびが生じたりせず、高温で水を出さず(発汗せず)、不快な臭いもしないことを意味する。
【0016】
本発明の1つの例示的な実施形態は、ゲル化系と、
14以下のHLB値を有する少なくとも1つのポリエチレングリコールジメチコン界面活性剤を含む少なくとも1つの乳化系と、を含み、
ゲル化系は:
(I)スチレンコポリマーゲル化剤を含む少なくとも1つの疎水性ゲル化剤;
(II)少なくとも1つの親水性ゲル化剤;及び
(III)鉱物性ゲル化剤を含む少なくとも1つの追加的な疎水性ゲル化剤、
を含む、W/O化粧料組成物を示す。
【0017】
本発明の別の例示的な実施形態は固形W/O化粧料組成物について示し、
組成物は、
A.水相のパーセント重量に対して約0.1重量%~約5重量%の量で少なくとも1つの親水性ゲル化剤を含む、組成物の総重量のパーセント重量に基づいて約9%~約50%の水相;
B.油相のパーセント重量に対して約10重量%~約30重量%の量で少なくとも1つの疎水性ゲル化剤を含む、組成物の総重量のパーセント重量に基づいて約91%~約50%の油相;及び
少なくとも1つの界面活性剤、
を含む。
【0018】
本発明のさらなる例示的実施形態において、組成物は、限定はされないが、1つ又は複数の水、少なくとも1つのワックス、少なくとも1つの脂肪溶媒、少なくとも1つの保湿剤、及び少なくとも1つのテクスチャーパウダー(texturizing powder)をさらに含む。追加的かつ任意的に、組成物は、少なくとも1つの皮膜形成剤及び/又は少なくとも1つの顔料をさらに含むことができる。
【0019】
以下に記載する特定の構造により、本発明の組成物は、滑らかでクリーミーでべとつかないテクスチャーを特徴とするにもかかわらず、同時に、組成物は、持続性、爽快感、及び冷感を提供すると共に、安定している。
【0020】
本発明の組成物は、限定はされないが、口紅、ファンデーション、チーク(blush)、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、スキンケア製品、サンケア製品、デオドラント等とすることができる。
【0021】
本発明の他の例示的な実施形態は、限定はされないが、限定ではなく例として、口紅ケース又はホルダー、マスカラ塗布具、アイシャドウ塗布具、アイライナー塗布具、チーク塗布具、ファンデーション塗布具等を含む適切な塗布具(アプリケータ)を使用して、本発明の組成物をケラチン物質(例えば、唇、皮膚、まぶた、眉毛等)に適用することにより、このようなケラチン物質の外観を高める方法について示す。
【0022】
本発明の組成物の固形形態は、限定はされないが、スティック、クレヨン、ポッド(pod)、ケイン(cane)等とすることができる。
【0023】
本発明のさらに別の例示的な実施形態は、以下を含む固形W/O組成物を作製する方法について示す:
(a)少なくとも1つの疎水性ゲルを含む少なくとも1つの油相を調製する工程;
(b)少なくとも1つの親水性ゲルを含む少なくとも1つの水相を調製する工程;及び
(c)必要に応じて少なくとも1つの顔料を添加する工程。
【0024】
前述の一般的な説明及び後述の詳細な説明はいずれも例示及び説明にすぎず、本発明を限定するものではないことは理解されたい。
【詳細な説明】
【0025】
パーセントは、特に明記しない限り、組成物又は記載されている特定の相の質量(重量)による。特に明記しない限り、すべての比率は質量比である。
【0026】
本明細書で使用される「約」は、示された数の10%の範囲内を意味する(例えば、「約10%」は9%~11%を意味し、「約2%」は1.8%~2.2%を意味する)。
【0027】
「固形化粧料」とは、組成物が、限定はされないが、ASTM法番号213(サン(Sun)-レオメータ、針:1.0mm;重量2kG;保持10.0M;プレス20MM/M)、周囲温度(25℃)で測定された、約7mm~約24mm、好ましくは約10mm~約20mm、最も好ましくは12mm~16mmの硬度によって特徴づけられることを意味する。
【0028】
本明細書で使用される「ケラチン表面」とは、皮膚及び/又はメイクアップ製品(例えば、カラー化粧料)で処理され得る、皮膚(顔を含む)、まつげ及び眉毛を含む髪の毛を意味する。
【0029】
本明細書で使用される用語「油相」は、疎水性担体、典型的には油性成分、を含む相を意味する。好適な油としては、限定ではなく例として、シリコーン油(直鎖及び環状)、エステル、ケトン、グリコールエーテル、植物油及び鉱油、合成油、パラフィン油、炭化水素、芳香族溶媒が挙げられ、限定はされないが本明細書で特定されるものを含む。油は揮発性又は非揮発性とすることができ、好ましくは室温(25℃)で流し込み可能な液体の形態である。
