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特許7358483サセプタ組立品を備える誘導加熱エアロゾル発生装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】サセプタ組立品を備える誘導加熱エアロゾル発生装置
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/465 20200101AFI20231002BHJP
【FI】
A24F40/465
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021540921
(86)(22)【出願日】2019-09-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 EP2019075629
(87)【国際公開番号】W WO2020064683
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-09-21
(31)【優先権主張番号】18196673.0
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】ジノヴィク イハル ニコラエヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】タウリノ イレーヌ
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/150825(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第3228198(EP,A1)
【文献】特表2016-525341(JP,A)
【文献】国際公開第2017/153443(WO,A1)
【文献】米国特許第5880439(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/465
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル形成基体を加熱することによってエアロゾルを発生させるための誘導加熱エアロゾル発生装置であって、前記装置が、
- 加熱される前記エアロゾル形成基体を受容するための受容くぼみと、
- 交流電磁場を発生させるように構成された誘導源と、
- 前記誘導源によって発生した前記交流電磁場の影響下で前記受容くぼみ内の前記エアロゾル形成基体を誘導加熱するように構成および配置されたサセプタ組立品であって、第一のサセプタおよび第二のサセプタを含み、前記第一のサセプタが、正の抵抗温度係数を有する第一のサセプタ材料を含み、前記第二のサセプタが、負の抵抗温度係数を有する第二の強磁性またはフェリ磁性サセプタ材料を含むサセプタ組立品と、を含む、誘導加熱エアロゾル発生装置。
【請求項2】
前記第二のサセプタ材料が、摂氏350度未満、特に摂氏300度未満、好ましくは摂氏250度未満、最も好ましくは摂氏200度未満のキュリー温度を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第二のサセプタ材料が、ミューメタルまたはパーマロイのうちの一つを含む、請求項1または2のいずれか一項に記載の装置。
【請求項4】
前記第一のサセプタ材料が、常磁性、強磁性もしくはフェリ磁性のうちの一つである、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記第一のサセプタ材料が、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、青銅、コバルト、普通炭素鋼、ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、またはオーステナイト系ステンレス鋼のうちの一つを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記第一のサセプタおよび前記第二のサセプタが、相互に密接な物理的接触をしている、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記第一のサセプタ、または前記第二のサセプタ、またはその両方の前記第一および前記第二のサセプタ、特に前記サセプタ組立品の全体が、サセプタフィラメント、またはサセプタメッシュ、またはサセプタウィック、またはサセプタピン、またはサセプタロッド、またはサセプタブレード、またはサセプタ細片、またはサセプタスリーブ、またはサセプタカップ、または円筒形サセプタ、または平面サセプタのうちの一つである、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記サセプタ組立品が多層サセプタ組立品であり、前記第一のサセプタおよび前記第二のサセプタが、層、特に前記多層サセプタ組立品の隣接する層を形成する、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記第二のサセプタが、各々が、前記第一のサセプタと密接な物理的接触をしている一つ以上の第二のサセプタ要素を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記誘導源が少なくとも一つのインダクタを備える、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
インダクタが、らせん状コイルまたはフラット平面状コイル、特にパンケーキコイルまたは湾曲した平面状コイルである、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記第一のサセプタおよび前記第二のサセプタのうちの少なくとも一つの少なくとも一部、または前記サセプタ組立品の少なくとも一部が保護カバーを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記装置が、前記エアロゾル形成基体を所定の動作温度に加熱するように構成され、前記第二のサセプタ材料が、前記動作温度より少なくとも摂氏20度、特に少なくとも摂氏50度、より具体的には少なくとも摂氏100度、好ましくは少なくとも摂氏150度、最も好ましくは少なくとも摂氏200度低いキュリー温度を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
特に前記エアロゾル形成基体の前記所定の動作温度への加熱を制御するための閉ループ構成において、前記誘導源の動作を制御するように構成されたコントローラをさらに備える、請求項1~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載のエアロゾル発生装置と、前記エアロゾル発生装置で使用するためのエアロゾル発生物品とを備え、前記エアロゾル発生物品がエアロゾル形成基体を含む、エアロゾル発生システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゾル形成基体を加熱することによってエアロゾルを発生させるための誘導加熱エアロゾル発生装置に関する。本発明は、こうしたエアロゾル発生装置と、加熱されるエアロゾル形成基体を含む装置で使用するためのエアロゾル発生物品とを備えるエアロゾル発生システムにさらに関する。
【背景技術】
【0002】
加熱時に吸入可能なエアロゾルを形成することができるエアロゾル形成基体の誘導加熱に基づくエアロゾル発生システムは、先行技術から一般的に公知である。こうしたシステムは、加熱される基体を受容するための受容くぼみを有するエアロゾル発生装置を備えてもよい。基体は、装置で使用するために構成されているエアロゾル発生物品の一体型の一部であってもよい。基体を加熱するために、装置は、サセプタおよび誘導源を含む誘導性ヒーターを備えてもよい。誘導源は、熱を発生する渦電流またはヒステリシス損失のうちの少なくとも一つをサセプタ内に誘起する交流電磁場を発生するように構成される。装置の一部であるサセプタは、装置内に受容された時にエアロゾル形成基体と熱的に近接する、または直接物理的に接触するように配置される。
