(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】体外診断システムにおける試料容器の特性を決定するための方法、分析デバイス、および体外診断システム
(51)【国際特許分類】
G01N 35/02 20060101AFI20231002BHJP
G01N 35/00 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
G01N35/02 C
G01N35/00 E
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021041730
(22)【出願日】2021-03-15
【審査請求日】2021-03-16
(32)【優先日】2020-03-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】501205108
【氏名又は名称】エフ ホフマン-ラ ロッシュ アクチェン ゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エマド サロフィム
【審査官】岡村 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-117206(JP,A)
【文献】国際公開第2019/018313(WO,A1)
【文献】特表2019-531463(JP,A)
【文献】米国特許第07840360(US,B1)
【文献】特開2010-107399(JP,A)
【文献】国際公開第2012/036296(WO,A1)
【文献】特開2013-072806(JP,A)
【文献】特開2009-265827(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
G01N 21/00-21/61
G06T 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体外診断システムにおいて試料容器(1、31、32)の特性を決定するための方法であって、1つまたは複数のプロセッサを有する前記体外診断システムの分析デバイス(7)において、
第1の場面における試料容器(1、31、32)の第1の画像(30)に相当する第1の画像データを提供することであって、前記第1の場面において、前記試料容器(1)の背景照明
である第1の照明条件を前記試料容器(1)に適用する、ことと、
第2の場面における前記試料容器(1、31、32)の第2の画像(34)に相当する第2の画像データを提供することであって、前記第2の場面において、前記第1の照明条件とは異なる第2の照明条件を前記試料容器(1、31、32)に適用し、前記試料容器についての前記第2の照明条件は、背景照明と、上部照明および前部照明のうちの少なくとも1つとの組み合わせである、ことと、
前記第1の画像(30)からマスク(33)を決定することであって、前記マスク(33)が、前記第1の画像(30)における前記試料容器(1、31、32)の表現を含む第1の画像(30)のサブ画像部分を示す、ことと、
前記マスク(33)を前記第2の画像(34)に適用することによって、前記第2の画像(34)における前記試料容器(1、31、32)の表現を含む前記第2の画像(34)からサブ画像データを決定する、ことと、
前記サブ画像データの画像データ分析から成る、画像データ分析から前記試料容器(1、31、32)の特性を決定する、ことと、を含む、方法。
【請求項2】
前記試料容器(1、31、32)の第3の画像に相当する第3の画像データを生成することをさらに含み、前記第3の画像データが前記サブ画像データを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記背景照明、前記上部照明および前記前部照明のうちの少なくとも1つに拡散照明を適用することをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記試料容器(1、31、32)のない背景場面の背景画像(36)に相当する背景画像データを提供することをさらに含み、前記背景場面では、前記第1の照明条件が適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記マスク(33)を決定することには、前記第1の画像データおよび前記背景画像データを処理することが含まれる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の画像データおよび前記背景画像データの前記処理には、前記第1の画像(30)における画像エリアの輝度を前記背景画像(36)における対応する画像エリアと比較することが含まれる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の照明条件が適用される、前記試料容器(1、31、32)のない背景場面の基準画像(50)に相当する基準画像データを提供することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記基準画像(50)によって、前記第2の画像(34)を置き換える補正中間画像(51)が生成され、前記生成することが、