【0030】
「揮発性」とは、油が20℃で少なくとも水銀約2mmの測定可能な蒸気圧を有することを意味する。
【0031】
用語「不揮発性」とは、油が20℃で水銀2mm未満の蒸気圧を有することを意味する。
【0032】
油相は、疎水性担体に組み込みやすい追加の疎水性化合物を含むことができる。そのような他の適用可能な疎水性化合物は、液体、固体、及び/又は半固体の形態をとることができ、これらは、例えば、限定はされないが、油溶性ワックス及び皮膜形成剤、界面活性剤、乳化剤、保存剤、増粘剤(ゲル化剤)、皮膚軟化剤、活性物質、ビタミン、顔料、抽出物、粉末、疎水性溶媒、並びに他の有用な成分を含むことができる。
【0033】
用語「疎水性」は、典型的には、その非極性構造のために、物質が水に溶解困難であることを意味する。一方、用語「親水性」は、物質がその水素結合能力により水又は他の極性溶媒に溶解可能であることを意味する。
【0034】
一部の化合物は、疎水性と親水性の両方の性質を有することを特徴とすることができる。
【0035】
用語「水相」は、主要な担体として水を含む相であると理解される。典型的には、水相は、付加的な物質、例えば、水に溶解可能な皮膜形成剤、界面活性剤、乳化剤、増粘剤(ゲル化剤)、皮膚軟化剤、保湿剤、保存剤、活性物質、ビタミン、抽出物、粉末、親水性溶媒、及び他の有用な成分を含むことができる。これらの化合物は、液体、固体及び/又は半固体の形態で組成物に導入することができる。
【0036】
非限定的な例示的実施形態において、本発明の組成物を特徴付ける油相の量は、組成物の総質量に対して、約50質量%~約91質量%、より好ましくは約35質量%~約88質量%、最も好ましくは約50質量%~約83質量%の範囲である。
【0037】
非限定的な例示的実施形態において、本発明の組成物を特徴付ける水相の量は、組成物の総質量に対して、約9質量%~約50質量%、より好ましくは約10質量%~約40質量%、最も好ましくは約12質量%~約30質量%の範囲である。
【0038】
本発明の組成物及び方法は、本明細書に記載の本発明の必須要素及び限定、並びに本明細書に記載された又はその他の有用な、いずれかの追加的又は任意の成分、構成要素又は限定を含むことができ、これらからなることができ、又は、これらから本質的になることができる。
【0039】
ゲル化系
本発明のゲル化系は、少なくとも1つの疎水性ゲル化剤及び少なくとも1つの親水性ゲル化剤の組み合わせを含む。好ましくは、ゲル化系は、少なくとも2つの疎水性ゲル化剤及び少なくとも1つの親水性ゲル化剤の組み合わせを含む。
【0040】
本明細書で使用されているように、「ゲル化剤」は、化粧料組成物の粘度、チキソトロピー性及び安定性の変更に寄与する(例えば、顔料の沈降、離液(syneresis)を低減する)剤を意味する。
【0041】
本発明の例示的な実施形態によれば、ゲル化系は、組成物の総重量に対して、約3.01重量%~約27重量%、好ましくは約4重量%~約21重量%、最も好ましくは約4重量%~約17重量%の範囲である。
【0042】
特定の例示的な実施形態においては、疎水性ゲル化剤と親水性ゲル化剤の重量比は、約1.5:0.005~約12.5:1である。
【0043】
また、本発明において、2種類以上の疎水性ゲル化剤を用いる場合、少なくとも1つは、疎水性スチレンコポリマーゲル化剤であると好ましい。
【0044】
疎水性スチレンコポリマーゲル化剤と他の疎水性ゲル化剤(例えば、疎水性鉱物性ゲル化剤)の重量比は、好ましくは、約1:0.5~約7.5:5である。
【0045】
特定の例示的な実施形態において、疎水性スチレンコポリマーゲル化剤(すなわち、担体中のスチレンコポリマー)対親水性ゲル化剤(すなわち、粉末のみ)対疎水性鉱物性ゲル化剤(すなわち、担体中の鉱物性ゲル化剤)の重量比は、それぞれ、約1:0.005:0.5~約7.5:1:5である。
【0046】
A.疎水性ゲル化剤(ジェラント)
本発明によると、化粧料組成物は、合成及び/又は天然の増粘剤を含む少なくとも1つの疎水性ゲル化剤(ジェラント)を含むことができる。
【0047】
したがって、本発明によれば、組成物は、例えば、スチレンブロックコポリマーを含む炭化水素ブロックコポリマー、及び疎水性鉱物、並びにそれらの混合物等の少なくとも1つの増粘性疎水性ゲル化剤、好ましくは2つ以上の疎水性ゲル化剤、を含むことができる。
