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特許7358403ビグアニジルラジカルを含む新規化合物及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】ビグアニジルラジカルを含む新規化合物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07C 279/26 20060101AFI20231002BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231002BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231002BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20231002BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231002BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231002BHJP
   A61K 51/04 20060101ALI20231002BHJP
   A61K 31/155 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
C07C279/26 CSP
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K47/54
A61K45/00 101
A61K45/00
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K51/04 200
A61K31/155
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2020567744
(86)(22)【出願日】2019-06-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-27
(86)【国際出願番号】 EP2019064422
(87)【国際公開番号】W WO2019233982
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2022-03-28
(31)【優先権主張番号】18305683.7
(32)【優先日】2018-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509181699
【氏名又は名称】アンスティテュ・クリー
(73)【特許権者】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンセルム(アンスティチュート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル)
(73)【特許権者】
【識別番号】506316557
【氏名又は名称】サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィック
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】タチアナ・カニェーケ
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン・ミューラー
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル・ロドリゲス
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0342909(US,A1)
【文献】石田 敬 他,有機合成化学協会誌,1970年,28(10),pp.1045-1049
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
{式中
R1は、H、C1~C6アルキル、-(CH2)a-C≡CH、-(CH2)b-P+Ph3、C3~C10シクロアルキル、C3~C10シクロヘテロアルキル、C6~C12アリール、及びC5~C12ヘテロアリール(式中、「a」は1~6から選択される整数であり、「b」は5~11から選択される整数である)からなる群から選択され、前記アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、R基又はR'基によって任意選択により置換されており;
R2は、
- -(CH2)f-CR4=CH-CH=CR5-(CH2)g-R3(式中、R4及びR5は、H、R基であるか、又は6員環を一緒になって形成し、1つ若しくは2つのR'基で任意選択により置換されているか、又は3~6員を有するシクロアルキル、アリール、シクロヘテロアルキル若しくはヘテロアリールと縮合しており、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数である);
- -(CH2)f-C≡C-C≡C-(CH2)g-R3(式中、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数である);
- -(CH2)j-CH[(CH2)k-P+Ph3]-(CH2)l-R3(式中、「j」及び「l」は、1~6から独立して選択される整数であり、「k」は1~6から選択される整数である);
- -(CH2)m-シクロブタニル-(CH2)n-R3(式中、「m」及び「n」は、1~3から独立して選択される整数である);及び
- -(CH2)p-CHR6-CH=CH-CHR7-(CH2)q-R3(式中、R6及びR7は、H、R基であるか、又は4~6員環を一緒になって形成し、1つ若しくは2つのR'基で任意選択により置換されているか、又は3~6員を有するシクロアルキル、アリール、シクロヘテロアルキル若しくはヘテロアリールと縮合しており、「p」及び「q」は、1~3から独立して選択される整数である)
からなる群から選択され;
R3は、
【化2】
[式中、R8は、H、C1~C6アルキル、-(CH2)a-C≡CH、-(CH2)b-P+Ph3、C3~C10シクロアルキル、C3~C10シクロヘテロアルキル、C6~C12アリール、及びC5~C12ヘテロアリール(式中、「a」は1~6から選択される整数であり、「b」は5~11から選択される整数である)からなる群から選択され、前記アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、R基又はR'基によって任意選択により置換されている]
であり;
・Rは、C1~C6アルキル、C1~C6アルキルオキシ、C1~C6ハロゲノアルキル、C3~C10シクロアルキル、C3~C10シクロヘテロアルキル、C6~C12アリール、及びC5~C12ヘテロアリールからなる群から選択され、基はR'基によって任意選択により置換されており、
・R'は、C1~C6アルキル、C1~C6アルキルオキシ、C1~C6チオアルキル、ハロゲン、C1~C6ハロゲノアルキル、ヒドロキシル(-OH)、シアノ(-CN)、ニトロ、アミノ(-NH2)、カルボキシル(-COOH)、ホスフェート(PO4 -)、アミド(-CONH2)、-COOR''、-NHR''、-NR''R'''、-COR''、-CONHR''、-NHCOR''、-NHSO2R''、-SOR''、-SO2R''、-SONR''R'''、-SO2NR''R'''、C3~C10シクロアルキル、C3~C10シクロヘテロアルキル、C6~C12アリール、及びC5~C12ヘテロアリールからなる群から選択され、前記シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール又はヘテロアリールは、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、アミノ、又はC1~C3アルコキシで任意選択により置換されており、R''及びR'''は、H又はC1~C6アルキルである}
の化合物、又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
R2
- -(CH2)f-CR4=CH-CH=CR5-(CH2)g-R3(式中、R4及びR5は、H、R基であるか、又は6員環を一緒になって形成し、1つ若しくは2つのR'基で任意選択により置換されているか、又は3~6員を有するシクロアルキル、アリール、シクロヘテロアルキル若しくはヘテロアリールと縮合しており、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数であり、「f」+「g」は、2~4である);
- -(CH2)f-C≡C-C≡C-(CH2)g-R3(式中、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数であり、「f」+「g」は、2~4である);
- -(CH2)j-CH[(CH2)k-P+Ph3]-(CH2)l-R3(式中、「j」及び「l」は、1~6から独立して選択される整数であり、「j」+「l」は、5~7であり、「k」は2~4から選択される整数である);
- -(CH2)m-シクロブタニル-(CH2)n-R3(式中、「m」及び「n」は、1~3から独立して選択される整数であり、「m」+「n」は、2~4である);及び
- -(CH2)p-CHR6-CH=CH-CHR7-(CH2)q-R3(式中、R6及びR7は、H、R基であるか、又は4~6員環を一緒になって形成し、1つ若しくは2つのR'基で任意選択により置換されているか、又は3~6員を有するシクロアルキル、アリール、シクロヘテロアルキル若しくはヘテロアリールと縮合しており、「p」及び「q」は、1~3から独立して選択される整数であり、「p」+「q」は、2~4である)
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
・R1が、H、メチル、-(CH2)a-C≡CH、及び-(CH2)b-P+Ph3(式中、「a」は2~4から選択される整数であり、「b」は6~10から選択される整数である)からなる群から選択され;
・R2が、
- -(CH2)f-CR4=CH-CH=CR5-(CH2)g-R3(式中、R4及びR5は、Hであり、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数であり、「f」+「g」は、2~4である);
- -(CH2)f-C≡C-C≡C-(CH2)g-R3(式中、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数であり、「f」+「g」は、2~4である);
- -(CH2)j-CH[(CH2)k-P+Ph3]-(CH2)l-R3(式中、「j」及び「l」は、1~6から独立して選択される整数であり、「j」+「l」は、5~7であり、「k」は1~6から選択される整数である);
- -(CH2)m-シクロブタニル-(CH2)n-R3(式中、「m」及び「n」は、1~3から独立して選択される整数であり、「m」+「n」は、2~4である);及び
- -(CH2)p-CHR6-CH=CH-CHR7-(CH2)q-R3(式中、R6及びR7は、Hであるか、又は4員環を一緒になって形成し、「p」及び「q」は、1~3から独立して選択される整数であり、「p」+「q」は、2~4である)
からなる群から選択され;
・R3が、
【化3】
[式中、R8は、H、メチル、-(CH2)a-C≡CH、及び-(CH2)b-P+Ph3(式中、「a」は1~6から選択される整数であり、「b」は5~11から選択される整数である)からなる群から選択される]
である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
R 1 びR8のうちの少なくとも1つが、-(CH2)a-C≡CH(式中、「a」は、1~6の整数である)である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
【化4】
(式中、nは0~5から独立して選択される整数である);
【化5】
(式中、nは0~5から独立して選択される整数である);
[式中、
点線は存在又は不在であり、共有結合を有する1つ又は2つの原子であり;
Rは、C1~C6アルキル、C1~C6アルキルオキシ、C1~C6ハロゲノアルキル、C3~C10シクロアルキル、C3~C10シクロヘテロアルキル、C6~C12アリール、及びC5~C12ヘテロアリールからなる群から選択され、基はR'基によって任意選択により置換されており;R'は、C1~C6アルキル、C1~C6アルキルオキシ、C1~C6チオアルキル、ハロゲン、C1~C6ハロゲノアルキル、ヒドロキシル(-OH)、シアノ(-CN)、ニトロ、アミノ(-NH2)、カルボキシル(-COOH)、ホスフェート(PO4 -)、アミド(-CONH2)、-COOR''、-NHR''、-NR''R'''、-COR''、-CONHR''、-NHCOR''、-NHSO2R''、-SOR''、-SO2R''、-SONR''R'''、-SO2NR''R'''、C3~C10シクロアルキル、C3~C10シクロヘテロアルキル、C6~C12アリール、及びC5~C12ヘテロアリールからなる群から選択され、前記シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール又はヘテロアリールは、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、アミノ、又はC1~C3アルコキシで任意選択により置換されており、R''及びR'''は、H又はC1~C6アルキルである]、
からなる群から選択される、又はその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
【化6】
(式中、nは0~5から独立して選択される整数である)
からなる群から選択される、又はその薬学的に許容される塩である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
薬物、毒素、又は標識に共有結合した請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物を含む、コンジュゲート。
【請求項8】
式(I)の化合物若しくはその薬学的に許容される塩、又は請求項7に記載のコンジュゲートを含む、医薬組成物又は動物用組成物であって、式(I)は以下のとおりである:
【化7】
{式中、
・R 1 は、H、C 1 ~C 6 アルキル、-(CH 2 ) a -C≡CH、-(CH 2 ) b -P + Ph 3 、C 3 ~C 10 シクロアルキル、C 3~ C 10 シクロヘテロアルキル、C 6 ~C 12 アリール、及びC 5 ~C 12 ヘテロアリール(式中、「a」は1~6から選択される整数であり、「b」は5~11から選択される整数である)からなる群から選択され、前記アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、R基又はR'基によって任意選択により置換されており;
R 2 は、
- -(CH 2 ) f -CR 4 =CH-CH=CR 5 -(CH 2 ) g -R 3 (式中、R 4 及びR 5 は、H、R基であるか、又は6員環を一緒になって形成し、1つ若しくは2つのR'基で任意選択により置換されているか、又は3~6員を有するシクロアルキル、アリール、シクロヘテロアルキル若しくはヘテロアリールと縮合しており、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数である);
- -(CH 2 ) f -C≡C-C≡C-(CH 2 ) g -R 3 (式中、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数である);
- -(CH 2 ) i -R 3 (式中、「i」は7~9から選択される整数である);
- -(CH 2 ) j -CH[(CH 2 ) k -P + Ph 3 ]-(CH 2 ) l -R 3 (式中、「j」及び「l」は、1~6から独立して選択される整数であり、「k」は1~6から選択される整数である);
- -(CH 2 ) m -シクロブタニル-(CH 2 ) n -R 3 (式中、「m」及び「n」は、1~3から独立して選択される整数である);及び
- -(CH 2 ) p -CHR 6 -CH=CH-CHR 7 -(CH 2 ) q -R 3 (式中、R 6 及びR 7 は、H、R基であるか、又は4~6員環を一緒になって形成し、1つ若しくは2つのR'基で任意選択により置換されているか、又は3~6員を有するシクロアルキル、アリール、シクロヘテロアルキル若しくはヘテロアリールと縮合しており、「p」及び「q」は、1~3から独立して選択される整数である)
からなる群から選択され;
R 3 は、
【化8】
[式中、R 8 は、H、C 1 ~C 6 アルキル、-(CH 2 ) a -C≡CH、-(CH 2 ) b -P + Ph 3 、C 3 ~C 10 シクロアルキル、C 3~ C 10 シクロヘテロアルキル、C 6 ~C 12 アリール、及びC 5 ~C 12 ヘテロアリール(式中、「a」は1~6から選択される整数であり、「b」は5~11から選択される整数である)からなる群から選択され、前記アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、R基又はR'基によって任意選択により置換されている]