前記第2の画像(34)を不均一な空間照明に対して補正する、ことと、
前記第2の画像(34)をスペクトル的に補正する、ことと、
のうちの少なくとも1つを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記特性を決定することが、前記試料容器(1、31、32)または前記試料容器(1、31、32)の一部に対して、幾何学的特性、色特性、容器の種類、前記試料容器(1、31、32)の姿勢、前記試料容器(1、31、32)の状態、試料容器(1、31、32)の有無、前記試料容器(1、31、32)内の試料の有無、および前記試料容器(1、31、32)について提供される情報のうちの少なくとも1つを決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
1つまたは複数のプロセッサを備える、試料容器(1、31、32)の特性を決定するための分析デバイス(7)であって、前記1つまたは複数のプロセッサが、
第1の場面における試料容器(1、31、32)の第1の画像(30)に相当する第1の画像データを提供することであって、前記第1の場面において、前記試料容器(1、31、32)の背景照明
である第1の照明条件を前記試料容器(1、31、32)に適用する、ことと、
第2の場面における前記試料容器(1、31、32)の第2の画像(34)に相当する第2の画像データを提供することであって、前記第2の場面において、前記第1の照明条件とは異なる第2の照明条件を前記試料容器(1、31、32)に適用し、前記試料容器についての前記第2の照明条件は、背景照明と、上部照明および前部照明のうちの少なくとも1つとの組み合わせである、ことと、
前記第1の画像(30)からマスク(33)を決定することであって、前記マスク(33)が、前記第1の画像(30)における前記試料容器(1、31、32)の表現を含む第1の画像(30)のサブ画像部分を示す、ことと、
前記マスク(33)を前記第2の画像(34)に適用することによって、前記第2の画像(34)における前記試料容器(1、31、32)の表現を含む前記第2の画像(34)からサブ画像データを決定する、ことと、
前記サブ画像データの画像データ分析から成る、画像データ分析から前記試料容器(1、31、32)の特性を決定する、ことと、
を行うように構成されている、分析デバイス(7)。
【請求項11】
1つまたは複数のプロセッサを有する分析デバイス(7)を備える、体外診断システムであって、前記分析デバイスが、
第1の場面における試料容器(1、31、32)の第1の画像(30)に相当する第1の画像データを提供することであって、前記第1の場面において、前記試料容器(1、31、32)の背景照明
である第1の照明条件を前記試料容器(1、31、32)に適用する、ことと、
第2の場面における前記試料容器(1、31、32)の第2の画像(34)に相当する第2の画像データを提供することであって、前記第2の場面において、前記第1の照明条件とは異なる第2の照明条件を前記試料容器(1、31、32)に適用し、前記試料容器についての前記第2の照明条件は、背景照明と、上部照明および前部照明のうちの少なくとも1つとの組み合わせである、ことと、
前記第1の画像(30)からマスク(33)を決定することであって、前記マスク(33)が、前記第1の画像(30)における前記試料容器(1、31、32)の表現を含む第1の画像(30)のサブ画像部分を示す、ことと、
前記マスク(33)を前記第2の画像(34)に適用することによって、前記第2の画像(35)における前記試料容器(1、31、32)の表現を含む前記第2の画像(35)からサブ画像データを決定する、ことと、
前記サブ画像データの画像データ分析から成る、画像データ分析から前記試料容器(1、31、32)の特性を決定する、ことと、
を行うように構成されている、体外診断システム。
【請求項12】
1つまたは複数のプロセッサを有する分析デバイス(7)を備える、体外事前分析システムであって、前記分析デバイスが、
第1の場面における試料容器(1、31、32)の第1の画像(30)に相当する第1の画像データを提供することであって、前記第1の場面において、前記試料容器(1、31、32)の背景照明
である第1の照明条件を前記試料容器(1、31、32)に適用する、ことと、
第2の場面における前記試料容器(1、31、32)の第2の画像(34)に相当する第2の画像データを提供することであって、前記第2の場面において、前記第1の照明条件とは異なる第2の照明条件を前記試料容器(1、31、32)に適用し、前記試料容器についての前記第2の照明条件は、背景照明と、上部照明および前部照明のうちの少なくとも1つとの組み合わせである、ことと、
