(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】ブラケット及び電子機器
(51)【国際特許分類】
F16C 11/04 20060101AFI20231002BHJP
F16C 11/10 20060101ALI20231002BHJP
G06F 1/16 20060101ALI20231002BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
F16C11/04 F
F16C11/10 E
G06F1/16 313Z
G06F1/16 312A
H05K5/02 E
(21)【出願番号】P 2022016710
(22)【出願日】2022-02-04
【審査請求日】2022-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 剛盛
(72)【発明者】
【氏名】今井 拓水
(72)【発明者】
【氏名】柴山 佳幸
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-281602(JP,A)
【文献】特開2007-065510(JP,A)
【文献】特開2005-165351(JP,A)
【文献】登録実用新案第3109372(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 11/00
H04N 5/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器用のブラケットであって、
第1ヒンジシャフトと、
第2ヒンジシャフトと、
前記第1ヒンジシャフトに支持された第1アームと、前記第2ヒンジシャフトに支持された第2アームと、を有するベースプレートと、
前記第1ヒンジシャフトに支持されると共に、前記第1ヒンジシャフトの軸周りに前記第1アームに対して相対回転可能に設けられ、当該ブラケットを取付対象に固定するための固定プレートと、
前記第2ヒンジシャフトに支持されると共に、前記第2ヒンジシャフトの軸周りに前記第2アームに対して相対回転可能に設けられ、前記電子機器の筐体が取り付けられる取付プレートと、
前記第1ヒンジシャフトの軸周りでの前記第1アーム及び前記固定プレートの相対回転と、前記第2ヒンジシャフトの軸周りでの前記第2アーム及び前記取付プレートの相対回転と、を選択的に規制するストッパ機構と、
を備え
、
前記第1アームは、前記第1ヒンジシャフトに相対回転可能に支承され、
前記第2アームは、前記第2ヒンジシャフトに相対回転可能に支承され、
前記固定プレートは、前記第1ヒンジシャフトに相対回転不能に連結され、
前記取付プレートは、前記第2ヒンジシャフトに相対回転不能に連結され、
前記ストッパ機構は、
第1係合穴を有し、前記第1ヒンジシャフトに相対回転不能に連結された第1カムと、
第2係合穴を有し、前記第2ヒンジシャフトに相対回転不能に連結された第2カムと、
前記第1カムと前記第2カムとの間で前記ベースプレートに相対移動可能に支持され、第1端部が前記第1係合穴に係脱可能であり、第2端部が前記第2係合穴に係脱可能であるロックバーと、
を有し、
前記ロックバーは、
前記第1端部が前記第1係合穴に係合した状態では前記第2端部が前記第2係合穴から離脱した状態となることで、前記第1アームの前記第1ヒンジシャフトに対する相対回転を規制すると共に、前記第2アームの前記第2ヒンジシャフトに対する相対回転を許容して、前記取付プレートの前記第2ヒンジシャフトの軸周りでの回転を可能とし、
一方、前記第2端部が前記第2係合穴に係合した状態では前記第1端部が前記第1係合穴から離脱した状態となることで、前記第2アームの前記第2ヒンジシャフトに対する相対回転を規制すると共に、前記第1アームの前記第1ヒンジシャフトに対する相対回転を許容して、前記ベースプレートの前記第1ヒンジシャフトの軸周りでの回転を可能とする
ことを特徴とするブラケット。
【請求項2】
請求項
1に記載のブラケットであって、
前記第1カムは、リング形状を有し、その外周面には周方向に延びた第1溝が設けられ、
前記第2カムは、リング形状を有し、その外周面には周方向に延びた第2溝が設けられ、
前記第1アームは、前記第1溝内を移動することで、前記第1ヒンジシャフトと前記ベースプレートとの間の相対回転の角度範囲を規制する第1突起を有し、
前記第2アームは、前記第2溝内を移動することで、前記第2ヒンジシャフトと前記ベースプレートとの間の相対回転の角度範囲を規制する第2突起を有する
ことを特徴とするブラケット。
【請求項3】
請求項
1又は
2に記載のブラケットであって、
前記第1カムは、前記ロックバーの第1面に当接し、前記第1ヒンジシャフトと前記ベースプレートとの間の相対回転の方向を規制する第1ストッパを有し、
前記第2カムは、前記ロックバーの第2面に当接し、前記第2ヒンジシャフトと前記ベースプレートとの間の相対回転の方向を規制する第2ストッパを有する
ことを特徴とするブラケット。
【請求項4】
請求項
1~
3のいずれか1項に記載のブラケットであって、
前記ロックバーは、
前記第1端部を有する第1バーと、
前記第2端部を有し、前記第1バーの長手方向に並んだ第2バーと、
前記第1バーと前記第2バーとを連結し、前記第1端部と前記第2端部との間の距離を収縮可能な弾性部材と、
を有する
ことを特徴とするブラケット。
【請求項5】
電子機器用のブラケットであって、
第1ヒンジシャフトと、
第2ヒンジシャフトと、
前記第1ヒンジシャフトに支持された第1アームと、前記第2ヒンジシャフトに支持された第2アームと、を有するベースプレートと、
前記第1ヒンジシャフトに支持されると共に、前記第1ヒンジシャフトの軸周りに前記第1アームに対して相対回転可能に設けられ、当該ブラケットを取付対象に固定するための固定プレートと、
前記第2ヒンジシャフトに支持されると共に、前記第2ヒンジシャフトの軸周りに前記第2アームに対して相対回転可能に設けられ、前記電子機器の筐体が取り付けられる取付プレートと、
前記第1ヒンジシャフトの軸周りでの前記第1アーム及び前記固定プレートの相対回転と、前記第2ヒンジシャフトの軸周りでの前記第2アーム及び前記取付プレートの相対回転と、を選択的に規制するストッパ機構と、
を備え、
前記第1アームは、前記第1ヒンジシャフトに相対回転不能に連結され、
前記第2アームは、前記第2ヒンジシャフトに相対回転不能に連結され、
前記固定プレートは、前記第1ヒンジシャフトに相対回転可能に支承され、
前記取付プレートは、前記第2ヒンジシャフトに相対回転可能に支承され、
前記ストッパ機構は、
第1係合穴を有し、前記第1ヒンジシャフトに相対回転可能に支承され、且つ前記固定プレートと相対回転不能な第1カムと、
第2係合穴を有し、前記第2ヒンジシャフトに相対回転可能に支承され、且つ前記取付プレートと相対回転不能な第2カムと、
