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特許7358378アミノシリル官能化スチレンの混合物、それらの調製及びエラストマーコポリマーの製造におけるそれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】アミノシリル官能化スチレンの混合物、それらの調製及びエラストマーコポリマーの製造におけるそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C08F 236/06 20060101AFI20231002BHJP
   C07F 7/10 20060101ALI20231002BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20231002BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
C08F236/06
C07F7/10 E CSP
C07F7/10 S
C08L9/06
B60C1/00 A
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2020552770
(86)(22)【出願日】2019-04-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 EP2019059062
(87)【国際公開番号】W WO2019197455
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-04-08
(31)【優先権主張番号】18461548.2
(32)【優先日】2018-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515308903
【氏名又は名称】シントス エス.アー.
【氏名又は名称原語表記】SYNTHOS S.A.
(73)【特許権者】
【識別番号】319007860
【氏名又は名称】シントス ドボリ 7 スプウカ ズ オグラニザツィーノン オトゥポビエジャルノシチョン
【氏名又は名称原語表記】SYNTHOS DWORY 7 SPOLKA Z OGRANICZONA ODPOWIEDZIALNOSCIA
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】シオレック、マリア
(72)【発明者】
【氏名】スクロック、トマシュ
(72)【発明者】
【氏名】ロゴザ、ヤロスワフ
(72)【発明者】
【氏名】コザック、ラドスワフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェダ、パヴェウ
(72)【発明者】
【氏名】ワレニア、マルゴルザータ
【審査官】山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-167207(JP,A)
【文献】特開2013-249418(JP,A)
【文献】特開2013-163761(JP,A)
【文献】特開2011-074310(JP,A)
【文献】特開2013-159770(JP,A)
【文献】国際公開第2018/065486(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/065494(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G、C08K、C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の2つ以上のスチレン誘導体の混合物であって、
【化1】

式中、nは0又は1であり、
及びRは同じであっても異なっていてもよく、1~10個の炭素原子を含むアルキル基、又は6~10個の炭素原子を含むアリール基又はアラルキル基を表し、
i)R及びRは同じであっても異なっていてもよく、各R及びRは独立してi)1~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であって、任意選択でケイ素原子、酸素原子又は窒素原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子が割り込んでいるヒドロカルビル基;又はii)6~10個の炭素原子及び任意選択でケイ素原子、酸素原子又は窒素原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むアリール基又はアラルキル基を表すか;又は
ii)R及びRは、互いに結合して、窒素原子及び少なくとも1つの炭素原子、及び任意選択で、ケイ素原子、酸素原子及び窒素原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む複素環を形成しており、
前記式(I)の2つ以上のスチレン誘導体の混合物は、式(I)の1種類のスチレン誘導体のパラ異性体と、メタ又はオルト異性体とを含む、混合物。
【請求項2】
スチレン誘導体は、式(Ia)、(Ib)、又は(Ic)のものであり、
【化2】

前記混合物は
a.式(Ia)のスチレン誘導体と式(Ib)のスチレン誘導体との混合物;又は
b.式(Ia)のスチレン誘導体と式(Ic)のスチレン誘導体との混合物
である、請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
及びRは両方ともCHを表す、請求項1又は2に記載の混合物。
【請求項4】
)スチレン誘導体中のR及びR独立して、メチル基及びメトキシエチル基から選択されるか、又はii)スチレン誘導体中のR及びRは互いに結合されて、1,4-ブチレン基又は1,5-ペンチレン基を形成している、請求項1~3のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項5】
チレン誘導体は式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、又は(6)のものである、請求項4に記載の混合物。
【化3】
【請求項6】
チレン誘導体は式(7)、(8)、(9)又は(10)のものである、請求項4に記載の混合物。
【化4】
【請求項7】
式(I)の2つ以上のスチレン誘導体の混合物を調製する方法であって、
【化5】

式中、nは0又は1であり、
及びRは同じであっても異なっていてもよく、1~10個の炭素原子を含むアルキル基、又は6~10個の炭素原子を含むアリール基又はアラルキル基を表し、
i)R及びRは同じであっても異なっていてもよく、各R及びRは独立してi)1~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であって、任意選択でケイ素原子、酸素原子又は窒素原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子が割り込んでいるヒドロカルビル基;又はii)6~10個の炭素原子及び任意選択でケイ素原子、酸素原子又は窒素原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むアリール基又はアラルキル基を表すか;又は
ii)R及びRは、互いに結合して、窒素原子及び少なくとも1つの炭素原子、及び任意選択で、ケイ素原子、酸素原子及び窒素原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む複素環を形成しており、
前記式(I)の2つ以上のスチレン誘導体の混合物は、式(I)の1種類のスチレン誘導体のパラ異性体と、メタ又はオルト異性体とを含み、
前記方法は、式(II)のハロゲノシラン
【化6】

ここで、Xは塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子から選択され、R、R、R及びRは上記で定義した通りである
を、式(III)の2つ以上のマグネシウム化合物の混合物
【化7】

ここで、Xは塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子から選択される
と反応させることを含み、
応は脂肪族又は環状エーテル溶媒中で行われる、方法。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載のスチレン誘導体の混合物の、そのコポリマーの調製における使用であって、
ポリマーは、
A)コポリマーの20重量%~99.95重量%の1つ以上のジエンモノマー;
