(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】乾燥粉末吸入装置
(51)【国際特許分類】
A61M 15/00 20060101AFI20231002BHJP
A61M 13/00 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
A61M15/00 Z
A61M13/00
(21)【出願番号】P 2021540451
(86)(22)【出願日】2020-01-13
(86)【国際出願番号】 IB2020050232
(87)【国際公開番号】W WO2020148631
(87)【国際公開日】2020-07-23
【審査請求日】2022-12-09
(32)【優先日】2019-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100167911
【氏名又は名称】豊島 匠二
(72)【発明者】
【氏名】コッカー ロビン クレイグ
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッドソン クリストファー イアン
(72)【発明者】
【氏名】ハン スティーヴ
(72)【発明者】
【氏名】キング ベン アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ムッティ ポール
(72)【発明者】
【氏名】ステンツラー アレックス
(72)【発明者】
【氏名】ティバッツ ジェイムズ
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/017358(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0298768(US,A1)
【文献】国際公開第2018/165769(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 15/00
A61M 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥粉末吸入器であって、
近位端、遠位端、およびそれらの間に配置された空気吸込み口を備える細長い本体と、
貯蔵空洞を備える貯蔵部と、
前記本体内に少なくとも部分的に収容された気道組立品であって、前記気道組立品が第一の気道を備え、前記気道組立品が内側気道要素および外側気道要素を備え、前記外側気道要素が前記内側気道要素を少なくとも部分的に囲み、前記内側気道要素が、前記
外側気道要素の中に突出する少なくとも一つの湾曲したフィンを備える、気道組立品と、
前記第一の気道に接続されているマウスピース気道を含むマウスピースと、
前記貯蔵空洞の中に延びる前記気道組立品に取り付けられた気道ヘッドと、
前記貯蔵空洞を前記第一の気道に接続する前記気道組立品の少なくとも一つの気道組立品開口部と、を備える、乾燥粉末吸入器。
【請求項2】
前記内側気道要素が内側要素気道を備え、前記外側気道要素が外側要素気道を備え、前記内側気道要素が、前記内側要素気道を前記外側要素気道に接続するための少なくとも一つの気道通路を備える、請求項1に記載の乾燥粉末吸入器。
【請求項3】
前記外側気道要素が、前記外側要素気道を前記空気吸込み口に接続するための少なくとも一つの壁開口部を備える、請求項2に記載の乾燥粉末吸入器。
【請求項4】
前記内側気道要素が、前記
外側気道要素の中に突出する複数の湾曲したフィンを備える、請求項1に記載の乾燥粉末吸入器。
【請求項5】
前記少なくとも一つの気道組立品開口部が前記気道ヘッドの近位にある、請求項1~4のいずれか一項に記載の乾燥粉末吸入器。
【請求項6】
前記少なくとも一つの気道組立品開口部が、前記気道ヘッドの近位にある第一および第二の気道組立品開口部を備える、請求項5に記載の乾燥粉末吸入器。
【請求項7】
前記貯蔵部の遠位に位置付けられた、かつ前記貯蔵部を近位方向に付勢するように構成された貯蔵部ばねをさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の乾燥粉末吸入器。
【請求項8】
前記貯蔵部の移動を制限するように構成されている湾曲した溝を備える用量セレクターカムスリーブをさらに備える、請求項7に記載の乾燥粉末吸入器。
【請求項9】
要素が回転される時に前記移動が制限される、請求項8に記載の乾燥粉末吸入器。
【請求項10】
前記用量セレクターカムスリーブの回転移動を制限するように構成されている前記用量セレクターカムスリーブに接続された用量セレクターリングをさらに備える、請求項9に記載の乾燥粉末吸入器。
【請求項11】
前記用量セレクターリングを複数の位置にロックするための複数のくぼみを備えるシャーシをさらに備える、請求項10に記載の乾燥粉末吸入器。
【請求項12】
前記マウスピースが、前記本体の近位端に配置されたマウスピース開口部の中に遠位に格納されるように構成されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の乾燥粉末吸入器。
【請求項13】
