(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】回転機械の動作状態を検出する方法
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20231002BHJP
F04D 29/046 20060101ALI20231002BHJP
F04D 29/056 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
G01M99/00 A
F04D29/046
F04D29/056
(21)【出願番号】P 2021510891
(86)(22)【出願日】2019-08-28
(86)【国際出願番号】 EP2019072955
(87)【国際公開番号】W WO2020043772
(87)【国際公開日】2020-03-05
【審査請求日】2022-07-15
(31)【優先権主張番号】102018214533.4
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102019006038.5
(32)【優先日】2019-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591040649
【氏名又は名称】カーエスベー ソシエタス ヨーロピア ウント コンパニー コマンディート ゲゼルシャフト アウフ アクチェン
【氏名又は名称原語表記】KSB SE & Co. KGaA
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】マデス,ヨッヘン
(72)【発明者】
【氏名】ボスバッハ,フランツ
(72)【発明者】
【氏名】クランケ,トビアス
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-043537(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01703137(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00-13/045
99/00
F04D 1/00-13/16
17/00-19/02
21/00-25/16
29/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機械要素の少なくとも1つのベアリング領域において温度変化を検出する少なくとも1つの第1の温度センサを有する回転機械
の動作状態を検出する方法であって、
評価ユニットが、センサによって求められる、温度変化率のための温度プロファイルを検査
する方法において、
前記評価ユニットは、求められた温度変化率の特性に基づいて前記
回転機械の回転運動のスイッチオンプロセスおよび/またはスイッチオフプロセスを識別することを特徴とする、方法。
【請求項2】
ベアリング支持部の温度が、前記少なくとも1つの第1の温度センサによって測定され、前記第1の温度センサは
、前記ベアリング支持部に接して、
または前記ベアリング支持部の外部からアクセス可能な地点に取り付けられることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記評価ユニットは、
考慮対象の前記
温度変化率が少なくとも1つの最小値を越えているかまたは少なくとも1つの
最小範囲
外にあるときに、前記
回転機械の前記回転運動のスイッチオンプロセスおよび/またはスイッチオフプロセスが行われたと結論付けることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの最小値または最小範囲は、最初に定められるか、または、前記
回転機械が動作している間に実行される前記評価ユニットの最適化プロセスによって、前記
回転機械のサイズ
または熱伝導機械体積に応じて動的に定められることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記評価ユニットは、考慮対象の前記
温度変化率によって引き起こされる
前記温度変化率の符号および/または最大温度変化、および/または持続した最大温度変化の継続時間を評価することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記評価ユニットは、前記最大温度変化の大きさに基づいて前記