であり;
・Rは、C 1 ~C 6 アルキル、C 1 ~C 6 アルキルオキシ、C 1 ~C 6 ハロゲノアルキル、C 3 ~C 10 シクロアルキル、C 3~ C 10 シクロヘテロアルキル、C 6 ~C 12 アリール、及びC 5 ~C 12 ヘテロアリールからなる群から選択され、基はR'基によって任意選択により置換されており、
・R'は、C 1 ~C 6 アルキル、C 1 ~C 6 アルキルオキシ、C 1 ~C 6 チオアルキル、ハロゲン、C 1 ~C 6 ハロゲノアルキル、ヒドロキシル(-OH)、シアノ(-CN)、ニトロ、アミノ(-NH 2 )、カルボキシル(-COOH)、ホスフェート(PO 4 - )、アミド(-CONH 2 )、-COOR''、-NHR''、-NR''R'''、-COR''、-CONHR''、-NHCOR''、-NHSO 2 R''、-SOR''、-SO 2 R''、-SONR''R'''、-SO 2 NR''R'''、C 3 ~C 10 シクロアルキル、C 3~ C 10 シクロヘテロアルキル、C 6 ~C 12 アリール、及びC 5 ~C 12 ヘテロアリールからなる群から選択され、前記シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール又はヘテロアリールは、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、アミノ、又はC 1~ C 3 アルコキシで任意選択により置換されており、R''及びR'''は、H又はC 1 ~C 6 アルキルである}。
【請求項9】
請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物、又は請求項7に記載のコンジュゲートを含む、請求項8に記載の医薬組成物又は動物用組成物。
【請求項10】
別の薬物を更に含む、請求項8又は9に記載の医薬組成物又は動物用組成物。
【請求項11】
前記別の薬物が、抗腫瘍薬である、請求項10に記載の医薬組成物又は動物用組成物
【請求項12】
医薬としての使用のための、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物、請求項7に記載のコンジュゲート、又は請求項8から11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
がんの処置への使用のための、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物、請求項7に記載のコンジュゲート、又は請求項8から11のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記がんが、直腸がん、大腸がん、胃がん、頭頸部がん、甲状腺がん、子宮頸がん、子宮がん、乳がん、卵巣がん、脳腫瘍、肺がん、皮膚がん、膀胱がん、血液がん、腎がん、肝臓がん、前立腺がん、多発性骨髄腫、及び子宮内膜がんからなる群から選択される、請求項13に記載の使用のための化合物、コンジュゲート又は医薬組成物。
【請求項15】
前記乳がんが、トリプルネガティブ乳がんであり、及び/又は前記脳腫瘍が、神経膠芽腫及び神経芽細胞腫であり、及び/又は前記肺がんが、小細胞肺がん又は非小細胞肺がんである、請求項14に記載の使用のための化合物、コンジュゲート又は医薬組成物。
【請求項16】
放射線療法及び/又は別の薬物と組み合わせる、請求項14又は15に記載の使用のための化合物、コンジュゲート又は医薬組成物。
【請求項17】
前記別の薬物が、抗腫瘍薬である、請求項16に記載の使用のための化合物、コンジュゲート又は医薬組成物。
【請求項18】
医用イメージング又は診断のための、請求項4又は7に記載の化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
資金調達
本出願につながるプロジェクトは、欧州連合のHorizon 2020研究及び技術革新プログラム(助成金契約番号[647973])の下で欧州研究会議(ERC)から資金提供を受けている。
【0002】
本発明は、医学の分野、特に腫瘍学の分野に関する。本発明は、ビグアニジルラジカルを含む新規化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
ビグアニドの様々な誘導体は、医薬品として使用されている。それらの大部分は、特に真性糖尿病及び前糖尿病の処置に使用されるための高血糖治療薬として使用される。最も広く使用されている薬物は、メトホルミンである。
【0004】
【化1】
【0005】
ビグアニドの誘導体は、プログアニル及びクロルプログアニル(chloproguanil)等の抗マラリア薬として、またクロルヘキシジン、ポリアミノプロピルビグアニド(polyaminopropyl biguanine)、ポリヘキサニド(polihaxanide)、アレキシジン等の消毒剤としても使用される。
【0006】
より最近では、メトホルミン及びその誘導体が、がんの処置におけるそれらの使用について記載されている(Safeら、2018、Biol Chem、399、321~335頁;WO2017/192602)。より具体的には、特許出願は、メトホルミンの誘導体を開示している(EP2522653、EP3222614、WO2013/022279、WO2014/123364、WO2015/160220、WO2016/025725、及びWO2016/155679)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】WO2017/192602
【文献】EP2522653
【文献】EP3222614
【文献】WO2013/022279
【文献】WO2014/123364
【文献】WO2015/160220
【文献】WO2016/025725
【文献】WO2016/155679
【非特許文献】
【0008】
【文献】Safeら、2018、Biol Chem、399、321~335頁
【文献】Olszewskaら、(IUBMB Life. 2013年、Mar;65(3):273~81頁)
【文献】Sletten及びBertozzi(Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 2009年、48(38):6974~6998
【文献】Hennenfent & Govindan(2006年、Annals of Oncology、17, 735~749
【文献】Purification of Laboratory Chemicals(Armarego、W.L.F.、Chai、C.L.L 5th edition)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特にがんの処置には、常に新薬が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、がんの処置においてメトホルミンよりも強力なビグアニジルラジカルを含む新規化合物を提供する。加えて、本発明者らは、本発明の化合物がミトコンドリア銅を標的とし、間葉系の特質を有するがん細胞の集団を選択的に標的とすることができることを確認した。
【0011】
したがって、本発明は、式(I)
【0012】
【化2】
【0013】
{式中、
・R1は、C1~C6アルキル、-(CH2)a-C≡CH、-(CH2)b-P+Ph3、C3~C10シクロアルキル、C3~C10シクロヘテロアルキル、C6~C12アリール、及びC5~C12ヘテロアリール(式中、「a」は1~6、好ましくは2~4から選択される整数であり、「b」は5~11、好ましくは6~10から選択される整数である)からなる群から選択され、前記アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、R基又はR'基によって任意選択により置換されており;
R2は、
- -(CH2)d-C≡CH(式中、「d」は1~6から選択される整数である);及び
- -(CH2)e-CH=CH2(式中、「e」は2~6から選択される整数である)
からなる群から選択され;
或いは、
・R1は、H、C1~C6アルキル、-(CH2)a-C≡CH、-(CH2)b-P+Ph3、C3~C10シクロアルキル、C3~C10シクロヘテロアルキル、C6~C12アリール、及びC5~C12ヘテロアリール(式中、「a」は1~6、好ましくは2~4から選択される整数であり、「b」は5~11、好ましくは6~10から選択される整数である)からなる群から選択され、前記アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、R基又はR'基によって任意選択により置換されており;
R2は、
- -(CH2)f-CR4=CH-CH=CR5-(CH2)g-R3(式中、R4及びR5は、H、R基であるか、又は6員環を一緒になって形成し、1つ若しくは2つのR'基で任意選択により置換されているか、又は3~6員を有するシクロアルキル、アリール、シクロヘテロアルキル若しくはヘテロアリールと縮合しており、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数である);
- -(CH2)f-C≡C-C≡C-(CH2)g-R3(式中、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数である);
- -(CH2)i-R3(式中、「i」は7~9、好ましくは8から選択される整数である);
- -(CH2)j-CH[(CH2)k-P+Ph3]-(CH2)l-R3(式中、「j」及び「l」は、1~6から独立して選択される整数であり、「k」は1~6から選択される整数である);
- -(CH2)m-シクロブタニル-(CH2)n-R3(式中、「m」及び「n」は、1~3から独立して選択される整数である);及び
- -(CH2)p-CHR6-CH=CH-CHR7-(CH2)q-R3(式中、R6及びR7は、H、R基であるか、又は4~6員環を一緒になって形成し、1つ若しくは2つのR'基で任意選択により置換されているか、又は3~6員を有するシクロアルキル、アリール、シクロヘテロアルキル若しくはヘテロアリールと縮合しており、「p」及び「q」は、1~3から独立して選択される整数である)
からなる群から選択され;
R3は、
【0014】
【化3】
【0015】
[式中、R8は、H、C1~C6アルキル、-(CH2)a-C≡CH、-(CH2)b-P+Ph3、C3~C10シクロアルキル、C3~C10シクロヘテロアルキル、C6~C12アリール、及びC5~C12ヘテロアリール(式中、「a」は1~6、好ましくは2~4から選択される整数であり、「b」は5~11、好ましくは6~10から選択される整数である)からなる群から選択され、前記アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、R基又はR'基によって任意選択により置換されている]
であり;
・Rは、C1~C6アルキル、C1~C6アルキルオキシ、C1~C6ハロゲノアルキル、C3~C10シクロアルキル、C3~C10シクロヘテロアルキル、C6~C12アリール、及びC5~C12ヘテロアリールからなる群から選択され、基はR'基によって任意選択により置換されており、
・R'は、C1~C6アルキル、C1~C6アルキルオキシ、C1~C6チオアルキル、ハロゲン、C1~C6ハロゲノアルキル、ヒドロキシル(-OH)、シアノ(-CN)、ニトロ、アミノ(-NH2)、カルボキシル(-COOH)、ホスフェート(PO4 -)、アミド(-CONH2)、-COOR''、-NHR''、-NR''R'''、-COR''、-CONHR''、-NHCOR''、-NHSO2R''、-SOR''、-SO2R''、-SONR''R'''、-SO2NR''R'''、C3~C10シクロアルキル、C3~C10シクロヘテロアルキル、C6~C12アリール、及びC5~C12ヘテロアリールからなる群から選択され、前記シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール又はヘテロアリールは、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、アミノ、又はC1~C3アルコキシで任意選択により置換されており、R''及びR'''は、H又はC1~C6アルキルである}
の化合物、又はその薬学的に許容される塩に関する。
【0016】
好ましくは、R3は、化合物中に存在する。
【0017】
任意選択により、R2は、
- -(CH2)d-C≡CH(式中、「d」は2~4から選択される整数である);
- -(CH2)e-CH=CH2(式中、「e」は2~4から選択される整数である);
- -(CH2)f-CR4=CH-CH=CR5-(CH2)g-R3(式中、R4及びR5は、H、R基であるか、又は6員環を一緒になって形成し、1つ若しくは2つのR'基で任意選択により置換されているか、又は3~6員を有するシクロアルキル、アリール、シクロヘテロアルキル若しくはヘテロアリールと縮合しており、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数であり、「f」+「g」は、2~4である);
- -(CH2)f-C≡C-C≡C-(CH2)g-R3(式中、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数であり、「f」+「g」は、2~4である);
- -(CH2)i-R3(式中、「i」は7~9から選択される整数である);
- -(CH2)j-CH[(CH2)k-P+Ph3]-(CH2)l-R3(式中、「j」及び「l」は、1~6から独立して選択される整数であり、「j」+「l」は、5~7であり、「k」は2~4から選択される整数である);
- -(CH2)m-シクロブタニル-(CH2)n-R3(式中、「m」及び「n」は、1~3から独立して選択される整数であり、「m」+「n」は、2~4である);及び
- -(CH2)p-CHR6-CH=CH-CHR7-(CH2)q-R3(式中、R6及びR7は、H、R基であるか、又は4~6員環を一緒になって形成し、1つ若しくは2つのR'基で任意選択により置換されているか、又は3~6員を有するシクロアルキル、アリール、シクロヘテロアルキル若しくはヘテロアリールと縮合しており、「p」及び「q」は、1~3から独立して選択される整数であり、「p」+「q」は、2~4である)
からなる群から選択される。
【0018】
任意選択により、
・R1は、メチル、-(CH2)a-C≡CH、及び-(CH2)b-P+Ph3(式中、「a」は2~4から選択される整数であり、「b」は6~10から選択される整数である)からなる群から選択され;
・R2は、
- -(CH2)d-C≡CH(式中、「d」は2~4から選択される整数である);及び
- -(CH2)e-CH=CH2(式中、「e」は2~6から選択される整数である)
からなる群から選択される。
【0019】
任意選択により、
・R1は、H、メチル、-(CH2)a-C≡CH、及び-(CH2)b-P+Ph3(式中、「a」は2~4から選択される整数であり、「b」は6~10から選択される整数である)からなる群から選択され;
・R2は、
- -(CH2)f-CR4=CH-CH=CR5-(CH2)g-R3(式中、R4及びR5は、Hであり、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数であり、「f」+「g」は、2~4である);
- -(CH2)f-C≡C-C≡C-(CH2)g-R3(式中、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数であり、「f」+「g」は、2~4である);
- -(CH2)i-R3(式中、「i」は7~9から選択される整数である);
- -(CH2)j-CH[(CH2)k-P+Ph3]-(CH2)l-R3(式中、「j」及び「l」は、1~6から独立して選択される整数であり、「j」+「l」は、5~7であり、「k」は1~6から選択される整数である);
- -(CH2)m-シクロブタニル-(CH2)n-R3(式中、「m」及び「n」は、1~3から独立して選択される整数であり、「m」+「n」は、2~4である);及び
- -(CH2)p-CHR6-CH=CH-CHR7-(CH2)q-R3(式中、R6及びR7は、Hであるか、又は4員環を一緒になって形成し、「p」及び「q」は、1~3から独立して選択される整数であり、「p」+「q」は、2~4である)
からなる群から選択され;
・R3は、
【0020】
【化4】
【0021】
[式中、R8は、H、メチル、-(CH2)a-C≡CH、及び-(CH2)b-P+Ph3(式中、「a」は1~6、好ましくは2~4から選択される整数であり、「b」は5~11、好ましくは6~10から選択される整数である)からなる群から選択される]
である。
【0022】
任意選択により、R1、R2、及びR8のうちの少なくとも1つは、-(CH2)a-C≡CH(式中、「a」は、1~6の整数である)である。
【0023】
任意選択により、化合物は、
【0024】
【化5】
【0025】