前記マウスピースが完全に遠位に格納されている時に、前記少なくとも一つの気道組立品開口部を少なくとも部分的に閉塞するプラグを前記気道組立品が備える、請求項12に記載の乾燥粉末吸入器。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
喫煙者および傍観者に対する従来のたばこの立証された健康危害を理由に、対象者の肺へのニコチン送達に適した代替手段を見つけるために市場において変化が見られる。生理活性材料を対象者の肺に送達することが望ましい場合がある。例えば、副流煙を生じさせることなく、かつ従来のたばこの喫煙に伴う不快な臭気なく、対象者の肺にニコチンを送達することが望ましい場合がある。これを達成するために一つの機構は、乾燥粉末製剤としての生理活性材料の吸入によるものである。こうしたシステムにおいて、乾燥粉末吸入器を使用して、血流への吸収のために肺の内表面上に粉末を堆積させる。しかしながら、多くの乾燥粉末吸入器は、多数の望ましくない特徴を有する。
【0002】
例えば、多くの装置は、患者が薬剤の即時または完全な送達を必要とする医学的状態のために設計されている。これらの装置は、一回の吸入で薬剤を送達する。それ故に、これらの装置は、数回の吸入で乾燥粉末を送達する必要のある用途には適していない。さらに、これらの装置は、薬剤を直接通ってまたは横切って流れる気流に依存し、これは薬剤の一部が高速で移動し、対象者の気道の望ましくない部分に影響を与える原因となる。
【0003】
他の装置は、その使用のために過度に複雑なまたは扱いにくい機構に依存する。例えば、カプセルを回転させて遠心力によって粉末を排出するためにプロペラが使用されていたり、または離散的な量の粉末を吸入器の気流経路の中に堆積させるために、様々な回転機構もしくはスライド機構が使用されていたりする。これらの装置はまた、離散的に使用することが困難である。さらに、先行技術設計の多くは、予め測定した投与量を含有するカプセルまたはブリスターパックと併用するためのものである。投与量を切り替える機構は、複数の予め測定した投与量を収容しなければならないため、しばしば扱いにくくてかさばる。さらに、各投与の量をカスタマイズする簡単な方法はない。
【0004】
別の既存の装置が、Bulbrookに対する米国特許番号6,234,169号(「Bulbrook」)に示されていて、これには円錐内部で渦様の効果を発生させるための乾燥粉末貯蔵部の中に突き出す円錐形の装置が記述されている。この装置は渦を使用して貯蔵部内部に落ちて、粉末のスラグを拾い上げ、それを個人の気道に送達する。ところが、Bulbrookの設計上の制限は、粉末の凝集を十分に分散して望ましいエアロゾルをユーザーに送達するために、貯蔵部内部で適切なエネルギーを提供しないことである。Bulbrookの設計ではまた、偶発的な粉末の放出を防止する信頼できる方法や、貯蔵部を切り替えるための機能が欠如している。また、Droughtらに対する欧州特許公報第EP0691865号、およびClarkらに対する欧州特許公報第0407028号など、当技術分野で記載された他の設計も、本明細書に記載の先行技術の多くの欠陥に対処していない。
【0005】
離散的な設計で使いやすさを維持しながら、ユーザー吸入のために、増加した量の粉末を気道の中に捕らえることができるように十分な乱気流を作り出すことができる乾燥粉末吸入器を提供することが望ましい。さらに、各吸入に対して、測定されていながらカスタマイズ可能な量の乾燥粉末を分配できる乾燥粉末吸入器が必要である。またさらに、吸入器が、予め測定したカプセルまたはブリスターパックを通して循環する従来の機構に頼る必要がないように、吸入器は乾燥粉末をバルク保存貯蔵部に保存すべきである。
【発明の概要】
【0006】
一実施形態において、乾燥粉末吸入器は、近位端と、遠位端と、その間に配置された空気吸込み口とを含む細長い本体を含み、貯蔵部は貯蔵空洞を含み、気道組立品は細長い本体内に少なくとも部分的に収容されていて、気道組立品は第一の気道を含み、マウスピースは第一の気道に接続されているマウスピース気道を含み、気道ヘッドは貯蔵空洞の中に延びる気道組立品に取り付けられていて、気道組立品の少なくとも一つの気道組立品開口部は貯蔵空洞を第一の気道に接続する。
【0007】
一実施形態において、気道組立品は、内側気道要素および外側気道要素を含み、外側気道要素は、内側気道要素を少なくとも部分的に囲む。一実施形態において、内側気道要素は内側要素気道を含み、外側気道要素は外側要素気道を含み、内側気道要素は内側要素気道を外側要素気道に接続するための少なくとも一つの気道通路を含む。一実施形態において、外側気道要素は、外側要素気道を空気吸込み口に接続するための少なくとも一つの壁開口部を含む。一実施形態において、内側気道要素は、外側要素気道の中に突出する少なくとも一つの湾曲したフィンを含む。一実施形態において、内側気道要素は、外側要素気道の中に突出する複数の湾曲したフィンを含む。一実施形態において、少なくとも一つの気道組立品開口部は気道ヘッドの近位にある。一実施形態において、少なくとも一つの気道組立品開口部は、気道ヘッドの近位にある第一および第二の気道組立品開口部を含む。一実施形態において、乾燥粉末吸入器は、貯蔵部の遠位に位置付けられた、かつ貯蔵部を近位方向に付勢するように構成された貯蔵部ばねを含む。