前記第1の画像(30)からマスク(33)を決定することであって、前記マスク(33)が、前記第1の画像(30)における前記試料容器(1、31、32)の表現を含む第1の画像(30)のサブ画像部分を示す、ことと、
前記マスク(33)を前記第2の画像(34)に適用することによって、前記第2の画像(34)における前記試料容器(1、31、32)の表現を含む前記第2の画像(34)からサブ画像データを決定する、ことと、
前記サブ画像データの画像データ分析を含む、画像データ分析から前記試料容器(1、31、32)の特性を決定する、ことと、を行うように構成されている、体外事前分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、体外診断システムにおける試料容器の特性を決定するための方法、分析デバイス、および体外診断システムに言及している。
【背景技術】
【0002】
体外診断システムは、人体から採取された血液や組織試料などの試験試料に適用される。体外診断は、病気やその他の状態を検出でき、人の全体的な健康状態を監視して病気を治療し、処置し、予防するのに役立つために使用できる。体外診断はまた、特定の処置または治療から利益を得る可能性が高い患者を特定するために精密医療に適用され得る。一部の体外診断試験は、実験室またはその他の医療専門家の設定で使用され得る。
【0003】
採血管などの試料容器(試料管とも呼ばれる)だけでなく、尿、綿棒、組織、骨髄、毛細血管などのための他の容器も、今日では自動化ソリューション(体外診断システム)によって処理され、扱われることがよくある。このような自動化ソリューションを確実に実行するには、試料容器分析手段(SCAM)が、試料容器の存在を認識すること、試料管の開いた状態と閉じた状態、上向きと逆さま、ラベル付きとラベルなし、回転した状態と回転していない状態などの状態を認識すること、容器の位置および/または姿勢を報告すること、容器に関連するパーツ、例えばラベルまたはカバーまたは方向マークの位置および/または姿勢を報告すること、試料容器(TTI)の種類を認識すること、試料容器の/の不規則性を認識すること、の少なくとも1つを提供する必要がある。これは、撮影された画像内の試料容器または試料管の対象物の明確な位置特定であり、それによって、例えば、正確な形状、状態などを導き出すために、試料容器の輪郭の明確な伝播を可能にする。
【0004】
現在の試料容器分析手段(SCAM)は、確実に実行するのに頻繁に苦労している。この状況により、予期しない停止が発生する可能性があり、これらのシステムの欠点を補うための手動介入手順が必要になり得る。
【0005】
米国特許出願公開第2019/0033209A1号明細書は、検体を定量化するためのモデルベースの方法を開示している。この方法は、検体を提供すること、異なる公称波長で複数のスペクトルに照らされている間に検体の画像をキャプチャすること、露光すること、検体を、血清または血漿部分、沈降血液部分、ゲル分離器(使用する場合)、空気、チューブ、ラベル、またはキャップのうち1つまたは複数を含むさまざまなクラス類に分類すること、および検体を定量化することを含む。定量化には、液体-空気界面の位置、血清-血液界面の位置、血清-ゲル界面の位置、血液-ゲル界面の位置、血清または血漿部分の体積および/または深さ、または沈降した血液部分の体積および/または深さ、のうち1つまたは複数を決定することが含まれる。他の態様と同様に、この方法を実行するように適合された品質チェックモジュールおよび検体試験装置について説明されている。また、米国特許出願公開第2018/0365530A1号明細書は、検体容器の特性を決定するモデルベースの方法に言及している。
【0006】
米国特許出願公開第2018/0364268A1号明細書は、検体容器内の検体を分類するモデルベースの方法を開示している。
【0007】
国際公開第2019/018314A1号は、検体および/または検体容器を特性評価するための装置を開示している。特性評価装置は、検体を含む検体容器を受け入れるように構成された画像化場所、画像化場所の照明を提供するように構成された光源、およびハイパースペクトル画像キャプチャ装置を含む。ハイパースペクトル画像キャプチャ装置は、スペクトル画像キャプチャ装置において検体容器および検体のごく一部のスペクトル分解画像を生成およびキャプチャするように構成されている。スペクトル画像キャプチャ装置で受信されたスペクトル分解画像データは、コンピュータによって処理されて、検体および/または検体容器の少なくとも1つのセグメンテーション、ならびに溶血、黄疸、または脂肪血症などの干渉物の有無の判定、のうちの少なくとも1つを決定する。他の態様と同様に、検体および/または検体容器を画像化する方法、および特性評価装置を含む検体試験装置について説明されている。
