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特許7358364近視を治療するための光散乱を有する眼科用レンズ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】近視を治療するための光散乱を有する眼科用レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/02 20060101AFI20231002BHJP
   G02C 7/00 20060101ALI20231002BHJP
   G02C 7/06 20060101ALI20231002BHJP
   G02C 7/04 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
G02C7/02
G02C7/00
G02C7/06
G02C7/04
【請求項の数】 25
(21)【出願番号】P 2020541739
(86)(22)【出願日】2019-01-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-27
(86)【国際出願番号】 US2019015724
(87)【国際公開番号】W WO2019152438
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】62/624,038
(32)【優先日】2018-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/663,938
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/671,992
(32)【優先日】2018-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/236,961
(32)【優先日】2018-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519400379
【氏名又は名称】サイトグラス・ヴィジョン・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ピーター・ホーンズ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ダブリュー・チャルバーグ・ジュニア
【審査官】川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0189168(US,A1)
【文献】特表2004-514921(JP,A)
【文献】特開2008-040497(JP,A)
【文献】特表2017-510851(JP,A)
【文献】特表2012-513252(JP,A)
【文献】特表2019-529968(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00-13/00
G02B 5/00- 5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの対向する曲面を有するレンズ材料と、
透明な開口を囲む散乱領域であって、入射光を前方散乱するようにサイズ決定および形状決定される複数の離間した散乱中心を有し、前記散乱中心が、隣接する散乱中心間の間隔の不規則な変化、および/または散乱中心サイズの不規則な変化を含むパターンで配置される、散乱領域と
を備え、
各散乱中心が二次元配列の対応の配列サイトまたはその近傍に位置し、配列サイト同士の間の間隔が、配列面内の第1の方向において第1の距離Dであり、前記第1の方向に垂直な第2の方向において第2の距離Dであり、
各散乱中心の中心が、前記第1の方向において寸法δx、前記第2の方向において寸法δyで対応の配列サイトから変位されていて、
δx=A・D・RN[0,1]であり、
δy=A・D・RN[0,1]であり、
とAのそれぞれが0と1の間の幅であり、RN[0,1]が0と1の間のランダムな数であ眼科用レンズ。
【請求項2】
前記散乱中心が他の散乱中心の配列面内の寸法から変化している寸法を有する、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項3】
少なくとも一部の散乱中心の配列面内の寸法の変化が定格値の0.5倍以下である、請求項2に記載の眼科用レンズ。
【請求項4】
少なくとも一部の散乱中心が他の散乱中心の体積から変化している体積を有する、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項5】
前記少なくとも一部の散乱中心の体積の変化が定格値の0.5倍以下である、請求項4に記載の眼科用レンズ。
【請求項6】
前記眼科用レンズがレンズ軸を有し、前記透明な開口および前記散乱領域が前記レンズ軸上にほぼ中心がある、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項7】
前記散乱領域が、第1の散乱区域、および前記透明な開口と前記第1の散乱区域との間に配置される第2の散乱区域を備え、前記第2の散乱区域が、前記第1の散乱区域の前記散乱中心よりも弱く入射光を散乱するようにサイズ決定および配置される散乱中心を備える、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項8】
前記眼科用レンズがレンズ軸を有し、前記透明な開口ならびに前記第1および第2の散乱区域が前記レンズ軸上にほぼ中心があり、前記第2の散乱区域中の前記散乱中心が、前記レンズ軸からの径方向距離が増えると単調に増加する寸法を有する、請求項7に記載の眼科用レンズ。
【請求項9】
前記眼科用レンズがレンズ軸を有し、前記透明な開口ならびに前記第1および第2の散乱区域が前記レンズ軸上にほぼ中心があり、前記第2の散乱区域中の前記散乱中心が、前記レンズ軸からの径方向距離が増えると単調に変化する寸法および/または体積を有する、請求項7に記載の眼科用レンズ。
【請求項10】
前記パターンが散乱中心サイズの不規則な変化を含む、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項11】
少なくとも一部の散乱中心の間隔とサイズとの少なくとも一方が、前記散乱中心に情報をコード化するために変化する、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項12】
前記散乱中心の配列面内における形状がほぼ円形である、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項13】
少なくとも一部の散乱中心が、ロゴと英数字符号のうち少なくとも一方のように形作られる、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項14】
前記眼科用レンズが、単焦点レンズまたは多焦点レンズである、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項15】
前記眼科用レンズが、眼鏡用レンズまたはコンタクトレンズである、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項16】
前記散乱領域が環状領域である、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項17】
前記透明な開口が円形開口である、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項18】
目の長さに関係する障害を治療する方法であって、
患者の目の長さに関係する障害を識別するステップと、
請求項1に記載の眼科用レンズを使用して、前記患者の視覚の周辺における画像のコントラストを低下させるステップと
を含む、方法。
【請求項19】
フレームと、
前記フレームに取り付けられる一つ以上の請求項1に記載の眼科用レンズと
を備える眼鏡。
【請求項20】
前記散乱中心が、前記透明な開口を通して見た物体の画像コントラストに比較して、少なくとも30%だけ、前記散乱領域を通して見た前記物体の画像コントラストを低下するようにサイズ決定および配置される、請求項19に記載の眼鏡。
【請求項21】
前記一つ以上の眼科用レンズが、前記透明な開口を通して装着者の視覚を補正する屈折力を有し、
前記散乱領域を通した前記装着者の周辺視覚の少なくとも一部について、前記一つ以上の眼科用レンズが前記装着者の視覚を補正する、請求項19に記載の眼鏡。
【請求項22】
目の長さに関係する障害を治療する方法であって、
患者の目の長さに関係する障害を識別するステップと、
請求項19に記載の眼鏡を使用して前記患者の視覚の周辺における画像のコントラストを低下させるステップと
を含む、方法。
【請求項23】
前記配列サイト同士の間の間隔が0.2mmから1mmの範囲内である、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項24】
前記散乱中心が、0.08mmから0.5mmの範囲内の配列面内の最大寸法を有する、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【請求項25】
前記散乱中心の配置が、各散乱中心の対応の配列サイトからの変位を含む、請求項1に記載の眼科用レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年1月30日に出願された「METHODS FOR FORMING OPHTHALMIC LENSES FOR TREATING MYOPIA」という題名の仮出願第62/624,038号、2018年4月27日に出願された「OPHTHALMIC LENSES WITH LIGHT SCATTERING FOR TREATING MYOPIA」という題名の仮出願第62/663,938号、および2018年5月15日に出願された「OPHTHALMIC LENSES WITH LIGHT SCATTERING FOR TREATING MYOPIA」という題名の仮出願第62/671,992号に対する優先権を主張する。これらの仮出願の各々の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、近視を治療して近視の進行を弱めるための眼科用レンズを特徴とする。
【背景技術】
【0003】
目は光学センサであって、外部の発生源からの光が、波長依存性光センサの配列である網膜の表面上にレンズによって合焦される。目のレンズが採用できる様々な形状の各々は、目によって観察される外部画像に対応する網膜の表面上の倒立像を生成するために、外部の光線が最適またはほぼ最適に合焦される焦点距離に関連する。目のレンズは、目のレンズが採用できる様々な形状の各々で、目からある範囲の距離内にある外部の物体によって放出されるまたは反射される光を最適またはほぼ最適に合焦し、その範囲外の距離にある物体を最適でない状態で合焦する、または物体を合焦し損なう。
【0004】
正常な視力の人では、目の軸方向長さ、またはレンズから網膜の表面への距離は、遠くの物体の最適な合焦に近い焦点距離に対応する。正常な視力の人の目は、「調節」と呼ばれるプロセスである目のレンズの形状を変えるために力を印加する筋肉に神経の入力を行うことなく、遠くの物体に合焦する。より近い近接した物体は、正常な人によって調節の結果として合焦される。
【0005】
しかし、多くの人は、近視(近眼)などといった、目の長さに関係する障害を患っている。近視の人では、目の軸方向長さは、調節なしで、遠くの物体に合焦するのに必要な軸方向長さよりも長い。結果として、近視の人は、近くの物体を明瞭に見ることができるが、さらに離れた物体はぼける。近視の人は、一般的に調節することができる一方で、近視の人が物体を合焦できる平均距離は、正常な視力の人のものより短い。
【0006】