一実施形態において、乾燥粉末吸入器は、貯蔵部の移動を制限するように構成されている湾曲した溝を含む用量セレクターカムスリーブを含む。一実施形態において、移動は要素が回転する時に制限される。一実施形態において、乾燥粉末吸入器は、用量セレクターカムスリーブの回転移動を制限するように構成されている用量セレクターカムスリーブに接続された、用量セレクターリングを含む。一実施形態において、乾燥粉末吸入器は、複数の位置に用量セレクターリングをロックするための複数のくぼみを含むシャーシを含む。一実施形態において、複数の位置のそれぞれは、用量セレクターカムスリーブの回転移動を45度間隔に制限する。一実施形態において、マウスピースは、本体の近位端に配置されたマウスピース開口部の中に遠位に格納するように構成されている。一実施形態において、気道組立品は、マウスピースが完全に遠位に格納されている時に、少なくとも一つの気道組立品開口部を少なくとも部分的に閉塞するプラグを含む。一実施形態において、プラグは、マウスピースが完全に近位に延びた状態の時に、少なくとも一つの気道組立品開口部を閉塞解除する。
【0008】
貯蔵部は、乾燥粉末の量を保存するように構成されてもよい。貯蔵部は、バルク量の乾燥粉末を保存するように構成されてもよい。貯蔵部は、ある量の乾燥粉末を含有しうる。貯蔵部は、バルク量の乾燥粉末を含有しうる。貯蔵部にバルク量の乾燥粉末を保存することは有利なことに、予め測定した量で粉末を保存する必要なく、吸入器が乾燥粉末の複数回用量を保持することを可能にしうる。
【0009】
乾燥粉末は、生理活性材料を含んでもよい。本明細書で使用される「生理活性材料」という用語は、生体、組織、または細胞に影響を及ぼす材料を指す。生理活性材料は、薬物を含んでもよい。生理活性材料は、何らかの予防的または薬理学的効果を提供しうる。生理活性材料は、対象者において局所的または全身的効果を生じさせる少なくとも一つの生理学的または薬理学的に活性な物質を含みうる。
【0010】
生理活性材料は、抗生物質、抗体、抗ウイルス剤、抗てんかん薬、鎮痛剤、抗炎症剤、および気管支拡張剤のうちの少なくとも一つを含みうる。生理活性材料は、無機化合物および有機化合物のうちの少なくとも一つを含んでもよい。生理活性物質は、末梢神経、アドレナリン受容体、コリン受容体、骨格筋、心血管系、平滑筋、血液循環系、シナプス部位、神経エフェクター接合部、内分泌系およびホルモン系、免疫系、生殖系、骨格系、オータコイド系、消化系および排出系、ヒスタミン系、中枢神経系のうちの少なくとも一つに作用するように構成されうる。
【0011】
生理活性材料は、多糖類、ステロイド、睡眠剤または鎮静剤、精神賦活薬、精神安定剤、抗痙攣剤、筋弛緩剤、抗パーキンソン剤、筋収縮剤、抗微生物剤、抗マラリア剤のうちの少なくとも一つを含みうる。生理活性材料は、ホルモン剤を含んでもよい。例えば、生理活性材料は、避妊薬、交感神経刺激薬、ポリペプチド、および生理学的効果を引き出すことができるタンパク質、利尿剤、脂質調節剤、抗アンドロゲン剤、抗寄生虫剤、新生物薬、抗悪性腫瘍薬、血糖降下剤のうちの少なくとも一つを含みうる。生理活性材料は、栄養剤およびサプリメント、成長サプリメント、ビタミンまたはミネラル、抗腸炎剤、電解質、診断薬のうちの少なくとも一つを含みうる。
【0012】
生理活性材料は、カルシトニン、エリスロポエチン(EPO)、第Vlll因子、第IX因子、セレダーゼ、セレザイム、シクロスポリン、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)、アルファ-1プロテイナーゼ阻害剤、エルカトニン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GMCSF)、成長ホルモン、ヒト成長ホルモン(hGH)、成長ホルモン放出ホルモン(GHRH)、ヘパリン、低分子量ヘパリン(LMWH)、 インターフェロンアルファ、インターフェロンベータ、インターフェロンガンマ、インターロイキン-2、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)、ロイプロリド、ソマトスタチン、オクトレオチドを含むソマトスタチン類似体、バソプレシン類似体、卵胞刺激ホルモン(FSH)、免疫グロブリン、インスリン様成長因子、インシュリントロピン、インターロイキン-1受容体拮抗薬、インターロイキン-3、インターロイキン-4、インターロイキン-6、マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF)、神経成長因子、副甲状腺ホルモン(PTH)、チモシンアルファl、llb/llla阻害剤、アルファ-1抗トリプシン、RSウイルス抗体、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)遺伝子、デオキシリボヌクレアーゼ(Dnase)、殺菌性/浸透性増大タンパク質(BPI)、抗CMV抗体、インターロイキン-1受容体、l3-シスレチノイン酸、ニコチン、ニコチン塩、 ニコチン酒石酸水素塩、ニコチン乳酸塩、ゲンタマイシン、シプロフロキサシン、アムホテリシン、アミカシン、トブラマイシン、ペンタミジンイセチオネート、アルブテロール硫酸塩、メタプロテレノール硫酸塩、 ベクロメタゾンジプロピオン酸塩、トリアムシノロンアセトアミド、ブデソニドアセトニド、臭化イプラトロピウム、フルニソリデ、フルチカゾン、プロピオン酸フルチカゾン、サルメテロールキシノフォエート、ホルメテロールフマル酸塩、クロモリンナトリウム、エルゴタミン酒石酸塩および類似体、上記のアゴニストおよびアンタゴニストのうちの少なくとも一つを含みうる。