【0008】
国際公開第2018/022280A1号は、容器キャップを識別するために検体容器キャップの特性を決定するモデルベースの方法を開示している。この方法は、容器キャップを含む検体容器を提供することと、異なる露光長で、複数の異なる公称波長を使用して撮影された容器キャップのバックライト画像をキャプチャすることと、各公称波長で異なる露光長の画像から最適に露光されたピクセルを選択して、各公称波長の最適に露光された画像データを生成することと、最適に露光されたピクセルを、少なくともチューブ、ラベル、またはキャップの1つとして分類することと、キャップとして分類された最適に露光されたピクセルと各公称波長の画像データに基づいて、容器キャップの形状を識別することと、を含む。他の多くの側面と同様に、この方法を実行するように適合された品質チェックモジュールおよび検体試験装置が説明されている。
【0009】
ZaydeAlcicekらは、「Development and application of the Two Image method for accurate object recognition and color analysis」(Journal of Food Engineering Barking、Essex GB、vol.111、no.1、28 January 2012(2012-01-28)、46~51頁)において、画像のセグメンテーション(背景からの対象物の分離)について説明している。特に背景に似た色の対象物には、「2つの画像」方式が適用される。これには、逆光画像から得られたシルエットから対象物を画定すること、および逆光画像からのセグメンテーションを使用して前部照明画像を使用して色分析を実行することが含まれる。
【0010】
国際公開第2018/089935A1号は、パターン生成を含む特性評価装置に言及している。特性評価装置は、いくつかの実施形態において、検体および/または検体容器を特性評価するように構成される。
【0011】
米国特許第7,840,360B1号明細書は、液体を含むIR光を透過することができる1つまたは複数の管を非侵襲的に検査するためのシステムおよび方法を開示しており、これは、1つまたは2つのNIR光源および拡散プレートと組み合わせて近赤外線(NIR)画像化装置を使用し、1つまたは複数の波長帯域を選択するための光波長選択手段が提供される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本開示の目的は、試料管(試料容器)、分析デバイス、および、体外診断システムの試料管の安全かつ効率的な取り扱いをサポートする体外診断システム、の特性を決定するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の体外診断システムにおける試料管の特性を決定するための方法が提供される。さらに、請求項11および請求項12にそれぞれ記載の分析デバイスおよび体外診断システムが提供される。また、請求項13に記載の体外事前分析システムが提供される。さらなる実施形態は、従属請求項に開示されている。
【0014】
一態様によれば、体外診断システムにおいて試料管(試料容器)の特性を決定するための方法が提供され、この方法は、1つまたは複数のプロセッサを有する体外診断システムの分析デバイスにおいて、第1の場面における試料管の第1の画像に相当する第1の画像データを提供することであって、第1の場面では、試料管の背景照明を含む第1の照明条件が試料管に適用される、ことと、第2の場面における試料管の第2の画像に相当する第2の画像データを提供することであって、第2の場面では、第1の照明条件とは異なる第2の照明条件が試料管に適用される、ことと、第1の画像からマスクまたはマスクされた画像を決定することであって、マスクは、第1の画像の試料管の表現を含む第1の画像のサブ画像部分を示す、ことと、マスクを第2の画像に適用することにより、第2の画像内の試料管の表現を含む第2の画像からサブ画像データ/画像データサブセットを決定することと、サブ画像データの画像データ分析を含む画像データ分析から試料管の特性を決定することと、を含む。
【0015】
別の態様によれば、試料管(試料容器)の特性を決定するための分析デバイスが提供され、分析デバイスは、1つまたは複数のプロセッサを備え、1つまたは複数のプロセッサは、第1の場面における試料管の第1の画像に相当する第1の画像データを提供することであって、第1の場面では、試料管の背景照明を含む第1の照明条件が試料管に適用される、ことと、第2の場面における試料管の第2の画像に相当する第2の画像データを提供することであって、第2の場面では、第1の照明条件とは異なる第2の照明条件が試料管に適用される、ことと、第1の画像からマスクを決定することであって、マスクは、第1の画像の試料管の表現を含む第1の画像のサブ画像部分を示す、ことと、マスクを第2の画像に適用することにより、第2の画像内の試料管の表現を含む第2の画像からサブ画像データを決定することと、サブ画像データの画像データ分析を含む画像データ分析から試料管の特性を決定することと、を行うように構成されている。
