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特許7358462可撓性を有する筒体を搬送する装置およびカテーテル用のチューブの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】可撓性を有する筒体を搬送する装置およびカテーテル用のチューブの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20231002BHJP
【FI】
A61M25/00 500
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021515792
(86)(22)【出願日】2020-01-21
(86)【国際出願番号】 JP2020001937
(87)【国際公開番号】W WO2020217609
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2019082880
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江田 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】叶 鶴松
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/009705(WO,A1)
【文献】特開平07-125090(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0137619(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0182913(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有する筒体を搬送する装置であって、
一方端から他方端まで延在している中空部を有している中空体と、
前記中空体の前記一方端側に配置され、前記筒体に接続されて前記筒体の内腔に加圧気体を導入する加圧部と、
前記中空体の前記他方端側に配置され、前記中空体に接続されて前記中空体の中空部から気体を吸引することによって、前記加圧部により前記内腔に加圧気体が導入された筒体を前記中空体の前記一方端側から前記他方端側に搬送する陰圧部と、を有する装置。
【請求項2】
さらに、前記加圧部と前記中空体の間に配置され、前記筒体の一方端部を保持する第1保持部と、
前記中空体と前記陰圧部の間に配置され、前記中空体の前記他方端側に搬送された前記筒体の他方端部を保持する第2保持部と、を有する請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1保持部と前記第2保持部は、それぞれ1または複数のチャック片である請求項2に記載の装置。
【請求項4】
さらに、前記加圧部と前記筒体の一方端部の間に配置され、前記加圧部と前記筒体の隙間を封じる第1シール部と、
前記中空体と前記陰圧部の間に配置され、前記中空体と前記陰圧部の隙間を封じる第2シール部と、を有する請求項2または3に記載の装置。
【請求項5】
前記加圧部と前記第1保持部の少なくともいずれか一方を、前記中空部の延在方向に沿って移動させる第1駆動機構を備える請求項2~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記加圧部と前記第1保持部と前記第1シール部の少なくともいずれか1つを、前記中空部の延在方向に沿って移動させる第2駆動機構を備える請求項4に記載の装置。
【請求項7】
前記筒体の他方端において、前記陰圧部による気体の吸引量は、前記筒体の内腔からの気体の吐出量よりも大きい請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記中空体の他方端における前記中空部の径と前記筒体の他方端における外径との差は、前記中空体の一方端における前記中空部の径と前記筒体の最大外径との差よりも大きい請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記筒体は他方端部が封止されている請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記筒体の一方端よりも他方端側には、前記筒体の一方端よりも外径が小さい部分が設けられている請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
さらに、前記中空体と前記加圧部の間に前記筒体を支持する支持部を有している請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
カテーテル用のチューブを製造する方法であって、
一方端と他方端を有し、可撓性を有する筒体を準備する工程と、
前記筒体の一方端側から前記筒体の内腔に加圧気体を導入しながら、前記筒体を他方端側から吸引する工程と、
前記筒体の加圧、加熱、延伸の少なくともいずれか1つを行う工程と、を有するカテーテル用のチューブを製造する方法。
【請求項13】
カテーテル用のチューブを製造する方法であって、
一方端と他方端を有し、他方端が塞がっている筒体を準備する工程と、
前記筒体の一方端側から前記筒体の内腔に加圧気体を導入しながら、前記筒体を他方端側から吸引する工程と、
前記筒体の加圧、加熱、延伸の少なくともいずれか1つを行う工程と、
前記筒体の他方端部を切断して、前記筒体の他方端側において前記内腔を外部と連通させる工程と、を有するカテーテル用のチューブを製造する方法。
【請求項14】
請求項4に記載の装置を用いてカテーテル用のチューブを製造する方法であって
前記第1保持部で前記筒体の一方端部を保持する工程と、
前記第1シール部により前記第1保持部と前記筒体の隙間を封じる工程と、
前記加圧部を前記筒体の一方端側に接続し、前記加圧部により前記筒体の内腔に加圧気体を導入する工程と、
