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特許7358450砂型鋳造のための酸化された材料を含む組成物並びにその調製方法および使用方法
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  • 特許-砂型鋳造のための酸化された材料を含む組成物並びにその調製方法および使用方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】砂型鋳造のための酸化された材料を含む組成物並びにその調製方法および使用方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 1/18 20060101AFI20231002BHJP
   C04B 14/10 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
B22C1/18
C04B14/10 Z
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2021502727
(86)(22)【出願日】2019-03-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 US2019024779
(87)【国際公開番号】W WO2019191555
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】62/650,698
(32)【優先日】2018-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】398031330
【氏名又は名称】アイメリーズ ユーエスエー,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【氏名又は名称】臼井 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100217825
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 博喜
(72)【発明者】
【氏名】ラファイ,ビクター エス.
(72)【発明者】
【氏名】ティブッス,ジェルミ
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/165536(WO,A1)
【文献】特開昭56-062643(JP,A)
【文献】特開平10-034278(JP,A)
【文献】国際公開第2018/043412(WO,A1)
【文献】特表2009-507093(JP,A)
【文献】特開平09-122829(JP,A)
【文献】特表2012-501850(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0226436(US,A1)
【文献】特開2005-224833(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1654141(CN,A)
【文献】特開昭48-063978(JP,A)
【文献】特表2010-506730(JP,A)
【文献】特開2006-175510(JP,A)
【文献】特表2004-524977(JP,A)
【文献】特開昭58-204862(JP,A)
【文献】特公昭48-024802(JP,B1)
【文献】特開2009-291801(JP,A)
【文献】理化学辞典第4版,日本,岩波書店,1991年01月10日,p.113-114
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 1/00-3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素質材料;
無機結着剤;および
高アスペクト比珪酸塩
を含むバインダー組成物であって、
少なくとも前記無機結着剤が酸化され
前記無機結着剤がナトリウムベントナイト、カルシウムベントナイト、またはこれらの混合物を含むバインダー組成物。
【請求項2】
炭素質材料;および
酸化された無機結着剤;
を含むバインダー組成物であって、
前記無機結着剤のFe3+に対するFe2+の比が1.2未満であり、
前記無機結着剤がナトリウムベントナイト、カルシウムベントナイト、またはこれらの混合物を含むバインダー組成物。
【請求項3】
酸化された炭素質材
含むバインダー組成物であって、
前記酸化された炭素質材料が酸化剤による処理により調製される請求項1に記載のバインダー組成物。
【請求項4】
前記酸化剤がソーダ灰、過酸化水素、オゾン、またはこれらの組み合わせを含む、請求項3に記載のバインダー組成物。
【請求項5】
前記無機結着剤のFe2+/Fe3+の比が1未満である請求項1~3のいずれか1項に記載のバインダー組成物。
【請求項6】
前記無機結着剤を70重量%から90重量%含む請求項1~3のいずれか1項に記載のバインダー組成物。
【請求項7】
前記炭素質材料が酸化炭、酸化褐炭(oxidized lignite)、酸化レオナルダイト(oxidized leonardite)、酸化グラファイト、酸化無煙炭(oxidized anthracite)、酸化セルロース、またはこれらの組み合わせを含む請求項1~3のいずれか1項に記載のバインダー組成物。
【請求項8】
前記酸化炭が酸化亜炭(oxidized lignite coal)、酸化瀝青炭(oxidized bituminous coal)、または酸化石炭粉(oxidized sea coal)である請求項7に記載のバインダー組成物。
【請求項9】
.1重量%から20.0重量%の前記炭素質材料を含む請求項1~3のいずれか1項に記載のバインダー組成物。
【請求項10】
さらに高アスペクト比珪酸塩を含む請求項2または3に記載のバインダー組成物。
【請求項11】
前記高アスペクト比珪酸塩がマイカまたはタルクを含む請求項1または10に記載のバ
インダー組成物。
【請求項12】
.1重量%から5.0重量%の前記高アスペクト比珪酸塩を含む請求項1または10に記載のバインダー組成物。
【請求項13】
前記高アスペクト比珪酸塩が白雲母(muscovite)、パラゴナイト(paragonite)、リシア雲母(lepidolite)、金雲母(phlogopite)、黒雲母(biotite)、またはこれらの組み合わせを含む請求項1または10に記載のバインダー組成物。
【請求項14】
請求項1~3のいずれか1項に記載のバインダー組成物および凝集体(aggregate)を含む生型鋳型用組成物。
【請求項15】
前記凝集体が珪砂、ジルコン砂、アルミノ珪酸塩、またはこれらの混合物を含む請求項14に記載の生型鋳型用組成物。
【請求項16】
物品を造形(molding)する方法であって、前記方法が:
