IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ソフトハレ エヌヴイの特許一覧

<>
  • 特許-吸入装置用スプレーノズル 図1
  • 特許-吸入装置用スプレーノズル 図2
  • 特許-吸入装置用スプレーノズル 図3
  • 特許-吸入装置用スプレーノズル 図4
  • 特許-吸入装置用スプレーノズル 図5
  • 特許-吸入装置用スプレーノズル 図6
  • 特許-吸入装置用スプレーノズル 図7
  • 特許-吸入装置用スプレーノズル 図8
  • 特許-吸入装置用スプレーノズル 図9
  • 特許-吸入装置用スプレーノズル 図10
  • 特許-吸入装置用スプレーノズル 図11
  • 特許-吸入装置用スプレーノズル 図12
  • 特許-吸入装置用スプレーノズル 図13
  • 特許-吸入装置用スプレーノズル 図14
  • 特許-吸入装置用スプレーノズル 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】吸入装置用スプレーノズル
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/00 20060101AFI20231002BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020549650
(86)(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-02
(86)【国際出願番号】 EP2019056844
(87)【国際公開番号】W WO2019180022
(87)【国際公開日】2019-09-26
【審査請求日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】62/646,193
(32)【優先日】2018-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18163039.3
(32)【優先日】2018-03-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519084526
【氏名又は名称】ソフトハレ エヌヴイ
【氏名又は名称原語表記】SOFTHALE NV
【住所又は居所原語表記】Agoralaan building Abis, 3590 Diepenbeek Belgium
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】バルテルズ, フランク
(72)【発明者】
【氏名】ラヴェルト, ユーゲン
【審査官】山田 裕介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0063076(US,A1)
【文献】特表平08-501979(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0049262(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0145009(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部(1B)を有し、かつそれぞれが流路出口(2A、2A’)を有する少なくとも2つの噴出流路(2、2’)を備えるノズル本体(1)であって、前記噴出流路(2、2’)は、衝突点で互いに交差するそれぞれの噴出軌道に沿って液体を噴出させるように配置され、前記先端部(1B)に少なくとも2つの凹部(3)が設けられ、前記2つの凹部(3)のそれぞれに1つの流路出口(2A、2A’)のみが配置され、
ここで前記ノズル本体(1)は平坦面(1A)を有し、その際、前記少なくとも2つの液体流路(2、2’)は、前記平坦面(1A)上に所定の深さ(D)で存在しており、さらに、前記少なくとも2つの流路(2、2’)を覆っており、かつ前記ノズル本体(1)の長手方向軸(X)に対して垂直な視線で見た場合に、前記ノズル本体(1)の前記先端部(1B)に適合している先端部(4B)を有する蓋(4)が設けられ、またここで、
前記凹部(3)は、前記少なくとも2つの流路(2、2’)が有する深さ(D)よりも深い第1の深さ(D’)を有する、ノズル本体(1)を含む、液体を吸入可能なエアロゾルへと霧化する吸入装置用のノズル。
【請求項2】
前記ノズル本体(1)はモノリシック構造体である、請求項1に記載のノズル。
【請求項3】
前記凹部(3)は、前記蓋内(4)へと延在している上部分(3’)をさらに有する、請求項1又は2に記載のノズル。
【請求項4】
前記凹部(3)は、長手方向軸(X)に沿って見た場合に増大していく深さ(D’)及び/又は幅(W’)を有し、その結果、前記先端部(1B、4B)で最も幅広になる傾斜断面がもたらされている、請求項1からのいずれか一項に記載のノズル。
【請求項5】
複数のノズル本体(1)を含む、請求項1からのいずれか一項に記載のノズル。
【請求項6】
各ノズル本体(1)はそれぞれ、それ自体の凹部(3)を有する、請求項に記載のノズル。
【請求項7】
前記複数のノズル本体(1)は共通の凹部(3)を共有している、請求項に記載のノズル。
【請求項8】
1つのノズル本体(1)の前記平坦面(1A)に対向している面が、隣接するノズル本体(1)の蓋(4)として機能している、請求項からのいずれか一項に記載のノズル。
【請求項9】
前記蓋(4)は前記凹部(3)の前記上部分(3’)をもたらしており、前記上部分(3’)は、前記蓋(4)の一方の側から他方の側へと延在している、請求項からのいずれか一項に記載のノズル。
【請求項10】
前記凹部の上部分(3’)の形状は、流路に隣接する縁部(6)を備える面取りの形状である、請求項に記載のノズル。
【請求項11】
a)先端部(1B)を有し、かつそれぞれが流路出口(2A、2A’)を有する少なくとも2つの噴出流路(2、2’)を備えるノズル本体(1)を設ける工程であって、前記噴出流路(2、2’)は、衝突点で互いに交差するそれぞれの噴出軌道に沿って液体を噴出させるように配置され、前記流路出口(2A、2A’)のうちの少なくとも2つが配置される少なくとも1つの凹部(3)が、前記先端部(1B)に設けられ、ここで前記ノズル本体(1)は平坦面(1A)を有し、その際、前記少なくとも2つの液体流路(2、2’)は、前記平坦面(1A)上に所定の深さ(D)で掘削されており、以下の工程、すなわち
-ウェハ基板を設ける工程、
-前記基板の一面(1A)に少なくとも2つの液体流路(2、2’)を作製する工程であって、その際、前記流路(2、2’)は所定の深さ(D)を有する、工程、
-前記本体(1)の前記一面(1A)にある前記少なくとも2つの液体流路(2、2’)の深さ(D)よりも深い、第1の深さ(D’)を有する凹部(3)を作製する工程であって、前記凹部は前記流路(2、2’)の端部を覆っている、工程、及び
-前記凹部(3)を横切る分離線(5)に沿って、前記本体(1)を前記基板から分離する工程を含み、
その結果、前記凹部(3)に少なくとも2つの流路出口(2B、2B’)が得られ、前記流路出口(2A、2A’)間の間隔は、ここで想定される最適な分離線(5’)からの前記分離線(5)の角度偏差又は線形偏差の影響を受けないままとなる、工程と、
b)前記ノズル本体(1)を蓋(4)で覆う工程とを含み、
前記蓋(4)は前記少なくとも2つの流路(2、2’)を覆っており、かつ前記ノズル本体(1)の長手方向軸(X)に対して垂直な視線で見た場合に、前記ノズル本体(1)の前記先端部(1B)に適合している先端部(4B)を有する、
請求項1から10のいずれか一項に記載のノズルの作製方法。
【請求項12】
