(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】変換器表面の温度降下のための熱伝導層
(51)【国際特許分類】
A61B 8/00 20060101AFI20231002BHJP
H04R 17/00 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
A61B8/00
H04R17/00 330J
H04R17/00 330F
(21)【出願番号】P 2021534380
(86)(22)【出願日】2019-11-24
(86)【国際出願番号】 US2019062891
(87)【国際公開番号】W WO2020131306
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-05-26
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519019791
【氏名又は名称】フジフイルム ソノサイト インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】リ ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ キース
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-074710(JP,A)
【文献】特開2017-099504(JP,A)
【文献】特表2018-532307(JP,A)
【文献】特開平02-203846(JP,A)
【文献】特開2006-025892(JP,A)
【文献】特開平10-022326(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0011889(US,A1)
【文献】特開2018-175371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
H04R 1/00 - 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波変換器組立体であって、
超音波エネルギーを放出するように構成された変換器層と、
前記変換器層を覆う1又は2以上のマッチング層と、
前記1又は2以上のマッチング層を覆う熱伝導層と、
前記熱伝導層を覆うレンズと、
前記変換器層に接続されたバッキング層であって、前記熱伝導層が、前記バッキング層の第1の側部を下方に延び、前記バッキング層内の前記変換器層の底平面の下方に延びている、バッキング層と、
前記変換器層の前記底平面の下方の前記バッキング層の前記第1の側部の第1の接続点において前記熱伝導層に接続された第1のシールドと、
前記バッキング層の前記第1の側部の第2の接続点において前記第1のシールドに接続され、前記レンズからの熱エネルギーを伝達するように構成された無線周波数妨害(RFI)シールドと、
を備える、超音波変換器組立体。
【請求項2】
前記熱伝導層は、100W/m.K以上の熱伝導率の材料で構成される、請求項1に記載の超音波変換器組立体。
【請求項3】
前記熱伝導層は、導電性材料で構成される、請求項1に記載の超音波変換器組立体。
【請求項4】
前記熱伝導層は、金属材料で構成される、請求項3に記載の超音波変換器組立体。
【請求項5】
前記熱伝導層は、金、銅、銀、アルミニウム、マグネシウム、ベリリウム、真鍮、青銅、モリブデン、ロジウム、タングステン、亜鉛、炭素、
または窒化アルミニウム
のいずれかで構成される、請求項2に記載の超音波変換器組立体。
【請求項6】
前記変換器層の底面に結合して、変換器-デマッチング層クーポンを形成するデマッチング層をさらに備える、請求項1に記載の超音波変換器組立体。
【請求項7】
前記変換器
層の少なくとも一部が
前記バッキング層内に位置
し、前記変換器層は、上部及び下部を有し、さらに前記熱伝導層は、前記バッキング層の
第2の側部に沿って前記変換器層の
前記底平面の下方に延びる、請求項1に記載の超音波変換器組立体。
【請求項8】
前記第1のシールドは、熱伝導性側面シールドを備える、請求項
1に記載の超音波変換器組立体。
【請求項9】
前記第1のシールドは、熱伝導性材料を用いて前記熱伝導層に
接続される、請求項
1に記載の超音波変換器組立体。
【請求項10】
前記熱伝導性材料は、銀エポキシで構成される、請求項
9に記載の超音波変換器組立体。
【請求項11】
無線周波数妨害(RFI)シールドは、熱伝導性材料を用いて前記第1のシールドに