回転機械の負荷変動および/または摩耗現象を識別することを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記求められた温度プロファイルは、前記第1の温度センサの測定値と少なくとも1つの更なる温度センサの測定値との間の温度差のプロファイルに対応することを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの更なる温度センサは、前記
回転機械の周囲温度および/または前記
回転機械を通って流れる媒体の温度を検出することを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記評価ユニットは
、タイマと連動して、前記
回転機械の起こり得る動作時間および/または停止時間を求めるために、前記識別されたスイッチングプロセスをカウントすることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記評価ユニットは、最小温度変化および/または最小変化率が識別されると直ちに、少なくとも前記第1の温度センサの測定頻度を動的に調整
するか、または前記測定頻度を増加させることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の方法を実行する少なくとも1つの評価ユニットを有する回転機械。
【請求項12】
少なくとも1つの温度センサを有する回転機械と、前記少なくとも1つの温度センサに通信可能に接続されるとともに請求項1~10のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成される外部評価ユニットとからなるシステム。
【請求項13】
少なくとも1つの回転機械上に取り付けられる温度センサ
であって、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法を実行するように構成される一体型評価
ユニットを有する、温度センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械要素の少なくとも1つのベアリング領域内のまたはこの領域における温度変化を検出する第1の温度センサを有する回転機械、特に遠心ポンプの動作状態を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機械の監視および保守のために、起動された回転要素の動作時間やスイッチオンおよびスイッチオフのサイクルに関する情報を提供できることが望ましい。これらの情報に基づいて、機械または個々の構成要素の現在の耐久性および残りの耐用寿命を推定することができる。最も簡単な方法は、機械が動作中に対応する情報自体を収集し、その情報を外部からの取り出しのために利用できる状態にしておくことである。
【0003】
しかしながら、実際には、動作時間またはスイッチオンプロセスおよびスイッチオフプロセスを直接検出するために必要なセンサは、コストがかかるなどの理由によって、または、対応する測定箇所におけるセンサの侵入的な導入が常に簡単であるとは限らないことから、常に利用可能であるとは限らない。ここでの一例は、密閉されたポンプまたはウェットランニングポンプである。そのような特殊な場合については、測定される機械振動によって動作時間および停止時間を検出することが既に知られている。機械の上記領域内の振動信号はそれによって評価される。しかしながら、そのような評価は、あらゆる機械に適切であるとは限らない。なぜならば、機械を使用する現場および機械のタイプに応じて、測定可能な振動は、環境による影響を大きく受けることもあるし、測定可能な振動が非常に小さいために、漠然とした推定値しか得られないこともあるからである。
【0004】
振動測定に代わるものとして、測定される機械温度を現在の動作状態のインジケータとして使用することが、従来技術において既に提案されている。しかしながら、これまでの実施態様は、質の観点で要求をまだ満たしておらず、したがって、改良の必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本出願の目的は、動作状態の改善された評価を行うことができるようにするとともに、必要に応じて、この評価から更なる発見を得ることができるように、上記の最後に挙げた解決策を最適化することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に記載の特徴による方法によって達成される。有利な実施の形態は、従属請求項によって提供される。