【0013】
本発明の乾燥粉末吸入器は、生理活性材料を対象者の気道の領域に送達するように構成されうる。生理活性材料の肺送達は、比較的に非侵襲的であり、生理活性材料が対象者の代謝を最初に通過するのを回避する可能性があり、呼吸器疾患の治療のために作用部位への生理活性材料の直接的な送達を可能にする可能性があり、生理活性材料が対象者の気道の大きい表面積に送達されることを可能にしうるので、有利でありうる。
【0014】
乾燥粉末は、肺障害および全身性障害の治療および予防のための予防薬または治療薬を含みうる。肺障害は、従来の投与方法によって効果的に治癒することは困難な場合がある。肺障害および全身性障害には、慢性閉塞性肺疾患、肺がん、嚢胞性線維症、結核、喘息が含まれる。
【0015】
肺障害および全身性障害の治療および予防のための予防薬または治療薬は、β2アドレナリン作動薬、コルチコステロイドおよびクロモン、抗コリン薬のうちの少なくとも一つを含みうる。コルチコステロイド吸入器(乾燥粉末または定量吸入器)は、成人のための一次抗炎症治療となっていて、小児において非常に広く使用されている。全身的に活性なコルチコステロイド(例えば、プレドニゾンまたはデキサメタゾン)は吸入することができる。
【0016】
乾燥粉末は、ペプチドまたはタンパク質のうちの少なくとも一つを含みうる。局所作用のために肺に直接投与することは、全身性の有害作用を回避しながら、高用量のタンパク質およびペプチドを分布させることを可能にする。例えば、乾燥粉末は、インスリン、ヒト成長ホルモン(hGH)、カルシトニン、副甲状腺のうちの少なくとも一つを含んでもよい。これらはそれぞれ、糖尿病、ホルモン欠損症、骨粗しょう症を治療するために使用されうる。他の例には、骨障害を治療するための組み換え型ヒト顆粒球コロニー刺激因子が含まれるが、これに限定されない。
【0017】
乾燥粉末は、少なくとも一つの抗生物質を含みうる。例えば、乾燥粉末は、慢性緑膿菌感染を有する嚢胞性線維症(CF)患者の維持療法としてのトブラマイシンを含んでもよい。
【0018】
乾燥粉末は、少なくとも一つのワクチンを含みうる。ワクチンは、予防ワクチンまたは治療ワクチンであってもよい。例えば、乾燥粉末は、全身性、粘膜液性、ならびに細胞媒介性免疫反応を誘発するために、噴霧凍結乾燥によって調製されたイヌリン安定化インフルエンザサブユニットワクチンを含んでもよい。
【0019】
乾燥粉末は、ニコチンを含みうる。本明細書で使用される「ニコチン」という用語は、ニコチンおよび任意の形態のニコチン誘導体を意味し、これは遊離塩基ニコチン、ニコチン塩、または糖基質または有機金属化合物などの基質に含有されるものなどを含むがこれらに限定されない。
【0020】
一実施形態において、乾燥粉末吸入器の気道の中に乾燥粉末を分配する方法は、バルク量の乾燥粉末を貯蔵部に保存する工程と、バルク乾燥粉末の一部分を乾燥粉末吸入器の吸入気道の中に削る工程とを含む。一実施形態において、方法は、削る工程中に、貯蔵部を気道ヘッドに向かって移動することを含む。一実施形態において、方法は、削る工程中の貯蔵部の移動を、複数の選択可能な位置のうちの一つに制限することを含む。一実施形態において、乾燥粉末吸入器から乾燥粉末を吸入する方法は、乾燥粉末を乾燥粉末吸入器の気道の中に分配する工程と、乾燥粉末吸入器を吸入して気道内に陰圧を発生させ、乾燥粉末をエアロゾル化して吸入する工程とを含む。一実施形態において、吸入する工程は、乾燥粉末をエアロゾル化するために気道内に渦(または旋風)気流を発生させることを含む。一実施形態において、吸入する工程は、乾燥粉末を吸入するために気道内の渦(または旋風)気流を減衰させることを含む。
【0021】
一実施形態において、乾燥粉末吸入器は、渦(または旋風)気流を発生させるように構成された少なくとも一つの突起部を含む第一の気道と、渦(または旋風)気流を減衰させるように構成された移行気道によって第一の気道に接続された第二の気道とを含む。
【0022】
一実施形態において、乾燥粉末吸入のための方法は、バルク量の乾燥粉末を貯蔵部に保存する工程と、バルク乾燥粉末の一部分を乾燥粉末吸入器の第一の気道の中に移動する工程、第一の気道に渦(または旋風)気流を発生させてバルク乾燥粉末の一部分をエアロゾル化する工程と、第一の気道に接続された移行気道で渦(または旋風)気流を減衰させる工程とを含む。
【0023】
前述の目的および特徴、ならびに他の目的および特徴は、以下の説明および添付図を参照することで明らかとなり、これらは本発明の理解を提供するために含まれていて、本明細書の一部を構成し、同様の数字は同様の要素を表す。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1A】
図1Aは、一実施形態による、マウスピースが格納された乾燥粉末吸入器の斜視図である。
