(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】非致死性カートリッジ用の強化されたポリマーマーキング発射体
(51)【国際特許分類】
F42B 14/06 20060101AFI20231002BHJP
F42B 8/14 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
F42B14/06
F42B8/14
(21)【出願番号】P 2021552510
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(86)【国際出願番号】 CA2020050240
(87)【国際公開番号】W WO2020176970
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-12-23
(32)【優先日】2019-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521395285
【氏名又は名称】ジェネラル ダイナミックス オードナンス アンド タクティカル システムズ-カナダ,インク
【氏名又は名称原語表記】GENERAL DYNAMICS ORDNANCE AND TACTICAL SYSTEMS-CANADA,INC.
【住所又は居所原語表記】5 Montee des Arsenaux Repentigny,Quebec J5Z 2P4 CANADA
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【氏名又は名称】大菅 義之
(72)【発明者】
【氏名】ラフォーチュン エリック
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09157715(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0192751(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0318402(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F42B 14/06
F42B 8/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ライフリングを含むバレルを有する銃器内に収容するように適合された非致死性カートリッジであって、
薬莢と、
前記薬莢内に配備され、推進剤ガスを産出するように発火可能なプライマー及び/又は推進剤と、
前記推進剤ガスの膨張に応じて前記薬莢とサボとの間の相対運動を可能にするように前記薬莢に伸縮自在に結合された前記サボであって、前記サボは、サボ口を有し、前記推進剤ガスを前記サボ口に流動的に伝達するように構成される、前記サボと、
前記サボから前記銃器の前記バレルを通って推進されるように構成された非致死性発射体と、含み、
前記非致死性発射体は、
前記サボ口内に配備され、第1のポリマー材料で形成されたポリマーベース発射体部分と、
前記第1のポリマー材料よりも軟質の第2のポリマー材料で形成されたポリマー前部シェル発射体部分であって、前記ポリマー前部シェル発射体部分は、前記ポリマーベース発射体部分に結合され、前記サボ口内との締まりばめを
行う円形ロッキングリブ機構
が形成された外面を有し、それによって、発射体スナップの分離を防止するように前記サボ口により非致死性発射体を拘束し、前記ポリマーベース発射体部分は、前記推進剤ガスの膨張に応じて前記サボから推進される場合に前記非致死性発射体に回転安定性を与えるために前記バレルのライフリングと係合するように構成され、前記ポリマー前部シェル発射体部分は、衝突エネルギーを吸収するために衝突時に変形するように構成される、前記ポリマー前部シェル発射体部分と、
を含む、非致死性カートリッジ。
【請求項2】
前記ポリマーベース発射体部分は、燃焼及び/又はポリマー残留物を除去するために前記バレルの前記ライフリングと係合するように構成される、請求項1に記載の非致死性カートリッジ。
【請求項3】
前記円形ロッキングリブ
機構は、正方形、長方形、弧状、半径、円錐形、又はそれらの組み合わせからなるグループから選択されたプロファイル形状を有する、請求項1に記載の非致死性カートリッジ。
【請求項4】