【0048】
疎水性ゲル化剤は、典型的には、本発明の組成物での使用に適した油を含む油相(疎水性相)に組み込まれる。実施形態によれば、好適な疎水性ゲル化剤は、固体又はゲルの形態で使用することができる。
【0049】
本発明の実施形態によれば、疎水性ゲル化剤は、組成物の総重量に対して、約3重量%~約25重量%、好ましくは約3.5重量%~約20重量%、より好ましくは約6重量%~約16重量%の量である。
【0050】
疎水性ゲル化剤の存在により、最終製品の前述のような望ましいテクスチャー、硬度、及び安定性が得られる。
【0051】
1.炭化水素-スチレンコポリマーゲル化剤
本発明の一実施形態によれば、少なくとも1つの炭化水素ブロックコポリマーは、少なくとも1つのスチレンブロック、並びに、ブタジエン、エチレン、プロピレン、ブチレン及びイソプロペン(isopropene)から選択されるユニットを含む少なくとも1つのブロック、並びに水添炭化水素ブロックコポリマー、並びにこれらの混合物を含む。
【0052】
好適な炭化水素系ブロックコポリマーの例は、米国特許第5,221,534号に記載されており、援用をもって本明細書に組み込まれていることとする。本発明の炭化水素系ブロックコポリマーは、好ましくは、油相に可溶であるか、又は分散可能である。
【0053】
本発明の例示的な一実施形態において、炭化水素系ブロックコポリマーは、スチレンとオレフィンのアモルファスブロックコポリマーである。
【0054】
用語「ポリマー」は、2種類のモノマーから得られるコポリマーと、例えば、3種類のモノマーから得られるターポリマー等の3種類以上のモノマーから得られるコポリマーの両方を意味するものとする。ポリマーの分子は、少なくとも1つの親水性ユニット及び/又は少なくとも1つの疎水性ユニットを含むことができる。
【0055】
別の実施形態によれば、炭化水素ブロックコポリマーは、限定はされないが、スチレンユニット又はスチレン誘導体から構成される少なくとも1つのブロックを含むブロックポリマーから選択されるスチレンコポリマーゲル化剤である。
【0056】
少なくとも1つのスチレンブロックを含むコポリマーは、ジブロックもしくはトリブロックコポリマー又はマルチブロックコポリマー、星型又は放射状とすることができる。限定はされないが、特に有用な例としては、米国特許第8,021,674号の記載による(エチレン/プロピレン/スチレン)コポリマー及び(ブチレン/エチレン/スチレン)、並びに例えば米国特許第6,433,068号の記載が挙げられ、これらはすべて援用により本明細書に組み込まれているものとする。
【0057】
本発明に有用な市販のスチレンコポリマーゲル化剤の例は、バーサゲル(Versagel) ME 2000(INCI名:水添ポリイソブテン(及び)(エチレン/プロピレン/スチレン)コポリマー(及び)(ブチレン/エチレン/スチレン)コポリマー(Hydrogenated Polyisobutene (and) Ethylene/Propylene/Styrene Copolymer (and) Butylene/Ethylene/Styrene Copolymer))並びにカルメットペンレコ(Calumet Penreco)から市販されているバーサゲル(VERSAGEL)(登録商標)シリーズのもとで販売されている他の種類のゲル化剤である。適用可能なバーサゲル(VERSAGEL)(登録商標)ゲル化剤は、例えば、鉱油、イソヘキサデカン、イソドデカン、水添ポリイソブタン、C12~15安息香酸アルキル、及びイソノナン酸イソノニル(isonolnyl isononanoate)等の様々な担体中のスチレンコポリマーを含む。
【0058】
例示的な実施形態において、本発明において使用される炭化水素スチレンコポリマーゲル化剤(すなわち、担体中のスチレンコポリマー)の量は、組成物の総質量に対して、約2質量%~約15質量%、より好ましくは約3質量%~約12質量%、最も好ましくは約4質量%~約10質量%の範囲である。
【0059】
2.疎水性鉱物性ゲル化剤
本発明によれば、本発明の組成物は、限定はされないが、有機変性粘土及び変性又は非変性ヘクトライト及びヒュームドシリカを含む疎水性シリカから選択することができる少なくとも1つの疎水性鉱物性ゲル化剤を含むこともできる。本発明によれば、疎水性鉱物性ゲル化剤は、例えば、米国特許公開公報第2007/0071703号に記載及び例示されているような、ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト、ジメチルジステアリルアンモニウムベントナイト、及びジメチルジステアリルアンモニウム変性モンモリロナイト等から選択することができ、当該公報は援用により本明細書に組み込まれているものとする。