【
図1B】
図1Bは、一実施形態による、マウスピースが延びた乾燥粉末吸入器の斜視図である。
【
図1C】
図1Cは、一実施形態による外部空気吸込み口の拡大図である。
【
図2】
図2は、一実施形態による乾燥粉末吸入器の斜視断面図である。
【
図3A】
図3Aは、一実施形態による気道組立品の拡大断面図である。
【
図3B】
図3Bは、一実施形態による気道組立品の代替の拡大断面図である。
【
図3C】
図3Cは、一実施形態による、内側気道要素(およびマウスピース)が引き出された気道組立品の拡大図である。
【
図3D】
図3Dは、一実施形態による、内側気道要素(およびマウスピース)が引き出された気道組立品の拡大図である。
【
図3E】
図3Eは、一実施形態による、内側気道要素(およびマウスピース)が引き出された気道組立品の拡大図である。
【
図3F】
図3Fは、一実施形態による気道組立品の代替の拡大断面図である。
【
図3G】
図3Gは、一実施形態による内側気道要素の拡大斜視図である。
【
図4A】
図4Aは、一実施形態による内側気道要素の拡大斜視図であり、吸入気流経路が示されている。
【
図4B】
図4Bは、一実施形態による気道組立品の拡大断面図であり、吸入気流経路が示されている。
【
図5A】
図5Aは、一実施形態による乾燥粉末吸入器の三つの組立品の斜視分解図である。ばね組立品170、気道組立品140、およびドライバ組立品110が示されている。
【
図6A】
図6Aは、一実施形態によるドライバ組立品の斜視図である。
【
図6B】
図6Bは、一実施形態によるドライバ組立品の斜視分解図である。
【
図7A】
図7Aは、一実施形態による気道組立品の斜視図である。
【
図7B】
図7Bは、一実施形態による気道組立品の斜視分解図である。
【
図7C】
図7Cは、一実施形態による気道組立品の斜視分解断面図である。
【
図8A】
図8Aは、一実施形態によるばね組立品の斜視図である。
【
図8B】
図8Bは、一実施形態によるばね組立品の斜視分解図である。
【
図9A】
図9Aは、一実施形態による、部分的に組み立てられたドライバ組立品(例示目的のため、用量セレクターカムスリーブは透明である)の拡大側面図である。
【
図9B】
図9Bは、一実施形態による用量セレクターカムスリーブである。
【
図9C】
図9Cは、一実施形態による、部分的に組み立てられたドライバ組立品上の投与量選択構成要素の拡大側面図である。
【
図9D】
図9Dは、一実施形態による、部分的に組み立てられたドライバ組立品上の投与量選択構成要素の拡大側面図である(例示目的のため、シャーシは透明である)。
【
図10】
図10は、一実施形態による乾燥粉末吸入器の気道の中に乾燥粉末を分配する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の図および説明は、本発明のより明確な理解に必要な要素を図示するために簡略化されている一方、乾燥粉末吸入装置、システムおよび方法に見られる多くの他の要素が明確化の目的で省かれていることが理解される。当業者は、本発明の実施において、他の要素または工程が望ましいか、または必要であることを認識しうる。しかしながら、こうした要素および工程は当業界で周知であるため、またこれらは本発明のより良好な理解を促進しないため、こうした要素および工程の考察は本明細書では提供されていない。本明細書の開示は、当業者にとって周知のこうした要素および方法に対するすべてのこうした変形および修正を対象とする。
【0026】
別途定義されていない限り、本明細書で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解しているものと同じ意味を有する。本明細書に説明されているものと類似または同等の任意の方法および材料を本発明の実施または試験で使用することができるものの、好ましい方法および材料について説明する。
【0027】
本明細書で使用する以下の用語の各々は、このセクションにおいてその用語と関連付けられた意味を有する。
【0028】
本明細書で使用する「一つ」という用語は、この用語の被修飾語の一つ、または一つ以上(すなわち、少なくとも一つ)を言及するために使用される。一例として、「一つの要素」は、一つのある要素または一つ以上のある要素を意味する。
【0029】
ここで図面を詳細に参照すると(これらの図面における同様の参照番号は、幾つかの図を通して同様の部品または要素を示す)、様々な実施形態において、乾燥粉末装置および方法が本明細書に提示されている。
【0030】
一実施形態によると、完全に組み立てられた乾燥粉末吸入器100が
図1Aおよび
図1Bに示されている。乾燥粉末吸入器100は、シャーシ118の空気吸込み口120を収容するための空気入口開口部113を有する細長い本体カバー112を有する。空気吸込み口120のうちの一つは
図1Cの拡大図に、より詳細に示されている。シャーシ118の第二の空気吸込み口(図示せず)は、空気吸込み口120と対向して平行に延び、これも開口部113内に位置付けられている。また
図1Aおよび