(式中、nは3~9から選択される整数である);
【0026】
【化6】
【0027】
(式中、nは0~5から独立して選択される整数である);
【0028】
【化7】
【0029】
(式中、nは0~5から独立して選択される整数である);
[式中、
点線は存在又は不在であり、共有結合を有する1つ又は2つの原子であり;
Rは、C1~C6アルキル、C1~C6アルキルオキシ、C1~C6ハロゲノアルキル、C3~C10シクロアルキル、C3~C10シクロヘテロアルキル、C6~C12アリール、及びC5~C12ヘテロアリールからなる群から選択され、基はR'基によって任意選択により置換されており;R'は、C1~C6アルキル、C1~C6アルキルオキシ、C1~C6チオアルキル、ハロゲン、C1~C6ハロゲノアルキル、ヒドロキシル(-OH)、シアノ(-CN)、ニトロ、アミノ(-NH2)、カルボキシル(-COOH)、ホスフェート(PO4 -)、アミド(-CONH2)、-COOR''、-NHR''、-NR''R'''、-COR''、-CONHR''、-NHCOR''、-NHSO2R''、-SOR''、-SO2R''、-SONR''R'''、-SO2NR''R'''、C3~C10シクロアルキル、C3~C10シクロヘテロアルキル、C6~C12アリール、及びC5~C12ヘテロアリールからなる群から選択され、前記シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール又はヘテロアリールは、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、アミノ、又はC1~C3アルコキシで任意選択により置換されており、R''及びR'''は、H又はC1~C6アルキルである]
からなる群から選択される、又はその薬学的に許容される塩である。
【0030】
任意選択により、化合物は、
【0031】
【化8】
【0032】
(式中、nは3~9から選択される整数である);
及び
【0033】
【化9】
【0034】
(式中、nは0~5から独立して選択される整数である);
からなる群から選択される、又はその薬学的に許容される塩である。
【0035】
本発明はまた、薬物、毒素、又は標識に共有結合した、本明細書に開示された化合物を含むコンジュゲートに関する。より具体的には、本発明は、アルキン基を有する本開示による化合物を、アジド(N3)基に共有結合した薬物、毒素、又は標識と反応させることによって得られるコンジュゲートに関する。
【0036】
本発明は更に、本明細書に開示された化合物又はコンジュゲートを含む医薬組成物又は動物用組成物に関する。任意選択により、医薬組成物又は動物用組成物は、別の薬物、好ましくは抗腫瘍薬、より好ましくは化学療法薬、抗がん抗体、ホルモン療法薬、免疫療法薬、キナーゼ阻害薬及びそれらの組み合わせからなる群から選択される薬物を更に含む。
【0037】
本発明は、特にがん、例えば、直腸がん、大腸がん、胃がん、頭頸部がん、甲状腺がん、子宮頸がん、子宮がん、乳がん、特にトリプルネガティブ乳がん、卵巣がん、脳腫瘍、特に神経膠芽腫及び神経芽細胞腫、肺がん、特に小細胞肺がん及び非小細胞肺がん、皮膚がん、膀胱がん、血液がん、腎がん、肝臓がん、前立腺がん、多発性骨髄腫、及び子宮内膜がんからなる群から選択されるがんを処置するための医薬として使用するための、本明細書に開示された化合物、コンジュゲート又は医薬組成物に関する。任意選択により、化合物、コンジュゲート又は医薬組成物は、放射線療法及び/又は別の薬物、好ましくは抗腫瘍薬、より好ましくは化学療法薬、ホルモン療法薬、及び免疫療法薬からなる群から選択される薬物と組み合わせて使用される。
【0038】
最後に、本発明は、医用イメージング又は診断のための、本明細書に開示された、アルキン基を含む化合物の使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】メトホルミン及びより強力な化合物であるメトホルミニン(metforminyn)が、間葉系状態のがん細胞の増殖を優先的に変化させることを示す図である。(図1A)メトホルミン、フェンホルミンの分子構造及びメトホルミニンの合成。(図1B)指示通りに72時間処理したがん細胞の用量反応生存率曲線。(図1C)指示通りに72時間処理したMDA-MB-468細胞の上皮及び間葉系状態の細胞の用量反応生存率曲線。(図1D)指示通りに72時間処理した上皮及び間葉系状態のHMLER細胞の用量反応生存率曲線。3つの独立した生物学的複製のデータポイント及びエラーバー、平均値及び標準偏差。
図2】ビグアニドがミトコンドリアを直接標的とし、銅の酸化を促進することを示す図である。(図2A)クリックケミストリーを使用した細胞内のメトホルミニンの標識化の概略図。(図2B)標識メトホルミニンの蛍光顕微鏡画像。細胞をメトホルミニンにより処理し、方法に記載されたクリック標識化を実施した。ミトコンドリアを、シトクロムc免疫染色を使用して検出し、4',6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)により核DNAを染色する。スケールバーは10μmである。(図2C)指示通りに48時間処理した、がん細胞における銅(II)の蛍光顕微鏡検出。スケールバーは10μmである。(図2D)指示通りに48時間処理した、がん細胞における銅(II)のフローサイトメトリー分析。(図2E)銅(I)溶液の酸化電位(矢印)に向けたサイクリックボルタンメトリー測定。メトホルミン(2mol当量)の非存在下及び存在下で記録されたデータ。酸化還元ピーク電位は破線で示されている。(図2F)指示通りに48時間処理した、がん細胞における鉄(II)のフローサイトメトリー分析。MDA-MB-468細胞を図2C、D、及びD(F)において使用し、方法に記載されているように処理した。
図3A】標識Metの蛍光顕微鏡イメージングを示す図である。指示された細胞株をメトホルミニンにより処理し、クリック標識化を実施した。メトホルミニンを、銅触媒を加えた方法で、記載のように細胞内で標識化した。ミトコンドリアを、シトクロムc免疫染色又はMitoTrackerを使用して検出し、DAPIにより核DNAを染色する。スケールバーは10μmである。Cuを含まないという用語は、標識化を促進するために銅触媒を細胞に加えていないことを示す。
図3B】標識Metの蛍光顕微鏡イメージングを示す図である。指示された細胞株をメトホルミニンにより処理し、クリック標識化を実施した。メトホルミニンを、銅触媒を加えない方法で、記載のように細胞内で標識化した。ミトコンドリアを、シトクロムc免疫染色又はMitoTrackerを使用して検出し、DAPIにより核DNAを染色する。スケールバーは10μmである。Cuを含まないという用語は、標識化を促進するために銅触媒を細胞に加えていないことを示す。
図4A】Ctr1レベルのウエスタンブロット分析を示す図である。MDA-MB-468細胞を、指示通りに72時間処理した。
図4B】Ctr1レベルのフローサイトメトリー分析を示す図である。MDA-MB-468細胞を、指示通りに72時間処理した。
図5】がん細胞の間葉系状態を維持するには銅が必要であることを示す図である。(図5A)EGFにより72時間処理した細胞における間葉系マーカー(ビメンチン)、Ctr1、及び銅含有ミトコンドリアタンパク質(SOD1、Cox4)のレベルのウエスタンブロット分析。(図5B)EGFにより72時間処理した細胞におけるCtr1タンパク質レベルのフローサイトメトリー分析。(図5C)EGFにより72時間処理した細胞における銅(II)のフローサイトメトリー分析。(図5D)指示通りに72時間処理した細胞における間葉系マーカー(ビメンチン、フィブロネクチン)のウエスタンブロット分析。(図5E)指示通りに72時間処理した細胞におけるE-カドヘリン及びファロイジンの蛍光顕微鏡画像。DAPIにより核DNAを染色する。スケールバーは10μmである。(図5F)指示通りに72時間処理したがん細胞における間葉系マーカー及びEMT-TFのウエスタンブロット分析。(図5G)指示通りに72時間処理したがん細胞の細胞表面マーカーのフローサイトメトリー分析及び対応する定量化。3つの独立した生物学的複製のバー及びエラーバー、平均値及び標準偏差。図全体でMDA-MB-468細胞を使用した。
図6】CD44/CD24細胞のフローサイトメトリー分析を示す図である。MDA-MB-468細胞を、指示通りに72時間EGF及びCuCl2により処理した。
【発明を実施するための形態】
【0040】
定義
例えば、C1~C3という用語を使用する場合、それは、対応する炭化水素鎖が1~3個の炭素原子、特に1、2又は3個の炭素原子を含み得ることを意味する。例えば、C1~C6という用語を使用する場合、それは、対応する炭化水素鎖が1~6個の炭素原子、特に1、2、3、4、5又は6個の炭素原子を含み得ることを意味する。
【0041】
「アルキル」という用語は、飽和、直鎖又は分岐鎖脂肪族基を指す。「(C1~C3)アルキル」という用語は、より具体的には、メチル、エチル、プロピル、又はイソプロピルを意味する。「(C1~C6)アルキル」という用語は、より具体的には、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル又はヘキシルを意味する。好ましい実施形態では、「アルキル」は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、又はtert-ブチル、より好ましくはメチルである。
【0042】
「アルコキシ」又は「アルキルオキシ」という用語は、-O-(エーテル)結合によって分子に結合した、上記で定義されたアルキル基に対応する。(C1~C3)アルコキシには、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、及びイソプロピルオキシが含まれる。(C1~C6)アルコキシには、メトキシ、エトキシ、プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブチルオキシ、イソブチルオキシ、tert-ブチルオキシ、ペンチルオキシ、及びヘキシルオキシが含まれる。好ましい実施形態では、「アルコキシ」又は「アルキルオキシ」はメトキシである。
【0043】
「チオアルキル」という用語は、-S-(チオエーテル)結合によって分子に結合した、上記で定義されたアルキル基に対応する。チオ-(C1~C6)アルキル基には、チオ-メチル、チオ-エチル、チオ-プロピル、チオ-ブチル、チオ-ペンチル及びチオ-ヘキシルが含まれる。
【0044】
「チオアルキル」という用語は、-S-(チオエーテル)結合によって分子に結合した、上記で定義されたアルキル基に対応する。チオ-(C1~C6)アルキル基には、チオ-メチル、チオ-エチル、チオ-プロピル、チオ-ブチル、チオ-ペンチル及びチオ-ヘキシルが含まれる。
【0045】
「ヘテロシクロアルキル」という用語は、窒素、酸素、又は硫黄原子等の少なくとも1つのヘテロ原子を更に含む、上記で定義された飽和又は不飽和シクロアルキル基に対応する。また、ヘテロシクロアルキルには、縮合、架橋、又はスピロ結合したヘテロシクロアルキル基も含まれる。代表的なヘテロシクロアルキル基としては、3-ジオキソラン、ベンゾ[1,3]ジオキソリル、ピラゾリニル、ピラニル、チオモルホリニル、ピラゾリジニル、ピペリジル、ピペラジニル、1,4-ジオキサニル、イミダゾリニル、ピロリニル、ピロリジニル、ピペリジニル、イミダゾリジニル、モルホリニル、1,4-ジチアニル、ピロリジニル、オキソゾリニル、オキサゾリジニル、イソキサゾリニル、イソキサゾリジニル、チアゾリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリニル、イソチアゾリジニル、ジヒドロピラニル、テトラヒドロ-2H-ピラニル、テトラヒドロフラニル、及びテトラヒドロチオフェニルが挙げられるが、これらに限定されない。「ヘテロシクロアルキル」という用語は、7-オキサビシクロ[2,2,1]ヘプタニル等の5~10員の架橋ヘテロシクリルを指す場合もある。好ましい実施形態では、ヘテロシクロアルキル基は、テトラヒドロ-2H-ピラニル、テトラヒドロ-2H-ピラニル、テトラヒドロチオフェニル、モルホリニル、又はピペラジニルである。
【0046】
「アリール」という用語は、6~12個の炭素原子を有する単環式又は二環式芳香族炭化水素に対応する。例えば、「アリール」という用語は、フェニル、ビフェニル、又はナフチルを含む。好ましい実施形態では、アリールはフェニルである。
【0047】
本明細書で使用される「ヘテロアリール」という用語は、5~14個の間の原子を含み、窒素、酸素又は硫黄原子等の少なくとも1つのヘテロ原子を含む芳香族、単環式又は多環式基に対応する。そのような単環式及び多環式ヘテロアリール基の例は、ピリジニル,チアゾリル,チオフェニル,フラン,ピロリル,ピラゾール,イミダゾリル,トリアゾリル,テトラゾリル,ベンゾフラン,ピリジニル、チアゾリル、チオフェニル、フラニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ベンゾフラニル、チアナフタレニル、インドリル、インドリニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、トリアジニル、チアントレニル(thianthrenyl)、イソベンゾフラニル、クロメニル、キサンテニル、フェノキサンチニル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、インドリジニル、イソインドリル、インダゾリル、プリニル、キノリジニル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリニル、キナゾリニル、シンノリニル、プテリジニル、カルバゾリル、β-カルボリニル、フェナントリジニル、アクリジニル、ピリミジニル、フェナントロリニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フラザニル、フェノキサジニル、イソクロマニル、クロマニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、インドリニル、イソインドリニル、オキサゾリジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンズイソキサゾリル、オキシンドリル、ベンゾオキサゾリニル、ベンゾチエニル、ベンゾチアゾリル、イサチニル、ジヒドロピリジル、ピリミジニル、s-トリアジニル、オキサゾリル、又はチオフラニル、であり得る。好ましい実施形態では、ヘテロアリール基は、チオフェニル、ピリジニル、ピラジニル、又はチアゾリルである。
【0048】
「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素原子、好ましくはフッ素、塩素又は臭素、より好ましくは塩素又はフッ素に対応する。
【0049】
本発明との関係において、処置という用語は、治癒的、対症的、及び予防的処置を意味する。本発明の医薬組成物、キット、製品、及び組み合わせ調製物は、がんの進行の初期又は後期を含む、既存のがん又は腫瘍を有するヒトにおいて使用することができる。本発明の医薬組成物、キット、製品、及び組み合わせ調製物は、必ずしもがんを有する患者を治癒するわけではないが、進行を遅延させるか若しくは遅らせるか、又は疾患のさらなる進行を防ぎ、それによって患者の状態を改善する。特に、本発明の医薬組成物、キット、製品、及び組み合わせ調製物は、哺乳動物宿主において腫瘍の発生を低減し、腫瘍負荷を低減し、腫瘍退縮を生じさせ、かつ/又は転移の発生及びがんの再発を防ぐ。がんの処置において、本発明の医薬組成物は、治療有効量で投与される。
【0050】
本明細書で使用される「がん」又は「腫瘍」という用語は、制御されていない増殖、及び/又は不死、及び/又は転移能、及び/又は急速な成長、及び/又は増殖率、及び/又は特定の特徴的な形態学的特質等の、がんを引き起こす細胞に典型的な特徴を有する細胞の存在を指す。この用語は、任意のタイプの対象における任意のタイプの悪性腫瘍(原発性又は転移)を指す。特に、この用語は、進行の任意のステージにおける前立腺がんを包含する。
【0051】
本明細書全体の中で、本発明の医薬組成物に関して「がんの処置」、又は類似のものに言及するときはいつでも、a)がんを処置するための方法であって、そのような処置を必要とする対象に本発明の医薬組成物を投与することを含む、前記方法;b)がんの処置のための本発明の医薬組成物の使用;c)がんの処置のための医薬の製造のための本発明の医薬組成物の使用;及び/又は、d)がんの処置に使用するための本発明の医薬組成物、を意味する。
【0052】
「治療有効量」とは、ヒトを含む哺乳動物におけるがんの有害な影響を、単独で、又は医薬組成物、キット、製品若しくは組み合わせ調製物の他の活性成分と組み合わせて、予防、除去、又は低減する本発明の医薬組成物の量を意味する。投与量は、組成物中の各化合物について、単独で、又は本明細書に記載の組み合わせ以外の他の処置と組み合わせて使用される各化合物について定義された「治療有効量」より少なくてもよいことが理解される。組成物の「治療有効量」は、患者、病状、投与様式等に応じて当業者によって適合されるであろう。
【0053】