接続されている、請求項
1に記載の超音波変換器組立体。
【請求項12】
熱伝導性材料を用いて前記RFIシールドに結合され、前記超音波変換器組立体のための熱経路をもたらすケーブルシールドをさらに備える、請求項1
1に記載の超音波変換器組立体。
【請求項13】
前記熱伝導層、前記第1のシールド、及び前記熱伝導性材料は、導電性材料で構成され、前記熱伝導層、前記第1のシールド、及び前記RFIシールドは、囲まれたシールドケージを形成する、請求項1
2に記載の超音波変換器組立体。
【請求項14】
超音波装置であって、
表示画面と、
前記表示画面に接続され、前記表示画面上に超音波画像を生成する超音波イメージングサブシステムと、
前記超音波イメージングサブシステムに接続されてこれを制御する超音波制御サブシステムと、
超音波変換器組立体と、
を備え、
前記超音波変換器組立体は、
超音波エネルギーを放出するように構成された変換器層と、
前記変換器層を覆う1又は2以上のマッチング層と、
前記1又は2以上のマッチング層を覆う熱伝導層と、
前記熱伝導層を覆うレンズと、
前記変換器層に接続されたバッキング層であって、前記熱伝導層が、前記バッキング層の第1の側部を下方に延び、前記バッキング層内の前記変換器層の底平面の下方に延びている、バッキング層と、
前記変換器層の前記底平面の下方の前記バッキング層の前記第1の側部の第1の接続点において前記熱伝導層に接続された第1のシールドと、
前記バッキング層の前記第1の側部の第2の接続点において前記第1のシールドに接続され、前記レンズからの熱エネルギーを伝達するように構成された無線周波数妨害(RFI)シールドと、
を備える、超音波装置。
【請求項15】
前記熱伝導層は、100W/m.K以上の熱伝導率の材料で構成される、請求項1
4に記載の超音波装置。
【請求項16】
前記熱伝導層は、導電性材料で構成される、請求項1
4に記載の超音波装置。
【請求項17】
前記熱伝導層は、金、銅、銀、アルミニウム、マグネシウム、ベリリウム、真鍮、青銅、モリブデン、ロジウム、タングステン、亜鉛、炭素、
または窒化アルミニウム
のいずれかで構成される、請求項1
5に記載の超音波装置。
【請求項18】
前記変換器層の底面に結合して、変換器-デマッチング層クーポンを形成するデマッチング層をさらに備える、請求項1
4に記載の超音波装置。
【請求項19】
前記変換器
層の少なくとも一部が
前記バッキング層内に位置
し、前記変換器層は、上部及び下部を有し、さらに前記熱伝導層は、前記バッキング層の
第2の側部に沿って前記変換器層の
前記底平面の下方に延びる、請求項1
4に記載の超音波装置。
【請求項20】
前記第1のシールドは、熱伝導性のシールドであり、
前記超音波変換器組立体は、前記RFIシールドに結合して超音波変換器組立体が完全な熱経路を形成するようにさせるケーブルシール
ド
をさらに備える、請求項
19に記載の超音波装置。
【請求項21】
前記熱伝導層及び前記第1のシールドは、導電性材料で構成され、前記熱伝導層、前記第1のシールド、前記RFIシールド、及び前記ケーブルシールドは、囲まれたシールドケージを形成する、請求項2
0に記載の超音波装置。
【請求項22】
超音波変換器組立体を製作する方法であって、
バッキング層に接続されて超音波エネルギーを放出するように構成された変換器層の上面を、前記変換器層を覆う積み重ねられた1又は2以上のマッチング層のマッチング層の下面に付着させるステップと、
前記積み重ねられた1又は2以上のマッチング層の上面に
、前記バッキング層の第1の側部を下方に延び、前記バッキング層内の前記変換器層の底平面の下方に延びる熱伝導層を接合するステップと
、
前記熱伝導層の上面にレンズを取り付けるステップと、
第1のシールドを前記熱伝導層に結合するステップと、
前記変換器層の前記底平面の下方の前記バッキング層の前記第1の側部の第1の接続点において前記熱伝導層に第1のシールドを接続するステップと、
前記バッキング層の前記第1の側部の第2の接続点において前記第1のシールドに無線周波数妨害(RFI)シールドを接続し、前記レンズからの熱エネルギーを伝達するように構成するステップと、
を含む方法。
【請求項23】
前記熱伝導層は、導電性材料で構成される、請求項2
2に記載の方法。
【請求項24】
前記熱伝導層は、金、銅、銀、アルミニウム、マグネシウム、ベリリウム、真鍮、青銅、モリブデン、ロジウム、タングステン、亜鉛、炭素、
または窒化アルミニウム
のいずれかで構成される、請求項2
2に記載の方法。
【請求項25】
