(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】情報提供装置及び情報提供方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 30/015 20230101AFI20231002BHJP
B25J 19/00 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
G06Q30/015
B25J19/00 Z
(21)【出願番号】P 2022072061
(22)【出願日】2022-04-26
(62)【分割の表示】P 2019561525の分割
【原出願日】2017-12-28
【審査請求日】2022-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】児玉 誠吾
(72)【発明者】
【氏名】藤田 政利
【審査官】松浦 陽
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-373012(JP,A)
【文献】特開2017-213644(JP,A)
【文献】国際公開第2017/130286(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/138952(WO,A1)
【文献】特開2002-133209(JP,A)
【文献】特開2001-344405(JP,A)
【文献】特開2002-328951(JP,A)
【文献】特開2019-106043(JP,A)
【文献】特開2004-094329(JP,A)
【文献】特開2013-073520(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 30/00 - 30/08
G06Q 50/04
G05B 19/418
B25J 1/00 - 21/02
G05B 19/18 - 19/416
G05B 19/42 - 19/46
G16Y 10/00 - 40/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークに対して所定の作業を行う作業ロボットを含む作業システムに用いられる情報提供装置であって、
作業ロボット識別情報、作業ロボット用途情報および作業ロボット外形データを含む装置データベースを記憶する記憶部と、
作業システムの用途を特定する情報を入力する用途入力欄と、入力された用途特定情報により、前記装置データベースに基づいて、当該用途に適合する作業ロボットを情報提供画面上に表示する表示部と、
を備えた情報提供装置。
【請求項2】
前記装置データベースは、作業ロボットに接続可能な装置の情報を含む装置対象情報を含み、
前記表示部は、作業ロボットが特定されると、その作業ロボットに接続可能な装置を選択可能状態で表示する、請求項1に記載の情報提供装置。
【請求項3】
前記表示部は、ワークのサイズまたは質量が入力されると、当該ワークを取り扱えない装置が選択不可になる、請求項1又は2に記載の情報提供装置。
【請求項4】
前記記憶部は、作業ロボットまたは前記作業ロボットの周辺に配設される周辺装置に用いられる制御ソフトウェアの識別情報、用途情報および適用対象情報を含む制御ソフトウェアデータベースを記憶し、
前記表示部は、前記制御ソフトウェアを選択入力する制御ソフトウェア入力欄を表示する、請求項1~3のいずれか1項に記載の情報提供装置。
【請求項5】
前記制御ソフトウェアは、作業ロボットまたは前記作業ロボットの周辺に配設される周辺装置のトレーサビリティーツール、画像処理データ作成ツール、分析ツールのいずれか1つを含む、請求
項4に記載の情報提供装置。
【請求項6】
前記装置データベースは、作業ロボットの価格に関する価格データを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の情報提供装置。
【請求項7】
ワークに対して所定の作業を行う作業ロボットを含む作業システムに用いられる情報提供装置が実行する情報提供方法であって、
前記情報提供装置は、作業ロボット識別情報、作業ロボット用途情報および作業ロボット外形データを含む装置データベースを記憶する記憶部、を備え、
作業システムの用途を特定する情報を入力する用途入力欄と、入力された用途特定情報により、前記装置データベースに基づいて、当該用途に適合する作業ロボットを情報提供画面上に表示するステップ、
を含む情報提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、情報提供装置、情報提供方法及びプログラムを開示する。
【背景技術】
【0002】
従来、ワークに対して作業を行う製造システムの構築方法としては、メインフレームと制御装置を備えた本体装置と、作業要素実行装置を準備し、本体装置のメインフレームに作業要素実行装置を組み付け、制御装置にこの作業要素実行装置を統括して制御するための設定を行うものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この構築方法では、汎用性の高い製造システムを構築可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば、作業ロボットなどにおいては、ワークに対して作業するエンドエフェクタのような構造体を備えるものがあり、ワークの種別やワークに対する処理の種別に応じてエンドエフェクタを逐次開発する必要がある。特定のワークに対して特定の作業を行う作業ロボットを開発しようとした場合、技術者は、設計図面を作成し、設計図面から構造体を試作してその動作や機能が十分であるかを確認する。しかしながら、このような構造体の開発には、高いスキルを要するため、容易なものではなかった。また、このような構造体の開発は、技術者(エンドユーザ)ごとに行われており、その開発資源が有効に生かされることもなかった。