前記第1カムと前記第2カムとの間で前記ベースプレートに相対移動可能に支持され、第1端部が前記第1係合穴に係脱可能であり、第2端部が前記第2係合穴に係脱可能であるロックバーと、
を有し、
前記ロックバーは、
前記第1端部が前記第1係合穴に係合した状態では前記第2端部が前記第2係合穴から離脱した状態となることで、前記固定プレートの前記第1ヒンジシャフトに対する相対回転を規制すると共に、前記取付プレートの前記第2ヒンジシャフトに対する相対回転を許容して、前記取付プレートの前記第2ヒンジシャフトの軸周りでの回転を可能とし、
一方、前記第2端部が前記第2係合穴に係合した状態では前記第1端部が前記第1係合穴から離脱した状態となることで、前記取付プレートの前記第2ヒンジシャフトに対する相対回転を規制すると共に、前記固定プレートの前記第1ヒンジシャフトに対する相対回転を許容して、前記ベースプレートの前記第1ヒンジシャフトの軸周りでの回転を可能とする
ことを特徴とするブラケット。
【請求項6】
電子機器であって、
電子部品を収容し、第1面にカメラ又は表示部を有する筐体と、
前記筐体の第2面に取り付けられ、前記筐体を壁掛け固定するためのブラケットと、
を備え、
前記ブラケットは、
第1ヒンジシャフトと、
第2ヒンジシャフトと、
前記第1ヒンジシャフトに支持された第1アームと、前記第2ヒンジシャフトに支持された第2アームと、を有するベースプレートと、
前記第1ヒンジシャフトに支持されると共に、前記第1ヒンジシャフトの軸周りに前記第1アームに対して相対回転可能に設けられ、当該ブラケットを壁に固定するための固定プレートと、
前記第2ヒンジシャフトに支持されると共に、前記第2ヒンジシャフトの軸周りに前記第2アームに対して相対回転可能に設けられ、前記電子機器が取り付けられる取付プレートと、
前記第1ヒンジシャフトの軸周りでの前記第1アーム及び前記固定プレートの相対回転と、前記第2ヒンジシャフトの軸周りでの前記第2アーム及び前記取付プレートの相対回転と、を選択的に規制するストッパ機構と、
を有
し、
前記第1アームは、前記第1ヒンジシャフトに相対回転可能に支承され、
前記第2アームは、前記第2ヒンジシャフトに相対回転可能に支承され、
前記固定プレートは、前記第1ヒンジシャフトに相対回転不能に連結され、
前記取付プレートは、前記第2ヒンジシャフトに相対回転不能に連結され、
前記ストッパ機構は、
第1係合穴を有し、前記第1ヒンジシャフトに相対回転不能に連結された第1カムと、
第2係合穴を有し、前記第2ヒンジシャフトに相対回転不能に連結された第2カムと、
前記第1カムと前記第2カムとの間で前記ベースプレートに相対移動可能に支持され、第1端部が前記第1係合穴に係脱可能であり、第2端部が前記第2係合穴に係脱可能であるロックバーと、
を有し、
前記ロックバーは、
前記第1端部が前記第1係合穴に係合した状態では前記第2端部が前記第2係合穴から離脱した状態となることで、前記第1アームの前記第1ヒンジシャフトに対する相対回転を規制すると共に、前記第2アームの前記第2ヒンジシャフトに対する相対回転を許容して、前記取付プレートの前記第2ヒンジシャフトの軸周りでの回転を可能とし、
一方、前記第2端部が前記第2係合穴に係合した状態では前記第1端部が前記第1係合穴から離脱した状態となることで、前記第2アームの前記第2ヒンジシャフトに対する相対回転を規制すると共に、前記第1アームの前記第1ヒンジシャフトに対する相対回転を許容して、前記ベースプレートの前記第1ヒンジシャフトの軸周りでの回転を可能とする
ことを特徴とする電子機器。
【請求項7】
電子機器であって、
電子部品を収容し、第1面にカメラ又は表示部を有する筐体と、
前記筐体の第2面に取り付けられ、前記筐体を壁掛け固定するためのブラケットと、
を備え、
前記ブラケットは、
第1ヒンジシャフトと、
第2ヒンジシャフトと、
前記第1ヒンジシャフトに支持された第1アームと、前記第2ヒンジシャフトに支持された第2アームと、を有するベースプレートと、
前記第1ヒンジシャフトに支持されると共に、前記第1ヒンジシャフトの軸周りに前記第1アームに対して相対回転可能に設けられ、当該ブラケットを壁に固定するための固定プレートと、
前記第2ヒンジシャフトに支持されると共に、前記第2ヒンジシャフトの軸周りに前記第2アームに対して相対回転可能に設けられ、前記電子機器が取り付けられる取付プレートと、
前記第1ヒンジシャフトの軸周りでの前記第1アーム及び前記固定プレートの相対回転と、前記第2ヒンジシャフトの軸周りでの前記第2アーム及び前記取付プレートの相対回転と、を選択的に規制するストッパ機構と、
を有
し、
前記第1アームは、前記第1ヒンジシャフトに相対回転不能に連結され、
前記第2アームは、前記第2ヒンジシャフトに相対回転不能に連結され、
前記固定プレートは、前記第1ヒンジシャフトに相対回転可能に支承され、
前記取付プレートは、前記第2ヒンジシャフトに相対回転可能に支承され、
前記ストッパ機構は、
第1係合穴を有し、前記第1ヒンジシャフトに相対回転可能に支承され、且つ前記固定プレートと相対回転不能な第1カムと、
第2係合穴を有し、前記第2ヒンジシャフトに相対回転可能に支承され、且つ前記取付プレートと相対回転不能な第2カムと、
前記第1カムと前記第2カムとの間で前記ベースプレートに相対移動可能に支持され、第1端部が前記第1係合穴に係脱可能であり、第2端部が前記第2係合穴に係脱可能であるロックバーと、
を有し、
前記ロックバーは、
前記第1端部が前記第1係合穴に係合した状態では前記第2端部が前記第2係合穴から離脱した状態となることで、前記固定プレートの前記第1ヒンジシャフトに対する相対回転を規制すると共に、前記取付プレートの前記第2ヒンジシャフトに対する相対回転を許容して、前記取付プレートの前記第2ヒンジシャフトの軸周りでの回転を可能とし、
一方、前記第2端部が前記第2係合穴に係合した状態では前記第1端部が前記第1係合穴から離脱した状態となることで、前記取付プレートの前記第2ヒンジシャフトに対する相対回転を規制すると共に、前記固定プレートの前記第1ヒンジシャフトに対する相対回転を許容して、前記ベースプレートの前記第1ヒンジシャフトの軸周りでの回転を可能とする
ことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
請求項
6又は7に記載の電子機器であって、
前記筐体を前記壁に対して最も接近させた状態において、前記ベースプレートと前記固定プレートとは互いに平行し、前記ベースプレートと前記取付プレートとは互いに直交する
