(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】リン酸触媒を用いたタウリンのアルキルタウレートアミドへの変換の向上
(51)【国際特許分類】
C07C 303/22 20060101AFI20231002BHJP
C07C 309/15 20060101ALI20231002BHJP
B01J 27/16 20060101ALI20231002BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20231002BHJP
【FI】
C07C303/22
C07C309/15
B01J27/16 Z
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2020553473
(86)(22)【出願日】2019-04-05
(86)【国際出願番号】 EP2019058706
(87)【国際公開番号】W WO2019206607
(87)【国際公開日】2019-10-31
【審査請求日】2022-02-04
(32)【優先日】2018-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521042714
【氏名又は名称】ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベスローテン・ヴェンノーツハップ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ダン,エリン・ホイットフィールド
(72)【発明者】
【氏名】ハリチアン,ビジャン
(72)【発明者】
【氏名】シローチ,アナト
(72)【発明者】
【氏名】ウィンターズ,ジョン・ロバート
【審査官】前田 憲彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-008603(JP,A)
【文献】特開昭57-139056(JP,A)
【文献】特公昭32-007320(JP,B1)
【文献】特開昭61-129160(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 303/
C07C 309/
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
C
8~C
20脂肪酸をタウリン塩と反応させることを含む、アルキルタウレートアミドの製造方法であって、
a)脂肪酸
とタウリン塩とのモル比は、
1.6:1~10:
1であり;
b)反応温度は、180℃~250
℃であり;
c)触媒は、0.1~0.7重量
%の量で使用され;
d)反応時間は、1~10時
間であり;
e)触媒はリン酸である、製造方法。
【請求項2】
C
8~C
20脂肪酸をタウリン塩と反応させることを含む、アルキルタウレートアミドの製造方法における、
アルキルタウレートアミドの収率を高め、褐変を低減するための、0.1~0.7重量
%のリン酸触媒の使用
であって、
・脂肪酸とタウリン塩とのモル比は、1.6:1~10:1であり;
・反応温度は、180℃~250℃である、使用。
【請求項3】
・反応時間は、1~10時
間である、請求項2に記載の使用。
【請求項4】
褐変の低減
は、
リン酸触媒以外の触媒を用いること以外は同じアルキルタウレートアミドの製造方法と比べて褐変が低減していることを意味する、請求項2又は3に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルキルタウレートアミド(「ATA」)の収率を高めるための方法又はプロセスに関し、これは、リン酸触媒を用いた、タウリン又はタウリン塩の脂肪酸(例えばC8~C24鎖長脂肪酸)とのアミド化反応から典型的に作られる。
【背景技術】
【0002】
タウリンと脂肪酸との反応からのアルキルタウレートアミドの製造を開示する文献は知られている。
【0003】
例えば、Burnetteの米国特許第2,880,219号は、脂肪酸およびタウリンからのN-アシルタウレートの製造を教示している。第7欄の表から、一般に、温度はすべて比較的高いが、転化率はかなり良好であることが分かる。触媒は使用されていないように思われ、どのように特定の触媒が別の触媒よりも予想外に優れているかについての議論はもちろんされていない。
【0004】
BurnetteおよびChiddixの「脂肪酸とN-メチルタウリンとの反応」は同様の反応を開示する。いかなる触媒の使用についての開示も全くないように思われる。
【0005】
Schenkの米国特許第3,232,968号は、特に次亜リン酸を使用してN-アシルタウレートを調製する方法を開示している。他の触媒に対するリン酸の優位性は認められていない。