本発明で使用する場合、「抗腫瘍化学療法」又は「化学療法」という用語は、化学物質又は生化学物質を使用する、特に1つ又は複数の抗悪性腫瘍薬を使用するがんの治療的処置を指す。「ホルモン療法」という用語は、ホルモンをブロック、添加、又は除去することを目的としたがんの処置を指す。例えば、乳がんでは、女性ホルモンのエストロゲン及びプロゲステロンが一部の乳がん細胞の成長を促進する可能性がある。「免疫療法」という用語は、免疫系を使用してがんを拒絶するがんの治療的処置を指す。治療的処置は、患者の免疫系を刺激して悪性腫瘍細胞を攻撃する。
【0054】
化合物
本出願は、式(I)
【0055】
【化10】
【0056】
{式中、
・R1は、H、C1~C6アルキル、好ましくはC1~C3アルキル、-(CH2)a-C≡CH、-(CH2)b-P+Ph3、C3~C10シクロアルキル、C3~C10シクロヘテロアルキル、C6~C12アリール、及びC5~C12ヘテロアリール(式中、「a」は1~6、好ましくは2~4から選択される整数であり、「b」は5~11、好ましくは6~10から選択される整数である)からなる群から選択され、前記アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、R基又はR'基によって任意選択により置換されており;
・R2は、
- -(CH2)d-C≡CH(式中、「d」は1~6から選択される整数である);
- -(CH2)e-CH=CH2(式中、「e」は2~6から選択される整数である);
- -(CH2)f-CR4=CH-CH=CR5-(CH2)g-R3(式中、R4及びR5は、H、R基であるか、又は6員環を一緒になって形成し、1つ若しくは2つのR'基で任意選択により置換されているか、又は3~6員を有するシクロアルキル、アリール、シクロヘテロアルキル若しくはヘテロアリールと縮合しており、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数である);
- -(CH2)f-C≡C-C≡C-(CH2)g-R3(式中、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数である);
- -(CH2)i-R3(式中、「i」は7~9、好ましくは8から選択される整数である);
- -(CH2)j-CH[(CH2)k-P+Ph3]-(CH2)l-R3(式中、「j」及び「l」は、1~6から独立して選択される整数であり、「k」は1~6から選択される整数である);
- -(CH2)m-シクロブタニル-(CH2)n-R3(式中、「m」及び「n」は、1~3から独立して選択される整数である);及び
- -(CH2)p-CHR6-CH=CH-CHR7-(CH2)q-R3(式中、R6及びR7は、H、R基であるか、又は4~6員環を一緒になって形成し、1つ若しくは2つのR'基で任意選択により置換されているか、又は3~6員を有するシクロアルキル、アリール、シクロヘテロアルキル若しくはヘテロアリールと縮合しており、「p」及び「q」は、1~3から独立して選択される整数である)
からなる群から選択され;
・R3は、
【0057】
【化11】
【0058】
[式中、R8は、H、C1~C6アルキル、好ましくはC1~C3アルキル、-(CH2)a-C≡CH、-(CH2)b-P+Ph3、C3~C10シクロアルキル、C3~C10シクロヘテロアルキル、C6~C12アリール、及びC5~C12ヘテロアリール(式中、「a」は1~6、好ましくは2~4から選択される整数であり、「b」は5~11、好ましくは6~10から選択される整数である)からなる群から選択され、前記アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、R基又はR'基によって任意選択により置換されている]
であり;
・Rは、C1~C6アルキル、C1~C6アルキルオキシ、C1~C6ハロゲノアルキル、C3~C10シクロアルキル、C3~C10シクロヘテロアルキル、C6~C12アリール、及びC5~C12ヘテロアリールからなる群から選択され、基はR'基によって任意選択により置換されており、
・R'は、C1~C6アルキル、C1~C6アルキルオキシ、C1~C6チオアルキル、ハロゲン、C1~C6ハロゲノアルキル、ヒドロキシル(-OH)、シアノ(-CN)、ニトロ、アミノ(-NH2)、カルボキシル(-COOH)、ホスフェート(PO4 -)、アミド(-CONH2)、-COOR''、-NHR''、-NR''R'''、-COR''、-CONHR''、-NHCOR''、-NHSO2R''、-SOR''、-SO2R''、-SONR''R'''、-SO2NR''R'''、C3~C10シクロアルキル、C3~C10シクロヘテロアルキル、C6~C12アリール、及びC5~C12ヘテロアリールからなる群から選択され、前記シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール又はヘテロアリールは、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、アミノ、又はC1~C3アルコキシで任意選択により置換されており、R''及びR'''は、H又はC1~C6アルキルである}
を有する化合物、又はその薬学的に許容される塩を開示する。
【0059】
より具体的には、本発明は、式(I)
【0060】
【化12】
【0061】
{式中、
・R1は、C1~C6アルキル、-(CH2)a-C≡CH、-(CH2)b-P+Ph3、C3~C10シクロアルキル、C3~C10シクロヘテロアルキル、C6~C12アリール、及びC5~C12ヘテロアリール(式中、「a」は1~6、好ましくは2~4から選択される整数であり、「b」は5~11、好ましくは6~10から選択される整数である)からなる群から選択され、前記アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、R基又はR'基によって任意選択により置換されており;
R2は、
- -(CH2)d-C≡CH(式中、「d」は1~6から選択される整数である);及び
- -(CH2)e-CH=CH2(式中、「e」は2~6から選択される整数である)
からなる群から選択され;
或いは、
・R1は、H、C1~C6アルキル、-(CH2)a-C≡CH、-(CH2)b-P+Ph3、C3~C10シクロアルキル、C3~C10シクロヘテロアルキル、C6~C12アリール、及びC5~C12ヘテロアリール(式中、「a」は1~6、好ましくは2~4から選択される整数であり、「b」は5~11、好ましくは6~10から選択される整数である)からなる群から選択され、前記アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、R基又はR'基によって任意選択により置換されており;
R2は、
- -(CH2)f-CR4=CH-CH=CR5-(CH2)g-R3(式中、R4及びR5は、H、R基であるか、又は6員環を一緒になって形成し、1つ若しくは2つのR'基で任意選択により置換されているか、又は3~6員を有するシクロアルキル、アリール、シクロヘテロアルキル若しくはヘテロアリールと縮合しており、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数である);
- -(CH2)f-C≡C-C≡C-(CH2)g-R3(式中、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数である);
- -(CH2)i-R3(式中、「i」は7~9、好ましくは8から選択される整数である);
- -(CH2)j-CH[(CH2)k-P+Ph3]-(CH2)l-R3(式中、「j」及び「l」は、1~6から独立して選択される整数であり、「k」は1~6から選択される整数である);
- -(CH2)m-シクロブタニル-(CH2)n-R3(式中、「m」及び「n」は、1~3から独立して選択される整数である);及び
- -(CH2)p-CHR6-CH=CH-CHR7-(CH2)q-R3(式中、R6及びR7は、H、R基であるか、又は4~6員環を一緒になって形成し、1つ若しくは2つのR'基で任意選択により置換されているか、又は3~6員を有するシクロアルキル、アリール、シクロヘテロアルキル若しくはヘテロアリールと縮合しており、「p」及び「q」は、1~3から独立して選択される整数である)
からなる群から選択され;
R3は、
【0062】
【化13】
【0063】
[式中、R8は、H、C1~C6アルキル、-(CH2)a-C≡CH、-(CH2)b-P+Ph3、C3~C10シクロアルキル、C3~C10シクロヘテロアルキル、C6~C12アリール、及びC5~C12ヘテロアリール(式中、「a」は1~6、好ましくは2~4から選択される整数であり、「b」は5~11、好ましくは6~10から選択される整数である)からなる群から選択され、前記アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、R基又はR'基によって任意選択により置換されている]
であり;
・Rは、C1~C6アルキル、C1~C6アルキルオキシ、C1~C6ハロゲノアルキル、C3~C10シクロアルキル、C3~C10シクロヘテロアルキル、C6~C12アリール、及びC5~C12ヘテロアリールからなる群から選択され、基はR'基によって任意選択により置換されており、
・R'は、C1~C6アルキル、C1~C6アルキルオキシ、C1~C6チオアルキル、ハロゲン、C1~C6ハロゲノアルキル、ヒドロキシル(-OH)、シアノ(-CN)、ニトロ、アミノ(-NH2)、カルボキシル(-COOH)、ホスフェート(PO4 -)、アミド(-CONH2)、-COOR''、-NHR''、-NR''R'''、-COR''、-CONHR''、-NHCOR''、-NHSO2R''、-SOR''、-SO2R''、-SONR''R'''、-SO2NR''R'''、C3~C10シクロアルキル、C3~C10シクロヘテロアルキル、C6~C12アリール、及びC5~C12ヘテロアリールからなる群から選択され、前記シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール又はヘテロアリールは、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、アミノ、又はC1~C3アルコキシで任意選択により置換されており、R''及びR'''は、H又はC1~C6アルキルである}
を有する新規化合物、又はその薬学的に許容される塩に関する。
【0064】
第1の特定の態様では、
・R1は、メチル、-(CH2)a-C≡CH、及び-(CH2)b-P+Ph3(式中、「a」は2~4から選択される整数であり、「b」は6~10から選択される整数である)、
からなる群から選択され;
・R2は、
- -(CH2)d-C≡CH(式中、「d」は2~4から選択される整数である);及び
- -(CH2)e-CH=CH2(式中、「e」は2~6から選択される整数である)
からなる群から選択される。
【0065】
第2の特定の態様では、
・ R1は、H、メチル、-(CH2)a-C≡CH、及び-(CH2)b-P+Ph3(式中、「a」は2~4から選択される整数であり、「b」は6~10から選択される整数である)からなる群から選択され;・ R2は、
- -(CH2)f-CR4=CH-CH=CR5-(CH2)g-R3(式中、R4及びR5は、Hであり、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数であり、「f」+「g」は、2~4である);
- -(CH2)f-C≡C-C≡C-(CH2)g-R3(式中、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数であり、「f」+「g」は、2~4である);
- -(CH2)i-R3(式中、「i」は7~9から選択される整数である);
- -(CH2)j-CH[(CH2)k-P+Ph3]-(CH2)l-R3(式中、「j」及び「l」は、1~6から独立して選択される整数であり、「j」+「l」は、5~7であり、「k」は1~6から選択される整数である);
- -(CH2)m-シクロブタニル-(CH2)n-R3(式中、「m」及び「n」は、1~3から独立して選択される整数であり、「m」+「n」は、2~4である);及び
- -(CH2)p-CHR6-CH=CH-CHR7-(CH2)q-R3(式中、R6及びR7は、Hであるか、又は4員環を一緒になって形成し、「p」及び「q」は、1~3から独立して選択される整数であり、「p」+「q」は、2~4である)
からなる群から選択され;
・R3は、
【0066】
【化14】
【0067】
[式中、R8は、H、メチル、-(CH2)a-C≡CH、及び-(CH2)b-P+Ph3、(式中、「a」は1~6、好ましくは2~4から選択される整数であり、「b」は5~11、好ましくは6~10から選択される整数である)からなる群から選択される]
である。
【0068】
本開示の特定の一態様は、少なくとも1つのアルキン基(-C≡CH)を有する化合物に関する。これらの化合物の利点の1つは、末端アルキンがクリックケミストリーによる標識化に好適であることである。別の利点は、銅、特にミトコンドリア銅をキレート化するアルキン基の能力に基づいている。
【0069】
本開示の別の特定の態様は、2つのビグアニジルラジカルを有する化合物に関する。化合物中のビグアニジルラジカルの数を増加させることの利点は、特にミトコンドリア銅の銅キレート化が増加し、次にがん細胞、特にがん間葉系細胞に対する化合物の効果が増大することである。
【0070】
最後に、本開示の一態様は、少なくとも1つのアルキン基(-C≡CH)及び2つのビグアニジルラジカルの両方を有する化合物に関する。両方の特質を備えた化合物は、銅キレート化、次にがん細胞、特にがん間葉系細胞に対する化合物の効果に対して最適化されている。
【0071】
少なくとも1つのアルキン基を有する化合物
一態様では、化合物は、少なくとも1つのアルキン基(-C≡CH)を有する。任意選択により、化合物は、1つ、2つ、3つ、又は4つのアルキン基を有し得る。これに関連して、R1、R2、及びR8のうちの少なくとも1つは、-(CH2)a-C≡CH(式中、「a」は、1~6の整数である)である。「a」は、1、2、3、4、5、及び6からなる群から選択される整数、又は2~6、3~6、4~6、2~5、3~5、4~5、2~4又は2~3から選択される整数であり得る。
【0072】
任意選択により、R1とR2の両方がアルキン基である。或いは、R1又はR2の一方がアルキン基である。したがって、化合物は式(I)[式中、R1及びR2のうちの少なくとも1つが-(CH2)a-C≡CHである場合、R1及びR2は、H、C1~C6アルキル、-(CH2)a-C≡CH、-(CH2)b-P+Ph3、C3~C10シクロアルキル、C3~C10シクロヘテロアルキル、C6~C12アリール、及びC5~C12ヘテロアリール(式中、「a」は1~6、好ましくは2~4から選択される整数であり、「b」は5~11、好ましくは6~10から選択される整数である)からなる群から選択され、前記アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、R基又はR'基、及び-(CH2)e-CH=CH2(式中、「e」は2~6から選択される整数である)によって任意選択により置換されている]のものである。任意選択により、R1及びR2のうちの少なくとも1つが-(CH2)a-C≡CHである場合、R1及びR2は、H、メチル、-(CH2)a-C≡CH、及び-(CH2)b-P+Ph3からなる群から選択される。
【0073】
任意選択により、R1又はR2の一方がアルキン基であり、R8がアルキン基であり、特にR1及びR8がアルキン基である。
【0074】
したがって、化合物は式(I)
[式中、
・R1は、-(CH2)a-C≡CHであり;
・R2は、
- -(CH2)f-CR4=CH-CH=CR5-(CH2)g-R3(式中、R4及びR5は、H、R基であるか、又は6員環を一緒になって形成し、1つ若しくは2つのR'基で任意選択により置換されているか、又は3~6員を有するシクロアルキル、アリール、シクロヘテロアルキル若しくはヘテロアリールと縮合しており、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数である);
- -(CH2)f-C≡C-C≡C-(CH2)g-R3(式中、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数である);
- -(CH2)i-R3(式中、「i」は7~9から選択される整数である);
- -(CH2)j-CH[(CH2)k-P+Ph3]-(CH2)l-R3(式中、「j」及び「l」は、1~6から独立して選択される整数であり、「k」は1~6から選択される整数である);
- -(CH2)m-シクロブタニル-(CH2)n-R3(式中、「m」及び「n」は、1~3から独立して選択される整数である);及び
- -(CH2)p-CHR6-CH=CH-CHR7-(CH2)q-R3(式中、R6及びR7は、H、R基であるか、又は4~6員環を一緒になって形成し、1つ若しくは2つのR'基で任意選択により置換されているか、又は3~6員を有するシクロアルキル、アリール、シクロヘテロアルキル若しくはヘテロアリールと縮合しており、「p」及び「q」は、1~3から独立して選択される整数である)
からなる群から選択され;
・R3は、
【0075】