典型的には、乳児は遠視で生まれ、目の長さは、調節なしで、遠くの物体の最適または最適に近い合焦に必要であるよりも短い。「正視化」と呼ばれる、目の正常な発達の期間に、目の軸方向長さは、目の他の寸法と比較して、調節なしで遠くの物体の最適に近い合焦をもたらす長さまで延びる。理想的には、生物学的プロセスは、目が最終的な成人サイズに成長する際に、目のサイズに対して、最適に近い相対的な目の長さを維持する。しかし、近視の人では、全体的な目のサイズに対する相対的な目の軸方向長さは、発達の期間に、遠くの物体の最適に近い合焦をもたらす長さを超えて増加し続け、ますます顕著な近視となる。
【0007】
近視は、行動要因ならびに遺伝要因によって影響を受けると信じられる。したがって、近視は、行動要因に対処する治療デバイスによって低減することができる。たとえば、近視を含む目の長さに関係する障害を治療するための治療デバイスが、米国特許出願公開第2011/0313058A1号に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2011/0313058A1号
【文献】国際特許出願第PCT/US2017/044635号
【非特許文献】
【0009】
【文献】国際試験規格ASTM D1003
【文献】国際試験規格BS EN ISO 13468
【文献】インターネット<http://www.montana.edu/jshaw/documents/18%20EELE582_S15_OTFMTF.pdf>
【文献】インターネット<https://www.slrlounge.com/diffraction-aperture-and-starburst-effects/>
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
目の長さの拡張を担う網膜中の信号を減少させる眼鏡およびコンタクトレンズが開示されている。例示的な実施形態は、視軸上にドットがない開口を有する、散乱中心のパターンまたは「ドット」を加えることによって処理された、たとえばポリカーボネート、またはTrivexレンズブランクを使用して作られる。その結果、近視の進行に関連する目の拡張を減少させると信じられる網膜画像中のコントラストが減少する。レンズ軸上に配置されるドットのない開口によって、ユーザは、軸上の物体を見るときに最高の視力を経験する一方で、ユーザの視野の周辺にある物体は、コントラストおよび明瞭度が低下して見える。
【0011】
これらの眼鏡では、屈折異常を補正する(しかし治療しない)ために通常使用されるものと比較して、合焦した画像は、網膜の周辺区域でコントラストが低下する。コントラスト低減の正確な量は、伝送される画像中の暗い区域と明るい区域の相対的な量に依存する。上の例では、光の24%が均一に分散されるが、最大コントラスト低減は48%となる。ここで、コントラストは、輝度差/平均輝度と規定される。網膜の周辺区域におけるコントラストのこうした低減量が、目の長さの拡張の制御を担う機構に関係する目の生理学に重要な影響を及ぼすことを、実験が示している。
【0012】
本発明の様々な態様は以下のように要約される。
【0013】
一般的に、第1の態様では、本発明は、2つの対向する曲面と、透明な開口を囲む散乱領域とを有するレンズ材料を含む眼科用レンズを特徴とし、散乱領域が、入射光を散乱するようにサイズ決定および形状決定される複数の離間した散乱中心を有し、散乱中心が、隣接する散乱中心間の間隔の不規則な変化、および/または散乱中心サイズの不規則な変化を含むパターンで配置される。
【0014】
眼科用レンズの実施形態は、以下の特徴および/または他の態様の特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる。たとえば、散乱中心は、規則的な配列の格子サイトに対して位置決めすることができ、ここで各散乱中心は、ジッタ振幅に等しい量またはジッタ振幅未満の量だけ格子サイトの対応するものから少なくとも1つの寸法(たとえば、x方向および/またはy方向)に変位されており、ジッタ振幅は、隣接する格子サイト間の距離のである。ジッタ振幅は、0.5以下(たとえば、0.01~0.5、0.02以上、0.03以上、0.04以上、0.05以上、0.08以上、0.1以上、0.12以上、0.15以上、0.18以上、0.2以上、0.25以上、0.3以上、0.35以上、0.4以上)であってよい。
【0015】
散乱中心は、定格の値からはランダムに変わる寸法を有することができ、ランダムな変化は、ジッタ振幅に等しい、またはジッタ振幅未満である。ジッタ振幅は、定格値の0.5倍以下(たとえば、0.01~0.5、0.02以上、0.03以上、0.04以上、0.05以上、0.08以上、0.1以上、0.12以上、0.15以上、0.18以上、0.2以上、0.25以上、0.3以上、0.35以上、0.4以上)であってよい。
【0016】
散乱中心は、定格体積からはランダムに変わる体積を有することができ、ランダムな変化は、ジッタ振幅に等しい、またはジッタ振幅未満である。ジッタ振幅かける定格体積は、0.5以下(たとえば、0.01~0.5、0.02以上、0.03以上、0.04以上、0.05以上、0.08以上、0.1以上、0.12以上、0.15以上、0.18以上、0.2以上、0.25以上、0.3以上、0.35以上、0.4以上)であってよい。
【0017】
レンズは、レンズ軸を有することができ、開口および環状領域は、レンズ軸上にほぼ中心がある。
【0018】
散乱領域は、第1の散乱区域、および透明な開口と第1の散乱区域との間に配置される第2の散乱区域を含むことができ、第2の散乱区域は、第1の散乱区域の散乱中心よりも弱く入射光を散乱するようにサイズ決定および配置される散乱中心を備える。レンズは、レンズ軸を有することができ、開口ならびに第1および第2の散乱区域は、レンズ軸上にほぼ中心があり、第2の散乱区域中の散乱中心は、レンズ軸からの径方向距離が増えると単調に(たとえば、線形的または幾何学的に)増加する寸法を有する。レンズは、レンズ軸を有することができ、開口ならびに第1および第2の散乱区域は、レンズ軸上にほぼ中心があり、第2の散乱区域中の散乱中心は、レンズ軸からの径方向距離が増えると単調に(たとえば、線形的または幾何学的に)変化する寸法および/または体積を有する。
【0019】
散乱中心間隔の不規則な変化は、ランダムな変化であってよい。散乱中心サイズの不規則な変化は、ランダムな変化であってよい。
【0020】
散乱中心間隔および/または散乱中心サイズは、散乱中心に情報をコード化するために変化することができる。
【0021】
散乱中心は、形状がほぼ円形であってよい。散乱中心は、ロゴまたは英数字符号のように形作ることができる。
【0022】
レンズは、平レンズ、単焦点レンズ、または多焦点レンズであってよい。レンズは、眼鏡用レンズまたはコンタクトレンズであってよい。
【0023】
散乱領域は、環状領域であってよい。透明な開口は円形開口であってよい。
【0024】
別の態様では、本発明は、目の長さに関係する障害を治療する方法であって、患者の目の長さに関係する障害を識別するステップと、前の態様に従った眼科用レンズを使用して患者の視覚の周辺における画像のコントラストを低下させるステップとを含む、方法を特徴とする。
【0025】
さらなる態様では、本発明は、眼鏡フレームと、各々がフレームに取り付けられる上記態様に従った一対の眼科用レンズとを含む、一対の眼鏡を特徴とする。
【0026】
眼鏡の実施形態は、以下の特徴および/または他の態様の特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる。たとえば、ドットパターンは、透明な開口を通して見た物体の画像コントラストに比較して、少なくとも30%(たとえば、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、最高80%)だけ、ドットパターンを通して見た物体の画像コントラストを低下することができる。
【0027】
レンズは、透明な開口を通して、装着者の軸上視覚を20/20以上に補正する屈折力を有することができ、ドットパターンを通した装着者の周辺視覚の少なくとも一部では、レンズは、装着者の視覚を20/25以上に補正する。
【0028】
別の態様では、本発明は、目の長さに関係する障害を治療する方法であって、患者の目の長さに関係する障害を識別するステップと、上記の眼鏡を使用して患者の視覚の周辺における画像のコントラストを低下させるステップとを含む、方法を特徴とする。
【0029】
一般的に、さらに別の態様では、本発明は、焦点にレーザビームを合焦するステップと、眼科用レンズの曲面上のパターンで光学的散乱特徴を形成するために、合焦したレーザ放射に眼科用レンズを露光するステップとを含む方法を特徴とする。眼科用レンズを露光するステップは、レンズ表面の異なる場所が、焦点に対して異なる場所でレーザビームと交わるように、レーザビームとレンズとの間の相対運動を生じさせるステップを含む。
【0030】
方法の実装は、以下の特徴および/または他の態様の特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる。たとえば、レーザビームによって形成される光学的散乱特徴は、焦点に対するレンズ表面の場所に依存して変えることができる。光学的散乱特徴に起因する散乱の程度は、焦点に対するレンズ表面の距離が増加すると減少することができる。
【0031】
パターンは、眼科用レンズの視軸に対応する透明な開口を囲む光学的散乱特徴の環状領域を含むことができる。光学的散乱特徴は、別個のドットを含むことができる。ドットは、各々が1mm以下の距離だけ離間し、各ドットが0.5mm以下の最大寸法を有する配列状に配置することができる。透明な開口は、1mmより大きい最大寸法を有する、ドットのない区域であってよい。
【0032】
レーザは、赤外線レーザであってよい。レーザは、CO2レーザであってよい。
【0033】
眼科用レンズは、パルス状レーザ放射に露光することができる。
【0034】
レーザは、レンズの表面からレンズ材料を除去するのに十分なエネルギーを有することができる。
【0035】
レーザは、0.5W~60Wの範囲のパワーを有することができる。
【0036】
レーザ放射は、露光期間に、約0.1mm以下(たとえば、約0.05mm以下、約0.025mm以下)のスポットサイズに合焦することができる。
【0037】
レンズ表面で露光される各場所が同じ継続期間および同じエネルギーの対応する別個の露光を受けるように、眼科用レンズを露光することができる。
【0038】
露光面は、凸面または凹面であってよい。
【0039】
一般的に、さらなる態様では、本発明は、眼科用レンズに散乱中心を形成する方法であって、眼科用レンズを形成する材料を泡立たせるのに十分な波長およびパワーを有するレーザ放射に眼科用レンズの区域を露光するステップを含む、方法を特徴とする。泡からの気泡が、眼科用レンズ中に散乱中心を形成する。本方法の実装は、他の態様の1つまたは複数の特徴を含むことができる。
【0040】
一般的に、さらに別の態様では、本発明は、レーザ放射の2つ以上のビームがレンズ材料の一部で重なるように2つ以上のビームにレンズ材料から形成された眼科用レンズを同時に露光するステップであって、重なったビームにおけるレーザ放射の強度がレンズ材料中に光学的散乱特徴を形成するのに十分である、ステップと、レンズ中に光学的散乱特徴のパターンを形成するためレンズ中で重なったビームの位置を変えるステップとを含む方法を特徴とする。
【0041】
方法の実装は、以下の特徴および/または他の態様の特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる。たとえば、2つ以上のビームのうちの単一のレーザ強度は、レーザビームへの10秒未満の露光で、レンズ材料中に光学的散乱特徴を形成するのに不十分であってよい。
【0042】
重なったビームにおけるレーザ放射が、レンズ材料と相互作用して、レンズ材料の屈折率を変えることができる。
【0043】
重なったビームにおけるレーザ放射が、レンズ材料中で光化学変化を引き起こすことによって、レンズ材料の屈折率を変えることができる。
【0044】