複数のノズル本体(1)を示すパターンが前記ウェハ基板にバッチ加工され、前記分離線(5)は全ての前記凹部(3)を横切っている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ノズルはウェハ基板からバッチ製造されている、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記ウェハ基板は、シリコン、ガラス、又はセラミックなどの脆性材料を含むか、又はこれらで構成されている、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ウェハ基板は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含むか、又はこれで構成されている、請求項11から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から10のいずれか一項に記載のノズルを備える、液体を吸入可能なエアロゾルへと霧化する吸入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吸入装置の分野に関する。より詳細には、本発明は、そのような吸入装置で使用される噴霧ノズル、及びそのようなノズルの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ネブライザ又は他の液体エアロゾル発生器については、古くから当技術分野で知られている。そのような装置は、主として医学及び薬物治療において使用されている。この場合それらは、エアロゾル状の活性成分、すなわちガスに埋め込まれた小さな液滴を使用するための吸入装置として機能する。そのような吸入装置は、たとえば欧州特許出願公開第0627230号明細書から公知である。この吸入装置の最も重要な構成部品としては、エアロゾル化される液体が収容されるリザーバと、噴霧するのに十分高い圧力を発生させるポンプ装置と、ノズル状の噴霧装置とが挙げられる。
【0003】
このような吸入装置の改良については、本発明と同一の出願人によって出願された欧州特許第17168869号明細書に開示されており、この内容は、その全体が本明細書に組み込まれている。
【0004】
液滴の霧を十分に均質で微細なものにするために、通常、10バール~1000バールまで及ぶような比較的高い圧力が必要となる。各吸引時の気化液体の量を許容できる程度に少なく保つために、噴霧ノズルは通常、それぞれの断面が、たとえば2μm~200μmとなるなど、数μm程度にしかならない1つ又は複数の流路を備える。これらの流路はノズル本体に設けられており、またマイクロエッチング、及びマイクロリソグラフィーなどのマイクロ技術による作製手法を使用して作製されることが多い。しかしながら、これらの手法はシリコン、ガラス又は金属などの硬くて脆い材料を対象とすることが多く、上記のような高圧に曝されたときに起こるノズルの望ましくない変形を回避するために、ノズルは多くの場合、非常に硬い材料から作製されている。
【0005】
したがって、ノズルは通常、組み立て中及び使用中にノズルを保護する金属製ハウジング内で保持される。「ノズル」という用語は、ハウジングと実際のノズルを形成する部分とをまとめたものを対象に使用することが多いが、以下では、「ノズル」及び「ノズル本体」という用語は、液体を導く「主要な」部分を指している。
【0006】
シリコン又はガラスからノズルを作製する場合、ディスク状の基板ウェハがマスキングされ、ノズルが有する多数の二次元輪郭線、又は流路などのノズル特徴部を照射されることが多い。次いで、選択的エッチングにより、輪郭線、とりわけ流路が基板に対して垂直にエッチングされ、これにより、数十又は数百のバッチ製造された、半製品状のノズルを担持するウェハが設けられるようになる。分離工程では、ウェハは、ウェハ鋸による鋸引きによって個々のノズルに相当する断片へと切り分けられる。
【0007】
ただし、ノズルに対するのこ盤の位置合わせがそれほど正確でない場合(又は鋸引き工程中に変動が生じた場合でさえ)、流路の長さに悪影響が及ぶことになる。1つのノズル内で、鋸の角度が当該ノズルの長手方向軸に対して正確に垂直に方向付けられていない場合、ノズルの前縁部がノズルにおける(通常存在する)対称軸及び長手方向軸に対して垂直ではなくなるため、これら2つ(又はそれ以上)の流路の長さが異なってしまうことになる。その上、1つのノズルが有する全ての流路の平均長さは流路ごとに変化するため、ノズルの放出が極めて不均一となり、望ましくない結果を招くことになる。
【0008】
別の課題は、鋸引き中に材料の小片が発生する恐れがあることから生じる。これにより、不均一な「縁部の付いた」流路出口が形成され、発生する噴流、ひいては形成される液滴が最適ではないものになり得る。
さらに別の課題は、ノズルの組み立て中、又は使用中の流路出口の損傷、あるいは作製中、使用中、及び保管中の汚染に起因して生じる。塵や指紋がこの出口を詰まらせ、また噴流の形成が不均一になることが原因で、液体の気化が不十分となり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
(特許文献1)欧州特許出願公開第0627230号明細書
(特許文献2)欧州特許第17168869号明細書
【発明の概要】
【0010】
第1の態様では、本発明は、先端部(1B)を有し、かつそれぞれ流路出口(2A、2A’)を有する少なくとも2つの噴出流路(2、2’)を備えるノズル本体(1)であって、これらの噴出流路(2、2’)は、衝突点で互いに交差するそれぞれの噴出軌道に沿って液体を噴出させるように配置され、流路出口(2A、2A’)のうちの少なくとも2つが配置される少なくとも1つの凹部(3)が、先端部(1B)に設けられ、ここでこのノズル本体(1)は平坦面(1A)を有し、その際、少なくとも2つの液体流路(2、2’)は、前記平坦面(1A)上に所定の深さ(D)で掘削されており、さらに、これら少なくとも2つの流路(2、2’)を覆っており、かつこのノズル本体(1)の長手方向軸(X)に対して垂直な視線で見た場合に、このノズル本体(1)の先端部(1B)に適合している先端部(4B)を有する蓋(4)が設けられ、またここで、前記凹部(3)は、前記少なくとも2つの流路(2、2’)が有する深さ(D)よりも深い第1の深さ(D’)を有する、ノズル本体(1)を含む、液体を吸入可能なエアロゾルへと霧化する吸入装置用のノズルを提供する。
【0011】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様に係るノズルの作製方法を提供するものであり、本方法は、
a)先端部(1B)を有し、かつそれぞれが流路出口(2A、2A’)を有する少なくとも2つの噴出流路(2、2’)を備えるノズル本体(1)を設ける工程であって、これらの噴出流路(2、2’)は、衝突点で互いに交差するそれぞれの噴出軌道に沿って液体を噴出させるように配置され、流路出口(2A、2A’)のうちの少なくとも2つが配置される少なくとも1つの凹部(3)が、先端部(1B)に設けられ、ここでこのノズル本体(1)は平坦面(1A)を有し、その際、これら少なくとも2つの液体流路(2、2’)は、前記平坦面(1A)上に所定の深さ(D)で掘削されており、以下の工程、すなわち
-ウェハ基板を設ける工程、
-前記基板の一面(1A)に少なくとも2つの液体流路(2、2’)を作製する工程であって、その際、前記流路(2、2’)は所定の深さ(D)を有する、工程、
-この本体(1)の前記一面(1A)にある前記少なくとも2つの液体流路(2、2’)の深さ(D)よりも深い、第1の深さ(D’)を有する凹部(3)を作製する工程であって、前記凹部は流路(2、2’)の端部を覆っている、工程、及び
-前記凹部(3)を横切る分離線(5)に沿って、前記本体(1)を基板から分離する工程を含み、
その結果、前記凹部(3)に少なくとも2つの流路出口(2B、2B’)が得られ、前記流路出口(2A、2A’)間の間隔は、ここで想定される最適な分離線(5’)からの前記分離線(5)の角度偏差又は線形偏差の影響を受けないままとなる、工程と、
b)前記ノズル本体(1)を蓋(4)で覆う工程とを含む。
【0012】
別の態様では、本発明は、本発明の第1の態様に係るものであるが、本発明の第2の態様に係る方法によっても得られるか、又は得ることが可能なノズル、及び本発明の第1の態様に係る、液体を吸入可能なエアロゾルへと霧化する吸入装置用のノズルの使用方法を提供する。