前記第2シール部により前記中空体と前記陰圧部の隙間を封じる工程と、
前記加圧部と前記筒体を前記中空部側に移動させて、前記中空部に前記筒体の一部を配置する工程と、
前記陰圧部により前記中空体の中空部の気体を吸引し、前記筒体を前記中空体の他方端側に搬送する工程と、
前記第2保持部で前記筒体の他方端部を保持する工程と、を有するカテーテル用のチューブを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用チューブ等の可撓性を有する筒体を搬送する装置と、カテーテル用チューブの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
所望の位置に対象物を搬送する方法として吸引装置を用いた吸引が挙げられ、例えば、特許文献1には棒状部材の搬送装置が開示されている。該搬送装置は、棒状部材を吸引保持するように構成されたノズルを備えた吸引装置を具備し、棒状部材を吸引しながらノズルを上昇させることにより、棒状部材を少なくとも部分的にノズル内に吸引して、棒状部材を立てた状態で所定の場所まで搬送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-171039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、可撓性を有している筒体を吸引により搬送する場合、吸引力によって筒体が屈曲または変形し、これにより所望の位置、例えば金型内に筒体が配置されないという問題が生じており、改善の余地があった。そこで、本発明は可撓性を有している筒体の屈曲または変形を抑制しながら筒体を所望の位置に吸引搬送することができる装置と、カテーテル用チューブの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決することができた本発明の可撓性を有する筒体を搬送する装置の一実施態様は、一方端から他方端まで延在している中空部を有している中空体と、中空体の一方端側に配置され、筒体に接続されて筒体の内腔に加圧気体を導入する加圧部と、中空体の他方端側に配置され、中空体に接続されて中空体の中空部から気体を吸引する陰圧部と、を有することを特徴とする。上記装置によれば、加圧部を用いて筒体の内腔に加圧気体を導入することで筒体に内圧が付加され、筒体の剛性が高められる。これにより筒体の屈曲または変形を抑制した状態で、陰圧部により筒体を中空部まで効率よく吸引搬送することができる。
【0006】
上記装置は、さらに、加圧部と中空体の間に配置され、筒体の一方端部を保持する第1保持部と、中空体と陰圧部の間に配置され、中空体の他方端側に搬送された筒体の他方端部を保持する第2保持部と、を有することが好ましい。第1保持部と第2保持部は、それぞれ1または複数のチャック片であることが好ましい。
【0007】
上記装置は、さらに、加圧部と筒体の一方端部の間に配置され、加圧部と筒体の隙間を封じる第1シール部と、中空体と陰圧部の間に配置され、中空体と陰圧部の隙間を封じる第2シール部と、を有することが好ましい。
【0008】
上記装置は、加圧部と第1保持部の少なくともいずれか一方を、中空部の延在方向に沿って移動させる第1駆動機構を備えることが好ましい。
【0009】
上記装置は、加圧部と第1保持部と第1シール部の少なくともいずれか1つを、中空部の延在方向に沿って移動させる第2駆動機構を備えることが好ましい。
【0010】
筒体の他方端において、陰圧部による気体の吸引量は、筒体の内腔からの気体の吐出量よりも大きいことが好ましい。
【0011】
中空体の他方端における中空部の径と筒体の他方端における外径との差は、中空体の一方端における中空部の径と筒体の最大外径との差よりも大きいことが好ましい。
【0012】
筒体は他方端部が封止されていてもよい。また、筒体の一方端よりも他方端側には、筒体の一方端よりも外径が小さい部分が設けられていてもよい。
【0013】
上記装置は、さらに、中空体と加圧部の間に筒体を支持する支持部を有していることが好ましい。
【0014】
前記課題を解決することができた本発明のカテーテル用チューブの製造方法の一実施態様は、筒体の一方端側から筒体の内腔に加圧気体を導入しながら、筒体を他方端側から吸引する工程を有することを特徴とする。筒体の内腔に加圧気体を導入することで筒体に内圧が付加され、筒体の剛性が高められる。これにより筒体の屈曲または変形を抑制した状態で、筒体を所望の位置まで効率よく吸引搬送することができる。
【0015】
前記課題を解決することができた本発明のカテーテル用のチューブを製造する方法の他の実施態様は、一方端と他方端を有し、可撓性を有する筒体を準備する工程と、筒体の一方端側から筒体の内腔に加圧気体を導入しながら、筒体を他方端側から吸引する工程と、筒体の加圧、加熱、延伸の少なくともいずれか1つを行う工程と、を有することを特徴とする。本発明によれば、筒体の内腔に加圧気体を導入することで筒体に内圧が付加され、筒体の剛性が高められる。これにより筒体の屈曲または変形を抑制した状態で、筒体を所望の位置まで効率よく吸引搬送することができる。また、筒体の加圧、加熱、延伸の少なくともいずれか1つを行うことにより、所望の形状を有するカテーテル用チューブを作製することができる。
【0016】
前記課題を解決することができた本発明のカテーテル用のチューブを製造する方法のさらに他の実施態様は、一方端と他方端を有し、他方端が塞がっている筒体を準備する工程と、筒体の一方端側から筒体の内腔に加圧気体を導入しながら、筒体を他方端側から吸引する工程と、筒体の加圧、加熱、延伸の少なくともいずれか1つを行う工程と、筒体の他方端部を切断して、筒体の他方端側において内腔を外部と連通させる工程と、を有することを特徴とする。本発明によれば、筒体の内腔に加圧気体を導入することで筒体に内圧が付加され、筒体の剛性が高められる。これにより筒体の屈曲または変形を抑制した状態で、筒体を所望の位置まで効率よく吸引搬送することができる。また、筒体の加圧、加熱、延伸の少なくともいずれか1つを行うことにより、所望の形状に加工することができる。さらに、他方端が塞がっている筒体の他方端部を切断して、筒体の他方端側において内腔を外部と連通させることで、一方端から他方端まで内腔が貫通しているチューブを製造することができる。