加熱された材料を型に導入することであって、前記型が炭素質材料、無機結着剤、高アスペクト比珪酸塩、水、および凝集体の混合物を含み、
少なくとも前記無機結着剤が酸化され、並びに
前記加熱された材料を冷却すること
を含み、
前記無機結着剤がナトリウムベントナイト、カルシウムベントナイト、またはこれらの混合物を含む方法。
【請求項17】
前記加熱された材料を前記型に導入した後に前記型が0.10mg/g未満のBTEXを放出する請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記炭素質材料が酸化炭を含む請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記高アスペクト比珪酸塩がマイカまたはタルクを含む請求項1618のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[優先権主張]
本PCT国際出願は、2018年3月30日付けで出願された米国仮特許出願第62/650,698号の優先権の利益を主張し、その主題は、引用することによりその全体が本出願の一部をなす。
【0002】
本開示の実施の形態は包括的に鋳造の間の放出物を低減するために有用な組成物、並びにそのような組成物の調製方法および使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
鋳造は、例えば金属といった加熱した液体材料を型に注ぎ込み、冷却することで物品を調製する鋳造方法である。鋳造された金属物品は、その後に鋳造物が放出(release)される、または「たたき出される(knocked out)」。鋳造は、注型、冷却、鋳造の相をたたき出す間に放出される揮発性有機化合物(VOCs)の如き、有害大気汚染物質を含む様々な放出物をもたらす。安全性および環境問題は、鋳造の間に放出されるベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、およびキシレン(一般に「BTEX」と称される)を含むVOCs、一酸化炭素(CO)並びにメタン(CH)に関連付けられる。これらの放出物は、ある種の安全性と環境問題を生み出す。
【0004】
鋳造プロセスからの放出物は、型を作るために用いられた化合物、例えばバインダー組成物から形成される生型鋳型用組成物に関連する。したがって、型の性能および鋳造物の鋳造品質を維持しつつ、鋳造の間に有害な放出物の量を低減する材料から生型鋳型用組成物が作られることが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、生型法を含む砂型鋳造に有用な組成物、その様な組成物の調製、およびそれらの使用方法を含む。
【0006】
例えば、本開示は、炭素質材料、および無機結着剤を含むバインダー組成物であって、炭素質材料および無機結着剤の少なくとも一方が酸化されているバインダー組成物を含む。本開示のいくつかの態様によれば、バインダー組成物は約0.1重量%から約20.0重量%の炭素質材料を含んでよい。例えば、バインダー組成物の総重量に対して、約2重量%から約22重量%、約5重量%から約20重量%、約7.5重量%から約17.5重量%、または約10重量%から約15重量%の炭素質材料を含んでよい。いくつかの実施例では、炭素質材料は石炭、褐炭(lignite)、亜炭(lignite coal)、レオナルダイト(leonardite)、グラファイト、無煙炭(anthracite)、セルロース、またはこれらの組み合わせを含む。本開示のいくつかの実施例では、バインダー組成物は無機結着剤を約75重量%から約88重量%、または約80重量%から約85重量%の如き、約70重量%から約90重量%含んでよい。例示的な無機結着剤として、ナトリウムベントナイト、カルシウムベントナイト、またはこれらの混合物が挙げられる。本開示のいくつかの態様において、無機結着剤のFe2+/Fe3+の比が、例えば1.0未満、1未満、0.9未満、0.8未満の如き、1.2未満となるように酸化されてよい。
【0007】
本開示のいくつかの態様によると、バインダー組成物は高アスペクト比珪酸塩を含んでよい。本開示のいくつかの態様において、バインダー組成物は、組成物の総重量に対して、例えば約0.5重量%から約4.0重量%、約1重量%から約3.5重量%、または約3.5重量%から約5.0重量%の如き、例えば約0.3重量%から約4.5重量%の高アスペクト比珪酸塩の如き、バインダー組成物の総重量に対して約0.1重量%から約5.0重量%の高アスペクト比珪酸塩を含んでよい。本開示のいくつかの態様において、高アスペクト比珪酸塩はマイカまたはタルクを含んでよい。追加的にまたは代替え的に、高アスペクト比珪酸塩が白雲母(muscovite)、パラゴナイト(paragonite)、リシア雲母(lepidolite)、金雲母(phlogopite)、黒雲母(biotite)、またはこれらの組み合わせを含んでよい。
【0008】
本開示は上記の、または本明細書の他の場所に記載のバインダー組成物および凝集体(aggregate)を含む生型鋳型用組成物をさらに含む。凝集体は珪砂、ジルコン砂、アルミノ珪酸塩、またはこれらの混合物を含んでよい。
【0009】
本開示は鋳物用組成物を調製する方法をさらに含む。例えば、該方法は炭素質材料を酸化すること、および酸化された炭素質材料と無機結着剤を組み合わせることによりバインダー組成物を調製することを含む。該方法は、酸化された炭素質材料と無機結着剤を組み合わせる前に、後に、または同時に酸化された炭素質材料と高アスペクト比珪酸塩を組み合わせることをさらに含む。本開示のいくつかの態様によると、炭素質材料の酸化が炭素質材料を、例えばソーダ灰、過酸化水素、オゾン、またはこれらの組み合わせの如き、酸化剤で処理することを含む。本開示のいくつかの態様において、無機結着剤のFe3+に対するFe2+の比が、例えば0.9未満、0.8未満、0.7未満、0.6未満、または0.5未満の如き、1未満であってよい。該方法が、生型鋳型用組成物を形成するためにバインダー組成物に凝集体および水を加えることをさらに含んでよい。本開示のいくつかの態様によると、生型鋳型用組成物が、例えば約22.5N/mから約30.0N/m、または約24.0N/mから約27.5N/mの如き、約21.5N/mから約30.5N/mの範囲の生型圧縮強度(green compression strength)を有してよい。追加的にまたは代替え的に、生型鋳型用組成物が、例えば、約2.6N/mから約3.6N/m、約2.9N/mから約3.5N/m、または約3.1N/mから約3.4N/mの如き、約2.5N/mから約3.7N/mの範囲に生型剪断強度(green shear strength)を有してよい。
【0010】