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器用のブラケット及び該ブラケットを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、インターネットや電話回線等を利用し、遠隔地同士で音声や映像を介した会議や通話を行うことができる電子機器が利用されている。この種の電子機器は、相手側から発せられた音声等を出力するためのスピーカー装置を搭載している(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年は、ディスプレイを用いたオンライン会議の需要が増加している。このため、上記のような電子機器は、例えば壁掛けした大型ディスプレイの上や下に壁掛けで使用したいという要望が出ている。この場合、電子機器は、筐体の奥行寸法を最小限に抑えて壁からの突出長を抑える必要がある。
【0005】
ところで、上記のような電子機器は、筐体の正面にカメラや表示部を備えることがある。カメラ等は、会議参加者を可能な限り正面に捉えることができることが望ましい。そこで、電子機器は、カメラの角度を変更するためのモータ機構を搭載することが考えらえるが、機構が大型化して突出量の増大を招く。そこで、壁掛け用のブラケットにチルト構造を搭載することも考えられる。しかしながら、この場合は、壁からのブラケットの突出量を最小限に抑えつつ、十分な角度範囲のチルト動作を可能とする必要がある。
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題を考慮してなされたものであり、電子機器のチルト動作を可能としつつ、奥行寸法を抑制することができるブラケット及び該ブラケットを備える電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様に係るブラケットは、電子機器用のブラケットであって、第1ヒンジシャフトと、第2ヒンジシャフトと、前記第1ヒンジシャフトに支持された第1アームと、前記第2ヒンジシャフトに支持された第2アームと、を有するベースプレートと、前記第1ヒンジシャフトに支持されると共に、前記第1ヒンジシャフトの軸周りに前記第1アームに対して相対回転可能に設けられ、当該ブラケットを取付対象に固定するための固定プレートと、前記第2ヒンジシャフトに支持されると共に、前記第2ヒンジシャフトの軸周りに前記第2アームに対して相対回転可能に設けられ、前記電子機器の筐体が取り付けられる取付プレートと、前記第1ヒンジシャフトの軸周りでの前記第1アーム及び前記固定プレートの相対回転と、前記第2ヒンジシャフトの軸周りでの前記第2アーム及び前記取付プレートの相対回転と、を選択的に規制するストッパ機構と、を備える。
【0008】
本発明の第2態様に係る電子機器は、電子部品を収容し、第1面にカメラ又は表示部を有する筐体と、前記筐体の第2面に取り付けられ、前記筐体を壁掛け固定するためのブラケットと、を備え、前記ブラケットは、第1ヒンジシャフトと、第2ヒンジシャフトと、前記第1ヒンジシャフトに支持された第1アームと、前記第2ヒンジシャフトに支持された第2アームと、を有するベースプレートと、前記第1ヒンジシャフトに支持されると共に、前記第1ヒンジシャフトの軸周りに前記第1アームに対して相対回転可能に設けられ、当該ブラケットを壁に固定するための固定プレートと、前記第2ヒンジシャフトに支持されると共に、前記第2ヒンジシャフトの軸周りに前記第2アームに対して相対回転可能に設けられ、前記電子機器が取り付けられる取付プレートと、前記第1ヒンジシャフトの軸周りでの前記第1アーム及び前記固定プレートの相対回転と、前記第2ヒンジシャフトの軸周りでの前記第2アーム及び前記取付プレートの相対回転と、を選択的に規制するストッパ機構と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の上記態様によれば、電子機器のチルト動作を可能としつつ、奥行寸法を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る電子機器の一使用態様を示すシステム図である。
【
図3】
図3は、ブラケットをチルトアップ動作させて正面側から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、ブラケットをチルトダウン動作させて正面側から見た斜視図である。
【
図5】
図5は、初期位置としたブラケットを背面側から見た斜視図である。
【
図6A】
図6Aは、第1ヒンジシャフト及びその周辺部を拡大した斜視図である。
【
図6B】
図6Bは、ベースプレート及び第1トルク発生部を取り外した状態で第1ヒンジシャフト及びその周辺部を拡大した斜視図である。
【
図7A】
図7Aは、第2ヒンジシャフト及びその周辺部を拡大した斜視図である。
【
図7B】
図7Bは、ベースプレート及び第2トルク発生部を取り外した状態で第2ヒンジシャフト及びその周辺部を拡大した斜視図である。
【
図8A】
図8Aは、初期位置でのブラケットの模式的な側面断面図である。
【
図8B】
図8Bは、
図8Aに示すブラケットをチルトアップ動作させた状態を示す側面断面図である。
【
図8C】
図8Cは、
図8Aに示すブラケットをチルトダウンプ動作させた状態を示す側面断面図である。
【
図9】
図9は、
図8Aに示す状態からロックバーが第1カムと第2カムとの間でスタックした状態を示す側面断面図である。
【
図10】
図10は、変形例に係るブラケットの第1ヒンジシャフト及びその周辺部を拡大した斜視図である。
【
図11】
図11は、
図10に示すブラケットの第2ヒンジシャフト及びその周辺部を拡大した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る電子機器及びブラケットについて好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
【0012】
図1は、一実施形態に係る電子機器10の一使用態様を示すシステム図である。本実施形態の電子機器10は、例えばインターネットで接続された遠隔地との間で音声や映像を利用した会議や通話を行うオンライン会議システムに用いることができる端末装置である。
【0013】
図1に示すオンライン会議システムは、本実施形態に係る電子機器10と、タッチパネル操作部12と、外部ディスプレイ14と、パーソナルコンピュータ16とを含む。
図1に示すように、電子機器10は、例えば会議室の壁に壁掛け固定された外部ディスプレイ14の上方又は下方に壁掛け固定される。電子機器10は、テーブル等の上に載置して用いることもできる。
【0014】
タッチパネル操作部12は、電子機器10に対する入力操作用のタッチパネル式端末である。外部ディスプレイ14は、例えば電子機器10とインターネット18及びクラウドサーバー19を介して接続された会議相手側のパーソナルコンピュータ20からの情報を表示することができる。具体的には、外部ディスプレイ14は、電子機器10の制御下に会議相手の顔映像や資料等を表示する。パーソナルコンピュータ16は、例えば電子機器10の使用者からの資料等を外部ディスプレイ14及び相手側のパーソナルコンピュータ20に送信することができる。パーソナルコンピュータ16は、タッチパネル操作部12に代えて電子機器10に対する入力操作用として用いてもよい。