【0005】
本開示は、このような課題に鑑みなされたものであり、作業システムに用いられるものの開発をより容易に実現することができる情報提供装置、情報提供方法及びプログラムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示では、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本開示の情報提供装置は、
ワークに対して所定の作業を行う作業ロボットを含む作業システムに用いられる情報提供装置であって、
前記作業ロボットに関連する構造体の情報と該構造体に関連する処理モデルの情報とを用いて仮想空間上で該構造体による該処理モデルの処理を実現する動作プログラムと、
開発者が使用する情報処理装置から新たな前記構造体と新たな前記処理モデルとのうち1以上を含む開発対象物のデータを取得し、取得した前記開発対象物のデータを用いて前記動作プログラムを実行することにより前記開発対象物による処理を仮想空間上で実現させ、該開発対象物による処理結果を出力させる制御部と、
を備えたものである。
【0008】
この情報提供装置では、作業ロボットに関連する構造体の情報とこの構造体に関連する処理モデルの情報とを用いて仮想空間上で構造体による処理モデルの処理を実現する動作プログラムを有する。また、この情報提供装置では、開発者が使用する情報処理装置から新たな構造体と新たな処理モデルとのうち1以上を含む開発対象物のデータを取得し、取得した開発対象物のデータを用いて動作プログラムにより開発対象物による処理を仮想空間上で実現し、この開発対象物による処理結果を出力する。開発者は、実際に構造体を作製することなく、出力された処理結果に基づいて開発対象物がどのように処理を実行するかを仮想空間上で確認することができる。したがって、この情報提供装置では、作業システムに用いられる構造体や処理モデルの開発をより容易に実現することができる。ここで、「構造体」には、例えば、作業ロボットの一部又は全部のほか、作業ロボットに装着される部材、作業ロボットの周辺に配置される部材などが含まれる。また、「処理結果」には、例えば、構造体の動作や撮像画像の状態、画像処理での判定結果などが含まれ、具体的には、作業ロボット(構造体)同士の干渉の有無、ワークの採取、保持、移動が可能か否か、ワークの落下の有無、撮像画像の画質、画像処理の精度などのうち1以上が含まれるものとしてもよい。また、制御部は、処理結果を、情報提供装置で出力させてもよいし、開発者が使用する情報処理装置から出力させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図4】開発対象物処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【
図7】仮想空間上での方向変更採取部61の動作を示す説明図。
【
図8】仮想空間上での作業システム50の動作を示す説明図。
【
図9】情報提供処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書で開示する情報提供装置20の好適な実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。
図1は、情報提供装置20を備えるエコシステム10の概略説明図である。
図2は、ワークWに対して所定の処理を行う作業システム50の一例を示す斜視図である。
図3は、記憶部23に記憶された装置データベース(DB)31、周辺装置DB32、アプリDB33の説明図である。エコシステム10は、作業システム50の情報を提供する情報提供システムであり、
図1に示すように、インターネットなどのネットワーク11に接続された店舗パソコン(PC)16と、LAN12に接続された情報提供装置20と、LAN12に接続された複数の設計PC40とを備えている。
【0011】
店舗PC16は、エコシステム10を運営する企業などが運営する店舗15に配設されている。この店舗PC16は、作業システム50の導入を検討する顧客などへ作業システム50の情報を提供する。店舗15には、例えば、作業システム50の技術を理解した説明員などが配置されており、この説明員により店舗PC16が操作される。店舗PC16は、CPUなどを含む制御装置と、記憶部と、表示部と、入力装置と、通信部とを備える。この店舗PC16は、ネットワーク11及びLAN12を介して情報提供装置20とデータのやりとりを行う。
【0012】