本開示は物品を造形(molding)する方法をさらに含む。例えば、該方法は、加熱された材料を型に導入することであって、該型は上記または本明細書の他の場所に記載のバインダー組成物および/または生型鋳型用組成物のいずれかを含み、かつ加熱された材料を冷却することを含む。該方法は、加熱された材料を型に導入した後に、例えば0.12mg/g未満、0.10mg/g未満、0.08mg/g未満、0.06mg/g未満、0.05mg/g未満の如き、0.15mg/g未満のBTEXを放出する型をさらに含んでよい。
【0011】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、本開示の様々な例示的な態様を示し、記載とともに、本開示の原理を説明するために役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例2で生型鋳型用組成物から測定されたBTEX放出物のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本開示の特定の態様を、より詳細に記載する。引用することにより本出願の一部をなす用語および/または定義と矛盾する場合には、本明細書に示される用語および定義を優先する。
【0014】
本明細書で使用される場合に、用語「含む("comprises," "comprising,")」、またはこれらの他のいかなる変形語も、非排他的な包括を範囲に含むものと解釈されるため、要素の列挙を含むプロセス、方法、組成物、物品、または装置は、これらの要素だけを含むものではなく、そのようなプロセス、方法、組成物、物品、または装置に表現上列挙されていない他の要素またはそれらに固有の要素も含み得る。用語「例示的」は、「理想的」ではなく「例」の意味で使用される。
【0015】
本明細書で使用される場合に、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈に特段の記載がない限り、複数形の指示対象を含む。用語「ほぼ」および「約」は、参照された数または値とほとんど同じであることを指す。本明細書で使用される場合に、用語「ほぼ」および「約」は、具体的な量または値の±5%を含むと理解されるべきである。
【0016】
本開示の態様は、無機結着剤、例えば粘土鉱物、および炭素質材料を含み、無機結着剤および/または炭素質材料は少なくとも部分的に酸化されている、バインダー組成物、並びにそれらの調製方法および使用方法を含む。例えば、バインダー組成物は、例えば砂の如き、凝集体と組み合わせて生型法に用いられてよい。
【0017】
本開示による組成物は、一または複数の無機結着剤を含んでよい。例示的な結着剤は、これらに限定されるものではないが、例えばベントナイトの如き、天然および合成粘土(clay)が挙げられる。ベントナイトは、主に例えばモンモリロナイトといったスメクタイト鉱物を含むフィロケイ酸塩の粘土である。異なる種類のベントナイトは、一般的に支配的な組成物の元素に因んで、カリウムベントナイト、ナトリウムベントナイト、カルシウムベントナイト、およびアルミニウムベントナイトの様に名付けられる。例えば、組成物(例えば、バインダー組成物)は、ナトリウムベントナイト、カルシウムベントナイト、カリウムベントナイト、リチウムベントナイト、アルミニウムベントナイト、およびこれらの混合物から選ばれる少なくとも一つを含んでよい。ベントナイトはバインダー組成物に可塑性を与えてもよい。いくつかの実施例において、無機結着剤はベントナイトと他の無機結着剤の混合物を含んでよい。
【0018】
無機結着剤は、いかなる地球上の地理的地点または地域で入手されてよい。例えば、本開示の無機結着剤は、米国の西部、中西部、および/または南部の地域(これらに限定されるものではないが、ワイオミング、モンタナ、サウスダコタ、インディアナ、ミシガン、ウィスコンシン、オハイオ、ミシシッピ、およびアラバマが挙げられる)、ギリシャ、ドイツ、トルコ、イタリア、ブルガリア、中国、インド、ロシア、またはブラジル、その他の国および世界中の地理的地域で入手されてよい。地理的に異なる地域の粘土は化学的組成が異なる場合がある。例えば、インドで得られた粘土は米国で得られた粘土に比べて高いレベルで酸化されているかもしれない。
【0019】
本開示のいくつかの態様によると、無機結着剤は、例えば75重量%から100重量%のベントナイトの如き、少なくとも75重量%のベントナイトを含んでよい。例えば、無機結着剤は少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、または少なくとも95重量%のベントナイトを、例えば約85重量%から約95重量%の、または約90重量%から約98重量%のベントナイトを含んでよい。
【0020】
本開示のいくつかの例示的なバインダー組成物において、組成物の総重量に対する無機結着剤の総和は、約75重量%から約88重量%、または約80重量%から約85重量%の如き、約70重量%から約90重量%の範囲であってよい。例えば、バインダー組成物は、バインダー組成物の総重量に対し約75重量%、約80重量%、約83重量%、約85重量%、または約88重量%の無機結着剤を含んでよい。
【0021】
本開示のいくつかの態様によると、無機結着剤は少なくとも部分的に酸化されてよい。例えば、無機結着剤は一または複数の酸化剤、これらに限定されるものではないが、過酸化水素(H)、酸素(O)、オゾン(O)、またはソーダ灰(炭酸ナトリウム)(NaCO)が挙げられる、と組み合わされまたは晒されてよい。いくつかの実施例において、酸化剤は水溶液であってよい。無機結着剤は反応を可能にする適切な方法によって酸化剤と組み合わされてよい。例えば、酸化剤は無機結着剤と、例えば約1:75から約1:15、または約1:50から約1:25の如き、1:100から10:1(酸化剤:無機結着剤)の重量比の範囲で混合されてよい。いくつかの実施例において、酸化剤は無機結着剤と混練され、一定期間、例えば約5分から約48時間、例えば約30分、約1時間、約2時間、約4時間、約8時間、約12時間、約24時間、または約48時間静置されてよい。
【0022】
追加的にまたは代替え的に、無機結着剤は自然酸化のレベル(例えば、ある期間にわたって環境酸化剤(environmental oxidant)に曝されること)に従って選択してよい。例えば、無機結着剤は結合剤を獲得した地理的位置(例えば、天然粘土鉱床)により異なる酸化レベルを有してよい。さらに、表面下の無機結着剤の深さも無機結着剤の酸化度に影響を与えてよい。例えば、表面レベルのまたは表面近くの粘土鉱物は、典型的には、地中深くの粘土鉱物と比較して酸素、オゾン、および/または環境ラジカル(例えば、OH、NOなど)如き、大気中の酸化剤への曝露が多く、より酸化されていることが予想される。
【0023】
無機結着剤は加熱処理を通して、例えば鋳造プロセスの間、酸化を受けてよい。こうして、例えば、鋳造プロセスにより部分的に酸化された無機結着剤は新しいバインダー組成物にリサイクルされてよい。