【0003】
基体の温度を制御するために、異なる材料で作製された第一のサセプタおよび第二のサセプタを備えるサセプタ組立品が提案されてきた。第一のサセプタ材料は、熱損失に関して、それ故に加熱効率に関して最適化されている。対照的に、第二のサセプタ材料は温度マーカーとして使用される。このために、第二のサセプタ材料は、サセプタ組立品の所定の動作温度に対応するキュリー温度を有するように選ばれる。そのキュリー温度にて、第二のサセプタの磁性は強磁性またはフェリ磁性から常磁性に変化し、その電気抵抗の一時的な変化が伴う。それ故に、誘導源によって吸収された電流の対応する変化を監視することによって、第二のサセプタ材料がそのキュリー温度に達した時に、およびそれ故に、所定の動作温度に達した時に、その変化を検知することができる。
【0004】
しかしながら、誘導源によって吸収される電流の変化を監視するとき、第二のサセプタ材料がそのキュリー温度に達したときの状況と、電流が同様の特性変化を示す間、ユーザーが吸煙(特に、最初の吸煙)するときの状況とを区別するのが困難である場合がある。ユーザーの吸煙中の電流の変化は、ユーザーが吸煙する時、空気がエアロゾル発生物品を通して引き込まれることによって引き起こされるサセプタ組立品の冷却に起因する。冷却は、サセプタ組立品の電気抵抗の一時的な変化に影響する。これは次に、誘導源によって吸収される電流の対応する変化を引き起こす。典型的には、ユーザーの吸煙中のサセプタ組立品の冷却は、一時的に加熱電力を増加させることによってコントローラのように弱められる。しかしながら、このコントローラによって誘発される加熱電力の一時的な増加は、実際には、第二のサセプタ材料がそのキュリー温度に達したことによる、電流の監視された変化が、誤ってユーザーの吸煙と識別された場合、サセプタ組立品の望ましくない過熱を不利に引き起こす可能性がある。
【0005】
従って、先行技術の解決策の利点を備えながらも、それらだけにとどまらない、誘導加熱エアロゾル発生装置を有することが望ましい。特に、改善された温度制御を可能にする誘導加熱エアロゾル発生装置を有することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本発明によると、エアロゾル形成基体を加熱することによってエアロゾルを発生させるための誘導加熱エアロゾル発生装置が提供されている。装置は、加熱されるエアロゾル形成基体を受容するための受容くぼみを備える。装置は、交流電磁場を発生させるように構成された誘導源をさらに備える。さらに、装置は、誘導源によって発生した交流電磁場の影響下で受容くぼみ内のエアロゾル形成基体を誘導加熱するように構成および配置されたサセプタ組立品を備える。サセプタ組立品は、第一のサセプタおよび第二のサセプタを備える。第一のサセプタは、正の抵抗温度係数を有する第一のサセプタ材料を含む。第二のサセプタは、負の抵抗温度係数を有する第二の強磁性またはフェリ磁性サセプタ材料を含む。
【0007】
本発明によれば、反対の抵抗温度係数を有する二つのサセプタ材料を備えるサセプタ組立品は、第二のサセプタ材料のキュリー温度付近の抵抗の最小値、例えば、第二のサセプタ材料のキュリー温度付近の摂氏±5度の抵抗対温度プロファイルを有することが認識されている。この最小値は、抵抗対温度プロファイルのグローバル最小値であることが好ましい。最小値は、第一のサセプタ材料および第二のサセプタ材料のそれぞれの電気抵抗の反対の温度挙動、および第二のサセプタ材料の磁性によって生じる。サセプタ組立品を室温から加熱し始めると、第一のサセプタ材料の抵抗が増加する一方で、第二のサセプタ材料の抵抗は温度の上昇と共に減少する。誘導源によって「見られる」サセプタ組立品の全体的な見かけの抵抗は、第一および第二のサセプタ材料のそれぞれの抵抗の組み合わせによって与えられる。第二のサセプタ材料のキュリー温度に下から達すると、第二のサセプタ材料の抵抗の減少が、一般的に、第一のサセプタ材料の抵抗の増加を支配する。したがって、サセプタ組立品の全体的な見かけの抵抗は、第二のサセプタ材料のキュリー温度より下の、特に近接して下の温度範囲で減少する。キュリー温度では、第二のサセプタ材料がその磁性を失う。これは、第二のサセプタ材料の渦電流に利用可能なスキン層の増加を引き起こし、その抵抗の突然の降下を伴う。したがって、第二のサセプタ材料のキュリー温度を超えてサセプタ組立品の温度をさらに上昇させると、第二のサセプタ材料の抵抗がサセプタ組立品の全体的な見かけの抵抗に及ぼす寄与は、より少なくなるか、または無視できる程度になる。結果として、第二のサセプタ材料のキュリー温度付近で最小値を通過した後、サセプタ組立品の全体的な見かけの抵抗は、主に第一のサセプタ材料の抵抗の増加によって与えられる。すなわち、サセプタ組立品の全体的な見かけの抵抗が再び増加する。有利なことに、第二のサセプタ材料のキュリー温度付近での最小値の周りの抵抗対温度プロファイルの減少およびその後の増加は、ユーザーの吸煙中の全体的な見かけの抵抗の一時的変化と十分に区別できる。結果として、第二のサセプタ材料のキュリー温度付近の抵抗の最小値は、ユーザーの吸煙として誤解されるリスクを伴わずに、エアロゾル形成基体の加熱温度を制御するための温度マーカーとして確実に使用されうる。したがって、エアロゾル形成基体は、望ましくない過熱から効果的に防ぐことができる。
【0008】
第二のサセプタ材料は、キュリー温度が摂氏350度未満、特に摂氏300度未満、好ましくは摂氏250度未満、最も好ましくは摂氏200度未満を有するように選択されることが好ましい。これらの値は、エアロゾル発生物品内のエアロゾル形成基体を加熱するために使用される典型的な動作温度をかなり下回る。したがって、第二のサセプタ材料のキュリー温度付近についての抵抗対温度プロファイルの最小値と、ユーザーの吸煙中の見かけの全体的抵抗の変化が典型的に起こる動作温度との間の温度ギャップが十分に大きいために、温度マーカーの適切な識別がさらに改善される。
【0009】
エアロゾル形成基体の加熱に使用される動作温度は、少なくとも摂氏300度、特に少なくとも摂氏350度、好ましくは少なくとも摂氏370度、最も好ましくは少なくとも摂氏400度でありうる。これらの温度は、エアロゾル形成基体を加熱するが燃焼させないための典型的な動作温度である。
【0010】
本明細書で使用される「サセプタ」という用語は、交流電磁場に供された時に電磁エネルギーを熱へと変換する能力を有する要素を指す。これは、サセプタ材料の電気特性および磁性に依存して、サセプタ内で誘導されるヒステリシス損失および/または渦電流の結果でありうる。ヒステリシス損失は、交流電磁場の影響下で切り替えられる材料内の磁区に起因して、強磁性またはフェリ磁性のサセプタ内で生じる。渦電流は、サセプタが導電性である場合に誘起される場合がある。導電性の強磁性またはフェリ磁性サセプタの場合、渦電流およびヒステリシス損失の両方によって熱が発生しうる。
【0011】
本発明によれば、第二のサセプタ材料は、特定のキュリー温度を有する少なくともフェリ磁性または強磁性である。キュリー温度は、フェリ磁性または強磁性材料がこれより高い温度ではそれぞれそのフェリ磁性または強磁性を失い、常磁性になる温度である。フェリ磁性または強磁性であることに加えて、第二のサセプタ材料は導電性でもありうる。
【0012】
第二のサセプタ材料は、ミューメタルまたはパーマロイのうちの一つを含みうることが好ましい。
【0013】