【0060】
疎水性鉱物性ゲル化剤は、第四級アンモニウム塩化合物が、イオン交換反応により、ベントナイトなどの天然又は合成スメクタイト粘土鉱物に添加されているものとすることができる。 有機変性粘土鉱物の選択は、化粧料として許容できる限り特に限定されず、例えば、ジメチルアンモニウムヘクトライト、ベンジルジメチルステアリルアンモニウムヘクトライト、及びジステアリルジメチルアンモニウムクロライドで処理されたケイ酸マグネシウムアルミニウムを含むことができる。
【0061】
本発明において特に有用な疎水性鉱物性ゲル化剤は、例えば、有機溶媒中に予め分散されたベントナイト及び有機変性ヘクトライトから選択される。市販のベントナイトの非限定的な例は、エレメンティススペシャリティーズ(Elementis Specialties)から入手可能なベントンゲル(BENTONE GEL)(登録商標)ISD V(INCI:イソドデカン、ジステアルジモニウムヘクトライト、炭酸プロピレン(Isododecane, Disteardimonium Hectorite, Propylene Carbonate))を含むベントンゲル(登録商標)シリーズである。別の例示的な材料は、エッカルト(Eckart)から入手可能なガラマイト7308XR(GARAMITE 7308XR)(INCI:クオタニウム-90セピオライト及びクオタニウム-90モンモリロナイト(Quaternium-90 Sepiolite and Quaternium-90 Montmorillonite))である。
【0062】
すでに述べたように、別の適用可能な疎水性鉱物性ゲル化剤は、シリカ、特にヒュームドシリカ及びシラノール基で処理されたもの、を含む。このような疎水性シリカは、例えば、デグサ(Degussa)によるアエロジル(AEROSIL)(登録商標)及びキャボット(Cabot)から入手可能なキャボジル(CAB-O-SIL)(登録商標)の名称で市販されている。
【0063】
本発明によれば、好適な鉱物性ゲル化剤は、粉末が、例えば、鉱油、イソヘキサデカン、イソドデカン、水添ポリイソブタン、C12~15安息香酸アルキル、及び/又はイソノナン酸イソノニル等の担体に分散されている固体粉末形態又はゲルで使用することができる。
【0064】
例示的な実施形態において、疎水性鉱物性ゲル化剤(担体中の鉱物性ゲル化剤)の量は、組成物の総質量に対して、約1質量%~約10質量%、より好ましくは約1.5質量%~約8質量%、最も好ましくは約2質量%~約6質量%の範囲である。
【0065】
B.親水性ゲル化剤
本発明によれば、組成物は少なくとも1つの親水性ゲル化剤を含むことができる。親水性ゲル化剤の非限定的な例には、熱可逆性多糖類、例えば、寒天、アガロース、カラギーナン、及びジェラン等、が含まれる。本発明の実施形態によれば、親水性ゲル化剤は、粉末形態又はゲルで処方に組み込むことができる。
【0066】
例示的な一実施形態において、少なくとも1つの親水性ゲル化剤は、米国特許第8,933,134号に記載されているような寒天であり、この公報は援用により本明細書に組み込まれているものとする。本発明の例示的な実施形態において有用な寒天は、冷水に不溶であるが、それ自体の重量の20倍もの水を吸収しながら、相当に膨潤する。寒天は、沸騰水に容易に溶解し、0.50%という低い濃度で堅いゲルになる。別の有用な例は、95℃~100℃の温度で水及び他の溶媒に可溶な粉末状の乾燥寒天である。さらに有用な例は、エタノール、2-プロパノールもしくはアセトンによって凝集された(flocculated)、又は高濃度の電解質によって塩析された、室温で様々な溶媒に可溶な湿った寒天である。本発明によれば、寒天の好ましい好適な形態は粉末である。しかしながら、寒天は、寒天ゲルとして組成物に導入することもができ、その調製及び特性は、米国特許第9,757,312号及び第8,367,044号に開示されており、これらはすべて援用によりその全体が本明細書に組み込まれているものとする。本発明の実施形態に関連して使用される寒天は、化粧料及び食品グレードのものとすることができ、伊奈食品工業株式会社から入手可能なものを含む。
【0067】