【0015】
電子機器10と、タッチパネル操作部12、外部ディスプレイ14、及びパーソナルコンピュータ16とは、例えばUSB規格やHDMI(登録商標)規格等の所定の接続規格に準拠したコネクタ及びケーブルを用いて接続される。
【0016】
先ず、電子機器10の概要を説明する。
【0017】
図2A及び
図2Bは、それぞれ電子機器10の底面図及び側面図である。
図2Bは、電子機器10の右側面図を図示しているが、左側面図はこれと左右対称構造である。
【0018】
図2A及び
図2Bに示すように、電子機器10は、筐体22と、ブラケット23とを備える。以下、電子機器10及びブラケット23について、
図1に示す正面から見た方向を基準として、筐体22の高さ方向を上下、筐体22の幅方向を左右、筐体22の奥行方向を前後、と呼んで説明する。
【0019】
筐体22は、横長のバー形状を有し、略直方体形状の箱体である。このため、筐体22の正面22a及び背面22bは、それぞれ左右方向に横長な幅寸法と、これよりも小さい高さ寸法とを有する。筐体22の上面22c及び下面22dは、それぞれ左右方向に横長な幅寸法と、これよりも小さい奥行寸法Dとを有する。筐体22の左側面22e及び右側面22fは、それぞれ前後方向に幅狭な奥行寸法Dと、これよりも多少大きい上下方向の高さ寸法とを有する。
【0020】
図1に示すように、正面22aには、カメラ24と、マイク25と、ライト26とが設けられている。
【0021】
カメラ24は、電子機器10の正面側に位置する使用者を撮像するカメラデバイスである。カメラ24は、正面22aの左右略中央の上部に配置されている。マイク25は、電子機器10の使用者の音声等を集音するマイクデバイスである。マイク25は、カメラ24の下方で左右方向に並んだ複数のマイク孔から正面22aを臨んでいる。ライト26は、電子機器10の動作状態やマイク25の集音状態等を使用者に通知するための光通知部であり、スマートライトとも呼ばれる表示部である。ライト26は、カメラ24とマイク25との間に設けられた横長な細い光透過窓から正面22aを臨んでいる。正面22aには、さらに電子機器10の電源ランプ等も設けられている。正面22aには、例えば時計や作動状態を表示する液晶ディスプレイ等の表示部27が設けられてもよい。
【0022】
図2Aに示すように、背面22bには、接続端子部28と、左右一対のブラケット23と、ブラケットプレート30とが設けられている。筐体22内に搭載される電子部品としては、CPUを実装したマザーボード、スピーカー装置、及び冷却装置等を例示できる。背面22bには、このような冷却装置のための吸気口が設けられる。接続端子部28は、電子機器10をタッチパネル操作部12、外部ディスプレイ14、パーソナルコンピュータ16、及びインターネット18等に接続するためのコネクタが接続される外部端子群である。接続端子部28には、さらに電子機器10を外部電源に接続するための電源ケーブルも接続される。ブラケット23及びブラケットプレート30については後述する。
【0023】
図2Aに示すように、下面22dには、左右一対の底面吸気口32と、左右一対のゴム脚33とが設けられている。上面22cは、下面22dと略同一の外形を有するが、フラットなプレートで形成されている。ゴム脚33は、電子機器10をデーブル等に載置して使用する際に脚部である。
図2Bに示すように、右側面22fには、側面排気口34が設けられている。側面排気口34は、左側面22eにも設けられている。
【0024】
次に、ブラケット23について説明する。
【0025】
上記したように、電子機器10は、会議室等の壁36に対して壁掛け固定することができる。壁掛けで使用する場合、電子機器10は、
図2A及び
図2Bに示すように、ブラケット23及びブラケットプレート30を背面22bに取り付けて使用する。電子機器10は、壁36以外、例えば外部ディスプレイ14の設置用のラック等に取り付けられてもよい。
【0026】
ブラケットプレート30は、左右方向に長尺な金属プレートである。ブラケットプレート30は、正面の左右にそれぞれブラケット23がねじ止め固定され、背面が壁36にねじ止め固定される。これによりブラケットプレート30は、ブラケット23及びこれに取り付けられた筐体22を壁36に支持する。ブラケットプレート30は、省略してもよく、この場合は左右のブラケット23を直接的に壁36に固定すればよい。
【0027】
図3は、ブラケット23をチルトアップ動作させて正面側から見た斜視図である。
図4は、ブラケット23をチルトダウン動作させて正面側から見た斜視図である。
図5は、初期位置としたブラケット23を背面側から見た斜視図である。
図3及び
図4では、ブラケットプレート30を凹凸のない1枚の平板で模式的に図示しているが、実際のブラケットプレート30は各所にねじ孔や強度確保のための折曲等が設けられている。また
図3~
図5では、左右のブラケット23のうちの一方のみを例示しているが、他方のブラケット23はこれと同一構造でもよいし、左右対称構造でもよい。
【0028】
ブラケット23は、筐体22を壁36に対して支持すると共に、筐体22のチルトアップ動作及びチルトダウン動作を可能とする壁掛け用金具である(
図8A~
図8Cも参照)。ここでは、ブラケット23及びこれに取り付けられた筐体22について、
図2A及び
図2Bに示すようにチルトアップ動作及びチルトダウン動作をしていない状態を初期位置と呼ぶ。初期位置において、ブラケット23は前後寸法に最も薄く折り畳まれる。筐体22は、背面22bが壁36に最も接近し、壁36と平行した状態となる。
【0029】
図3~
図5に示すように、ブラケット23は、第1ヒンジシャフト40と、第2ヒンジシャフト41と、ベースプレート42と、固定プレート44と、取付プレート45と、ストッパ機構46とを有する。本実施形態のブラケット23は、さらに、第1補助プレート48と、第2補助プレート49と、補助固定プレート50と、補助取付プレート51と、第1トルク発生部52と、第2トルク発生部53とを有する。
【0030】
ヒンジシャフト40,41は、金属シャフトである。ヒンジシャフト40,41は、互いの軸線方向が平行した状態で上下に間隔を設けて配置されている。ヒンジシャフト40,41の断面は、円形状の部分と、略楕円状の部分とが軸線方向に沿って適宜設けられている。
【0031】
ベースプレート42は、ヒンジシャフト40,41間を連結する金属プレートである。ベースプレート42は、プレート42aと、立壁42bと、第1アーム42cと、第2アーム42dとを有する。
【0032】