【0013】
さらに別の態様では、本発明は、本発明の第1の態様に係るノズルを備える、液体を吸入可能なエアロゾルへと霧化する吸入装置を提供する。
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、既知の技術の欠点の1つ又は複数を回避するノズルを提供することである。
【0015】
別の目的は、ノズル本体がウェハから分離されるときに、流路出口の相対位置又は品質が分離工程によって確実に影響を受けないようにする、ノズル又はノズル本体の作製方法を提供することである。
【0016】
ウェハから分離されるとき、本ノズルの長手方向軸に対して対称となり、かつ/又は特定の長さを有する流路を備えるノズルの場合、前記対称性及び/又は前記長さはこの分離工程によって影響されてはならない。
【0017】
バッチ製造される場合、バッチから得られる全てのノズルの流路長さは、ウェハ鋸のわずかな位置合わせ誤りに関係なく、望ましい測定値を有する必要がある。
【0018】
作製中、使用中、又は保管中に、影響を受けやすい流路出口の損傷又は汚染のリスクを軽減する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この目的は、先端部(1B)を有し、かつそれぞれが流路出口(2A、2A’)を有する少なくとも2つの噴出流路(2、2’)を備えるノズル本体(1)であって、これらの噴出流路(2、2’)は、衝突点で互いに交差するそれぞれの噴出軌道に沿って液体を噴出させるように配置され、流路出口(2A、2A’)のうちの少なくとも2つが配置される少なくとも1つの凹部(3)が、先端部(1B)に設けられ、ここでこのノズル本体(1)は平坦面(1A)を有し、その際、少なくとも2つの液体流路(2、2’)は、前記平坦面(1A)上に所定の深さ(D)で掘削されており、さらに、これら少なくとも2つの流路(2、2’)を覆っており、かつこのノズル本体(1)の長手方向軸(X)に対して垂直な視線で見た場合に、このノズル本体(1)の先端部(1B)に適合している先端部(4B)を有する蓋(4)が設けられ、またここで、前記凹部(3)は、前記少なくとも2つの流路(2、2’)が有する深さ(D)よりも深い第1の深さ(D’)を有する、ノズル本体(1)を含む、液体を吸入可能なエアロゾルへと霧化する吸入装置用のノズルを提供することによって解決される。
【0020】
さらに、この目的は、本発明の第2の態様に係る方法によっても解決される。本発明の態様における特定の実施形態は、それぞれの従属請求項、後続の発明の詳細な説明、及び添付の図面に記載している。
【0021】
なお、本ノズルは長手方向軸(X軸、X方向)を有すると仮定している。少なくとも主としてこの方向に向かう間隔を、これ以降「長さ」と呼ぶものとする。「幅」という用語は、このX軸(Y軸)から横方向に延在している間隔を示し、「深さ」及び「高さ」という用語は、両方とも前述の両方の方向から垂直に向かう間隔を示す。
【0022】
本発明は、液体を吸入可能なエアロゾルへと霧化する吸入装置用のノズルに関し、詳細には多梁式衝突ノズルを備え、かつこれを利用する吸入装置に関する。そのようなノズルは、液体が高速で射出される多数、具体的には、たとえば2つ~約5つ又は4つとなる少なくとも2つ、若しくはより具体的には2つの液体流路を備えることを特徴とする。適切に設計かつ作製されている場合、それぞれの噴出軌道に沿って流れる個々の噴流は互いに交差して、衝突点で微細な霧を形成する。
【0023】
本ノズルは、ウェハ基板からバッチ製造され得るノズル本体を含み、この基板は、典型的にはシリコン、ガラス、又はセラミックなどの脆性材料で構成されている。別の実施形態では、このノズル本体をポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの、たとえば熱可塑性ポリマーを例とする、ポリマー材料などの別の材料でも同様に作製することができる。別の実施形態では、このノズル本体はデュロプラスチック材料、メラミン樹脂、又はステンレス鋼やチタンなどの金属で作製されているか、又はこれらを含むか、若しくはこれらで構成され得る。
【0024】
ノズル本体の形状をプレート状の形状とすることができ、これは典型的には、たとえば厚さ1~5mm、長さ5~30mm、かつ幅も5~30mmとなるなど、センチメートル範囲あるいはミリメートル範囲の寸法を有する。
【0025】
ノズル本体は、前記ノズル本体の一面に所定の深さで掘削できる、少なくとも2つの液体流路を担持している。衝突タイプのノズルを形成するには、噴流軸が交差している少なくとも2つの流路が必要となり、したがって、特に明記しない限り、これ以降の例は、1つのノズルに正確に2つの流路が設けられているという仮定に基づいている。ただし、以下に記載している本発明の範囲は、原則として多流路式ノズルも包含している。
【0026】
本発明によれば、流路出口のうちの少なくとも2つ(ないしそれ以上の)が配置される凹部が先端部に設けられる。
【0027】
このため、前記凹部を設けたことにより、特定のオフセットで前記先端部に対して後退するように、流路出口が設けられる。換言すれば、流路が通常終端する領域、すなわち先端部において対応する輪郭に適合している領域に、前記凹部が設けられている。
【0028】
一実施形態では、この凹部は、「右」及び「左」がノズルの長手方向軸から測定されている場合、右端の流路の外側から左端の流路の外側まで横方向に延在している。好ましい実施形態では、この凹部は、好ましくは少なくとも2つの液体流路間の深さ(D)と、以下でさらに詳述している凹部の第1の深さ(D’)との差に相当する少なくとも同一又は同様の間隔だけ、前記外側を越えて延在している。凹部の寸法は、各流路の仮想最前部(すなわち、流路出口における移行位置)を「切り取る」ようなものとなっている。凹部の深さ(D’)は流路深さ(D)よりも深く、これによって流路から噴出する液体の噴流と凹部の表面との接触を回避又は最小化するようにしている。この凹部を設けることにより、流路出口は凹部の後壁に位置するようにノズル内に後退させられ、その際の間隔(=オフセット)は、ノズルの先端部から凹部の「後壁」へと至る、ノズルの長手方向軸に平行となる方向で測定された凹部の寸法に等しい。
【0029】
前記流路を担持している面は、典型的には、たとえばプレート状、若しくは立方体状の全体的な形状を有し得る、ノズル本体の「平坦」面又は「上」面である。上記の例では、たとえば約30mm×30mm×5mmの大きさの半製品から作製されたノズルの場合、より大きな寸法(たとえば、30mm×30mmなど)となる側の面となり得る。ここでは、寸法の小さい方(たとえば、30mm×5mmなど)の面は「先端部」と呼ばれることがあり、ノズルの物理的に最前の部分と、それぞれの液体噴流が流路から放出されて向かうおおよその方向とをさらに示している。典型的には、先端部と上面とは互いに対して垂直に配置されている。
【0030】
各流路の噴流軸、すなわち噴出軌道(必ずしも流路軸自体である必要はない)は、ノズルの先端部に適合している前記前面と交差し、これによって前記面に「仮想の」流路出口が形成され、これはすなわち、凹部が設けられていない場合の流路出口の「仮想の」位置となる。「仮想」という用語は、本発明では、凹部を設けているために、「現実の」流路出口(単に出口と呼ばれる)が存在し、しかも異なる位置に配置されていることを示している。
【0031】
その結果、分離線に沿って鋸引き又はレーザ切断によってノズルを基板から分離するとき、前記分離線の方向が、ノズルの長手方向軸に対して垂直に延在する最適な分離線とは異なっていても、流路出口間の間隔は影響を受けないことになる。したがって、最適な霧化効果を得るために正確な調整が重要な基準となる間隔については、分離線の方向とは無関係になる。これが可能となるのは、分離工程の影響を受けない凹部の後端部の位置によって、流路の出口が画定されるようになるためである。流路構造自体を作製するのと同一の正確な工程(たとえば、マスキング及び選択的エッチング、レーザ穿孔、レーザアブレーション)の結果としてこの位置が設けられるため、これを正確に制御することができる。ただしこの正確な制御は、他の方法で(すなわち、凹部なしで)流路出口の位置及び向きを決定し、これらの流路出口がその後に先端部に(鋸引きされるか、又はその他の方法で分離されて)配置されることになる分離工程には依存していない。