重なったビームにおけるレーザ放射が、レンズ材料中で光熱変化を引き起こすことによって、レンズ材料の屈折率を変えることができる。
【0045】
別の態様では、本発明は、眼鏡フレームと、フレームに取り付けられる一対の眼科用レンズとを含み、上記の方法のうちの1つを使用して形成された各レンズにわたって分散されるパターンをレンズの各々が含む、一対の眼鏡を特徴とする。
【0046】
眼鏡の実施形態は、以下の特徴および/または他の態様の特徴のうちの1つまたは複数を含むことができる。たとえば、各パターンは、散乱特徴がない透明な開口を囲む光学的散乱特徴を含む区域を含むことができる。ドットパターンは、透明な開口を通して見た物体の画像コントラストに比較して、少なくとも30%(たとえば、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%)だけ、ドットパターンを通して見た物体の画像コントラストを低下することができる。
【0047】
レンズは、透明な開口を通した、装着者の軸上視覚を20/20以上に補正する屈折力を有することができ、ドットパターンを通した装着者の周辺視覚の少なくとも一部では、レンズは、装着者の視覚を20/25以上に補正する。
【0048】
利点の中でもとりわけ、開示される実施形態は、ユーザのいずれかの目の軸上視覚をユーザが混乱する程低下させることなく、両方の目のレンズについて目の長さの拡張を担う網膜中の信号を減少させる特徴を含む眼鏡を特徴とする。たとえば、装着者の周辺視覚を控えめにぼやけさせる一方で、透明な開口を通して通常の軸上視を可能にするドットパターンを設けることによって、装着者が毎日一日中使用することが可能になる。開示される実施形態は、異なる対の眼鏡を交代で使用すること、または眼鏡の付属品を使用することを含む手法とは対照的に、両目に単一の対の眼鏡だけを使用してユーザに治療上の恩恵をもたらすこともできる。
【0049】
さらに、ドットパターンは、特にドットパターンが透明で無色の場合、および/またはコンタクトレンズが使用される場合に、他人にほとんど気付かれないことができる。ドットパターンがとらえがたいことによって、より目立つデバイスを毎日(たとえば、学校でまたは仲間の間で)使用すると照れくさくなる場合がある、ある種の装着者、特に子供が、より一貫して使用する結果となる場合がある。たとえば、段階的ドットパターンを使用して、第3者にドットパターンが目立つのを減らすことができる。
【0050】
ドットパターンは、見る人の快適性のために最適化することもできる。たとえば、ドットパターンは、見る人の視野の中でレンズの透明な開口から散乱ゾーンへの遷移を和らげる遷移ゾーンを特徴とすることができる。代替または追加で、ランダムなジッタをドットパターンに(たとえば、ドットサイズおよび/またはドット間隔に)加えることができる。そのようなランダム化が、光学的特徴の均一な配列に関連する不要な光学的効果(たとえば、回折効果または干渉効果)を減らすことができる。たとえば、ランダムなジッタを使用して、ユーザがまぶしさを経験するのを減らすことができる。反射中の回折効果または干渉効果を減らすことによって、第3者にドットパターンが目立つのを減らすこともできる。
【0051】
情報をドットパターンにエンコードすることができる。たとえば、ドットは、符号(たとえば、英数字符号)またはロゴのように形作ることができる。代替または追加で、ドット形状、サイズ、および/または間隔は、ドットパターンに情報を埋め込むためのキーに従って変えることができる。
【0052】
開示される実施形態は、たとえば、レンズの表面上またはレンズのバルクの中にドットパターンを形成することによって、目が長くなるのを低減するためのドットパターンが、従来型の眼科用レンズ上に効果的で経済的に形成するのを可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1A】近視を治療するための眼科用レンズを含有する一対の眼鏡を示す図である。
図1B図1Aに示される眼科用レンズ上のドットパターンを示す図である。
図2】近視を治療するための例示的な眼科用レンズを使用して経験されたコントラスト低減を図示する図である。
図3A】レンズの表面から除去された例示的なレンズ材料を示す断面図である。
図3B】レンズの対向する面間に散乱用含有物を有する例示的なレンズを示す断面図である。
図4A】透明な開口とドットパターンとの間に遷移ゾーンを有するドットパターンを有するレンズブランクを示す図である。
図4B】透明な開口とドットパターンとの間に遷移ゾーンを有するドットパターンを有するレンズブランクを示す図である。
図4C】均一な間隔からランダムな変位を有するドットを示す図である。
図5A】遷移ゾーンおよび均一に間隔をあけたドットを有する例示的なドットパターンを示す図である。
図5B】遷移ゾーン、および均一な間隔からランダムな変位を有するドットを有する例示的なドットパターンを示す図である。
図5C】遷移ゾーンおよび均一に間隔をあけたドットを有する別の例示的なドットパターンを示す図である。
図5D】遷移ゾーン、および均一な間隔からランダムな変位を有するドットを有する別の例示的なドットパターンを示す図である。
図5E】遷移ゾーンおよび均一に間隔をあけたドットを有するさらなる例示的なドットパターンを示す図である。
図5F】遷移ゾーン、および均一な間隔からランダムな変位を有するドットを有するさらなる例示的なドットパターンを示す図である。
図6A】隣接するドット間で異なる間隔を有する段階的ドットパターンを有する例示的なレンズを示す図である。
図6B】変化するドットサイズを有する段階的ドットパターンを有する例示的なレンズを示す図である。
図7A】変化するサイズのドットによってエンコードされる情報を有するパターンを有する例示的なレンズを示す図である。
図7B】異なる形状を有するドットによってエンコードされる情報を有するパターンを有する例示的なレンズを示す図である。
図7C】ロゴの形状でドットを形成するためのパターンを有する例示的なレンズを示す図である。
図8】例示的な機械読取りシステムを示す図である。
図9】レンズの表面上に凹所を形成するためのレーザシステムの概略図である。
図10】レンズの表面上に凹所を形成するための別のレーザシステムの概略図である。
図11A】レンズ材料の屈折率の変化対レーザ強度のプロットである。
図11B】例示的なレンズのバルク材料中に含有物を形成するためのレーザシステムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
図1Aを参照すると、明瞭な視覚を大幅に妥協することなく、同時に両目の治療を可能にする近視低減眼鏡100が開示される。さらに、眼鏡は、眼鏡が役に立たなくなることなく、また装着者の外見について照れくさくなることなく、装着者が同じ日常的な活動に従事することが可能になるように、十分に頑丈で目立たない。このことは、典型的には子供の目が長くなるのを止めるために眼鏡が使用されるために、特に望ましい。
【0055】
近視低減眼鏡100は、1対のフレーム101、およびフレームに取り付けられる眼科用レンズ110aおよび110bから構成される。一般的に、眼科用レンズは、平レンズ、単焦点レンズ(たとえば、正または負の屈折力を有する)、または多焦点レンズ(たとえば、2重焦点レンズまたは累進多焦点レンズ)であってよい。眼科用レンズ110aおよび110bは、各々が、それぞれコントラスト低減区域130aおよび130bによって囲まれる、透明な開口120aおよび120bをそれぞれ有する。透明な開口120aおよび120bは、装着者の軸上視位置と一致するように位置決めされ、一方で、コントラスト低減区域130aおよび130bは、装着者の周辺視に対応する。やはり図1Bを参照すると、コントラスト低減区域130aおよび130bは、それらの区域を通り装着者の目にいたる光を散乱することによって、装着者の周辺視覚中の物体のコントラストを低下する、ドット140の配列から構成される。一般的に、ドット140は、区域130aおよび130b中の各レンズの一方もしくは両方の表面上に突起および/もしくは凹所を形成することによって、ならびに/または、これらの区域中のレンズ材料自体に散乱用含有物を形成することによって設けることができる。
【0056】
透明な開口のサイズおよび形状を変えることができる。一般的に、透明な開口は、装着者の視力を最適に(たとえば、20/15または20/20に)補正することができる視野円錐を装着者にもたらす。いくつかの実施形態では、開口は、約0.2mm(たとえば、約0.3mm以上、約0.4mm以上、約0.5mm以上、約0.6mm以上、約0.7mm以上、約0.8mm以上、約0.9mm以上)~約1.5cm(たとえば、約1.4cm以下、約1.3cm以下、約1.2cm以下、約1.1cm以下、約1cm以下)の範囲に(xy平面内に)最大寸法を有する。ここで、開口は、たとえば図1Aに描かれたように円形であり、この寸法は、円の直径に対応する(すなわち、Ax=Ay)が、非円形(たとえば、楕円形、多角形、Ax≠Ay)の開口も可能である。
【0057】
透明な開口は、見る人の視野において、約30度以下(たとえば、約25度以下、約20度以下、約15度以下、約12度以下、約10度以下、約9度以下、約8度以下、約7度以下、約6度以下、約5度以下、約4度以下、約3度以下)の立体角の範囲を定めることができる。水平および垂直の視野平面で、範囲を定められた立体角は、同じであってよく、異なっていてよい。
【0058】
一般的に、コントラスト低減区域130aおよび130b中のドットパターンは、様々な設計パラメータに基づいて選択して、ユーザの網膜上に散乱する所望の程度の光をもたらすことができる。一般的に、これらの設計パラメータは、たとえば、ドット密度、ドットのサイズおよび形状、ならびにドットの屈折率を含み、以下でより詳細に議論される。理想的には、ドットパターンは、中心窩上の高い視力、および網膜の他の部分上の画像コントラストの低減、ならびに、装着者に長時間の連続した装着を可能にさせる十分低い不快感をもたらすように選択される。たとえば、子供が、1日の、全部でなくともほとんどの間、眼鏡を装着するのが快適であることが望ましい場合がある。代替または追加で、ドットパターンは、特定の作業、特に、たとえばビデオゲーム、読書、または他の広角で高コントラストな画像にさらされるといった、目の長さの拡張を強く促進すると信じられる作業用に設計することができる。たとえば、(たとえば、ユーザが、ユーザの周辺視で高いコントラストを経験する、および/または、装着者が周辺視を使用して装着者自身を移動させ向きを変える必要がない状況を経験する場合といった)そのような状況では、周辺における散乱強度および散乱角度を増加することができる一方で、意識および自己尊重を考慮するのは、それほど関心がない場合がある。これは、そのような高いコントラストの環境において、周辺のコントラスト低減により高い効果をもたらすことができる。
【0059】
ユーザの目の中心窩上の画像コントラストの低減は、ユーザの網膜の他の部分上の画像コントラストの低減よりも、目の拡張を制御するのに効果が低いと信じられる。したがって、ドットパターンは、ユーザの中心窩へと散乱される光を減らす(たとえば、最小化する)ために調整することができ、一方、網膜の他の部分の光の比較的多くが散乱される。中心窩上の散乱光の量は、透明な開口120aおよび120bのサイズにそれぞれ影響を受ける場合があるが、ドット、特に透明な開口に最も近いものの性質によっても影響を受ける場合がある。いくつかの実施形態では、たとえば、透明な開口に最も近いドットは、さらに離れたものよりも光の散乱の効果が低いように設計することができる。代替または追加で、いくつかの実施形態では、透明な開口に最も近いドットは、開口からさらに遠いものより小さい前方散乱角となるように設計することができる。
【0060】