プレート42aは、ベースプレート42の本体となるプレートである。プレート42a、ヒンジシャフト40,41間で延在している。初期位置において、プレート42aの面方向は、上下左右に沿って配置され、壁36と平行する。立壁42bは、プレート42aの左縁部を後方に向かって屈曲させた部分である。ベースプレート42は、プレート42aの側部に立壁42bが形成されているため、その横断面形状は略L字状となる。
【0033】
第1アーム42cは、ベースプレート42の上端面から上方に突出している。本実施形態の第1アーム42cは、立壁42bの上端部をプレート42aの上端面よりも突出させた部分で形成されている。第1アーム42cは、板厚方向に形成された貫通孔を有し、この貫通孔に第1ヒンジシャフト40が相対回転可能に挿通されている。これにより第1アーム42cは、第1ヒンジシャフト40に対して相対回転可能に支承されている。
【0034】
第2アーム42dは、ベースプレート42の下端面から上方に突出している。本実施形態の第2アーム42dは、立壁42bの下端部をプレート42aの下端面よりも突出させた部分で形成されている。第2アーム42dは、板厚方向に形成された貫通孔を有し、この貫通孔に第2ヒンジシャフト41が相対回転可能に挿通されている。これにより第2アーム42dは、第2ヒンジシャフト41に対して相対回転可能に支承されている。
【0035】
第1補助プレート48は、ベースプレート42と第1ヒンジシャフト40との間の連結強度を補助する金属プレートであり、ベースプレート42と一体に動作する。第1補助プレート48は、ベースプレート42の背面上部にねじ止め固定されている。第1補助プレート48は、上端面から突出したアーム48aの貫通孔に第1ヒンジシャフト40が相対回転可能に挿通されている。
【0036】
第2補助プレート49は、ベースプレート42と第2ヒンジシャフト41との間の連結強度を補助する金属プレートであり、ベースプレート42と一体に動作する。第2補助プレート49は、ベースプレート42の背面下部にねじ止め固定されている。第2補助プレート49は、下端面から突出したアーム49aに第2ヒンジシャフト41が相対回転可能に挿通されている。補助プレート48,49は省略してもよい。
【0037】
固定プレート44は、ブラケット23を取付対象である壁36に固定するための金属プレートである。本実施形態のブラケット23は、ブラケットプレート30を介して壁36に固定されるため、固定プレート44はブラケットプレート30にねじ止めされ、間接的に壁36と固定される。固定プレート44は、アーム44aと、ねじ孔44bとを有する。
【0038】
固定プレート44は、その上縁部を後方に向かって屈曲させた立壁を有する。アーム44aは、この立壁の左端部を上方に向かって屈曲させた部分で形成され、上下前後に沿うプレートである。アーム44aは、貫通孔を有し、この貫通孔に第1ヒンジシャフト40が相対回転不能に挿通されている。これにより固定プレート44は、第1ヒンジシャフト40と一体に動作する。ねじ孔44bは、ブラケットプレート30とねじ止めされる部分であり、例えば3か所に設けられている(
図5参照)。
【0039】
補助固定プレート50は、固定プレート44と第1ヒンジシャフト40との間の連結強度を補助する金属プレートであり、固定プレート44と同一の機能を奏する。つまり補助固定プレート50は、上端面から突出したアーム50aに第1ヒンジシャフト40が相対回転不能に挿通される。また補助固定プレート50は、ブラケットプレート30にねじ止めするためのねじ孔50bを、例えば3か所に有する(
図5参照)。補助固定プレート50は、固定プレート44との間にベースプレート42の第1アーム42cを挟むように、固定プレート44と左右に並んで配置される。初期位置において、固定プレート44,50の面方向は、上下左右に沿って配置され、ベースプレート42と平行する。補助固定プレート50は省略してもよい。
【0040】
取付プレート45は、ブラケット23に筐体22を取り付けるための金属プレートである。取付プレート45は、アーム45aと、取付孔45bとを有する。
【0041】
アーム45aは、取付プレート45の右側部の後端部を上方に向かって屈曲させた部分であり、上下前後に沿うプレートである。アーム45aは、貫通孔を有し、この貫通孔に第2ヒンジシャフト41が相対回転不能に挿通されている。これにより取付プレート45は、第2ヒンジシャフト41と一体に動作する。取付孔45bは、筐体22の下面22dに設けたねじ穴に締結するねじが挿通される貫通孔であり、例えば2か所に設けられている(
図4参照)。筐体22は、取付プレート45の上面に載置され、取付孔45bを用いて取付プレート45と締結される。
【0042】
補助取付プレート51は、取付プレート45と第2ヒンジシャフト41との間の連結強度を補助する金属プレートである。補助取付プレート51は、取付プレート45の上面後部にねじ止め固定されている。補助取付プレート51は、上面から突出したアーム51aに第2ヒンジシャフト41が相対回転可不能に挿通される。アーム51aは、アーム45aとの間にベースプレート42の第2アーム44dを挟むように、アーム45aと左右に並んで配置される。初期位置において、取付プレート45,51の面方向は、前後左右に沿って配置され、ベースプレート42と直交する。補助取付プレート51は省略してもよい。
【0043】
以上のように構成されたブラケット23は、ブラケットプレート30を介して固定プレート44,50を壁36に固定することで、取付プレート45の上面に固定された筐体22を壁掛け固定すると共に、そのチルトアップ動作及びチルトダウン動作を可能とする。
【0044】
チルトアップ動作は、
図2Bに示す初期位置から筐体22を把持して上に首振りさせる。そうすると、ブラケット23は、壁36に固定された固定プレート44,50と一体化された第1ヒンジシャフト40を回転軸として、ベースプレート42及び取付プレート45,51が上方へと回転する(
図3参照)。これにより筐体22は、正面22aが所定角度範囲内で上方を向く。
【0045】
チルトダウン動作は、
図2Bに示す初期位置から筐体22を把持して下に首振りさせる。そうすると、ブラケット23は、ベースプレート42が壁36に固定された固定プレート44,50と一体化された状態となる。そして、第2ヒンジシャフト41とが、ベースプレート42の第2アーム42dを軸受けとして回転し、第2ヒンジシャフト41と一体化された取付プレート45,51が下方へと回転する(
図4参照)。これにより筐体22は、正面22aが所定角度範囲内で下方を向く。
【0046】
ところで、ブラケット23は、上記のように2本のヒンジシャフト40,41を有する2軸ヒンジ構造を有する。このため、第1ヒンジシャフト40を回転軸とした回転動作と、第2ヒンジシャフト41を回転軸とした回転動作とが同時に行われる場合も想定される。この場合は、ベースプレート42の下端部が第1ヒンジシャフト40を回転中心として前方に移動するため第2ヒンジシャフト41が前方に移動し、この状態で取付プレート45が第2ヒンジシャフト41を中心として回転する。その結果、筐体22は、壁36からの突出量が想定以上に増加したり、或いは初期位置から前方に平行移動したりといった想定外の姿勢となる。