B)コポリマーの0重量%~60重量%の1つ以上のビニル芳香族モノマー;及び
C)コポリマーの0.05重量%~50重量%の、前記式(I)の2つ以上のスチレン誘導体
に由来する繰り返し単位を含む、使用。
【請求項9】
前記式(I)の2つ以上のスチレン誘導体の混合物は、アルカリ金属塩誘導体として、i)1つ以上の共役ジエンモノマーと、任意選択でii)1つ以上のビニル芳香族モノマーとの共重合のための開始剤として使用され、アルカリ金属はリチウム、ナトリウム、及びカリウムから選択される、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記式(I)の2つ以上のスチレン誘導体の混合物は、x)コモノマー及びy)共重合の開始剤としてのアルカリ金属塩誘導体の両方として使用される、請求項8又は9に記載の使用。
【請求項11】
カップリングされたコポリマー及び末端修飾コポリマーを含むコポリマー成分を調製する方法であって、
(1)アルカリ金属塩誘導体として式(I)の2つ以上のスチレン誘導体を含む開始剤成分を提供する工程;
【化8】

式中、nは0又は1であり、
及びRは同じであっても異なっていてもよく、1~10個の炭素原子を含むアルキル基、又は6~10個の炭素原子を含むアリール基又はアラルキル基を表し、
i)R及びRは同じであっても異なっていてもよく、各R及びRは独立してi)1~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であって、任意選択でケイ素原子、酸素原子又は窒素原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子が割り込んでいるヒドロカルビル基;又はii)6~10個の炭素原子及び任意選択でケイ素原子、酸素原子又は窒素原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むアリール基又はアラルキル基を表すか;又は
ii)R及びRは、互いに結合して、窒素原子及び少なくとも1つの炭素原子、及び任意選択で、ケイ素原子、酸素原子及び窒素原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む複素環を形成しており
前記式(I)の2つ以上のスチレン誘導体は、式(I)の1種類のスチレン誘導体のパラ異性体と、メタ又はオルト異性体とを含む、
(2)前記開始剤成分に、
i)1つ以上の共役ジエンモノマー、及び
ii)任意選択で1つ以上のビニル芳香族モノマー
を含むモノマー成分を接触させて、アニオン共重合を開始する工程;
(3)共重合を継続して、コポリマーを得る工程;
(4)任意選択で、1つ以上の官能化モノマーの存在下でコポリマーの共重合を継続し、官能化コポリマーを得る工程;
(5)工程(3)のコポリマー又は工程(4)の官能化コポリマーの一部を1つ以上のカップリング剤でカップリングさせて、カップリングコポリマーを得る工程;及び
(6)工程(3)のコポリマー又は工程(4)の官能化コポリマーの一部を1つ以上の末端修飾剤で末端修飾して、末端修飾コポリマーを得る工程
を含み、工程(2)におけるモノマー成分は、前記式(I)のつ以上のスチレン誘導体を含む方法。
【請求項12】
エラストマーコポリマーを製造する方法であって、
・1つ以上のジエンモノマー、
・任意選択で、1つ以上のビニル芳香族モノマー及び
・式(I)の2つ以上のスチレン誘導体の混合物であって、
【化9】

式中、nは0又は1であり、
及びRは同じであっても異なっていてもよく、1~10個の炭素原子を含むアルキル基、又は6~10個の炭素原子を含むアリール基又はアラルキル基を表し、
i)R及びRは同じであっても異なっていてもよく、各R及びRは独立してi)1~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であって、任意選択でケイ素原子、酸素原子又は窒素原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子が割り込んでいるヒドロカルビル基;又はii)6~10個の炭素原子及び任意選択でケイ素原子、酸素原子又は窒素原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むアリール基又はアラルキル基を表すか;又は
ii)R及びRは、互いに結合して、窒素原子及び少なくとも1つの炭素原子、及び任意選択で、ケイ素原子、酸素原子及び窒素原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む複素環を形成しておりかつ
式(I)の1種類のスチレン誘導体のパラ異性体と、メタ又はオルト異性体とを含む、前記式(I)の2つ以上のスチレン誘導体の混合物
を、アニオン重合条件にさらすことを含み、
前記式(I)の2つ以上のスチレン誘導体の混合物が、開始剤として、アルカリ金属塩誘導体として使用される方法。
【請求項13】
A)コポリマーの20重量%~99.95重量%の1つ以上のジエンモノマー;
B)コポリマーの0重量%~60重量%の1つ以上のビニル芳香族モノマー;及び
C)コポリマーの0.05重量%~50重量%の、式(I)の2つ以上のスチレン誘導体であって、
【化10】

式中、nは0又は1であり、
及びRは同じであっても異なっていてもよく、1~10個の炭素原子を含むアルキル基、又は6~10個の炭素原子を含むアリール基又はアラルキル基を表し、
i)R及びRは同じであっても異なっていてもよく、各R及びRは独立してi)1~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であって、任意選択でケイ素原子、酸素原子又は窒素原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子が割り込んでいるヒドロカルビル基;又はii)6~10個の炭素原子及び任意選択でケイ素原子、酸素原子又は窒素原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むアリール基又はアラルキル基を表すか;又は
ii)R及びRは、互いに結合して、窒素原子及び少なくとも1つの炭素原子、及び任意選択で、ケイ素原子、酸素原子及び窒素原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む複素環を形成しておりかつ
式(I)の1種類のスチレン誘導体のパラ異性体と、メタ又はオルト異性体とを含む、前記式(I)の2つ以上のスチレン誘導体
に由来する繰り返し単位を含む、エラストマーコポリマー。
【請求項14】
ジエンモノマーは共役ジエンモノマーであり、
役ジエンモノマーは1,3-ブタジエン及びイソプレンから選択される、請求項13に記載のエラストマーコポリマー。
【請求項15】
A)共役ジエンモノマーの量は、コポリマーの50~90重量%である、請求項13又は14に記載のエラストマーコポリマー。
【請求項16】
ニル芳香族モノマーは、スチレン、3-メチルスチレン及びα-メチルスチレンから選択される、請求項13~15のいずれか一項に記載のエラストマーコポリマー。
【請求項17】
B)ビニル芳香族モノマーの量は、コポリマーの10~50重量%である、請求項13~16のいずれか一項に記載のエラストマーコポリマー。
【請求項18】
C)式(I)のスチレン誘導体の量は、コポリマーの0.2~10重量%である、請求項13~17のいずれか一項に記載のエラストマーコポリマー。
【請求項19】
コポリマーは、金属末端リビング線形コポリマーと1つ以上のカップリング剤との反応によって生成される星型構造を有するユニットを含む、請求項13~18のいずれか一項に記載のエラストマーコポリマー。
【請求項20】
I)カップリング剤は四塩化スズであるか、又は
II)カップリング剤はハロゲン化ケイ素カップリング剤である、請求項19に記載のエラストマーコポリマー。
【請求項21】
星型構造を有するユニットの割合はコポリマーの15~75重量%である、請求項19又は20に記載のエラストマーコポリマー。
【請求項22】
1つ以上の加硫剤の存在下で、請求項13~21のいずれか一項に記載のエラストマーコポリマーを加硫することを含む、ゴムを調製する方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法に従って得られるゴム。
【請求項24】
x)請求項23に記載のゴムを含むゴム成分を含むゴム組成物。
【請求項25】
y)1つ以上のフィラーをさらに含む請求項24に記載のゴム組成物であって、
ィラーはシリカ及びカーボンブラックからなる群から選択されゴム組成物。
【請求項26】