【化15】
【0076】
(式中、R8は-(CH2)a-C≡CHである)
である]
のものである。
【0077】
任意選択により、R8はアルキン基であり、R1及びR2はアルキン基ではない。
【0078】
したがって、化合物は、式(I)
[式中、
・R1は、H、C1~C6アルキル、-(CH2)b-P+Ph3、C3~C10シクロアルキル、C3~C10シクロヘテロアルキル、C6~C12アリール、及びC5~C12ヘテロアリール(式中、「b」は5~11、好ましくは6~10から選択される整数である)からなる群から選択され、前記アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、R基又はR'基によって任意選択により置換されており;
・R2は、
- -(CH2)f-CR4=CH-CH=CR5-(CH2)g-R3(式中、R4及びR5は、H、R基であるか、又は6員環を一緒になって形成し、1つ若しくは2つのR'基で任意選択により置換されているか、又は3~6員を有するシクロアルキル、アリール、シクロヘテロアルキル若しくはヘテロアリールと縮合しており、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数である);
- -(CH2)f-C≡C-C≡C-(CH2)g-R3(式中、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数である);
- -(CH2)i-R3(式中、「i」は7~9から選択される整数である);
- -(CH2)j-CH[(CH2)k-P+Ph3]-(CH2)l-R3(式中、「j」及び「l」は、1~6から独立して選択される整数であり、「k」は1~6から選択される整数である);
- -(CH2)m-シクロブタニル-(CH2)n-R3(式中、「m」及び「n」は、1~3から独立して選択される整数である);及び
- -(CH2)p-CHR6-CH=CH-CHR7-(CH2)q-R3(式中、R6及びR7は、H、R基であるか、又は4~6員環を一緒になって形成し、1つ若しくは2つのR'基で任意選択により置換されているか、又は3~6員を有するシクロアルキル、アリール、シクロヘテロアルキル若しくはヘテロアリールと縮合しており、「p」及び「q」は、1~3から独立して選択される整数である)
からなる群から選択され;
・R3は、
【0079】
【化16】
【0080】
(式中、R8は-(CH2)a-C≡CHである)
である]
のものである。
【0081】
任意選択により、R1は、H、メチル、-(CH2)a-C≡CH、及び-(CH2)b-P+Ph3からなる群から選択される。
【0082】
任意選択により、R2は、
- -(CH2)f-CR4=CH-CH=CR5-(CH2)g-R3(式中、R4及びR5は、H、R基であるか、又は6員環を一緒になって形成し、1つ若しくは2つのR'基で任意選択により置換されているか、又は3~6員を有するシクロアルキル、アリール、シクロヘテロアルキル若しくはヘテロアリールと縮合しており、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数であり、「f」+「g」は、2~4である);
- -(CH2)f-C≡C-C≡C-(CH2)g-R3(式中、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数であり、「f」+「g」は、2~4である);
- -(CH2)i-R3(式中、「i」は7~9から選択される整数である);
- -(CH2)j-CH[(CH2)k-P+Ph3]-(CH2)l-R3(式中、「j」及び「l」は、1~6から独立して選択される整数であり、「j」+「l」は、5~7であり、「k」は2~4から選択される整数である);
- -(CH2)m-シクロブタニル-(CH2)n-R3(式中、「m」及び「n」は、1~3から独立して選択される整数であり、「m」+「n」は、2~4である);及び
- -(CH2)p-CHR6-CH=CH-CHR7-(CH2)q-R3(式中、R6及びR7は、H、R基であるか、又は4~6員環を一緒になって形成し、1つ若しくは2つのR'基で任意選択により置換されているか、又は3~6員を有するシクロアルキル、アリール、シクロヘテロアルキル若しくはヘテロアリールと縮合しており、「p」及び「q」は、1~3から独立して選択される整数であり、「p」+「q」は、2~4である)
からなる群から選択される。
【0083】
例えば、このような化合物は以下の群:
【0084】
【化17】
【0085】
(式中、nは3~9から、好ましくは4~8から選択される整数である);及び
【0086】
【化18】
【0087】
(式中、nは0~5から、好ましくは1~3から独立して選択される整数である)、
並びに
その薬学的に許容される塩から選択することができる。
【0088】
2つのビグアニジルラジカルを有する化合物
任意選択により第1の態様と組み合わせることができる第2の態様では、化合物は2つのビグアニジルラジカルを有する。換言すれば、R3は、化合物中に存在する。
【0089】
したがって、式(I)の化合物は、
・R1が、H、C1~C6アルキル、-(CH2)a-C≡CH、-(CH2)b-P+Ph3、C3~C10シクロアルキル、C3~C10シクロヘテロアルキル、C6~C12アリール、及びC5~C12ヘテロアリール(式中、「a」は1~6、好ましくは2~4から選択される整数であり、「b」は5~11、好ましくは6~10から選択される整数である)からなる群から選択され、前記アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、R基又はR'基によって任意選択により置換されており;
・R2が、
- -(CH2)f-CR4=CH-CH=CR5-(CH2)g-R3(式中、R4及びR5は、H、R基であるか、又は6員環を一緒になって形成し、1つ若しくは2つのR'基で任意選択により置換されているか、又は3~6員を有するシクロアルキル、アリール、シクロヘテロアルキル若しくはヘテロアリールと縮合しており、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数である);
- -(CH2)f-C≡C-C≡C-(CH2)g-R3(式中、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数である);
- -(CH2)i-R3(式中、「i」は7~9、好ましくは8から選択される整数である);
- -(CH2)j-CH[(CH2)k-P+Ph3]-(CH2)l-R3(式中、「j」及び「l」は、1~6から独立して選択される整数であり、「k」は1~6から選択される整数である);
- -(CH2)m-シクロブタニル-(CH2)n-R3(式中、「m」及び「n」は、1~3から独立して選択される整数である);及び
- -(CH2)p-CHR6-CH=CH-CHR7-(CH2)q-R3(式中、R6及びR7は、H、R基であるか、又は4~6員環を一緒になって形成し、1つ若しくは2つのR'基で任意選択により置換されているか、又は3~6員を有するシクロアルキル、アリール、シクロヘテロアルキル若しくはヘテロアリールと縮合しており、「p」及び「q」は、1~3から独立して選択される整数である)
からなる群から選択され;
・R3が、
【0090】
【化19】
【0091】
[式中、R8は、H、C1~C6アルキル、-(CH2)a-C≡CH、-(CH2)b-P+Ph3、C3~C10シクロアルキル、C3~C10シクロヘテロアルキル、C6~C12アリール、及びC5~C12ヘテロアリール(式中、「a」は1~6、好ましくは2~4から選択される整数であり、「b」は5~11、好ましくは6~10から選択される整数である)からなる群から選択され、前記アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、R基又はR'基によって任意選択により置換されている]
である、
ようなものである。
【0092】
任意選択により、R1及びR8は、H、メチル、-(CH2)a-C≡CH、及び-(CH2)b-P+Ph3からなる群から選択される。
【0093】
任意選択により、R2は、
- -(CH2)f-CR4=CH-CH=CR5-(CH2)g-R3(式中、R4及びR5は、H、R基であるか、又は6員環を一緒になって形成し、1つ若しくは2つのR'基で任意選択により置換されているか、又は3~6員を有するシクロアルキル、アリール、シクロヘテロアルキル若しくはヘテロアリールと縮合しており、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数であり、「f」+「g」は、2~4である);
- -(CH2)f-C≡C-C≡C-(CH2)g-R3(式中、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数であり、「f」+「g」は、2~4である);
- -(CH2)i-R3(式中、「i」は7~9から選択される整数である);
- -(CH2)j-CH[(CH2)k-P+Ph3]-(CH2)l-R3(式中、「j」及び「l」は、1~6から独立して選択される整数であり、「j」+「l」は、5~7であり、「k」は2~4から選択される整数である);
- -(CH2)m-シクロブタニル-(CH2)n-R3(式中、「m」及び「n」は、1~3から独立して選択される整数であり、「m」+「n」は、2~4である);及び
- -(CH2)p-CHR6-CH=CH-CHR7-(CH2)q-R3(式中、R6及びR7は、H、R基であるか、又は4~6員環を一緒になって形成し、1つ若しくは2つのR'基で任意選択により置換されているか、又は3~6員を有するシクロアルキル、アリール、シクロヘテロアルキル若しくはヘテロアリールと縮合しており、「p」及び「q」は、1~3から独立して選択される整数であり、「p」+「q」は、2~4である)
からなる群から選択される。
【0094】
例えば、このような化合物は以下の群:
【0095】
【化20】
【0096】
(式中、nは0~5から、好ましくは1~3から独立して選択される整数である)、
【0097】
【化21】
【0098】
(式中、nは0~5から、好ましくは1~3から独立して選択される整数である)、
【0099】
【化22】
【0100】
[式中、
点線は存在又は不在であり、共有結合を有する1つ又は2つの原子であり;
Rは、C1~C6アルキル、C1~C6アルキルオキシ、C1~C6ハロゲノアルキル、C3~C10シクロアルキル、C3~C10シクロヘテロアルキル、C6~C12アリール、及びC5~C12ヘテロアリールからなる群から選択され、基はR'基によって任意選択により置換されており;R'は、C1~C6アルキル、C1~C6アルキルオキシ、C1~C6チオアルキル、ハロゲン、C1~C6ハロゲノアルキル、ヒドロキシル(-OH)、シアノ(-CN)、ニトロ、アミノ(-NH2)、カルボキシル(-COOH)、ホスフェート(PO4 -)、アミド(-CONH2)、-COOR''、-NHR''、-NR''R'''、-COR''、-CONHR''、-NHCOR''、-NHSO2R''、-SOR''、-SO2R''、-SONR''R'''、-SO2NR''R'''、C3~C10シクロアルキル、C3~C10シクロヘテロアルキル、C6~C12アリール、及びC5~C12ヘテロアリールからなる群から選択され、前記シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール又はヘテロアリールは、ハロゲン、ヒドロキシル、シアノ、ニトロ、アミノ、又はC1~C3アルコキシで任意選択により置換されており、R''及びR'''は、H又はC1~C6アルキルである]、
から選択される、又はその薬学的に許容される塩であることができる。
【0101】
アルキン基及び2つのビグアニジルラジカルを有する化合物
特定の態様では、化合物は、少なくとも1つのアルキン基を有するが、2つのビグアニジルラジカルも有する。
【0102】
したがって、式(I)の化合物は、R1及びR8のうちの少なくとも1つが-(CH2)a-C≡CHである場合、
・R1が、H、C1~C6アルキル、-(CH2)a-C≡CH、-(CH2)b-P+Ph3、C3~C10シクロアルキル、C3~C10シクロヘテロアルキル、C6~C12アリール、及びC5~C12ヘテロアリール(式中、「a」は1~6、好ましくは2~4から選択される整数であり、「b」は5~11、好ましくは6~10から選択される整数である)からなる群から選択され、前記アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、R基又はR'基によって任意選択により置換されており;
・R2が、
- -(CH2)f-CR4=CH-CH=CR5-(CH2)g-R3(式中、R4及びR5は、H、R基であるか、又は6員環を一緒になって形成し、1つ若しくは2つのR'基で任意選択により置換されているか、又は3~6員を有するシクロアルキル、アリール、シクロヘテロアルキル若しくはヘテロアリールと縮合しており、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数である);
- -(CH2)f-C≡C-C≡C-(CH2)g-R3(式中、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数である);
- -(CH2)i-R3(式中、「i」は7~9、好ましくは8から選択される整数である);
- -(CH2)j-CH[(CH2)k-P+Ph3]-(CH2)l-R3(式中、「j」及び「l」は、1~6から独立して選択される整数であり、「k」は1~6から選択される整数である);
- -(CH2)m-シクロブタニル-(CH2)n-R3(式中、「m」及び「n」は、1~3から独立して選択される整数である);及び
- -(CH2)p-CHR6-CH=CH-CHR7-(CH2)q-R3(式中、R6及びR7は、H、R基であるか、又は4~6員環を一緒になって形成し、1つ若しくは2つのR'基で任意選択により置換されているか、又は3~6員を有するシクロアルキル、アリール、シクロヘテロアルキル若しくはヘテロアリールと縮合しており、「p」及び「q」は、1~3から独立して選択される整数である)
からなる群から選択され;
・R3が、
【0103】
【化23】
【0104】
[式中、R8は、H、C1~C6アルキル、-(CH2)a-C≡CH、-(CH2)b-P+Ph3、C3~C10シクロアルキル、C3~C10シクロヘテロアルキル、C6~C12アリール、及びC5~C12ヘテロアリール(式中、「a」は1~6、好ましくは2~4から選択される整数であり、「b」は5~11、好ましくは6~10から選択される整数である)からなる群から選択され、前記アルキル、シクロアルキル、シクロヘテロアルキル、アリール、又はヘテロアリールは、R基又はR'基によって任意選択により置換されている]
である、
ようなものである。
【0105】
任意選択により、R1及びR8は、H、メチル、-(CH2)a-C≡CH、及び-(CH2)b-P+Ph3からなる群から選択される。
【0106】
任意選択により、R2は、
- -(CH2)f-CR4=CH-CH=CR5-(CH2)g-R3(式中、R4及びR5は、H、R基であるか、又は6員環を一緒になって形成し、1つ若しくは2つのR'基で任意選択により置換されているか、又は3~6員を有するシクロアルキル、アリール、シクロヘテロアルキル若しくはヘテロアリールと縮合しており、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数であり、「f」+「g」は、2~4である)
- -(CH2)f-C≡C-C≡C-(CH2)g-R3(式中、「f」及び「g」は、1~3から独立して選択される整数であり、「f」+「g」は、2~4である);
- -(CH2)i-R3(式中、「i」は7~9から選択される整数である);
- -(CH2)j-CH[(CH2)k-P+Ph3]-(CH2)l-R3(式中、「j」及び「l」は、1~6から独立して選択される整数であり、「j」+「l」は、5~7であり、「k」は2~4から選択される整数である);
- -(CH2)m-シクロブタニル-(CH2)n-R3(式中、「m」及び「n」は、1~3から独立して選択される整数であり、「m」+「n」は、2~4である);及び
- -(CH2)p-CHR6-CH=CH-CHR7-(CH2)q-R3(式中、R6及びR7は、H、R基であるか、又は4~6員環を一緒になって形成し、1つ若しくは2つのR'基で任意選択により置換されているか、又は3~6員を有するシクロアルキル、アリール、シクロヘテロアルキル若しくはヘテロアリールと縮合しており、「p」及び「q」は、1~3から独立して選択される整数であり、「p」+「q」は、2~4である)
からなる群から選択される。
【0107】
例えば、このような化合物は、
【0108】
【化24】
【0109】
(式中、nは0~5から、好ましくは1~3から独立して選択される整数である)
の化合物又はその薬学的に許容される塩であり得る。
【0110】