前記第1のシールドは、熱伝導性材料を用いて前記熱伝導層に接続された熱伝導性シールドであり、
前記方法は、ケーブルシールドを前記RFIシールドに結合して、超音波変換器組立体が完全な熱経路を形成するようにさせるステッ
プ
をさらに含む、請求項2
2に記載の方法。
【請求項26】
前記熱伝導層、前記第1のシールド、及び前記熱伝導性材料は、導電性材料で構成され、前記熱伝導層、前記第1のシールド、前記RFIシールド、及び前記ケーブルシールドは、囲まれたシールドケージを形成する、請求項2
5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2018年12月19日出願の米国特許仮出願番号16/226,415号の利益を主張する。
【0002】
(技術分野)
本発明は、一般的に超音波変換器に関し、より詳細には、本発明は、少なくとも1つの熱伝導層を含む超音波変換器組立体に関する。
【背景技術】
【0003】
音響変換器などの変換器は、医用イメージングに使用され、医用イメージングでは音響プローブが超音波を出してこれを受け取って患者の内部組織の画像を生成するようになっている。一般的に、高品質のイメージングを可能にするために音響プローブを最大許容音響強度で使用することが望ましく、このことは、音響波の患者の組織の中への良好な透過によって実現することができる。しかしながら、音響プローブを高い音響強度で作動させると、変換器組立体内で過剰な熱が発生することにつながる場合がある。
【0004】
患者との接触点での音響プローブの最大外部温度には制限がある。音響プローブの特定の動作モードにおいて、変換器要素又はその組立体の中で発生する熱によって、プローブ表面の一部の領域の温度は許容限度を超える場合がある。
【0005】
変換器組立体は、一般に低い固有熱伝導率の材料を使用して製作される。このような変換器組立体は、プローブの過熱をもたらす場合がある。不都合なことに、音響プローブの熱伝導率を高める従来の多くの試みは、プローブの表面温度への影響が制限されていたので、患者の不快感をなくすほどに表面温度を十分に低下させる効果がない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、変換器組立体の患者接触面の過熱を回避するために、変換器要素のアレイ内に捕らえられる可能性がある熱を放散することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
超音波変換器組立体内の変換器の表面温度降下用の熱伝導層のための方法及び装置が開示される。1つの実施形態において、超音波変換器組立体は、超音波エネルギーを放出するように構成された変換器層と、変換器層を覆う1又は2以上のマッチング層と、1又は2以上のマッチング層を覆う熱伝導層と、熱伝導層を覆うレンズとを備える。
【0008】
本発明は、以下の詳細な説明から及び本発明の種々の実施形態の添付の図面からより完全に理解できるはずである。しかしながら、これらは本発明を特定の実施形態に限定すると見なすべきではなく、単に説明を及び理解を目的としたものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】超音波変換器組立体を有する超音波変換器プローブの1つの実施形態を示す。
【
図2A】超音波変換器組立体の1つの実施形態の側断面図を示す。
【
図2B】超音波変換器アレイ組立体の他の実施形態の側断面図を示す。
【
図3】1又は2以上のマッチング層及び変換器層(図示せず)をカバーする熱伝導層の実施例を示す。
【
図4】超音波変換器組立体を作成するプロセスの1つの実施形態のフローチャートである。
【
図5】変換器表面温度を低下させるための本明細書に記載の技術の使用結果を示すテーブルである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明において、本発明のより完全な説明を提示するために、数々の詳細が記載されている。しかしながら、本発明の当業者であればこれらの特定の詳細内容がなくても実施することができることを理解されたい。場合によっては、本発明を曖昧にしないように、良く知られた構造及び装置は、詳細に示されておらず、ブロック図で示されている。
【0011】