前記ポリマー前部シェル発射体部分は、内部シェル体積を取り囲むシェル壁を含み、前記シェル壁は、外面と、前記外面の反対側であり、前記内部シェル体積に面する内面とを有し、
前記ポリマーベース発射体部分は、内部ベース体積を取り囲むベース壁を有し、前記ベース壁は、前記シェル壁の前記内面と界面をなす外側ベース表面を有する、請求項1に記載の非致死性カートリッジ。
【請求項5】
前記外側ベース表面は、前記シェル壁の前記内面と係合する発射体スナップ機構を含む、請求項4に記載の非致死性カートリッジ。
【請求項6】
前記円形ロッキングリブ機構は、前記発射体スナップ機構と実質的に軸方向に並んで配置される、請求項5に記載の非致死性カートリッジ。
【請求項7】
前記シェル壁は、周囲シェル端部を有し、前記ポリマーベース発射体部分は、前記外側ベース表面から延在し、後部駆動バンドを画定する周囲ベース端部を有し、前記周囲シェル端部は、前方に配備され、前記周囲ベース端部に隣接し、前記周囲ベース端部は、前記バレルの前記ライフリングと係合するようにサイズ化される、請求項4に記載の非致死性カートリッジ。
【請求項8】
前記後部駆動バンドは、後部の実質的に全長の駆動バンドである、請求項7に記載の非致死性カートリッジ。
【請求項9】
前記後部駆動バンドは、後部の溝付き駆動バンドである、請求項7に記載の非致死性カートリッジ。
【請求項10】
前記後部駆動バンドは、後部の後縁駆動バンドである、請求項7に記載の非致死性カートリッジ。
【請求項11】
前記後部駆動バンドは、後部の前縁駆動バンドである、請求項7に記載の非致死性カートリッジ。
【請求項12】
前記周囲ベース端部は、外側ベース端部の直径を画定し、前記円形ロッキングリブ機構は、前記外側ベース端部の直径と実質的に同じである外側円形リブの直径を画定する、請求項7に記載の非致死性カートリッジ。
【請求項13】
前記円形ロッキングリブ機構は、ギャップを画定するために前記後部駆動バンドから離間される、請求項7に記載の非致死性カートリッジ。
【請求項14】
前記ポリマー前部シェル発射体部分はシェル長を有し、前記ポリマーベース発射体部分は、前記シェル
長の少なくとも約30%の距離で前記内部シェル体積内に配備され、前記周囲ベース端部は、前記内部シェル体積の外側の前記ポリマー前部シェル発射体部分の後方に配備される、請求項7に記載の非致死性カートリッジ。
【請求項15】
前記後部駆動バンドは、前記非致死性発射体が前記バレルを通って推進される間に燃焼及び/又はポリマー残留物を前記バレルから除去することを容易にするように構成された先端を有する、請求項7に記載の非致死性カートリッジ。
【請求項16】
前記シェル壁は、衝突エネルギーを吸収するために前記ポリマー前部シェル発射体部分の変形を容易にするために、衝突時に破裂するように構成された複数のフランジブルラインを画定する、請求項4に記載の非致死性カートリッジ。
【請求項17】
前記非致死性発射体は、前記内部シェル体積内に配備されたマーキング化合物を更に含む、請求項4に記載の非致死性カートリッジ。
【請求項18】
前記内部シェル体積は何れのマーキング化合物をも含まない、請求項4に記載の非致死性カートリッジ。
【請求項19】
前記ポリマー前部シェル発射体部分の前記外面は、前記ライフリングに対して前記バレルを通って移動する前記非致死性発射体を整列させるのを助力するように構成された少なくとも1つの円形ガイドバンドを含む、請求項1に記載の非致死性カートリッジ。
【請求項20】
非致死性発射体を保持するための口を有し、ライフリングを含むバレルを有する銃器内に収容されるように適合された非致死性カートリッジ用の前記非致死性発射体であって、
前記口の中に配備され、第1のポリマー材料で形成されたポリマーベース発射体部分と、
前記第1のポリマー材料よりも軟質の第2のポリマー材料で形成されたポリマー前部シェル発射体部分であって、前記ポリマー前部シェル発射体部分は、前記ポリマーベース発射体部分に結合され、前記口との締まりばめを
行う円形ロッキングリブ機構
が形成された外面を有し、前記ポリマーベース発射体部分は、推進剤ガスの膨張に応じて前記銃器の前記バレルを通って推進される場合に前記非致死性発射体に回転安定性を与えるために前記バレルの前記ライフリングと係合するように構成され、前記ポリマー前部シェル発射体部分は、衝突エネルギーを吸収するために衝突時に変形するように構成される、前記ポリマー前部シェル発射体部分と
を含む、非致死性発射体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