本発明において使用される親水性ゲル化剤の量は、限定はされないが、組成物の総質量に対して、約0.01質量%~約2質量%、より好ましくは約0.1質量%~約1質量%、最も好ましくは約0.2質量%~約0.5質量%の範囲である。
【0068】
本発明によれば、親水性ゲル化剤の存在により、所望のテクスチャー及び硬度を最適化することが可能になる。
【0069】
本発明によれば、親水性ゲル化剤は、親水性ゲルを得るために水と混合することができる。本発明において使用される少なくとも1つの親水性ゲルの量は、限定はされないが、組成物の総質量に対して、約9.01質量%~約37質量%、より好ましくは約10.1質量%~約31質量%、最も好ましくは約12.2質量%~約25.5質量%の範囲である。
【0070】
界面活性剤系
本発明によれば、本発明の組成物は、例えば、14以下のHLB値を有する少なくとも1つの非イオン性界面活性剤を含む少なくとも1つの界面活性剤系を含有する。
【0071】
「HLB」は、乳化剤に関連付けられた「親水性-親油性バランス」を指す。
【0072】
特に、HLB値は、乳化剤中の親水性基と親油性基の比率に関係し、また乳化剤の溶解性にも関係する。典型的には、HLBがより低い乳化剤は親油性材料又は油への溶解性がより高く、油中水型(W/O)エマルションでの使用により適している。一方、HLBがより高い乳化剤は、水又は親水性材料への溶解性がより高く、水中油型(O/W)エマルションにより適している。
【0073】
さらに、本発明は、例えば、2~14のHLB値を有する少なくとも2つの非イオン性界面活性剤の混合物を含む界面活性剤系を含むことができる。適用可能な非イオン性界面活性剤の例には、ポリグリセロールアルキルエーテル、エステル結合界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリグリセリルエステル、グリセリルエーテル、ソルビタンエステルを含むソルビタン誘導体、シリコーンのポリエチレングリコール誘導体、ポリエチレングリコールエーテル、アルコキシル化アルコール、及び炭水化物が含まれ得る。さらなる例として、好適な界面活性剤には、限定はされないが、プロピレングリコールイソステアレート、グリセリルステアレート、ソルビタンイソステアレート、オレス-2、グリセリルラウレート、セテス-2、メチルグルコースセスキステアレート、ラウレス-4、セテアリルグルコシド、ポリソルベート85、オレス-10、及びセテス-10が含まれ得る。
【0074】
本発明において特に有用なのは、ジメチコンのポリエチレングリコール誘導体、具体的には、PEG-8~PEG-12のジメチコン界面活性剤、及び米国特許第7,842,725号に記載されているものである。実施形態の1つによれば、ジメチコンのポリエチレングリコール誘導体の非限定的な好適な例は、両方とも14未満のHLB値を有するPEG-12ジメチコン及びPEG-10ジメチコンである。
【0075】
別の例示的な実施形態によれば、本発明の組成物は、例えば、少なくとも2つの非イオン性界面活性剤を含有することができる。
【0076】
本発明において使用される非イオン性界面活性剤の量は、限定はされないが、組成物の総質量に対して、約0.01質量%~約4質量%、より好ましくは約0.1質量%~約3質量%、最も好ましくは約0.2質量%~約2.5質量%の範囲である。
【0077】
本発明において使用されるPEG-12ジメチコンの量は、限定はされないが、組成物の総質量に対して、約0.01質量%~約4質量%、より好ましくは約0.1質量%~約3質量%、最も好ましくは約0.2質量%~約2.5質量%の範囲である。
【0078】
本発明において使用されるPEG-10ジメチコンの量は、限定はされないが、組成物の総質量に対して、約0.01質量%~約4質量%、より好ましくは約0.1質量%~約3質量%、最も好ましくは約0.2質量%~約2.5質量%の範囲である。
【0079】
さらに、例示的な実施形態において、ジメチコン界面活性剤の混合物は、組成物の総質量に基づいて、約5:1~約1:1の質量比でPEG-12ジメチコン及びPEG-10ジメチコンを含む。
【0080】
ワックス