【0024】
無機結着剤の様々な成分の酸化状態は、その相対的な酸化度を評価するために用いられてよい。例えば、ベントナイトの如き粘土鉱物は典型的には鉄を含み、鉄は異なる酸化状態、具体的にはFe2+(第一鉄)、およびFe3+(第二鉄)で存在してよい。第一鉄と第二鉄の相対的濃度はベントナイトの酸化量、例えば酸化還元状態を評価するために用いることができる。Fe2+のFe3+に対する濃度は無機結着剤の酸可溶性鉄を測定することで決定してよい。
【0025】
(相対的な酸化度を示すものとして)酸可溶性鉄含有量は以下の手順で決定することができる。50mlのネルゲンバイアル(Nelgene vial)中で粘土試料2グラムを50mlの0.5MのHSOと混合する。ベントナイト粒子が沈降した後に、0.25mlに定量した上澄みをピペットで50mlバイアルに入れ、25mlの脱イオン水を加えた。それから、1mlに定量したFerroZine(商標)(3-(2-ピリジル)-5,6-ジフェニル-1,2,4-トリアジン-4’,4”-ジスルホン酸ナトリウム)指示薬を加え、混合する。得られた第一鉄イオン(Fe2+)とFerroZine(商標)との間に形成された着色複合体を分光光度計で測定し、可溶鉄検量線に対して可溶化第一鉄の量を計算する。その後、約200mgのアスコルビン酸を(Fe3+をFeへ還元するために)溶液に加え、粘土の総鉄含有として得られた色を測定した。
【0026】
いくつかの非限定的な実施例において、無機結着剤は約270ppmから約335ppmのFe2+および約525ppmから約700ppmのFe3+(例えば、Fe3+に対するFe2+の比の範囲が約0.4から約0.6)を含んでよい。例えば、無機結着剤は約300ppmから約315ppmのFe2+および約575ppmから約635ppmのFe3+を含んでよい。これらの範囲は単なる例示であり、Fe2+に対してFe3+の量が多いほどより酸化された材料の指標を与える。
【0027】
本開示のいくつかの態様によれば、無機結着剤のFe3+に対するFe2+の比(Fe2+/Fe3+)は、1.0未満、0.9未満、0.8未満、0.7未満、0.6未満、0.5未満の如き、1.2未満であってよい。例えば無機結着剤のFe3+に対するFe2+の比は約0.5から約1.5、約0.75から約1.25、または約0.8から約1.2の範囲であってよい。いくつかの実施例において、無機結着剤のFe3+に対するFe2+の比は約0.5、約0.6、約0.7、約0.8、約0.9、約1.0、または約1.1であってよい。
【0028】
本開示のいくつかの態様において、バインダー組成物は少なくとも一つの炭素質材料を含んでよい。炭素質材料は、無機、有機、それらの混合物であってよい。本明細書の組成物に有用であり得る炭素質材料は、これらに限定されるものではないが、石炭(例えば、亜炭(lignite coal)および石炭粉(sea coal)の如き、瀝青炭(bituminous coal)が挙げられる)、褐炭(lignite)、レオナルダイト、グラファイト、無煙炭、セルロース、およびこれらの組み合わせが挙げられる。少なくとも一つの実施例において、組成物は、石炭、石炭とグラファイトの組み合わせ、石炭と褐炭の組み合わせを含む。
【0029】
本開示のいくつかの態様によると、組成物(例えば、バインダー組成物)中の炭素質材料の総重量は、約0.1重量%から約30重量%の範囲であってよい。例えば、組成物は、組成物の総重量に対して、炭素質材料を約1重量%から約25重量%、約2重量%から約22重量%、約5重量%から約20重量%、約7.5重量%から約17.5重量%、または約10重量%から約15重量%含んでよい。
【0030】
本開示のいくつかの態様において、組成物は、例えば組成物の総重量に対して石炭を、例えば約7.5重量%から約20.0重量%、約8.0重量%から約18.0重量%、約9.0重量%から約15.0重量%、または約10.0重量%から約12.5重量%の如き、約5.0重量%から約25.0重量%の範囲で含んでよい。
【0031】
本開示のいくつかの態様において、炭素質材料は少なくとも部分的に酸化されてよい。例えば、炭素質材料は、一または複数の酸化剤に曝されて(反応させられて)よい。このように、例えば、酸化された炭素質材料の粒子を提供するように、少なくとも炭素質材料の最外表面(例えば、炭素質材料の粒子の表面)が一または複数の酸化剤へ曝露することで処理されてよい。例示的な酸化剤としては、これらに限定されるものではないが、過酸化水素(H)、酸素(O)、オゾン(O)、ソーダ灰(NaCO)が挙げられる。いくつかの実施例において、2またはそれ以上の前記酸化剤を含む酸化剤を組み合わせて用いてよい。少なくとも一の実施例において、炭素質材料は過酸化水素、ソーダ灰、または過酸化水素およびソーダ灰の両方に曝されることで酸化された石炭粒子(coal particles)を含む。少なくとも一の実施例において、炭素質材料は水溶液中で酸化剤に曝されることで酸化された石炭粒子を含む。
【0032】
炭素質材料は適切な方法で酸化されてよい。例えば、酸化剤は炭素質材料と混合されまたは混練され、その結果得られた混合物を一定の期間(例えば、少なくとも5分、15分、30分、1時間、2時間、3時間、6時間、12時間、18時間、24時間、30時間、36時間、42時間、または48時間)静置することができる。いくつかの実施例において、炭素質材料は酸化剤に、例えば少なくとも1日、少なくとも3日、少なくとも5日、少なくとも10日、少なくとも15日の如き、数日にわたって接して配置される。追加的にまたは代替的に、約1日から約12日、約2日から約10日、約3日から約9日、約4日から約8日の如き、数日にわたって酸化剤は炭素質材料に接してよい。
【0033】
酸化剤の量は炭素質材料の重量に対して約0.02重量%から約8重量%、約0.05から約5.0重量%、または約1重量%から約3重量%の如き、約0.01重量%から約10.0重量%の範囲であってよい。例えば、炭素質材料の重量に対する酸化剤の重量の比は、例えば約1:75から約1:15、約1:50から約1:25の如き、約1:100から約1:10の範囲であってよい。
【0034】
本開示のいくつかの態様において、炭素質材料は約0.1重量%から約15重量%の酸化剤を含む溶液で処理されてよい。例えば、溶液は約0.2重量%から約12重量%の、約0.5重量%から約11重量%の、約1重量%から約10重量%の、または約2重量%から約8重量%の酸化剤を含んでよい。少なくとも一つの実施例において、溶液は重量で約3%の過酸化水素を含んでよい。いくつかの実施例において、溶液は例えば約9重量%、約8重量%、約7重量%、約6重量%、約5重量%、約4重量%、約3重量%、約2重量%、または約1重量%の如き、約10重量%未満のソーダ灰を含んでよい。追加的にまたは代替え的に、炭素質材料は複数の酸化剤を含む(例えば、水溶液の如き)溶液で処理されてよい。