【0007】
本発明によれば、回転機械の動作状態を検出する方法が提案される。回転機械は、少なくとも1つの機械要素が、例えば、任意の回転駆動体と同様に、他の機械構成要素に対して回転軸の回りを回転する任意の機械であると理解される。回転構成要素は、本明細書では、少なくとも1つのベアリングを介して他の機械構成要素に回転可能に取り付けられる。1つ以上のベアリングを介してポンプケーシング内またはポンプケーシング上に回転可能に取り付けられる回転ポンプシャフトを備えるポンプ、特に遠心ポンプにおける本方法の使用が特に好ましい。ただし、本発明は、特定のタイプの機械に決して限定されるものではなく、逆に、本発明による基本的なアイデアは、機械のタイプを問わず適用可能である。
【0008】
本発明の本質的な態様は、回転要素の回転によって引き起こされる機械の動作中の温度変化、すなわち、ベアリング摩擦およびガスケットにおける摩擦の結果、並びに搬送される媒体および/または環境の影響の結果である温度変化を検出することができる第1の温度センサが使用されることにある。本発明によれば、ベアリングの領域、すなわちベアリングの空間近傍、特にベアリングに近い表面における温度変化を検出することが提供される。したがって、記録された温度信号、すなわちセンサによって測定された温度、に基づいて、機械の動作によって引き起こされる温度変化を、周囲条件を考慮して検出することが可能である。温度センサは、通常、現在の温度を繰り返し測定し、評価ユニットに利用可能にする。個々の測定から、温度プロファイルが得られる。本発明によれば、評価ユニットは、もはや単純な温度値のみを考慮するのではなく、代わりに、記録された温度プロファイルの変化率評価が行われる。具体的には、任意の温度上昇または温度低下の特性が考慮される。次に、具体的な特性に基づいて、機械のスイッチオンプロセスまたはスイッチオフプロセスを識別することができる。もちろん、評価ユニットのロジックの幾つかの部分が温度センサによっても直接実行されることも考えられ、それによって、例えば、温度センサは、任意の温度変化を直接検出し、それらの温度変化を評価ユニットに出力する。もちろん、評価ユニットを温度センサ内に完全に統合することも可能である。
【0009】
本発明によるアイデアは、少なくとも1つのベアリングの領域内の温度が機械状態に応じて変化するという本発明者らの観察に基づいている。ベアリング領域内のまたはベアリング領域における可能な温度は、もちろん、動作時間に依存し、機械負荷にも依存する。しかしながら、本発明者らによる詳細な調査は、スイッチオンプロセスまたはスイッチオフプロセスの時点における短時間の比較的急速な温度変化が存在し得ることを示していた。測定プロファイルの変化率を考慮することによって、そのような現象を識別することができ、対応するスイッチオンプロセスまたはスイッチオフプロセスを検出することができる。
【0010】
比較的大きな変化率を有するそのような温度変化は、一般に、通常の連続動作中には発生しない。すなわち、実際には連続動作中および負荷変動中に通例である温度変動は、比較可能な変化率をもたらさない。この背景の下、変化率の考慮に基づいて、機械の現在の動作状態の信頼できる検出を達成することが可能である。
【0011】
本方法によれば、温度は、定められた測定頻度または特定の測定間隔で連続的または不連続的に検出される。この温度から導出される温度プロファイルに対して、変化率が考慮され、焦点は、特に、非常に短い時間内に顕著な温度変化を示す変化率にある。すなわち、この変化率は、定められた最小変化率、すなわち単位時間当たりの最小温度変化を越えている。
【0012】
好ましくは、評価ユニットは、考慮中の変化率が最小値を越えているかまたは定められた値範囲内にあるときは、機械の回転運動のスイッチオンプロセスおよび/またはスイッチオフプロセスが行われたと結論付ける。これは、スイッチオンプロセスまたはスイッチオフプロセスによって引き起こされる温度変化が、負荷によって誘発される温度変化または動作によって誘発される温度変化よりも大きな変化率を有する前述の発見に対応する。ここで、複数の最小値(閾値)または値範囲を定めることも考えられる。例えば、低側最小値を越えているときは、スイッチングプロセスが識別され、高側閾値は、スイッチオンプロセスとスイッチオフプロセスとを区別することを可能にする。すなわち、考慮中の変化率が上側閾値も越えている場合には、例えば、スイッチオフプロセスが行われたと結論付けられる。