第二のサセプタは主にサセプタ組立品の温度を監視するために構成される一方で、第一のサセプタはエアロゾル形成基体を加熱するために構成されることが好ましい。このために、第一のサセプタは、熱損失に関して、それ故に加熱効率に関して最適化されてもよい。したがって、第一のサセプタ材料は、導電性および/または常磁性、強磁性、もしくはフェリ磁性のうちの一つであってもよい。第一のサセプタ材料が強磁性またはフェリ磁性である場合、第一のサセプタ材料の対応するキュリー温度は、第二のサセプタのキュリー温度とは区別され、特に、エアロゾル形成基体を加熱するために使用される上述の任意の典型的な動作温度よりも高いことが好ましい。例えば、第一のサセプタ材料は、少なくとも摂氏400度、特に少なくとも摂氏500度、好ましくは少なくとも摂氏600度のキュリー温度を有してもよい。
【0014】
例えば、第一のサセプタ材料は、アルミニウム、鉄、ニッケル、銅、青銅、コバルト、普通炭素鋼、ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、またはオーステナイト系ステンレス鋼のうちの一つを含んでもよい。
【0015】
第一のサセプタおよび第二のサセプタは、相互に密接な物理的接触をしていることが好ましい。特に、第一のサセプタおよび第二のサセプタは、単一のサセプタ組立品を形成してもよい。それ故に、加熱された時に第一のサセプタおよび第二のサセプタは基本的に同一の温度を有する。これに起因して、第二のサセプタによる第一のサセプタの温度制御は高度に正確である。第一のサセプタと第二のサセプタとの間の密接な接触は、任意の適切な手段によって遂行されてもよい。例えば、第二のサセプタは、第一のサセプタの上にメッキ、堆積、コーティング、クラッディング、または溶接されてもよい。好ましい方法としては、電気メッキ(亜鉛メッキ)、クラッディング、ディップコーティング、またはロールコーティングが挙げられる。
【0016】
本発明によるサセプタ組立品は、交流の、特に高周波の電磁場によって駆動されるように構成されることが好ましい。本明細書に参照されるように、高周波電磁場は、500kHz(キロヘルツ)~30MHz(メガヘルツ)、特に5MHz(メガヘルツ)~15MHz(メガヘルツ)、好ましくは5MHz(メガヘルツ)~10MHz(メガヘルツ)の範囲内でありうる。
【0017】
第一のサセプタおよび第二のサセプタの各々、またはサセプタ組立品は、様々な幾何学的構成を含んでもよい。第一のサセプタ、第二のサセプタ、またはサセプタ組立品のうちの少なくとも一つは、サセプタフィラメント、またはサセプタメッシュ、またはサセプタウィック、またはサセプタピン、またはサセプタロッド、またはサセプタブレード、またはサセプタ細片、またはサセプタスリーブ、またはサセプタカップ、または円筒形サセプタ、または平面サセプタのうちの一つでありうる。
【0018】
一例として、第一のサセプタ、第二のサセプタ、またはサセプタ組立品のうちの少なくとも一つは、フィラメントサセプタ、またはメッシュサセプタ、またはウィックサセプタであってもよい。こうしたサセプタは、その製造、その幾何学的な規則性および再現性、ならびにそれらのウィッキング機能に関して利点を有しうる。幾何学的な規則性および再現性は、温度制御および局所加熱の制御の両方の点で有利であると証明されうる。ウィッキング機能は、液体エアロゾル形成基体との使用に有利であることが証明されうる。使用中、これらのサセプタのいずれかは、加熱されるエアロゾル形成基体、特に液体エアロゾル形成基体と直接物理的に接触してもよい。この特定の構成において、エアロゾル発生装置は、液体エアロゾル形成基体用の貯蔵部を備えうる。あるいは、エアロゾル発生装置は、エアロゾル発生物品、特に、液体エアロゾル形成基体を含み、エアロゾル発生装置のフィラメントサセプタまたはメッシュサセプタまたはウィックサセプタと係合するように構成された、カートリッジを受容するように構成されうる。
【0019】
第一のサセプタ、第二のサセプタ、またはサセプタ組立品のうちの少なくとも一つは、サセプタブレード、またはサセプタロッド、またはサセプタピンであってもよい。第一のサセプタと第二のサセプタは共にサセプタブレードまたはサセプタロッドまたはサセプタピンを形成することが好ましい。例えば、第一または第二のサセプタのうちの一つは、サセプタブレードまたはサセプタロッドまたはサセプタピンのコアまたは内側層を形成してもよく、一方、第一または第二のサセプタのうちのそれぞれの他の一つは、サセプタブレードまたはサセプタロッドまたはサセプタピンのジャケットまたはエンベロープを形成してもよい。その一方の端部、特に遠位端で、サセプタブレードまたはサセプタロッドまたはサセプタピンは、受容くぼみの底部分に配置され、特に、取り付けられることが好ましい。そこから、サセプタブレードまたはサセプタロッドまたはサセプタピンは、受容くぼみの内部空隙内に受容くぼみの開口部に向かって延在することが好ましい。受容くぼみの開口部は、エアロゾル発生装置の近位端に位置することが好ましい。もう一方の端部、すなわち、サセプタブレードまたはサセプタロッドまたはサセプタピンの遠位自由端は、サセプタブレードまたはサセプタロッドまたはサセプタピンが、例えば、エアロゾル発生物品の遠位端部分に配置されたエアロゾル形成基体内に加熱されるエアロゾル形成基体内に容易に貫通することを可能にするように、先細りまたは先の尖ったものとすることができる。サセプタブレードまたはサセプタロッドまたはサセプタピンは、8mm(ミリメートル)~16mm(ミリメートル)、特に10mm(ミリメートル)~14mm(ミリメートル)、好ましくは12mm(ミリメートル)の範囲の長さを有しうる。サセプタブレードの場合、第一のサセプタおよび/または第二のサセプタ、特にサセプタ組立品は、例えば、2mm(ミリメートル)~6mm(ミリメートル)、特に4mm(ミリメートル)~5mm(ミリメートル)の範囲の幅を有しうる。同様に、ブレード形状の第一のサセプタおよび/または第二のサセプタ、特にブレード形状のサセプタ組立品の厚さは、好ましくは0.03mm(ミリメートル)~0.15mm(ミリメートル)、より好ましくは0.05mm(ミリメートル)~0.09mm(ミリメートル)の範囲内である。
【0020】
第一のサセプタ、第二のサセプタ、またはサセプタ組立品のうちの少なくとも一つは、円筒形サセプタ、またはサセプタスリーブ、またはサセプタカップであってもよい。特に、円筒形サセプタもしくはサセプタスリーブ、またはサセプタカップは、受容くぼみの少なくとも一部分を形成してもよく、または受容くぼみの周りに円周方向に配置されてもよい。この構成では、第一および/または第二のサセプタまたはサセプタ組立品は、その中に加熱されるエアロゾル形成基体を受けるように構成された誘導加熱オーブンまたは加熱チャンバを実現する。
【0021】
サセプタ組立品は多層サセプタ組立品でありうる。これに関して、第一のサセプタおよび第二のサセプタは、層、特に多層サセプタ組立品の隣接する層を形成することができる。
【0022】
多層サセプタ組立品において、第一のサセプタ、第二のサセプタは、相互に密接な物理的接触をしていてもよい。そのため、第一および第二のサセプタは実質的に同じ温度を有するので、第二のサセプタによる第一のサセプタの温度制御は十分に正確である。
【0023】
第二のサセプタは、第一のサセプタの上にメッキ、堆積、コーティング、クラッディング、または溶接されてもよい。第二のサセプタはスプレー、ディップコーティング、ロールコーティング、電気メッキ、またはクラッディングによって第一のサセプタの上に付けられることが好ましい。
【0024】
第二のサセプタは高密度層として存在することが好ましい。高密度層は多孔性の層よりも高い透磁率を有し、キュリー温度での微細な変化を検出することをより容易にする。
【0025】
多層サセプタ組立品の個別の層は、層に平行および/または横方向の任意の方向で見た時に、多層サセプタ組立品の周囲の外表面上の環境に対してむき出しであるか、または露出していてもよい。あるいは、多層サセプタ組立品は、保護コーティングで被覆されうる。
【0026】
多層サセプタ組立品は、サセプタ組立品の異なる幾何学的構成を実現するために使用されうる。