【0006】
予想外に、本出願人は、他の点では同一のプロセス工程および条件下で、特にリン酸の使用が(例えば、他の触媒と比較して)はるかに優れていることを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第2,880,219号
【文献】米国特許第3,232,968号
【発明の概要】
【0008】
本発明は、タウリンからアルキルタウレートアミドへの変換を増強する方法に関する。特定の触媒であるリン酸触媒の使用は、予想外に、全ての他のパラメーターが同一で、向上した効力を提供することが見出された。
【0009】
より具体的には、本発明は、アルキルタウレートアミドの製造方法を提供するものであり、該方法は、C8~C20の脂肪酸をタウリンまたはタウリン塩と反応させることを含み、
ここで、脂肪酸対タウリン(または塩)のモル比は、1.5:1~10:1、好ましくは1.6:1~7:1または1.9~5:1であり;
ここで、反応温度は、180℃~250℃、好ましくは190℃~245℃の範囲であり;
ここで、触媒は、リン酸であり、0.1~0.7、好ましくは0.1~0.5重量%の量で使用され;
ここで、反応時間は、1~10時間、好ましくは1~6時間の範囲である。
【0010】
特定のリン酸触媒の使用は、より大きな効力を可能にし、すなわち、より大きな収率が得られると同時に、望ましくない褐変を回避する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施例または他に明示的に示される場合を除き、材料の量または反応条件、材料の物理的特性および/または使用を示す本明細書中のすべての数字は、「約」という語によって修飾されると理解されるべきである。
【0012】
全体を通して使用されるように、範囲は、その範囲内にある各値および全値を説明するための簡略表記として使用される。範囲内の任意の値を範囲の末端として選択することができる。その使用は、リストからの任意の1つを個別に選択することができること、またはリストからの任意の組合せを選択することができることを示す。
【0013】
疑義を回避するために、「含む(comprising)」という語は、「含む(including)」を意味するものであるが、必ずしも「からなる(consisting of)」または「からなる(composed of)」を意味するものではない。言い換えれば、列挙されたステップまたはオプションは網羅的である必要はない。
【0014】
特に明記しない限り、使用される成分の量についてのすべてのパーセンテージは、組成物の総重量中の材料の活性重量に基づく重量パーセンテージであると理解されるべきであり、その合計は100%である。
【0015】
本発明は、特に触媒としてリン酸を使用し、タウリンからアルキルタウレートアミドへの変換を増強する方法に関する。
【0016】
具体的には、タウリンまたはタウリン塩を、C8~C22、好ましくはC8~C20の脂肪酸と、脂肪酸対タウリンまたはタウリン塩の定義された比で反応させる方法に関する。リン酸の使用は、向上した収率および/または効率を提供することが見出され、さらに、観察可能な褐変は存在しない。
【0017】
示されているように、本発明は、脂肪酸を反応させる反応に関する(例えば、C8~C22またはC8~C20の脂肪酸、好ましくは直鎖で飽和したもの;好ましくはC10~C18の脂肪酸、再度好ましくは直鎖で飽和したもの;より好ましくはC10から~C14の脂肪酸)。より具体的には、脂肪酸を、タウリンおよび/またはタウリン塩と、脂肪酸対タウリンまたはタウリン塩の定義されたモル比で反応させる。1つより多い脂肪酸を使用する場合、この比は、混合物中の全ての脂肪酸対タウリンまたはタウリン塩のモル比として定義される。その反応は、特定のリン酸触媒の存在下で行われ、反応温度および定義された反応時間範囲内で行われる。
【0018】
示されているように、C10~C14、好ましくはC12の脂肪酸の使用は、C8~C22またはC8~C20の範囲の脂肪酸を使用する場合、非常に好適である。例えば、50~100%は、好ましくはC10~C14、好ましくはC12の脂肪酸である。好ましい実施形態では、100%の脂肪酸がC12であってもよく、すなわち、C12が唯一の反応性脂肪酸である。
【0019】
脂肪酸は、タウリンまたはタウリン塩、例えば、NH2CH2CH2SO3
-M+(ここで、M+は、ナトリウムまたはカリウムの対イオンであってよい)と反応する。
【0020】
本発明は、脂肪酸または脂肪酸の混合物(好ましい脂肪酸はC12直鎖脂肪酸である)とタウリンおよび/またはタウリン塩との反応のための方法を含み、ここで