この出願は、2019年3月4日に出願の米国仮特許出願62/813,357の利用可能な全ての利益に関連し、それらを主張し、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
技術分野は、一般的に、銃器用のカートリッジに関し、より具体的には、回転安定性を与えるために銃器のバレルのライフリングと係合するように構成されたポリマーベース発射体部分と、衝突時に衝突エネルギーを吸収するのを助力するための比較的軟質のポリマーで形成されたポリマー前部シェル発射体部分と、を含む非致死性発射体を含むカートリッジに関する。
【背景技術】
【0003】
銃器用の多くの非致死性カートリッジは、非致死性の完全なマッシュルーミング(例えば、変形)ポリマーマーキング発射体を含み、実戦的な小口径の武器のフォースオンフォースの訓練に長年使用現在されている。これは、特に、Luxtonに発行された“The Frangible Nonlethal Marking Projectile Design”という名称の米国特許第5,035,183号、及びDittrichに発行された“The Reduced Energy Cartridge”という名称の米国特許第5,359,937号の出現以来、当てはまり、それらは、組み合わされた場合に、FX(登録商標)マーキングカートリッジに世界を導入することによって軍事及び法執行機関の訓練教義に革命を起こした。この業界をリードする軽量の2部構成のポリマー発射体の設計は、着色マーキング組成物で充填された前部発射体シェルと、キャップとして機能する背面部分とを有する。典型的には、これらのマーキングラウンドは、ピストル、ライフル、サブマシンガン、及びマシンガンでの使用のために産出されており、それらは、Simunition(登録商標)武器変換キットを使用することにより訓練用に一時的に変更されている。
【0004】
そうした革新的な技術の出現と共に、参加者が最低限義務付けられた保護具を着用している場合に参加者に重傷を負わせるリスクなしに、変更された軍用武器から発射されるエネルギー低減マーキングカートリッジを使用して、人間標的物を用いて、及びそれに対して、非常に現実的でインタラクティブな現実ベースの訓練シミュレーション及び近接訓練演習を行うことが現在可能になった。近年、訓練シナリオ後の清掃の必要性を避けるために、保護具及びシュートハウスにマーキング化合物がない状態を保つという利点を備えた、(マーキング化合物なしの)非マーキングの完全なマッシュルーミングポリマー発射体も使用されている。
【0005】
これらのFX(登録商標)訓練カートリッジは、標的物との衝突時に、前部発射体部分内の事前画定されたブレークラインに沿って薄いシェルの発射体から放出される半粘性着色化合物で通常充填された、2部構成のマーキング発射体を特徴とする。これらのブレークラインは、発射体が衝突時にぺしゃんこになり、標的物上で“マッシュルーミングする”(例えば、変形して外側に広がる)ことを可能にする。このことは、マーキング化合物と発射体の衝突運動エネルギーとが、発射体の単なる飛行中の断面積よりも広い表面積に渡って分散させられることを可能にする。Luxtonにより米国特許第5,035,183号で教示された先行技術を回避するために、衝突時にマーキング化合物を標的物に移転する、より複雑で効率の悪い方法を備えた発射体の設計が開発されている。しかしながら、こうした発射体は、それらの独自のパフォーマンス上の欠点を有する。そうした一例は、PCT特許出願番号WO2003 GB02344-20030530(WO3102492(A1))であり、それは、標的物の衝突時にマーカー物質を放出するために小さなボールベアリングの前方運動量に依存する金属マーカー発射体を教示する。
【0006】
従来技術の非致死性の完全なマッシュルーミングポリマーマーキング発射体は、発射体上に回転安定性を与えるために銃器のバレルのバレルライフリングに係合する結果として、軟質ポリマーの前部シェル及び後部中にバレルライフリングを彫刻することをしばしば伴う。最適な非致死性発射体技術は、許容可能なマーキング化合物と衝突時のエネルギー散逸とのために、信頼性のある適切な発射体の変形を確実にするべく、前部シェルが、事前画定されたブレークラインを備えて、薄く軟質のポリマーの性質で作られることを必要とする。しかしながら、軟質ポリマーの発射体の性質でのバレルの彫刻は、武器のバレルの急速なプラスチックファウリング(例えば、プラスチックの残留物の生成)に対する悪名高い原因になり、それは、銃器の弾道性能と信頼性とに悪影響を及ぼし、頻繁なバレルの清掃を必要とさせるおそれがある。