【0035】
いくつかの実施例において、炭素質材料は加熱処理により酸化されてよい。例えば、炭素質材料は砂型鋳造の間に酸素に曝され、および高温にされることで部分的に酸化されてもよく、これら酸化された炭素質材料を少なくとも部分的に再利用のために回収されてよい。
【0036】
本明細書の組成物は一または複数の高アスペクト比珪酸塩をさらに含んでよい。粒子のアスペクト比(ρ)は粒子の主軸に沿った長さを幅で除したものと定義してよい。「高アスペクト比珪酸塩」という語は、例えば10から1000の間のアスペクト比の如き、少なくとも10のアスペクト比を有するシリカ鉱物を含む。例えば、本明細書の組成物は約10から約500の、約10から約250の、約10から約200の、約10から約150の、約20から約100の、約20から約80の、約30から約100の、約40から約100の、約40から約80の、または約50から約70の範囲のアスペクト比、例えば約20、約25、約30、約35、約40、約45、約50、約55、約60、約65、約70、約75、約80のアスペクト比を有するケイ酸塩を含んでよい。
【0037】
本明細書の組成物に好適な例示的な高アスペクト比珪酸塩としては、これらに限定されるものではないが、マイカおよびタルクが挙げられる。本明細書の組成物に好適なマイカ鉱物としては、これらに限定されるものではないが、白雲母、パラゴナイト、金雲母、黒雲母、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0038】
本開示によるバインダー組成物は、バインダー組成物の総重量に対して、約0.1重量%から約4.8重量%の、約0.2重量%から約4.5重量%の、約0.5重量%から約4.0重量%の、約0.8重量%から約3.8重量%の、約1.0重量%から約3.5重量%の、約1.2重量%から約3.0重量%の、約1.5重量%から約3.0重量%の、約1.8重量%から約2.8重量%の、または約2.0重量%から約2.5重量%の如き、約0.1重量%から約5.0重量%の高アスペクト比珪酸塩を含んでよい。例えば、バインダー組成物はバインダー組成物の総重量に対して、約0.5重量%、約1.0重量%、約1.2重量%、約1.5重量%、約1.8重量%、約2.0重量%、約2.1重量%、約2.2重量%、約2.3重量%、約2.4重量%、または約2.5重量%の高アスペクト比珪酸塩を含んでよい。
【0039】
上記の様に、本明細書の組成物は、例えば生型鋳型を調製するための凝集体と組み合わせるのに好適なバインダー組成物であってよい。本開示のいくつかの態様において、バインダー組成物は、バインダー組成物の総重量に対して、約70重量%から約90重量%の少なくとも一つの無機結着剤、約0.1重量%から約30重量%の少なくとも一つの炭素質材料、および約0.1重量%から約5.0重量%の少なくとも一つの高アスペクト比珪酸塩を含んでよい。例えば、バインダー組成物は、バインダー組成物の総重量に対して、約75重量%から約85重量%の無機結着剤、約1重量%から約25重量%、約5重量%から約22重量%、または約10重量%から約15重量%の炭素質材料、および約1重量%から約4重量%、または約2重量%から約3重量%の高アスペクト比珪酸塩材料を含んでよい。いくつかの実施例において、無機結着剤はベントナイト、例えばナトリウムベントナイトおよび/またはカルシウムベントナイトを含み、並びに炭素質材料は石炭を含む。いくつかの実施例において、高アスペクト比珪酸塩はマイカを含む。
【0040】
本開示のいくつかの態様において、無機結着剤および炭素質材料の少なくとも一方、または両方は、少なくとも部分的に酸化されてよい。少なくとも一つの実施例で、無機結着剤(または少なくとも2以上の無機結着剤の一つ)および炭素質材料(または少なくとも2以上の炭素質材料の一つ)の両方が酸化されている。無機結着剤および炭素質材料はバインダー組成物を調製するために組み合わせる前に別々に酸化されてもよく、または同時に若しくは実質的に同時に酸化されてよい。
【0041】
少なくとも一つの実施例において、(例えば、一または複数の酸化剤に曝すことで)炭素質材料をまず酸化し、その後酸化された炭素質材料を無機結着剤と組み合わせる。さらなる実施例において、無機結着剤および炭素質材料をまず組み合わせて、それから得られた混合物を、例えば、一または複数の酸化剤に曝すことで酸化する。高アスペクト比珪酸塩は任意に、酸化された炭素材料と無機結着剤が組み合わされる前に、後に、同時に酸化された炭素質材料と組み合わされてよい。
【0042】
本明細書のバインダー組成物の揮発性有機化合物および/または水の量はVOCおよび強熱減量(LOI)試験を経て測定されてよい。VOCおよびLOI測定は、AFS標準および試験手順(AFS Mold and Core Test Handbook)に従って実施されてよい。VOCは900°F(482°C)の温度で気化する組成物中の原料の量の測定を指す。LOI値は高温で加熱すること(材料の「高度の加熱」)、特に鋳造中の温度、例えばAFS5100-00-00-Sに従えば982°C(~1800°F)で加熱する前および後の材料の重量の差を指す。LOI値は、鋳造中に存在する温度に加熱すると分解する生型鋳型用組成物中の可燃性物質、例えば有機化合物の量を示す。
【0043】
いくつかの実施例において、バインダー組成物は、例えば約13.5重量%から約18重量%、約14重量%から約17.5重量%、または約14.5重量%から約17重量%の如き、約13.0重量%から約18.5重量%の範囲のVOC含有量を有してよい。追加的にまたは代替え的に、本明細書のバインダー組成物は、例えば約23%、約24%、約25%、または約26%の如き、約22%から約27%の範囲のLOI値を示してよい。
【0044】
本明細書のバインダー組成物は、生型鋳型用組成物を製造するために少なくとも一つの凝集体と水と組み合わされてよい。本明細書で用いられる「凝集体」という語は、例えばそれぞれが同じまたは実質的に同じ組成物を含む粒子である均質な材料、並びに例えば単一の粒子に凝集した異なる組成物の材料を含む不均質な粒子または複合粒子を含む。本明細書の組成物に好適な凝集体は、例えば天然および合成の砂、および砂複合材料(sand composite materials)が挙げられる。本明細書の組成物に用いてよい凝集体の例としては、これらに限定されるものではないが、珪砂(SiO2)、クロマイト砂(FeCr2O4)、およびジルコン砂(ZrSiO4)が挙げられ、それらのいずれもが任意にマグネシウム、アルミニウム、マンガン、および/または炭素(例えば、グラファイト)の如き、他の元素を含んでよい。他のタイプの砂および他の凝集体も同様に企図され、本明細書の原理から逸脱することなく、本明細書の組成物で使用してよい。
【0045】