超音波変換器組立体及びその内部の変換器アレイを製作する方法が開示される。1つの実施形態において、変換器アレイは、低い表面温度を有する。これは、少なくとも部分的に、変換器層を覆う1又は2以上のマッチング層を覆うか、さもなければその外面上に熱伝導層を含むことで実現される。1つの実施形態において、熱伝導層(例えば、金層など)は、堆積によって実現される被覆で構成される。1つの実施形態において、熱伝導層は、変換器アレイを保持するバッキング層の外側の周りを包み、熱伝導層は、シールドに熱的に結合することができる。1つの実施形態において、熱伝導層は伝導性でもあり、熱伝導層は、シールドに熱的に及び電気的に結合する。
【0012】
図1は、開示された技術の実施形態に従って構成された超音波変換器組立体を有する超音波変換器プローブの1つの実施形態を示す。
図1を参照すると、超音波変換器プローブ100は、遠位端部112と近位端部114との間に広がる筐体110を含む。超音波変換器プローブ100は、張力緩和要素119によってプローブの近位端に取り付けられたケーブル118を介して超音波イメージングシステム130に電気的に接続される。
【0013】
1又は2以上の変換器要素を有する変換器組立体120は、システム電子機器に電気的に接続される。作動時、変換器組立体120は、1又は2以上の変換器要素からの超音波エネルギーを対象物に送り、対象物からの超音波エコーを受け取る。超音波エコーは、1又は2以上の変換器要素によって電気信号に変換され、超音波イメージングシステム130内のシステム電子機器に電気的に送られて、1又は2以上の超音波画像が形成される。
【0014】
例示的な変換器組立体(例えば、変換器組立体120)を用いて対象物から超音波データを捕捉することは、一般に、超音波を発生し、超音波を対象物の中に送り、対象物が反射した超音波を受け取ることを含む。超音波データを捕捉するために広範囲の周波数の超音波を用いることができ、例えば、低周波の超音波(例えば、15MHz未満)及び/又は高周波の超音波(例えば、15MHz以上)を用いることができる。当業者であれば、例えば、限定されるものではないが、イメージング深度及び/又は所望の解像度などの要因に基づいてどの周波数範囲を用いるかを容易に決定することができる。
【0015】
1つの実施形態において、超音波イメージングシステム130は、従来から良く知られた方法で超音波イメージングシステム130の機能をサポートするための、1又は2以上のプロセッサ、集積回路、ASIC、FPGA、及び電源を備える超音波システム電子機器134を含む。1つの実施形態において、超音波イメージングシステム130は、1又は2以上のプロセッサを有する超音波制御サブシステム131も含む。少なくとも1つのプロセッサは、電気信号をプローブ100の変換器に送って音波を放出するようにし、さらに戻りエコーから生み出された電気パルスをプローブから受け取る。1又は2以上のプロセッサは、受け取った電気パルスに関連する生データを処理して画像を形成し、この画像は、超音波イメージングサブシステム132に送られ、超音波イメージングサブシステム132は、画像を表示画面133上に表示する。従って、表示画面133は、超音波制御サブシステム131のプロセッサによって処理された超音波データからの超音波画像を表示する。
【0016】
1つの実施形態において、超音波システムは、データを入力して超音波表示サブシステムの表示から測定結果を取得することを可能にする、1又は2以上のユーザ入力デバイス(例えば、キーボード、カーソル制御デバイスなど)と、取得した画像を格納するためのディスクストレージデバイス(例えば、ハード、フロッピー、サムドライブ、コンパクトディスク(CD)、デジタルビデオディスク(DVD))と、表示データから画像をプリントするプリンターとを有する。また、これらは本明細書に開示された技術を曖昧にしないように
図1には示されていない。
【0017】
1つの実施形態において、超音波変換器組立体は、超音波エネルギーを放出するように構成された変換器層と、変換器層を覆う1又は2以上のマッチング層と、1又は2以上のマッチング層を覆う熱伝導層と、熱伝導層を覆うレンズとを備える。
図2Aは、超音波変換器組立体の1つの実施形態の側断面図を示す。
【0018】
図2Aを参照すると、1つの実施形態において、超音波変換器組立体は、バッキング層201の溝(channel)又は谷部(谷部)201Aの内部に配置された変換器層(変換器)202を備える。1つの実施形態において、変換器層202は、特定の動作周波数(例えば、1MHzから約50MHzの間)で超音波エネルギーを放出するように構成された1又は2以上の変換器要素を含む。1つの実施形態において、変換器層202は、圧電材料(例えば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT))で構成される。もしくは、変換器層202は、圧電型マイクロマシン超音波変換器(PMUT)、容量型マイクロマシン超音波変換器(CMUT)、電歪セラミック材料、又は他の適切な変換器材料で構成される。