【0007】
軟質ポリマーの後部及び前部シェル内に彫刻されるという実質的に完全なマッシュルーミングマーキング発射体の設計は、武器のバレル内に急速かつ重大なプラスチックファウリングを生成し得る。上述のように、このことは、一定の発射体速度と弾道性能を維持するために頻繁なバレルの清掃を必要とし、それは、幾らかのユーザーにとって不快にさせ又は欠点になり得る。また、頻繁に清掃しない場合には、バレル内に残存するプラスチックファウリングの残留物が最終的に乾燥して、業界標準のボアブラッシング技術で除去することが困難になり得る。
【0008】
ファウリングを低減する手段として、バレルライフリングとの接触を最小限に抑えるように発射体の前部シェル下部の外径を削減することも、カートリッジ内の発射体アセンブリの堅牢性を危うくすることが知られている。この低強度で薄く軟質のシェルの(ファウリングを減らす手段としての)外径底部からの材料の除去は、カートリッジをその後引き出したり又は取り出したりするのを過剰に容易にさせる。この状態は、発射体の前部シェルがカートリッジからより容易に取り外されるようになり、弾倉の装填中又は弾倉からバレルチャンバーへの銃器の供給中に位置がずれ、又は脱落さえするようにさせ得る。最適な弾道性能には、発射体の前部シェルが発射前に真っ直ぐにカートリッジ上に適切に整列される必要がある。
【0009】
幾つかの状況では、2部構成の発射体内のマーキング化合物は、準最適な保管(例えば、非常に高い温度及び/又は湿度)条件への長時間の曝露を通じて時期尚早に老朽化し得、そのため、改善された貯蔵寿命のマーキング発射体に対する必要性が明らかになる。このことは、水性の着色マーキング化合物を含む発射体のマーキングに特に当てはまるが、この欠点は、マーキングされた標的物のより速く、容易で、完全な洗浄能力という大きな利点によってある程度相殺される。ワックス状又は油性の着色マーキング化合物を用いる他のコンセプトは、湿った布で完全には洗い流されず、訓練後にワックス状又は油性の着色マーキング化合物を清掃することが難しいため、軍事訓練での使用には適さない。それ故、これらのワックス状又は油性の化合物は、訓練後に訓練用保護具を洗濯機で洗わなければならないという追加の実務上の負担を引き起こす。
【0010】
残念ながら、水を含む着色マーキング化合物が時期尚早に老朽化する場合、水分の幾らかが、薄いシェルのポリマー発射体本体の2つの部分の接合部を通った移動を介して蒸発する可能性がある。このことは、マーキング化合物の粘度及び質量の減少を導く可能性があり、したがって、時間の経過後に意図する標的物上へのマーキング効果の減少を導き得る。幾つかの場合、不利な条件での保管後には、特に非常に低温下では、発射体は、時折マーキングを失敗することさえあり得る。マーキング化合物が老朽化すると、相変化を受けることもあり得、薄壁ポリマー発射体内のその質量分布が均一でなくなり得る。このことは、同時に産出された発射体の所与の個体群に対して、異なる発射体の慣性モーメントの範囲を生じさせ得る。発射体の慣性モーメントの変化は、外部弾道の一貫性と標的物上の精度とにとって望ましくない。
【0011】
更に、マーキング化合物の水分の喪失と、対応する質量の喪失とは、発射体毎に変化し得る。この質量の変化は、したがって、銃器の銃口での発射体速度の変化の増加を導き得、それは、標的物上へのマーキング化合物の望ましくない衝突分散/拡散の増加と精度の低下とを更に導き得る。発射体内部のマーキング化合物の質量分布の変化の増加はまた、軽量ポリマー発射体の飛行安定性の減少を導き得、精度の更なる劣化をもたらす。また、銃器内で機能している信頼性のあるカートリッジにさえ影響を与え得る。
【0012】
したがって、前述の懸念の1つ以上に対処する銃器用の非致死性発射体を含む非致死性カートリッジを提供することが望ましい。更に、本明細書で説明する様々な実施形態の他の望ましい機構及び特徴は、添付の図面及びこの背景技術と併せて、後続の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明の概要】
【0013】