ある実施形態では、ドットは、網膜上に均一な光の分布/低いコントラストの信号を作るため、狭い角度の散乱を減らし広い角度の散乱を増やして送出する一方で、散乱中心の寸法を通して明瞭度が保たれるように設計することができる。たとえば、ドットは、著しく広い前方散乱角度(たとえば、2.5度より大きい角度で偏向される、10%より多く、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上など)を生成するように設計することができる。狭い前方散乱角度、すなわち2.5度以内を、比較的低く(たとえば、50%以下、40%以下、30%以下、20%以下)保つことができる。
【0061】
一般的に、様々な異なる計測法を使用して、近視低減眼鏡で使用するためドットパターンを最適化するために、ドットパターンの性能を評価することができる。たとえば、ドットパターンは、たとえば異なるドットパターンを有するレンズの物理的な測定に基づいて、経験的に最適化することができる。たとえば、光の散乱は、ヘイズのための国際試験規格(たとえば、ASTM D1003およびBS EN ISO 13468)などといった、ヘイズ測定に基づいて特徴付けることができる。従来型のヘイズ測定器、たとえば、全体としてどれだけ多くの光がレンズを通して透過されるか、分散されずに透過される光の量(たとえば、0.5度以内)、どれだけ多くが2.5度より大きい角度で偏向されるか、および透明度(2.5度以内の量)を測定する、(Haze-Gard Plus instrumentなどといった)BYK-Gardnerヘイズ測定器を使用することができる。散乱パターンを経験的に最適化するため光の散乱を特徴付けるために、他の機器も使用することができる。たとえば、約2.5度の環状のリング中の光を測定することにより光の拡散を測定する機器を使用することができる(たとえば、Hornell製の機器)。
【0062】
代替または追加で、ドットパターンは、コンピュータモデリングソフトウェア(たとえば、ZemaxまたはCode V)によって最適化することができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、ドットパターンは、網膜上の散乱中心の画像を表す点像分布関数の最適化に基づいて設計することができる。たとえば、散乱中心のサイズ、形状、および間隔は、中心窩の外側の網膜が、網膜のこの領域におけるコントラストを低減(たとえば、最小化)するために散乱光で均質に覆われるように、網膜の照明を均等に広げるように変えることができる。
【0064】
代替または追加で、ドットパターンは、人間の視覚システムの空間周波数応答と呼ばれる、変調伝達関数の最適化に基づいて設計することができる。たとえば、散乱中心のサイズ、形状、および間隔は、空間周波数の範囲の減衰を滑らかにするために変えることができる。ドットパターンの設計パラメータは、所望に応じて、ある空間周波数を増減するために変えることができる。一般的に、視覚の対象の空間周波数は、細かい側で1度当たり18サイクル、粗い側で1度当たり1.5サイクルである。ドットパターンは、この範囲内の空間周波数のあるサブセットで信号の増加を可能にするように設計することができる。
【0065】
上述の計測法を使用して、ドットのサイズおよび/または形状に基づいてドットパターンを評価することができ、その両方を所望に応じて変えることができる。たとえば、ドットは、ほぼ丸(たとえば、球)、細長(たとえば、楕円)、または不規則形状であってよい。一般的に、突起は、可視光を散乱するのに十分大きいが、通常使用期間に装着者によって分解されないように十分小さい寸法(たとえば、図1Bに図示されるような直径)を有するべきである。たとえば、ドットは、約0.001mm以上(たとえば、約0.005mm以上、約0.01mm以上、約0.015mm以上、約0.02mm以上、約0.025mm以上、約0.03mm以上、約0.035mm以上、約0.04mm以上、約0.045mm以上、約0.05mm以上、約0.055mm以上、約0.06mm以上、約0.07mm以上、約0.08mm以上、約0.09mm以上、約0.1mm)~約1mm以下(たとえば、約0.9mm以下、約0.8mm以下、約0.7mm以下、約0.6mm以下、約0.5mm以下、約0.4mm以下、約0.3mm以下、約0.2mm以下、約0.1mm)の範囲に(xy平面内で測定される)寸法を有することができる。
【0066】
たとえば、光の波長に相当する寸法(たとえば、0.001mm~約0.05mm)を有するより小さいドットでは、光の散乱は、レイリー散乱またはミー散乱と考えることができることに留意されたい。より大きい突起、たとえば、約0.1mm以上では、光の散乱は、幾何学的散乱に起因することができる。
【0067】
一般的に、ドットの寸法は、各レンズにわたって同じであってよく、または変わってよい。たとえば、寸法は、たとえば透明な開口から測定したときの突起の位置の関数として、および/またはレンズの縁部からの距離の関数として増減することができる。いくつかの実施形態では、突起の寸法は、レンズの中心からの距離が増えると単調に変わる(たとえば、単調に増加する、または単調に減少する)。いくつかの場合には、寸法の単調な増加/減少は、レンズの中心からの距離の関数として、突起の直径を線形的に変えることを含む。
【0068】
図1Bに示されるドットは、各方向に均一な量だけ離間した正方格子上に配置される。これは、y方向ではDy、x方向ではDxによって示される。一般的に、近視の低減のため、見る人の周辺で十分なコントラスト低減をドットが集合的にもたらすように、ドットは間隔をあけられる。典型的には、(隣接ドットは重ならない、または融合しないという条件で)ドット間隔が小さくなると、コントラスト低減が大きくなる。一般的に、DxおよびDyは、約0.05mm(たとえば、約0.1mm以上、約0.15mm以上、約0.2mm以上、約0.25mm以上、約0.3mm以上、約0.35mm以上、約0.4mm以上、約0.45mm以上、約0.5mm以上、約0.55mm以上、約0.6mm以上、約0.65mm以上、約0.7mm以上、約0.75mm以上)~約2mm(たとえば、約1.9mm以下、約1.8mm以下、約1.7mm以下、約1.6mm以下、約1.5mm以下、約1.4mm以下、約1.3mm以下、約1.2mm以下、約1.1mm以下、約1mm以下、約0.9mm以下、約0.8mm以下)の範囲にある。例として、ドット間隔は、0.55mm、0.365mm、または0.240mmであってよい。
【0069】
図1Bに示されるドットがx方向およびy方向に等しい間隔で配置される一方で、より一般的に、各方向に間隔が異なってよい。さらに、突起は、正方形でない格子に配列することができる。たとえば、六角形格子を使用することができる。不規則な配列も可能である。たとえば、ランダムまたはセミランダムなドット配置を使用することができる。ランダムなパターンの場合に、与えられる寸法は、x方向およびy方向のドットの平均離隔距離となる。
【0070】
一般的に、ドットによるレンズのカバレッジは、所望に応じて変えることができる。ここで、カバレッジとは、xy平面上に投影したときの、ドットに対応する、レンズの全区域の比率のことを呼ぶ。典型的には、ドットカバレッジが低いと、ドットカバレッジが高いよりも、少ない散乱がもたらされることになる(個々のドットが別個であること、すなわち、ドットがより大きいドットを形成するように融合しないことを仮定する)。ドットカバレッジは、10%以上~約75%に変わることができる。たとえば、ドットカバレッジは、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%または55%などであってよい。ドットカバレッジは、たとえば、長期間(たとえば一日中)、装着者が眼鏡を自主的に装着するのに十分快適な周辺視のレベルを提供するため、ユーザの快適レベルに従って選択することができる。
【0071】
図1Bでは、ドットは円形の占有面積を有すると描かれるが、より一般的に、ドットは、他の形状を有することができる。たとえば、ドットは、楕円形ドットの場合など、1つの方向(たとえば、x方向またはy方向)に細長くてよい。いくつかの実施形態では、ドットは、形状がランダムである。
【0072】
ドット間のコントラスト低減区域130aおよび130b中のレンズに入射するシーンからの光は、ユーザの網膜上のシーンの画像に寄与するが、一方で、ドット上に入射するシーンからの光は寄与しないと信じられる。さらに、ドットに入射する光は、依然として網膜に透過され、そのために、網膜における光の強度を実質的に減少させることなく画像コントラストを低減する効果を有する。したがって、ユーザの周辺視野におけるコントラスト低減の量が、ドットによってカバーされるコントラスト低減区域の表面区域の比率と相関する(たとえば、ほぼ比例する)ことが信じられる。一般的に、ドットは、コントラスト低減区域130aおよび130bの(xy平面で測定した)面積の少なくとも10%(たとえば、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、たとえば、90%以下、80%以下、70%以下、60%以下)を占有する。
【0073】
一般的に、ドットパターンは、装着者の周辺視の領域中で見る人の視覚を著しく劣化することなく、装着者の周辺視中の物体の画像のコントラストを低減する。ここで、周辺視とは、透明な開口の領域の外側の視野のことを呼ぶ。これらの領域中の画像コントラストは、決定されたようなレンズの透明な開口を使用して見られた画像コントラストに対して、40%以上(たとえば、45%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上)低減することができる。コントラスト低減は、各個別の場合の必要に従って設定することができる。典型的なコントラスト低減は、約50%~55%の範囲であると信じられる。50%未満のコントラスト低減は、非常に軽い場合に使用することができ、一方で、より傾向がある被験者は、55%のコントラスト低減より高い必要がある可能性がある。周辺の視力は、主観的屈折によって判定すると、20/30以上(たとえば、20/25以上、20/20以上)に補正することができるが、一方で、依然として重要なコントラスト低減に達する。
【0074】
ここで、コントラストとは、同じ視野内の2つの物体間の輝度の差のことを呼ぶ。したがって、コントラスト低減とは、この差の変化のことを呼ぶ。
【0075】
コントラストおよびコントラスト低減は様々な方法で測定することができる。いくつかの実施形態では、コントラストは、制御された条件下で、レンズの透明な開口およびドットパターンを通して得られる、白と黒の正方形のチェッカボードなどといった、標準パターンの異なる部分間の明るさの差に基づいて測定することができる。
【0076】
代替または追加で、コントラスト低減は、レンズの光学的伝達関数(OTF)に基づいて決定することができる(たとえば、http://www.montana.edu/jshaw/documents/18%20EELE582_S15_OTFMTF.pdfを参照)。OTFでは、コントラストは、明るい領域と暗い領域が異なる「空間周波数」で正弦波状に変調される刺激の伝達について規定される。これらの刺激は、バーの間の間隔が1つの範囲にわたって変わる、明るいバーと暗いバーを交番させることのように見える。すべての光学系について、コントラストの伝達は、最も高い空間周波数を有する正弦波状に変わる刺激で最も低い。すべての空間周波数について、コントラストの伝達を記述する関係がOTFである。OTFは、点像分布関数のフーリエ変換を行うことによって得ることができる。点像分布関数は、検出器配列上にレンズを通して点光源を画像化し、点からの光がどのようにして検出器にわたって分散されるかを決定することによって得ることができる。
【0077】
相反する測定の場合、OTFは好ましい技法である。いくつかの実施形態では、コントラストは、透明な開口の区域と比較したドットによってカバーされたレンズの区域の比率に基づいて推定することができる。この近似では、ドットに当たるすべての光が全網膜区域にわたって均一に分散されるようになることが仮定され、これによって、画像のより明るい区域で利用可能な光の量が減少し、このことがより暗い区域に光を追加する。したがって、コントラスト低減は、レンズの透明な開口およびドットパターンを介して行われる光伝達測定に基づいて計算することができる。
【0078】