【0027】
多層サセプタ組立品は、サセプタ組立品の異なる幾何学的構成を実現するために使用されうる。
【0028】
例えば、多層サセプタ組立品は、8mm(ミリメートル)~16mm(ミリメートル)、特に10mm(ミリメートル)~14mm(ミリメートル)、好ましくは12mm(ミリメートル)の範囲の長さを有する、細長いサセプタ細片またはサセプタブレードでありうる。サセプタ組立品の幅は、例えば、2mm(ミリメートル)~6mm(ミリメートル)、特に4mm(ミリメートル)~5mm(ミリメートル)の範囲であってもよい。サセプタ組立品の厚さは、好ましくは0.03mm(ミリメートル)~0.15mm(ミリメートル)、より好ましくは0.05mm(ミリメートル)~0.09mm(ミリメートル)の範囲である。多層サセプタブレードは、自由テーパー付端を有してもよい。
【0029】
一例として、多層サセプタ組立品は、12mm(ミリメートル)の長さ、4mm(ミリメートル)~5mm(ミリメートル)、例えば4mm(ミリメートル)の幅、および約50μm(マイクロメートル)の厚さを有する等級430のステンレス鋼の細片である、第一のサセプタを有する細長い細片であってもよい。等級430のステンレス鋼は、第二のサセプタとして5μm(マイクロメートル)~30μm(マイクロメートル)、例えば10μm(マイクロメートル)の厚さを有するミューメタルまたはパーマロイの層でコーティングされてもよい。
【0030】
本明細書で使用される「厚さ」という用語は、上部と下側面の間、例えば層の上側面と下側面との間、または多層サセプタ組立品の上側面と下側面との間に延びる寸法を指す。本明細書で使用される「幅」という用語は、二つの対向する側方側面の間に延びる寸法を指す。本明細書で使用される「長さ」という用語は、幅を形成する二つの対向する側方側面と直角な、正面と背面との間、または他の二つの対向する側面の間に延びる寸法を指す。厚さ、幅、および長さは相互に直角であってもよい。
【0031】
同様に、多層サセプタ組立品は、多層サセプタロッドまたは多層サセプタピンであってもよく、特に前述した通りである。この構成では、第一または第二のサセプタのうちの一つは、第一または第二のサセプタのうちのそれぞれの他の一つによって形成される周囲層を囲むコア層を形成してもよい。第一のサセプタが基体の加熱のために最適化される場合、周囲層を形成するのは第一のサセプタであることが好ましい。したがって、周囲のエアロゾル形成基体への熱伝達が強化される。
【0032】
あるいは、多層サセプタ組立品は、多層サセプタスリーブまたは多層サセプタカップまたは円筒形多層サセプタであってもよく、特に前述した通りである。第一または第二のサセプタのうちの一つは、多層サセプタスリーブまたは多層サセプタカップまたは円筒形多層サセプタの内壁を形成しうる。第一または第二のサセプタのそれぞれのもう一方は、多層サセプタスリーブまたは多層サセプタカップまたは円筒形多層サセプタの外壁を形成しうる。特に、第一のサセプタが基体の加熱のために最適化される場合、内壁を形成するのは第一のサセプタであることが好ましい。前述のように、多層サセプタスリーブもしくは多層サセプタカップまたは円筒形多層サセプタは、受容くぼみを形成してもよく、またはエアロゾル発生装置の受容くぼみの周りに円周方向に配置されてもよい。
【0033】
例えば、エアロゾル発生物品の製造目的で、第一のサセプタおよび第二のサセプタは、上述したように、類似した幾何学的構成であることが望ましい場合がある。
【0034】
あるいは、第一のサセプタおよび第二のサセプタは、異なる幾何学的構成であってもよい。それ故に、第一のサセプタおよび第二のサセプタは、これらの特定の機能に合わせられてもよい。好ましくは加熱機能を有する第一のサセプタは、熱伝達を高めるためにエアロゾル形成基体に対して広い表面積を提供する幾何学的構成を有してもよい。対照的に、好ましくは温度制御機能を有する第二のサセプタは、非常に大きい表面積を有する必要はない。第一のサセプタ材料が基体の加熱のために最適化されている場合、第二のサセプタ材料の容積は検知可能なキュリー点を提供するために必要とされるものよりも大きくないことが好ましい場合がある。
【0035】
この態様によれば、第二のサセプタは、一つまたは複数の第二のサセプタ要素を含みうる。一つまたは複数の第二のサセプタ要素は、第一のサセプタよりも著しく小さい、すなわち、第一のサセプタの体積よりも小さい体積を有することが好ましい。一つまたは複数の第二のサセプタ要素の各々は、第一のサセプタと密接な物理的接触をしていてもよい。そのため、第一および第二のサセプタは実質的に同じ温度を有し、これにより温度マーカーとして機能する第二のサセプタを介して第一のサセプタの温度制御の精度を改善する。例えば、第一のサセプタは、サセプタブレードまたはサセプタ細片またはサセプタスリーブまたはサセプタカップの形態であってもよく、一方で第二のサセプタ材料は、第一のサセプタ材料の上にメッキ、堆積、または溶接された個別のパッチの形態であってもよい。
【0036】
第一および第二のサセプタは、相互に密接な物理的接触をしている必要はない。第一のサセプタは、加熱されるエアロゾル形成基体内に貫通するための加熱ブレードを実現するサセプタブレードであってもよい。同様に、第一のサセプタは、加熱オーブンまたは加熱チャンバを実現する、サセプタスリーブまたはサセプタカップであってもよい。これらの構成のいずれかにおいて、第二のサセプタは、第一のサセプタから間隔を置いているが、熱的に近接する、エアロゾル発生装置内の異なる場所に配置されてもよい。
【0037】
第一および第二のサセプタは、サセプタ組立品の異なる部分を形成しうる。例えば、第一のサセプタは、カップ形状サセプタ組立品の側壁部分またはスリーブ部分を形成しうるが、第二のサセプタは、カップ形状サセプタ組立品の底部分を形成する。
【0038】
第一のサセプタおよび第二のサセプタのうちの少なくとも一つの少なくとも一部は、保護カバーを備えてもよい。同様に、サセプタ組立品の少なくとも一部は、保護カバーを備えてもよい。保護カバーは、ガラス、セラミック、または不活性金属によって形成されてもよく、第一のサセプタおよび/または第二のサセプタ、またはサセプタ組立品の少なくとも一部上にそれぞれ形成またはコーティングされてもよい。有利には、保護カバーは、エアロゾル形成基体がサセプタの表面に固着することを回避する、材料拡散、例えばサセプタ材料からエアロゾル形成基体の中への金属拡散を回避する、サセプタ組立品の機械的剛性を改善する、のうちの少なくとも一つを行うように構成されうる。保護カバーは非導電性であることが好ましい。
【0039】
本明細書で使用される「エアロゾル発生装置」という用語は、基体を加熱することによってエアロゾルを発生するように、少なくとも一つのエアロゾル形成基体と相互作用する能力、特にエアロゾル発生物品内に提供されたエアロゾル形成基体と相互作用する能力を有する電気的に作動する装置を概して指す。エアロゾル発生装置は、ユーザーによってユーザーの口を通して直接吸入可能なエアロゾルを発生するための吸煙装置であることが好ましい。特に、エアロゾル発生装置は手持ち式のエアロゾル発生装置である。
【0040】
交流電磁場を発生させるために、誘導源は少なくとも一つのインダクタ、好ましくは少なくとも一つの誘導コイルを備えうる。少なくとも一つのインダクタは、物品が受容くぼみ内に受容された時に物品のサセプタ組立品を誘導加熱するために、受容くぼみ内に交流電磁場を発生させるように構成および配置されてもよい。
【0041】
誘導源は単一の誘導コイルまたは複数の誘導コイルを備えうる。誘導コイルの数は、サセプタの数および/またはサセプタ組立品のサイズおよび形状に依存しうる。単一または複数の誘導コイルは、それぞれ第一および/または第二のサセプタまたはサセプタ組立品の形状に一致する形状を有しうる。同様に、誘導コイル(単一または複数)は、エアロゾル発生装置のハウジングの形状に適合する形状を有しうる。
【0042】