フィラー成分y)の量は、ゴム成分x)100質量部に対して20140質量部(phr)である、請求項25に記載のゴム組成物。
【請求項27】
ゴム成分x)はまた、1つ以上のさらなるゴム状ポリマーを含み、
らなるゴム状ポリマーは、天然ゴム、合成イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、エチレン-α-オレフィン共重合ゴム、エチレン-α-オレフィン-ジエン共重合ゴム、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム、クロロプレンゴム及びハロゲン化ブチルゴムからなる群から選択される、請求項24~26のいずれか一項に記載のゴム組成物。
【請求項28】
請求項27に記載のゴム組成物を含むタイヤ部品であって、
イヤトレッドであるタイヤ部品。
【請求項29】
請求項28に記載のタイヤ部品を含むタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のスチレン誘導体の混合物、及びエラストマーコポリマーの製造におけるそれらの使用に関する。本発明はさらに、エラストマーコポリマー及びエラストマーコポリマーを製造する方法に関する。さらに、本発明は、エラストマーコポリマーを加硫することを含むゴムの製造方法、及びその方法により得られるゴムに関する。さらに、本発明は、ゴム組成物、ゴム組成物を含むタイヤ部品、及びタイヤ部品を含むタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ、ホース、動力伝達ベルト及びその他の工業製品に使用されるエラストマーコポリマーにとって、カーボンブラックやシリカなどのフィラーとの良好な親和性を有することは重要である。フィラーとの相互作用の改善を達成するために、そのようなエラストマーコポリマーは、アミンなどの様々な化合物で官能化することができる。ゴムコンパウンドの強化フィラーとして使用される場合、カーボンブラックは、様々な物理的性質を改善するために、ゴム全体によく分散されるべきであることも認識されている。
【0003】
特許文献1は、金属末端ポリジエンを、ハロゲン化ニトリル、複素環式芳香族窒素含有化合物又は安息香酸アルキルなどのキャッピング剤と反応させることにより、ポリジエンをエンドキャッピングする方法を開示している。また、特許文献1は、リチウムアミドなどの官能化開始剤を利用することにより、ポリジエン鎖の両端を極性基でキャッピングできることを開示している。
【0004】
特許文献2は、ゴム成分中に20重量%以上のアミノ基含有ジエン系ポリマー、及びゴム成分100重量部に対してフィラーとして10~100重量部のシリカを含むゴム組成物を教示している。
【0005】
特許文献3は、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピラジニル、ピリミジン、ピリダジニル及びフェナントロリン誘導体などの芳香族N-複素環式化合物に基づくリビングアニオン重合開始剤の合成方法、及びN-官能化ポリブタジエンの製造におけるそれらの使用を開示している。同様のアプローチが特許文献4、特許文献5及び特許文献6に開示されており、そこでは、非環式及び環式アミンが活性アニオン重合開始剤の調製に使用され、ジ-N-官能化ブタジエン-スチレンコポリマーの合成のさらなるステップで利用される。
【0006】
特許文献7は、共役ジエンモノマーの重合における改質モノマーとしてのアミノシラン官能化ジエン化合物に関する。
ジ-N-官能化ブタジエン-スチレンポリマーの合成は、特許文献8、特許文献9及び特許文献10にも開示されている。しかし、それらの調製方法では、アミノ官能性アリールメチルケトンが使用され、機能化停止剤としても機能する。上記のN-修飾方法は、ポリマー鎖がアミン官能性を有する2つ以下の部分(moiety)を含む場合のポリジエンの調製のみを可能にする。
【0007】
N-官能基の含有量が異なるN-官能化ポリマーを調製する別のアプローチは、適切なスチレンモノマーをポリマー鎖に組み込むことである。これにより、反応系への添加が制御され、N-官能基の含有量が異なる様々なスチレン-ブタジエンゴムの生成をもたらすため、無機フィラーを分散させる性能は異なるものになる。特許文献11は、異なる量のアミノ官能基を含むブタジエン-スチレンコポリマーゴムの調製におけるさらなるステップで使用される(様々な非環式及び環式リチウムアミドと、1,3-又は1,4-ジビニロベンゼン、1,3-ジ(イソプロピレン)ベンゼン、又は異性体クロロメチルビニルベンゼンの混合物との反応による)アミノエチル官能化スチレンモノマーの調製方法を開示している。
【0008】
特許文献12によれば、アミノアルキル、アミノアルキルオキシアルキル又はアルキルチオアルキル基、特にピロリジニルメチル又はヘキサメチレンイミノメチル基で置換されたビニル芳香族環のポリマー含有単位を重合させて、ヒステリシスが低く、カーボンブラックやシリカなどのフィラーとの良好な親和性を有するエラストマーコポリマーにすることができる。スチレン誘導体がゴムとフィラーとの親和性を向上させるため、ポリマー特性が向上する。
【0009】
特許文献13は、共役ジエン成分及びケイ素含有ビニル化合物を含むモノマー成分を重合することにより得られる共役ジエンポリマーを教示している。ケイ素含有ビニル化合物は、シリル置換スチレンであり得る。しかし、特許文献13による化合物は、非特許文献1に開示されているN,N-ビス(SiMeアニリン誘導体と比較して、典型的な処理条件下で加水分解的に不安定である。
【0010】
したがって、本発明の目的は、先行技術に関連する欠点を克服し、ポリジエンの合成に適用すると、タイヤの製造に一般的に使用される2つの代表的なフィラー、すなわちシリカ及びカーボンブラックの両方に対してより良好な親和性を有する末端鎖及び/又は鎖内修飾ポリマー組成物をもたらす官能化スチレン誘導体を提供することであった。官能化スチレン誘導体はまた、特許文献13のものよりも加水分解的に安定でなければならない。
【0011】
この目的は、式(I)の2つ以上のアミノシリル官能化スチレン誘導体の混合物の使用によって達成された。これらの混合物は、エラストマーコポリマーの製造におけるコモノマーとして好ましく使用される。それに代えて、又はそれに加えて、それらは重合開始剤の調製に好ましく使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】欧州特許出願公開第0316255号明細書
【文献】米国特許第4,894,409号明細書
【文献】米国特許第4,935,471号明細書
【文献】米国特許第6,515,087号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0590491号明細書
【文献】国際公開第2011/076377号
【文献】欧州特許出願公開第3159346号明細書
【文献】米国特許第4,196,154号明細書
【文献】米国特許第4,861,742号明細書
【文献】米国特許第3,109,871号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1792892号明細書
【文献】米国特許第6,627,722号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2772515号明細書
【非特許文献】
【0013】
【文献】Org.Lett.2001,3,2729
【発明の概要】
【0014】
したがって、本発明は、重合させてシリカ及び/又はカーボンブラックなどのフィラーとの良好な親和性を有するエラストマーコポリマーにすることができる特定のスチレン誘導体の混合物に関する。本発明のスチレン誘導体は、典型的には、1つ以上の共役ジオレフィンモノマー及び任意で(及び好ましくは)ビニル芳香族モノマーなどのそれと共重合可能な他のモノマーと共重合させることにより、エラストマーコポリマーに組み込まれる。いずれの場合でも、本発明のスチレン誘導体は、得られるゴムの、ゴムコンパウンドに典型的に使用される種類のフィラー、すなわちシリカ及び/又はカーボンブラックとの親和性を改善するため、改善されたコポリマー特性が達成される。
【0015】
本発明は、より具体的には、フィラーとのより良好な親和性を有するエラストマーコポリマーを製造するために、共役ジオレフィンモノマー及び任意でビニル芳香族モノマーとの共重合に特に有用なモノマーに関する。
【0016】
したがって、第1の態様では、本発明は、下記式(I)の2つ以上のスチレン誘導体の混合物に関する。