非致死性発射体を保持するための口(mouth)を有する非致死性カートリッジ用の非致死性発射体、及びライフリングを含むバレルを有する銃器内に収容されるように適合された非致死性カートリッジが本明細書で提供される。例示的な実施形態では、非致死性カートリッジは、薬莢を含む。プライマー及び/又は推進剤は薬莢内に配備され、推進剤ガスを産出するように点火可能である。推進剤ガスの膨張に応じて薬莢とサボとの間の相対的運動を可能にするように、サボは薬莢に伸縮自在に結合される。サボは、サボ口を有し、推進剤ガスをサボ口に流動的に伝達するように構成される。非致死性発射体は、サボから銃器のバレルを通って推進されるように構成される。非致死性発射体は、サボ口内に配備されたポリマーベース発射体部分を含み、第1のポリマー材料で形成される。ポリマー前部シェル発射体部分は、第1のポリマー材料よりも軟質の第2のポリマー材料で形成される。ポリマー前部シェル発射体部分は、ポリマーベース発射体部分に結合され、サボ口との締まりばめを行う円形ロッキングリブ機構が形成された外面を有し、それによって、発射体スナップの分離を防止するようにサボ口により非致死性発射体を拘束する。ポリマーベース発射体部分は、推進剤ガスの膨張に応じてサボから推進される場合に発射体に回転安定性を与えるためにバレルのライフリングと係合するように構成される。ポリマー前部シェル発射体部分は、衝突エネルギーを吸収するために衝突時に変形するように構成される。
【0014】
例示的な実施形態では、非致死性発射体は、非致死性カートリッジの口内に配備されて、第1のポリマー材料から形成されるポリマーベース発射体部分を含む。ポリマー前部シェル発射体部分は、第1のポリマー材料よりも軟質の第2のポリマー材料で形成される。ポリマー前部シェル発射体部分は、ポリマーベース発射体部分に結合され、口との締まりばめを行う円形ロッキングリブ機構が形成された外面を有する。ポリマーベース発射体部分は、推進剤ガスの膨張に応じて銃器のバレルを通って推進される場合に発射体に回転安定性を与えるためにバレルのライフリングと係合するように構成される。ポリマー前部シェル発射体部分は、衝突エネルギーを吸収するために衝突時に変形するように構成される。
【0015】
様々な実施形態は、以下の図と併せて以下で説明されるであろうし、同様の数字は、同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】例示的な実施形態に従った非致死性カートリッジの側面図を説明する。
【
図2】例示的な実施形態に従った非致死性カートリッジの側面断面図を説明する。
【
図3】例示的な実施形態に従った銃器での発射中の非致死性カートリッジの側面断面図を説明する。
【
図4】例示的な実施形態に従った非致死性発射体の側面図を説明する。
【
図5】例示的な実施形態に従った非致死性発射体の正面図を説明する。
【
図6A】例示的な実施形態に従った非致死性発射体の側面断面図を説明する。
【
図6B】例示的な実施形態に従った非致死性発射体の側面断面図を説明する。
【
図6C】例示的な実施形態に従った非致死性発射体の側面断面図を説明する。
【
図6D】例示的な実施形態に従った非致死性発射体の側面断面図を説明する。
【
図7】例示的な実施形態に従った標的物に衝突した後の非致死性発射体の斜視図を説明する。
【
図8】例示的な実施形態に従った標的物に衝突した後の非致死性発射体の側面斜視図を説明する。
【
図9】例示的な実施形態に従った標的物に衝突した後の非致死性発射体からのマーキング化合物パターンの斜視側面図を説明する。
【
図10】銃器のバレルを通過した後のライフリングから彫刻された非致死性発射体の側面図を説明する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の詳細な説明は、本質的に単なる例示であり、様々な実施形態又はその適用及び使用を限定することを意図しない。更に、前述の背景技術又は以下の詳細な説明に提示される理論に拘束される意図はない。
【0018】
本明細書で企図される様々な実施形態は、銃器用の非致死性発射体を含む非致死性カートリッジに関する。
図1~
図3を参照すると、本明細書で教示される例示的な実施形態は、ライフリング16を含むバレル14を有する銃器12内に収容されるように適合された非致死性カートリッジ10を提供する。非致死性カートリッジ10は、薬莢18と、薬莢18内に配備された、プライマー21を含むプライマーポケット19、フラッシュホール23、及び推進剤20とを含む。プライマー21は、推進剤ガス22を産出するように推進剤20を点火するために点火可能である。例示的な実施形態では、例えば、非致死性カートリッジ10は、推進剤なしでプライマーガス膨張のみによって動力を供給され得、或いは、1つは武器反動用であり1つは発射体推進用である2つのプライマーによって動力を供給され得る等の、代替的構成を含み得る。