インダクタは、らせん状コイルまたはフラット平面状コイル、特にパンケーキコイルまたは湾曲した平面状コイルでありうる。フラットスパイラルコイルの使用は、頑丈でかつ製造が安価なコンパクトな設計を可能にする。らせん状誘導コイルの使用は有利なことに、均質な交流電磁場を発生することを可能にする。本明細書で使用される「フラットスパイラルコイル」は、一般的に平面状のコイルであり、コイルの巻線の軸がコイルのある表面に対して垂直であるコイルを意味する。フラットスパイラル誘導はコイルの平面内で任意の所望の形状を有することができる。例えば、フラットスパイラルコイルは円形の形状を有してもよく、または概して楕円形もしくは長方形の形状を有してもよい。しかしながら、本明細書で使用される「フラットスパイラルコイル」という用語は、平面状のコイルと、曲面に適合するように成形されたフラットスパイラルコイルとの両方を網羅する。例えば、誘導コイルは、好ましくは円筒形のコイル支持体(例えば、フェライトコア)の周囲に配設された「湾曲した」平面状コイルであってもよい。さらに、フラットスパイラルコイルは、例えば四回巻きフラットスパイラルコイルの二層、または四回巻きフラットスパイラルコイルの単層を備えてもよい。
【0043】
第一の誘導コイルおよび/または第二の誘導コイルは、加熱組立品のハウジング、または加熱組立品を備えるエアロゾル発生装置の主本体またはハウジングのうちの一つ内に保持されることができる。第一の誘導コイルおよび/または第二の誘導コイルは、好ましくは円筒形のコイル支持体、例えばフェライトコアの周りに巻かれてもよい。
【0044】
誘導源は交流(AC)発電機を備えてもよい。AC発電機はエアロゾル発生装置の電源によって電力供給されてもよい。AC発電機は少なくとも一つのインダクタに動作可能に結合される。特に、少なくとも一つのインダクタは、AC発電機の一体型の部分であってもよい。AC発電機は、交流電磁場を発生させるためにインダクタを通過する高周波振動電流を発生させるように構成されている。AC電流はシステムの起動後、インダクタに連続的に供給されてもよく、または断続的に(例えば毎回の吸煙ごとに)供給されてもよい。
【0045】
誘導源は、LCネットワークを含むDC電源に接続されたDC/ACコンバータを備え、LCネットワークはコンデンサーおよびインダクタの直列接続を備えることが好ましい。
【0046】
誘導源は、高周波電磁場を発生するように構成されることが好ましい。 本明細書に参照されるように、高周波電磁場は、500kHz(キロヘルツ)~30MHz(メガヘルツ)、特に5MHz(メガヘルツ)~15MHz(メガヘルツ)、好ましくは5MHz(メガヘルツ)~10MHz(メガヘルツ)の範囲内でありうる。
【0047】
エアロゾル発生装置は、装置の動作を制御するように構成されたコントローラをさらに備えてもよい。特に、所定の動作温度へのエアロゾル形成基体の加熱を制御するために、コントローラは、好ましくは閉ループ構成で誘導源の動作を制御するように構成されうる。エアロゾル形成基体の加熱に使用される動作温度は、少なくとも300℃、特に少なくとも350℃、好ましくは少なくとも370℃、最も好ましくは少なくとも400℃でありうる。これらの温度は、エアロゾル形成基体を加熱するが燃焼させないための典型的な動作温度である。
【0048】
コントローラは、マイクロプロセッサ、例えばプログラマブルマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、または特定用途向け集積回路チップ(ASIC)もしくは制御を提供する能力を有するその他の電子回路を備えてもよい。コントローラは、少なくとも一つのDC/ACインバータおよび/または電力増幅器、例えば、クラスDまたはクラスE電力増幅器など、さらなる電子構成要素を備えてもよい。特に、誘導源はコントローラの一部であってもよい。
【0049】
上述のように、エアロゾル発生装置は、エアロゾル形成基体を所定の動作温度に加熱するように構成されうる。第二のサセプタ材料は、加熱組立品の動作温度より少なくとも摂氏20度、特に少なくとも摂氏50度、より具体的には少なくとも摂氏100度、好ましくは少なくとも摂氏150度、最も好ましくは少なくとも摂氏200度低いキュリー温度を有することが好ましい。有利なことに、これにより、第二のサセプタ材料のキュリー温度付近の温度マーカーと動作温度との間の温度ギャップが十分に大きいことを確実にする。
【0050】
コントローラは、サセプタ組立品の予熱中に、室温で開始して動作温度に向かって、第二のサセプタ材料のキュリー温度付近の摂氏±5度の温度範囲で生じる見かけの抵抗の最小値を決定するように構成されうる。有利なことに、これにより、第二のサセプタ材料のキュリー温度に関する温度マーカーを適切に特定することができる。このために、コントローラは、一般的に、供給電圧、特にDC供給電圧から決定し、供給電流、特に電源から引き出されるDC供給電流を形成するように構成されてもよく、これはサセプタ組立品の実際の見かけの抵抗であり、サセプタ組立品の実際の温度を示す。
【0051】
さらに、コントローラは、実際の見かけの抵抗が、見かけの抵抗の決定された最小値に加えて、エアロゾル形成基体の動作温度への加熱を制御するための見かけの抵抗の所定のオフセット値に対応するように、閉ループ構成で誘導源の動作を制御するように構成されうる。この態様に関して、加熱温度の制御は、好ましくは、マーカー温度で測定された見かけの抵抗と動作温度での見かけの抵抗との間のギャップを埋めるために、見かけの抵抗の所定のオフセット値を使用したオフセットロックまたはオフセット制御の原理に基づく。有利なことに、これは、動作温度での見かけの抵抗の所定の目標値に基づいて加熱温度を直接制御することを避け、したがって、測定された抵抗特徴の誤った解釈を避けることを可能にする。さらに、加熱温度のオフセット制御は、所望の動作温度における見かけの抵抗の測定された絶対値に基づく温度制御よりも安定性と信頼性が高い。これは、供給電圧および供給電流から決定された見かけの抵抗の測定された絶対値が、例えば、誘導源の電気回路の抵抗および様々な接触抵抗などの様々な要因に依存するという事実による。このような要因は、環境の影響を受けやすく、時間の経過とともに、および/または製造上の条件付きで、異なる誘導源と同じタイプのサセプタ組立品との間で変化しうる。有利なことに、このような影響は、見かけの抵抗の二つの測定された絶対値の間の差の値について実質的に相殺される。したがって、見かけの抵抗のオフセット値を使用して温度を制御すると、このような悪影響および変動が起こりにくい。
【0052】
エアロゾル形成基体の加熱温度を動作温度に制御するための見かけの抵抗のオフセット値は、例えば、装置の製造中に、較正測定によって予め決定されうる。
【0053】
第二のサセプタ材料のキュリー温度付近での最小値は、抵抗対温度プロファイルのグローバル最小値であることが好ましい。
【0054】
本明細書で使用される場合、「室温から開始する」という用語は、第二のサセプタ材料のキュリー温度付近の最小値が、サセプタ組立品の室温からエアロゾル形成基体が加熱される動作温度までの加熱である、予熱中の抵抗対温度プロファイルで発生することを意味することが好ましい。
【0055】
本明細書で使用される場合、室温は、摂氏18~25度の範囲、特に摂氏20度の温度に対応しうる。
【0056】
コントローラおよび誘導源の少なくとも一部、特にインダクタから離れた誘導源は、共通のプリント回路基板に配置されてもよい。これは、装置のコンパクト設計に関して特に有利である。
【0057】
サセプタ組立品の実際の温度を示すサセプタ組立品の実際の見かけの抵抗を決定するために、加熱組立品のコントローラは、電圧センサ、特に供給電圧を測定するためのDC電圧センサ、特に電源から引き出されるDC供給電圧、または電流センサ、特に供給電流を測定するためのDC電流センサ、特に電源から引き出されるDC供給電流のうちの少なくとも一つを備えうる。
【0058】