一般的に、眼科用レンズ110aおよび110bは、透明とすることまたは着色することができる。すなわち、レンズは、すべての可視波長に光学的に透過的であって透明および/または無色に見えてよく、または、スペクトルフィルタを含んで、着色されて見えてよい。たとえば、眼科用レンズは、装着者に伝達される赤い光の量を減らすフィルタを含むことができる。人間(特に子供)の目のLコーンの過剰な刺激は、目が最適でない様子で長くなり、近視になる場合があると信じられる。したがって、眼科用レンズを使用して赤い光をスペクトル的にフィルタ処理することによって、装着者の近視をさらに減らすことができる。
【0079】
スペクトル的なフィルタ処理は、レンズの表面に膜を付加することによってもたらすことができる。膜は、レンズ表面上に材料を物理的に堆積すること、表面上に材料の層をコーティングすること、または表面上に予め形成した膜を積層することによって付加することができる。好適な材料としては、吸収性フィルタ材料(たとえば、染料)、または干渉フィルタ処理をもたらす多層膜が挙げられる。いくつかの実施形態では、スペクトル的なフィルタ処理は、レンズ材料自体にフィルタ処理材料を含むこと、および/または、突起を形成するために使用される材料にフィルタ処理材料を含むことによってもたらすことができる。
【0080】
図2を参照すると、眼鏡210を使用する、スペクトル的なフィルタ処理およびドットパターンからのコントラスト低減の効果が、白い背景上の黒いテキストを見ることによって示される。テキストに対する白い背景は、眼鏡による、赤の波長のフィルタ処理に起因して、緑の外見をとる。画像のコントラストは、透明な開口220aおよび220bでは影響を受けないが、見る人の視覚フレーム中の他のどこかで低減される。
【0081】
上述したように、一般的に、ドットは、各レンズの片面もしくは両面上の突起および/もしくは凹所として設けることができ、ならびに/またはレンズ材料自体中の散乱用含有物として設けることができる。いくつかの実施形態では、ドットは、レンズ110aおよび110bの各々の表面(たとえば、背面または前面)上の突起の配列によって形成することができる。
【0082】
突起は、ポリカーボネートでは1.60である、下にあるレンズと同様の屈折率を有する光学的に透過性の材料から形成することができる。たとえば、レンズがポリカーボネートから形成される実施形態では、突起は、光活性型ポリウレタンまたはエポキシベースのプラスチックなどといった、PCと同様の屈折率を有するポリマから形成することができる。PCに加えて、レンズ自体が、アリルジグリコールカーボネートプラスチック、ウレタンベースモノマ、または他の耐衝撃抵抗性モノマからも作ることができる。代替で、レンズは、1.60より大きい屈折率を有するより高密度の高屈折率プラスチックのうちの1つから作ることができる。いくつかの実施形態では、レンズは、より低い屈折率を有する光学的に透過性の材料から作られる(たとえば、CR39は1.50であり、Trivexは1.53である)。
【0083】
表面ドットパターンは、レンズの片面または両面上に凹所を作成することによって形成することもできる。たとえば、図3Aを参照すると、レンズ300は、レンズ本体302の表面上に形成される凹所304から形成されるドットパターンを含む。この例では、負の屈折力を有するメニスカスレンズが描かれる。より一般的には、正の屈折力を有するレンズまたは屈折力のないレンズも使用することができる。凹所304は、上で記載した突起のものと同様の寸法および/または間隔を有することができる。凹所304は、エッチング(たとえば、物理的エッチングまたは化学的エッチング)または(たとえば、レーザ放射または分子ビームもしくはイオンビームを使用する)レンズ表面からの材料の除去といった、様々な技法を使用して形成することができる。いくつかの実施形態では、凹所は、レンズを成形するときに形成される。レンズ表面が入射光を屈折するよりもむしろ散乱するように、いくつかの場合では、十分な材料が取り除かれて表面を粗面化する場合に、凹所各々が、レンズ表面の領域に対応する。
【0084】
レンズ300は、凹所304の反対側のレンズ本体302の表面上に、光学的コーティング306をやはり含む。光学的コーティング306は、反射防止、スペクトル的なフィルタ処理(たとえば、UVフィルタ処理)、および/または保護用ハードコートなどといった、1つまたは複数の機能を実施することができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、コントラスト低減は、粗面などといった、他の拡散構造によって作成される。ホログラフィック拡散部またはすりガラス拡散部を使用することができる。いくつかの実施形態では、拡散部は、レンズの表面上に積層される膜によって設けることができる。
【0086】
図3Bを参照すると、別のレンズ310の断面図が示される。このレンズは、埋込散乱中心314を含むレンズ本体312を含む。レンズ310は、レンズ本体の表面のうちの1つに光学的コーティング316をやはり含む。両面の光学的コーティングがやはり可能である。散乱中心は、一般的に、レンズ材料のバルクとは一致しない屈折率を有する材料から形成される。たとえば、レンズが成形されるときに適切なサイズの透過性のビーズをレンズ材料中に分散することができ、ビーズ材料の屈折率とバルクレンズ材料の屈折率が異なる。透明な開口は、バルクレンズ材料だけから形成される。
【0087】
いくつかの実施形態では、埋込散乱中心314は、レンズのバルク材料中に屈折率変化を選択的に誘起するプロセスを使用して形成することができる。たとえば、レーザビームに露光されると、たとえば光化学および/または光熱相互作用を介して、バルクレンズ材料の屈折率に局所的な変化を引き起こすことができる。ドットパターンを局所化するために使用できる例示的なレーザ露光方法が下でより詳細に記載される。
【0088】
一般的には、レンズ材料とドット材料との間の屈折率の不一致は、たとえば点像分布関数を使用して計算されるように、各突起において散乱される光の量に影響を及ぼす。典型的には、材料間の屈折率の不一致が大きくなると、入射光がより多く散乱されることになる。したがって、屈折率の不一致は、ドットの散乱特性を最適化する設計パラメータとして使用することができる。
【0089】
いくつかの実施形態では、突起材料は、(たとえば、可視光範囲の1つまたは複数の波長で測定したとき)レンズ材料の屈折率の0.1以内(たとえば、0.09以下、0.08以下、0.07以下、0.06以下、0.05以下、0.04以下、0.03以下、0.02以下、0.01以下、0.005以下、0.002以下、0.001以下以内)となる屈折率を有するように選択される。
【0090】
ある実施形態では、より大きい(たとえば、0.1より大きい)屈折率の不一致が可能である。たとえば、突起材料は、0.15以上(たとえば0.2以上、0.25以上、0.3以上、0.35以上など最高約0.4)だけレンズ材料の屈折率から異なる屈折率を有するように選択することができる。
【0091】
一般的に、各ドットの屈折率は同じでよく、または異なってよい。たとえば、ドットが各々同じ材料から形成される場合、各ドットは、同じ屈折率を有する。代わりに、いくつかの実施形態では、屈折率は、ドット毎またはドットの異なるグループ間で変えることができる。たとえば、ある実装では、ドットとレンズバルク材料間の屈折率の不一致は、レンズ軸からの半径距離が増加すると各ドットから散乱する光の量が増加するように、レンズ軸からの半径距離が増加すると増加してよい。
【0092】
いくつかの事例では、ドットは、染料などといった、その上に入射する少なくとも一部の光を吸収する材料から形成することができる。材料は、広帯域の可視光を吸収するように、またはある波長でだけ光を吸収する(たとえば、短い波長成分または長い波長成分を吸収する)ように選択することができる。光吸収材料は、まぶしさを減らすのを助けること、および/または、ドットの点像分布関数を形作るための別の設計パラメータを提供することができると信じられる。いくつかの実施形態では、放射にさらすことによって、レンズ材料を透過性からある波長で吸収性となるように変えることができる。たとえば、レンズ材料中またはその表面上に光吸収中心を形成するために、放射にさらすことによって、レンズ材料を焦がすことができる。
【0093】
上述したように、一般的に、ドットパターンのサイズ、間隔、および配置を変えることができる。いくつかの実施形態では、ドットパターンは、たとえばドットサイズおよび/または間隔の勾配を特徴とする。ドットパターンは、(たとえば、屈折率の不一致および/または各ドットの形状における勾配に起因する)ドットの散乱効果の勾配を特徴とすることができる。段階的ドットパターンは、パターンの顕著性を減らすことができる。たとえば、レンズの透明部分から散乱部分への段階的遷移によって、急峻な遷移よりも目立ちにくくすることができる。
【0094】
いくつかの実施形態では、レンズは、ドットパターンがゾーン毎に変わる異なるゾーンを特徴とすることができる。たとえば、図4Aおよび図4Bを参照すると、レンズ400は、透明な開口410、遷移ゾーン420、および散乱ゾーン430を含む。透明な開口410は半径R410を有し、遷移ゾーン420は、内径R410および外径R420を有する透明な開口を囲む環状領域である。レンズの区域の残りが散乱ゾーン430を形成する。
【0095】
遷移ゾーン420は、散乱ゾーン430中のドットパターンよりも少なく入射光を散乱するドットパターンを特徴とし、透明な開口から散乱ゾーンにレンズの散乱特性の遷移をもたらす。そのような遷移は、散乱ゾーンが透明な開口に延びる場合にもたらされる散乱と比較して、中心窩への散乱を減らすという点で有利となる場合がある。さらなる利点は、遷移ゾーンがユーザへのドットパターンの可視性を減らし、より快適な装着経験を提供することができるという点である。これは、子供にとっては特に重要となる場合がある。ここで、長い期間そのようなレンズを特徴とする眼鏡を子供が定期的に装着する可能性は、子供の快適レベルに依存する。
【0096】
一般的に、遷移ゾーン420中のドットパターンが変化する場合がある。いくつかの実施形態では、遷移ゾーンは、ドットが同じ形状およびサイズを有し均一に離間される均一なドットパターンを特徴とする。代わりに、ある実施形態では、遷移ゾーン中のドットパターンは、ドット密度、間隔、および/またはサイズを変化させることを特徴とすることができる。たとえば、ドットパターンは、透明な開口に最も近くに最も弱い散乱をもたらして、R410からR420に増加する半径距離で散乱を単調増加させるように選択することができる。たとえば、いくつかの実施形態では、ドット密度が、R410からR420に(たとえば、線形的に)単調増加する。例として、ドット直径は、レンズ軸からの半径距離がR410からR420に増加すると、第1の値(たとえば、0.05mm)から第2の値(たとえば、0.17mm)に線形的に増加することができる。代替または追加で、ドット間隔は、R410からR420に(たとえば、線形的に)単調減少することができる。
【0097】
典型的には、R410は、約1mm~約3mm(たとえば、1.0mm~1.1mm、1.1mm~1.2mm、1.2mm~1.3mm、1.3mm~1.4mm、1.4mm~1.5mm、1.5mm~1.6mm、1.6mm~1.7mm、1.7mm~1.8mm、1.8mm~1.9mm、1.9mm~2.0mm、2.0mm~2.1mm、2.1mm~2.2mm、2.2mm~2.3mm、2.3mm~2.4mm、2.4mm~2.5mm、2.5mm~2.6mm、2.6mm~2.7mm、2.7mm~2.8mm、2.8mm~2.9mm、2.9mm~3.0mm)の範囲にある。
【0098】
R420は、約2mm~約6mm(たとえば、2.0mm~2.2mm、2.2mm~2.4mm、2.4mm~2.6mm、2.6mm~2.8mm、2.8mm~3.0mm、3.0mm~3.2mm、3.2mm~3.4mm、3.4mm~3.6mm、3.6mm~3.8mm、3.8mm~4.0mm、4.0mm~4.2mm、4.2mm~4.4mm、4.4mm~4.6mm、4.6mm~4.8mm、4.8mm~5.0mm、5.0mm~5.2mm、5.2mm~5.4mm、5.4mm~5.6mm、5.6mm~5.8mm、5.8mm~6.0mm)の範囲にあってよい。