【0032】
また、これらの流路出口が正確に形成された領域(凹部の後壁)にあり、またノズルの先端部が起伏のある、又は「すり減った」ものである可能性がないため、噴流の品質は非常に高いレベルになり、かつ鋸引きの質による影響を受けない。
【0033】
さらに、複数のノズルを示す形態で作製され、その後単一の基板から分離される隣接ノズルに注目すると、個々のノズルそれぞれにある流路間の間隔は一定のままとなるが、このことはこの場合に限らず、ウェハから作製される全てのノズルに関しても当てはまる。したがって、極めて均質なバッチを実現することができ、その結果品質が向上し、意図した設計からの偏差が減少することになる。
【0034】
別の利点は、影響を受けやすい流路出口の損傷又は汚染のリスクが大幅に軽減されることであり、これはなぜなら、それぞれの設計に応じて、凹部を流路出口が配置されている後端部への接触を妨げるような寸法にできるためであり、これによって使用中又は保管中に、予期しない接触によってこれらの流路出口に到達することはできなくなる。
【0035】
一実施形態によれば、少なくとも2つ(又はそれ以上)の凹部が設けられ、これら2つ以上の凹部のうちの少なくとも2つのそれぞれに1つの流路出口のみが配置されている。別の特定の実施形態では、流路出口ごとに1つずつ個別の凹部が設けられている。これは、各流路出口に、それぞれの先端部から前記出口を後退させる個別の凹部を設けていることを意味する。
【0036】
本実施形態の利点としては、除去する必要のある材料が少なくて済むことで、個別の作製による効果が得られることと、とりわけ互いの間に比較的長い間隔を置いて配置されている、2つ以上の流路出口用の大きな単一の凹部と比較すると、凹部の大きさが小さくなるために、前述の保護効果がさらに強まることとが挙げられる。
【0037】
特定の実施形態によれば、ノズル本体はモノリシック構造体であってもよく、又はモノリシック構造体から得られてもよい。これは、内部流路構造を含むノズル本体全体がバルク材料から作製されており、対応する蓋、すなわち当初から開放されている流路を閉鎖するための蓋以外の追加部品は必要ないことを意味しており、ここで言う「開放」とは、流路出口など、適切に機能させるために必要な開口部のことを指すものではないことは言うまでもない。たとえば、感光性材料で構成されたブロックに流路構造を堀削し、さらに照射領域をエッチング除去することにより、前記ブロック内に流路を形成することができる。同一の工程で、本発明に係る1つ又は複数の凹部も同様に作製することができる。
【0038】
ノズル本体は平坦面を有し、その際、少なくとも2つの液体流路は、前記平坦面上に所定の深さで掘削されており、さらに、これら少なくとも2つの流路を覆っており、かつ本ノズルの長手方向軸に対して垂直な視線で見た場合に、このノズル本体の先端部に適合している先端部を有する蓋が設けられている。
【0039】
すなわち、入口領域及び出口領域を除く全ての横方向で流路を包囲するために、ノズル本体において当初から開放されている上面を覆う蓋が設けられる。この蓋はウェハ基板と同一の材料から作製されていてもよいが、これをポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)などの、たとえば熱可塑性ポリマーを例とする、ポリマー材料などの別の材料でも同様に作製することができる。特定の実施形態では、ノズル本体及び蓋のうちの少なくとも一方は、PEEKで形成されていてもよい。別の特定の実施形態では、これらノズル本体及び蓋はPEEKで形成されていてもよく、又は言い換えれば、PEEKを含むか、あるいはこれで構成されていてもよい。他の実施形態では、これらノズル本体及び蓋の一方はPEEKで形成されていてもよく、他方は別の材料、好ましくはシリコン若しくはガラスで形成されていてもよく、又はこれを含むか、あるいはこれで構成されていてもよい。別の実施形態では、上記のような蓋及び/又はノズル本体はデュロプラスチック材料、メラミン樹脂、又はステンレス鋼やチタンなどの金属で作製されているか、又はこれらを含むか、若しくはこれらで構成され得る。
【0040】
たとえば、基板はシリコンで構成することができ、蓋はガラスで構成することができ、その逆もまた同様に可能である。蓋の先端部は、ノズル本体の先端部と位置合わせされている必要がある。特定の実施形態では、蓋の前線及びノズル本体の前線は、ノズル本体の長手方向軸に対して垂直に方向付けられていてもよい。ただし、ノズルを分離する前に蓋を基板へと結合した後でこれが当てはまらない場合でも、そのような位置合わせをもたらすように、鋸引き工程を設計することができる。
【0041】
特定の実施形態では、ノズル本体基板に結合される、場合によっては事前に組み立てられた第2の基板として蓋を設けている。結合後、ノズルを分離することができる。したがって、全ての蓋を個別に配置して基板に結合する必要があるわけではなく、すでに分離されたノズル本体上に結合する必要もない。ただし、後者も同様に可能である。
【0042】
別の特定の実施形態では、蓋は、ノズル本体が担持している構造の一部又は全てを担持するが、ノズル本体の場合と反転したパターンで行われる。したがって、蓋がノズル本体に結合されると、これらの両方が共に液体構造を形成することになる。たとえば、流路の側壁は、ノズル本体に掘削された下部と、蓋に掘削された上部とで構成されている。実際、ノズルがその長手方向軸に対して高度に対称的に設計されている場合、蓋は、その平坦面が第1のノズル本体の平坦面に対して接触する形態で配置される、第2のノズル本体によってもたらされ得る。
【0043】
特定の実施形態では、蓋は凹部の上部をもたらしていてもよく、前記部分は、蓋の一方の側から他方の側へと延在している。これらの実施形態では、この凹部の部分の形状は、流路に隣接する縁部を備える面取りの形状であってもよい。好ましい実施形態では、前記縁部は、流路出口のそれぞれの縁部と同一線上にある。このようにして、前記流路出口の周囲に周方向段部を設けることができる。
【0044】
これらの実施形態に関連し得る付加的利点としては、毛細管効果により、噴出流路から噴出され、本ノズルの使用中に出口付近に集積し得る液体が、これらの出口から離隔して本ノズルの当該面に向かって搬送され得ることが挙げられる。
【0045】
凹部は、前記流路の深さ(D)よりも深い深さ(D’)を有する。これにより、流路の出口に段が形成され、この段も正確に作製することができる。このようにして、流路出口はそれぞれ、高度な表面品質をもたらす(少なくとも)3つの面、すなわち右面及び左面(長手方向軸に沿って見た場合に、凹部の「幅」によって画定される)、並びに底面(同様に見た場合に、凹部の深さによって画定される)を有することになる。この高度な表面品質はさらに、流路出口に高品質な縁部をもたらし、このことはまた、作動条件下でノズルから射出される、正確に規定された液体噴流を再現できる状態にすることにさらに寄与するという点でも、とりわけ有利である。
【0046】
凹部の深さ寸法は、流路の深さに、>1の係数を乗算したものとなる。乗算係数は、たとえば1.1~50の範囲、好ましくは1.5~30の範囲、又は1.5~10、若しくは約3など1.5~5の範囲とすることができる。絶対測定での液体流路の深さ(D)と凹部の深さ(D’)との差は、約20μm~約400μm、好ましくは約20μm~約100μmの範囲とすることができる。凹部壁は当該面に向かって、各流路出口からたとえば約100μm~150μmに及ぶ間隔を有し得、凹部の長さ(オフセット)は、たとえば約50μm~80μmとなる。