前述したように、エアロゾル発生装置は電源、特に誘導源にDC供給電圧およびDC供給電流を提供するように構成されたDC電源を備えうる。電源はリン酸鉄リチウム電池などの電池であることが好ましい。代替として、電源は、コンデンサーなどの別の形態の電荷蓄積装置であってもよい。電源は再充電を必要としうる、すなわち、電源は充電可能でありうる。電源は、一回または複数回のユーザー体験のために十分なエネルギーの貯蔵を可能にする容量を有する場合がある。例えば、電源は約六分間、または六分の倍数の時間にわたるエアロゾルの連続的な発生を可能にするのに十分な容量を有してもよい。別の実施例において、電源は所定の吸煙回数、または誘導源の不連続的な起動を可能にするのに十分な容量を有してもよい。
【0059】
エアロゾル発生装置は、誘導源、インダクタ、コントローラ、電源、および受容くぼみの少なくとも一部分のうちの少なくとも一つを含むことが好ましい主本体を備えうる。
【0060】
主本体に加えて、エアロゾル発生装置は、特に装置と共に使用されるエアロゾル発生物品がマウスピースを含まない場合、マウスピースをさらに備えうる。マウスピースは、装置の主本体に据え付けられてもよい。マウスピースは、マウスピースを主本体に取り付けると受容くぼみを閉じるように構成されてもよい。マウスピースを主本体に取り付けるために、主本体の近位端部分は、マウスピースの遠位端部分にて対応する相手側と係合する磁気的マウントまたは機械的マウント、例えばバヨネットマウントまたはスナップ嵌めマウントを備えてもよい。装置がマウスピースを備えない場合、エアロゾル発生装置と共に使用されるエアロゾル発生物品はマウスピース、例えばフィルタープラグを備えてもよい。
【0061】
エアロゾル発生装置は、少なくとも一つの空気出口、例えばマウスピース(存在する場合)の空気出口を備えてもよい。
【0062】
エアロゾル発生装置は、少なくとも一つの空気吸込み口から、受容くぼみを通って、そして場合によってはさらに、もしあれば、マウスピースの空気出口に延びる空気経路を備えることが好ましい。エアロゾル発生装置は、受容くぼみと流体連通する少なくとも一つの空気吸込み口を備えることが好ましい。その結果、エアロゾル発生システムは、少なくとも一つの空気吸込み口から受容くぼみの中に延びる、および場合によっては物品内のエアロゾル形成基体とマウスピースを通してユーザーの口の中にさらに延びる空気経路を備えてもよい。
【0063】
本発明によれば、本発明による電気加熱式のエアロゾル発生装置および本明細書に記載されたように、装置と使用するためのエアロゾル発生物品を含むエアロゾル発生システムが提供されている。エアロゾル発生物品はエアロゾル形成基体を含む。
【0064】
本明細書で使用される「エアロゾル発生物品」という用語は、エアロゾルを形成することができる揮発性化合物を、加熱された時に放出する少なくとも一つのエアロゾル形成基体を含む物品を指す。エアロゾル発生物品は、加熱式エアロゾル発生物品であることが好ましい。すなわち、エアロゾルを形成することができる揮発性化合物を放出するために、燃焼ではなく加熱されることが意図されている少なくとも一つのエアロゾル形成基体を含むことが好ましい、エアロゾル発生物品である。エアロゾル発生物品は、消耗品、特に単回使用後に廃棄される消耗品であってもよい。エアロゾル発生物品はたばこ物品であってもよい。例えば、物品は、加熱される液体または固体エアロゾル形成基体を含むカートリッジであってもよい。別の方法として、物品は従来の紙巻たばこに似ている、および固体エアロゾル形成基体を含む、ロッド状の物品、特にたばこ物品であってもよい。
【0065】
本明細書で使用される「エアロゾル形成基体」という用語は、エアロゾルを発生するために、加熱に伴い揮発性化合物を放出することが可能なエアロゾル形成材料から形成されるか、またはそれを含む基体を意味する。エアロゾル形成基体は、エアロゾル形成揮発性化合物を放出するために、燃焼ではなく加熱されることが意図される。エアロゾル形成基体は固体エアロゾル形成基体であってもよく、または液体エアロゾル形成基体であってもよい。両方の場合において、エアロゾル形成基体は固体成分と液体成分の両方を含んでもよい。エアロゾル形成基体は、加熱に伴い基体から放出される揮発性のたばこ風味化合物を含有するたばこ含有材料を含んでもよい。別の方法として、または追加的に、エアロゾル形成基体は非たばこ材料を含んでもよい。エアロゾル形成基体はエアロゾル形成体をさらに含んでもよい。適切なエアロゾル形成体の例はグリセリンおよびプロピレングリコールである。エアロゾル形成基体はまた、ニコチンまたは風味剤などのその他の添加物および成分を含んでもよい。エアロゾル形成基体はまた、ペースト様の材料、エアロゾル形成基体を含む多孔性材料のサシェ、または例えばゲル化剤または粘着剤と混合されたばらのたばこであってもよく、これはグリセリンなどの一般的なエアロゾル形成体を含むことができ、これはプラグへと圧縮または成形される。
【0066】
エアロゾル発生物品は、円形または楕円形または長円形または正方形または長方形または三角形または多角形断面を有することが好ましい。
【0067】
エアロゾル形成基体に加えて、物品は異なる要素をさらに備えうる。
【0068】
特に、物品はマウスピースを備えてもよい。本明細書で使用される場合、「マウスピース」という用語は、物品からエアロゾルを直接吸い込むために、ユーザーの口に入れられる物品の一部分を意味する。 マウスピースはフィルターを含むことが好ましい。
【0069】
特に、従来の紙巻たばこに似たロッド形状の物品を有する、および/または固体エアロゾル形成基体を備える、エアロゾル発生物品に関して、物品は、中央空気通路を有する支持要素、エアロゾル冷却要素、およびフィルター要素をさらに備えることができる。フィルター要素は、マウスピースとして機能することが好ましい。特に、物品は、エアロゾル形成基体およびエアロゾル形成基体と接触するサセプタ組立品を備える、基体要素を備えてもよい。これらの要素のうちの任意の一つまたは任意の組み合わせは、エアロゾル形成ロッドセグメントに連続的に配置されてもよい。基体要素は、物品の遠位端に配置されることが好ましい。同様に、フィルター要素は、物品の近位端に配置されることが好ましい。支持要素、エアロゾル冷却要素、およびフィルター要素は、エアロゾル形成ロッドセグメントと同じ外側断面を有してもよい。
【0070】
さらに、物品は、エアロゾル形成基体の少なくとも一部を囲むケーシングまたはラッパーを備えてもよい。特に、物品は、それらを一緒に保持し、物品の所望の断面形状を維持するために、上述の異なるセグメントおよび要素のうちの少なくとも一部を囲むラッパーを備えてもよい。
【0071】
ケーシングまたはラッパーは、サセプタ組立品を含みうる。有利なことに、これにより、サセプタ組立品によって囲まれたエアロゾル形成基体の均一かつ対称的な加熱が可能になる。
【0072】
本発明によるエアロゾル発生システムのさらなる特徴および利点については、エアロゾル発生装置に関して説明されているため、繰り返さない。
【図面の簡単な説明】
【0073】
本発明を、添付図面を参照しながら、例証としてのみであるがさらに記載する。
図1図1は、誘導加熱エアロゾル発生装置およびエアロゾル発生物品を備える、本発明の第一の例示的な実施形態によるエアロゾル発生システムの概略図である。
図2図2は、図1によるエアロゾル発生物品の詳細図である。
図3図3は、図1によるエアロゾル発生物品に含まれるサセプタ組立品の斜視図である。
図4図4は、本発明によるサセプタ組立品の抵抗対温度プロファイルを概略的に示した図である。
図5図5は、図1による装置で使用するためのサセプタ組立品の代替的な実施形態の斜視図である。
図6図6は、図1による装置で使用するためのサセプタ組立品の代替的な実施形態の斜視図である
図7図7は、図1による装置で使用するためのサセプタ組立品のさらに別の代替的な実施形態の斜視図である。