【0016】
さらに別の態様によれば、体外診断システムが提供され、システムは、1つまたは複数のプロセッサを有する分析デバイスを備え、分析デバイスは、第1の場面における試料管の第1の画像に相当する第1の画像データを提供することであって、第1の場面では、試料管の背景照明を含む第1の照明条件が試料管に適用される、ことと、第2の場面における試料管の第2の画像に相当する第2の画像データを提供することであって、第2の場面では、第1の照明条件とは異なる第2の照明条件が試料管に適用される、ことと、第1の画像からマスクを決定することであって、マスクは、第1の画像の試料管の表現を含む第1の画像のサブ画像部分を示す、ことと、マスクを第2の画像に適用することにより、第2の画像内の試料管の表現を含む第2の画像からサブ画像データを決定することと、サブ画像データの画像データ分析を含む画像データ分析から試料管の特性を決定することと、を行うように構成されている。
【0017】
さらに別の態様によれば、1つまたは複数のプロセッサを有する分析デバイスを備えた体外事前分析システムが提供され、分析デバイスは、
第1の場面における試料管の第1の画像に相当する第1の画像データを提供することであって、第1の場面では、試料管の背景照明を含む第1の照明条件が試料管に適用される、ことと、第2の場面における試料管の第2の画像に相当する第2の画像データを提供することであって、第2の場面では、第1の照明条件とは異なる第2の照明条件が試料管に適用される、ことと、第1の画像からマスクを決定することであって、マスクは、第1の画像の試料管の表現を含む第1の画像のサブ画像部分を示す、ことと、マスクを第2の画像に適用することにより、第2の画像内の試料管の表現を含む第2の画像からサブ画像データを決定することと、サブ画像データの画像データ分析を含む画像データ分析から試料管の特性を決定することと、を行うように構成されている。
【0018】
提案された技術は、試料管および特性の少なくとも1つまたは複数のより信頼できる識別を提供し、異なる場面のために撮影された試料管のデジタル画像においてそこに姿勢をとる。第1の画像に基づいて、第1の画像から試料管のマスクが判定される。管のマスクは、試料管の外形を示しており、これは、いくつかの実施形態では、試料管の輪郭とも呼ばれることがある。以下では、試料の特性がより正確に判定され得る。より高い信頼性で特性を決定することは、体外診断システムのより安全な操作をサポートする。
【0019】
代替の実施形態では、2つ以上の試料管(複数の試料管)の特性を決定することができる。すべての試料管に共通の特性を決定できる。あるいは、異なる試料管の異なる特性を決定することができる。
【0020】
この方法は、試料管の第3の画像に相当する第3の画像データを生成することをさらに含み得、第3の画像データは、サブ画像データを含む。第3の画像は、少なくともマスクを適用して画定された画像領域からの画像データ(試料管の外形または輪郭)を示している。いくつかの実施形態では、特性を決定するためのデジタル画像分析において、第3の画像の画像データを独立して処理することを可能にし得る。
【0021】
第2の画像データは、背景照明なし、上部照明または前部照明の少なくとも1つなど、背景照明のみとは異なる無背景照明、および背景照明と無背景照明との組み合わせ、の群から選択される第2の照明条件で提供され得る。上記群からの1つまたは複数の照明条件を適用することができる。
【0022】
この方法は、背景照明および無背景照明のうちの少なくとも1つの下で拡散照明を適用することをさらに含み得る。
【0023】
試料管が存在しない背景場面の背景画像に相当する背景画像データを提供することができ、背景場面では、第1の照明条件が適用される。背景場面は、第1の照明条件を適用する第1の場面に対応し得るが、試料管が存在しないか欠落している。
【0024】
マスクは、特に、第1の画像のどの部分が試料管に関連し、第1の画像のどの部分が試料管に関連しないかを示し得る。
【0025】
マスクを決定することは、第1の画像データおよび背景画像データを処理することを含み得る。
【0026】
第1の画像データおよび背景画像データを処理することは、第1の画像の画像領域の明るさを背景画像の対応する画像領域と比較することを含み得る。
【0027】
マスクを決定することは、第1の画像の各点/ピクセルの透過値を決定することを含み得る。判定は、第1の画像を背景画像と比較することを含み得る。例えば、第1の画像と背景画像は、画像をピクセルごとに比較することによって比較することができる。(画像ピクセルの)透過値が閾値よりも小さい場合、例えば、約90%、約95%、または約98%の場合、マスク内の画像ピクセルが試料管に関連する画像領域に割り当てられ、それ以外の場合、ピクセルは試料管に関連しない画像領域(背景)に割り当てられることが提供され得る。透過率の値を決定することにより、試料管の透明な物体またはセクションも検出され得る。