【0047】
特定の実施形態では、少なくとも2つの噴出流路の長さは、約20μm~約500μm、又は約100μmなど約50μm~約150μmの範囲とすることができる。別の特定の実施形態では、これら少なくとも2つの噴出流路の長さは等しい。さらに、これら少なくとも2つの噴出流路は、約2μm~約400μm、又は約20μm~約50μmなど約10μm~約100μmに及ぶ断面を有していてもよい。好ましくは、これら少なくとも2つの噴出流路は、流路の全長にわたって一定となるある断面を有する。
【0048】
好ましくは、流路出口はそれぞれ、少なくとも3つの方向(右、左、下)において、周方向対称段部によって包囲されている。特定の実施形態では、この流路出口は、4つの方向(右、左、下、上)において、周方向段部、より具体的には周方向対称段部によって包囲されている。
【0049】
好ましい実施形態では、前述の蓋は、その先端部に凹部が蓋内へと延在している部分を有する。すなわち、この蓋は、さらに凹部を有するか、又はノズル本体の凹部を共有している。このようにして、ノズル本体の凹部に関する利点は、この蓋に「コピー」される。具体的には、流路の出口を完全に包囲している段を設けることができる。
【0050】
別の特定の実施形態では、蓋の凹部は、前記一面に対して平行であり、かつ流路を高さの等しい2つの半体へと分割している平面(中心面)を基準に、ノズル本体の凹部に対して対称となっている。このようにして、前記段の対称性が高まり、流路から放出されるときに噴流が特定の面に引き戻されることがなくなり、これはなぜなら、上面と底面とから流路出口までの間隔が、それぞれ同一となるためである。
【0051】
別の特定の実施形態によれば、前記凹部は、長手方向軸の方向に沿って見た場合に増大していく深さ及び/又は幅を有し、その結果、先端部で最も幅広になる傾斜断面がもたらされてもよい。すなわち、凹部の連続的に拡大していく、かつ/又は深化していく断面がもたらされることになる。傾斜し、拡大していく、かつ/又は深化していくこのような断面は、流路出口から凹部壁へのとりわけ滑らかな移行を可能にし、液体噴流が流路出口から放出される「トランペット状」又は「ベル状」の領域をもたらしている。
【0052】
そのような断面は、一面(すなわち、流路を担持している上面)に対して垂直となる方向により多くの材料を連続的に除去することで達成することができ、先端部に接近するほどに、拡大していくようになる。流路出口では、深さと幅、したがって除去される量は、流路出口自体の深さ、又は流路出口間の外側間隔よりもそれぞれ大きくなる可能性がある。ここでの傾斜は、たとえば線形傾斜、指数関数的傾斜、又は対数的傾斜とすることができる。
【0053】
別の特定の実施形態では、本ノズルは複数のノズル本体を含む。これらのノズル本体を上下に積み重ねて、個々のノズル本体の積層体を形成することができる。これらの実施形態では、ノズル本体はそれぞれ、先端部(1B)を有していてもよく、かつそれぞれが流路出口(2A、2A’)を有する少なくとも2つの噴出流路(2、2’)を備えていてもよく、これらの噴出流路(2、2’)は、衝突点で互いに交差するそれぞれの噴出軌道に沿って液体を噴出させるように配置され、流路出口(2A、2A’)のうちの少なくとも2つが配置される少なくとも1つの凹部(3)が、先端部(1B)に設けられ、ここでこのノズル本体(1)は平坦面(1A)を有し、その際、少なくとも2つの液体流路(2、2’)は、前記平坦面(1A)上に所定の深さ(D)で掘削されている。
【0054】
特定の実施形態では、噴出軌道とそれぞれ交差する少なくとも2対の噴流が発生する場合、複数の衝突点を有するノズルを得ることができる。これらの対はそれぞれ、1つの「層」、すなわち1つのノズル本体によってもたらすことができる。
【0055】
別の特定の実施形態では、ノズル本体はそれぞれ、それ自体の凹部を有していてもよい。これは、複数の個別の凹部を設けることができることを意味し、これらの凹部はそれぞれ、流路の一部のみを覆っており、この部分は、1つの単独のノズル本体(「層」)の流路で構成された一部であることが好ましい。本実施形態の利点は、個々の凹部を小さくすることができ、したがって前述の保護効果が増大することにある。
【0056】
別の実施形態では、複数のノズル本体は共通の凹部を共有することができる。これは、凹部が複数のノズル本体又は層にわたって延在し、その結果、流路出口の一部、又はさらには全てを覆っていることを意味する。本実施形態の利点は、共通の凹部を、たとえば個々のノズル本体を積み重ねてノズルを形成した後の一工程で作製するなど、作製が容易になり得ることにある。
【0057】
別の特定の実施形態では、1つのノズル本体の平坦面に対向している面が、隣接するノズル本体の蓋として機能している。すなわち、第1のノズル本体の「上」面が、第2のノズル本体の「底」面によって閉鎖されている。
【0058】
このようにして、最後の(最上部の)ノズル本体のみを特定の蓋で閉鎖する必要があるが、他の全ての層は隣接層によって閉鎖されることになる。これにより、ノズルの構造がより簡素になり、個々の部品や工程段階が減少することになる。
【0059】
第2の態様では、本発明は、上記で定義した本発明の第1の態様に係るノズルの作製方法にさらに関し、前記方法は、
a)先端部(1B)を有し、かつそれぞれが流路出口(2A、2A’)を有する少なくとも2つの噴出流路(2、2’)を備えるノズル本体(1)を設ける工程であって、これらの噴出流路(2、2’)は、衝突点で互いに交差するそれぞれの噴出軌道に沿って液体を噴出させるように配置され、流路出口(2A、2A’)のうちの少なくとも2つが配置される少なくとも1つの凹部(3)が、先端部(1B)に設けられ、ここでこのノズル本体(1)は平坦面(1A)を有し、その際、これら少なくとも2つの液体流路(2、2’)は、前記平坦面(1A)上に所定の深さ(D)で掘削されており、以下の工程、すなわち
-ウェハ基板を設ける工程、
-前記基板の一面(1A)に少なくとも2つの液体流路(2、2’)を作製する工程であって、前記流路(2、2’)は所定の深さ(D)を有する、工程、
-この本体(1)の前記一面(1A)にある前記少なくとも2つの液体流路(2、2’)の深さ(D)よりも深い、第1の深さ(D’)を有する凹部(3)を作製する工程であって、前記凹部は流路(2、2’)の端部を覆っている、工程、及び
-前記凹部(3)を横切る分離線(5)に沿って、前記本体(1)を基板から分離する工程を含み、
その結果、前記凹部(3)に少なくとも2つの流路出口(2B、2B’)が得られ、前記流路出口(2A、2A’)間の間隔は、ここで想定される最適な分離線(5’)からの前記分離線(5)の角度偏差又は線形偏差の影響を受けないままとなる、工程と、
b)前記ノズル本体(1)を蓋(4)で覆う工程とを含む。
【0060】
その結果、前記凹部に配置された少なくとも2つの流路出口が得られる。このため、凹部の「後壁」は流路出口の位置を画定しているものであり、ノズル本体が残りの基板又はバルク材料から分離される際に沿う分離線の位置若しくは方向を画定するものではない。したがって、前記流路出口間の間隔は、ここで想定される最適な分離線からの前記分離線の偏差の影響を受けないままとなる。典型的には、そのような最適な分離線は、ノズル本体の長手方向軸に対して垂直に、かつ/又は前面に対して平行に(すなわち、角度方向又は軸方向のオフセットなしで)延在している。このようにして、作製工程による結果は、鋸引き線の正確な方向とは無関係になる。
【0061】
この非依存性には限界があることは明らかであるが、これらの限界は通例、作製工程に関する通常の取り組みで供給できる精度を超えている。直径が300mmの標準ウェハと、ノズル本体の長手方向軸の方向で測定した場合に3mm×5mmとなる個々のノズル本体の寸法、及び150μmとなる流路長さとを例に取れば、最適な分離線からの鋸引き線の偏差が1度となるのは依然として許容できる範囲である。
【0062】