【0017】
本発明は、可撓性を有する筒体を搬送する装置であって、上記中空体と、上記加圧部と、上記陰圧部と、上記第1保持部と、上記第2保持部と、上記第1シール部と、上記第2シール部と、を備える装置を用いてカテーテル用のチューブを製造する方法も提供する。この製造方法は、第1保持部で筒体の一方端部を保持する工程と、第1シール部により第1保持部と筒体の隙間を封じる工程と、加圧部を筒体の一方端側に接続し、加圧部により筒体の内腔に加圧気体を導入する工程と、第2シール部により中空体と陰圧部の隙間を封じる工程と、加圧部と筒体を中空部側に移動させて、中空部に筒体の一部を配置する工程と、陰圧部により中空体の中空部の気体を吸引し、筒体を中空体の他方端側に搬送する工程と、第2保持部で筒体の他方端部を保持する工程と、を有する。本発明によれば、加圧部を用いて筒体の内腔に加圧気体を導入することで筒体に内圧が付加され、筒体の剛性が高められる。これにより筒体の屈曲または変形を抑制した状態で、陰圧部により筒体を中空部まで効率よく吸引搬送することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、筒体の内腔に加圧気体を導入することで筒体に内圧が付加され、筒体の剛性が高められる。これにより筒体の屈曲または変形を抑制した状態で、筒体を所望の位置まで効率よく吸引搬送することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る可撓性を有する筒体の断面図を表す。
図2図1に示した筒体の変形例を示す断面図を表す。
図3図1に示した筒体の他の変形例を示す断面図を表す。
図4図1に示した筒体のさらに他の変形例を示す断面図を表す。
図5図1に示した筒体のさらに他の変形例を示す断面図を表す。
図6】本発明の一実施形態に係る搬送装置の断面図(一部側面図)を表す。
図7】本発明の一実施形態に係るカテーテル用チューブの製造方法を示す断面図(一部側面図)を表す。
図8】本発明の一実施形態に係るカテーテル用チューブの製造方法を示す断面図(一部側面図)を表す。
図9】本発明の一実施形態に係るカテーテル用チューブの製造方法を示す断面図(一部側面図)を表す。
図10】本発明の一実施形態に係るカテーテル用チューブの製造方法を示す断面図(一部側面図)を表す。
図11】本発明の一実施形態に係るカテーテル用チューブの製造方法を示す断面図(一部側面図)を表す。
図12】本発明の一実施形態に係るカテーテル用チューブの製造方法を示す断面図(一部側面図)を表す。
図13】本発明の一実施形態に係るカテーテル用チューブの製造方法を示す断面図(一部側面図)を表す。
図14】本発明の一実施形態に係るカテーテル用チューブの製造方法を示す断面図(一部側面図)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、下記実施の形態に基づき本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0021】
本発明の可撓性を有する筒体を搬送する装置の一実施態様は、一方端から他方端まで延在している中空部を有している中空体と、中空体の一方端側に配置され、筒体に接続されて筒体の内腔に加圧気体を導入する加圧部と、中空体の他方端側に配置され、中空体に接続されて中空体の中空部から気体を吸引する陰圧部と、を有する。上記装置によれば、加圧部を用いて筒体の内腔に加圧気体を導入することで筒体に内圧が付加され、筒体の剛性が高められる。これにより筒体の屈曲または変形を抑制した状態で、陰圧部により筒体を中空部まで効率よく吸引搬送することができる。
【0022】
まず、図1図5を参照しながら、搬送対象物である筒体について説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る筒体の長手方向に沿った断面図を表し、図2図5は、図1に示した筒体の変形例を示す断面図を表す。筒体40は、工業用または医療用、好ましくはカテーテル用のチューブに加工される部材である。筒体40は、可撓性を有している。形状保持のため、筒体40は弾性を有していることが好ましい。筒体40は、一方端42と他方端43を有しており、一方端42から他方端43に向かう長手方向x1に延在している。筒体40は、内腔41を有しており、後述する加圧部11によって内腔41に加圧気体が導入される。また、筒体40は、後述する陰圧部12によって他方端43側から吸引される。
【0023】
筒体40は、長手方向x1の長さと外周を比べた場合、長手方向x1の長さの方が長いものが好適に用いられる。筒体40の長さは特に限定されず、例えば10cm以上、20cm以上、または30cm以上であってもよいが、吸引操作を行いやすくするためには200cm以下、150cm以下、または100cm以下であることが好ましい。筒体40の断面形状は特に限定されず、例えば円形状、長円形状、多角形状、またはこれらを組み合わせた形状にすることができる。なお、長円形状には、楕円形状、卵形状、角丸長方形状が含まれる。吸引操作を行いやすくするために、筒体40の外径は、例えば0.1mm以上、0.5mm以上、または1mm以上であることが好ましく、30mm以下、20mm以下、または10mm以下であることが好ましい。なお、筒体の長さと外径に応じて、装置の大きさを変更することができる。
【0024】