本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、酪酸、イソ酪酸、トリフルオロ酢酸、リンゴ酸、マロン酸、フマル酸、コハク酸、グルタミン酸、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、グリコール酸、グルクロン酸、アスコルビン酸、安息香酸、フタリン酸、サリチル酸、アントラニル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ジクロロ酢酸、アミノオキシ酢酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、及びホウ酸からなる群から選択される酸を含む塩であり得る。
【0111】
コンジュゲート
本発明は、毒素、薬物、又は標識に共有結合した、本明細書に開示された式(I)の化合物を含むコンジュゲートに関する。より具体的には、本発明は、アルキン基を有する本開示による化合物を、アジド(N3)基に共有結合した薬物、毒素、又は標識と反応させることによって得ることができるか又は得られるコンジュゲートに関する。
【0112】
式(I)の化合物はミトコンドリアを標的とする能力を有するので、毒素、薬物又は標識は、特異的にミトコンドリアを標的とすることに関連がある毒素又は薬物の中から選択される。薬物は、抗糖尿病薬、抗がん薬、抗寄生虫薬、抗ウイルス薬、抗てんかん薬、麻酔薬、抗炎症薬、及び抗不整脈薬(antiarrhytmic drug)であり得る。薬物は、ミトコンドリア呼吸鎖複合体の阻害剤、脱共役剤及びイオノフォア、透過性遷移孔の調節因子、ミトコンドリアカリウムチャネルの調節因子、抗酸化剤、ミトコンドリアATPアーゼの阻害剤、アポトーシス調節因子、及び類似のものであり得る。例えば、薬物の非網羅的リストにはロテノン、アンチマイシンA、ミクソチアゾール、シアン化物、ジニトロフェノール、バリノマイシン、ニゲリシン、シクロスポリンA、ボンクレキン酸、ベツリン酸、CD437、サングリフェリン(sangliferin)、Ro68-3400、アトラクチロシド、プロトポルヒリンIX、ジアゾキシド、ピナシジル、ニコランジル、クロマカリム、グリベンクラミド、5-HD、NS1619、NS004、CGS7184、パキシリン(paxillline)、IbTx、ChTx、オリゴマイシンC、アポプトリジンA、レスベラトロール、Bz-423、ジインドリルメタン、オーロベルチン、PK11195、R207910、NSAID、ミノサイクリン、KB-R7943、ディメボン、CoQ10、イデベノン、リポ酸、メラトニン、ビタミンE、ニコチンアミド、カルニチン、L-カルニチン、アセチル-L-カルニチン、サーチュイット(sirtuits)、FK506、デフェロキサミン、3-ブロモピルビン酸、2-デオキシグルコース、ジャスモン酸メチル、マンノヘプツロース、ゴシポール。ABT-737、A-385358、ABT-263、HA14-1、AT-101、オバトクラクス、イソチオシアネート、三酸化ヒ素、ロニダミン、アルセナイト、GSAO、クロドロネート、Ro5-4684、a-TOS、タモキシフェン、ピセアタンノール、ローダミン-123、ジクロロ酢酸、CAP-232/TLN-232、MJE3、ビタミンK3、フィアルウリジン(fialuridine)、2-メトキシエストラジオール、β-ラパコン、メナジオン、STA-4783、サングリフェリン(sanglifehrin)、NIM811、Debio025、SSR180575、Ro5-4684;MitoSNO1、亜硝酸塩、マンガフォジピル、エダラボン、スタチン、UQ、カリポリド、プロポフォール、MCI-186、ピルベート、ミノキシジル、α-リポ酸、アルダ-1(Alda-1)、エトモキシル、ペルヘキシリン、ラノラジン、トリメタジジン、NAO、ジアゾキシド(diazoside)、BMS-191095、アスコフラノン、ナフレジン、アトバコン、フルトラニル、アトペニンA5、ナフレジン-c(c-ラクトン誘導体)、チアゾリジン-ジオン、フィブラート、チアゾリジンジオン(thizolidinediones)、β-アミノイソ酪酸、SRT1720、トロロックス、ウルソデオキシコール酸、ドキソルビシン、ジドブジン、バルプロ酸、インドメタシン、及びカルベジロール(carvedinol)、が含まれる。加えて、当業者は、Olszewskaら、(IUBMB Life. 2013年、Mar;65(3):273~81頁)に示されているように、目的の薬物についての十分な知識を有する。
【0113】
がん治療との関係において、目的のコンジュゲートは、より具体的には、式(I)の化合物と、3-ブロモピルビン酸、2-デオキシグルコース、ジャスモン酸メチル、マンノヘプツロース、ゴシポール、ABT-737、A-385358、ABT-263、HA14-1、AT-101、オバトクラクス、イソチオシアネート、三酸化ヒ素、ロニダミン、アルセナイト、GSAO、クロドロネート、Ro5-4684、a-TOS、タモキシフェン、ピセアタンノール、ローダミン-123、ジクロロ酢酸、CAP-232/TLN-232、MJE3、ビタミンK3、フィアルウリジン、2-メトキシエストラジオール、β-ラパコン、メナジオン、STA-4783、サングリフェリン(sanglifehrin)、NIM811、Debio025、SSR180575、Ro5-4684; MitoSNO1、亜硝酸塩、及びマンガフォジピル、から選択される薬物とのコンジュゲートであり得る。
【0114】
任意選択により、薬物は、特に以下に開示された、抗腫瘍薬である。
【0115】
特定の一態様において、コンジュゲートは、毒素、薬物又は標識との共有結合のためにアルキン基を使用するクリックケミストリーによって調製することができる。毒素、薬物又は標識は、アジド(N3)基に共有結合することができ、特に銅触媒によるアジド-アルキン環化付加(CuAAC)によって、アルキン基を有する式(I)の化合物と反応する。クリックケミストリーを含む生体直交性化学に関する総説については、Sletten及びBertozzi(Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 2009年、48(38):6974~6998、その開示は参照により本明細書に組み込まれる)を参照することができる。アルキンとアジドとの反応は[3+2]環化付加反応であり、トリアゾール環をもたらす。
【0116】
標識は、直接的又は間接的に検出可能な部分であり得る。標識は、色素、放射性標識、アフィニティタグの中から選択することができる。特に、色素は、蛍光色素、発光色素、又はリン光色素、好ましくはダンシル色素、フルオレセイン色素、アクリジン色素、ローダミン色素、クマリン色素、BODIPY色素、及びシアニン色素からなる群から選択することができる。より具体的には、蛍光色素は、Alexa Fluor色素、Pacific色素、Texas Red等のThermo Fisher社が販売している色素、又はシアニン3、5、7に対する他の供給者が販売している色素の中から選択することができる。特に、CuAAC用のアジドを含む色素は、Alexa Fluor(登録商標)488、55、594、647、及びTAMRA(テトラメチルローダミン)において市販されている。第2の態様では、標識はアフィニティタグであり得る。そのようなアフィニティタグは、例えば、ビオチン、Hisタグ、Flagタグ、strepタグ、糖、脂質、ステロール、PEGリンカー、及び補因子からなる群から選択することができる。特定の実施形態では、標識はビオチン化標識である。アジドに結合したビオチンは市販されている(ビオチンアジド)。最後に、標識は放射性標識であり得る。放射性標識は、トリチウム、炭素-11、炭素-14、リン-32、リン-33、硫黄-33、ヨウ素-123及びヨウ素-125を含む放射性形態の水素、炭素、リン、硫黄、及びヨウ素からなる群から選択することができる。
【0117】
医薬組成物又は動物用組成物
本発明は、本明細書に開示された式(I)の化合物、又は本明細書に開示された式(I)の化合物及び薬物若しくは毒素を含むコンジュゲートを含む医薬組成物又は動物用組成物に関する。
【0118】
本明細書で企図される医薬組成物は、活性成分に加えて、薬学的に許容される担体を含み得る。「薬学的に許容される担体」という用語は、活性成分の生物学的活性の有効性を妨害せず、それが投与される宿主に対して毒性がない任意の担体(例えば、支持体、物質、溶媒等)を包含することを意味する。例えば、非経口投与(parental administration)の場合、活性化合物は、生理食塩水、デキストロース溶液、血清アルブミン及びリンゲル液等のビヒクル中に注射用の単位剤形で製剤化してもよい。
【0119】
医薬組成物は、当技術分野で知られている方法で、薬学的に適合性がある溶媒中の液剤として、又は好適な医薬溶媒若しくはビヒクル中の乳剤、懸濁剤若しくは分散剤として、又は固体ビヒクルを含む丸剤、錠剤若しくはカプセル剤として製剤化することができる。経口投与に好適な本発明の製剤は、カプセル剤、サシェ剤、錠剤又はロゼンジ剤としての個別の単位の形態であり得、それぞれが、粉末若しくは顆粒の形で;水性液体若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁液の形態で;又は水中油型エマルション若しくは油中水型エマルションの形態で、所定量の活性成分を含む。非経口投与(parental administration)に好適な製剤は、好都合には、好ましくはレシピエントの血液と等張である活性成分の滅菌の油性又は水性調製物を含む。そのようなすべての製剤はまた、他の薬学的に適合性があり、かつ非毒性の補助剤、例として、例えば、安定剤、抗酸化剤、結合剤、色素、乳化剤又は香料を含むことができる。したがって、本発明の製剤は、薬学的に許容される担体と関連する活性成分、及び任意選択により他の治療成分を含む。担体は、製剤の他の成分と適合性があり、そのレシピエントに有害ではないという意味で「許容され」なければならない。医薬組成物は、好適な減菌溶液の注射若しくは静脈内注入によって、又は経口投与のように消化管によって有利に適用される。これらの化学療法薬のほとんどを安全かつ効果的に投与するための方法は、当業者に知られている。加えて、それらの投与は、標準的な文献に記載されている。
【0120】
本発明は、特に以下に定義された疾患又は障害の処置のための薬物として使用するための、本明細書に開示された式(I)の化合物、又は本明細書に開示された式(I)の化合物及び薬物若しくは毒素を含むコンジュゲートに関する。本発明は、特に以下に定義された疾患又は障害の処置のための薬物を製造するための、本明細書に開示された式(I)の化合物、又は本明細書に開示された式(I)の化合物及び薬物若しくは毒素を含むコンジュゲートの使用に関する。
【0121】
本明細書に開示された式(I)の化合物、又は本明細書に開示された式(I)の化合物及び薬物若しくは毒素を含むコンジュゲートを、薬物として使用することができる。特に、本明細書に開示された式(I)の化合物、又は本明細書に開示された式(I)の化合物及び薬物若しくは毒素を含むコンジュゲートは、がん、糖尿病、特に真性糖尿病、肥満、高脂血症、高コレステロール血症、子癇前症、肝臓及び腎臓の疾患、特に脂肪肝、心臓血管疾患、特に冠状動脈疾患、骨粗鬆症、メタボリック症候群、多発性硬化症、多嚢胞性卵巣疾患、筋肉痛、筋細胞損傷、横紋筋融解症、勃起不全、認知機能不全、腸内細菌叢の調節、神経変性障害及び疾患、例としてアルツハイマー病及びパーキンソン病、を含む非網羅的リストから選択される疾患又は障害の処置に、及び、抗寄生虫薬、抗ウイルス薬、抗てんかん薬、麻酔薬、抗炎症薬、及び抗不整脈薬として、使用することができる。
【0122】
本明細書に開示された医薬組成物又は動物用組成物は、追加の活性成分又は薬物を更に含み得る。
【0123】
がん
本発明の特定の態様では、本明細書に開示された式(I)の化合物、又は本明細書に開示された式(I)の化合物及び薬物若しくは毒素を含むコンジュゲートを、がんを処置するために使用することができる。
【0124】
「がん」、「がん性」、又は「悪性」という用語は、典型的には、無秩序な細胞成長を特徴とする哺乳動物の生理学的状態を指すか、又は説明する。がんの例としては、例えば、白血病、リンパ腫、芽細胞腫、癌腫及び肉腫が挙げられる。
【0125】
例えば、がんは、直腸がん、大腸がん、胃がん、頭頸部がん、甲状腺がん、子宮頸がん、子宮がん、乳がん、特にトリプルネガティブ乳がん、卵巣がん、脳腫瘍、特に神経膠芽腫及び神経芽細胞腫、肺がん、特に小細胞肺がん及び非小細胞肺がん、皮膚がん、膀胱がん、血液がん、腎がん、肝臓がん、前立腺がん、多発性骨髄腫、及び子宮内膜がん、を含む非網羅的リストから選択することができる。特定の実施形態では、がんは、膵臓がん、前立腺がん、肝臓がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、卵巣がん、乳がん、大腸がん、膠芽腫、及び神経芽細胞腫、を含むリストから選択することができる。非常に特定の実施形態では、がんは、卵巣がん、乳がん、大腸がん、膠芽腫、及び神経芽細胞腫、を含むリストから選択することができる。がんは、間葉系卵巣がん、特に漿液性タイプの高悪性度卵巣がん、又は浸潤性乳がん、及び/又はその転移であり得る。
【0126】
好ましい実施形態では、がんは間葉系細胞を有する。実際、本明細書に開示された式(I)の化合物は、間葉系の特質を有するがん細胞の集団を選択的に標的とすることができる。特定の態様では、本明細書に開示された式(I)の化合物は、循環腫瘍細胞、特にがん幹細胞に対して作用するという利点を提示する。
【0127】
したがって、本発明は、がんの再発又はがんの転移の阻害に使用するための、本明細書に開示された式(I)の化合物、及び本明細書に開示された化合物を投与することにより、がんの再発又はがんの転移を阻害するための方法に関する。
【0128】
特定の実施形態では、対象は転移性がんを有する。別の特定の実施形態では、対象は、従来の抗腫瘍薬に耐性のあるがんを有する。追加の特定の実施形態では、対象は、二次性腫瘍又は再発腫瘍を有する。
【0129】
本明細書に開示された式(I)の化合物は、別の薬物と組み合わせて使用することができる。したがって、本発明は、
- 特にがんの処置に使用するための、本明細書に開示された式(I)の化合物と、本明細書に定義された別の薬物と、任意選択により、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物;
- 特にがんの処置において、同時使用、別個使用、又は逐次使用のための組み合わせ調製物として本明細書に開示された式(I)の化合物及び本明細書に定義された別の薬物を含む製品又はキット;
- 特にがんの処置において、同時使用、別個使用、又は逐次使用のための、本明細書に開示された式(I)の化合物及び本明細書に定義された別の薬物を含む組み合わせ調製物;
- 本明細書で定義された別の薬物による処置及び/又は放射線療法と組み合わせた、がんの処置に使用するための、本明細書に開示された式(I)の化合物を含む医薬組成物;
- 本明細書で定義された別の薬物による処置及び/又は放射線療法と組み合わせた、がんの処置のための医薬を製造するための、本明細書に開示された式(I)の化合物を含む医薬組成物の使用;
- がんの処置のための医薬を製造するための、本明細書に開示された式(I)の化合物と、本明細書に定義された別の薬物と、任意選択により、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物の使用;
- がんの処置を必要とする対象におけるがんを処置するための方法であって、a)本明細書に開示された式(I)の化合物と、b)本明細書に定義された別の薬物と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物の有効量を投与することを含む、方法;
- がんの処置を必要とする対象におけるがんを処置するための方法であって、本明細書に開示された式(I)の化合物を含む医薬組成物の有効量と、本明細書に定義された別の薬物を含む医薬組成物の有効量とを投与することを含む、方法;
- がんの処置を必要とする対象におけるがんを処置するための方法であって、本明細書に開示された式(I)の化合物と本明細書に定義された別の薬物とを含む医薬組成物の有効量を投与することを含む、方法
に関する。
【0130】
本明細書で使用される「キット」、「製品」又は「組み合わせ調製物」という用語は、上記で定義された組み合わせパートナーを、独立して、又は組み合わせパートナーの量が区別された異なる固定の組み合わせを使用することによって、つまり同時に若しくは異なる時点で投与することができるという意味で、特に「キットオブパーツ」を定義する。この場合、キットオブパーツのパーツは、例えば、同時に又は時差を設けて、すなわち、キットオブパーツの任意のパーツについて異なる時点で、かつ等しい又は異なる時間間隔で投与することができる。組み合わせ調製物中の投与される組み合わせパートナーの総量の比率を変えることができる。組み合わせパートナーは、同じ経路又は異なる経路で投与することができる。
【0131】
放射線療法には、γ線、X線、及び/又は腫瘍細胞への放射性同位元素の直接送達が含まれるが、これらに限定されない。他の放射線療法としては、マイクロ波及びUV照射が挙げられる。放射線療法への他のアプローチもまた、本発明において企図される。
【0132】
他の薬物は、化学療法薬、免疫チェックポイント阻害剤、ホルモン療法薬、及び免疫療法薬を含む非網羅的リストから選択することができる。
【0133】