第2の態様によれば、本発明は、式(I)の2つ以上のスチレン誘導体の混合物を調製する方法に関する。
【0017】
第3の態様では、本発明は、式(I)の2つ以上のスチレン誘導体の、そのコポリマーの調製における使用に関する。
第4及び第5の態様では、本発明は、式(I)の2つ以上のスチレン誘導体の使用を含む特定の方法に関する。
【0018】
第6の態様では、本発明は、式(I)の2つ以上のスチレン誘導体から誘導されたユニットを含むコポリマーに関する。
第7の態様では、本発明は、ゴムを調製する方法に関する。
【0019】
第8の態様では、本発明は、第7の態様の方法に従って得られるゴムに関する。
第9の態様では、本発明は、第8の態様のゴムを含むゴム組成物に関する。
第10の態様では、本発明は、第9の態様によるゴム組成物を含むタイヤ部品に関する。
【0020】
第11の態様では、本発明は、第10の態様のタイヤ部品を含むタイヤに関する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の態様の好ましい実施形態を以下に示す。本発明の第1の態様の好ましい実施形態に関する記述は、適宜、第2から第11の態様に適用される。
第1の態様では、本発明は、式(I)の2つ以上のスチレン誘導体の混合物に関する。式(I)のスチレン誘導体において、
【0022】
【化1】
【0023】
nは0又は1であり、
及びRは同じであっても異なっていてもよく、1~10個の炭素原子を含むアルキル基、又は6~10個の炭素原子を含むアリール基又はアラルキル基を表す。
【0024】
好ましい実施形態では、第1の態様はさらに、式(I)の2つ以上のスチレン誘導体を含む組成物に関し、式(I)のスチレン誘導体の総量は少なくとも70重量パーセント、好ましくは少なくとも80重量パーセント、最も好ましくは少なくとも85重量パーセント、特に少なくとも90重量パーセントであり、それぞれ、組成物の重量に基づくものである。
【0025】
一実施形態i)では、R及びRは同じであっても異なっていてもよく、各R及びRは独立してi)1~10個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であって、任意選択でケイ素原子、酸素原子又は窒素原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子が割り込んでいるヒドロカルビル基;又はii)6~10個の炭素原子及び任意選択でケイ素原子、酸素原子又は窒素原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含むアリール基又はアラルキル基を表すか;又は
代替の実施形態ii)では、R及びRは、互いに結合して、窒素原子及び少なくとも1つの炭素原子、及び任意選択で、ケイ素原子、酸素原子及び窒素原子から選択される少なくとも1つのヘテロ原子を含む複素環を形成する。
【0026】
好ましくは、芳香環上の2つの置換基は、互いにメタ(すなわち、1,3)又はパラ(すなわち、1,4)位にあり、より好ましくはパラ(1,4)位にある。以下で異性体について言及する場合は常に、これはスチレンの芳香環に関する構造異性を指す。
【0027】
好ましくは、スチレン誘導体は、式(Ia)、(Ib)、又は(Ic)のものである。
【0028】
【化2】
【0029】
本発明は概して、n=1、n=0を有する式(I)の、そのすべての異性体を含むスチレン誘導体の組み合わせを許容する。式(I)のこれらの異なるスチレン誘導体の異なる反応性のために、官能基とシリカフィラーとの間の効率的な反応は長期化し、それはシリカの分散に影響を与えるであろう。そうでなければ、シリカと官能基との間の反応が速すぎて加工性を悪化させ、シリカの分散を低下させる可能性がある。
【0030】
しかしながら、混合物は、最も好ましくは、式(I)の1種類のスチレン誘導体の異性体の混合物であり、式(Ia)のパラ異性体、及びさらに、この式(I)のスチレン誘導体のメタ(Ib)又はオルト(Ia)異性体を含む。繰り返しになるが、オルト、メタ、パラ異性体の反応性が異なるため、官能基とシリカフィラーとの間の効率的な反応が長期化し、シリカの分散に影響を及ぼし得る。そうでなければ、シリカと官能基との間の反応が速すぎて加工性を悪化させ、シリカの分散を低下させる可能性がある。
【0031】
最も好ましくは、混合物は異性体のものであり、
a.式(Ia)のスチレン誘導体と式(Ib)のスチレン誘導体との、すなわち、パラ及びメタ異性体の混合物;又は
b.式(Ia)のスチレン誘導体と式(Ic)のスチレン誘導体との、すなわち、パラ及びオルト異性体の混合物である。
【0032】
あるいは、第1の態様による混合物は
c.n=1を有する式(I)のスチレン誘導体及びn=0を有する式(I)のスチレン誘導体の混合物である。
【0033】
本発明による混合物は、式(I)の2つより多いスチレン誘導体、すなわち式(I)の3つ、4つ、又は5つのスチレン誘導体を含み得る。
上述したように、最も好ましい実施形態では、混合物は、1種類の式(I)のスチレン誘導体の異性体の混合物であり、好ましくは異性体の比は1:99~99:1の範囲、好ましくは1:9~9:1の範囲、より好ましくは2:8~8:2の範囲である。混合物中では、パラ異性体が少なくとも30重量パーセント、より好ましくは少なくとも40重量パーセントを構成することも好ましい。
【0034】
式(I)のスチレン誘導体の2つ以上の異性体を含む好ましい組成物において、パラ異性体は、組成物中の式(I)のスチレン誘導体の総重量あたり、少なくとも30重量パーセント、より好ましくは少なくとも40重量パーセントを構成する。
【0035】
好ましい実施形態では、n=1であり、混合物は異性体のものである。この実施形態では、(i)パラ及びメタ異性体の混合物、(ii)オルト及びメタ異性体の混合物、及び(iii)オルト及びパラ異性体の混合物が好ましい。
【0036】
さらに好ましい実施形態では、n=0であり、混合物も異性体のものである。この実施形態でも、(i)パラ及びメタ異性体の混合物、(ii)オルト及びメタ異性体の混合物、及び(iii)オルト及びパラ異性体の混合物が好ましい。
【0037】
別の実施形態では、混合物は、式(I)の4つのスチレン誘導体、すなわち、n=1を有する式(I)のスチレン誘導体のオルト及びパラ異性体、ならびにn=0を有する式(I)のスチレン誘導体のパラ及びメタ異性体の混合物である。
【0038】
スチレン誘導体において、R及びRは同じであっても異なっていてもよく、CH又はCを表す。好ましくは、R及びRは両方ともCHを表す。
式(I)のスチレン誘導体は、好ましくは、i)それぞれ独立してアルキル基及びアルコキシアルキル基から選択されたR及びRを有し得る。好ましくは、R及びRは、メチル基及びメトキシエチル基から独立して選択される。この実施形態では、R及びRは、好ましくは両方ともCHを表し、より好ましくは、スチレン誘導体は式(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、又は(6)のものである。
【0039】
【化3】
【0040】
好ましくは、第1の態様による混合物は、異性体(1)、(2)、及び(3)のうちの2つ以上のものである。また、第1の態様による混合物は、異性体(4)、(5)及び(6)のうちの2つ以上のものであってもよい。
【0041】
あるいは、ii)式(I)のスチレン誘導体中のR及びRは互いに結合されて、アルファ、オメガ-アルキレン基、好ましくは1,4-ブチレン又は1,5-ペンチレン基を形成する。R及びRが互いに結合して1,4-ブチレン基を形成する実施形態では、スチレン誘導体は、好ましくは式(7)、(8)、(9)又は(10)のものである。
【0042】
【化4】
【0043】
好ましくは、第1の態様による混合物は、異性体(7)及び(8)のものである。また、第1の態様による混合物は、異性体(9)及び(10)のものであってもよい。
第2の態様では、式(I)の2つ以上のスチレン誘導体の混合物を調製する方法は、式(II)のハロゲノシラン
【0044】
【化5】
【0045】
ここで、Xは塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子から選択され、R、R、R及びRは上記で定義した通りである
を、式(III)の2つ以上のマグネシウム化合物の混合物
【0046】
【化6】
【0047】
ここで、Xは塩素原子、臭素原子、及びヨウ素原子から選択される
と反応させることを含む。
好ましくは、反応は、不活性ガス雰囲気において有機溶媒中で行われる。より好ましくは、反応は脂肪族又は環状エーテル溶媒(特に溶媒はテトラヒドロフラン、THFである)中で行われる。