【0047】
そこで、ブラケット23は、ストッパ機構46を備え、第1ヒンジシャフト40を回転軸とした回転動作と、第2ヒンジシャフト41を回転軸とした回転動作とを選択的に切換可能とされている。
【0048】
図6Aは、第1ヒンジシャフト40及びその周辺部を拡大した斜視図である。
図6Bは、ベースプレート42及び第1トルク発生部52を取り外した状態で第1ヒンジシャフト40及びその周辺部を拡大した斜視図である。
図7Aは、第2ヒンジシャフト41及びその周辺部を拡大した斜視図である。
図7Bは、ベースプレート42及び第2トルク発生部53を取り外した状態で第2ヒンジシャフト41及びその周辺部を拡大した斜視図である。
【0049】
ストッパ機構46は、第1ヒンジシャフト40に対するベースプレート42の第1アーム42cの相対回転と、第2ヒンジシャフト41に対するベースプレート42の第2アーム42dの相対回転と、を選択的に規制する機構である。換言すれば、ストッパ機構46は、第1ヒンジシャフト40の軸周りでの第1アーム42c及び固定プレート44のアーム44aの相対回転と、第2ヒンジシャフト41の軸周りでの第2アーム42d及び取付プレート45のアーム45aの相対回転と、を選択的に規制するものである。
【0050】
図5~
図7Bに示すように、ストッパ機構46は、第1カム54と、第2カム55と、ロックバー56とを有する。
【0051】
図5~
図6Bに示すように、第1カム54は、リング形状を有する金属部材である。第1カム54は、軸孔54aと、第1係合穴54bと、第1溝54cと、第1ストッパ54dとを有する。
【0052】
軸孔54aは、第1カム54の軸中心に沿って貫通する貫通孔である。軸孔54aの内周面は、互いに平行する2つの平面を有する略楕円形状とされている。軸孔54aには、第1ヒンジシャフト40の断面略楕円形状の部分が相対回転不能に挿通され、両者はスプライン嵌合している(
図6B参照)。
【0053】
第1係合穴54bは、第1カム54の外周面の下部に形成された下向きの円弧状溝であり、第1カム54の板厚方向に延在している。第1係合穴54bは、ロックバー56の円弧状の第1端部56aが係脱可能である(
図8A~
図8Cも参照)。
【0054】
第1溝54cは、第1カム54の外周面の上部に形成された上向きの円弧状溝である。第1カム54は、ベースプレート42の第1アーム42cの左側部に隣接している。第1溝54cは、第1アーム42cと対向する第1カム54の右側面に開口し、第1カム54の周方向に延在している。第1溝54cには、第1アーム42cの左側面から突出した第1突起42eが相対移動可能に挿入されている。第1突起42eは、第1溝54cに沿って延びた円弧形状を有する。第1溝54cの全長は、第1突起42eの全長よりも長い。このため、第1溝54cと第1突起42eとの間には、第1溝54c内での第1突起42eの相対移動距離を規定する隙間G1が形成されている(
図8A~
図8C参照)。
【0055】
第1ストッパ54dは、第1カム54の外周面から接線方向に突出した板片であり、第1カム54の後面から下方へと突出している。初期位置において、第1ストッパ54dは、ロックバー56の後面(第1面)に当接している(
図5及び
図8A参照)。
【0056】
図5、
図7A及び
図7Bに示すように、第2カム55は、リング形状を有する金属部材である。第2カム55は、軸孔55aと、第2係合穴55bと、第2溝55cと、第2ストッパ55dとを有する。
【0057】
軸孔55aは、第1カム54の軸孔54aと同一形状でよい。軸孔55aには、第2ヒンジシャフト41の断面略楕円形状の部分が相対回転不能に挿通され、両者はスプライン嵌合している(
図7B参照)。
【0058】
第2係合穴55bは、第2カム55の外周面の上部に形成された上向きの円弧状溝であり、第2カム55の板厚方向に延在している。第2係合穴55bは、ロックバー56の円弧状の第2端部56bが係脱可能である(
図8A~
図8Cも参照)。
【0059】
第2溝55cは、第2カム55の外周面の下部に形成された下向きの円弧状溝である。第2カム55は、ベースプレート42の第2アーム42dの左側部に隣接している。第2溝55cは、第2アーム42dと対向する第2カム55の右側面に開口し、第2カム55の周方向に延在している。第2溝55cには、第2アーム42dの左側面から突出した第2突起42fが相対移動可能に挿入されている。第2突起42fは、第2溝55cに沿って延びた円弧形状を有する。第2溝55cの全長は、第2突起42fの全長よりも長い。このため、第2溝55cと第2突起42fとの間には、第2溝55c内での第2突起42fの相対移動距離を規定する隙間G2が形成されている(
図8A~
図8C参照)。
【0060】
第2ストッパ55dは、第2カム55の外周面から接線方向に突出した板片であり、第2カム55の前面から下方へと突出している。初期位置において、第2ストッパ55dは、ロックバー56の前面(第2面)に当接している(
図5及び
図8A参照)。
【0061】
図5に示すように、ロックバー56は、上下のカム54,55間でベースプレート42の後面に対して上下方向に相対移動可能に支持されている。
図5中の参照符号58は、ベースプレート42の後面でのロックバー56の上下スライドをガイドする略クランク形状のガイドプレートである。
【0062】
ロックバー56の全長は、係合穴54b,55b間のピッチよりも短い。具体的には、ロックバー56の全長は、第1端部56aが第1係合穴54bに係合した状態で、第2端部56bが第2係合穴55bから上方に離脱して第2カム55の外周面から僅かに離間する長さである。換言すれば、ロックバー56は、第2端部56bが第2係合穴55bに係合した状態で、第1端部56aが第1係合穴54bから下方に離脱して第1カム54の外周面から僅かに離間する長さを有する。
【0063】
図5に示すように、本実施形態のロックバー56は、上下に2分割された第1バー56A及び第2バー56Bと、バー56A,56B間を連結する弾性部材56Cとを有する(
図8Aも参照)。
【0064】
第1バー56Aは、上端に第1端部56aを有する。第2バー56Bは、下端に第2端部56bを有する。弾性部材56Cは、第1バー56Aの下端部と第2バー56Bの上端部とを連結した伸縮部材であり、例えばコイルスプリグである。このような構成により、本実施形態のロックバー56は、第1端部56aと第2端部56bとの間の距離、つまり全長を収縮可能である。
【0065】