図8図8は、本発明の第二の例示的な実施形態によるエアロゾル発生システムの概略図である。
図9図9は、本発明の第三の例示的な実施形態によるエアロゾル発生システムの概略図である。
図10図10は、本発明の第四の例示的な実施形態によるエアロゾル発生システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
図1は、本発明によるエアロゾル発生システム1の第一の例示的な実施形態を概略的に図示する。システム1は、本発明によるエアロゾル発生装置10、ならびに装置と併用するように構成され、加熱されるエアロゾル形成基体を備えるエアロゾル発生物品100を備える。
【0075】
エアロゾル発生装置10は、その中に物品100の少なくとも遠位部分を受けるために、装置10の近位部分12内に画定された円筒形の受容くぼみ20を備える。装置10はさらに、交流の、特に高周波電磁場を生成するための誘導コイル30を含む誘導源を備える。本実施形態では、誘導コイル30は、円筒形の受容くぼみ20を円周方向に取り囲むらせん状コイルである。装置は、誘導コイル30によって発生する電磁場を経験するように受容くぼみ内に配置されたサセプタ組立品60をさらに備える。したがって、誘導源を作動させるときに、サセプタ組立品60は、サセプタ組立品60のサセプタ材料の磁気的および電気的特性に応じて、渦電流および/またはヒステリシス損失に起因して昇温する。遠位部分13内に、エアロゾル発生装置10は、電力を供給し、加熱プロセスを制御するためのDC電源40とコントローラ50(図1に概略的にのみ示される)とをさらに備える。誘導コイル30とは別に、誘導源は、コントローラ50の少なくとも部分的に一体型の部分であることが好ましい。温度制御の詳細について下記にさらに説明する。
【0076】
図2は、エアロゾル発生物品100のさらなる詳細を示す。物品100は、ロッド状を実質的に有し、同軸アライメントで連続的に配置された四つの要素、すなわち、エアロゾル形成基体130を備えるエアロゾル形成ロッドセグメント110、中央空気通路141を有する支持要素140、エアロゾル冷却要素150、およびマウスピースとして機能するフィルター要素160を備える。エアロゾル形成ロッドセグメント110は、物品100の遠位端102に配置され、一方、フィルター要素160は、物品100の遠位端103に配置される。これらの四つの要素の各々は実質的に円筒形の要素であり、これら全ては実質的に同一の直径を有する。四つの要素は、四つの要素をまとめて保持し、ロッド様物品100の所望の円形断面形状を維持するように、外側ラッパー170によって包囲される。ラッパー170は紙製であることが好ましい。
【0077】
図1で示す装置のサセプタ組立品60は、サセプタブレードである。その遠位端64で、サセプタブレードは、装置の受容くぼみ20の底部分に配置されている。そこから、サセプタブレードは、受容くぼみ20の開口部に向かって受容くぼみ20の内側空間の中に延びる。受容くぼみ20の開口部は、エアロゾル発生装置10の近位端14に位置し、したがって、エアロゾル発生物品100を受容くぼみ20に挿入することを可能にする。サセプタブレード60の他方の端、すなわち遠位自由端63は、サセプタブレードがエアロゾル発生物品100の遠位端102においてエアロゾル形成ロッドセグメント110内のエアロゾル形成基体130内に容易に貫通することを可能にするように、先細りしている。
【0078】
図3は、図1に示すサセプタ組立品60のさらなる詳細を示す。本発明によれば、サセプタ組立品60は、第一のサセプタ61および第二のサセプタ62を備える。第一のサセプタ61は、正の抵抗温度係数を有する第一のサセプタ材料を含み、第二のサセプタ62は、負の抵抗温度係数を有する第二の強磁性またはフェリ磁性サセプタ材料を含む。反対の抵抗温度係数を有する第一および第二のサセプタ材料のため、また第二のサセプタ材料の磁性のため、サセプタ組立品60は、第二のサセプタ材料のキュリー温度付近の抵抗の最小値を含む、抵抗対温度プロファイルを有する。
【0079】
対応する抵抗対温度プロファイルを図4に示す。サセプタ組立品60を室温T_Rから加熱し始めると、第一のサセプタ材料の抵抗が増加する一方で、第二のサセプタ材料の抵抗は温度Tが増加するにつれて減少する。サセプタ組立品60の全体的な見かけの抵抗R_aは、装置10の誘導源によって「見られる」ように、第一および第二のサセプタ材料のそれぞれの抵抗の組み合わせによって与えられる。下から第二のサセプタ材料のキュリー温度T_Cに達すると、第二のサセプタ材料の抵抗の減少は、第一のサセプタ材料の抵抗の増加を一般的に支配する。したがって、サセプタ組立品60の全体的な見かけの抵抗R_aは、第二のサセプタ材料のキュリー温度T_Cよりも下の、特に近接して下の温度範囲で減少する。キュリー温度T_Cでは、第二のサセプタ材料がその磁性を失う。これは、第二のサセプタ材料の渦電流に利用可能なスキン層の増加を引き起こし、その抵抗の突然の降下を伴う。したがって、第二のサセプタ材料のキュリー温度T_Cを超えてサセプタ組立品60の温度Tをさらに上昇させると、第二のサセプタ材料の抵抗がサセプタ組立品60の全体的な見かけの抵抗R_aに及ぼす寄与は、より少なくなるか、または無視できる程度になる。結果として、第二のサセプタ材料のキュリー温度T_C付近で最小値R_minを通過した後、サセプタ組立品60の全体的な見かけの抵抗R_aは、主に第一のサセプタ材料の抵抗の増加によって与えられる。すなわち、サセプタ組立品60の全体的な見かけの抵抗R_aは、動作温度T_opで動作抵抗R_opに向かって再び増加する。有利なことに、第二のサセプタ材料のキュリー温度T_C付近での最小値R_minの周りの抵抗対温度プロファイルの減少およびその後の増加は、ユーザーの吸煙中の全体的な見かけの抵抗の一時的変化と十分に区別できる。結果として、第二のサセプタ材料のキュリー温度T_C付近の抵抗R_aの最小値は、ユーザーの吸煙として誤解されるリスクなしに、エアロゾル形成基体の加熱温度を制御するための温度マーカーとして確実に使用されうる。したがって、エアロゾル形成基体は、望ましくない過熱から効果的に防ぐことができる。
【0080】
エアロゾル形成基体の加熱温度を制御して、所望の動作温度T_opに対応させるために、装置10のコントローラ50は、実際の見かけの抵抗を、見かけの抵抗R_a の決定された最小値R_minに所定のオフセット値ΔR_offsetを加えた値に対応する値に維持するように、閉ループオフセット構成で誘導源の動作を制御するように構成される。オフセット値△R_offsetは、マーカー温度T_Cで測定した見かけの抵抗R_minと動作温度T_opでの動作抵抗R_opとのギャップを埋める。有利なことに、これは、動作温度T_opでの見かけの抵抗の所定の目標値に基づいて加熱温度を直接制御することを避けることを可能にする。また、加熱温度のオフセット制御は、所望の動作温度における見かけの抵抗の測定された絶対値に基づく温度制御よりも安定し、信頼性が高い。
【0081】
実際の見かけの抵抗が、見かけの抵抗の決定された最小値に見かけの抵抗の所定のオフセット値を加えたものと等しいか、またはそれを超えるとき、加熱プロセスは、交流電磁場の生成を中断することによって、すなわち、誘導源のスイッチを切ることによって、または少なくとも誘導源の出力電力を減少させることによって停止されうる。実際の見かけの抵抗が、見かけの抵抗の決定された最小値に見かけの抵抗の所定のオフセット値を加えたものより低いとき、加熱プロセスは、交流電磁場の生成を再開することによって、すなわち、誘導源のスイッチを再び入れることによって、または誘導源の出力電力を再び増加させることによって再開されうる。
【0082】
本実施形態では、動作温度は摂氏約370度である。この温度は、エアロゾル形成基体を加熱するが燃焼させないための典型的な動作温度である。第二のサセプタ材料のキュリー温度T_Cにおけるマーカー温度と、動作温度T_opとの間に、少なくとも摂氏20度の十分に大きな温度ギャップを確保するために、第二のサセプタ材料が、摂氏350度未満のキュリー温度を有するように選択される。