筒体40は長手方向x1において外径が変化していてもよい。例えば、筒体40は、外径と内径の少なくともいずれか一方が、一方端42または他方端43に向かって小さくなっているテーパー部または段差を有していてもよい。図1図2図4図5では、筒体40にテーパー部44が設けられている。図2および図5に示すように、筒体40の一方端42より他方端43側には、筒体40の一方端42よりも外径が小さい部分45(以下、小径部45と称する)が配置されていることが好ましい。これにより、加圧部11を用いて筒体40の内腔41に加圧気体を導入しても、筒体40の他方端43側からの気体の吐出を抑えることができるため、筒体40を吸引しやすくなる。このような小径部45は、筒体40の一方端42よりも他方端43側に配置されていればよく、筒体40の他方端43に配置されていてもよい。なお、本発明の装置によれば、図1から図5に例示されるような筒体40の形状に関わらず、効率よく搬送することができる。
【0025】
過度な内圧の付加による筒体40の膨張等の変形を抑制する観点からは、図1図3図5に示すように、筒体40の内腔41が一方端42から他方端43まで貫通していることが好ましい。他方、図4に示すように、筒体40は他方端部が封止されていてもよい。これにより、加圧部11を用いて筒体40の内腔41に加圧気体を導入しても、筒体40の他方端43側から気体が吐出されないため、加圧部11による加圧がしやすくなり、また陰圧部12によって筒体40の他方端43側を吸引しやすくなる。
【0026】
筒体40を構成する材料は、樹脂または金属とすることができる。筒体40を構成する樹脂としては、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、フッ素系樹脂、塩化ビニル系樹脂、シリコーン系樹脂、天然ゴム等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。筒体40を構成する金属としては、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、白金、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、タングステン、金、Ni-Ti合金、Co-Cr合金、またはこれらの組み合わせが挙げられる。中でも、筒体40は、樹脂チューブであることが好ましく、フッ素系樹脂チューブまたはポリアミド系樹脂チューブであることがより好ましい。樹脂チューブである筒体40は、例えば押出成形により製造することができる。筒体40は一層から構成されていてもよく、長手方向x1の少なくとも一部が複数の層から構成されていてもよい。また、筒体40は、樹脂または金属製の線状部材がらせん状に巻回されているコイルであってもよい。さらに、コイルの外表面と内表面の少なくともいずれか一方に樹脂が被覆されていてもよい。筒体40は、柔軟であればよく、特に長手方向x1の端部からの加圧によって、筒体40全体としての剛性が高まったようになるものであることが好ましい。
【0027】
図6を参照しながら、筒体40を搬送する装置(以下、「搬送装置1」と称することがある)について説明する。搬送装置1では、筒体40を1本ずつ搬送することが好ましいが、複数本をまとめて搬送してもよい。搬送装置1は、中空体2と、加圧部11と、陰圧部12と、を有している。
【0028】
中空体2は、一方端4と他方端5を有しており、一方端4から他方端5まで延在している中空部3を有している。すなわち、中空部3は中空体2の一方端4から他方端5まで貫通するように設けられている。後述する陰圧部12により、中空部3では一方端4から他方端5に向かって気体が流れるため、中空部3の一方端4側に配置された筒体40が中空体2の一方端4側から中空部3に引き込まれる。以降の説明において、中空体2の一方端4から他方端5に向かう方向を中空部3の延在方向x2と称する。中空部3の延在方向は、中空体2の長手方向と一致していてもよく、中空体2の長手方向と異なる方向であってもよい。
【0029】
中空体2は、筒状に形成されていることが好ましく、例えば、円筒状、楕円筒状等の長円筒状、または多角筒状とすることができる。中空体2は金型であることが好ましい。これにより、中空体2の中空部3に搬送された筒体40に対して加熱延伸やブロー成形等の加工を施すことができる。例えば、中空体2は、長手方向x1において複数に分割可能な金型のうち最も他方端5側に配置されている第1金型とすることができる。本発明の装置により、筒体40が中空体2(第1金型)内に搬送された後に、中空体と他の金型(例えば、第1金型よりも一方端4側に配置されている第2金型)を連結して、一体の金型とすることにより、ブロー成形に好適に用いることができる。
【0030】
中空体2の中空部3の延在方向x2は、水平方向または鉛直方向と一致していてもよく、水平方向または鉛直方向と異なる方向であってもよい。例えば、図6に示すように、中空部3の延在方向x2は、鉛直方向yと垂直な水平方向xと一致していてもよい。これにより、中空部3に引き込まれる筒体40が水平方向xに移動するため、筒体40の移動方向を制御しやすくなる。図示していないが、中空部3の延在方向x2は、水平方向xに対して傾斜していてもよい。例えば中空体2の一方端4が他方端5よりも鉛直方向yにおいて上側に配されていてもよい。詳細には、中空部3の延在方向x2は、水平方向xに対して5度以上、10度以上、あるいは15度以上傾斜していてもよく、また、60度以下、55度以下、あるいは50度以下傾斜していてもよい。これにより、筒体40の搬送に重力を利用することができるため、筒体40を素早く搬送することができる。筒体40の長手方向x1と中空体2の中空部3の延在方向x2は、一致していることが好ましいが、互いに異なっていてもよい。筒体40の長手方向x1と中空体2の中空部3の延在方向x2とが交差する場合、搬送効率の観点から、交差する角度の範囲は上記の範囲であることが好ましい。
【0031】
中空部3の径は、中空部3の延在方向x2の全体にわたって同じであってもよく、異なっていてもよい。また、中空体2内への筒体40の挿入容易性の点では、中空体2の一方端4における中空部3の入り口部分は、入り口部分から内腔へかけてすぼまった漏斗状に形成されていることが好ましい。このように中空体2の一方端部4では、中空部3の径が他方端5側に向かって小さくなっていることが好ましい。また、中空体2内への筒体40の吸引効率向上の点では、中空体2の他方端5における中空部3の径は、中空体2の一方端4における中空部3の径よりも大きいことが好ましい。