【0019】
バッキング層201は、変換器層202の変換器要素によってもたらされる音響及び熱エネルギーを吸収及び消散するように構成されている。1つの実施形態において、バッキング層201は、充填エポキシ(例えば、タングステン粒子が充填された)及び/又は貫通して延びる1又は2以上のプレート(図示せず)を有する他の適切な材料を備える。
【0020】
1つの実施形態において、デマッチング層(図示せず)は、変換器層202とバッキング層201との間に位置する。1つの実施形態において、デマッチング層は、変換器層202の音響インピーダンスとは著しく異なる音響インピーダンスを有する材料(例えばタングステンカーバイド(WC)など)を備え、その音響インピーダンスは、PZTの音響インピーダンスよりも著しく大きい。もしくは、デマッチング層は、窒化アルミニウム(AlN)、多結晶シリコン、銅充填グラファイト、又は他の適切なデマッチング材料を含む。
【0021】
信号コード210は、電気パルスを公知の方法で超音波制御システムから変換器層202に送る。本発明が曖昧にならないように信号コード210の一部のみが示されていることに留意されたい。また、接地帰路コード211は公知の方法で作動し同様に一部のみが示されている。
【0022】
1又は2以上のマッチング層203は、変換器層202とレンズ205との間で変換器層202を覆う。1つの実施形態において、マッチング層203は、公知の方法で互いに及び変換器層202に対して接合される。1つの実施形態において、変換器組立体のマッチング層203は、3層のマッチング層を含むが、他の実施形態において、変換器組立体のマッチング層203は、2以下に又は4以上のマッチング層を含む。
【0023】
熱伝導層204は、マッチング層203を覆う。1つの実施形態において、熱伝導層204は、音響レンズ205とマッチング層203の最上部のマッチング層との間にある。1つの実施形態において、音響レンズ205は、例えば、室温硬化液状シリコーン(RTV)又は他の適切な音響材料などの音響透過材料で構成される。
【0024】
1つの実施形態において、熱伝導層204は、マッチング層203の最上部のマッチング層の上面及びレンズ205に接合するかさもなければ熱的に接触する。
【0025】
熱伝導層204は、変換器の表面温度を低下させる。これは、超音波変換器組立体のレンズ205及びその周辺領域から遠くに熱エネルギーを伝達するかさもなければ消散することで実現される。
【0026】
1つの実施形態において、変換器の表面温度を低下させるために、熱伝導層204を構成する材料は、100W/m.Kより大きな熱伝導率を有する。1つの実施形態において、熱伝導層204は、導電性材料で構成される。1つの実施形態において、熱伝導層204は、金属、金属合金、非金属であるが熱伝導率が高い導電性の材料で構成される。このような材料としては、限定されるものではないが、金、銀、銅、アルミニウム、マグネシウム、ベリリウム、真鍮、青銅、モリブデン、ロジウム、タングステン、亜鉛、炭素(例えば、グラファイト、熱分解グラファイトなど)を挙げることができる。これらの材料は、被覆材料として使用する場合に熱シールド及びEMIシールドの両方の利益をもたらす。
【0027】
1つの実施形態において、熱伝導層204は、熱伝導率が大きな非導電性材料で構成される。このような材料の例としては、限定されるものではないが、窒化アルミニウム、及び,アルミナ(酸化アルミニウムAl2O3)を挙げることができる。1つの実施形態において、熱伝導層204は、音響的に透過な熱伝導性材料及び導電性材料の組み合わせである。例えば、1つの実施形態において、熱伝導層は、導電性層の最上部に配置されて熱伝導層204をもたらす。もしくは、熱伝導層204は、熱伝導性材料及び導電性材料でパターン化されるか又は区分される。
【0028】
1つの実施形態において、熱伝導層204は、マッチング層203の上に堆積された被覆である。上記の導電性材料に関して、1つの実施形態において、被覆は、ダイレクトスパッタリング又は電気めっき(これは非常に薄いスパッタ導電性シード層を用いる)のいずれかで実現される。上記の非導電性材料に関して、被覆は、ダイレクトスパッタリングによって実現される。熱伝導層204を堆積するために他の堆積技術を使用できることに留意されたい。
【0029】
1つの実施形態において、熱伝導層204は、マッチング層203の最上部のマッチング層に接合されるかさもなければ付着される。接合は、接着剤を使用して実現することができる。