特定の実施形態では、工程a)としてまとめて示される工程段階に続いて、前記ノズル本体(1)は、工程b)に従って蓋(4)で覆われる。前記ノズル本体を覆うために、前記蓋は流路を有するノズル本体の当該面に配置され、取り付けられ、又は結合されてもよい。
【0063】
別の特定の実施形態では、複数の蓋を担持している基板が、ノズル本体において組み立てられているが、いまだ分割されていない基板上に配置され、かつ結合されてもよく、この分割は、分離線に沿ってこれを結合した後に行われる。
【0064】
ノズル本体を覆うための蓋は組み立てられていなくてもよく、又は、ノズル本体基板と同一の方法で、すなわち、蓋の一面に流路を作製することによって作製することができる。したがって、本体と蓋とを適切に位置合わせすることにより、両方の基板における流路と凹部とが適合し、その結果、ノズルの両側部分に液体用の管路構造を有するノズルが得られることになる。また、蓋は本体の鏡面コピーとすることができ、これはすなわち、適合している2つのノズル本体を相互結合することにより、ノズルを同様に得ることができる。
【0065】
複数のノズル本体を示すパターンが前記ウェハ基板にバッチ加工される特定の実施形態では、分離線は、基板内に形成されている全ての凹部を横切っている。これらの実施形態では、単一のノズル本体だけでなく、隣接する全てのノズル本体が共通の分離線に沿って分離される。前記線は、全てのノズル本体の凹部全てを横切っている。したがって、1つの単独のノズル本体に該当する前述の利点は、全てのノズル本体が均一なバッチ品質に関連する同一の幾何学的寸法を有するように増大されることになる。
【0066】
特定の実施形態によれば、これらの流路及び/又は1つ又は複数の凹部は、エッチングによって作製されてもよい。この作製手法は、ウェハ形状の基板、好ましくはガラス又はシリコン製のウェハ基板が、より多量のノズル本体のバッチ製造に使用される場合にとりわけ有利となる。
【0067】
別の実施形態によれば、流路並びに/又は1つ又は複数の凹部は、レーザ穿孔及び/又はレーザアブレーションによって作製されてもよい。この作製手法は、ノズル本体がモノリシックブロック、又は本発明の第1の態様に係るノズル本体又は蓋に関連して上述したような他の材料から作製される場合に、とりわけ有利となる。
【0068】
第3の態様では、本発明は、上述した本発明の第1の態様に係るものであるが、本発明の第2の態様に係る方法によっても得られるか、又は得ることが可能なノズルにさらに関する。すなわち、本発明は、前記ノズル本体が本明細書に記載している方法によって作製される場合に、上記で定義したようなノズル本体を備える全てのノズルに関する。
【0069】
第4の態様では、本発明は、上述した本発明の第1の態様に係る、液体を吸入可能なエアロゾルへと霧化する吸入装置用のノズルの使用方法にさらに関する。
【0070】
第5の態様では、本発明は、本発明の第1の態様に係るノズルを備える、液体を吸入可能なエアロゾルへと霧化する吸入装置に関する。したがって、本発明は、先端部(1B)を有し、かつそれぞれ流路出口(2A、2A’)を有する少なくとも2つの噴出流路(2、2’)を備えるノズル本体(1)であって、これらの噴出流路(2、2’)は、衝突点で互いに交差するそれぞれの噴出軌道に沿って液体を噴出させるように配置され、流路出口(2A、2A’)のうちの少なくとも2つが配置される少なくとも1つの凹部(3)が、先端部(1B)に設けられ、ここでこのノズル本体(1)は平坦面(1A)を有し、その際、少なくとも2つの液体流路(2、2’)は、前記平坦面(1A)上に所定の深さ(D)で掘削されており、さらに、これら少なくとも2つの流路(2、2’)を覆っており、かつこのノズル本体(1)の長手方向軸(X)に対して垂直な視線で見た場合に、このノズル本体(1)の先端部(1B)に適合している先端部(4B)を有する蓋(4)が設けられ、またここで、前記凹部(3)は、前記少なくとも2つの流路(2、2’)が有する深さ(D)よりも深い第1の深さ(D’)を有する、ノズル本体(1)を含むノズルを備える、好ましくは吸入可能な活性医薬品成分(active pharmaceutic ingredient:API)を含む液体を吸入可能なエアロゾルへと霧化する吸入装置にさらに関する。
【0071】
繰り返しを避けるために、ノズル、その作製方法、及びそのようなノズルを備える吸入装置に関する上記の説明、並びに以下の図面の説明を参照するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0072】
これ以降、以下の図面を用いて本発明を例示するものとする。
図1】最新技術に係るノズル本体を示す。
図2】傾斜した分離線から得られる、図1と同様のノズル本体を示す。
図3】凹部を有するノズル本体を示す。
図4】深さが増大していく凹部を有するノズル本体を示す。
図5】オフセット分離線から得られる、図4と同様のノズル本体を示す。
図6】傾斜した分離線から得られる、図4と同様のノズル本体を示す。
図7】単一の凹部を備える、蓋で覆われた図4と同様のノズル本体を示す。
図8】2つの個別の凹部を備える、蓋で覆われたノズル本体を示す。
図9】横方向凹部を備える、蓋で覆われた図4と同様のノズル本体を示す。
図10】ノズルの先端部の断面図を示す。
図11】蓋内へと延在している凹部を備えるノズルを示す。
図12】最適な分離線に沿って基板から分離された、従来技術に係る複数のノズル本体を示す。
図13】傾斜した分離線に沿って分離された、従来技術に係る複数のノズル本体を示す。
図14】オフセット分離線に沿って分離される前の、本発明に係る複数のノズル本体を示す。
図15】傾斜した分離線に沿って分離される前の、本発明に係る複数のノズル本体を示す。
【発明を実施するための形態】
【0073】
図1には、最新技術に係るノズル本体1を概略的に示している。ノズル本体1は、全体として矩形立方体の形状を有している。後部には収集チャンバが設けられているが、ここでは明瞭さを期すために、吸入口などは図示を省略している。
【0074】
一定の深さDで掘削された2つの液体流路2、2’が、前記ノズル本体1の1つの平坦面1Aに設けられている。長手方向軸X(細い破線)は、ノズル本体1の長さに沿って延在している。
【0075】
各流路2、2’の噴流軸A、A’(一点鎖線)はそれぞれ、ノズル本体1の先端部1Bに適合している前面と交差している。本例では、噴流軸A、A’はそれぞれの流路軸(参照符号なし)と同一線上にある。最新技術を示す図1において、そのように形成された「先端部流路出口」2B、2B’は、凹部を設けていない場合、先端部1Bでもあるこの前面に配置される。
【0076】
作製中、先端部1Bは、分離線5(太い破線)に沿ってノズル本体1をより大きな構成部品(たとえば、ウェハ)から鋸引きするか、その他の方法で分離することによって作製されてもよい。本例では、この分離線5は最適な分離線5’と同一線上にある。したがって、それぞれの噴流軸A、A’間で測定される先端部流路出口2B、2B’の横方向間隔Yは、当初設計又は意図されたとおりとなっている。
【0077】
図2には、図1と同様の先行技術に係るノズル本体が、最適ではない(最適な分離線5’に対して)傾斜した分離線5から得られていることを示している。この図では、すでに挿入している参照符号の一部を省略してある。
【0078】
図から分かるように、最適な分離線5’からの分離線5の角度偏差により、ここでもそれぞれの先端部流路出口2B、2B’のそれぞれの噴流軸A、A’間で測定される、先端部流路出口2B、2B’の横方向間隔Y’は、当初設計されたものとは異なっている(本例では、意図したものよりも広くなっている)。これらの先端部流路出口2B、2B’が意図した平面(図1の前面)にここではもはや配置されていないが、それでも前記角度偏差の結果形成された平面にあるため、これらそれぞれの長さ(参照符号なし)も互いとは異なっている。これにより、霧化が不十分となる可能性がある。本例では、流路2は流路2’よりも短くなっている。
【0079】