【0019】
サボ24は、推進剤ガス22の拡張に応じて薬莢18とサボ24との間の相対運動(両方向の矢印25で示される)、例えば、伸縮又は拡張/摺動運動を可能にするように、薬莢に伸縮自在に結合される。サボ24は、サボ口26を有し、推進剤ガス22をサボ口26に流動的に伝達するように構成される。図示されるように、サボ口26は、非致死性発射体28を保持するようにサイズ化され、又はさもなければ構成される。例示的な実施形態では、非致死性カートリッジ10は、例えば、ピストンが非致死性発射体28を保持するための口を含むサボの代わりに、後方反動する内側ピストン等の代替的構成を有し得る。
【0020】
図4~
図5を参照すると、非致死性発射体28は、推進剤ガス22の膨張に応じて、サボ24から銃器12のバレル14を通って推進されるように構成される。非致死性発射体28は、サボ口26内に配備されたポリマーベース発射体部分30を含む。ポリマー前部シェル発射体部分32は、ポリマーベース発射体部分30に結合される。ポリマー前部シェル発射体部分32は、前方又は遠位方向で内側に先細りする又は狭くなる実質的に円筒形の外面を有し、実質的に丸みを帯びた前面部分を備えた空気力学形状を有する表面外側を画定している。図示されるように、ポリマー前部シェル発射体部分32の後方区域上において、外面は、サボ口26との締まりばめを形成する円形ロッキングリブ機構34(例えば、環状ロッキングリブ機構)を含む。ポリマーベース発射体部分30は、銃器12の発射中の推進剤ガス22の膨張に応じてサボ24から推進される場合に非致死性発射体28に回転安定性を与えるために、バレル14のライフリング16と係合するように構成される。
図7~
図8に示されるように、ポリマー前部シェル発射体部分32は、例えば非致死性発射体28が意図した標的物に当たった場合に、衝突エネルギーを吸収するために、衝突時にマッシュルーミングしたり、別種の変形をしたりするように構成される。
【0021】
再び
図1~
図5を参照すると、例示的な実施形態では、非致死性発射体28は、他の従来の非致死性発射体と比較して比較的軽量である。更に、ポリマーベース発射体部分30は、比較的硬質の又は剛性のポリマー材料36で形成され、ポリマー前部シェル発射体部分32は、ポリマーベース発射体部分30の比較的硬質のポリマー材料36よりも軟質である比較的軟質の又は柔軟なポリマー材料38で形成される。上述のように、ポリマー前部シェル発射体部分32の後方の非致死性発射体28の後部上に配備されるポリマーベース発射体部分30は、非致死性発射体28に回転を与えるべくライフリング16と係合するように、更に、推進剤ガス22を閉塞するように、並びにバレル14及び/又はライフリング16に堆積され得る燃焼及びポリマー残留物を擦り取り、収集し、除去するように寸法合わせされ、さもなければサイズ化される。
【0022】
図示されるように、例示的な実施形態では、ポリマー前部シェル発射体部分32の外面は、バレル14内の最適な彫刻整列のための2つの環状又は円形のガイドバンド40及び42を含み、マーキング化合物46(
図9も参照)を一貫して解放し、衝突エネルギーを分散するように、標的物55上で実質的に完全なマッシュルーミングすること(
図7~
図8に示される)を可能にするために、事前に配置されたブレークライン(フランジブルライン)44を含む。
【0023】
以下で更に詳細に論じるように、ポリマーベース発射体部分30は、外側ベース表面50から延在し、後部駆動バンド52を画定する周囲ベース端部48を有する。例示的な実施形態では、有利には、ポリマーベース発射体部分30の後部駆動バンド52及び円形ロッキングリブ機構34と、ポリマー前部シェル発射体部分32の円形ガイドバンド40及び42とは、銃器12における効果的な弾倉の装填及び供給の堅牢性を可能にするように、並びに非致死性発射体28がライフリング16と係合するバレル14を通って加速される場合に、ポリマーベース発射体部分30からポリマー前部シェル発射体部分32への回転を移転するのを助力するように協働する。
【0024】