【0030】
1つの実施形態において、熱伝導層204の厚さは変換器層202の周波数に依存する。1つの実施形態において、熱伝導層204は、9MHzプローブで用いるために、堆積によってマッチング層203上に被覆された3000オングストロームの金層で構成される。9MHzにおける3000オングストローム厚の金は、音響的に透過であり、金堆積の後で超音波変換器組立体を作るのに用いることができる湿式処理を妨げない点において不活性である。3000オングストローム以外の被覆厚さを用いることができることに留意されたい。周波数が例えば9MHzよいも低い場合、これは性能に影響を与えないので層はより厚くすることができる。
【0031】
1つの実施形態において、熱伝導層204は、マッチング層203及び変換器層202をカバーする。
図3は、
図2Aのマッチング層203及び変換器層202のような1又は2以上のマッチング層及び変換器層をカバーする熱伝導層300の実施例を示す。
図2Aに戻ると、熱伝導層204は、バッキング層201の側部を下方に延び、バッキング層201内の変換器層202の底平面の下方に延びるようになっている。
【0032】
1つの実施形態において、熱伝導層204は、アレイ側面シールド206にまで及びこれに熱的に結合する。1つの実施形態において、側面シールド206は、レンズより前で変換器層202及びバッキングブロック201に巻き付いている。1つの実施形態において、側面シールド206は、熱伝導性材料で構成される熱伝導性の側面シールドである。側面シールド206の材料は、一般的にさらに導電性であることに留意されたい。1つの実施形態において、側面シールド206は、銅、金、銀、アルミニウム、マグネシウム、ベリリウム、真鍮、青銅、モリブデン、ロジウム、タングステン、亜鉛で構成される。
【0033】
1つの実施形態において、側面シールド206は、熱伝導性経路を形成するために、例えば、接着剤、はんだ、溶着などの表面取り付け機構209を用いて接続点において熱伝導層204に熱的に結合される。1つの実施形態において、接着剤は、のり、セメント、ゴムのり、ペースト、又は2つの別個の要素の片面又は両面に塗布されてこれらを一緒に接合して分離しないようにする何らかの物質で構成される。1つの実施形態において、表面取り付け機構209は、熱伝導性材料で構成される。側面シールド206を熱伝導層204に熱的に結合するのに用いられる熱伝導性材料の例としては、限定されるものではないが、銀エポキシなど(例えば、銀エポキシ塗料、銀エポキシペースト、銀エポキシビースなど)を挙げることができる。熱伝導層204を側面シールド206に熱的に結合する他の熱伝導性材料を使用できることに留意されたい。
【0034】
1つの実施形態において、側面シールド206は、導電性経路並びに熱伝導性経路を形成するために、接続点において熱伝導層204に電気的に結合される。
【0035】
1つの実施形態において、超音波変換器組立体は、側面シールド206に熱的に結合された無線周波数妨害(RFI)シールド207を備える。1つの実施形態において、RFIシールド207は、アレイフレックス回路及びケーブルプリント基板(PCB)接続点に巻き付いているシールドである。これは、ケーブル配線の後に行うことができる。
【0036】
1つの実施形態において、RFIシールド207は、例えば、接着剤、はんだ、溶着などの表面取り付け機構を用いて接続点において側面シールド206に熱的に結合される。1つの実施形態において、表面取り付け機構は、熱伝導性材料で構成される。RFIシールド207を側面シールド206に熱的に結合するのに用いられる熱伝導性材料の例としては、限定されるものではないが、銀エポキシなど(例えば、銀エポキシ塗料、銀エポキシペースト、銀エポキシビースなど)を挙げることができる。側面シールド206をRFIシールド207に熱的に結合する他の熱伝導性材料を使用できることに留意されたい。
【0037】
1つの実施形態において、超音波変換器組立体は、RFIシールド207に結合されるケーブルシールド208を備える。1つの実施形態において、ケーブルシールド208は、編組体を含む。1つの実施形態において、ケーブルシールド208は、例えば、接着剤(例えば、銀-エポキシ)、はんだ、溶着などの表面取り付け機構を用いて接続点でRFIシールド207に結合される。
【0038】