【0028】
第2の照明条件が適用される、試料管が存在しない背景場面の基準画像に相当する基準画像データが提供され得る。試料管が第1および/または第2の場面に配置されている場所に参照対象物が提供され得る。参照対象物は、好ましくは規定の反射率を有する平坦な材料対象物であり得る。あるいは、背景照明(装置)の表面を参照対象物として適用することができる。
【0029】
基準画像によって、第2の画像を置き換える補正中間画像が生成されることが提供され得る。生成は、不均一な空間照明のために第2の画像を補正すること、および/または第2の画像をスペクトル的に補正することを含み得る。
【0030】
特性の判定は、試料管または試料管のサブパーツについて、幾何学的特性、色の特性、管の種類、試料管の姿勢、試料管内の試料の有無、試料管内の試料の状態、試料管内の試料のサンプリングの状態、および試料管で提供される情報、のうちの少なくとも1つを決定することを含み得る。
【0031】
上記の試料管の特性を決定するための方法に関して開示された実施形態は、必要な変更を加えて、分析デバイス、体外診断システム、および体外事前分析システムのうちの少なくとも1つに適用され得る。
【0032】
以下、実施形態は、例として、図を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】試料管に異なる照明条件を適用する異なる場面で提供される試料管の画像を検出するための構成の概略図である。
【
図2】試料管に異なる照明条件を適用する異なる場面で提供される試料管の画像を検出するための別の構成の概略図である。
【
図3】体外診断システムにおいて試料管の特性を決定するための方法で提供される異なる画像の概略図である。
【
図4】体外診断システムにおいて試料管の特性を決定するための方法で提供される異なる画像のさらなる概略図であり、複数の試料管の画像が取得される。
【
図5】フラットフィールドおよび/またはホワイトバランス補正を使用して、体外診断システムで試料管の特性を決定するための方法で提供されるさまざまな画像の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1および
図2は、試料管1に異なる照明条件を適用する異なる場面で提供される試料管1の(デジタル)画像を検出および処理するための構成の概略図を示す。試料管1は、人体から採取された血液または組織試料などの(試験)試料を受け取ることができる。疾患または他の状態は、体外診断システムにおいて試料管1で受け取られた試験試料を分析することによって検出され得る。
【0035】
図1および
図2に示される構成は、少なくとも試料管1に適用される異なる照明条件によって区別される異なる場面における試料管1の複数の画像を検出するための体外診断システムに提供される分析デバイスで使用され得る。
【0036】
検出に続いて、
図1および
図2の構成によって検出された画像は、画像データ分析または試料管1の特性(すなわち、試料管の特性)を決定するための処理によって分析され得る。特性に関する情報は、システムの操作のために体外診断システムで処理または使用されることができる。したがって、特性の信頼できる判定は、体外診断システムにおいて試料管1および試料管1で受け取られた試料の安全な操作をサポートするであろう。例えば、特定の特性を決定することに応答して、試料管1は、体外診断システムにおける試料分析のいくつかの特別な手順に提供され得、特別な手順は、判定された試料管1の特性に割り当てられる。
【0037】
図1および
図2に示される構成のために、試料管1に背景照明を提供するための背景照明装置2が存在する。背景照明装置2は、主に、試料管1の裏側、または分析される試料容器1の一部に光を向ける。さらに、例えば、拡散照明を適用するための照明装置3a、3bが提供される。背景照明装置2はまた、拡散背景照明のための光源を備えていてもよい。代替の実施形態では、背景照明装置2および照明装置3a、3bのうちの少なくとも1つは、試料管1に非拡散照明を提供するように構成され得る。照明装置3a、3bは、試料管1の前面および/または上部照明に適用されることができ、それにより、異なる場面で試料管1に異なる照明条件を適用するためのオプションを提供する。
【0038】
さらに、示される実施形態では、背景照明装置2は、試料管1の全体のサイズにわたって延びる。例えば、背景照明装置2は、自己発光照明パネル、例えば、LED(LED-発光ダイオード)、またはOLED(LED-有機発光ダイオード)ベースの照明パネル、または間接的に照明される自己発光しない表面を備えていてもよい。同様の構成が、照明装置3a、3bに提供され得る。照明の波長は、用途に応じて選択される。単純な存在検出では、色付きLEDからなどの狭帯域幅の光を使用できる。キャップの色の判定には白色光が必要な場合がある。