【0048】
式(I)のスチレン誘導体は、特に特有の物理化学的特性を有するスチレン-ブタジエンゴムを得るためのコモノマー基質として使用され得る。したがって、第3の態様によると、本発明は、そのコポリマーの調製における第1の態様のスチレン誘導体の混合物の使用に関する。好ましくは、コポリマーは、以下に由来する繰り返し単位を含む。
【0049】
A)コポリマーの20重量%~99.95重量%の1つ以上のジエンモノマー;
B)コポリマーの0重量%~60重量%の1つ以上のビニル芳香族モノマー;及び
C)コポリマーの0.05重量%~50重量%の、式(I)の2つ以上のスチレン誘導体。
【0050】
式(I)のスチレン誘導体の混合物のアルカリ金属塩誘導体は、好ましくは、i)1つ以上の共役ジエンモノマーと、任意選択でii)1つ以上のビニル芳香族モノマーとの共重合のための開始剤として使用され、ここで、アルカリ金属はリチウム、ナトリウム、及びカリウムから選択される。あるいは、式(I)のスチレン誘導体の混合物はコモノマーとして使用される。好ましくは、式(I)のスチレン誘導体の混合物は、x)コモノマー及びy)共重合の開始剤としてのアルカリ金属塩誘導体の両方として使用される。
【0051】
第4の態様によれば、本発明は、カップリングされたコポリマー及び末端修飾コポリマーを含むコポリマー成分を調製する方法に関し、この方法は以下の工程を含む:
(1)アルカリ金属塩誘導体として式(I)の2つ以上のスチレン誘導体を含む開始剤成分を提供する工程;
(2)開始剤成分に、
i)1つ以上の共役ジエンモノマー、及び
ii)任意選択で1つ以上のビニル芳香族モノマー
を含むモノマー成分を接触させて、アニオン共重合を開始する工程;
(3)共重合を継続して、コポリマーを得る工程;
(4)任意選択で、1つ以上の官能化モノマーの存在下でコポリマーの共重合を継続し、官能化コポリマーを得る工程;
(5)工程(3)のコポリマー又は工程(4)の官能化コポリマーの一部を1つ以上のカップリング剤でカップリングさせて、カップリングコポリマーを得る工程;及び
(6)工程(3)のコポリマー又は工程(4)の官能化コポリマーの一部を1つ以上の末端修飾剤で末端修飾して、末端修飾コポリマーを得る工程。
【0052】
好ましくは、工程(2)におけるモノマー成分は、式(I)の1つ、2つ又はそれ以上のスチレン誘導体を含む。
本発明によれば、重合及びポリマーの回収は、ジエンモノマーの重合プロセスに適した様々な方法に従って適切に行われる。これには、空気及びその他の大気中の不純物、特に酸素及び水分を排除する条件下でのバッチ式、半連続、又は連続操作が含まれる。好ましくは、重合はバッチ式又は連続式である。商業的に好ましい重合方法は、アニオン溶液重合である。
【0053】
第5の態様によれば、本発明は、エラストマーコポリマーを製造する方法であって、
・1つ以上のジエンモノマー、
・任意選択で、1つ以上のビニル芳香族モノマー及び
・式(I)の2つ以上のスチレン誘導体
を、アニオン重合条件にさらすことを含む方法に関する。
【0054】
一般式(I)のスチレン誘導体の最大の利点の1つは、ゴムとシリカフィラーとの化学的相互作用を提供するために、追加の化合物でオメガ鎖末端を官能化する必要がないことである(ただし、追加のオメガ鎖末端官能化を排除するものではない)。さらに、式(I)のスチレン誘導体で官能化されたゴムを使用して得られるゴムコンパウンドの最良の動的特性は、このモノマーが官能性前駆開始剤として使用されるときにも達成される。好ましくは、アニオン重合条件は、式(I)のスチレン誘導体のアルカリ金属塩誘導体を用いて重合を開始することを含む。より好ましくは、式(I)のスチレン誘導体の混合物が、開始剤として、アルカリ金属塩誘導体として使用される。
【0055】
重合は、典型的には、有機リチウム化合物、リチウムアミド化合物、又は窒素原子を含有する官能化開始剤などのアニオン開始剤で開始される。有機リチウム化合物としては、1~20個の炭素原子を有する炭化水素基を有するものが好ましい。例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-オクチルリチウム、n-デシルリチウム、フェニルリチウム、2-ナフチルリチウム、2-ブチルフェニルリチウム、4-フェニルブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、及びジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物が挙げられる。これらの化合物のうち、n-ブチルリチウム及びsec-ブチルリチウムが好ましい。
【0056】
リチウムアミド化合物としては、例えば、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジヘプチルアミド、リチウムジヘキシルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチウムジ-2-エチルヘキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウムN-メチルピペラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド及びリチウムメチルフェネチルアミドが挙げられる。これらの化合物のうち、重合開始能の観点から、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、及びリチウムドデカメチレンイミドなどの環状リチウムアミドが好ましく、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド及びリチウムピペリジドが特に好ましい。
【0057】
存在する場合、リチウムアミド化合物は、主に第2級アミン及びリチウム化合物から事前に調製され、次いで重合に使用される。しかしながら、それは重合系において(in situで)調製されてもよい。利用されるリチウム開始剤の量は、重合されるモノマー、ならびに合成されるポリマーに望まれる分子量によって異なる。
【0058】
バッチ操作では、官能化モノマーの重合時間は、必要に応じて変更することができる。バッチプロセスでの重合は、モノマーが吸収されなくなったとき、又はより早期が望ましい場合、例えば、反応混合物が粘稠になりすぎた場合に終了され得る。連続操作では、重合混合物は、任意の適切な設計の反応器を通過することができる。そのような場合の重合反応は、滞留時間を変えることによって適切に調整される。滞留時間は、反応器システムの種類及び範囲によって異なり、例えば、10~15分から24時間以上である。
【0059】
重合反応の温度は、好ましくは-20~150℃、より好ましくは0~120℃の範囲である。重合反応は、反応中に現れる圧力下で行うことができるが、好ましくは、モノマーを実質的に液相中に維持するのに十分な圧力で行う。すなわち、使用される重合圧力は、重合される個々の物質、使用される重合媒体、及び使用される重合温度によって異なる。しかし、必要に応じてより高い圧力を用いてもよく、そのような圧力は、重合反応に不活性なガスを用いて反応器を加圧するなどの適切な手段により得ることができる。
【0060】
式(I)のスチレン誘導体は、アニオン開始剤を用いた溶液重合によって作製することができる実質的にあらゆる種類のエラストマーコポリマーに組み込むことができる。エラストマーコポリマーの合成に使用される重合は、通常、炭化水素溶媒中で行われる。そのような溶液重合で使用される溶媒は、通常、分子あたり4~10個の炭素原子を含み、重合の条件下では液体である。適切な有機溶媒のいくつかの代表的な例には、ペンタン、イソオクタン、シクロヘキサン、n-ヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、テトラヒドロフランなどが、単独で又は混合物として含まれる。
【0061】
溶液重合では、通常、重合媒体中に合計で5~30重量%のモノマーが存在する。そのような重合媒体は、典型的には、有機溶媒及びモノマーから構成される。ほとんどの場合、重合媒体は10~25重量%のモノマーを含むことが好ましい。大抵は、重合媒体は10~20重量%のモノマーを含有することがより好ましい。
【0062】
第6の態様によれば、本発明は、以下に由来する繰り返し単位を含むエラストマーコポリマーに関する。
A)コポリマーの20重量%~99.95重量%の1つ以上のジエンモノマー;
B)コポリマーの0重量%~60重量%の1つ以上のビニル芳香族モノマー;及び
C)コポリマーの0.05重量%~50重量%の式(I)の2つ以上のスチレン誘導体。