熱伝導層204を側面シールド206に熱的に結合することで、側面シールド206をRFIシールド207に熱的に結合することで、及びRFIシールド207をケーブルシールド208に熱的に結合することで、変換器表面温度の主たる熱源として良く知られているレンズ205からの、側面シールド206及びRFIシールド207を通ってケーブルシールド208に至る熱経路がもたらされる。熱経路は、変換器組立体のレンズ205から熱を奪い超音波プローブの表面温度を人間に用いるのに許容されるレベルに低下させる。変換器の表面温度を低下させることで、変換器層202は、より大きな音響エネルギーを身体に送り込むために、より高い伝達電圧/電力で作動することができ、これにより超音波画像の品質が向上する。
【0039】
1つの実施形態において、熱伝導層204、側面シール206、RFIシールド207で形成された熱経路をケーブルシールド208に熱的に結合することで、これらの構成要素及び結合材料の全てが導電性である場合に、囲まれたシールドケージがもたらされる。1つの実施形態において、この囲まれたシールドケージは、ファラデーケージであり、超音波変換器組立体の場合、これは、超音波変換器組立体の中の電荷が超音波変換器組立体の内部の電界効果を相殺するようにこの電荷を分散させることで、電磁場を遮るために用いられる筐体である。
【0040】
図2Bは、超音波変換器アレイ組立体の別の実施形態の側断面図を示す。
図2Bを参照すると、デマッチング層260(例えば、タングステンカーバイド(WC)など)は、バッキングブロック251の溝の中で変換器層252(例えば、PZT、SX(単結晶)など)に積み重ねられて取り付けられている。1つの実施形態において、この変換器/デマッチング組立体は互いに接合され、本明細書では、変換器/デマッチングクーポンと呼ばれる。変換器がPZTで構成される場合、この組立体は本明細書ではPZT/デマッチング組立体又はPZT/デマッチングクーポンと呼ばれる。1つの実施形態において、PZT/デマッチングクーポンは、次に、全ての前方マッチング層253A-C及びバッキングブロック251とスタック接合される。3層のマッチング層が示されているが、任意数のマッチング層を使用することができる(例えば、ML1、ML2、ML3、ML4、ML5、...)。また、これらの層は、スタック接合以外の技術を利用して付着させることができることに留意されたい。
【0041】
1つの実施形態において、変換器層202及び1又は2以上のマッチング層203は、複数のトレンチ、溝、又は切り溝(kerf)が変換器層202及びマッチング層203の中にトレンチカットされるダイシング工程を受けることができる。当業者であれば理解できるように、切り溝は、変換器層202の個々の要素を分離するように及び/又は個々の要素の間の音響クロストークを減衰するように構成することができる。切り溝は、本明細書に開示された技術を曖昧にしないように
図2Aには示されていない。
【0042】
1つの実施形態において、切り溝は、少なくとも部分的に充填材で満たされている。1つの実施形態において、充填材は、切り溝の少なくとも一部を充填する1又は2以上の材料で構成される。1つの実施形態において、充填材は、エポキシ又はポリマーの中に懸濁しているマイクロバルーンを含む複合材料で構成される。マイクロバルーンは、ガス(例えば、空気、炭化水素ガスなど)を取り囲む又は封入するガラス又はプラスチックの微小球、又は中実微小球を含むことができる。マイクロバルーン又は微小球は、様々な粘稠性及び密度の複合材料を得るために様々な比率でエポキシ又はポリマーと混合することができる。1つの実施形態において、例えば、「スラリー」複合材料は、マイクロバルーン及びエポキシ又はポリマーと混合される。このような充填材材料は従来から良く知られている。
【0043】
ダイシング及び関連の切り溝の生成は、熱伝導層がマッチング層を覆った後に、又は熱伝導層がマッチング層を覆う前に行われる。
図4のフローチャートには、各アレイ金属化工程の両方を適時選択する異なるプロセスを表すプロセスが示されている。
【0044】
図4を参照すると、1つの実施形態において、開示された技術の実施形態による超音波変換器組立体を作成するプロセスは、バッキング層又はバッキングブロックを鋳造することから始まり(プロセスブロック401)、バッキング層401の中に溝又は谷部を作るために機械加工/フライス加工プロセスを実行する(プロセスブロック402)。1つの実施形態において、バッキング層401は、バッキング金属化プロセスを受ける(プロセスブロック403)。次に、バッキング層401上にスクライブラインが形成される(ブロック404)。
【0045】