【0013】
技術的には、この現象は、回転運動がオフにスイッチングされた後、機械の動作によって誘発される加熱が、回転運動中に引き起こされる空気塊の流れによって冷却されず、それによって、温度は当初上昇し、機械が停止するので、或る遅延のみを伴ってより低い温度、例えば周囲温度に低下することによって説明することができる。同様の挙動は、スイッチオンプロセスの場合にも観測することができる。ここで、機械は、通常は、当初環境の温度レベルにある。機械の回転が起動されると、空気塊が移動するために冷却効果が発生し、これによって、ベアリング領域内の温度の短時間の低下がもたらされ、この低下は、特にベアリング支持部の表面において明瞭に現れる。温度レベルは、動作時間が増加するときにのみ、通常のベアリング摩擦の結果として再度上昇する。スイッチングプロセス中の上述した現象の効果は、回転機械内にファンを追加して設置した場合に更に高めることができる。このファンは、回転運動中に任意の機械構成要素を冷却するより多くの空気塊の流れを提供するが、停止時間中はオフにスイッチングされる。
【0014】
好ましい実施の形態によれば、ベアリング支持部、特にベアリング支持部の表面における温度が、第1の温度センサによって検出される。このために、このセンサは、ベアリングの領域内またはベアリング支持部上に直接取り付けることができる。ベアリング支持部上に外側から取り付けることは、機械構造物内への侵入介入が必要でないという利点を有し、これは、密閉された遠心ポンプの場合に特に重要である。一方、動作によって誘発される温度変化、すなわち、ベアリング摩擦、ガスケットにおける摩擦または搬送される媒体による摩擦によって引き起こされる温度変化、を確実に検出することができることが、温度センサの位置決めにとって重要である。他方、ベアリング内にセンサを直接組み込むことによってベアリング内で温度を直接検出することは不利であることが分かっている。小さく、したがって、費用集約的なセンサの複雑な組み込みが付随していることに加えて、動作条件および/または周囲条件の変化に起因する温度変化をベアリング内において十分な精度で検出することができない。本発明による、ベアリングの近くにおける非侵入型の測定箇所の利点は、この測定箇所が簡単かつ安価に実現することができるということである。更なる利点は、接続および接続解除等の動作条件が変化した場合に生じる温度変化の影響が、外側、特にベアリング支持部表面に、ベアリング自体よりも顕著に発生するという発見から得られる。理想的には、温度は、外側からアクセス可能なベアリング支持部の或る箇所、特にベアリング支持部の表面において検出される。
【0015】
変化率、特に、変化率がスイッチオンプロセスを特徴付けるのかまたはスイッチオフプロセスを特徴付けるのかを評価する少なくとも1つの最小値、または少なくとも1つの定められた範囲は、もちろん、機械に応じて定めなければならない。重要な影響因子は、機械のサイズ、または機械の体積における熱伝導材料の比率である。なぜならば、熱伝導率が高いほど、熱をよりよく放散することができ、温度変化をよりよく補償することができるからである。環境の影響も任意選択で考慮されるべきである。対応する最小値または最小範囲は、したがって、熱伝導性の機械の体積および機械の特定の幾何形状および/または機械の周囲条件に応じて定められ、限界値は、サイズ/伝導率が増加すると低くなる。1つ以上の最小値または範囲を最適化するために評価ユニットによって実行されるプロセスとして、ここでは、適応学習プロセスが考えられる。
【0016】
しかしながら、温度プロファイルを考慮するとき、変化率が機械状態についての情報を提供することができるだけでなく、評価ユニットは、変化率の符号と、考慮中の変化率の最大温度変化の大きさ、すなわち、変化率から得られる温度差とを同様に考慮することができる。最大温度変化の大きさおよび変化率の符号は、異なるスイッチングプロセスを区別することができるインジケータ、すなわち、機械がオンにスイッチングされたのかまたはオフにスイッチングされたのかを、以前の機械状態の知識とは無関係に、変化率に基づいて直接判断することができるインジケータとしての機能を果たすことができる。上記で説明したように、スイッチオンプロセスの変化率は、短期の温度低下によって当初負の符号を有することができる一方、スイッチオフプロセスの変化率は、当初正の符号を有する。変化率値自体、すなわち、検出された変化率値の高さも、スイッチオンプロセスとスイッチオフプロセスとを区別するために考慮することができる。なぜならば、本発明者らによって実験によって求められたように、スイッチオフプロセスは、スイッチオンプロセスよりも高い変化率値を示すからである。