図3に示すように、例示的なノズル本体1は凹部3を有する。凹部3の深さD’は、本例では流路2、2’の深さDに等しい。流路2、2’として、凹部3が前記平坦面1Aに設けられている。ノズル本体1の先端部1Bには、凹部3は先端部の窪みとして配置されている。したがって、凹部3については、前記先端部1Bに対して、一定のオフセットO1で後退するよう、(「現実の」)先端部流路出口2A、2A’が設けられるように、(ここでは「仮想の」)先端部流路出口2B、2B’(斜線部)を包含しているものとして理解することができる。
【0080】
その結果、機械的な鋸引きなどにより、分離線5’(本例では、最適な分離線5でもある)に沿ってノズル本体1をより大きな構成部品から分離することに起因して、先端部1Bに何らかの損傷が発生したとしても、これらの流路出口2A、2A’が影響を受けることはなく、これはなぜなら、これらが鋸引きブレード又は他のいずれの分離工具にも決して接触しないためである。したがって、霧化中にそのような流路から噴出する液体噴流の品質も影響を受けることはない。高速の鋸引きにより先端部側1Bの表面粗さが増大しても、これは噴流品質に悪影響を及ぼすには至らない。したがって、ノズル本体1をその基板から分離するために、より迅速かつ/又はより安価な分離手法を使用することができる。
【0081】
図4には、深さD’が増大していく凹部3を有するノズル本体1を示している。このようにして、流路2、2’の出口2A、2A’に段が設けられ、前記段も正確に作製することができる。本例では、流路出口2A、2A’はそれぞれ(蓋などの対応部分を付加する前)、高度な表面品質を呈するように設計することができる3つの面、すなわち右面及び左面(凹部3の幅W’で画定される)、並びに底面(凹部3の深さD’によって画定されるた)を有する。とりわけ噴流品質を満たすためには、各流路出口2A、2A’を包囲している縁部の品質が良好でなければならないことを、ここで指摘しておく必要があり、このことは全ての実施形態に当てはまる。本実施形態の利点は、流路2、2’から放出される液体噴流(図示せず)が、より低度の表面品質又は縁部品質を有し得る他のいずれの表面若しくは縁部とも接触することがなく、したがって、霧化の高品質と再現性とを確保できることにある。
【0082】
図5は、図4に示すノズル本体1を示しているが、この場合、ノズル本体1は、ノズル本体1の前方にある最適な分離線5’からオフセットO2で離隔されている分離線5に沿って分離されたものである。その結果、図5のノズル本体1の先端部1Bは、図4の先端部と平行になっている。このように差が生じているにもかかわらず、出口2A、2A’は、図4の実施形態と同様に、互いから同一の所望の間隔を有する。したがって、分離線5の位置は、ノズル本体1の関連形状に影響を及ぼすことなく、一定の範囲で変動することができる。
【0083】
図6には、図4に示すものと同様のノズル本体を示しているが、ここで図示している事例では、ノズル本体1は、最適な分離線5’との間で尖角αを有する分離線5に沿って分離されたものである。ただしここでも、流路の長さにも、またこれらの流路出口間の間隔にも(それぞれの参照符号は省略してある)、この偏差による影響が生じることはなく、これはなぜなら、凹部3は、分離線5の不正確な方向付けに対して「緩衝」をもたらすためである。
【0084】
結果として得られる切断面が完全に凹部3内に収まる限り、凹部3が、角度偏差とオフセット偏差との組み合わせ、及び他の何らかの偏差によるその他の悪影響をも補償することができるのは言うまでもない。
【0085】
図7には、蓋4で覆われたノズル本体1を示している。結果として得られるノズルは、ノズル本体1に位置する下部分と、蓋4に位置する上部分3’とを有する、単一の凹部3を備える。図から分かるように、両流路出口2A、2A’を包囲する周方向段部が設けられている。
【0086】
これに対して、図8は、モノリシック構造体から作製することができる、別のノズル本体1を示す。したがって、この場合蓋は必要ない。本実施形態では、2つの個別の凹部3が設けられ、それぞれが流路出口2A及び2A’を1つずつ包囲している。ノズル本体1が、たとえば図7に示すように「開放」流路2、2’及び蓋4の形態で設計されている場合、2つの凹部を備える一実施形態も可能であることは明らかである。
【0087】
図9は、凹部3の上部分3’をもたらす蓋4を備える一実施形態を示し、前記部分3’は、蓋4の一方の側から他方の側へと延在している。凹部の部分3’の形状は、流路に隣接する縁部6を備える面取りの形状であってもよい。図示のように、前記縁部6は、流路出口2A、2A’のそれぞれの縁部と同一線上にあることが好ましい。このようにして、前記出口2A、2A’付近に周方向段部が依然として設けられている。
【0088】
前記実施形態の付加的利点としては、毛細管効果により、本ノズルの使用中に出口2A、2A’付近に集積し得る液体が、これらの出口から離隔して本ノズルの当該面に向かって搬送されることが挙げられる。図示している角度も寸法も縮尺どおりに描画されていないことは明らかであり、液体の粘度などの物理的パラメータに依存して、最適な結果を得るために他の寸法が必要になる場合がある。噴流と部分3’の壁との衝突を回避するために、面取りの傾斜を噴流の直径よりも大きくする必要があることも明らかである。
【0089】
図10には、図3図6の実施形態に基づく、ノズル本体1を備えるノズルの先端部の断面図を示している。本実施形態では、カバーとして機能する蓋4の形態の対応部分が、流路2、2’(流路2’は不可視である)を閉鎖するように一面1Aに配置されている。断面図は、流路2の端部を通過するため、これを断面線なしで描画している。
【0090】
凹部3を設けているために、流路出口2Aは、先端部1Bから間隔O1でオフセットされている。図から分かるように、蓋4の先端部4Bは、長手方向軸Xに対して垂直な視線(上記の図7では、描画平面に対して平行となる)で、ノズル本体1の先端部1Bと適合している。
【0091】
非適合となる実施形態も可能であるが、図10の実施形態は、最初に複数のノズル本体を含む基板と複数の蓋4を含む別の基板とを互いに結合し、次いで図10の描画平面に対して垂直となる分離線に沿って、当初は半製品状だったノズルをその隣接ノズル(図示せず)から分離し、その結果、それぞれがノズル本体と、これに結合された蓋とを備える個別のノズルが得られるので、とりわけ有利である。蓋基板とノズル本体基板とを同一工程で切断するため、適合化が自動的に達成されることになる。流路出口2A、2A’の前の上面と底面とが実質的に互いに鏡面反転しているため、対称的な結果が得られる。このため、液体噴流はこれらの方向のいずれにも偏差しないことになる。
【0092】
図11には、ノズル本体1と蓋4とを備えるノズルの別の実施形態を示しており、図7に示す実施形態と同様に、ここでも蓋4内へと延在している部分3’を有する凹部3を備える。凹部3の下部分はノズル本体1に位置し、流路2をさらに包囲している一方、上部分3’は蓋4に位置する。本実施形態では、部分3’は、前記一面1Aに対して平行であるノズルの中心面Pを基準に、ノズル本体1の凹部3の下部分に対して対称となっている。
【0093】
さらに、図10に示す状況とは対照的に、本実施形態では、流路出口2A、2A’から見て、凹部3は増大していく深さD’(図11の垂直方向で測定される)を有し、このために先端部1B、4Bに向かって拡大している。必要に応じて、幅も同一の方向に沿って増大していてもよい。このようにして、図示している傾斜した断面がもたらされ、それぞれの先端部1B、4Bで最大の広さになる。このような傾斜した断面は、流路出口2A、2A’から凹部壁へのとりわけ滑らかな移行を可能にし、液体噴流(図示せず)が各流路出口から放出される「ベル状」の領域をもたらしている。その結果、噴流品質が向上する。
【0094】
図12は、基板(図示せず)からそれぞれの先端部(参照符号は省略)に沿って分離されたばかりの、既知の技術に係る複数のノズル本体を概略的に示す。最適な分離線5’を破線で示している。結果として、全てのノズル本体は同一となり、具体的には、流路出口間の間隔が全てのノズル本体で同一となっている。