本開示のいくつかの態様において、生型鋳型用組成物は、組成物の総重量に対して約72重量%から約88重量%、約74重量%から約84重量%、または約76重量%から約82重量%の如き、組成物の総重量に対して少なくとも75重量%、少なくとも80重量%、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%の如き、約70重量%から約90重量%の少なくとも一つの凝集体の如き、生型鋳型用組成物の総重量に対して少なくとも70重量%の少なくとも一つの凝集体を含んでよい。
【0046】
生砂(green sand)は生型鋳型用組成物の総重量に対して約2.75重量%から約6.25重量%の範囲の水分含有量を提供する水をさらに含んでよい。例えば、生型鋳型用組成物は、生型鋳型用組成物の総重量に対して約2.94重量%から約5.08重量%、約3.13重量%から約5.43重量%、約4.19重量%から約5.08重量%、約4.33重量%から約5.94重量%の水分含有量を有してよい。生型鋳型用組成物が鋳造手順で処理される前に、組成物の水分含有量は約2.94重量%から約3.16重量%、約重量%から約重量%、または約重量%から約重量%の範囲であってよい。例えば、生型鋳型用組成物の総重量に対して2.90重量%、2.92重量%、2.94重量%、2.96重量%、2.98重量%、3.00重量%、3.02重量%、3.04重量%、3.06重量%、3.08重量%、3.10重量%、3.12重量%、または3.14重量%。
【0047】
(例えば、無機結着剤および炭素質材料を含む)本開示のバインダー組成物から調製される生型鋳型用組成物は、生型鋳型用組成物の総重量に対して約5%から約20%、約8重量%から約16重量%、または約10重量%から約15重量%のバインダー組成物を含んでよい。例えば、生型鋳型用組成物は、約70重量%から約90重量%の少なくとも一つの凝集体、約5%から約20%の(例えば、無機結着剤および炭素質材料を含む)バインダー組成物、および約2.75重量%から約6.25重量%の水分(water moisture)を含んでよい。
【0048】
生型鋳型用組成物の性能は、生型鋳型用組成物の一連の特性に従って分析されてよい。例えば、生型鋳型は数ある特性の中でもVOC、LOI、水分含有量、コンパクタビリティ、透過性、湿潤引張強度、生型剪断強度、メチレンブルー取り込み、および/またはAFS粘土含有量といった測定を用いて、特性づけられまたは評価されてよい。これらの測定は典型的にはAFS標準および試験手順(AFS Mold and Core Test Handbook)に従い行われる。
【0049】
一般的に生型鋳型用組成物の試験は直径50.8mm(2インチ)および高さ50.8mm(2インチ)のシリンダー形状の試験片(つまり、2インチ×2インチの円筒形サンプル)、または直径50mmおよび高さ50mmのシリンダー形状の試験片で行う。本明細書のバインダー組成物から調製された生型鋳型用組成物は上記のVOCおよびLOI測定により試験されてよい。本開示による生型鋳型用組成物は、約2.0重量%から約2.2重量%の如き、約1.8重量%から約2.4重量%の範囲のVOC含有量を有してよい。本明細書の生型鋳型用組成物のLOIレベルは約3.5重量%から約4.5重量%、約3.7重量%から約4.2重量%、または約3.8重量%から約4.0重量%の範囲であってよい。
【0050】
生型圧縮強度とは、圧縮荷重でサンプルを破壊させるために必要な圧力を指す。本開示による生型鋳型用組成物は、約21.0N/cmから約32.0N/cm、約21.5N/cmから約31.0N/cm、約22.0N/cmから約30.5N/cm、約22.5N/cmから約30.0N/cm、または約24.0N/cmから約27.5N/cmの如き、約20.0N/cmから約35.0N/cmの範囲の生型圧縮強度を有してよい。
【0051】
生型剪断強度とは、剪断荷重下、例えば横方向の力、でサンプルを破壊させるために必要な応力を指す。本開示による生型鋳型用組成物は、約2.6N/cmから約3.8N/cm、約2.7N/cmから約3.6N/cm、約2.9N/cmから約3.5N/cm、約3.1N/cmから約3.4N/cmの如き、約2.4N/cmから約4.0N/cmの範囲の生型剪断強度を有してよい。
【0052】
湿潤引張強度は、砂型の痂皮形成、または鋳造物の望まない突起若しくは粗さの形成を妨げる能力決定するために有用な基準である。鋳造中に、溶融した金属に隣接する砂からの水が戻され、乾いた砂と湿った砂との間に濃縮ゾーンが生成される。この層中の砂の強度が湿潤引張強度と考えられる。湿潤引張値が高いほど、痂皮となる傾向が小さくなる。本開示による生型鋳型用組成物は、室温(~25℃)で約0.302N/cmから約0.432N/cm、約0.308N/cmから約0.400N/cm、約0.333N/cmから約0.395N/cm、または約0.340N/cmから約0.386N/cmの如き、約0.300N/cmから約0.510N/cmの範囲の湿潤引張強度を有してよい。
【0053】
コンパクタビリティ(「圧縮性」とも称する。)は圧縮時の生砂の体積の変化を評価する。コンパクタビリティは、サンプルに約140psiの圧力を3秒与えた後のサンプルの高さの減少率(percentage)として測定される。本開示による生型鋳型用組成物は、約44.0%から約47.0%の、約44.5%から約46.5%の、または約45.0%から約46.0%の如き、約43.5%から約47.5%の範囲のコンパクタビリティを有してよい。
【0054】
メチレンブルー(mL)試験は、生型鋳型用組成物中に残っている水を吸収する能力を有する無機結合材料、例えば粘土、の量の測定である。水を吸収する無機結合材料の能力は、生型鋳型用組成物から調製された型の強さに影響を与える。本開示による例示的なバインダー組成物は、約49mLから約63mL、約51mLから約61mL、約53mLから約59mL、または約53mLから約57mLの如き、約47mLから約65mLの範囲のメチレンブルーレベルを有する。
【0055】
AFS粘土含有量試験は、生型鋳型用組成物中の細粒土と吸水材料の量を示す。試験は、典型的には水による撹拌洗浄と苛性ソーダによる希釈を繰り返すことで、50gの生砂試料中の粘土の量を測定する。試料の最初の重量と試料の最終乾燥重量との差を2倍したものがAFS粘土含有量である。本開示による例示的なバインダー組成物は約9.0%から約11.5%、約9.4%から約11%、約9.6%から約10.8%、約9.8%から約10.5%、約10.0%から約10.3%のAFS粘土含有量測定範囲を有する。
【0056】