【0017】
上記で既述したように、スイッチングサイクルによって引き起こされる非常に短い時間内の急速な温度変化に続いて、逆方向の別の温度変化が起こるので、持続した最大温度変化の継続時間も、同様の役割を果たすことができる。この挙動、すなわち、最大温度変化のピーク継続時間、を考慮することによって、スイッチングサイクルの信頼できる識別が容易になる。
【0018】
最大温度変化の大きさおよび/または変化率の高さに基づいて、評価ユニットは、スイッチング状態を識別するだけでなく、現在の機械負荷および/または機械における任意の摩耗現象についての情報も同様に提供することができることが更に可能である。特に、以前のスイッチングサイクルと比較して、温度変化の最大の大きさおよび/または観測される変化率の大きさに変化があると、これは、負荷変動、または機械における摩耗の増加、特に検出が行われるベアリングの領域内での摩耗の増加を示す可能性があると仮定することができる。例えば、負荷が増加した場合または機械における摩耗、特に検出が行われるベアリングの領域内での摩耗が増加した場合には、温度変化の最大の大きさおよび/または観測される変化率の大きさが、以前のスイッチングサイクルと比較して増加する。なぜならば、ベアリングの摩耗は、ベアリング摩擦の増加を招き、これは、変化率および最大ベアリング温度に等しく反映されるからである。対照的に、機械負荷が減少した場合には、温度変化の最大の大きさおよび/または観測される変化率の大きさも、以前のスイッチングサイクルと比較して低下する可能性がある。
【0019】
原理的には、複数の温度センサを使用して、回転機械要素の少なくとも1つのベアリングを源とする温度変化を検出することができる。もちろん、それによって、ベアリングの近くの各測定箇所、すなわち、ベアリング領域内のまたはベアリング領域における測定箇所、に複数のセンサを使用することが可能であるが、理想的には、1つの温度センサが、ベアリングの近くの各測定箇所に使用される。本発明者らによって発見された効果は、もちろん、ベアリングの近くの、回転機械要素の各測定箇所において発生するので、複数の温度センサの使用は、冗長性をもたせるという理由からも好都合なものとすることができる。設置されたベアリングごとに1つのセンサを使用する更なる利点は、もちろん、各個々のベアリングの摩耗を上記と同様に監視することが可能であるということである。各ベアリングの状態および現在の負荷は、このようにして監視することができる。
【0020】
本発明の有利な更なる展開によれば、更なる温度パラメータに関して、特に機械の現在の周囲温度に関して、ベアリング領域内の温度プロファイルを検査することが可能である。ベアリング領域内の温度変化に対する周囲温度の影響は、それによってフィルタリング除去することができる。例えば、機械上にまたは機械のすぐ近くに位置決めされて、周囲温度を連続的に検出する少なくとも1つの更なる温度センサを使用することが好都合である。変化率評価の基礎となる温度プロファイルは、その場合、好ましくは測定温度値の間の温度差、すなわちベアリング領域内の温度と周囲温度との間の差、のプロファイルに対応する。周囲条件の変化によって引き起こされる温度プロファイルの温度変化は、それによって取り除くことができ、評価は、専ら機械に関係した温度変化のみに集中させることができる。1つ以上の更なるセンサによって更に干渉する影響を考慮し、フィルタリング除去することも同様に考えられる。そのような干渉する影響には、例えば、機械を通って流れる媒体、特にポンプの場合にはポンプ圧送される媒体の温度も含まれる。周囲温度と同様に、媒体温度も、この場合に検出することができ、ベアリング温度と媒体温度との間の温度差を温度プロファイルとして考慮することができる。更なる温度センサを使用するとき、この温度センサは、ベアリング/ベアリング支持部から十分な距離をおいて、機械上または機械の外側に位置決めされることが重要である。環境の冷却状態および加熱状態をこのように容易に検出することができる。
【0021】