【0095】
ただし、ノズル本体が分離線5に沿って分離されている場合、図13に図示するように、流路出口の横方向間隔Y’の変動をもたらす角度偏差が発生し、これは明らかに望ましいことではない。また、1つのノズル本体における両流路のそれぞれの長さもわずかに異なっている(各左側流路は各右側流路よりも短い)。
【0096】
この欠点は、上述のような凹部を有するノズルによって、効果的に回避することができる。
【0097】
図14から分かるように、オフセットO1が凹部3の長さよりも長くならない限り(オフセットO2)、最適な分離線5’と実際の分離線5との間のオフセットは、流路出口の位置又は流路長さ(参照符号は省略)に影響を及ぼさない。
【0098】
また、図15から分かるように、分離線5が各ノズル本体の凹部3を横切っている限り、分離線5の角度偏差は、流路出口の位置又は長さに影響を及ぼさない。
【0099】
以下は、本発明に含まれる番号付き項目のリストである。
1.先端部(1B)を有し、かつそれぞれが流路出口(2A、2A’)を有する少なくとも2つの噴出流路(2、2’)を備えるノズル本体(1)であって、これらの噴出流路(2、2’)は、衝突点で互いに交差するそれぞれの噴出軌道に沿って液体を噴出させるように配置され、流路出口(2A、2A’)のうちの少なくとも2つが配置される少なくとも1つの凹部(3)が、先端部(1B)に設けられ、ここで
このノズル本体(1)は平坦面(1A)を有し、その際、少なくとも2つの液体流路(2、2’)は、前記平坦面(1A)上に所定の深さ(D)で掘削されており、さらに、これら少なくとも2つの流路(2、2’)を覆っており、かつこのノズル本体(1)の長手方向軸(X)に対して垂直な視線で見た場合に、このノズル本体(1)の先端部(1B)に適合している先端部(4B)を有する蓋(4)が設けられ、またここで、
前記凹部(3)は、前記少なくとも2つの流路(2、2’)が有する深さ(D)よりも深い第1の深さ(D’)を有する、ノズル本体(1)を含む、液体を吸入可能なエアロゾルへと霧化する吸入装置用のノズル。
【0100】
2.少なくとも2つの凹部(3)が設けられ、これら2つの凹部のそれぞれに1つの流路出口(2A、2A’)のみが配置されている、項目1に記載のノズル。
【0101】
3.ノズル本体(1)はモノリシック構造体である、項目1又は2に記載のノズル。
【0102】
4.凹部(3)は、蓋内(4)へと延在している部分(3’)をさらに有する、項目1から3のいずれか一項目に記載のノズル。
【0103】
5.前記凹部(3)は、長手方向軸(X)に沿って見た場合に増大していく深さ(D’)及び/又は幅(W’)を有し、その結果、先端部(1B、4B)で最も幅広になる傾斜断面がもたらされている、項目1から4のいずれか一項目に記載のノズル。
【0104】
6.複数のノズル本体(1)を含む、項目1から5のいずれか一項目に記載のノズル。
【0105】
7.ノズル本体(1)はそれぞれ、それ自体の凹部(3)を有する、項目6に記載のノズル。
【0106】
8.複数のノズル本体(1)は共通の凹部(3)を共有している、項目6に記載のノズル。
【0107】
9.1つのノズル本体(1)の平坦面(1A)に対向している面が、隣接するノズル本体(1)の蓋(4)として機能している、項目1から8のいずれか一項目に記載のノズル。
【0108】
10.蓋(4)は凹部(3)の上部分(3’)をもたらしており、前記部分(3’)は、蓋(4)の一方の側から他方の側へと延在している、項目4から9のいずれか一項目に記載のノズル。
【0109】
11.凹部の部分(3’)の形状は、流路に隣接する縁部(6)を備える面取りの形状である、項目10に記載のノズル。
【0110】
12.a)先端部(1B)を有し、かつそれぞれが流路出口(2A、2A’)を有する少なくとも2つの噴出流路(2、2’)を備えるノズル本体(1)を設ける工程であって、これらの噴出流路(2、2’)は、衝突点で互いに交差するそれぞれの噴出軌道に沿って液体を噴出させるように配置され、流路出口(2A、2A’)のうちの少なくとも2つが配置される少なくとも1つの凹部(3)が、先端部(1B)に設けられ、ここでこのノズル本体(1)は平坦面(1A)を有し、その際、これら少なくとも2つの液体流路(2、2’)は、前記平坦面(1A)上に所定の深さ(D)で掘削されており、以下の工程、すなわち
-ウェハ基板を設ける工程、
-前記基板の一面(1A)に少なくとも2つの液体流路(2、2’)を作製する工程であって、その際、前記流路(2、2’)は所定の深さ(D)を有する、工程、
-この本体(1)の前記一面(1A)にある前記少なくとも2つの液体流路(2、2’)の深さ(D)よりも深い、第1の深さ(D’)を有する凹部(3)を作製する工程であって、前記凹部は流路(2、2’)の端部を覆っている、工程、及び
-前記凹部(3)を横切る分離線(5)に沿って、前記本体(1)を基板から分離する工程を含み、
その結果、前記凹部(3)に少なくとも2つの流路出口(2B、2B’)が得られ、前記流路出口(2A、2A’)間の間隔は、ここで想定される最適な分離線(5’)からの前記分離線(5)の角度偏差又は線形偏差の影響を受けないままとなる、工程と、
b)前記ノズル本体(1)を蓋(4)で覆う工程とを含む、
項目1から11のいずれか一項目に記載のノズルの作製方法。
【0111】
13.蓋(4)は少なくとも2つの流路(2、2’)を覆っており、かつこのノズル本体(1)の長手方向軸(X)に対して垂直な視線で見た場合に、このノズル本体(1)の先端部(1B)に適合している先端部(4B)を有する、項目12に記載の方法。
【0112】
14.複数のノズル本体(1)を示すパターンが前記ウェハ基板にバッチ加工され、分離線(5)は全ての凹部(3)を横切っている、項目12又は13に記載の方法。
【0113】
15.本ノズルはウェハ基板からバッチ製造されている、項目12から14のいずれか一項目に記載の方法。
【0114】
16.ウェハ基板は、シリコン、ガラス、又はセラミックなどの脆性材料を含むか、又はこれらで構成されている、項目12から15のいずれか一項目に記載の方法。
【0115】
17.ウェハ基板は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含むか、又はこれで構成されている、項目12から15のいずれか一項目に記載の方法。
【0116】
18.本ノズルはウェハ基板からバッチ製造されている、項目1から11のいずれか一項目に記載のノズル。
【0117】
19.ウェハ基板は、シリコン、ガラス、又はセラミックなどの脆性材料を含むか、又はこれらで構成されている、項目1から11又は18のいずれか一項目に記載のノズル。
【0118】
20.ウェハ基板は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を含むか、又はこれで構成されている、項目1から11又は18から19のいずれか一項目に記載のノズル。
【0119】
21.項目12から17のいずれか一項に記載の方法により得られるか、又は得ることが可能な、項目1から11又は18から20のいずれか一項目に記載のノズル。
【0120】
22.項目1から11又は18から21のいずれか一項目に記載の、液体を吸入可能なエアロゾルへと霧化する吸入装置用のノズルの使用方法。
【0121】
23.項目1から11又は18から21のいずれか一項目に記載のノズルを備える、液体を吸入可能なエアロゾルへと霧化する吸入装置。
【符号の説明】
【0122】
1 ノズル本体
1A 平坦面
1B 先端部
1C 領域を含む先端部
2、2’ 噴出流路、液体流路、流路
2A、2A’ 流路出口
2B、2B’ 先端部流路出口
3 凹部
3’ 凹部の上部分
4 蓋
4B 先端部
5 分離線
5’ 最適な分離線
6 縁部
D 深さ
D’ 深さ
W’ 幅
A、A’ 噴流軸
X 長手方向軸
Y、Y’ 横方向間隔
O1、O2 オフセット
α 角度
P 平面

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15