本発明のいくつかの例示的な実施形態によれば、少なくとも1つのワックスが組成物に含まれる。少なくとも1つのワックスは、限定はされないが、室温(25℃)で固体又は半固体のワックスから選択される。具体的な例には、限定はされないが、天然及び合成ワックス、例えば:蜜蝋、キャンデリラワックス、綿ろう、カルナウバワックス、シロヤマモモ果実ロウ(bayberry wax)、虫白蝋(insect wax)(イボタロウムシ(Ericerus pela)が分泌するワックス)、鯨ろう、モンタンワックス、コメヌカロウ(ライスワックス)、カポックワックス(capok wax)、モクロウ(Japan wax)、ラノリンアセテート、液体ラノリン、サトウキビワックス、ラノリン脂肪酸とイソプロピルアルコールのエステル、ラウリン酸ヘキシル、還元ラノリン、ホホバワックス、ハードラノリン、シェラックワックス、蜜蝋、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、POEラノリンアルコールエーテル、POEラノリンアルコールアセテート、POEコレステロールエーテル、ラノリン脂肪酸とポリエチレンワックスのエステル、合成ワックス、脂肪酸グリセリド、硬化ヒマシ油、ペトロラタム、及びPOE水添ラノリンアルコールエーテルが含まれる。
【0081】
本発明において使用されるワックスの量は、限定はされないが、組成物の総質量に対して、約12質量%~約22質量%、より好ましくは約13質量%~約18質量%、最も好ましくは約13質量%~約16.5質量%の範囲である。
【0082】
溶媒
本発明のいくつかの例示的な実施形態によれば、少なくとも1つの溶媒が組成物に含まれる。少なくとも1つの溶媒は、限定はされないが、50℃未満の引火点を有する溶媒、及び70℃を超える引火点を有する溶媒から選択され、揮発性及び不揮発性炭化水素、揮発性及び不揮発性シリコーン、アルコール、グリコール、エステル、植物油、並びに合成油を含む。いくつかの好ましい溶媒には、例えば、水添ポリイソブタン、イソドデカン、ジメチコン、及びセメチコン(semethicone)等の炭化水素及びシリコーン系溶媒が含まれる。市販の好適な炭化水素溶媒は、日油株式会社から入手可能なパールリーム4(PARLEM 4)(INCI名:水添ポリイソブタン及びトコフェロール)である。
【0083】
本発明において使用される溶媒の量は、限定はされないが、組成物の総質量に対して、約0.01質量%~約30質量%、より好ましくは約0.1質量%~約25質量%、最も好ましくは約1質量%~約20質量%の範囲である。
【0084】
水
本発明の好ましい実施形態によれば、W/Oエマルションは水の使用を必要とする。例示的な一実施形態によれば、本発明の組成物において使用される水は、組成物の総質量に対して、約9質量%~約35質量%、好ましくは約10質量%~約30質量%、最も好ましくは約12質量%~約25質量%存在する。
【0085】
テクスチャーパウダー(Texturizing powders)
本発明の例示的な実施形態によれば、少なくとも1つのテクスチャーパウダーが組成物に含まれる。少なくとも1つのテクスチャーパウダーは、限定はされないが、いずれかの形状の鉱物及び有機フィラーから選択される。本発明によれば、テクスチャーパウダーは、限定はされないが、シリカ、ポリマーマイクロスフェア及びアミノ酸の混合物とすることができる。例としては、限定はされないが、マイカ、シリカ、ポリアミド粉末、デンプン、窒化ホウ素、シリコーン樹脂マイクロビーズ、及びエラストマー粉末が挙げられる。
【0086】
本発明において使用されるテクスチャーパウダーの量は、限定はされないが、組成物の総質量に対して、約0.01質量%~約30質量%、より好ましくは約0.1質量%~約25質量%、最も好ましくは約1質量%~約20質量%の範囲である。
【0087】
保湿剤
本発明の例示的な実施形態によれば、本発明の組成物は、限定はされないが、米国特許第5,977,188号に記載されているような、ジプロピレングリコール、ポリグリセリン、1,3-ブチレングリコール、エーテル、ポリオール、グリセリン、グリセリンポリマー及びポリエチレングリコール等のポリオールタイプの保湿剤を含む親水性保湿剤から選択される保湿剤を含む。本発明の実施形態に関連して使用できる特に好適な保湿剤は、限定はされないが、グリセリン及び40以下のグリセリン単位を有するグリセリンポリマーであることが観察された。
【0088】
本発明において使用される保湿剤の量は、限定はされないが、組成物の総質量に対して、約0.01質量%~約10質量%、より好ましくは約0.1質量%~約5質量%、最も好ましくは約0.2質量%~約2質量%の範囲である。
【0089】
顔料(オプション)