【0083】
図3に示すように、図1の装置内のサセプタ組立品60は、多層サセプタブレード、より具体的には、二層サセプタブレードである。それは、第一のサセプタ61を構成する第一の層と、第一の層上に配置され、第一の層に密接に結合される第二のサセプタ62を構成する第二の層とを含む。第一のサセプタ61は、熱損失、したがって加熱効率に関して最適化されているが、第二のサセプタ62は、上述のように、主に温度マーカーとして使用される機能的サセプタである。サセプタ組立品60は、長さLが12ミリメートル、幅Wが4ミリメートルである細長い細片の形態であり、すなわち、両方の層は長さLが12ミリメートル、最大幅Wが4ミリメートルである。第一のサセプタ61は、例えば、等級430のステンレス鋼などの400°Cを超えるキュリー温度を有するステンレス鋼で作製された細片である。厚さは約35マイクロメートルである。第二のサセプタ62は、動作温度より低いキュリー温度を有するミューメタルまたはパーマロイの細片である。厚さは約10マイクロメートルである。サセプタ組立品60は、第二のサセプタ細片を第一のサセプタ細片にクラッディングし、その後テーパー付端63を形成することによって形成される。
【0084】
図5は、図1および図3に示すサセプタ組立品60の実施形態と類似した、先細りブレード形状サセプタ組立品160の代替実施形態を示す。後者とは対照的に、図5によるサセプタ組立品160は、第一および第二の層をそれぞれ形成する第一および第二のサセプタ161、162に加えて、第三の層を形成する第三のサセプタ163を備える、三層のサセプタブレードである。三つの層すべてが互いの上に配置され、隣接する層は互いに密接に結合される。図5に示される三層サセプタブレードの第一および第二のサセプタ161、162は、図1および図2に示される二層サセプタ組立品60の第一および第二のサセプタ61、62と同一である。第三のサセプタ163は、第一のサセプタ161と同一である。すなわち、第三の層163は、第一のサセプタ161と同じ材料を含む。また、第三のサセプタ163の層の厚さは、第一のサセプタ161の層の厚さと等しい。したがって、第一および第三のサセプタ161、163の熱膨張挙動は、実質的に同じである。有利なことに、これは、高度に対称的な層構造を提供し、本質的に平面外変形を示さない。さらに、図5による三層サセプタブレードは、より高い機械的安定性を提供する。
【0085】
図6は、二層サセプタ60の代わりに図1の装置内で代替的に使用されうる、先細りブレード形状のサセプタ組立品260の別の実施形態を示す。図6によるサセプタ組立品260は、第二のサセプタ262に密着して結合されている第一のサセプタ261から形成される。第一のサセプタ261は寸法が12ミリメートル×4ミリメートル×35マイクロメートルの等級430のステンレス鋼の細片である。したがって、第一のサセプタ261は、サセプタブレード260の基本的な形状を画定する。第二のサセプタ262は、寸法が3ミリメートル×2ミリメートル×10マイクロメートルのミューメタルまたはパーマロイのパッチである。パッチ形状の第二のサセプタ262は、先細りブレード形状の第一のサセプタ261上に電気メッキされる。第二のサセプタ262は、第一のサセプタ261よりも著しく小さいにもかかわらず、依然として加熱温度の正確な制御を可能にするために十分である。有利なことに、図6によるサセプタ組立品260は、第二のサセプタ材料の著しい節約を提供する。さらなる実施形態(図示せず)において、第一のサセプタと密接に接触して位置する第二のサセプタの二つ以上のパッチがあってもよい。
【0086】
図7は、図1の装置で使用するためのサセプタ組立品360のさらに別の実施形態を示す。この実施形態によると、サセプタ組立品260はサセプタピンを形成する。サセプタピンは、サセプタピンが物品100のエアロゾル形成基体内に容易に貫通することを可能にするテーパー付端363を有する。遠位端364で見られるように、サセプタ組立品は、本発明による第二のサセプタ362を形成する、内部コアサセプタを備える。コアサセプタは、本発明による第一のサセプタ361を形成する、ジャケットサセプタによって囲まれる。第一のサセプタ361は、好ましくは加熱機能を有するため、この構成は、周囲のエアロゾル形成基体への直接熱伝達に関して有利であることを証明する。さらに、サセプタピンの実質的に円筒形状は、ロッド形状のエアロゾル発生物品に関して有利でありうる、非常に対称的な加熱プロファイルを提供する。
【0087】
図8-10は、本発明の第二、第三、および第四の実施形態による、異なるエアロゾル発生装置710、810、910を概略的に示す。装置710、810、910は、特に装置の一般的設定に関して、図1に示す装置10と非常に類似している。したがって、同様または同一の特徴は、図1と同一の参照符号にそれぞれ700、800、および900を加えた参照符号で示されている。
【0088】
図1に示す装置10とは対照的に、図8によるエアロゾル発生システム701のエアロゾル発生装置710は、サセプタ組立品760を備え、第一のサセプタ761および第二のサセプタ762は異なる幾何学的構成である。第一のサセプタ761は、図1および図3に示す二層サセプタ組立品60に類似した単層サセプタブレードであるが、第二のサセプタ層は存在しない。この構成では、第一のサセプタ761は、主に加熱機能を有する誘導加熱ブレードを基本的に形成する。対照的に、第二のサセプタ762は、受容くぼみ720の円周方向の内側壁の少なくとも一部を形成するサセプタスリーブである。当然ながら、第一のサセプタが円筒形の受容くぼみ720の円周方向の内側壁の少なくとも一部を形成するサセプタスリーブであってもよく、一方で第二のサセプタがエアロゾル形成基体に挿入される単層サセプタブレードであってもよい、反対の構成も可能である。後者の構成では、第一のサセプタは、誘導オーブンヒーターまたは加熱を実現しうる。第一および第二のサセプタ761、762は、エアロゾル発生装置710内の異なる場所に位置し、互いに間隔を置いているが、それでも互いに熱的に近接している。
【0089】
図9に示すエアロゾル発生システム801のエアロゾル発生装置810は、サセプタカップであるサセプタ組立品860を備え、したがって、誘導オーブンヒーターまたは加熱チャンバを実現する。この構成では、第一のサセプタ861は、カップ形状サセプタ組立品860の円周方向の側壁を形成するサセプタスリーブであり、したがって、円筒形の受容くぼみ820の内側壁の少なくとも一部である。対照的に、第二のサセプタ862は、カップ形状サセプタ組立品860の底部分を形成する。第一および第二のサセプタ861、862の両方とも、装置810の受容くぼみ820内に受容されるとき、エアロゾル発生物品100のエアロゾル形成基体に熱的に近接している。
【0090】
図10に示すエアロゾル発生装置910は、多層サセプタスリーブであるサセプタ組立品960を備える。この構成では、第二のサセプタ962は、多層サセプタスリーブの外壁を形成する一方、第一のサセプタ961は、多層サセプタスリーブの内壁を形成する。第一および第二のサセプタ961、962のこの特定の配置は、したがって、主にエアロゾル形成基体130を加熱するために使用される第一のサセプタ961が、基体130に近いため好ましい。有利なことに、サセプタ組立品960はまた、誘導オーブンヒーターまたは加熱チャンバを実現する。
【0091】
図8~10に示す三つの実施形態すべてに関して、第一のサセプタは、エアロゾル形成基体を加熱するために最適化された強磁性ステンレス鋼で作製されることが好ましい。対照的に、第二のサセプタは、好適な温度マーカー材料である、ミューメタルまたはパーマロイで作製されることが好ましい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10