図6Aに示すように、第1トルク発生部52は、第1ヒンジシャフト40の軸周りでのベースプレート42の第1アーム42c及び第1補助プレート48のアーム48aの回転に所定の回転トルクを付与する。第1トルク発生部52は、例えば金属皿ばねを複数枚積層した構成であり、各皿ばねの軸中心には第1ヒンジシャフト40が挿通される貫通孔が形成されている。
【0066】
図6A中の参照符号60は端部キャップであり、参照符号61はナットである。第1ヒンジシャフト40は、一端に端部キャップ60が固定され、他端にナット61が締結される。ブラケット23は、ナット61の締付トルクを調整することで、第1トルク発生部52の発生トルクを調整可能である。
【0067】
図7Aに示すように、第2トルク発生部53は、第2ヒンジシャフト41の軸周りでのベースプレート42の第2アーム42d及び第2補助プレート49のアーム49aの回転に所定の回転トルクを付与する。第2トルク発生部53及びその周辺部の構成は、上記した第1トルク発生部52及びその周辺部の構成と同一又は同様である。すなわち第2ヒンジシャフト41にも端部キャップ60及びナット61が設けられる。そして、ブラケット23は、ナット61の締付トルクを調整して第2トルク発生部53の発生トルクを調整可能である。
【0068】
次に、以上のようなストッパ機構46を搭載したブラケット23のチルトアップ動作及びチルトアップ動作を説明する。
【0069】
図8Aは、初期位置でのブラケット23の模式的な側面断面図である。
図8Bは、
図8Aに示すブラケット23をチルトアップ動作させた状態を示す側面断面図である。
図8Cは、
図8Aに示すブラケット23をチルトダウンプ動作させた状態を示す側面断面図である。
図8A~
図8Cでは、取付プレート45に取り付けた筐体22は2点鎖線で図示している。
【0070】
図8Aに示すように、初期位置では、ロックバー56は、自重で下方にスライドしており、第1端部56aが第1カム54の第1係合穴54bから離脱し、第2端部56bが第2カム55の第2係合穴55bに係合した状態にある。つまりロックバー56は、第2ヒンジシャフト41と相対回転不能に連結された第2カム55に係合している。このため、ロックバー56と連結されたベースプレート42が、第2ヒンジシャフト41及びこれと相対回転不能に連結された取付プレート45,51と一体化されている。その結果、ブラケット23は、第2ヒンジシャフト41とベースプレート42の第2アーム42dとの間での相対回転が規制されている。
【0071】
一方、ロックバー56は、第1ヒンジシャフト40と相対回転不能に連結された第1カム54からは離脱している。このため、ブラケット23は、ベースプレート42の第1アーム42cと第1ヒンジシャフト40との間での相対回転は許容されている。この際、第1ヒンジシャフト40は、ブラケットプレート30を介して壁36と固定された固定プレート44,50とは一体化されている。
【0072】
この初期位置から、
図8Bに示すチルトアップ動作を行う場合は、筐体22を把持して上に首振りさせる。そうすると、ブラケット23は、筐体22に付与された上方への外力により、壁36と一体化された第1ヒンジシャフト40を回転軸として、ベースプレート42が取付プレート45,51及びこれに固定された筐体22と共に上方へと回転する(
図8B参照)。
【0073】
これにより筐体22は、所望の角度にチルトアップ動作させることができる。このチルトアップ動作時、ベースプレート42の第1アーム42cに設けられた第1突起42eが、第1カム54の第1溝54c内を移動する(
図8A及び
図8B参照)。第1突起42eが第1溝54c内を移動できる距離は隙間G1で規制されている。その結果、第1突起42eが第1溝54c内を移動できる距離が、チルトアップ動作時の第1ヒンジシャフト40とベースプレート42との間の相対回転の角度範囲、つまり筐体22のチルトアップ角度を規制する。本実施形態の電子機器10では、チルトアップ角度は15度である。
【0074】
次に、
図8Aに示す初期位置から、
図8Cに示すチルトダウン動作を行う場合は、筐体22を把持して下に首振りさせる。そうすると、ブラケット23は、筐体22に付与された下方への外力により、ベースプレート42の第2アーム42dを軸受けとして第2ヒンジシャフト41及びこれと一体化された取付プレート45,51が回転する。この際、第2ヒンジシャフト41に相対回転不能に連結された第2カム55も回転する。その結果、第2カム55の第2係合穴55bの内周面がロックバー56の第2端部56bと摺動し、第2係合穴55bの縁部に設けた傾斜面に沿ってロックバー56が押し上げられる(
図8C参照)。つまりロックバー56は自重に抗して上方にスライドする。
【0075】
これによりロックバー56は、今度は、第1端部56aが第1カム54の第1係合穴54bに係合し、第2端部56bが第2カム55の第2係合穴55bから離脱した状態となる。つまりロックバー56は、第1ヒンジシャフト40と相対回転不能に連結された第1カム54の第1係合穴54bに係合した状態となる。このため、ロックバー56と連結されたベースプレート42が、第1ヒンジシャフト40及びこれと相対回転不能に連結された固定プレート44,50と一体化される。その結果、ブラケット23は、第1ヒンジシャフト40とベースプレート42の第1アーム42cとの間での相対回転が規制される。
【0076】
一方、ロックバー56は、第2ヒンジシャフト41と相対回転不能に連結された第2カム55からは離脱している。このため、ブラケット23は、ベースプレート42の第2アーム42dと第2ヒンジシャフト41との間での相対回転は許容されている。この際、第2ヒンジシャフト41は、取付プレート45及びこれに固定された筐体22とは一体化されている。
【0077】
これにより筐体22は、所望の角度にチルトダウン動作させることができる。このチルトダウン動作時には、ベースプレート42の第2アーム42dに設けられた第2突起42fが、第2カム55の第2溝55c内を移動する(
図8A及び
図8C参照)。第2突起42fが第2溝55c内を移動できる距離は隙間G2で規制されている。その結果、第2突起42fが第2溝55c内を移動できる距離が、チルトダウン動作時の第2ヒンジシャフト41とベースプレート42との間の相対回転の角度範囲、つまり筐体22のチルトダウン角度を規制する。本実施形態の電子機器10では、チルトダウン角度は15度である。
【0078】
ところで、ブラケット23は、
図8Aに示す初期位置において、ロックバー56の後面に第1カム54の第1ストッパ54dが当接し、前面に第2カム55の第2ストッパ55dが当接している。このため、ブラケット23は、第1ヒンジシャフト40を回転中心としてベースプレート42が後方に逆回転すること、及び、第2ヒンジシャフト41を回転中心として取付プレート45,51が上方に逆回転することが防止されている。
【0079】
図9は、
図8Aに示す状態からロックバー56が第1カム54と第2カム55との間でスタックした状態を示す側面断面図である。
【0080】