スクライブラインを形成した後に、変換器層430及び様々なマッチング層及びデマッチング層431が、バッキング層401と一緒に積み重ねられて積層/接合される(プロセスブロック405)。この接合は、従来から良く知られている方法で行われる。
【0046】
この時点で、プロセスは、ダイシング及び関連の切り溝の生成が、熱伝導層がマッチング層431を覆った後に行われるか又は熱伝導層がマッチング層431を覆う前に行われるかに従って二つの方向に進むことができる。
【0047】
プロセスブロック410において、被覆プロセスは、変換器430及びマッチング層431の積層体上に熱伝導層(例えば、
図2Aの熱伝導層204)を施工するために行われる。1つの実施形態において、被覆プロセスは、スパッタリング又は他の蒸着プロセス又は他の堆積プロセスを含む。1つの実施形態において、堆積プロセスは、超音波変換器の音響性能に影響を与えない。
【0048】
次に、プロセスブロック411において、プロセスは、変換器430、マッチング層431、及び熱伝導層内に1又は2以上の切り溝を形成するために1又は2以上のカットを行う。その後、プロセスブロック412において、プロセスは、例えば、限定されるものではないが、銀エポキシなどの接着剤を塗布することで、熱伝導層に側面シールド(例えば、
図2Aの側面シールド206)を取り付ける(プロセスブロック413)。
【0049】
ブロック414において、プロセスは、アレイダイシングプロセス(プロセスブロック411)の間に形成された切り溝の少なくとも一部を充填材材料(例えば、RTV、マイクロバルーンなど)で充填し、変換器組立体の前方上にレンズ材料(例えば、RTV又は他の適切なレンズ材料)を施工する。後続の変換器の組み立て及び試験プロセス(プロセスブロック415)は、限定されるものではないが、変換器をケーブルに取り付けること、RFIシールド(例えば、
図2AのRFIシールド207)を施工すること、RFIシールドを側面シールドに結合するために及びRFIシールドをケーブルシールドに結合するために、例えば、限定されるものではないが、銀エポキシなどの接着剤を塗布すること、最後に試験を行うことを含む。
【0050】
熱伝導層(例えば、
図2Aの熱伝導層204)が切り溝の充填後に行われる場合、プロセスブロック420-426が実行される。これらのプロセスは、切り溝充填プロセスとレンズ形成プロセスが別であること以外はプロセスブロック410-415で行われる工程と同じである。
【0051】
図5は、変換器の表面温度を低下させるために本明細書に記載されたれ技術を使用した結果を明示する。これらの結果は、9MHzの変換器表面温度の特定の初期の研究室熱測定で観察された。複数の変換器イメージング伝達条件についての
図5に示す変換器表面温度に関して、上側のグラフは熱伝導層なしの変換器組立体からの測定値を示すが、下側のグラフは、熱伝導層を備える変換器組立体からの測定値を示す。
【0052】
文脈上明白に他の意味に解釈すべき場合を除いて、説明及びクレームを通して、用語「備える」「備えている」及び同様のものは、排他的又は限定的な意味とは対照的に、包括的な意味、すなわち「含むがこれに限定されない」という意味に解釈される。本明細書で用いられる場合、用語「結合される」「連結される」又はその何らかの異形は、2又は3以上の要素の間で直接的な又は間接的な何らかの結合又は連結されることを意味し、各要素の間を結合する又は連結することは、物理的、論理的、又はこれらの組み合わせとすることができる。加えて、用語「本明細書において」「上記の」「下記の」及び類似の意味の用語は、本出願で用いる場合、本出願を全体として参照するが、本出願の何らかの特定の部分を参照するものではない。文脈が容認する場合、上記の詳細な説明の単数又は複数を用いる用語は、それぞれ単数又は複数を含む場合がある。2又は3以上の要素のリストに関連する用語「又は」は、リスト内の何らかの要素、リスト内の全ての要素、リスト内の要素の何らかの組み合わせという、用語の解釈の全てをカバーする。
【0053】
当業者には、上記の説明を読むことで本発明の多くの変形例及び修正例が明らかになるはずであるが、例示的に示され説明された何らかの特定の実施形態は、決して限定するものとして見なされることが意図されていないことを理解されたい。従って、様々な実施形態の詳細内容への言及は、それ自体が発明の本質と見なされるこれらの特徴部を列挙する特許請求の範囲を限定することが意図されていない。
【符号の説明】
【0054】
252 変換器層
253A マッチング層
253B マッチング層
253C マッチング層
260 デマッチング層
251 バッキング