【0063】
本発明の方法により製造されるエラストマーコポリマーは、式(I)のスチレン誘導体と(共役又は非共役)ジオレフィン(ジエン)とのランダム共重合により製造することができる。4~8個の炭素原子を含む共役ジオレフィンモノマーが概して好ましい。好ましくは、ジエンモノマーは共役ジエンモノマーである。より好ましくは、共役ジエンモノマーは、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ペンタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、及び4,5-ジエチル-1,3-オクタジエンから選択され、最も好ましくは、共役ジエンモノマーは1,3-ブタジエン及びイソプレンから選択され、特に、共役ジエンモノマーは1,3-ブタジエンである。
【0064】
エラストマーコポリマー中のA)共役ジエンモノマーの量は、好ましくはコポリマーの40~90重量%、より好ましくはコポリマーの50~90重量%、特にコポリマーの60~90重量%である。
【0065】
エラストマーコポリマー中のビニル芳香族モノマーは、好ましくは、スチレン、1-ビニルナフタレン、3-メチルスチレン、3,5-ジエチルスチレン、4-プロピルスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、4-ドデシルスチレン、3-メチル-5-n-ヘキシルスチレン、4-フェニルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、3,5-ジフェニルスチレン、2,3,4,5-テトラエチルスチレン、3-エチル-1-ビニルナフタレン、6-イソプロピル-1-ビニルナフタレン、6-シクロヘキシル-1-ビニルナフタレン、7-ドデシル-2-ビニルナフタレン、及びα-メチルスチレンから選択される。より好ましくは、ビニル芳香族モノマーは、スチレン、3-メチルスチレン及びα-メチルスチレンから選択される(特に、ビニル芳香族モノマーはスチレンである)。
【0066】
エラストマーコポリマー中のB)ビニル芳香族モノマーの量は、好ましくはコポリマーの10~60重量%、より好ましくはコポリマーの10~50重量%、特にコポリマーの20~50重量%である。
【0067】
エラストマーコポリマー中のC)式(I)のスチレン誘導体の量は、好ましくはコポリマーの0.05~50重量%、より好ましくはコポリマーの0.2~10重量%である。エラストマーコポリマー中に式(I)のスチレン誘導体を(モノマーの重量で)0.3%~5%含むことにより、通常、良好な結果を得ることは既に可能である。典型的には、(モノマーの重量で)0.5%~2%の式(I)の官能化されたモノマーをエラストマーコポリマーに組み込むことが好ましい。
【0068】
本発明のスチレン誘導体を使用することにより官能化することができるエラストマーコポリマーのいくつかの代表的な例には、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、α-メチルスチレン-ブタジエンゴム、α-メチルスチレン-イソプレンゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム(SIBR)、スチレン-イソプレンゴム(SIR)、イソプレン-ブタジエンゴム(IBR)、α-メチルスチレン-イソプレン-ブタジエンゴム及びα-メチルスチレン-スチレン-イソプレン-ブタジエンゴムが含まれる。エラストマーコポリマーが2つ以上のモノマーに由来する繰り返し単位で構成される場合、スチレン誘導体を含む異なるモノマーに由来する繰り返し単位は、通常、本質的にランダムな態様で分散されるであろう。モノマーに由来する繰り返し単位は、二重結合が通常は重合反応によって消費されるという点でモノマーとは異なる。
【0069】
エラストマーコポリマーは、バッチプロセス又は連続プロセスでの溶液重合により、少なくとも1つの共役ジオレフィンモノマー、スチレン誘導体、及び任意の追加のモノマーを連続的に重合ゾーンに投入することにより製造することができる。重合ゾーンは、典型的には、重合反応器又は一連の重合反応器である。重合ゾーンは、通常、撹拌を行って、モノマー、ポリマー、開始剤、及び改質剤を、重合ゾーン内の有機溶媒全体に十分に分散させておく。このような連続重合は、典型的には、マルチリアクターシステムで行われる。合成されたエラストマーコポリマーは、重合ゾーンから連続的に取り出される。過剰なゲル形成を回避するために、漸増添加、又は1,2-ブタジエンなどの連鎖移動剤を使用することができる。重合ゾーンで達成されるモノマー転化率は通常少なくとも約85%であろう。モノマー転化率は少なくとも約90%であることが好ましい。
【0070】
本発明の重合方法は、通常、第三級アミン、アルコラート又はアルキルテトラヒドロフルフリルエーテルなどの極性改質剤の存在下で行われる。使用できる特定の極性改質剤のいくつかの代表的な例には、メチルテトラヒドロフルフリルエーテル、エチルテトラヒドロフルフリルエーテル、プロピルテトラヒドロフルフリルエーテル、ブチルテトラヒドロフルフリルエーテル、ヘキシルテトラヒドロフルフリルエーテル、オクチルテトラヒドロフルフリルエーテル、ドデシルテトラヒドロフルフリルエーテル、2,2-ビス(2-テトラヒドロフリル)プロパン、ジエチルエーテル、ジ-n-プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジ-n-ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N,N’,N’-テトラメチルエチレンジアミン、N-メチルモルホリン、N-エチルモルホリン、及びN-フェニルモルホリンが含まれる。
【0071】
重合開始剤の反応性を高めるために、あるいは得られるポリマー中に芳香族ビニル化合物をランダムに配したり、得られるポリマーに芳香族ビニル化合物を単鎖として含有させるために、重合開始剤と共にカリウム又はナトリウム化合物を添加してもよい。重合開始剤と共に添加されるカリウム又はナトリウムとしては、例えば、イソプロポキシド、tert-ブトキシド、tert-アミロキシド、n-ヘプタオキシド、メントキシド、ベンジルオキシド及びフェノキシドに代表されるアルコキシド及びフェノキシド;ドデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸などの有機スルホン酸のカリウム塩又はナトリウム塩を使用することができる。
【0072】
極性改質剤は、典型的には、極性改質剤対リチウム開始剤のモル比が約0.01:1~約5:1の範囲内であるレベルで使用される。カリウム又はナトリウム化合物は、重合開始剤のアルカリ金属1モル当量に対して、0.005~0.5モル添加することが好ましい。0.005モル当量未満では、カリウム化合物の添加効果(重合開始剤の反応性の向上、及び芳香族ビニル化合物のランダム化や単鎖付加)が現れない場合がある。一方、0.5モル当量を超えると、重合活性が低下し、生産性が著しく低下するおそれがあり、また、一次変性反応における変性効率が低下するおそれがある。
【0073】
また、エラストマーコポリマーは、好ましくは、金属末端リビング線形コポリマーと1つ以上のカップリング剤との反応によって生成される星型構造を有するユニットを含む。カップリング剤は好ましくはハロゲン化スズカップリング剤であり、好ましくはハロゲン化スズカップリング剤は四塩化スズである。あるいは、カップリング剤はハロゲン化ケイ素カップリング剤であり、より好ましくは、ハロゲン化ケイ素カップリング剤は、四塩化ケイ素、四臭化ケイ素、四フッ化ケイ素、四ヨウ化ケイ素、ヘキサクロロジシラン、ヘキサブロモジシラン、ヘキサフルオロジシラン、ヘキサヨードジシラン、オクタクロロトリシラン、オクタブロモトリシラン、オクタフルオロトリシラン、オクタヨードトリシラン、ヘキサクロロジシロキサン、2,2,4,4,6,6-ヘキサクロロ-2,4,6-トリシラヘプタン-1,2,3,4,5,6-ヘキサキス[2-(メチルジクロロシリル)エチル]-ベンゼン、及び一般式(IV)、R -Si-X4-n(IV)のハロゲン化アルキルシリコンから選択され、ここでRは1~20個の炭素原子を有する1価の脂肪族炭化水素基又は6~18個の炭素原子を有する1価の芳香族炭化水素基であり;nは0~2の整数であり;Xは塩素、臭素、フッ素又はヨウ素原子とすることができる。
【0074】