ブラケット23は、2本のヒンジシャフト40,41を備える。このため、例えば筐体22を無理に前方に引き寄せると、ブラケット23は、各ヒンジシャフト40,41の軸周りの回転動作が同時に発生する。その結果、
図9に示すように、ロックバー56は、第1端部56aが第1係合穴54bの縁部に設けた傾斜面に引っかかり、同時に第2端部56bが第2係合穴55bの縁部に設けた傾斜面に引っかかったスタック状態となる可能性がある。
【0081】
このスタック状態では、各ヒンジシャフト40,41の軸周りの回転動作が同時に規制された状態とある。このため、電子機器10は、スタック状態から無理に筐体22を上又は下に首振りさせようとすると、ブラケット23の各部に過大な負荷がかかり、破損や動作不良を生じる懸念がある。
【0082】
そこで、本実施形態のロックバー56は、上下に分割された2本のバー56A,56Bを有し、両者間を弾性部材56Cで連結している。このため、当該ブラケット23は、
図9に示すスタック状態から筐体22に無理な力が付与された場合には、弾性部材56Cが収縮してロックバー56の全長が短くなる。その結果、ロックバー56の端部56a,56bが係合穴54b,55bの傾斜面に引っかかったスタック状態が解除される。このため、その後は、例えば筐体22を一旦後方に押してブラケット23を初期位置に戻すことができ、再び正常なチルトアップ動作及びチルトダウン動作を行うことが可能となる。
【0083】
以上のように、本実施形態の電子機器10は、電子部品を収容し、正面22aにカメラ24又は表示部27若しくはライト26を有する筐体22と、筐体22の背面22bに取り付けられ、筐体22を壁掛け固定するためのブラケット23と、を備える。そして、ブラケット23は、第1ヒンジシャフト40の軸周りでのベースプレート42の第1アーム42c及び固定プレート44の相対回転と、第2ヒンジシャフト41の軸周りでの第2アーム42d及び取付プレート45の相対回転と、を選択的に規制するストッパ機構4と、を有する。
【0084】
これにより当該電子機器10は、ブラケット23を介して壁掛け固定された筐体22に対して、第1ヒンジシャフト40を回転中心としたチルトアップ動作と、第2ヒンジシャフト41を回転中心としたチルトダウン動作と、を選択的に実行することができる。この際、ブラケット23は、上下方向に並んだ2軸であるヒンジシャフト40,41を備える。このため、
図2B及び
図8A~
図8Cに示すように、チルトアップ動作及びチルトダウン動作のいずれの動作でも、筐体22の背面22bの上下角部が壁36に干渉することが回避され、例えば上下にそれぞれ15度ずつの大きな可動範囲を確保できる。しかも、ブラケット23は、モータ機構が不要であると共に、上記した2軸による筐体22の角度範囲拡大効果により、その奥行方向での厚みを最小限に抑えることができる。本実施形態のブラケット23の初期位置での奥行寸法は、例えば10mm以下であり、これにより筐体22を含めた電子機器10の壁36からの突出長は100mm以下となる。
【0085】
ところで、上記では、第1ヒンジシャフト40には、ベースプレート42の第1アーム42cが相対回転可能に支承されると共に、固定プレート44が相対回転不能に連結され、同様に、第2ヒンジシャフト41には、ベースプレート42の第2アーム42dが相対回転可能に支承されると共に、取付プレート45が相対回転不能に連結された構成を例示した。
【0086】
しかしながら、ブラケット23は、これとは逆に、第1ヒンジシャフトには、ベースプレート42の第1アーム42cが相対回転不能に連結されると共に、固定プレート44が相対回転可能に支承され、同様に、第2ヒンジシャフト41には、ベースプレート42の第2アーム42dが相対回転不能に連結されると共に、取付プレート45が相対回転可能に支承された構成としてもよい。なお、この場合は、例えば第1カム54は固定プレート44と一体的に連結し、同様に、第2カム5は取付プレート45と一体的に連結するとよい。より具体的な構成を
図10~
図12Bに示す変形例に係るブラケット23Aを参照して説明する。
【0087】
図10~
図12Bに示すように、ブラケット23Aでは、第1アーム42cは第1ヒンジシャフト40に相対回転不能に連結され、第2アーム42dは第2ヒンジシャフト41に相対回転不能に連結され、固定プレート44,50は第1ヒンジシャフト40に相対回転可能に支承され、取付プレート45,51は第2ヒンジシャフト41に相対回転可能に支承されている。この場合のストッパ機構46の第1カム54は、第1ヒンジシャフト40に相対回転可能に支承され、且つ固定プレート44,50と相対回転不能に連結されている。第2カム55は、第2ヒンジシャフト41に相対回転可能に連結され、且つ取付プレート45,51と相対回転不能に連結されている。第1カム54と固定プレート44,50とは、例えばそれぞれの後面に固定された金属プレート70により、互いに一体的に連結される。同様に、第2カム55と取付プレート45,51とは、例えばそれぞれの前面に固定された金属プレート70により、互いに一体的に連結されている。なお、各金属プレート70は、ベースプレート42のアーム42c,42dには固定されていない。
【0088】
このようなストッパ機構46のロックバー56は、第1端部56aが第1係合穴54bに係合した状態では第2端部56bが第2係合穴55bから離脱した状態となることで、固定プレート44,50の第1ヒンジシャフト40に対する相対回転を規制すると共に、取付プレート45,51の第2ヒンジシャフト41に対する相対回転を許容する。これにより、取付プレート45,51及び第2カム55が第2ヒンジシャフト41及びベースプレート42に対して相対回転し、ブラケット23Aがチルトダウンする(
図12B参照)。一方、ロックバー56は、第2端部56bが第2係合穴55bに係合した状態では第1端部56aが第1係合穴54bから離脱した状態となることで、取付プレート45,51の第2ヒンジシャフト41に対する相対回転を規制すると共に、固定プレート44,50の第1ヒンジシャフト40に対する相対回転を許容する。これにより、ベースプレート42が第1ヒンジシャフト40と共に第1ヒンジシャフト40の軸周りに回転することで、固定プレート44,50及び第1カム54に対して相対回転し、ブラケット23Aがチルトアップする(
図12A参照)。
【0089】
なお、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0090】
10 電子機器
22 筐体
23,23A ブラケット
24 カメラ
26 ライト
27 表示部
30 ブラケットプレート
36 壁
40 第1ヒンジシャフト
41 第2ヒンジシャフト
42 ベースプレート
42c 第1アーム
42d 第2アーム
44 固定プレート
45 取付プレート
46 ストッパ機構
54 第1カム
55 第2カム
56 ロックバー