図1Bを参照すると、マウスピース開口部116は、吸入器100の近位端102に配置されていて、格納可能なマウスピース122がそれを通って展開および延びることを可能にするようにサイズ設定されている。マウスピース122は、負の渦(または旋風)気流を発生させるために、および装置の気道の粉末をエアロゾル化するために、吸入器100の気道に接続するマウスピース内腔124を有する。用量セレクターリング138は、吸入器100の遠位端104から延び、本体カバー112の遠位端に隣接する。
【0031】
一実施形態の本体カバーは概して円筒状であるが、本体カバーの外形は、正方形、五角形、六角形などの任意の形状とすることができ、またはそうでなければ、任意の数の平坦な面もしくは湾曲した面を有することができる。一実施形態において、本体カバーは交換可能であり、その結果、ユーザーは本体カバーを交換して、装置に異なる外観をいつでも与えることができる。またスキンを本体カバーの上にかぶせて、吸入器の外観を素早く変化させるために使用できる。一実施形態において、本体カバーの表面は、吸入器を保持しやすいように、希望通りに輪郭形成されうる。本体カバーはまた、一つ以上のテクスチャグリッパー部分を有することができる。
【0032】
一実施形態による乾燥粉末吸入器100の断面図が
図2に示されている。マウスピース122は、マウスピース開口部116の内部にとどまるように、格納位置で示されている。マウスピース122が近位102から引き出される時、マウスピース122に取り付けられた内側気道要素142もまた、近位方向102にスライドする。マウスピース122は、内側気道要素142の気道146に接続されているマウスピース内腔124を有する。マウスピース122は、スライダ128および貯蔵部ドライバ130と列をなして接続されている。内側気道要素142は、外側気道要素150によって同軸に囲まれている。内側および外側気道要素142、150の遠位端は、貯蔵空洞158の中に延び、そこにバルク量の乾燥粉末を保存することができる。
【0033】
貯蔵部157は、貯蔵部キャップ159によって定位置に固定されている。内側気道要素142、外側気道要素150、貯蔵部157および貯蔵部キャップ159は、貯蔵部ドライバ130によって少なくとも部分的に囲まれている。装置100の遠位端104にて、用量セレクターリング138は、吸入前に気道の中に分配される乾燥粉末の量を制御するために、用量セレクターカムスリーブ132に動作可能に接続されている。装置100の遠位端にある貯蔵部ばねボタン176は、貯蔵部ばねピストン172を押す貯蔵部ばね174を少なくとも部分的に収容する。貯蔵部ばねボタン176は、以下でさらに詳細に説明する通り、押されて貯蔵部157を排出することができる。内側および外側気道要素142、150は、マウスピース122および内側気道要素142が遠位に押し込まれた時、内側気道要素プラグ148が外側気道要素150の遠位先端開口部を閉塞および密封するように構成されている。これは、湿った空気などの外部要素に曝露されたバルク粉末は粉末を固まらせる傾向があるため、装置100が使用されていない時に、新鮮さのために、保存されたバルク粉末を密封しておくのに役立つ。
【0034】
マウスピース122および内側気道要素142が引き出されると、外側気道要素150の遠位先端開口部は栓が抜かれ、貯蔵部157が気道ヘッド141の鋭利または傾斜した縁に向かって押し出されて回転すると、貯蔵空洞158内に詰められたある量の乾燥粉末が気道ヘッド141によって削り取られ、内側および外側気道要素142、150の気道156、146の中に堆積される。貯蔵部157ならびに内側および外側気道要素142、150のこの動作および構成は、
図3A~
図3Gの拡大図および実施形態を参照して、以下でさらに詳細に説明する。
【0035】
図3Aを参照すると、一実施形態によると、外側気道要素150は、鋭利または傾斜した先端、またはそうでなければ、開口部154を通して貯蔵空洞158に保存されたバルク粉末の部分を削り取る、擦り取る、または動かすように設計された先端を有する気道頭部141を有する。内側気道要素プラグ148は、外側気道要素150の開口部154を通って貯蔵空洞158の中に延びる。有利なことに、プラグ148は、装置100が使用されていない間に内側気道要素142が押し込まれた時、外部空気が貯蔵空洞158の中に循環するのを妨げる。プラグ148はまた、気道ヘッド141への貯蔵空洞158中のバルク粉末の曝露を阻止し、装置100が使用されていない間に気道ヘッド141によってバルク粉末が妨害またはセグメント化されることを防止する。
【0036】
内側気道要素142(およびマウスピース)が近位に引き出されている間の、内側気道要素142および外側気道要素150の代替図が
図3C~
図3Eに示されている。内側気道要素142が近位に引き出されると、気道ヘッド141および開口部154が露出する。気道ヘッド141は、貯蔵空洞158に保存された圧縮乾燥粉末と接触すると、乾燥粉末の部分を削り取ることができる一つ以上の縁を有することができる。それ故に、貯蔵部157および貯蔵空洞158が気道ヘッド141に向かって移動し、回転するにつれて、貯蔵空洞158に保存された乾燥粉末の部分は、バルク貯蔵粉末を削り落とし、開口部154を通って落下する。削り取られた乾燥粉末の大半は外側要素気道156の中に落ちるが、一部は内側要素気道146の中に落ちる可能性がある。内側気道要素142上のフィン144は、外側要素気道156を通る渦(または旋風)気流の発生を促進するために湾曲していて、これは