化学療法薬としては、トポイソメラーゼI又はIIの阻害剤、DNA架橋剤、DNAアルキル化剤、代謝拮抗剤、及び/又は有糸分裂紡錘体の阻害剤を挙げてもよい。
【0134】
トポイソメラーゼI及び/又はIIの阻害剤としては、エトポシド、トポテカン、カンプトテシン、イリノテカン、アムサクリン、イントプリシン、アントラサイクリン、例としてドキソルビシン、エピルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン(idanrubicine)及びミトキサントロンが挙げられるが、これらに限定されない。トポイソメラーゼI及びIIの阻害剤としては、イントプリシン(intoplecin)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0135】
DNA架橋剤としては、シスプラチン、カルボプラチン、及びオキサリプラチンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0136】
代謝拮抗剤は、核酸合成に関与する酵素をブロックするか、又はDNAに組み込まれ、これにより、誤った遺伝暗号が生成され、アポトーシスが発生する。その非網羅的例としては、葉酸アンタゴニスト、ピリミジンアナログ、プリンアナログ及びアデノシンデアミナーゼ阻害剤、より具体的には、メトトレキサート、フロクスウリジン、シタラビン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、フルダラビンホスフェート、ペントスタチン、5-フルオロウラシル、ゲムシタビン及びカペシタビンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0137】
アルキル化剤としては、ナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、アルキルスルホネート、ニトロソ尿素、金属塩及びトリアゼンが挙げられるが、これらに限定されない。その非網羅的例としては、ウラシルマスタード、クロルメチン、シクロホスファミド(CYTOXAN(登録商標))、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ピポブロマン、トリエチレンメラミン、トリエチレンチオホスホラミン(Triethylenethiophosphoramine)、ブスルファン、カルムスチン、ロムスチン、フォテムスチン、シスプラチン、カルボプラチン、チオテパ、ストレプトゾシン、ダカルバジン、オキサリプラチン、及びテモゾロミドが挙げられる。
【0138】
有糸分裂紡錘体の阻害剤としては、パクリタキセル、ドセタキセル、ビノレルビン、ラロタキセル(XRP9881とも呼ばれる;Sanofi-Aventis社)、XRP6258(Sanofi-Aventis社)、BMS-184476(Bristol-Meyer-Squibb社)、BMS-188797(Bristol-Meyer-Squibb社)、BMS-275183(Bristol-Meyer-Squibb社)、オルタタキセル(IDN 5109, BAY 59-8862、又はSB-T-101131とも呼ばれる、Bristol-Meyer-Squibb社)、RPR 109881A(Bristol-Meyer-Squibb社)、RPR 116258(Bristol-Meyer-Squibb社)、NBT-728(TAPESTRY社)、PG-パクリタキセル(CT-2103、PPX、パクリタキセルポリグルメックス、ポリグルタメート化パクリタキセル、又はXyotax(商標)とも呼ばれる)、ABRAXANE(登録商標)(Nab-パクリタキセルとも呼ばれる、ABRAXIS BIOSCIENCE社)、テセタキセル(DJ-927とも呼ばれる)、IDN 5390(INDENA社)、タキソプレキシン(ドコサヘキサエン酸-パクリタキセルとも呼ばれる、PROTARGA社)、DHA-パクリタキセル(タキソプレキシン(登録商標)とも呼ばれる)、及びMAC-321(WYETH社)、が挙げられるが、これらに限定されない。Hennenfent & Govindan(2006年、Annals of Oncology、17, 735~749)の総説も参照のこと。
【0139】
免疫チェックポイント阻害剤は、抗CTLA-4(細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4)療法、例としてイピリムマブ、PD-1(プログラム細胞死タンパク質1)阻害剤、例としてニボルマブ、ペンブロリズマブ、又はBGB-A317、PDL1(プログラム細胞死リガンド)阻害剤、例としてアテゾリズマブ、アベルマブ、又はデュルバルマブ、LAG-3(リンパ球活性化遺伝子3)阻害剤、例としてBMS-986016、TIM-3(T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有-3)阻害剤、TIGIT(Ig及びITIMドメインを有するT細胞免疫受容体)阻害剤、BLTA(Bリンパ球及びTリンパ球アテニュエータ(attenuator))阻害剤、IDO1阻害剤、例としてエパカドスタット、又はそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0140】
ホルモン療法薬としては、例えば、タモキシフェン、フェアストン、アリミデックス、アロマシン、フェマーラ、ゾラデックス/ルプロン、メガース、及びハロテスチンが挙げられる
【0141】
イメージング及び診断
アルキン基を有する本明細書に開示された式(I)の化合物は、検出可能な実体をインサイチュで形成するのに、したがってミトコンドリアを標識するのに好適である。実際、クリックケミストリー、特に銅触媒によるアジド-アルキン環化付加(CuAAC)を実施することにより、アジド(N3)基を有する標識を、アルキン基を有する開示された式(I)の化合物に共有結合させることができる。
【0142】
銅触媒によるアジド-アルキン環化付加(CuAAC)は、一般に銅(I)触媒の存在を必要とする。しかし、例に示すように、銅の付加は必須ではない。実際、本明細書に開示された式(I)の化合物は、ミトコンドリアにおいて特異的に標的化され、局在化するので、内因性銅の天然ミトコンドリア存在比は、ネイティブ条件における本発明の化合物の標識化を促進するのに十分であった。
【0143】
本発明は、アルキン基を有する本明細書に開示された式(I)の化合物、及びアジド基を有する標識を含むキットに関する。標識は、上記のセクション「コンジュゲート」において定義されているように、好ましくは蛍光標識又はビオチン化標識であり得る。
【0144】
本発明はまた、例えば、医用イメージング又は診断のための、特にミトコンドリアを視覚化するための研究ツールとしての、アルキン基を有する本明細書に開示された式(I)の化合物又は上記のキットのインビトロ、エクスビボ又はインビボでの使用に関する。
【0145】
本発明は、細胞内のミトコンドリアを視覚化するためのインビトロの方法であって、
- 細胞を、アルキン基を有する本明細書に開示された式(I)の化合物と接触させる工程と;
- 前記細胞を、アジド基を有する標識、好ましくは蛍光標識と接触させる工程と;
- 前記細胞内の標識、好ましくは蛍光標識を検出する工程と
を含む方法に関する。
【0146】
好ましくは、前記細胞を、アルキン基を有する標識と接触させるステップの前に、細胞を透過処理し、次いで固定する。
【0147】
本発明のさらなる態様及び利点を、以下の実施例に記載するが、これらは例示的であり、限定的ではないと考えるべきである。
【実施例
【0148】
臨床的に承認を受けた薬剤メトホルミンは、完全には理解されていない機構によって、生残がん細胞を選択的に死滅させることが示されている。さらなる推定機構を提供するために、本発明者らは、がん細胞のパネルに対してメトホルミンよりも強力であり、クリックケミストリーによってインサイチュで標識化することができる新規化合物を開発した。この技術により、本発明者らは、このクラスの薬物によるミトコンドリア標的化の最初の証拠を提供することができた。蛍光顕微鏡法とサイクリックボルタンメトリーとの組み合わせは、メトホルミン及び新規化合物が、ミトコンドリア銅を標的とし、この細胞小器官内での活性酸素種の生成、ミトコンドリアの機能不全、及びアポトーシスを誘発することを示した。重要なことに、この研究により、ミトコンドリア銅がヒトがん細胞の間葉系状態の維持に必要であり、メトホルミン及び新規化合物が、銅を直接標的化することにより、上皮間葉系移行、通常は生残がん細胞の発生を説明する生物学的プロセスをブロックすることができることが明らかになった。
【0149】
結果
強力なクリック可能なメトホルミン誘導体である新規化合物の開発。
さらなる推定機構を提供するために、本発明者らは、ビグアニド薬の細胞内作用部位の直接視覚化を可能にするメトホルミンの誘導体の開発に着手した。この目的のために、本発明者らは、メトホルミニン(Met)(3)と名付けられたアルキン含有アナログを合成した(図1A)。このアナログは、メトホルミン及びフェンホルミンを模して設計されており、遠位のメチル/ベンジル置換基が、クリックケミストリーによる細胞内での標識化に好適な末端アルキンに置き換えられている。
【0150】
一連のトリプルネガティブヒト乳がん細胞及び大腸がん患者からの循環腫瘍細胞(CTC)に対するメトホルミン及びメトホルミニンの比較評価は、合成アナログメトホルミニンがメトホルミンと比較してより高い力価を呈することを示した(図1B:メトホルミニンのIC50は、メトホルミンのIC50である12.1、15.1、7.7及び10.9mMと比較して、それぞれ2.5、4.7、2.8、3.5mMである)。
【0151】
がん細胞は、正常な胚発生中に観察されたものを想起させる表現型の変化を受けて、これらの細胞が原発部位から分離し、遠位の二次性腫瘍を引き起こすことが可能となる物理的特性を獲得し得る。上皮間葉系移行(EMT)のこのプロセスを、正常な上皮乳腺細胞又はトリプルネガティブ乳がん細胞から人工的に誘発させて、顕著な間葉系表現型を有する細胞を発生させることができる。このような準安定状態をとることができる細胞が、従来の化学療法に抵抗性であることが示されていることは注目に値する。したがって、これらの生残がん細胞は、がんの再発に関連している。
【0152】
重要なことに、これらのモデルではメトホルミニンはメトホルミンと比較してより強力であり、上皮成長因子(EGF)を使用して一時的に間葉系状態に誘導されたMDA-MB-468トリプルネガティブ乳がん細胞に対してより高い毒性を呈した(図1C:メトホルミニンのIC50は、メトホルミンのIC50である24.3、12.1、5.5、及び2.3mMと比較して、それぞれ12.6、5.2、0.8、及び0.9mMである)。同様の傾向が、HMLER CD44/CD24対応上皮細胞と比較して、HMLER CD44/CD24間葉系細胞において観察された(図1D)。これらのデータは、メトホルミニンが細胞イメージング研究に好適であることを示した。
【0153】
メトホルミンはミトコンドリア銅を標的とする。
メトホルミニンで処理されたがん細胞を、クリックケミストリーによって細胞内で標識化し、ビグアニドの作用の推定機構部位を特定した(図2A)。乳がん細胞では、標識メトホルミニンは、ミトコンドリアを固有に特徴付ける細胞成分であるシトクロムcと共局在し、核小体タンパク質において観察されたものに似た弱い核染色と大きな増殖巣とを伴う(図2B及び図3A)。対照的に、標識メトホルミニンは、処理に応答したCTCの核では検出することができず、このことは、ミトコンドリアがビグアニドの機能的標的細胞小器官であるという考えと一致していた(図2B)。注目すべきことに、通常は銅(I)によって触媒される化学反応である細胞内のメトホルミニンの標識化は、追加の銅触媒により細胞をインキュベートする必要なしに、インサイチュで実行することができる(図3B)。したがって、内因性銅の天然ミトコンドリア存在比は、ネイティブ条件におけるメトホルミニンの標識化を促進するのに十分であった。更に、メトホルミニンがこの細胞小器官内の銅と化学的に相互作用することを実証した。
【0154】
この発見は、選択的ターンオフ(turn-off)蛍光プローブを使用して、ミトコンドリアの銅(II)レベルに対するメトホルミン及びメトホルミニンの効果を調査することを発明者に促した。メトホルミン及びメトホルミニンは、MDA-MB-468細胞においてこのターンオフプローブの蛍光の減少を誘導し、銅(II)のレベルの増加を示した(図2C及び図2D)。加えて、メトホルミンは、準可逆系対に特徴的なサイクリックボルタンメトリーピークの発生によって定義される銅の酸化還元特性を変化させ(図2E)、メトホルミンで処理すると、これら細胞内における銅取り込みタンパク質1(Ctr1)の発現が低下した(図4)。これらのデータは、メトホルミンが、銅の細胞内取り込みを増加させたのではなく、この細胞小器官内で銅(I)と直接相互作用し、酸化を促進した結果として、ミトコンドリア銅(II)のレベルが増加したことを示していた。興味深いことに、ビグアニドは、選択的ターンオフプローブを使用したフローサイトメトリーによって定義されるミトコンドリア鉄(II)のレベルも増加させ(図2F)、サイクリックボルタンメトリーは、メトホルミンが、この金属の酸化還元特性を変化させることを示し、このことは直接相互作用を示唆している。これらのデータは、メトホルミンが鉄結合を介して複合体Iを直接阻害し、Fe-Sクラスターから鉄(III)をハイジャックすることができるモデルを支持した。或いは、メトホルミンで処理すると、鉄(III)も消費され、銅(I)酸化の電子スカベンジャーとして作用する。メトホルミンがミトコンドリア内で銅の酸化促進剤として作用し、銅と鉄とのイオンバランスを変化させることと一致して、MDA-MB-468細胞をメトホルミン又はメトホルミニンで処理すると、ミトコンドリア膜電位の低下及びミトコンドリア形態の変化を伴って、この細胞小器官内の活性酸素種(ROS)のレベルが上昇した。更に、メトホルミン又はメトホルミニンによって誘発された細胞死は、カスパーゼ3阻害剤Z-VAD-FMKによって救済されたが、フェロトーシス及びネクロトーシス阻害剤であるフェロスタチン-1及びネクロスタチン-1それぞれでは救済されず、このことは、アポトーシス細胞死がミトコンドリア機能不全の結果として起こっていることと一致していた。
【0155】
銅は、上皮間葉系移行に不可欠な成分である。
間葉系がん細胞に対するメトホルミニンの顕著な効果、ミトコンドリアにおけるこのビグアニドの蓄積、及びこの細胞小器官における銅ホメオスタシスに対するメトホルミニンの効果により、本発明者らは、間葉系がん細胞の、ミトコンドリア銅に対する推定依存性を調査することになった。ウエスタンブロット分析により、EGF誘発EMTによって、スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1)及びチトクロームcオキシダーゼサブユニット4(Cox4)を含むミトコンドリア銅含有タンパク質が有意に増加し、Ctr1及びミトコンドリア銅のレベルが増加することが明らかになった(図5A図5C)。ミトコンドリア負荷が生残がん細胞においてより高いことを示す以前の発見と一致して、これらのデータは、この細胞状態において、エネルギー生産、ミトコンドリアETCに不可欠な金属タンパク質及び金属補因子に大きく依存する生物学的プロセスに対する必要性がより高いことを示唆した。重要なことに、銅の追加は、EGF処理と相乗作用して、これによりがん細胞が間葉系表現型へとシフトし、このことは、間葉系マーカー(例えば、ビメンチン、フィブロネクチン)のレベルの増加、及びCD44/CD24細胞表面マーカーパターンを含む細胞の割合によって定義される(図5D及び図6)。
【0156】
最後に、EGFを使用したMDA-MB-468細胞におけるEMTの誘導が、メトホルミン及びメトホルミニンによって妨げられ、このことは、E-カドヘリンの細胞内局在化及びファロイジン染色、間葉系マーカーであるフィブロネクチン、ビメンチン、EMT転写因子(TF)Zeb1、Snail、及びSlugのレベル、並びにCD44/CD24細胞表面マーカーパターンを含む細胞の割合によって定義される(図5E図5G)。全体として、これらのデータは、間葉系がん細胞のミトコンドリア銅への依存性を明らかにし、ビグアニドに対するこれらの細胞の感受性の高まりの理論的根拠を提供する。
【0157】
方法
試薬。塩化銅(CuCl2、459097、Sigma Aldrich社)、フェロスタチン-1(Fer-1、SML0583、Sigma Aldrich社、72時間で10μM)、ヒト上皮成長因子(EGF、130-093-825、Miltenyi Biotech社、96時間で100ng/mL(細胞生存率測定では更に72時間を加える)、カルボニルシアニドm-クロロフェニルヒドラゾン(CCCP、50μM)、メトホルミン(1,1-ジメチルビグアニド塩酸塩、J63361、Alfa Aesar社、特に明記しない限り12mM)、メトホルミニン(Met、自社創薬、特に明記しない限り2mM)、ネクロスタチン-1(N9037、Sigma Aldrich社、72時間で20μM)、ターンオフCu(II)プローブ(1時間で10μM)、ターンオフFe(II)プローブ(1時間で10μM)、Z-VAD-FMK(550377、BD Biosciences社,72時間で50μM).