材料の鋳造により様々な放出物、例えば、VOCを含むガスや粒子が放出される。これらの放出物のほとんどが、鋳造プロセスの注入、冷却、および振とう(shake out)段階で放出される。鋳造プロセスからの典型的な放出物は、これらに限定されるものではないが、水蒸気、CO、CO、CH、およびBTEX(ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、およびキシレン)ガスが挙げられる。これら放出物は、生型鋳型用組成物を調製するために用いたバインダー組成物(例えば、例示的に無機結着剤、炭素質材料、および任意に高アスペクト比珪酸塩を含むバインダー組成物)の質量に対する放出された化合物の質量を測定してよい。
【0057】
いくつかの実施例において、本明細書の生型鋳型用組成物のBTEXの放出レベルは、0.12mg未満、0.10mg未満、0.08mg未満、0.06mg未満、0.05mg未満の如き、0.15mg未満の生型鋳型用組成物の調製に用いたバインダー組成物のグラム当たりのBTEXの生成であってよい。例えば、BTEX放出物のレベルは、例えば約0.02mg/gから約0.09mg/g、約0.03mg/gから約0.07mg/g、または約0.02mg/gから約0.06mg/gの如き、約0.01mg/gから約0.10mg/gのバインダー組成物のグラム当たりのBTEXの生成重量(グラム)であってよい。
【0058】
本明細書の生型鋳型用組成物のCOの放出は生型鋳型用組成物の調製に用いたバインダー組成物のグラム当たり約7.2mg未満であってよい。例えば、生型鋳型用組成物は、生型鋳型用組成物の調製に用いたバインダー組成物のグラム当たり3.13mgから約7.20mgの間、約3.29mgから約6.99mg放出してよい。
【0059】
本開示の追加的なまたは代替的な態様において、本明細書の生型鋳型用組成物のCOの放出は、生型鋳型の調製に用いたバインダー組成物のグラム当たり2.15mg/g未満、2.00mg/g未満、1.90mg/g未満、1.80mg/g未満、1.75mg/g未満の如き、約2.18mg/g未満であってよい。例えば、CO放出レベルは約1.65mg/gから約2.20mg/g、約1.84mg/gから約2.15mg/gであってよい。
【0060】
追加的にまたは代替え的に、本明細書の生型鋳型用組成物のメタン(CH)の放出は、生型鋳型用組成物の調製に用いたバインダー組成物のグラム当たり0.5mg未満であってよい。例えば、CH放出のレベルは、約0.18mg/gから約0.24mg/g、約0.19mg/gから約0.21mg/gであってよい。
【0061】
本開示の態様は、以下の例示的な実施形態を開示する非限定的な番号を付された段落を参照してさらに説明される。
【0062】
1.炭素質材料、無機結着剤、および高アスペクト比珪酸塩を含むバインダー組成物であって、前記炭素質材料または前記無機結着剤の少なくとも一方が酸化されているバインダー組成物。
【0063】
2.炭素質材料および無機結着剤を含むバインダー組成物であって、前記無機結着剤のFe3+に対するFe2+の比が1.2未満となるように前記無機結着剤が酸化されているバインダー組成物。
【0064】
3.酸化された炭素質材料および無機結着剤を含むバインダー組成物であって、前記酸化された炭素質材料が酸化剤による処理により調製されるバインダー組成物。
【0065】
4.前記酸化剤がソーダ灰、過酸化水素、オゾン、またはこれらの組み合わせを含む、段落3に記載の組成物。
【0066】
5.前記無機結着剤のFe2+/Fe3+の比が1未満である段落1~4のいずれか1つに記載の組成物。
【0067】
6.前記無機結着剤がナトリウムベントナイト、カルシウムベントナイト、またはこれらの混合物を含む段落1~5のいずれか1つに記載の組成物。
【0068】
7.前記無機結着剤を約70重量%から約90重量%含む段落1~6のいずれか1つに記載の組成物。
【0069】
8.前記炭素質材料または前記酸化された炭素質材料が酸化炭(例えば、酸化亜炭(oxidized lignite coal)、酸化瀝青炭(oxidized bituminous coal)、または酸化石炭粉(oxidized sea coal))、酸化褐炭(oxidized lignite)、酸化レオナルダイト(oxidized leonardite)、酸化グラファイト、酸化無煙炭(oxidized anthracite)、酸化セルロース、またはこれらの組み合わせを含む段落1~7のいずれか1つに記載の組成物。
【0070】
9.約0.1重量%から約20.0重量%の前記炭素質材料または前記酸化された炭素質材料を含む段落1~8のいずれか1つに記載の組成物。
【0071】
10.さらに高アスペクト比珪酸塩を含む段落2~9のいずれか1つに記載の組成物。
【0072】
11.高アスペクト比珪酸塩がマイカまたはタルクを含む段落1~10のいずれか1つに記載の組成物。
【0073】
12.約0.1重量%から約5.0重量%の高アスペクト比珪酸塩を含む段落1、10、または11のいずれか1つに記載の組成物。
【0074】
13.高アスペクト比珪酸塩が白雲母(muscovite)、パラゴナイト(paragonite)、リシア雲母(lepidolite)、金雲母(phlogopite)、黒雲母(biotite)、またはこれらの組み合わせを含む段落1または10~12に記載の組成物。
【0075】
14.段落1~13のいずれか1つに記載のバインダー組成物および凝集体を含む生型鋳型用組成物。
【0076】
15.凝集体が珪砂、ジルコン砂、アルミノ珪酸塩、またはこれらの混合物を含む段落14に記載の生型鋳型用組成物。
【0077】
16.鋳物用組成物を調製する方法であって、任意に炭素質材料を酸化すること、および酸化された炭素質材料と無機結着剤とを組み合わせることにより段落1~13のいずれか1つに記載のバインダー組成物を調製することを含む方法。
【0078】
17.前記炭素質材料の酸化が前記炭素材料を酸化剤で処理することを含む段落16に記載の方法。
【0079】
18.前記酸化剤がソーダ灰、過酸化水素、オゾン、またはこれらの組み合わせを含む、段落17に記載の方法。
【0080】
19.前記酸化された炭素質材料と無機結着剤を組み合わせる前に、後に、または同時に、前記酸化された炭素質材料と高アスペクト比珪酸塩を組み合わせることをさらに含む段落16~18のいずれか1つに記載の方法。
【0081】
20.前記無機結着剤のFe3+に対するFe2+の比が1.2未満または1未満である段落16~19のいずれか1つに記載の方法。
【0082】
21.生型鋳型用組成物を形成するために前記バインダー組成物に凝集体と水とを加えることをさらに含み、任意に、前記生型鋳型用組成物が約21.5N/mから約30.5N/mの範囲に生型圧縮強度(green compression strength)を有する段落16~20のいずれか1つに記載の方法。
【0083】
22.前記生型鋳型用組成物が約2.5N/mから約3.7N/mの範囲に生型剪断強度(green shear strength)を有する段落21に記載の方法。
【0084】