本発明によれば、少なくとも1つの顔料は、限定はされないが、例えば、有機及び無機処理顔料、並びに特別な視覚効果を提供する顔料から選択される。特定の例には、限定はされないが、酸化鉄、赤7レーキ(red 7 lake)、ゴニオクロマチック顔料(gonioichromatic pigments)が含まれる。
【0090】
本発明において使用される顔料の量は、限定はされないが、組成物の総質量に対して、約0.01質量%~約30質量%、より好ましくは約0.1質量%~約25質量%、最も好ましくは約1質量%~約20質量%の範囲である。
【0091】
皮膜形成剤(オプション)
本発明によれば、少なくとも1つの皮膜形成剤は、限定はされないが、水溶性皮膜形成剤及び油溶性皮膜形成剤、アクリル系皮膜形成剤、シリコーン系皮膜形成剤、例えばUS2009/001708に記載されているものから選択される。
【0092】
本明細書で使用される「皮膜形成剤」又は「皮膜形成ポリマー」は、例えば、皮膜形成剤に付随する溶媒が蒸発し、基板に吸収され、及び/又は基板上で散逸した後に、皮膜形成剤が塗布された基板上に膜を残すポリマー又は樹脂を意味する。
【0093】
本発明において使用される皮膜形成剤の量は、限定はされないが、組成物の総質量に対して、約0.01質量%~約30質量%、より好ましくは約0.1質量%~約25質量%、最も好ましくは約1質量%~約20質量%の範囲である。
【0094】
本発明の組成物は、皮膚軟化剤、有機顔料、防腐剤、充填剤、活性物質、日焼け止め剤、添加剤、追加の溶媒等、その目的とする使用に適した他の成分をさらに含むことができる。
【実施形態の説明】
【0095】
本発明の好ましい実施形態を以下に示す。
【0096】
【表1】
*Versagel ME2000と**Bentone-は、両方ともゲルの形態で例示の組成物に組み込まれている。
***寒天は、例示された組成物に固体の形態で組み込まれている。
【0097】
本発明の組成物の作製方法:
メインビーカーにおいて、油相のすべての(A)化合物を組み合わせ、混合物が均一になるまで90~95℃で均質化した。次に、ベントン(Bentone)(B)を添加し、同じ温度で約5分間、あるいはベントンが化合物Aの混合物内に完全に分散するまで均質化した。次に、温度を85~90℃に下げ、すべてのワックス(化合物C)を添加して、完全に溶解させた。均質な混合物を得た後、すべての揮発性溶媒(D)を添加し、85~90℃の安定した温度を維持しながら、さらに5分間混合した。その後、温度を80~85℃に下げ、すべての粉末(E)を添加して、すべてが均一に分散するまで混合した。
【0098】
別のビーカーにおいて水相(F)の化合物を組み合わせた。水の損失を最小限に抑えるために、水相は、80~85℃でカバーをして混合した。均一な混合物を得た後、水相を油相に徐々に加え、1700rpm~2300rpmの速度で均質化した。均一な組成物を得るために、油相と水相の混合物を、1400rpmから1700rpmの速度でさらに5分間均質化した。乳化の全手順は80~85℃で行った。すべての均質化ステップは、ロモビクス(Romobics)ホモジナイザーを使用して行った。乳化プロセスが完了した後、すべての所望の顔料(G)を添加し、IKA RWミキサーを使用して均一に混合した。
【0099】
本発明者らは、上記のゲル化系および界面活性剤系の使用の重要性を実証する試験を実施した。その結果を以下に示す。各試験において使用した対照処方を表1の実施例1に示す。
【0100】
評価基準/評価方法
本発明の組成物は、以下の表2、3及び4にそれぞれ示される比較例に対して評価した。
【0101】
テクスチャー
24歳から60歳の5人の独立した参加者、典型的な口紅使用者、が口紅組成物を塗布し、以下の特性について口紅組成物を評価した:軽量感(light weight)、みずみずしさ(hydration)、清涼感(refreshing and cooling sansation)、柔らかさ(soft)、滑らかさ(smooth)、クリーミーさ(creamy)、良好で快適な被覆(good and comfortable coverage)。さらに、塗布の4時間後に摩耗の耐久性を評価した。以下に説明するように、すべてのパラメータは1から3までの評価スケールを使用して評価した。
3:非常に良い:パネリストは、口紅が上記に列挙したすべての特性を有していると報告した。
2:可:パネリストは、口紅が上記に列挙した特性の一部のみを有していると報告した。
1:不可:パネリストは、口紅が上記に列挙した特性のいずれも有していないと報告した。
【0102】
硬度