【0032】
中空体2は、金属から構成されていることが好ましい。中空体2を構成する金属としては、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、白金、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、タングステン、金、Ni-Ti合金、Co-Cr合金、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0033】
加圧部11は、中空体2の一方端4側に配置され、筒体40に接続されて筒体40の内腔41に加圧気体を導入する部分である。加圧部11を用いて筒体40の内腔41に加圧気体を導入することで筒体40に内圧が付加され、筒体40の剛性が高められる。これにより筒体40の屈曲または変形を抑制した状態で、陰圧部12により筒体40を中空部3まで効率よく吸引搬送することができる。
【0034】
加圧部11は、筒体40に接続された筒体40の内腔41に加圧気体を導入する。加圧部11は、気体を圧送する機能を有していればよく、例えば圧縮機または加圧ポンプが挙げられる。加圧される気体の種類は特に限定されないが、例えば窒素、ヘリウム、アルゴン、空気等を用いることができる。
【0035】
加圧部11は、筒体40の一方側に接続されることが好ましく、筒体40の一方端部に接続されることがより好ましい。加圧部11は、筒体40に直接接続されていてもよく、ホースやパイプ等の管体や継ぎ手を介して筒体40に接続されていてもよい。
【0036】
陰圧部12は、中空体2の他方端5側に配置され、中空体2に接続されて中空体2の中空部3から気体を吸引する。陰圧部12によって中空体2の他方端5側から中空部3内の気体を吸引して陰圧、即ち大気圧よりも低い状態にすることで、中空部3では一方端4から他方端5に向かって気体が流れる。これにより、筒体40が中空体2の一方端4側から中空部3に引き込まれる。陰圧部12は気体を吸引する機能を有していればよく、例えば吸引装置や真空ポンプが挙げられる。陰圧部12は、中空部3に存在している空気のほか、加圧部11によって筒体40の内腔41に導入され、他方端5側から吐出される気体も吸引する。
【0037】
陰圧部12は、中空体2に直接接続されていてもよく、ホースやパイプ等の管体や継ぎ手、あるいは別の部材を介して中空体2に接続されていてもよい。例えば、図6では、陰圧部12は、後述する第2保持部16を介して中空体2に接続されている。
【0038】
筒体40の他方端43において、陰圧部12による気体の吸引量は、筒体40の内腔41からの気体の吐出量よりも大きいことが好ましい。このように筒体40の他方端43における気体の吸引量と吐出量を設定することにより、陰圧部12によって筒体40を吸引することができる。
【0039】
中空体2の他方端5における中空部3の径と筒体40の他方端43における外径との差は、中空体2の一方端4における中空部3の径と筒体40の最大外径との差よりも大きいことが好ましく、より好ましくは1.5倍以上、さらに好ましくは2倍以上大きい。このように筒体40の外径を設定することにより、筒体40の他方端43側を吸引しやすくなる。
【0040】
搬送装置1は、さらに、加圧部11と中空体2の間に配置され、筒体40の一方端部を保持する第1保持部15を有していてもよい。第1保持部15によって筒体40が保持されるため、筒体40の内腔41への加圧気体の導入を行いやすくなる。
【0041】
第1保持部15による保持位置は、筒体40の一方端部であれば特に限定されないが、筒体40の長手方向x1の一方端42から10cm以内の位置であることが好ましく、より好ましくは8cm以内、さらに好ましくは5cm以内である。
【0042】
搬送装置1は、さらに、中空体2と陰圧部12の間に配置され、中空体2の他方端5側に搬送された筒体40の他方端部を保持する第2保持部16と、を有していてもよい。これにより、第2保持部16で筒体40を保持することで、後の工程で筒体40の延伸や膨張等の加工が行いやすくなる。
【0043】
第2保持部16による保持位置は、筒体40の他方端部であれば特に限定されないが、筒体40の長手方向x1の他方端43から10cm以内の位置であることが好ましく、より好ましくは8cm以内、さらに好ましくは5cm以内である。
【0044】
第1保持部15または第2保持部16は、筒体40の保持および解除が可能な機構を有していればよい。例えば、第1保持部15または第2保持部16は、1または複数のチャック片を有していることが好ましく、第1保持部15と第2保持部16がそれぞれ1または複数のチャック片であることがより好ましい。チャック片によれば、精度よく筒体40を保持することができる。また、図示していないが、第1保持部15または第2保持部16が互いに対向している2つのチャック片であり、このようなチャック片で筒体40を挟んでもよい。第1保持部15と第2保持部16の保持機構は同じであってもよく、互いに異なっていてもよい。
【0045】
第1保持部15または第2保持部16を構成する材料としては、金属材料や弾性材料を挙げることができ、中空体2を構成する材料や筒体40を構成する材料の説明を参照することができる。筒体40の外表面への傷防止のため、第1保持部15または第2保持部16のうち筒体40と当接する部分には弾性体が配されていてもよい。
【0046】
搬送装置1は、さらに、加圧部11と筒体40の一方端部の間に配置され、加圧部11と筒体40の隙間を封じる第1シール部21を有することが好ましい。これにより、加圧部11と筒体40の隙間が封じられるため、筒体40への加圧気体の導入時に気体のリークを低減することができる。
【0047】