この有利な実施の形態について言及すべきこととして、提供される周囲温度、若しくは媒体温度、または他の干渉する影響に関するデータは、その目的のために設けられたセンサから必ずしも得る必要はなく、原理的には、任意の種類の情報源、例えば情報サーバから取り出すこともできることが挙げられる。
【0022】
本方法の更なる実施の形態によれば、検出されるスイッチオンプロセスおよびスイッチオフプロセスの更に高度な評価が行われる。特に、定められた期間中および/または機械の全耐用寿命中に検出される全てのスイッチオンサイクルおよびスイッチオフサイクルがカウントされる。更に好ましくは、スイッチオンプロセスとその後のスイッチオフプロセスとの間の実際の動作フェーズを検出することができる。2つのスイッチングプロセスの間の個々の動作時間を合計することによって、全動作時間を更に検出することができる。スイッチオフプロセスとその後のスイッチオンプロセスとの間の個々の停止時間を検出することによって、同じ手順を停止時間の検出にも使用することができる。合計することによって、機械の全停止時間を同様に求めることができる。上述した情報を検出し、後の取り出しのために評価ユニットのメモリ内に利用可能な状態にしておくことができる。少なくとも1つの外部受信機へのこの情報の1回限りの送信、周期的な送信、またはランダムな送信も考えられる。停止時間の頻度および継続時間の知識は、特に飲料水ポンプの場合に重要である。なぜならば、これらのポンプは、停止時間中に動かなくなる傾向を有するからである。
【0023】
現在の温度は、第1の温度センサおよび任意選択で更なる温度センサによって特定の測定頻度で繰り返し検出される。この測定頻度は、静的におよび自由に定めることができるものとすることができる。機械の特定の使用条件および機械のタイプに応じて測定頻度を定めることが考えられ、ここでも、機械の体積、または熱伝導性構成要素の体積が、必要とされる測定頻度に影響を与える。一般に、測定頻度が過度に低い場合には、関連した変化率を確実に検出することができない場合があるというリスクがある。対照的に、測定頻度が不必要に高い場合には、評価ユニット内で大きな電力およびメモリリソースを利用できる必要があり、そのため、理想的には、測定頻度を選ぶときには、設定条件に関する妥協を満たさなければならない。
【0024】
好ましくは、測定頻度の動的な設定も行うこともでき、測定頻度は、理想的には、進行中の機械動作および温度検出の間に任意のパラメータおよび/または測定値に応じて評価ユニットによって自動的に設定される。例えば、評価ユニットは、デフォルトによって既定の測定頻度を使用する。ただし、比較的高い変化率または顕著な温度上昇が、この手順における或る時点で検出された場合には、センサのうちの少なくとも1つ、好ましくは少なくとも第1の温度センサに使用される測定頻度は、その時点における測定精度を一時的に高めるために、即座にかつ一時的に動的に増加され、これによって、スイッチオンプロセスおよびスイッチオフプロセスの信頼できる検出が最終的に改善される。評価ユニットは、エネルギー節約の理由によって、進行中の動作の間に測定間隔を増加させる、すなわち、測定頻度を減少させることも同様に考えられる。評価ユニットが初期の短い測定間隔用に構成されることが考えられる。そのような初期の測定間隔は、特に、可能な場合には全ての急速な温度変化率が確実に検出されるように選ばれ、また可能な場合には機械から独立して選ばれる。評価ユニットが、その後、進行中の動作の間に、信頼できる変化率識別、したがって、スイッチングプロセスの信頼できる検出がより大きな測定間隔であっても確保されることを確認した場合には、評価ユニットは、測定間隔を、1回だけ、段階的に、または連続的に可能な限り最適な値に調整する。これによって、一方では、信頼できる検出が確保されるが、他方では、測定動作が削減されることによって、所望のエネルギー節約がもたらされる。
【0025】
本発明による方法に加えて、本発明は、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法を実行する少なくとも1つの評価ユニットを有する回転機械、特にポンプまたはポンプセット、好ましくは遠心ポンプまたは遠心ポンプセットにも関する。対応する評価ユニットは、外部ユニットとして提供することができるが、代替形態として、通常のポンプコントローラ内に統合することもできる。回転機械の少なくとも1つの温度センサによって、ベアリングの近くの、ポンプインペラの回転シャフト上の対応する測定箇所、特にベアリング支持部表面上の測定箇所が、何らかの温度変化の有無について監視され、それに応じて評価される。