【0099】
いくつかの実施形態では、ドットパターンは、規則的な配列に関してランダムに変位したドットを含む。ランダムな変位を導入することによって、星状のまぶしさなどといった、規則的に間隔をあけた散乱中心に関連する光学的効果を減らすことができる。たとえば、写真撮影に関係するような星状の効果を説明する、https://www.slrlounge.com/diffraction-aperture-and-starburst-effects/を参照のこと。したがって、ドットパターンにランダムな変位を含むことによって、散乱中心が均一に間隔をあけられた同様のドットパターンと比較して、ユーザにより快適な経験を提供することができる。代替または追加で、ドットパターンのランダム化によって、反射光中に現れる光学的効果(たとえば、回折効果または干渉効果)を減らして、観察者へのドットパターンの目立ちやすさを減らすことができる。
【0100】
ランダムな変位は図4Cに図示されており、図4Cでは、隣接する格子サイトがx方向に互いに距離Dx、y方向に互いに距離Dy離される、配列格子に関して位置決めされるドット401a~401eを示す。図示されるように、Dx=Dyであるが、しかしより一般的に、垂直の格子間隔と水平の格子間隔は異なってよい。
【0101】
各ドットについて、δx=Ax・Dx・RN[0,1]およびδy=Ay・Dy・RN[0,1]であって、AxおよびAyは、それぞれx方向およびy方向の0と1の間のジッタ振幅であり、同じであってよく、または異なってよい。RN[0,1]は、0と1の間のランダムな数である。
【0102】
ドットサイズもランダムに変わることができ、このことによって、まぶしさなどといった、均一なサイズのドットの配列に関連する光学的効果を減らすことができる。たとえば、図4Cに図示されるように、各ドットの径方向寸法は、定格のドット半径、r0から変えることができる。図示したように、ドット401dが定格のドット半径r0を有する一方で、ドット401bおよび401eは、それぞれ半径rbおよびreを有し、それらは両方ともr0より大きく、rb≠reである。ドット半径は、式ri=r0+Δrに従って設定することができ、ここで、Δr=Ar・r0・RN[0,1]であって、iはi番目のドットのことを呼び、Arは、0と1の間の値に設定されるドット半径ジッタ振幅である。
【0103】
より一般的には、上の例が公称で円形ドットのドット半径を参照する一方、ジッタは、用途に応じて、他のドットサイズパラメータに適用することができる。たとえば、ジッタは、ドット体積または他のドット寸法(たとえば、x寸法、y寸法)に適用することができる。
【0104】
いくつかの実施形態では、ドットパターンは、ドット位置におけるランダムなジッタとドットサイズにおけるランダムなジッタの両方を含むことができる。
【0105】
遷移ゾーンを特徴とする例示的なドットパターンが図5A図5Fに示される。図5A図5C、および図5Eにおけるパターンは、散乱ゾーン中に均一に間隔をあけたドットを特徴とする。図5B図5D、および図5Fにおけるパターンは、均一な間隔からランダムに変位したドットを特徴とする。水平軸と垂直軸の両方についての単位はmmである。図5A図5Fの各々は、対応するドットパターンの拡大図を示す差し込み図を含む。ドットパターンを特徴付けるパラメータは、下の表に提供される。
【0106】
【表1】
【0107】
いくつかの実施形態では、ドットパターンは、たとえばドットサイズおよび/または間隔の勾配を特徴とする。ドットパターンは、(たとえば、屈折率の不一致および/または各ドットの形状における勾配に起因する)ドットの散乱効果の勾配を特徴とすることができる。段階的ドットパターンは、パターンの顕著性を減らすことができる。たとえば、レンズの透明部分から散乱部分への段階的遷移によって、急峻な遷移よりも目立ちにくくすることができる。
【0108】
図6Aおよび図6Bを参照とすると、例示的な段階的ドットパターンが示される。
【0109】
詳細には、図6Aは、隣接するドット間で異なる間隔を有する段階的ドットパターン600を示す。透明な開口610は、低密度領域620へと遷移する。領域620では、隣接するドット間の距離が比較的大きく、こうして領域620中で低密度のドットをレンダリングする。低密度領域620は、次いで、高密度領域630へと遷移する。そこでは隣接するドット間の間隔は小さく、こうして高密度のドットをレンダリングする。高密度領域630は、次いで、低密度領域640へと遷移する。ここでは、隣接するドット間の間隔が再び増やされる。結果として、透明な開口610からレンズの外縁への段階的遷移に起因して、段階的ドットパターンは、より高い密度で均一なドットパターンへの遷移と比較して目立ちにくくすることができる。
【0110】
ドット密度は、隣接するドット間の間隔だけでなく、ドットサイズによっても制御することができる。たとえば、図6Bを参照すると、ドットパターン650は、ドットパターンの縁部680により近いドットと比較してより小さいサイズを有する透明な開口660に近いドットを特徴とする。
【0111】
別の例では、レンズは、ドットサイズとドット-ドット間距離の両方が変わる段階的ドットパターンを有することができる。
【0112】
ドットの形状および/または組成も径方向に変わり、段階的パターンをもたらすことができる。バルク散乱中心では、たとえば、ドットパターンの中心の散乱中心と比較して、ドットパターンの縁部により近いレンズバルク材料に比較してより小さい屈折率の不一致を有する散乱中心を形成することによって、段階的パターンを設けることができる。
【0113】
いくつかの実施形態では、情報をドットパターンにエンコードすることができる。たとえば、キーを有するだれかがその後情報を読み出すことができるように、キーに従って、ドットパターンの間隔、サイズ、および/または形状の変形体を導入することができる。いくつかの場合には、装着者の識別情報および装着者の視覚についての情報などといった、装着者についての情報を、ドットパターンにエンコードすることができる。
【0114】
いくつかの実施形態では、ドットは、サイズが変わるドットであってよい。図7Aを参照すると、レンズ700は、透明な開口702、ならびに小さいドット704および大きいドット706といった異なるサイズのドットを含むドットパターンを含む。一実施形態では、小さいドット704は、大きいドット706に対して小さく、したがって、大きいドット706は小さいドット704に対して大きい。
【0115】
ある実装では、小さいドット704と大きいドット706が2進数の構成要素に対応することができる。たとえば、小さいドット704と大きいドット706から反射される光の強度は異なり、2進数符号として解釈することができるので、小さいドット704がゼロに対応し、大きいドット706が1に対応する。文字列で読むと、小さいドット704と大きいドット706は、装着者の識別情報または視覚情報を含むがそれに限定されない情報でエンコードされる2進数コードシーケンスを形成する。たとえば、エンコードした情報は、レンズの処方情報を含むことができる。
【0116】
ある実装では、小さいドットサイズ704と大きいドットサイズ706以外の追加のドットサイズがあってよく、たとえば、ドットパターンのドットサイズは2つのサイズに限定されない。たとえば、レンズ700のエンコードしたドットパターンからの反射光をセンサが検出するときに、異なる出力に対応する様々なドットサイズを使用することができる。センサは、3つ以上の異なる強度の反射光(たとえば、レンズ700上のドットパターンの3つ以上の異なるドットサイズからの反射光の強度)を検出するように構成することができる。
【0117】
いくつかの実施形態では、ドットは、変化する厚さを有する環状のリングのドットであってよい。図7Bを参照すると、レンズ720は、透明な開口722ならびに「ドーナツ」724(たとえば、環状のリングおよび透明な中心部を有するドット)およびドット726を含むドットパターンを含む。
【0118】
ある実装では、ドーナツ724とドット726が2進数の構成要素に対応することができる。たとえば、ドーナツ724がゼロに対応し、ドット726が1に対応し、文字列で読むと、ドーナツ724とドット726は、装着者の識別情報または視覚情報を含むがそれに限定されない情報でエンコードされる2進数コードシーケンスを形成する。たとえば、エンコードした情報は、レンズの処方情報を含むことができる。
【0119】
一実施形態では、ドーナツ724の環状のリングのサイズ、形状、および/または厚さが変化し、こうして、反射光の強度が変化する。センサは、デコーダに送信されるアナログ信号へと変換するため、反射光の変化する強度を検出するように構成することができる。たとえば、ドーナツ724のある形状、サイズ、および厚さの環状のリングは、予め規定されるエンコードした情報に対応することができる。たとえば、ある厚さを有する環状のリングは、予め規定されるレンズの処方の強度に対応することができ、環状のリングの厚さが増加すると、レンズの処方の強度が増加する。
【0120】
いくつかの実施形態では、ドットは、英数字符号などといった符号またはロゴのように形作ることができる。図7Cを参照すると、レンズ740は、透明な開口742および符号744のドットパターンを含む。
【0121】
ある実装では、符号744は、ロゴ、同じ符号、様々な符号、簡単な形状、複雑な形状、英数字、文字、および/または言葉であってよい。たとえば、符号744は、処方の強度を表す数であってよい。別の例では、符号744は、交換用レンズをどこに注文するべきかを示す製造業者のロゴであってよい。別の例では、符号744は、特定の装着者の診断を示す形状(たとえば、装着者の近視および乱視のレベルに対応する、変化する子午線長および高さの長円)であってよい。
【0122】
一般的に、ドット間隔、サイズ、および/または形状の変化は、肉眼での人間の視覚では感知できない、および/または機械読取りシステムを使用してエンコードした情報を読み出す。ある実装では、顕微鏡読取り器を使用してエンコードした情報を読み出す。たとえば、顕微鏡または同様の拡大光学系を使用して、検眼士またはレンズ技術者がレンズからエンコードした情報を読み出すことを可能にする。
【0123】
ある実装では、機械読取りシステムを使用してエンコードした情報を読み出す。図8を参照すると、機械読取りシステム800は、ドットパターン803によって囲まれる透明な開口802を有するレンズ801、光放出器812、光814、反射光816、センサ818、データベース820、デコーダ回路822、およびコントローラ824を含む。
【0124】
いくつかの実装では、システム800は、光放出器812を含む。たとえば、光放出器812は、ドットパターン803上に、LEDまたはレーザなどといった光814を照らす。ドットパターン803は、たとえば、図7A図7Cに図示されるエンコードしたパターンである。
【0125】
光814は、反射光816の形で、ドットパターン803から反射される(または反射されない)。あるドットによって光814の完全な反射が生じることができ、またはドットがないことによって光814の反射が生じないことができるため、反射光816は、強度が変化する(たとえば、強度が、無反射から100%反射の範囲となる)。反射光816は、光814の部分的反射であってもよい。同様に、いくつかの実施形態では、透過光または透過光と反射光の組合せを使用して、エンコードした情報を読み出すことができる。
【0126】
ある実施形態では、システム800はセンサ818を含む。たとえば、センサ818は、光電セルなどといった、光検出器である。センサ818の様々な実装は、レーザスキャナおよびカメラベースの読取り器を含むことができるが、これらに限定されない。センサ818は、反射光816の強度を検出および測定し、信号を出力する。たとえば、センサ818によって出力される信号は、反射光816の強度を表すアナログ信号である。反射光816の強度に対応するセンサ818によって生成される信号が、デコーダ回路822に出力される。たとえば、反射光816の強度は、オンオフのパルスなどといった、信号に変換することができる。