搬送装置1は、さらに、中空体2と陰圧部12の間に配置され、中空体2と陰圧部12の隙間を封じる第2シール部22を有することが好ましい。これにより、中空体2と陰圧部12の隙間が封じられるため、陰圧部12による吸引時の気体のリークを低減することができる。
【0048】
第1シール部21または第2シール部22としては、ガスケットまたはパッキンといった弾性を有するシール材を用いることができる。シール材は、天然ゴム、スチレン-ブタジエン共重合体等の合成ゴム、ポリウレタン等の合成樹脂から構成することができる。シール材は、例えば、リング状、シート状、テープ状に形成されていてもよい。第1シール部21と第2シール部22の種類は同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0049】
第1保持部15が、第1シール部21を兼ねていてもよい。また、第2保持部16が、第2シール部22を兼ねていてもよい。また、チャック片がシール部を兼ねていてもよい。このように保持部がシール部の機能を有するために、第1保持部15または第2保持部16が、弾性を有する部材から構成されていてもよい。このような保持部によって筒体40を保持することで、加圧部11と筒体40の隙間、あるいは中空体2と陰圧部12の隙間を封じることができる。
【0050】
搬送装置1は、加圧部11と第1保持部15の少なくともいずれか一方を、中空部3の延在方向x2に沿って移動させる第1駆動機構を備えることが好ましい。陰圧部12による吸引で筒体40が移動するが、第1駆動機構を設けることにより、筒体40の移動に伴って加圧部11と第1保持部15の少なくともいずれか一方を移動させることができる。このため、陰圧部12による吸引中に筒体40の内腔41に加圧気体を導入することができる。なお、図6では、加圧部11を中空部3の延在方向x2に沿って移動させる第1駆動機構25が例示されている。
【0051】
搬送装置1は、加圧部11と第1保持部15と第1シール部21の少なくともいずれか1つを、中空部3の延在方向x2に沿って移動させる第2駆動機構を備えることが好ましい。陰圧部12による吸引で筒体40が移動するが、第2駆動機構を設けることにより、筒体40の移動に伴って加圧部11と第1保持部15と第1シール部21の少なくともいずれか1つを移動させることができる。このため、陰圧部12による吸引中に筒体40の内腔41に加圧気体を導入することができる。なお、図6では、第1保持部15と第1シール部21を中空部3の延在方向x2に沿って移動させる第2駆動機構26が例示されている。
【0052】
搬送装置1は、第1駆動機構と第2駆動機構の両方を備えていてもよく、第1駆動機構と第2駆動機構のいずれか一方を備えていてもよい。例えば、図6に示すように、加圧部11を移動させる第1駆動機構25と、第1保持部15と第1シール部21を移動させる第2駆動機構26を有していてもよい。また、他の実施態様として、搬送装置1は、加圧部11と第1保持部15を移動させる第1駆動機構と、第1シール部21を移動させる第2駆動機構とを有していてもよい。さらに他の実施態様として、搬送装置1は、第1保持部15を移動させる第1駆動機構と、加圧部11と第1シール部21を移動させる第2駆動機構を有していてもよい。
【0053】
第1駆動機構と第2駆動機構は、同一の駆動機構であってもよく、異なる駆動機構であってもよい。また、第2駆動機構は、加圧部11と第1保持部15と第1シール部21のすべてを中空部3の延在方向x2に沿って移動させるものであることが好ましい。第1シール部21により加圧部11と筒体40の隙間を封じた状態で、筒体40の移動に伴って加圧部11と第1保持部15を移動させることができる。
【0054】
第1駆動機構は、例えば、中空部3の延在方向x2に延在している第1レールと、該第1レール上に配置されており、加圧部11と第1保持部15の少なくともいずれか一方を保持している第1搬送部と、該第1搬送部に接続され、第1搬送部の移動を制御する第1制御部と、を有していてもよい。同様に、第2駆動機構は、例えば、中空部3の延在方向x2に延在している第2レールと、該第2レール上に配置されており、加圧部11と第1保持部15と第1シール部21の少なくともいずれか1つを保持している第2搬送部と、該第2搬送部に接続され、第2搬送部の移動を制御する第2制御部と、を有していてもよい。
【0055】
第1搬送部または第2搬送部は、中空部3の延在方向x2に駆動する1軸以上のアクチュエータを含むことが好ましく、中空部3の延在方向x2と、該延在方向x2と垂直な一方向に駆動する2軸のアクチュエータを含むことがより好ましく、中空部3の延在方向x2と垂直な二方向に駆動する3軸のアクチュエータを含むことがさらに好ましい。このように搬送部を構成することにより、ロボットハンドに加圧部11、第1保持部15、または第1シール部21を取り付けることができるようになり、自由度の高い設計が可能となる。アクチュエータは、モータ、リニアガイド、ボールねじ、タイミングベルト・プーリ、スライダ、ラックアンドピニオン等の機械要素を含む。
【0056】
第1制御部および第2制御部は、例えば、少なくともCPUとメモリを有するマイクロコントローラを備えた電子回路ユニットから構成することができる。
【0057】
搬送装置1は、さらに中空体2と加圧部11の間に筒体40を支持する支持部30を有していることが好ましい。支持部30により筒体40を支持することで、筒体40の自重による垂れ下がりを防止することができる。
【0058】
支持部30は、第1保持部15または第2保持部16と同様に、1または複数のチャック片を有していてもよく、互いに対向している2つの挟持片を有していてもよい。また、図示していないが、支持部30は、筒体40よりも鉛直方向の下側に配置されている支持台に形成され、筒体40の長手方向x1の一部を配置する面であってもよい。また、支持部30は、上記支持台に形成され、筒体40の長手方向x1の一部を収容する凹部であってもよい。図6では、支持部30が2つのチャック片31を有している例を示している。支持部30を構成する材料としては、中空体2を構成する材料の説明を参照することができる。