硬度は、各処方につき3つのサンプルを使用して、試験した各組成物について上記の方法に従って評価し、平均を算出した。その合否は、以下に示す測定値に基づいて評価した。
〇:良い:硬度は理想的には12mm~16mm
△:可:硬度10~20mm
×:不可:硬度9mm未満又は24mmを超える
【0103】
乳化分離
試験したサンプルの乳化分離は、組成物を以下のスケールで作製した直後に目視で検査した。
〇:良好:分離なし
×:不可:分離。
【0104】
安定性
試験したサンプルの安定性を、臭い、割れ、及び/又は溶媒の「発汗」について目視で評価した。サンプルは0℃、-5℃、25℃、37℃、及び湿度98%で、並びに45℃で保管した。評価は、サンプルが作製された時点(初期)及び毎週、合計8週間行った。合否は、以下の等級付けシステムに従って、臭い、割れ、及び/又は溶媒の「発汗」の存在に基づいて決定した。
〇:良好:実験期間中、いずれの試験温度においても、割れ、臭い、発汗がない。
×:不可:記載したいずれかの温度において割れ/発汗/臭いの存在。
【0105】
まず第一に、本発明者らは、3つのゲル化剤の組み合わせ:炭化水素スチレンコポリマーゲル化剤(バーサゲル)、疎水性鉱物性ゲル化剤(ベントン)及び親水性ゲル化剤(寒天)の使用の必要性を研究した。
【0106】
実施例2-1及び比較例2-2~2-7において使用した組成物を表2-1に示す。結果を表2-2に示す。
【0107】
【表2-1】
*Versagel ME2000と**Bentone-は、両方ともゲルの形態で例示の組成物に組み込まれている。
***寒天は、例示された組成物に固体の形態で組み込まれている。
【0108】
【表2-2】
*Versagel ME2000と**Bentone-は、両方ともゲルの形態で例示の組成物に組み込まれている。
***寒天は、例示された組成物に固体の形態で組み込まれている。
【0109】
比較例2-2~2-7は、比較組成物である。
【0110】
表2-1及び表2-2に示すように、油相の全体的な固化に十分な量のワックスを配合しても、水及び界面活性剤を含む組成物では適切な固化が困難である。単一のゲル化剤を組み込んだ又は3つのうち2つのみを配合した系(2-2~2-7)においては、固化が不十分であり、安定性、硬度、乳化分離、及びテクスチャーの点で好ましくない。
【0111】
表2-1及び2-2に提示されているデータは、望ましい硬度とテクスチャーを有する安定した組成物を得るためには、3つのゲル化剤の使用が必要であることを明確に示す。
【0112】
次に、本発明者らは、3つのゲル化剤:炭化水素スチレンコポリマーゲル化剤、疎水性鉱物性ゲル化剤及び親水性ゲル化剤、それぞれの好ましい量を調査した。結果を表3-1及び表3-2に示す。
【0113】
【表3-1】
*Versagel ME2000と**Bentone-は、両方ともゲルの形態で例示の組成物に組み込まれている。
***寒天は、例示された組成物に固体の形態で組み込まれている。
【0114】
【0115】
実施例2-1は表2-1の組成物2-1を表す。比較例3-1~3-4は比較組成物である。
【0117】
提示されたデータは、本発明の組成物の所望の特性を得るために必要である、3つのゲル化剤の特定の量での組み合わせ使用の必要性を示している。
【0118】
次に、本発明者らは、特定の界面活性剤の量、及びそれらのpH値の重要性を研究した。結果を表4-1及び表4-2に示す。
【0119】
【表4-1】
*Versagel ME2000と**Bentone-は、両方ともゲルの形態で例示の組成物に組み込まれている。
***寒天は、例示された組成物に固体の形態で組み込まれている。
【0120】
【0121】
実施例2-1は、表2-1の本発明の組成物2-1を表す。比較例4-1~4-7は比較組成物である。
【0122】
表4-1及び4-2に示されているように、ポリエチレングリコールジメチコン界面活性剤の存在は、所望の製品の物理的特性の観点から好ましい。試験した界面活性剤のいずれかが存在しないこと、及び/又は過剰量であることは、テクスチャーに悪影響を及ぼすだけでなく、組成物の硬度、乳化分離及び安定性も著しく低下させることが観察された。実験によれば、最高品質の本発明組成物を得るためには、PEG12-ジメチコン及びPEG10-ジメチコンは同時に使用されるべきである。
【0123】
また、界面活性剤の最適なHLBは2~14であることが分かった。HLBが16.5の界面活性剤を使用すると、テクスチャー及び硬度が特に悪化した。