【0026】
回転機械に加えて、少なくとも1つの温度センサを有する回転機械と、この少なくとも1つの温度センサに通信可能に接続され、本発明による方法を実行するように構成される外部評価ユニットとからなるシステムも同様に保護される。
【0027】
最後に、本方法は、少なくとも1つの回転機械上に、特にベアリング領域内にまたはベアリング領域において取り付けるのに適したインテリジェント温度センサによって実行することもできる。そのような温度センサは、本発明による方法を実行するように構成される一体型評価ユニットを有する。したがって、本発明による方法に関して上記で既に示したものと同じ利点および特性が、回転機械と、システムおよび温度センサとの双方に当てはまる。したがって、ここでは、繰り返して説明しないことにする。
【0028】
本発明の更なる利点および特性は、図に示す一例示的な実施形態に関して以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】回転機械(ここでは、遠心ポンプ)のベアリング支持部の領域においてセンサによって経時的に検出される温度プロファイルを示す図である。
【
図2】経時的な温度差の変化率プロファイルを示す2つの更なる図表示である。
【
図3】ベアリング温度および周囲温度を検出する温度センサを取り付ける可能な取り付け箇所のマークが付けられた、本発明による遠心ポンプの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
回転機械、特にポンプセットのスイッチング時間を検出するために、本発明者らは、1つ以上の温度センサの記録された測定データを検査することができる以下の3つの重要な特徴を特定している。
1.このセットがオンにスイッチングされたことを示す、ベアリング領域内でまたはベアリング支持部において測定される温度の短時間の低下/変化率。
2.このセットがオフにスイッチングされたことを示す、ベアリング領域内でまたはベアリング支持部において測定される温度の短時間の上昇/変化率。
3.機械の周囲温度に対して、ベアリング領域内でまたはベアリング支持部において測定される温度の変化率の数およびサイズ。
【0031】
特徴1および2を説明するために、
図1の図表示を参照する。この図は、遠心ポンプのベアリング支持部、より正確にはその表面において経時的に測定された温度を示している。位置Aは、機械のベアリングの領域内の温度の短時間の低下を示す短時間の負の温度ピークにマークを付けたものである。この現象は、ポンプ駆動部が始動されたときに、空気塊の流れが生成され、これがベアリングまたはベアリング支持部に冷却効果をもたらすことの結果として発生する。この冷却効果は、ポンプ駆動部の電気モータのファンによって更に強化される。これは、最終的には、ベアリング支持部の遅延した摩擦誘発加熱をもたらす。
【0032】
この図表示には、位置Aにおけるこのピークの特性が、温度プロファイルの他の部分と大きく異なり、特に、温度プロファイルの変化率が、以前の温度変動および位置Aと位置Bとの間のその後の温度変動の場合の変化率よりもかなり大きいことが見られる。これらの温度変動は、外部の影響(例えば、周囲温度)によって引き起こされ、また、負荷変動等の動作に関係した影響によっても引き起こされる。
【0033】
位置Aにおける変化率は、このように、ポンプの評価ユニットによって、ポンプ駆動部のスイッチオンプロセスの明確な表示として評価される。
【0034】
対照的に、マークが付けられた位置Bにおいては、ベアリング支持部における測定温度の短時間の急上昇が見られる。そのような挙動は、ポンプ駆動部がオフにスイッチングされた直後に発生する。なぜならば、回転運動が消失する結果として、冷却する空気塊の流れが減少または完全に停止し、そのため、ベアリング/ポンプの動作温度が、最初に、ベアリング支持部の短時間の急速な温度上昇を招き、ベアリング支持部または機械の周囲温度への冷却が或る遅延のみを伴って起こるからである。位置Bにマークが付けられた変化率も、通常の温度変動の他の変化率と大きく異なり、そのため、ここでも、評価ユニットは、スイッチオフプロセスが行われたと明確に結論付けることができる。
【0035】