【0127】
いくつかの実装では、センサ818によって生成される信号はデータベース820に送信される。たとえば、データベース820は、信号をデコードするため符号を相互参照すること(すなわち、たとえば図7Cから符号の画像認識検索を実施すること)ができる。データベース820は、符号、画像、英数字コードなどのバンクを含有することができる。たとえば、ドットパターン803がロゴまたは符号などといった、複雑な形状を含む場合、センサは、相互参照するために、データベース820のその複雑な形状に関係する信号を送信することができる。
【0128】
一実施形態では、デコーダ回路822が、センサ818からの信号をデコードし、それをデジタル信号に変換する。デジタル信号は、たとえば、ゼロがオフパルスを表し1がオンパルスを表す2進数コードなどといった、センサ818からの信号のデジタル表現である。
【0129】
デコーダ回路822は、デジタル信号をコントローラ824に送信する。デジタル信号は、コントローラ824が読み取ることができる。たとえば、デコーダ回路822は、コントローラ824がテキストへと変換する2進数コードを送信することができ、こうして、ドットパターン803上のエンコードした情報を読むことができる。
【0130】
上の実施形態は、コントラスト低減区域が環状(たとえば、透明な開口を囲む同心の円形)である例を特徴とする一方で、より一般的には、他の形状が可能である。たとえば、細長い(たとえば、楕円形の)形状が可能である。一般的には、コントラスト低減区域は、透明な開口の外側の全レンズをカバーすることができ、またはレンズの周辺における透明なレンズを残した部分だけをカバーしてよい。
【0131】
一般的には、ドットは、様々な方法でレンズから形成することができる。たとえば、ドットは、その全内容が参照によって本明細書に組み込まれる、「OPHTHALMIC LENSES FOR TREATING MYOPIA」という題名の、2017年7月31日に出願されたPCT/US2017/044635に開示されるものなどといった、インクジェット技法を使用して形成することができる。
【0132】
いくつかの実施形態では、ドットは、レーザ放射にレンズを露光することによってレンズ上に形成される。レーザ放射は、レンズ材料と局所的に相互作用してドットを作成する。一般的に、下の例で議論されるように、レーザを使用して、レンズの表面上またはレンズのバルク材料中のいずれかにドットを形成することができる。たとえば、十分なエネルギーを有するレーザビームへレンズ表面を露光することによって、表面上に小さい凹みおよび/または粗い斑点を残すことによってドットを作成することができる。レーザ放射にレンズ表面の区域を選択的に露光することによって、ドットパターンを表面上に形成することができる。たとえば、レーザのビームは、ビームがパルス放出される間、表面に対して動かすことができる。ビームとレンズ表面の間の相対的な運動は、表面を固定したままビームを動かすこと、ビームを固定したまま表面を動かすこと、またはビームと表面の両方を動かすことによってもたらすことができる。
【0133】
一般的に、レンズ表面上にレーザを使用して形成したドットの光学特性は、多くの形で影響を受ける場合がある。たとえば、レーザビームパルスのエネルギー密度は、一般的に、レーザ光とレンズ材料の物理的および/または化学的相互作用に影響を及ぼすことになる。たとえば、あるパルスエネルギーでは、ドットを形成するためにレンズ材料を露光する場合に、レンズ材料を溶かすことができる。いくつかのパルスエネルギーで、レンズ材料を泡立たせることによってドットを形成することができる。これは、レンズ溶融に対して高いエネルギーで生じることができる。いくつかのパルスエネルギーでは、レーザ光とレンズ材料との間の相互作用が、(たとえば焦げによって)レンズ材料に対する色変化をもたらす場合がある。さらに他の例では、レンズ材料は、切除によってレンズ表面からレンズ材料を除去することができる。
【0134】
他のレンズパラメータが、レーザを使用して形成されるドットの性質にやはり影響を及ぼす場合がある。これらは、レーザ波長、露光時間(たとえば、どれだけ長く各ドット位置を露光するか)、およびパス数(たとえば、一区域を複数回露光し、他の区域はそれぞれの間に露光される)を含み、その各々は、所望の表面の改変を達成するための選択することができる。加えて、レーザ光とレンズ材料間の相互作用は、レンズ材料自体に依存する。たとえば、より低いガラス遷移温度を有するレンズ材料中のドットは、比較的高いガラス遷移温度を有するレンズ材料中のドットに相当する、より低いパルスエネルギーまたはより少ないパルスを使用して形成することができる。
【0135】
いくつかの実施形態では、レーザおよびその動作パラメータは、たとえば3度と30度の間の特定の範囲の前方散乱角度を有するドットを設けるように選択される。特に、レーザパラメータは、15.5~19.5度の前方散乱角度をもたらす表面の改変を達成するように選択することができる。ある場合には、レーザパラメータは、10~50%の散乱効率(たとえば、ヘイズ)を達成するように選択される。特に、レーザパラメータは、15%~19%、および38%~42%の散乱効率を達成するように選択することができる。
【0136】
レンズ表面におけるレーザビームの解像度は、所望のドットサイズよりも小さくてよい。たとえば(たとえば、強度プロファイルのFWHMから決定されるような)ビームの解像度は、ドットの寸法の約50%以下(たとえば、約25%以下、約10%以下、約5%以下、約1%以下)であってよい。いくつかの実施形態では、ビームは、100μm以下(たとえば、50μm以下、20μm以下、10μm以下、5μm以下)の寸法を有する特徴を形成することが可能であってよい。
【0137】
図9を参照すると、レンズの表面上にドットを形成するためのレーザシステム900は、レーザ920、ビームチョッパ930、合焦光学系940、鏡950、およびステージ970を含む。レーザ920は、レーザビームを鏡950に向け、鏡950は、ビームをレンズ901に偏向し、レンズ901は、ステージ970によって鏡950に対して位置決めされる。アクチュエータ960(たとえば、圧電アクチュエータ)が鏡950に取り付けられる。ステージは、レンズ901を支持するレンズ搭載面980を含む。レーザシステム900は、レーザ920、ビームチョッパ930、およびアクチュエータ960と通信するコントローラ(たとえば、コンピュータコントローラ)をやはり含む。
【0138】
ビームチョッパ930および合焦光学系940は、ビーム経路中に位置決めされる。チョッパ930は、レンズ901がレーザ光の離散的なパルスに露光されるように、周期的にビームをブロックする。一般的に1つまたは複数の屈折力のある要素(たとえば、1つまたは複数のレンズ)を含む合焦光学系940は、レンズ表面上のビームによって除去される区域が所望のドットサイズに対応するように、レンズ901の表面上の十分小さいスポットにビームを合焦する。アクチュエータ960は、パルス状ビームをレンズ表面上の異なる目標点にスキャンするようにビームに対して鏡950の向きを変える。コントローラ910は、レーザシステムが予め規定されたドットパターンをレンズ上に形成するように、レーザ920、チョッパ930、およびアクチュエータ960の動作を調整する。
【0139】
いくつかの実装では、ステージ970は、アクチュエータをやはり含む。ステージアクチュエータは、たとえば、ビーム伝播方向に垂直な2つの横方向にレンズを動かす、多軸アクチュエータであってよい。代替または追加で、アクチュエータは、ビーム方向に沿ってステージを動かすことができる。ビーム方向に沿ってステージを動かすのは、レンズ表面の曲率にかかわらず、ビームの合焦位置にレンズ表面の露光部分を維持し、それによって、レンズ表面にわたってほぼ一定のドットサイズを維持するために使用することができる。ステージアクチュエータは、コントローラ910によって制御することもでき、コントローラ910は、このステージの運動をシステムの他の要素と調整する。いくつかの実施形態では、鏡アクチュエータの代わりにステージアクチュエータが使用される。
【0140】
一般的に、レーザ920は、レンズ材料を除去するのに十分なエネルギーを有する光を生成することが可能な任意のタイプのレーザであってよい。ガスレーザ、化学レーザ、色素レーザ、固体レーザ、および半導体レーザを使用することができる。いくつかの実施形態では、(9.4μmまたは10.6μmの放出波長を有する)CO2レーザなどといった、赤外線レーザを使用することができる。たとえば、Universal Laser Systems, Inc. (Scottsdale, AZ)によって製造されたCO2レーザシステム(たとえば、60W VLS 4.60システム)などといった、市販のレーザシステムを使用することができる。いくつかの実施形態では、フェムト秒レーザを使用することができる。たとえば、Trumpf (Santa Clara, CA)によって製造された(たとえば、TruLaser Station 5005のTruMicro 2030レーザデバイスのような)市販のフェムト秒レーザシステムを使用して、所望の形状およびサイズのドットパターンを形成することができる。そのようなレーザデバイスのバーストモードは、単一パルスの最大エネルギーと比較してはるかに高いバーストエネルギーに達成し、より高い切除速度をもたらすことができる。この例示的なレーザシステムは、50μJの最大パルスエネルギーを有する400フェムト秒未満のパルス持続期間を提供することができる。
【0141】
パルス持続期間およびパルスエネルギーは、典型的には、所望のサイズのドットをもたらすように選択される。たとえば、いくつかの実施形態では、レーザ920は、レンズ901の表面を溶かすこと(たとえば、レーザエッチング)によって、レンズ901上に予め規定されたドットパターンを形成する。たとえば、レーザエッチングは、レンズ901の溶けた材料を拡張させ、ドットを形成するへこんだ凹みおよびその周りの盛り上がった窪みをもたらすために、レーザ920がレンズ901表面の一部を加熱して溶かしてドットを形成する。
【0142】
ある実装では、レーザ920は、レーザ発泡を使用してレンズ901上に予め規定されたドットパターンを形成する。たとえば、レーザ光がレンズ材料と相互作用すると、材料が軟化または溶融し、軟化/溶融した材料中に気体の泡が形成される。材料が冷えてその室温の状態に戻ると、これらの泡は閉じ込められる。閉じ込められた泡は効率的に光を散乱し、ドットをもたらすことができる。
【0143】
実施形態では、レーザ920は、レーザマーキングを使用してレンズ901上に予め規定されたドットパターンを形成する。たとえば、レーザマーキングは、たとえば予め規定されたドットパターンを形成するレンズ901の部分の化学的または物理的な改変に起因して、レンズ901上に色変化を誘起することによって、レンズ901上に予め規定されたドットパターンを形成する。別の実施形態では、レーザ920は、レーザマーキングを使用して、レンズ901を焦がし、レンズ901上に予め規定されたドットパターンを形成することによって、レンズ901上に予め規定されたドットパターンを形成する。
【0144】
いくつかの実装では、レーザ920は、切除を使用してレンズ901上に予め規定されたドットパターンを形成する。たとえば、レーザ920を使用して、局所的にレンズ901の材料を蒸発または昇華させることによってレンズ901を切除し(たとえば、材料を除去し)、予め規定されたドットパターンを形成する。切除後、レンズ901上にクレータを形成することができる。
【0145】