図4Aおよび
図4Bを参照して以下でさらに詳細に説明する。
【0037】
また
図3A~
図3Eを参照すると、気道ヘッド141は開口部154に隣接することができ、または気道ヘッド148の両側に開口部154が存在することができる。
【0038】
図3Fで別の角度から見た時、内側気道要素142の遠位端104は、内側要素気道146を外側要素気道156と接続するための移行気道として機能する幾つかのスロット149を有する。外側気道要素スロット152は、マウスピース内腔124に陰圧が加えられた時に、空気を外側要素気道156の中に引き出すために、空気吸込み口120と気流連通しているか、またはそうでなければ、外部または周囲空気と気流連通している。代替の角度から見た
図3Gには、分離された内側気道要素が示されていて、装置100の気道を通る渦(または旋風)の流れを促進および発生するためのフィン144の湾曲を示している。
【0039】
一実施形態による、内側および外側要素気道146、156を通る気流動態の描写が、今度は
図4A~
図4Bを参照して示されている。
図4Aは、内側気道要素142を別個に示し、外側気道要素スロット位置152を示す。
図4Bは、近位に引き戻された内側気道要素142と、貯蔵部157の中に挿入された外側気道要素150とを示す。
【0040】
図4Aおよび
図4Bの矢印は、気流の一般的な方向を表す。システムは、外側要素気道156に堆積された粉末の投与量を持ち上げるために渦状または渦(すなわち、旋風)気流の二段階の空気移動を発生させ、その後、内側要素気道146内に減衰された層状気流が生じる。
図4Aの矢印は、内側気道要素スロット149に近づいた時の、外側要素気道156を通る段階1の気流を示す。空気は、外側気道要素スロット152を通して外部または周囲空気源から引き出される。空気は湾曲したフィン144を通して方向付けられるため、渦(すなわち、旋風)気流が発生する。
【0041】
乾燥粉末の所望の部分が削り取られ、外側および内側要素の気道156、146内に存在するように、装置はユーザーの吸入前にプライミングされる。渦(すなわち、旋風)気流がスロット149に入る前および入るにつれて、気道の中に分配された乾燥粉末の投与量をエアロゾル化する。スロット149は、段階2の気流への移行を開始する。スロット149は、渦(すなわち、旋風)気流を減衰させ、渦(すなわち、旋風)気流をより層状の気流に変換する形状を有する。減衰された層流は引き続き、マウスピース内腔に向かって近位に流れ、エアロゾル化粉末を快適な流れレベルおよび圧力レベルでユーザーの口および肺の中に効率的かつ効果的に運ぶ。有利なことに、二段階の空気移動は、粉末エアロゾル化とユーザーの快適さの両方を最大化する。
【0042】
ここで
図5Aおよび
図5Bを参照すると、乾燥粉末吸入器100の三つの主要組立品が分解図で示されている。ドライバ組立品110は、シャーシ118を同軸に囲む本体112または細長い本体112を含む。シャーシ118の内部はマウスピース122であり、スライダ128および貯蔵部ドライバ130と列をなして接続されている。用量セレクターリング138は組立品110の遠位端にて、用量セレクターカムスリーブ132に取り付けられている。
【0043】
ここで、
図6Aおよび
図6Bに示す通りのドライバ組立品110を特に参照すると、シャーシ118の空気吸込み口120は、渦(すなわち、旋風)気流を発生させるために吸入中に外部空気が装置の気道の中に入ることを可能するように位置付けられている。気道ロック126は、マウスピース内腔と内側気道要素142の間の気道接続を遮断するために、スライドさせて入れたり出したりすることができる。用量セレクターリング138は、各吸入のために装置の気道の中にどれだけの乾燥粉末が堆積されるかを制御するために、回転して用量セレクターカムスリーブ132を設定することができる。このプロセスは、
図9A~
図9Dを参照して詳細に説明する。
【0044】
再び
図5Aおよび
図5Bを参照すると、気道組立品140は、内側気道要素142の部分を同軸に囲む外側気道要素150を含む。貯蔵部157は、貯蔵部キャップ159によって外側気道要素150の遠位端に固定されている。より多くの粉末を貯蔵部に再装填するために、気道組立品140は、ばね組立品170上のボタンを押してばね組立品170を排出することによって簡単に取り外すことができ、再充填または廃棄および交換のために気道組立品140を容易にスライドして外すことを可能にする。貯蔵部キャップ159は簡単に交換することができ、気道およびばね組立品140、170は、その後の使用のために再挿入される。予め充填されたバルク乾燥粉末を有する新しい気道組立品140も、(例えばユーザーが、同じ装置上で異なる風味または種類の粉末を経験するために)装置に付けたり外したりして交換することができる。
【0045】
ここで
図7A~
図7Dに示す通りの気道組立品140を特に参照すると、組み立てられた図(
図7A)および分解図(
図7B~