例示的な実施形態では、ポリマーベース発射体部分30の外側ベース表面50は、ポリマーベース発射体部分30及びポリマー前部シェル発射体部分32を取り付けるように構成された円形発射体スナップ機構54を含む。この実施形態ではまた、ポリマーベース発射体部分30の外側ベース表面50の直径と、非致死性発射体28の内部シェル体積56内に配備されたマーキング化合物46のシーリングを助力するポリマー前部シェル発射体部分32の接触直径との間で、マーキング化合物46の、したがって非致死性発射体28の貯蔵寿命を延ばすための干渉又は“圧入”を含む。代替的な実施形態では、非致死性発射体28は、非致死性発射体の内部シェル体積56が何れのマーキング化合物をも含まない非マーキング非致死性発射体であり、それ故、比較的軽量の非致死性発射体である。
【0025】
例示的な実施形態では、ポリマー前部シェル発射体部分32はシェル長を有し、周囲ベース端部48が内部シェル体積56の外側のポリマー前部シェル発射体部分32の後方に配備されつつ、ポリマーベース発射体部分30は、シェル長の少なくとも約30%の距離で内部シェル体積56内に配備される。有利には、ポリマーベース発射体部分30の内部シェル体積56への挿入の深さは、従来技術の非致死性発射体と比較して約15%の増加を表し、それによって、非致死性発射体28がサボ24内に一旦組み立てられると、サボ24の口26内に保持されたポリマーベース発射体部分30から比較的軟質の薄く壊れやすいポリマー前部シェル発射体部分32をこじ開けられることに対する抵抗を増大させる。
【0026】
例示的な実施形態では、非致死性発射体28がサボ24内に一旦組み立てられると、有利には、ポリマー前部シェル発射体部分32の円形ロッキングリブ機構34は、発射体スナップアタッチメント54が分離することを防止するためにサボ口26との制限として効果的に機能し、したがって、サボ口26内に保持されたポリマーベース発射体部分30からポリマー前部シェル発射体部分32を引き抜くこと対する抵抗を増加させる(例えば、発射体スナップ接続が維持されることを確実にする)。この重要な機構はまた、ライフリング16から、ポリマーベース発射体部分30への円形ロッキングリブ機構34への圧縮力を通じて、ポリマーベース発射体部分30からポリマー前部シェル発射体部分32への完全な回転移転を確実にするのを助力する。ポリマー前部シェル発射体部分32の円形ロッキングリブ機構34は、軟質のプラスチックバレルファウリングを無視できる程度にするために、ライフリング16との最小限の接触表面積を有しながら、発射体スナップ接続54が維持されることを確実にするように構成される。例示的な実施形態では、円形ロッキングリブ機構34は、正方形、長方形、弧状、半径、円錐形等、又はそれらの組み合わせ形状、例えば、銃器12のバレル14のライフリング16との最小限であるが十分な表面接触を確実にするために円錐形の先端と組み合わされた長方形等のプロファイル形状を有する。例示的な実施形態では、円形ロッキングリブ機構34の長方形部分は、発射体スナップの分離に対する効果的な抵抗を確実にするために、発射体スナップ機能54の僅かに後ろ(例えば、後方)に配置される。
【0027】
例示的な実施形態では、有利には、ポリマーベース発射体部分30の後部駆動バンド52は、硬質ポリマー材料36からの剛性と、後部駆動バンド52の比較的鋭い先端58の形状とを組み合わせることによって、バレル14内に堆積し得る燃焼又はポリマー残留物を効率的に擦り取り、収集するように構成される。例示的な実施形態では、有利には、残留物は、後部駆動バンド52と円形ロッキングリブ機構34との間に形成されるギャップ60内に効果的に収集される。
【0028】
図6A~
図6Dを参照すると、ポリマーベース発射体部分30の後部駆動バンド52は、様々な構成を有し得る。例示的な実施形態では、
図6Aに示されるように、後部駆動バンド52は、後部の実質的に全長の駆動バンド64として構成される。別の例示的な実施形態では、
図6Bに示されるように、後部駆動バンド52は、残留物を擦り取り収集するように相互に作用し得る2つのギャップ及び2つの鋭い先端機構を含む後部の溝付き駆動バンド66として構成される。別の例示的な実施形態では、
図6Cに示されるように、後部駆動バンド52は、後部の後縁駆動バンド70として構成される。別の例示的な実施形態では、
図6Dに示されるように、後部駆動バンド52は、後部の前縁駆動バンド72として構成される。
【0029】