いくつかの実施形態では、ドットパターンが目立つのを減らすため、(たとえば、切除クレータに起因する散乱中心における後方散乱および反射を減らすため)レンズ901上の切除クレータの表面は、表面粗さを減らすように修正される。表面粗さを減らすことが、小角度の光の散乱の効果を減らすことができる(たとえば、ここで、散乱角度は3度未満である)。たとえば、レンズ901上の切除クレータの表面は、(たとえば、より低いエネルギービームを使用することによって)切除クレータの粗い表面を溶かすために第2のパスによって修正することができる。より低いエネルギービームは、たとえば、レーザ920をデフォーカスすることによって(たとえば、レーザ920のビーム幅を増やすことによって)達成することができる。いくつかの実装では、ドットパターンの目立ちやすさを減らし続けることが、複数回にわたってレーザ920をデフォーカスすることを含む。たとえば、レーザ920のデフォーカスは、(たとえば、クレータの縁部をぼかすこと、または滑らかにすることによって)クレータの円錐に影響を及ぼすため、(たとえば、各パスでビーム幅を増加させた)デフォーカスを大きくしたいくつかのパス(たとえば、第2、第3、第4、などの各パス)で生じる。いくつかの実装では、ドットパターンの目立ちやすさを減らすことは、たとえば2つ以上の重なった同心の円といった、複数の重なった切除クレータで1つの切除クレータを成り立たせるように実施される複数の重なった切除を含む。
【0146】
いくつかの実装では、ドットパターンの目立ちやすさを減らすことは、レンズ920の背面で反射防止層をコーティングすることを含む。いくつかの実装では、レンズ前面に反射層がコーティングされる。このことは、レーザ切除がレンズ901の背面で実施される場合に特に有利である。一般的に、レーザ920は、レンズ901材料よりもコーティングに強いインパクトを与え、したがって、(たとえばクレータの縁部をぼかすこと、または滑らかにすることによって)クレータの円錐に影響を及ぼす。
【0147】
いくつかの実施形態では、短い焦点深度を有する合焦光学系を、レンズ表面の曲率と一緒に使用して、レンズの表面にわたって変化するドットサイズを提供することができる。たとえば、図10を参照するとシステム900と同様に、レンズ1001の表面上にドットを形成するためのレーザシステム1000は、レーザ1020、ビームチョッパ1030(または、レーザパルスを生成するための他の変調器)、合焦光学系1040、鏡1050、およびステージ1080を含む。レーザ1020は、レーザビーム1025を鏡1050に向け、鏡1050は、ビーム1025をレンズ1001に偏向し、レンズ1001は、ステージ1080によって鏡1050に対して位置決めされる。アクチュエータ1060は鏡1050に取り付けられる。レーザシステム1000は、レーザ1020、ビームチョッパ1030、およびアクチュエータ1060と通信するコントローラ1010をやはり含む。
【0148】
ビームチョッパ1030および合焦光学系1040は、ビーム経路中に位置決めされる。チョッパ1030は、レンズ1001がレーザ光の離散的なパルスに露光されるように、周期的にビーム1025をブロックする。合焦光学系1040は、レンズ表面上のビーム1025によって除去される区域が所望のドットサイズに対応するように、レンズ1001の表面上または表面近くの十分小さいスポット1045にビーム1025を合焦する。アクチュエータ1060は、パルス状ビーム1025をレンズ表面上の異なる目標点にスキャンするようにビーム1025に対して鏡1050の向きを変える。コントローラ1010は、レーザシステム1000が予め規定されたドットパターンをレンズ1001上に形成するように、レーザ1020、チョッパ1030、およびアクチュエータ1060の動作を調整する。
【0149】
移動ステージ1080は、図10中の矢印によって示されるようにレーザビーム1025の焦点面1035に横方向に平行にレンズ1001を動かす。レンズ表面の曲率に起因して、レンズ表面は、レーザビームの焦点1045で焦点面1035と常に一致するわけではなく、レンズ表面におけるレーザ放射の強度が、スポット1045に対するレンズの横方向位置に応じて変わることを意味する。一般的に、レンズ表面がエッチングされる量は、レンズ表面が受け取るレーザ放射の強度に依存することになる。したがって、焦点があっていないビームに露光されたレンズ表面上の位置は、レンズ表面が焦点面1035と一致する位置よりも強度の低いエッチングを受ける。その結果、レーザパルス時間および横方向平行移動速度が一定であると仮定すると、レンズ表面が焦点面1035と一致する位置でエッチング速度が最高となり、この場所からレンズがさらに平行移動されるとエッチング速度が減ることになる。したがって、段階的パターンは、単純に、レンズ表面の曲率に基づいて達成することができる。
【0150】
もちろん、他の露光パラメータ(たとえば、パルス時間、パルスエネルギー、ドットが複数の重複もしくは切除中心近く、発砲もしくは溶融ゾーンによって形成されるといったドットの成り立ち)を、レンズ曲率と一緒に、またはレンズ曲率とは別個に使用して、所望の段階的ドットパターンを達成することができる。
【0151】
レーザシステムは、レンズのバルク材料中に散乱中心を形成するためにも使用することができる。多くの場合に、光学材料(たとえば、プラスチックまたはガラス)のバルク特性のレーザ放射の効果は、レーザ放射の強度に依存する。これらの変化は、光化学変化、光熱変化(たとえば、光が加熱をもたらし、熱が材料の特性を変える)および/または何らかの他のメカニズムなどといった1つまたは複数の異なるメカニズムを介して生じる場合がある。一般的に、強度が強くなると、光学材料中の変化が大きくなる。多くの場合に、この変化は、必ずしも線形な関係ではない。たとえば、その下では、たとえあったとしてもバルク材料中でほとんど変化が生じない何らかの閾値強度が存在する場合がある。何らの閾値強度で、変化が起こり始める。たとえば、図11Aを参照すると、レンズ材料中の屈折率変化対レーザ強度の間のそのような非線形の関係のプロットが示される。
【0152】
比較的低い強度I0を有するレーザ放射は屈折率の単なる小さい変化ΔR0をもたらすが、レーザ強度が2I0に達すると、屈折率の著しい変化ΔR0が生じる。
【0153】
屈折率変化のこうした非線形な挙動を使用して、レンズ材料中に埋め込んだ散乱中心を局所化することができる。たとえば、レンズは、著しい屈折率変化を引き起こすための閾値強度より低いビーム強度を各々が有する2つ以上のレーザビームに露光することができる。各レーザビームは屈折率に目に見える変化を起こすには弱すぎる一方、レーザビームが重複する(たとえばすべてのレーザビームが同じ点で合焦できる)領域は、散乱中心の作成に対応する、屈折率の十分な変化を経験することができる。あるいは、ビームの焦点が材料のバルク内に配置される場合には、狭い合焦ゾーンを有する光学系を使用することができる。
【0154】
たとえば、図11Bを参照すると、2つの重複するビームを使用してレンズ1101中に埋込散乱中心を作るレーザシステム1105が示される。レーザシステム1105は、2つのレーザ1120Aおよび1120B、ビームチョッパ1130Aおよび1130B、合焦光学系1140Aおよび1140B、鏡1150Aおよび1150B、アクチュエータ1160Aおよび1160B、およびステージ1180を含む。コントローラ1110は、アクチュエータ、合焦光学系、およびレーザの各々に接続される。各レーザは、図10に記載されるものと同様の方法で動作される。合焦光学系および鏡は、ビーム1185Aおよび1185Bをレンズ1101内部の共通領域1190に合焦するように構成されており、重複したビームの強度は、レンズ材料中に変化を実現するのに十分であって散乱中心を形成するのに十分である。重複する領域の外側では、強度は、著しい屈折率変化のための任意の閾値より低い値に急激に低下する。
【0155】
3つ以上のレーザを使用することができる。代替または追加で、単一のレーザからのビームを分割して、それらが目標領域で重複して散乱中心を作るように、別個にレンズへと向けることができる。
【0156】
他の配置構成も可能である。たとえば、図11Bに図示されるように、複数のレーザビームが、反対側の面からでなくむしろ同じ面からレンズに入ることができる。
【0157】
上の記載が眼鏡のための眼科用レンズに関係している一方で、開示される原理は、コンタクトレンズなどといった、眼科用レンズの他の形態に適用することができる。いくつかの実施形態では、ドットパターンは、同様の治療効果をもたらすためにコンタクトレンズ上に設けることができる。コンタクトレンズのドットパターン中のドットのサイズおよび間隔は、上で眼鏡のレンズ用に記載されたドットパターンに相当する、ユーザの視野における立体角の範囲を定めるようにサイズ決定することができる。
【0158】
実施例
20kHzのパルス繰り返し率で、ナノ秒UVレーザを搭載するTrumpf Trumark 5000マーキングレーザステーションを使用して、Trivexレンズ上にドットが形成された。レーザステーションは、1,000mm/sのスキャン速度および100%の出力パワーで動作させた。ドットは、直径が約170ミクロンであり、ドット間隔に依存して15%~42%のヘイズをもたらした。いくつかの事例では、ドットは、直径が約0.04mmの個々のレーザマークからなる、約0.06mmおよび0.03mmの半径を有する2つの同心の重複する円をマーキングすることによって形成され、0.17mmの全体的な直径を有するドットがもたらされた。隣接するドットは、0.24mmまたは0.365mmのいずれかだけ離間された。
【0159】
他の実施形態
いくつかの実施形態が記載されている。他の実施形態は、以下の特許請求の範囲にある。
【符号の説明】
【0160】
100 近視低減眼鏡
101 1対のフレーム
110a 眼科用レンズ
110b 眼科用レンズ
120a 透明な開口
120b 透明な開口
130a コントラスト低減区域
130b コントラスト低減区域
140 ドット
210 眼鏡
220a 透明な開口
220b 透明な開口
300 レンズ
302 レンズ本体
304 凹所
306 光学的コーティング
310 レンズ
312 レンズ本体
314 埋込散乱中心
316 光学的コーティング
400 レンズ
401a ドット
401b ドット
401c ドット
401d ドット
401e ドット
410 透明な開口
420 遷移ゾーン
430 散乱ゾーン
600 ドットパターン
610 透明な開口
620 低密度領域
630 高密度領域
640 低密度領域
650 ドットパターン
660 透明な開口
680 縁部
700 レンズ
702 透明な開口
704 小さいドット
706 大きいドット
720 レンズ
722 透明な開口
724 ドーナツ
726 ドット
740 レンズ
742 透明な開口
744 ドットパターン
800 機械読取りシステム
801 レンズ
802 透明な開口
803 ドットパターン
812 光放出器
814 光
816 反射光
818 センサ
820 データベース
822 デコーダ回路
824 コントローラ
900 レーザシステム
901 レンズ
920 レーザ
930 ビームチョッパ
940 合焦光学系
950 鏡
960 アクチュエータ
970 ステージ
980 レンズ搭載面
1000 レーザシステム
1001 レンズ
1010 コントローラ
1020 レーザ
1025 レーザビーム
1030 ビームチョッパ
1035 焦点面
1040 合焦光学系
1045 スポット、焦点
1050 鏡
1060 アクチュエータ
1080 移動ステージ
1101 レンズ
1105 レーザシステム
1120A レーザ
1120B レーザ
1130A ビームチョッパ
1130B ビームチョッパ
1140A 合焦光学系
1140B 合焦光学系
1150A 鏡
1150B 鏡
1160A アクチュエータ
1160B アクチュエータ
1180 ステージ
1185A ビーム
1185B ビーム
1190 共通領域
1110 コントローラ
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図4A-4B】
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8
図9
図10
図11A
図11B