【0059】
搬送装置1は、支持部30を少なくとも鉛直方向および中空部3の延在方向x2に沿って移動させる第3駆動機構32を備えることが好ましい。第3駆動機構32が中空部3の延在方向x2に移動可能であることにより、筒体40の移動に伴って支持部30を移動させることができるため、筒体40の自重による垂れ下がりを防止することができる。また、第3駆動機構32が鉛直方向に移動可能であることにより、支持部30を使用しない場合に支持部30を退避させることもできる。
【0060】
第3駆動機構32は、支持部30に接続されている第3搬送部と、該第3搬送部に接続され、第3搬送部の移動を制御する第3制御部と、を有していてもよい。第3搬送部と第3制御部は、それぞれ第1搬送部および第2搬送部、第1制御部および第2制御部の説明を参照することができる。
【0061】
以下では、カテーテル用のチューブの第1~第4の製造方法を説明する。
【0062】
第1の製造方法は、筒体40の一方端42側から筒体40の内腔41に加圧気体を導入しながら、筒体40を他方端43側から吸引する工程を有する。気体の導入と、吸引の開始のタイミングは、同時であってもよく、異なっていてもよい。筒体40が中空体2の中空部3に差し掛かったときに吸引だけが開始している場合は、吸引圧によって筒体40が変形することがある。このため、筒体40の内腔41に加圧気体を導入した後で、筒体40を他方端43側から吸引することが好ましい。
【0063】
第2の製造方法は、一方端42と他方端43を有し、可撓性を有する筒体40を準備する工程と、筒体40の一方端42側から筒体40の内腔41に加圧気体を導入しながら、筒体40を他方端43側から吸引する工程と、筒体40の加圧、加熱、延伸の少なくともいずれか1つを行う工程と、を有する。
【0064】
第3の製造方法は、一方端42と他方端43を有し、他方端43が塞がっている筒体40を準備する工程と、筒体40の一方端42側から筒体40の内腔41に加圧気体を導入しながら、筒体40を他方端43側から吸引する工程と、筒体40の加圧、加熱、延伸の少なくともいずれか1つを行う工程と、筒体40の他方端部を切断して、筒体40の他方端43側において内腔41を外部と連通させる工程と、を有する。
【0065】
第1~第3の製造方法において、筒体40の内腔41に加圧気体を導入することで筒体40に内圧が付加され、筒体40の剛性が高められる。これにより筒体40の屈曲または変形を抑制した状態で、筒体40を所望の位置まで効率よく吸引搬送することができる。また、第3の製造方法において、他方端43が塞がっている筒体40の他方端部を切断して、筒体40の他方端43側において内腔を外部と連通させることで、一方端から他方端まで内腔が貫通しているチューブを製造することができる。
【0066】
第1~第3の製造方法において、筒体40の内腔41への加圧気体の導入は、上述した加圧部11を用いて行うことができる。また、筒体40の他方端43側からの吸引は、上述した陰圧部12を用いて行うことができる。
【0067】
第2または第3の製造方法の筒体40の加圧、加熱、延伸の少なくともいずれか1つを行う工程では、筒体40を長手方向x1と径方向の少なくともいずれか一方に延伸することが好ましい。これにより所望の形状を有するカテーテル用チューブを作製することができる。長手方向x1の延伸と径方向の延伸はいずれを先に行ってもよく、同時に行ってもよい。筒体40の延伸は、1回のみ行ってもよく、複数回行ってもよい。筒体40の加圧、加熱、延伸の少なくともいずれか1つを行う工程では、それぞれを単独で行ってもよく、組み合わせて行ってもよい。このような工程の例として、ブロー成形が挙げられる。
【0068】
第3の製造方法で用いられる筒体40は、一方端42側において内腔が外部と連通していることが好ましい。これにより、筒体40の一方端42側から加圧気体を導入することができる。
【0069】
第3の製造方法の筒体40の他方端部を切断する工程において、筒体40は長手方向x1に対して垂直な方向に切断されることが好ましいが、筒体40は長手方向x1に対して斜めに切断されてもよい。
【0070】
第3の製造方法において、筒体40の他方端43の外径は、一方端42の外径よりも小さいことが好ましい。これにより、筒体40を他方端43側から吸引しやすくなるとともに、筒体40の他方端部を切断しやすくなる。
【0071】
第3の製造方法において、筒体40の切断には、ナイフ、カミソリ、ハサミ等の刃物を用いることができる。
【0072】
第4の製造方法は、可撓性を有する筒体40を搬送する装置であって、中空体2と、加圧部11と、陰圧部12と、第1保持部15と、第2保持部16と、第1シール部21と、第2シール部22と、を備える装置を用いてカテーテル用のチューブを製造する製造方法であり、第1保持部15で筒体40の一方端部を保持する工程と、第1シール部21により第1保持部15と筒体40の隙間を封じる工程と、加圧部11を筒体40の一方端42側に接続し、加圧部11により筒体40の内腔41に加圧気体を導入する工程と、第2シール部22により中空体2と陰圧部12の隙間を封じる工程と、加圧部11と筒体40を中空部3側に移動させて、中空部3に筒体40の一部を配置する工程と、陰圧部12により中空体2の中空部3の気体を吸引し、筒体40を中空体2の他方端5側に搬送する工程と、第2保持部16で筒体40の他方端部を保持する工程と、を有する。第4の製造方法によれば、加圧部11を用いて筒体40の内腔41に加圧気体を導入することで筒体40に内圧が付加され、筒体40の剛性が高められる。これにより筒体40の屈曲または変形を抑制した状態で、陰圧部12により筒体40を所望の位置である中空体2の他方端5側まで効率よく吸引搬送することができる。なお、第4の製造方法において、搬送装置1は、上述した第1駆動機構と第2駆動機構の少なくともいずれか一方を備えていることが好ましい。第1駆動機構により、加圧部11と第1保持部15の少なくともいずれか一方を移動させることができる。また、第2駆動機構により、加圧部11と第1保持部15と第1シール部21の少なくともいずれか1つを移動させることができる。