a)脂肪酸対タウリン(または塩)のモル比は、1.5:1~10:1、好ましくは1.6:1~7:1、または1.7:1~5:1であり;
b)反応温度は、180℃~250℃、好ましくは190~245℃、さらに好ましくは200~245℃であり;
c)反応時間は、1~10、好ましくは1~6時間である。
【0021】
上記のように、脂肪酸は、タウリンまたはタウリン塩、例えば、NH2CH2CH2SO3
-M+(ここで、M+は、ナトリウムまたはカリウムの対イオンであってよい)と反応する。
【0022】
記載したように、脂肪酸または全脂肪酸対タウリンまたはタウリン塩のモル比は、1.5:1~10:1、好ましくは1.6:1~7:1である。
【0023】
反応温度は、180℃~250℃、好ましくは190~245℃、より好ましくは200~245℃である。一部の態様において、反応温度は220℃~245℃であり、触媒は0.1~0.7、好ましくは0.3~0.6%で使用される。
【0024】
反応時間は、1~100時間、好ましくは1~6時間、より好ましくは2~5時間である。
【0025】
種々の触媒がアルキルタウレートアミドの製造のための上記反応において使用されてきたが、出願人は、他の触媒の使用と比較して増強された収率が見いだされたことはもちろんのこと、特にリン酸を使用することについての開示を知らない。
【0026】
触媒は、0.1重量%~0.7重量%、好ましくは0.1重量%~0.5重量%のレベルで存在する。
【0027】
本発明はさらに請求項1の方法によって製造されるアルキルタウレートアミドに関する。
【0028】
方法
典型的な方法を以下に示す。
1.メカニカルスターラー、コンデンサー、溶媒トラップ/レシーバーおよび熱電対/窒素(N2)流入口を備えた4つ口の250ml丸底フラスコに、ナトリウムN-メチルタウリン(92.78g、61.53%溶液、1当量)を加えた。N2の流れは、毎分0.2リットル(LPM)に設定された。
2.反応温度を約240℃に上昇させ、ラウリン酸(141.91g、2当量)およびリン酸(1.18g、85%溶液)を添加した。リン酸を0.5重量%の量で添加した。反応混合物を240℃で1~4時間撹拌した。
【実施例】
【0029】
【0030】
【0031】
表1および表2から、全く同じ条件下で使用される、次亜リン酸(H3PO2)および次亜リン酸ナトリウム(NaPO2H2)のような他の触媒に対して、リン酸(H3PO4)の予期しない有益な効果に関連して、様々なことが注目される。
【0032】
従って、実施例1および2対比較例AおよびBでは、同一の触媒量、温度および反応時間で、リン酸が明らかに優れた収率を提供することが分かる。実施例3および4対比較例CおよびDは、2時間の反応時間で同じ増強された利益(例えば、98.8%または97.9%の収率対91.7%または91.5%の収率)を示す。さらに、実施例5対比較例EおよびFは、3時間の反応時間で、リン酸対他の触媒について同じ優れた結果を示す。
【0033】
表2は、0.5%の触媒の代わりに0.3%の触媒を使用した実施例の表1と全く同じ結果を示す。例えば、実施例6対比較例GおよびH(0.3%の触媒、240℃の反応温度および1時間の反応時間)では、リン酸が優れている。2時間および3時間での同じ反応(実施例7対比較例IおよびJ;実施例8対比較例KおよびL)は、収率においてリン酸の同じ優位性を示す。
【0034】
リン酸を使用して生成した生成物(白)。
【0035】
これらの結果は、特定の触媒対他の関連する触媒の使用に完全に基づくものであり、全く予想外である。
【0036】
【0037】
実施例9および10ならびに比較例M~P(上記表3)は、すべての他の変数が等しく、リン酸が驚くべき収率を提供することをもう一度実証する。表3において、表1および2の実施例よりも低い温度で実施する(195℃対240℃で実施する)と、収率は全般的に低いが、リン酸は、他の触媒(次亜リン酸、酸化亜鉛)と比較して、これらのより低い温度でも優れた収率を提供する。1組の3つの実施例を1時間で実施し、別の組の3つを2時間で実施した。表3の全ての実施例は0.5%の触媒を使用した。上述したように、この表は、他のリン族触媒よりも優れているだけでなく、周知の一般に使用される触媒である酸化亜鉛よりも優れていることを示している。リン酸を使用して生成した生成物(白)。
【0038】
【0039】
表4は、他の触媒(例えば、次亜リン酸)と比較したリン酸の相対的優位性の同じパターンを示す。再度、0.3%の触媒及び195℃の反応温度を用いて、1、2、3及び4時間の反応で一対の反応(この表ではリン酸対次亜リン酸)を比較したところ、触媒としてリン酸を用いた収率はいずれも優れていた。リン酸を使用して生成した生成物(白)。