【0158】
抗体。カスパーゼ3(9665S、Cell Signaling Technology社、WB 1:500)、CD24-APC(2155590、Sony Biotechnology Inc.社、FC 1:100)、CD44-PE(FAB4948P、R&D Systems社、FC 1:100)、銅取り込みタンパク質1(Ctr1、ab129067、Abcam社、WB 1:1000又はFC 1:100)、シトクロムc(12963、Cell Signaling Technology社、IF 1:500)、シトクロムcオキシダーゼサブユニット4(Cox4、ab16056、Abcam社、WB 1:2000)、E-カドヘリン(20023195、Cell Signaling Technology社、WB 1:1000)、E-カドヘリン(610181、BD Biosciences社、IF 1:200)、フィブロネクチン(F0791、Sigma Aldrich社、WB 1:1000)、DyLight(商標)488ファロイジン(12935S、Cell Signaling Technology社、IF 1:40)、Slug(9585S、Cell Signaling Technology社、WB 1:500)、Snail(3895、Cell Signaling Technology社、WB 1:500)、スーパーオキシドジスムターゼ1(SOD1、ab13498、Abcam社、WB 1:1000)、γ-チューブリン(T5326、Sigma Aldrich社、WB 1:2000)、ビメンチン(3932、Cell Signaling Technology社、WB 1:500)、Zeb1 (sc-81428、Santa Cruz Biotechnology社、WB 1:500)。WBの二次抗体:HRP抗マウス(A90-116P、Bethyl Laboratories社、WB 1:30000)、及びHRP抗ウサギ(A120-108P、Bethyl Laboratories社、1:30000)。IF及びFCの二次抗体:Alexa Fluor 488コンジュゲート(A-11017マウス、A-11008ウサギ、Life Technologies社、IF 1:500)、Alexa Fluor 594コンジュゲート(A-11032マウス、A-11072ウサギ、Life Technologies社、IF 1:500)、Alexa Fluor 647コンジュゲート(A-20991ウサギ、A-20990マウス、Life Technologies社、IF 1:500)。すべての抗体をブロッキング溶液(2又は5% BSA、0.1% Tween-20/TBS)で希釈した。
【0159】
細胞培養:ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(14190-094、500mL、Gibco社)、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)/F12(31331-028、500mL、Gibco社)、DMEM GlutaMAX(商標)(61965059、Thermo Fisher Scientific社)、ウシ胎児血清(FBS、10270-106、Gibco社)、ヒドロコルチゾン(H0888、Sigma Aldrich社)、インスリン(I0516又はI9278、Sigma Aldrich社)、PEN-STREP(DE17-602E、BioWhittaker、Lonza社)、ピューロマイシン二塩酸塩(A11138-02、Life Technologies社)。MCF-7(ATCC(登録商標)、HTB-22(商標))、MDA-MB-231(ATCC(登録商標)、HTB-26(商標))、MDA-MB-468(ATCC(登録商標)、HTB-132(商標))、及び循環腫瘍細胞を、10% FBS及び1%ペニシリン(100U/mL)、ストレプトマイシン(100μg/mL)を補充したDMEM中で増殖させ、37℃で5% CO2によりインキュベートした。EMTを誘発するために、細胞を上皮成長因子EGF(100ng/mL)(Miltenyi Biotec社)で72時間処理した。hTERT、SV40、及び発がん性対立遺伝子HrasV12を運ぶレトロウイルスに感染した、HMLER細胞と名付けられたヒト乳腺上皮細胞株は、A.Puisieuxからの寛大な寄贈であった。HMLER細胞は、10% FBS、10μg/mLインスリン、0.5μg/mLヒドロコルチゾン、10ng/mL hEGF、及び0.5μg/mLピューロマイシンを補充したDMEM/F12中で培養した。PCRマイコプラズマ検出キット(G238、Applied Biological Materials社)を使用して、マイコプラズマ試験を実施した。
【0160】
細胞生存率。細胞生存率は、製造元のプロトコルに従ってCellTiter-Blue(登録商標)生存率アッセイを使用して、96ウェルプレートに1000細胞/ウェルをプレーティングすることによって実行した。細胞を、指示通りに72時間処理した。CellTiter-Blue(登録商標)試薬(G8081、Promega社)を、72時間の処理後に加え、細胞を1~2時間インキュベートした後、Perkin Elmer社製Wallac 1420 Victor2マイクロプレートリーダーを使用して蛍光強度(例えば、560/20nm;em.590/10nm)を記録した。
【0161】
細胞イメージング。免疫蛍光法では、細胞を2% BSA、0.2% Tween-20/PBS(ブロッキングバッファー)により室温にて20分間ブロックした。カバースリップを、ブロッキングバッファー中の50~100μLの希釈一次抗体とともに室温にて1時間インキュベートした。次に、カバースリップをブロッキングバッファーで3回洗浄し、適切な二次抗体とともに1時間、上記のようにインキュベートした。カバースリップをPBSで3回洗浄し、DAPIを含むVectashield Mounting Medium(H-1200、VECTOR Laboratories社)を使用して封入した。Deltavisionリアルタイム顕微鏡(Applied Precision社)を使用して、蛍光画像を取得した。60×/1.4NA及び100×/1.4NA対物レンズを使用して2D及び3Dを取得し、これらをSoftWorx(Ratio conservative-15回反復、Applied Precision社)によりデコンボリューションし、ImageJ(登録商標)により処理した。
【0162】
細胞内のMetの化学標識化。細胞を約80%コンフルエンスで培養し、0.3mM Metにより3時間処理した。細胞をホルムアルデヒドで固定し(PBS中2%、12分)、その後透過処理を行い(Triton X-100、PBS中0.1%、5~10分)、1% BSA/PBSにより3回洗浄した。クリック反応カクテルを、Click-iT(登録商標)EdUイメージングキット(C10337、Life Technologies社)から、製造元のプロトコルに従って調製した。要約すると、430μLの1×Click-iT(登録商標)反応バッファーを、20μLのCuSO4溶液、1.2μLのAlexaFluor(登録商標)アジド、50μLの反応バッファー添加剤(アスコルビン酸ナトリウム)と混合して、最終体積を約500μLにする。カバースリップをクリック反応カクテルとともに暗所で室温にて30分間インキュベートし、次にPBSにより3回洗浄した。次に、指示通りに免疫蛍光法を実施した。
【0163】
ウエスタンブロッティング。細胞を指示通りに処理し、次にPBSで洗浄した。タンパク質を、ベンゾナーゼ(70664-3、VWR社、1:100)を加えたLaemmliバッファー中に可溶化した。抽出物を37℃で1時間インキュベートした。タンパク質を、プレキャストタンパク質ゲル(Biorad社)及びTrans-Blot(登録商標)Turbo(商標)転写システム(Biorad社)を使用して分離した。メンブレンを一次抗体とともに、PBS、0.1%Tween-20中の5% FBS中で一晩インキュベートした。一次抗体は、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合二次抗体(Jackson Laboratories社)及びSuper Signal増強化学発光検出キット(Thermo Scientific社)を使用して検出した。Fusion Solo S Imaging System(Vilber社)を使用して、シグナルを明らかにした。
【0164】
フローサイトメトリー。金属特異的プローブを、前述のように合成した。細胞を、図に示すように処理した。ミトコンドリア銅及び鉄プローブの場合、細胞を関連するプローブとともにインキュベートした後に、フローサイトメトリーで分析した。細胞をトリプシン処理し、氷冷PBSで2回洗浄した。抗体の場合、細胞を2% FBS及び1mM EDTA(インキュベーションバッファー)を含む氷冷PBS中に懸濁させ、関連する抗体とともに4℃で20分間インキュベートした。次に、細胞を氷冷PBSで2回洗浄し、インキュベーションバッファー中に懸濁させた後に、フローサイトメトリーで分析した。各条件について、少なくとも100,000個の細胞を計数した。データを、BD Accuri(商標)C6(BD Biosciences社)に記録し、Cell Quest(BD Biosciences社)及びFlowJo(FlowJo, LLC社)ソフトウェアを使用して処理した。
【0165】
銅及び鉄のレベル。試薬のセクションに記載されているように、細胞を、関連するプローブとともにインキュベートした。次に、細胞イメージング及びフローサイトメトリーのセクションに記載されているように、蛍光顕微鏡法又はフローサイトメトリーのいずれかによって細胞を分析した。
【0166】
サイクリックボルタンメトリー。サイクリックボルタンメトリー実験を、アルゴン下で3電極セルを使用して実施した。飽和カロメル電極(SCE)を参照として使用し、直径3mmの定常のガラス状炭素(GC)電極を作用電極として選択し、白金線を対電極として選択した。サイクリックボルタモグラムはすべて、Novaソフトウェアを使用して、0.5V/sのスキャン速度で、Metrohm製のμ-autolab IIIを使用して室温にて記録した。MeCNは、Carlo Erba製の脱気HPLCグレードとして使用されていたものであった。水は、mQ H2Oであった。銅を含む溶液は、MeCN(1.8mL)中の0.3M nBu4NBF4(180mg)及びMeCN(7.4mg/mL)中の20mM Cu(MeCN)4PF6ストック溶液200μLにより調製した。次に、mQ H2O(又はPBS)(66.2mg/mL)中の400mMメトホルミンストック溶液20μLを加えた。他のMeCN溶液は、MeCN(2mL)中の0.3M nBu4NBF4(200mg)及びmQ H2O(48.4mg/mL)中の200mM Fe(NO3)3ストック溶液20μL、及び/又はmQ H2O(66.2mg/1mL)中の400mMメトホルミンストック溶液20μLにより調製した。すべての水溶液は、mQ H2O(2mL)中の0.3M Na2SO4(85.2mg)及びmQ H2O(48.4mg/mL)中の200mM Fe(NO3)3ストック溶液20μL、及び/又はmQ H2O(66.2mg/mL)中の400mMメトホルミンストック溶液20μLにより調製した。
【0167】
ROSレベル。ミトコンドリアのROSは、MitoSOX(商標)Red Mitochondrial Superoxide Indicator(M36008、Thermo Fisher Scientific社)を、製造元のプロトコルに従って使用して測定した。手短に言えば、細胞を赤色蛍光色素で指定時間処理し、トリプシン処理し、洗浄し、2% FBS及び1mM EDTAを含む氷冷PBS中に再懸濁させて、その後フローサイトメトリーで分析した。
【0168】
ミトコンドリア膜電位。測定は、MitoProbe(商標)JC-1アッセイキット(M34152、Thermo Fischer Scientific)を使用して、製造元のプロトコルに従って実施した。手短に言えば、細胞を、2μM JC-1又はCCCP(m-クロロフェニルヒドラゾン)対照で指定時間処理した。次に、細胞を、トリプシン処理し、洗浄し、2% FBS及び1mM EDTAを含む氷冷PBS中に再懸濁させて、その後フローサイトメトリーで分析した。
【0169】
細胞死。細胞を、図に示すように処理した。処理後、細胞死を、製造元のプロトコル(アネキシンV-FITCアポトーシス検出キットII、556570、BD Pharmingen(商標))に従って、アネキシンV-FITC(A)/ヨウ化プロピジウム(PI)アッセイを使用して定量化した。データを、LSRFortessa(商標)フローサイトメーター(BD Biosciences社、San Jose、CA)によって分析し、Cell Quest(BD Biosciences社)及びFlowJo(FLOWJO, LLC社)ソフトウェアを使用して処理した。
【0170】
化学合成
一般情報。すべての出発物質は商業的供給元から購入し、更に精製することなく使用するか、又はPurification of Laboratory Chemicals(Armarego、W.L.F.、Chai、C.L.L 5th edition)に従って精製した。反応を、TLCシリカゲルでコーティングされたアルミニウムプレート60F-254(Merck社)を使用する薄層クロマトグラフィー(TLC)によって監視した。メトホルミニンを、Combiflash RF+Teledyne Iscoシステムを使用して精製した。1H NMRスペクトルを、300MHzで記録し、13C NMRを、75MHz、298Kで記録した。化学シフトは、δ値をppmで表して報告し、内部標準として残留非重水素化溶媒を使用し、結合定数(J)をHzで表した。以下の略語を使用する、すなわち、s、一重線;t、三重線;td、二重の三重線。UPLCトレース及びエレクトロスプレー質量スペクトルは、Waters社製Acquity SQD2 UPLC-MSシステムから取得した。HRMSは、Bruker社製maXis LC-QTOFを使用して測定した。
【0171】
メトホルミニン(Met)の合成。密閉管内で、市販のジシアンジアミド(169mg、2.0mmol)及びN-メチルブタ-3-イン-1-アミン(200mg、2.4mmol)を、20mLのキシレン中に懸濁させ、次に2.5mLの1M HCl水溶液を加えた。管を閉じ、140℃で5時間加熱した。この時間経過後反応物を室温に冷却し、MeOHを加え、次に溶媒を減圧下にて除去した。粗残留物を、Combiflash機器を使用するクロマトグラフィー(DCM/MeOH、10~20%)によって精製して、メトホルミニンを白色固体として得た(97mg、24%)。1H NMR (300 MHz, MeOD) δ3.60 (t, J = 7.0 Hz, 1H), 3.09 (s, 1H), 2.50 (td, J = 7.0, 3.0 Hz, 1H), 2.36 (t, J = 3.0 Hz, 1H)。13C NMR (75 MHz, MeOD) δ160.8, 160.5, 81.9, 71.4, 50.3, 36.7, 18.3。C7H14N5 [M+H]+ 168.1244に対して計算されたHRMS(ESI-TOF)、実測値168.1246。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6