【0039】
検出装置4は、試料管1が背景照明装置2および/または照明装置3a、3bによって照明されている間に、試料管1の(デジタル)画像を検出または取得するために提供される。また、背景照明装置2および試料管1の照明装置3a、3bの光源による照明がない場合には、検出装置4により画像を検出することができる。検出装置4を備えたカメラは、目的または用途に応じて、「グレースケール」カメラ、RGBカメラ、または特定の感度を備えたカメラであり得る。検出装置4はまた、3Dデータまたは距離情報を検索するために、飛行時間機能を有し得るか、またはステレオカメラであり得る。検出装置4に関して、試料管または試料容器1よりも遠い距離に背面または背景照明装置2が配置されている。
【0040】
背景照明装置2、照明装置3a、3b、および、デジタルカメラを備え得る検出装置4は、異なる装置の動作を制御するように構成された制御装置5に接続されており、異なる場面で試料管1の画像が検出される。制御装置5は、画像取得の過程において、背景照明装置2および照明装置3a、3bのうちの少なくとも1つによる検出装置4および場面の照明を制御する。これには、構成要素のトリガ、電力の供給、同期、およびパラメータ化のいずれかが含まれ得る。制御装置5はまた、本明細書に開示される異なる実施形態に従って画像を処理するように構成され得る。
【0041】
図1および
図2のさまざまな配置には、検出される場面に応じて最適化された光学条件を提供するためのフィールドレンズ(
図1を参照)やシリンダレンズ(
図2を参照)など、さまざまな種類の光学素子6がある。
【0042】
制御装置5と一緒に実装されることができ、(デジタル)画像データを処理するための1つまたは複数のプロセッサを含む分析デバイス7が、検出装置4に接続されている。検出装置4によって検出された複数の画像は、試料管1の特性を決定するために分析デバイス7で処理される。分析デバイス7は、データ通信および同期のために、ホスティングまたはサーバ装置(図示せず)に接続可能であり得る。
【0043】
図3および
図4はそれぞれ、例えば、
図1および
図2に示す構成の1つによって検出された画像から1つまたは複数の試料管の特性を決定する方法で提供される複数の(デジタル)画像の概略図を示す。検出装置4によって検出された複数の画像は、以下の一実施形態で説明されるように、分析デバイス7によって処理される。
図3の実施形態によれば、第1の画像30には、
図1および
図2に示される試料管1などの単一の試料管に相当する(単一の)試料管31が示されている。
【0044】
図4は、体外診断システムにおいて試料管の特性を決定するための方法で提供される異なる画像のさらなる概略図を示し、複数の試料管32の画像が提供される。
図4によれば、代替の実施形態では、第1の画像30に示される複数の試料管32があり、複数の試料管32は、それぞれが複数の試料管1などの試料を受け取るための複数の試料管に相当する。
図4はまた、正面照明を適用することによって、試料管32の透明な部分でさえどのようにうまく表示されるかを示している。
【0045】
第1の画像30は、試料管31に背景照明を適用する第1の場面における試料管31の画像に相当する。同様に、
図4の第1の画像30は、背景照明装置2によって提供される背景照明を適用する第1の場面における複数の試料管32の画像に相当する。
【0046】
試料管31/複数の試料管32のマスク33が提供され、マスク33は、試料管31または複数の試料管32の外形または輪郭に相当する。マスク33は、画像データ分析または第1の画像30の処理によって生成される。マスク33は、試料管31、32に関連する領域33aと、試料管31、32に関連しないが背景に関連する領域33bとを含む。
【0047】
引き続き
図3および
図4を参照すると、第1の画像30を検出するために適用される第1の照明条件とは異なる第2の照明条件が適用される第2の場面における試料管31/複数の試料管32を示す第2の画像34がある。
図4に示す実施形態では、第2の照明条件は、背景照明装置2によって提供される背景照明と、(第1の場面に加えて)照明装置3a、3bによって提供される上部および/または前部照明を適用する。
【0048】
第2の画像34内の画像データサブセットからの画像データを含むマスクされた画像35を処理するために第2の画像34にマスク33が適用され、マスク33によって画像データサブセットが画定される。説明されたプロセスの結果は、画像データサブセットによって描かれた試料容器31/複数の試料容器32の(管)画像が背景から明確に分離され、フルカラーであり、反射および影がないことである。したがって、マスクされた画像35は、管の姿勢および管の種類の認識などのために、特に容易で信頼性の高い画像分析を可能にする。