図10に説明されるように、例示的な実施形態では、後部駆動バンド52と組み合わせたポリマーベース発射体部分30の硬質ポリマー材料36は、遥かに小さな彫刻面62をもたらし、それによって、武器発射中に、より軟質のポリマー前部シェル発射体部分32によって堆積され得るプラスチックファウリングを低減する。例示的な実施形態では、有利には、非致死性発射体28は、バレル14内のプラスチックファウリングを著しく低減する。望ましくないプラスチックバレルファウリングの排除と共に、銃口初速及び回転移転の一貫性が大幅に改善され、したがって、標的物55上の精度を改善し、標的物の衝突分散を低減し、それによって、ユーザーは最小限のバレル清掃頻度で期待される弾道性能と発射体速度とを維持することを可能にする。
【0030】
例えば、ポリアミド(例えば、ナイロン)、高密度ポリエチレン、PVCブレンド、又はアセタールポリマー(例えば、デルリン(登録商標))等の様々な硬質グレードのポリマーが、ポリマーベース発射体部分30を形成するために使用可能である。例示的な実施形態では、適切な彫刻抵抗、優れた寸法安定性、比較的高い融点、及び低いバレルファウリング特性を提供するために、硬質ポリマー材料36は、アセタールホモポリマー、アセタールコポリマー、又はそれらの組み合わせを含む。例示的な実施形態では、ポリマー前部シェル発射体部分32を形成する軟質ポリマー材料38は、可撓性グレードのポリオレフィン、例えば、ポリプロピレン及び/又は熱可塑性オレフィン(TPO)等の比較的柔軟なポリマーである。
【0031】
例示的な実施形態では、ポリマーベース発射体部分30の硬質ポリマー材料36は、少なくとも100ロックウェルRの硬度、例えば、約100~約140ロックウェルRの硬度を有する。例示的な実施形態では、ポリマー前部シェル発射体部分32の軟質ポリマー材料38は、約35~約65、例えば、約40~約60等、約40~約50等、例えば、約46のショアD硬度を有する。
【0032】
上述のように、ポリマー前部シェル発射体部分32は、ポリマー前部シェル発射体部分32内に一体的に成形された少なくとも1つの、例えば少なくとも2つの円形ガイドバンド40及び42を有する。例示的な実施形態では、バレル14内のバロッティングを最小限にするように(バレル14を離れるときの発射体ヨーを最小限にするように)、バレル14のボア内の非致死性発射体28を有利に誘導するために、並びに、非致死性発射体28の精度の改善に貢献し、それによって、非致死性発射体の精度を、従来技術の発射体構成よりも長い範囲に改善するために、円形ガイドバンド40及び42は、バレル14のボアの直径よりも僅かに小さい(例えば、より小さな外径である)。
【0033】
例示的な実施形態では、非致死性発射体28は、様々な口径の武器での使用のために構成される。一例では、非致死性発射体28は、約5.56mmの口径の発射体であり、約0.15~約0.4グラムの重量を有する。別の例では、非致死性発射体28は、約6.8mmの口径の発射体であり、約0.2~約0.5グラムの重量を有する。更に別の例では、非致死性発射体28は、約7.62mmの口径の発射体であり、約0.2~約0.6グラムの重量を有する。別の例では、非致死性発射体28は、約9mmの口径の発射体であり、約0.3~約0.7グラムの重量を有する。
【0034】
[例]
以下は、例示的な実施形態に従った非致死性発射体の非限定的な例である。非致死性発射体28は、以下の平均仕様:
バレルライフリングボアの直径:Φ0.300インチ
バレルライフリング溝の直径:Φ0.308インチ
後部駆動バンド上の発射体彫刻直径:Φ0.308インチ
円形ロッキングリブ機構、直径:Φ0.306インチ
サボ口の直径:Φ0.306インチ
円形ガイドバンド、直径:僅かに≦Φ0.300インチ
を備えたサブキャリバー7.62mmの発射体として構成される。
【0035】
少なくとも1つの例示的な実施形態が開示の前述の詳細な説明に提示されているが、膨大な数の変形が存在することを理解すべきである。1つ以上の例示的な実施形態は単なる例であり、如何なる方法においても開示の範囲、適用可能性、又は構成を限定することを意図しないことも理解すべきである。むしろ、前述の詳細な説明は、開示の例示的な実施形態を実装するための便利なロードマップを当業者に提供するであろう。添付の特許請求の範囲に記載されているような開示の範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態で説明される要素の機能及び配置に様々な変更がなされ得ることは理解される。