【0073】
図7図14を参照しながら、第4の製造方法について説明する。図7図14は、本発明の一実施形態に係るカテーテル用チューブの製造方法を示す断面図(一部側面図)を表す。第4の製造方法において、中空体2と、加圧部11と、陰圧部12と、第1保持部15と、第2保持部16と、第1シール部21と、第2シール部22と、第1駆動機構または第2駆動機構は、上記の説明を参照することができる。また、図7図14では第1駆動機構および第2駆動機構を図示していないが、図6に示すように搬送装置1に第1駆動機構および第2駆動機構を設けることができる。
【0074】
図7に示すように、第1保持部15で筒体40の一方端部を保持する(工程1)。筒体40に加圧気体を導入しやすくするために、第1保持部15による保持後の筒体40の内腔41の断面積が、第1保持部15による保持前の断面積の90%以上の大きさであることが好ましく、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは95%以上であることが好ましい。
【0075】
図8に示すように、第1シール部21により第1保持部15と筒体40の隙間を封じる(工程2)。
【0076】
図9に示すように、搬送装置1が中空体2と加圧部11の間に筒体40を支持する支持部30を有しており、支持部30で筒体40の長手方向x1の一部を支持することが好ましい(工程3)。工程3において、筒体40の長手方向x1の中央よりも中空体2側を支持することがより好ましい。これにより、筒体40の他方端43側の自重による垂れ下がりを防止することができる。
【0077】
図10に示すように、加圧部11を筒体40の一方端42側に接続し、加圧部11により筒体40の内腔41に加圧気体を導入する(工程4)。
【0078】
図10に示すように、第2シール部22により中空体2と陰圧部12の隙間を封じる(工程5)。工程5は、工程1~工程4のいずれかの前に行ってもよく、工程4の後に行ってもよい。
【0079】
図11に示すように、加圧部11と筒体40を中空部3側に移動させて、中空部3に筒体40の一部を配置する(工程6)。具体的には、第1駆動機構または第2駆動機構により、加圧部11と第1保持部15の少なくともいずれか一方、または加圧部11と第1保持部15と第1シール部21の少なくともいずれか1つを中空部3の延在方向x2に沿って移動させることが好ましい。これにより、筒体40を中空部3にスムーズに吸引搬送することができる。工程6は、工程5の前に行ってもよく、工程5の後に行ってもよい。
【0080】
図12図13に示すように、陰圧部12により中空体2の中空部3の気体を吸引し、筒体40を中空体2の他方端5側に搬送する(工程7)。筒体40が柔軟である場合、工程7においても、筒体40の内腔41に加圧気体が導入されていることが好ましい。これにより、柔軟体である筒体40の搬送において、筒体40全体としての剛性が高まったように振舞わせることができるため、搬送を効率的に行うことができる。なお、加圧部11による加圧圧力、陰圧部12による陰圧圧力は、筒体40の剛性、長さや、中空体2の中空部3の径、長さに応じて調整することができる。陰圧部12による吸引効率を高めるためには、加圧圧力は小さい方が好ましいが、筒体40の長手方向x1を直線状に保つためには、加圧圧力は大きい方が好ましい。また、加圧圧力の大小は、陰圧圧力の大小との関係でも調整することができる。
【0081】
図13に示すように、筒体40の長手方向x1の少なくとも中央が中空体2の一方端4よりも他方端5側に配置されたら、支持部30による支持を解除することが好ましい(工程8)。筒体40が上記位置まで移動すると、筒体40の自重による垂れ下がりのリスクが低減するため、支持部30により筒体40を支持しなくてもよい。
【0082】
図14に示すように、第2保持部16で筒体40の他方端部を保持する(工程9)。
【0083】
図示していないが、工程9の後、筒体40の加圧、加熱、延伸の少なくともいずれか1つを行ってもよい(工程10)。あるいは、工程9の後、筒体40の内腔41に工程4よりも高い圧力の加圧気体を導入し、筒体40を膨張させてもよい(工程11)。工程10における筒体40の延伸は、第1~第3の製造方法の説明を参照することができる。
【0084】
第1~第4の製造方法では、筒体40の吸引中、筒体40の内腔41に導入される加圧気体の圧力は、一定の大きさを維持してもよく、経時的に変化させてもよい。
【0085】
第1~第4の製造方法では、気体の吸引力は、吸引の始めから終わりまで同じ大きさであってもよく、経時的に変化させてもよい。
【0086】
第1~第4の製造方法では、筒体40を吸引する前から加圧気体を導入することが好ましい。これにより、筒体40の屈曲または変形を確実に抑制することができる。第4の製造法において換言すれば、工程4を行いながら工程7を行うことが好ましい。
【0087】
本願は、2019年4月24日に出願された日本国特許出願第2019-82880号に基づく優先権の利益を主張するものである。2019年4月24日に出願された日本国特許出願第2019-82880号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【符号の説明】
【0088】
1:搬送装置
2:中空体
3:中空部
4:中空体の一方端
5:中空体の他方端
11:加圧部
12:陰圧部
15:第1保持部
16:第2保持部
21:第1シール部
22:第2シール部
25:第1駆動機構
26:第2駆動機構
30:支持部
31:チャック片
32:第3駆動機構
40:筒体
41:内腔
42:一方端
43:他方端
44:テーパー部
45:小径部
x1:筒体の長手方向
x2:中空部の延在方向
x:水平方向
y:鉛直方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14