図7D)が示されている。一部上述した通り、気道プラグ148は、外側気道要素150の開口部154を通って、貯蔵空洞158の中に延びる。内側気道要素142が遠位に引き戻され、貯蔵部157が気道ヘッド141に向かって移動して回転すると、貯蔵空洞158中の保存された乾燥粉末の一部が開口部154を通って押し出され、その結果、渦(すなわち、旋風)気流によって捕らえられることができる。内側気道要素142上のフィン144は、渦(すなわち、旋風)気流の発生を促進するために湾曲している。スロット149は、内側要素気道146を外側要素気道156と接続する。外側気道要素スロット152は、外側要素気道156を外部または周囲空気に接続する。
【0046】
図8Aおよび
図8Bを参照すると、ばね組立品170は、貯蔵部ばね174および貯蔵部ばねピストン172を少なくとも部分的に収容する貯蔵部ばねボタン176を含む。貯蔵部ばね174は、ばね組立品170が装置100の残りの部分と組み立てられた時、貯蔵部ばねピストン174に一定の力を及ぼすように構成されている。
【0047】
図5Aおよび
図5Bに示す通りのばね組立品170を再び参照すると、貯蔵部ばね174は、貯蔵空洞158に保存されたバルク乾燥粉末が内側および外側気道要素142、150の遠位端に接触して押し上げられたままになるように、貯蔵部157に一定の力を及ぼす。貯蔵部ばねボタン176が押されると、ばね組立品170が排出され、点検または交換のために気道組立品をスライドして外すことを可能にする。
【0048】
ここで
図9A~
図9Dを参照して、用量選択機構をより詳細に説明する。用量セレクターリング138は、貯蔵部ドライバ130を同軸に囲む用量セレクターカムスリーブ132に接続されている。貯蔵部ドライバは、用量セレクターカムスリーブ132の湾曲した溝134の中に嵌合する突起部131を有する。突起部131は、溝の上部に到達して停止するまで湾曲した溝143を情報に移動することができる。貯蔵部157は貯蔵部ドライバ130に接続されているので、貯蔵部157の移動は用量セレクターリング138によって開始され、その一方で用量セレクターリングの移動の範囲は用量セレクターカムスリーブ132の位置によって制限されている。用量セレクターリング138は、様々な位置に回転されて、突起部131を湾曲した溝134のさらに上方に前進させることができ、用量セレクターリング138の各ねじれ中に貯蔵部157がどの程度近位に動くかを効果的に操作する。
図9Cおよび
図9D(例示の目的で、本体カバー112は取り除かれている)を特に参照して示す通り、シャーシ118は、用量セレクターリング138に接続された突起部137を保持するための幾つかのロッキングくぼみ119を有する。
【0049】
一実施形態において、ロッキングくぼみは、45度間隔で用量セレクターカムスリーブ132の回転を制限するように間隙を介していて、これは1回の用量に相当する。それ故に、例えば、特定の位置がセレクターカムスリーブ132の回転を90度に制限する場合、貯蔵部157の近位移動は、ユーザー吸入のための装置気道の中への乾燥粉末の2投与量分の削り取りと同等になる。
【0050】
一実施形態による、乾燥粉末吸入器の気道の中に乾燥粉末を分配する方法200もまた、
図10に示されている。バルク量の乾燥粉末が、工程202で貯蔵部に保存されている。貯蔵部は、工程204で気道ヘッドに向かって移動されている。これは、気道ヘッドを静止状態に保って貯蔵部を移動させることによって、または貯蔵部を静止状態に保って気道ヘッドを移動させることによって、または気道ヘッドおよび貯蔵部を相互に向かって同時に移動させることによって起こりうる。貯蔵部および気道ヘッドの相対的移動は、工程206で投与量を制御するために制限されることができる。気道ヘッドがバルク乾燥粉末に接触すると、バルク乾燥粉末の一部分は、工程208で乾燥粉末吸入器の気道の中に削り取られる。工程210での吸入中、工程212で乾燥粉末をエアロゾル化するために、乾燥粉末吸入器の気道内に渦が発生されうる。渦(すなわち、旋風)気流は、工程214でユーザーが吸入するために減衰したおよび/または層状の気流に変換されることができる。
【0051】
有利なことに、本明細書に記載の本発明の実施形態は、各吸入の前に、測定されるがカスタマイズ可能な量の乾燥粉末を分配することができる。さらに、吸入器は、制御された投与量を可能にする設計で、乾燥粉末をバルク保存貯蔵部に保存する能力を有しうる。この機能は、ロープロファイルで離散的な設計を特徴とする信頼性の高い機構で達成される。加えて、乾燥粉末吸入器は、増加した量の粉末が気道の中に捕らえられることができるように、効率的な渦(すなわち、旋風)気流を作り出す。気流はその後、ユーザー吸入のために、減衰したおよび/または層状の気流に変換されることができる。
【0052】
ありとあらゆる特許、特許出願、および本明細書で引用した出版物の開示はその全体が、参照によって本明細書に組み込まれる。当業者であれば理解する通り、構成要素の多くの形状は、構成要素の基本的な目的および機能を変えることなく変更されることができる。特定の実施形態を参照しながら本発明を開示してきたが、本発明の真の趣旨および範囲から逸脱することなく、本発明の他の実施形態および変形が他の当業者によって考案されうることは明らかである。