【0049】
続いて、マスクされた画像35は、試料管31、32の1つまたはすべての特性を決定するために処理され得る。例えば、画像データ分析によって判定される特性は、以下の特性:試料管の有無、試料容器の位置、試料管の姿勢、試料管のグリップポイント、試料容器のサイズ、試料容器の状態(例:満たされたまたは満たされていない)、容器の一部の特性(例:キャップの色、チューブの長さ、レベル)、および試料容器種類、のうちの1つまたは複数を含み得る。マスクされた画像35のそのようなデータまたは画像分析は、それ自体として知られている。
【0050】
上で概説したプロセスまたは方法は、第1の画像30、第2の画像34、およびマスク33に基づく画像データ処理から導出されたマスクされた画像35からの特性のより信頼性の高い判定を提供する。
【0051】
図3および
図4に示される実施形態によれば、背景画像36は、背景場面の検出装置4によって検出される。背景場面については、第1の照明条件が適用され、背景照明は、背景照明装置2によって提供される。背景場面では、試料管が存在しないか欠落している。
【0052】
背景画像36は、第1の画像30と共に、マスク33を決定するために処理される。マスク33の判定は、第1の画像30内の各点、ピクセル、またはセクションの透過値を決定することを含み得る。第1の画像30は、背景画像36と比較される。例えば、第1の画像30と背景画像36とは、画像をピクセルごとに比較することによって比較することができる。(画像ピクセルの)透過値が閾値よりも小さい場合、例えば、約90%、約95%、または約98%の場合、マスク33内の対応する画像ピクセルが試料管31、32に関連する画像領域に割り当てられ、それ以外の場合、ピクセルは試料管31、32に関連しない画像領域(背景)に割り当てられることが提供され得る。透過値を決定することにより、透明な物体も検出され得る。
【0053】
例えば、第1の画像30、マスク33、第2の画像34、背景画像36、および基準画像50のうちの少なくとも1つは、制御装置5のメモリまたは制御装置5によってアクセス可能なメモリに格納され得る。
【0054】
図5は、フラットフィールドおよび/またはホワイトバランス補正を使用して、体外診断システムにおいて試料管の特性を決定するための方法で提供される異なる画像の概略図を示す。
【0055】
背景画像36には、背景照明場面内のいくつかの実際のまたは仮想の物体、例えば、照明の不均一性を概略的に表すための三角形記号37が描かれている。実物体または仮想物体(三角形37によって象徴的に表される)は、背景画像36および試料管31を示す第1の画像30の両方に存在するので、それはマスク33に悪影響を及ぼさない。
【0056】
第2の画像34には、特に、照明装置3a、3bを適用する正面照明状況において、例えば、照明の不均一性を概略的に表すための円記号38が示されている。このような照明の不均一性は、例えば、エッジ領域の明るさが低下していることを示している場合がある。それは、適用された照明装置3a、3bおよび/または画像光学によって引き起こされ得る。
【0057】
円記号38によって概略的に表される不均一性を補償するために、第2の背景画像とも称される基準画像50が提供される。基準画像50および第2の画像34は、円記号38によって概略的に表される不均一性に関して補正された、補正中間画像51を決定するために処理される。続いて、マスクされた画像35は、マスク33および補正中間画像51を処理することによって判定される。
【0058】
円記号38によって表される不均一性に関して、露出の違いを「美しく」反映し得る参照として白いプレートが使用され得る。(照明)不均一性は(設定が変更されない限り)時間とともに不変であるため、基準画像50を一度キャプチャして保存することで十分である可能性がある。次に、試料管31のない基準画像50の輝度分布は、補償または補正として機能する。例えば、画像サブエリアが当該画像サブエリアとは異なる別の画像サブエリアの半分の明るさしかない場合、画像サブエリアの強度(ピクセル)値はそれに応じて拡大される。さらに、ニュートラルホワイト画像サブエリアが公称R:G:B比を示さない場合、例えば、1:1:1の場合、これらのR:G:B比は正規化できる(技術的にはホワイトバランスに対応する)。後者は、デジタルカメラなどの検出装置4の照明または色再現によって引き起こされる色誤差を補正するのに役立つ。
【符号の説明】
【0059】
1 試料管
2 背景照明装置
3a、3b 照明装置
4 検出装置
5 制御装置
6 光学素子
7 分析デバイス
30 第1の画像
31 試料管(画像に示されている)
32 複数の試料管(画像に示されている)
33 マスク
33a 試料管に関連する領域
33b 試料管に関係のない領域
34 第2の画像
35 マスクされた画像
36 背景画像
37 三角形記号
38 円記号
50 基準画像
51 補正中間画像