23.物品を造形する方法であって、前記方法が加熱された材料を型に導入することであって、前記型が炭素質材料、無機結着剤、アスペクト比珪酸塩、水、および凝集体の混合物を含み、前記炭素質材料または前記無機結着剤の少なくとも一方が酸化され、並びに前記加熱された材料を冷却することを含む方法。
【0085】
24.前記加熱された材料を型に導入した後に前記型が0.10mg/g未満のBTEXを放出する段落23に記載の方法。
【0086】
25.炭素質材料が酸化炭を含む段落23または24に記載の方法。
【0087】
26.高アスペクト比珪酸塩がマイカまたはタルクを含む段落23~25のいずれか1つに記載の方法。
【0088】
27.鋳造の間の放出物の低減のための段落1~13のいずれか1つに記載のバインダー組成物および/または段落14または15に記載の生型鋳型用組成物の使用。
【0089】
前記放出物がBTEXを含む段落27に記載の使用。
【0090】
本開示の他の態様および実施形態は、本明細書に開示される実施形態の仕様および実施を考慮すると当業者には明らかであろう。
【実施例
【0091】
以下の実施例は本開示を当然限定することなく例示されるに過ぎない。本開示は、上記記載と以下の実施例と一致する追加の態様および実施形態を包含することが理解されよう。
【0092】
実施例1
【0093】
鋳造の間の放出物に対する酸化の効果を研究するために、4種類のバインダー組成物が調製された。それぞれのバインダー組成物は、重量基準で80%のベントナイトと20%の石炭を含んでいた。組成物1および4は、天然のナトリウムベントナイト(BPM National Standardの市販品)より調製された。組成物2および3は組成物1および4で用いたベントナイトよりも高度に酸化されたベントナイトを用いて調製した。組成物1および2は市販の石炭を用いて調製された。組成物3および4は酸化炭を用いて調製された、ここで組成物4の3つの異なるバリエーションが調製された。具体的には、酸化炭は25ポンドの組成物1および2で用いた市販の石炭と同じタイプの石炭および3つの酸化剤溶液:10%ソーダ灰溶液、3%過酸化水素溶液、または室温の水の1つから調製された。それぞれの場合において、石炭は酸化剤溶液の中に置き10日間そのままにし、その後酸化炭は水で洗浄された。その後、酸化炭を水分含有量が3%未満になるまでオーブン中で225°Fで乾燥した。下記表1に組成物1~4をまとめた。
【0094】
実施例2
【0095】
生型鋳型特性および砂型鋳造中の放出物を測定するための対応する生型鋳型用組成物1~4を調製するために組成物1~4のそれぞれを砂および水と組み合わせた。それぞれの生型鋳型用組成物は、生型鋳型用組成物の総重量に対して9重量%のベントナイトおよび生型鋳型用組成物の総重量に対して1.8重量%の石炭を組み合わせることで調製された。その後42~48%のコンパクタビリティを達成するために水を加えた。AFS標準および試験手順(AFS Mold and Core Test Handbook)に従って鋳造する前に生型鋳型特性(生型圧縮強度、生型剪断強度、湿潤引張強度、透過性、メチレンブルー、およびAFSクレイ)を測定した。
【0096】
試験鋳造のために、試験用型が生型鋳型用組成物1~4のそれぞれから作成され、溶融した金属が型に流し込まれた。冷却後、金属が取り除かれ、生型鋳型は次の試験鋳造に再利用された。それぞれの生型鋳型用組成物は4回の試験鋳造サイクルで加熱され、それぞれの生型鋳型用組成物の生型鋳型特性が、各加熱サイクル後に同じAFS標準および試験手順に従って測定された。データを表2~表5に示す。



【0097】
表2~5に示すように、組成物1~4は同様の湿潤引張強度を示した。組成物3および4は改善した生型圧縮強度を示した。組成物1および2は改善した生型剪断強度を示した。これらの結果は、酸化された粘土(clay)および/または酸化炭の使用は、同等のまたは改善した生型鋳型特性をもたらすことを示唆する。
【0098】
4回の加熱サイクル後、生型鋳型用組成物1~4のそれぞれの約5~10gの部分を組成物の水分含有量を十分に減らすために急速乾燥機(speed drier)で乾燥した。それから、それぞれ1gに秤量した2つのサンプルをそれぞれの乾燥した砂組成物について、CO、CO、CH、HOおよびBTEXの放出を測定するために試験した。それぞれのサンプルを石英ガラスのるつぼに置き、管状炉(Ansyco)に連結したガラス棒(glass rod)に挿入した。管状炉およびガラス棒は窒素で充填されていた。サンプルが管状炉に挿入される前に、制御測定値を記録するために炉から放出されるガスの初期測定が行われた、すなわち、サンプルを加えることに先立ち、管状炉に存在する放出ガスの量が測定された。制御測定値は、テストされた最初のサンプルに対してのみ、または管状炉の機能をテストするために必要に応じて記録された。制御測定値は、最大5分の期間にわたって記録された。その後、サンプルがガラス棒を完全に通過するまでサンプルが入ったガラスのるつぼを管状炉に導いた。フーリエ変換赤外線分光法(FT-IR Gasmet Analyzer)を使用して、各サンプルが放出するガスの量に応じて、4~7分の間の範囲の期間をかけて、各サンプルのBTEX、CO、およびCHの排出量を測定する間、管状炉は約900°Cの温度に維持された。管状炉に連結されたサンプルから放出されたガスの量を曲線で示すモニターによりサンプルから放出されたガスの量が観察された。放出されたガスの測定は全てのカーブがゼロに向かうまで、その時点でサンプルからさらなるガスが放出されなくなるまで、行われた。測定期間中に放出された各ガスの量を決定するために各放出ガス曲線の下の面積を計算した。それぞれのサンプルのガス放出量の測定後、ガラスるつぼとサンプルをオーブンから取り除き、冷却するために室温で放置した。一旦冷却し、サンプルの残りの重量を測定した。
【0099】
それぞれの組成物の2つのサンプルの放出データを平均し、相当する生型鋳型用組成物を調製するために用いるバインダー組成物のグラム当たりの特定のガスの放出物の質量を決定した(mg/g)。CO、CO、CH、水(水蒸気)、およびBTEXの放出量を表6に示す。
【0100】
それぞれのバインダー組成物のBTEX放出量を図1に示す。図1に示すように、酸化炭を含む生型鋳型用組成物(組成物3および4)は、市販の酸化されていない石炭を含む生型鋳型用組成物(組成物1および2)と比較して少ない量のBTEXを放出した。さらに、酸化ベントナイトを含む組成物(組成物2および4)は、酸化プロセスを経ていないベントナイトを含む生型鋳型用組成物よりも少ないBTEXの放出を示した。これら結果は、バインダー組成物に酸化された材料を用いることで、鋳造中に生成されるある種の放出物、例えばBTEX、の量が低減することを示唆する。
【0101】
本明細書およびその実施例は、例示的なものであるとみなされるにすぎず、本開示の真の範囲および趣旨は、添付の特許請求の範囲によって示される。
図1