重合は通常、少なくとも約90%の高い変換率が達成されるまで行われる。重合は次に、典型的にはカップリング剤の添加により停止される。例えば、ハロゲン化スズ及び/又はハロゲン化ケイ素をカップリング剤として使用することができる。非対称カップリングが望まれる場合、ハロゲン化スズ及び/又はハロゲン化ケイ素は連続的に添加される。カップリング剤は、炭化水素溶液中で、分配及び反応のために適切に混合しながら、重合混合物に添加することができる。
【0075】
本発明によれば、カップリングされる(コ)ポリマー鎖の割合は通常15~75%の間で変化させることができ、これは、(コ)ポリマー鎖の所望の割合を結合するのに必要な量にカップリング剤の添加を制御することにより達成される。カップリング剤の正確な量は、その理論的官能性と必要なカップリング率に基づいて計算される。カップリング化合物の官能性は、カップリング剤との反応を受け得るリビング鎖末端の理論的な数として理解されるべきである。
【0076】
カップリング剤を添加した後、酸化防止剤及び/又は重合反応を停止させるためのアルコールを必要に応じて添加してもよい。
第7の態様によれば、ゴムを調製する方法は、1つ以上の加硫剤の存在下で第6の態様によるエラストマーコポリマーを加硫することを含む。
【0077】
第8の態様によれば、本発明は、第7の態様の方法に従って得ることができるゴムに関する。
第9の態様によれば、ゴム組成物は、x)第8の態様によるゴムを含むゴム成分を含む。ゴム組成物は、好ましくは、y)1つ以上のフィラーをさらに含む。フィラーは、好ましくはシリカ及びカーボンブラックからなる群から選択され、ゴム組成物はy)シリカ及びカーボンブラックの両方を含むことが最も好ましい。
【0078】
ゴム組成物において、フィラー成分y)の量は、好ましくはゴム成分x)100質量部に対して10~150質量部(phr)であり、より好ましくは、成分y)の量は20~140phrである。成分y)の量は30~130phrであることが最も好ましい。
【0079】
ゴム組成物中のゴム成分x)はまた、好ましくは1つ以上のさらなるゴム状ポリマーを含み、さらなるゴム状ポリマーは、有利には、天然ゴム、合成イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、エチレン-α-オレフィン共重合ゴム、エチレン-α-オレフィン-ジエン共重合ゴム、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム、クロロプレンゴム及びハロゲン化ブチルゴムからなる群から選択される。
【0080】
本発明の第10の態様のタイヤ部品は、第9の態様のゴム組成物を含む。好ましくは、タイヤ部品はタイヤトレッドである。
第11の態様によるタイヤは、第10の態様のタイヤ部品を含む。
【0081】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。しかしながら、本発明は決してこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例
本発明に従って調製されるエラストマーの合成及び特性に関するさらなる詳細を提供するために、正確に制御されたミクロ及びマクロ構造を有し、様々なタイプの官能基を有する官能化スチレン-ブタジエンコポリマーを記載し、非官能化コポリマーと比較する。「100ゴムあたりの部数(parts per hundred rubber)」、「phr」、及び「%」は、特に指定しない限り、質量に基づく。特性の測定方法及び評価方法を以下に示す。
【0082】
例1a
マグネチックスターラー、滴下漏斗、及びガス導入アタッチメントとオイルバルブ(Zaitsev washer)とを備えた還流冷却器を備えた1L容量の反応器に、アルゴン雰囲気下で、マグネシウム金属(13.2g、0.55mol)、続いて乾燥脱酸素テトラヒドロフラン(THF、200mL)及び水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAH)[(i-Bu)AIH、1mL、5.61mmol]を投入した。これは、反応器内容物を撹拌しながら、室温で行われた。水素気泡の発生が止むまでマグネシウムの活性化を行った。次に、(N,N-ジメチルアミノ)ジメチルクロロシラン(68.85g、0.50mol)及び溶媒の残りの部分(300mL)を活性化されたマグネシウム金属に加えた。滴下漏斗に塩化ビニルベンジル(重量で約50/50のm-及びp-異性体の混合物(80.90g、0.53mol))を満たした。反応の開始段階で、反応器の内容物を撹拌することなく、8.00mLの塩化ビニルベンジルを混合物に滴下した。反応進行の明らかな兆候が観察されたとき、ハロゲン化ビニルベンゼン誘導体の残量の投与を、反応器内容物が約2時間穏やかに沸騰するような速度で開始した。塩化ビニルベンジルの投入が完了した後、反応器の温度を40℃の範囲で1時間維持し、その後室温まで冷却した。少量の過剰な(ビニルベンジル)塩化マグネシウムを中和するために、0.6mLの水を加えた。次に、反応後の混合液から減圧下で溶媒を留去し、反応残渣に1.0Lのn-ヘキサンを加えた。得られた懸濁液を濾別し、沈殿物をそれぞれ200mLのn-ヘキサンで3回洗浄した。次に、得られた濾液から、40℃の減圧下で、一定の圧力になるまで溶媒を留去した。101.40gのジメチル(ビニルベンジル)シリルジメチルアミン(m-及びp-異性体の混合物)が93%の収率で得られた。
【0083】
例2a(比較)
例1と同様に操作して、(N,N-ジメチルアミノ)ジメチルクロロシラン(31.67g、0.23mol)を、6.19g(0.26mol)のMg(DIBAH、0.5ml、2.80mmolで活性化)の存在下で1-(クロロメチル)-4-ビニルベンゼン(36.62g、0.24mol)と反応させた。50.47gのジメチル(4-ビニルベンジル)シリルジメチルアミンが93%の収率で得られた。
【0084】
例3a
例1と同様に操作して、(N,N-ジメチルアミノ)ジメチルクロロシラン(31.67g、0.23mol)を6.19g(0.26mol)のMg(DIBAH、0.5ml、2.80mmolで活性化)の存在下で塩化ビニルベンジル(重量で約20/80のo-及びp-異性体の混合物、36.62g、0.24mol)と反応させた。50.47gのジメチル(ビニルベンジル)シリルジメチルアミン(o-及びp-異性体の混合物)が93%の収率で得られた。
【0085】
官能化ゴムの合成例
重合
不活性化ステップ:
シクロヘキサン(1.2kg)を窒素パージした2リットルの反応器に加え、シクロヘキサン中1.6Mのn-ブチルリチウム溶液1gで処理した。溶液を70℃に加熱し、10分間激しく撹拌して、反応器の洗浄及び不活性化を行った。その後、ドレンバルブを介して溶媒を除去し、窒素を再度パージした。
【0086】
例1b(比較)
シクロヘキサン(820g)を不活性化された2リットルの反応器に加え、続いてスチレン(31g)及び1,3-ブタジエン(117g)を加えた。スチレン及び1,3ブタジエンからの抑制剤を除去した。次に、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA、2.21mmol)を追加して、スチレンモノマーをランダムに組み込み、ブタジエン由来単位のビニル含有量を増やした。反応器内の溶液を60℃に加熱し、全プロセスの間、継続的に撹拌した。所望の温度に達したら、n-ブチルリチウム(0.045mmol)を添加して、残留不純物のクエンチを行った。次に、n-ブチルリチウム(0.845mmol)を添加して、重合プロセスを開始した。反応は等温プロセスとして60分間行った。この後、四塩化ケイ素(5.25×10-5mol)をカップリング剤としてポリマー溶液に加えた。カップリングは5分間行った。窒素パージしたイソプロピルアルコール(1mmol)を使用して反応溶液を停止し、2-メチル-4,6-ビス(オクチルスルファニルメチル)フェノール(1.0phrポリマー)を加えることで反応溶液を迅速に安定化させた。ポリマー溶液をイソプロパノールで処理すると、ポリマーの沈殿が生じた。最終生成物を真空オーブンで一晩乾燥させた。
【0087】
例2b(コモノマーとしての例1aからのスチレン誘導体)