この場合に、評価ユニットは、上記のように機械のスイッチオンプロセスまたはスイッチオフプロセスに変化率を明確に割り当てることができるように、位置A、Bにおいて検出された変化率を、変化率符号と、温度変化の最大の大きさ、すなわちピークの高さとに基づいて互いに区別することができる。具体的には、位置Aにおけるスイッチオンプロセスの変化率は当初負であり、ベアリング摩擦によって誘発される遅延した温度上昇のために符号変化が生じるまで負である。対照的に、スイッチオフプロセスの場合の変化率は当初正であり、符号変化は、その後、機械が停止される結果、機械が遅延して冷却されるとともに生じる。
【0036】
本発明の拡張された解決策を、
図2a、
図2bの図表示を参照して説明する。
図2aには、経時的な温度差プロファイルの変化率がプロットされている。具体的には、この例では、機械の周囲温度がベアリング温度と同時に検出され、これらの2つの温度値から差が形成される。
図2aによって示される変化率プロファイルは、その後、経時的な温度差のこのプロファイルから求められる。この措置によって、ベアリング支持部における加熱を、環境の影響を受けることなく大部分求めることができ、評価することができる。
【0037】
ここでも、評価ユニットによって検出され、スイッチオンプロセスまたはスイッチオフプロセスを検出するインジケータとして使用される特性温度変化率がスイッチオンプロセスおよびスイッチオフプロセス中に存在する上述した現象が評価において使用される。
図2aでは、全部で5つのそのような特性変化率を見ることができ、これらの変化率は、負荷によって誘発された温度変動または時間によって誘発された温度変動の場合の変化率と比較して変化率の値が大幅に大きいことによって区別される。これらの変化率には、点a~eのマークが付けられ、位置a、b、eは正の符号を保持する一方、変化率c、dは負である。上述した特徴1、2とともに変化率a~eのサイズを考慮すると、機械がオンにスイッチングされたのかまたはオフにスイッチングされたのかを識別することが可能である。
【0038】
より良好に比較できるようにするために、変化率の大きさのみが考慮される。すなわち、負の変化率については、
図2bに示す符号反転が行われる。
図2bは、符号反転後において、変化率c、dが変化率a、b、eよりも高いことを明瞭に示している。より高い変化率がスイッチオフプロセスの場合に存在するという前述の説明を考慮すると、評価ユニットは、この時、変化率c、dがスイッチオフプロセスを示す一方、変化率a、b、eがスイッチオンプロセスを表すと判断することができる。
【0039】
遠心ポンプの動作時間を更に評価するために、生じたスイッチングプロセスの数をカウントによって求めることができるように、検出された変化率a~eは、その後、カウントされる。機械のスイッチングプロセスの数を知ることによって、次に、機械の動作時間および停止時間を求めることも可能である。
【0040】
図1および
図2a、
図2bに基づくスイッチングプロセス識別の異なる手順は、検出の質を更に最適化するために互いに組み合わせることももちろん可能である。
【0041】
図3は、遠心ポンプ10の形態の回転機械を概略的に示している。遠心ポンプ10は、一方においてポンプインペラを受け、他方においてポンプ駆動部によって駆動される回転シャフト14を備える。このシャフトは、少なくとも1つのベアリングによって回転可能に取り付けられ、このベアリングは、図示するベアリング支持部13内に設置されている。シャフトの回転はベアリング摩擦を引き起こし、この摩擦は機械10および特にベアリング支持部13の加熱を招く。本発明による方法の場合に、ベアリングの領域内の温度、特にベアリング支持部の表面における温度が、その後、検出される。
【0042】
原理的には、ベアリング支持部13の温度は、任意の所望の箇所で測定することができる。しかしながら、ベアリング摩擦によって引き起こされる温度推移についての正確な情報を提供することができるように、ベアリング箇所の可能な限り近くにおける測定、すなわち、ベアリングの近くのベアリング支持部の表面における測定が優先される。ベアリング支持部の温度の可能な測定箇所には、参照符号11を用いてマークが付けられている。
【0043】
周囲温度の測定は、好ましくは、機械の比較的熱い構成要素または冷たい構成要素から十分な距離をおいて行われるべきであるが、それでもなお、機械のすぐ近くで行われる。
図3は、参照符号12を用いて周囲温度の可能な測定箇所も示している。