シクロヘキサン(820g)を不活性化された2リットルの反応器に加え、続いてスチレン(31g)、ジメチル(ビニルベンジル)シリルジメチルアミン(重量で50/50のパラ-及びメタ-異性体の混合物、0.4g)及び1,3-ブタジエン(117g)を加えた。スチレン及び1,3-ブタジエンからの抑制剤を除去した。次に、2,2-ビス(2-テトラヒドロフリル)プロパン(DTHFP、2.52mmol)を添加して、スチレンモノマーをランダムに組み込み、ブタジエン由来単位のビニル含有量を増やした。反応器内の溶液を60℃に加熱し、全プロセスの間、継続的に撹拌した。所望の温度に達したら、n-ブチルリチウム(0.045mmol)を添加して、残留不純物のクエンチを行った。次に、n-ブチルリチウム(0.84mmol)を添加して、重合プロセスを開始した。反応は等温プロセスとして60分間行った。この後、四塩化ケイ素(6.30×10-5mol)をカップリング剤としてポリマー溶液に加えた。カップリングは5分間行った。窒素パージしたイソプロピルアルコール(1mmol)を使用して反応溶液を停止し、2-メチル-4,6-ビス(オクチルスルファニルメチル)フェノール(1.0phrポリマー)を加えることで反応溶液を迅速に安定化させた。ポリマー溶液をイソプロパノールで処理すると、ポリマーの沈殿が生じた。最終生成物を真空オーブンで一晩乾燥させた。
【0088】
例3b(開始剤成分及びコモノマーの両方としての例1aからのスチレン誘導体)
シクロヘキサン(820g)を不活性化された2リットルの反応器に加え、続いてスチレン(31g)、ジメチル(ビニルベンジル)シリルジメチルアミン(重量で50/50のパラ-及びメタ-異性体の混合物、0.4g)及び1,3-ブタジエン(117g)を加えた。スチレン及び1,3-ブタジエンからの抑制剤を除去した。次に、2,2-ビス(2-テトラヒドロフリル)プロパン(DTHFP、3.69mmol)をスチレンランダマイザーとして追加し、ブタジエンモノマーが寄与する単位のビニル含有量を増やした。反応器内の溶液を60℃に加熱し、全プロセスの間、継続的に撹拌した。温度が到達したら、n-ブチルリチウム(0.045mmol)を反応器に加えて、残留不純物のクエンチを行った。
【0089】
n-BuLi(1.23mmol)及びジメチル(ビニルベンジル)シリルジメチルアミン(重量で50/50のパラ-及びメタ-異性体の混合物、0.26g)をビュレット内で一緒に混合し、接触時間を約15分とし、続いて混合物を添加して重合プロセスを開始した。反応を、等温プロセスとして60分間行った。この後、四塩化ケイ素(6.30×10-5mol)をカップリング剤としてポリマー溶液に加えた。カップリングは5分間行った。窒素パージしたイソプロピルアルコール(1mmol)を使用して反応溶液を停止し、2-メチル-4,6-ビス(オクチルスルファニルメチル)フェノール(1.0phrポリマー)を加えることで反応溶液を迅速に安定化させた。ポリマー溶液をイソプロパノールで処理すると、ポリマーの沈殿が生じた。最終生成物を真空オーブンで一晩乾燥させた。
【0090】
例4b(連続重合)
ブタジエン-スチレンコポリマーを、それぞれ10L(反応器1)、20L(反応器20)及び10L(反応器3)の容量を有する3つの反応器の連続リアクターチェーンで調製し、各反応器にはパドル撹拌機が装備されていた。撹拌速度は150~200rpmであり、充填率は50%~60%のレベルであった。ヘキサン、スチレン、1,3-ブタジエン、1,2-ブタジエン(ゲル形成防止添加剤)、DTHFP及びジメチル(ビニルベンジル)シリルジメチルアミン、重量で50/50のパラ-及びメタ-異性体の混合物(ヘキサン中の溶液としての最後の3つの反応物)を、それぞれ10752.00g/h、398.00g/h、1499.00g/h、19.00g/h、102g/h及び31.40g/hの流量で第1の反応器に投入した。n-ブチルリチウムの流量(ヘキサン中の溶液としてのn-BuLi)は107.00g/hであり、ジメチル(ビニルベンジル)シリルジメチルアミン(ヘキサン中の溶液として)の流量は105.00g/hであった。n-BuLiの流れと、ジメチル(ビニルベンジル)シリルジメチルアミンの異性体の重量で50/50の混合物(重量で50/50のパラ-及びメタ-異性体の混合物)を、パイプ内で混合してから反応器に入れ、接触時間は約15分であった。反応器内の温度は70℃~85℃であった。分岐ゴムを得るために、四塩化ケイ素を、反応器3の入口から、スタティックミキサーの入口に、0.05のSiCl/活性n-BuLi比で加えた。カップリング反応は70~85℃で行った。反応器3の出口から、2-メチル-4,6-ビス(オクチルスルファニルメチル)フェノール(ヘキサン中の溶液として)を抗酸化剤として添加した(142g/h)。ポリマーを、溶媒のスチームストリッピングを用いた従来の回収操作によって回収し、スクリュータイプの脱水システムで70℃で乾燥させ、続いて乾燥機内で40分間乾燥させた。
【0091】
特徴解析
ビニル含有量(%)
BS ISO21561:2005に基づき、600MHz H-NMRで測定
結合スチレン含有量(%)
BS ISO21561:2005に基づき、600MHz H-NMRで測定
分子量測定
ゲル浸透クロマトグラフィーを、PSS Polymer Standards Serviceの複数のカラム(ガードカラム付き)を介して、THFを溶出液として及びサンプル調整のために使用して行った。マルチアングルレーザー光散乱測定は、Wyatt Technologies Dawn Heleos II光散乱検出器、DAD(PDA)Agilent 1260 Infinity UV-VIS検出器、及びAgilent 1260 Infinity屈折率検出器を使用して実施した。
【0092】
ガラス転移温度(℃)
PN-EN ISO11357-1:2009に基づいて測定
ムーニー粘度(ML(1+4)/100℃)
ASTM D 1646-07に基づいて測定、予熱=1分、ローター動作時間=4分、温度=100℃の条件下で大型ローターを使用
加硫特性
ASTM D6204に基づいて測定、RPA 2000 Alpha Technologiesゴム加工分析装置を使用、動作時間=30分、温度=170℃
ゴム組成物の特性の評価及び測定
各例で得られたポリマーを使用して加硫ゴムコンパウンドを調製し、以下の試験パラメータについて測定した
i)タイヤ予測値(60℃のtanδ、0℃のtanδ、-10℃のtanδ)
加硫ゴムコンパウンドをテストサンプルとして使用し、動的機械分析機(DMA450+MetraviB)を、動的ひずみ=2%、周波数=10Hz、温度範囲-70~70℃、加熱速度2.5K/分の条件下、単一せん断モードで使用して、このパラメータを測定した。
【0093】
ii)反発弾性
ISO4662に基づいて測定
表1は、この研究のために合成された4つのサンプルの特性評価結果を示している。
【0094】
【表1】
【0095】
配合
実施例2b、3b、4b及び比較例1bでそれぞれ得られたゴムを用いて、表2に示す「ゴム組成物の配合表」に従って配合を行った。溶液スチレン-ブタジエンゴム、フィラー、及びゴム添加剤の配合は、バンバリータイプの密閉式ミキサー(350E Brabender GmbH&Co.KG)及び実験室サイズの2本ロールミルで行った。ゴムコンパウンドは2つの異なる段階で混合され、最終パスは2本ロールミルで完了した。第1の段階は、いくつかの工程でポリマーをオイル、シリカ、シランカップリング剤、6PPD、及び活性剤と混合するために使用された。第2の段階は、カーボンブラックの添加と共にシリカの分散をさらに改善するためであり、その後、コンパウンドを24時間静置した。最終パスのために調整するために、ゴムコンパウンドを4時間コンディショニングさせた。最終混合は2本ロールミルで行った。最後の工程は、硬化パッケージを追加するために使用された。次に、各コンパウンドを170℃でT95+1.5分間加硫して(RPAの結果に基づく)、加硫物を得た。各加硫ゴムコンパウンドを、上記の硬化特性、タイヤ予測値及び反発弾性について評価及び測定した。結果を表3に示す。
【0096】
【表2】
【0097】
【表3】
【0098】
これらの結果から明らかなように、シリカ混合物において、加硫状態の特性に基づいて判断すると、本発明によるSSBR 3bは、対応するゴム組成物3cに、対照SSBR 1b及び本発明による他のSSBR 2bで得られたものより優れた強化特性を付与する。さらに、表3のデータは、連続重合で得られたSSBR 4bが、対照SSBR 1b及びSSBR 2bと比較して、優れた強化特性を有することを示している。
【0099】
さらに、本発明によるゴム組成物3cのタイヤ予測値は、対照ゴム組成物1c及び本発明によるゴム組成物2c及び4cのものに比べて(転がり抵抗の点で)改善されている。さらに、前記タイヤ予測値は、対照ゴム組成物1cと比較して、本発明によるゴム組成物2cで改善されている。さらに、タイヤ予測値は、対照ゴム組成物1cと比較して、本発明によるゴム組成物4cで改善されており、また、アイストラクション及びドライトラクションの特性は、ゴム組成物1c、2c、及び3cのものに比べて改善されている。