情報提供装置20は、ワークWに対して所定の作業を行う作業ロボットを含む作業システムに関する情報を取り扱うサーバとして構成されている。情報提供装置20は、例えば、作業システム50や配列装置52及びその近傍に配設される周辺装置の受注納入を行うと共に、新たに開発された開発対象物をエコシステム10へ登録する処理を行うものである。開発対象物には、作業システム50に用いられる装置や周辺装置などの構造体のほか、構造体に関連する処理モデルや処理モデルを実現する制御ソフトウエア(アプリ)などが含まれる。この情報提供装置20は、LAN12を介して設計PC40へデータを送信したり、設計PC40から情報を受信する。また、この情報提供装置20は、ネットワーク11を介して店舗PC16へデータを送信したり、店舗PC16から情報を受信する。この情報提供装置20は、装置全体の制御を司る制御装置21と、各種アプリケーションプログラムや各種データファイルを記憶する記憶部23と、各種情報を表示する表示部24と、作業者が各種指令を入力するキーボード及びマウス等の入力装置25と、設計PC40など外部機器と通信を行う通信部26とを備えている。制御装置21は、CPU22を中心とするマイクロプロセッサーとして構成されている。通信部26は、外部機器との通信を行うネットワークインターフェイスである。
【0013】
ここで、作業システム50について説明する。この作業システム50は、
図2に示すように、処理対象の物品(ワークW)に対して所定の処理を行う作業ロボットとしての配列装置52を備えている。作業システム50は、ワークWを配列するパレットなどの配置部材18を搬送する搬送装置51と、1以上の配列装置52と、ワークWを供給する供給装置54と、装置の制御を行う制御装置52aとを備える。ここでは、この作業システム50がワークWを供給位置から配置部材18へ移動させる作業を行うことを一例として説明する。作業対象のワークWとしては、特に限定されないが、例えば、機械部品、電気部品、電子部品、化学部品など各種の部品のほか、食品、バイオ、生物関連の物品などが挙げられる。また、所定の作業としては、例えば、供給位置から目的位置まで採取、移動、配置する移動作業や、部品を組み付ける組付け作業、加工を施す加工作業、粘性材料を塗布する塗布作業、加熱する加熱作業、化学的及び/又は物理的な所定処理を行う処理作業及び検査を行う検査作業などが挙げられる。配列装置52は、多関節アームロボットとして構成されており、基台53と、アーム部材55と、エンドエフェクタ60と、台座部57とを備えている。基台53は、隣接する装置(配列装置52など)と接続される接続部を有する直方体型の部材であり、その上部にアーム部材55や、他の装置(搬送装置51や供給装置54)などが配設される。アーム部材55は第1アーム部材55aと第2アーム部材55bと第3支持部55cとを有している。エンドエフェクタ60は、アーム部材55の先端に取り外し可能に配設されている。このエンドエフェクタ60の下面側には、処理対象の認識に用いる撮像装置58と、ワークWを把持して採取する方向変更採取部61とが配設されている。
【0014】
方向変更採取部61は、作業ロボットに接続される周辺装置であり、新たに開発される開発対象物であるものとして以下説明する。方向変更採取部61は、多関節ロボット20から供給された圧力(負圧、正圧又は常圧)を用いて駆動し、ワークWを採取すると共に、採取したワークWの方向を変更したのち配置処理する構造体である。この方向変更採取部61は、接続部62と、第1部材63と、回動軸64と、第2部材65と、採取部材66と、外部配管67とを備えている。接続部62は、アーム部材55の先端に配設された接続部59と接続する接続部位であり、規格化された接続方式や大きさで形成されている。第1部材63は、接続部62の下方に固定された部材であり、その下方の先端側に回動軸64が配設されている。第2部材65は、第1部材63の下方で回動軸64により軸支された部材であり、図示しない駆動部により駆動されて回動軸64を軸として回動する。採取部材66は、供給された負圧によりワークWを採取する吸着ノズルであり、取り外し可能な状態で第2部材65の先端に装着される。外部配管67は、アーム部材55から供給される圧力を入力する圧力ポートであり、接続部62の側方に固定されている。方向変更採取部61は、採取部材66先端の移動軌跡が円弧であり、採取されたワークWを鉛直状態から水平状態など0°~90°の範囲で回動する。なお、採取部材66は、吸着ノズルのほか、ワークWを把持するメカニカルチャックとしてもよい。
【0015】
情報提供装置20の記憶部23には、
図1、3に示すように、装置DB31や周辺装置DB32、アプリDB33、動作プログラム34などが記憶されている。装置DB31は、情報提供装置20が取り扱う各種装置の情報を含むデータベースである。この装置DB31には、装置の識別情報(ID)、その装置の用途情報、装置の外形などの構造的なデータを含む装置構造データ、その装置に対応付けられた処理モデルの情報、その装置の基本スペックを含む処理能力データ、その装置に接続可能なものの情報を含む装着対象情報、その装置の価格に関する価格データなどが含まれる。作業システム50には、構造体としての装置(主装置)と周辺装置とが含まれており、例えば、主装置としては作業ロボットとしての配列装置52及び基台53が挙げられ、周辺装置としては搬送装置51、供給装置54、エンドエフェクタ56及び撮像装置58などが挙げられる。装置の用途とは、その装置が有する機能を大まかに抽出可能な情報を含み、例えば、「配置」、「移動」、「移送」、「固定」、「採取」、「方向変更」などが含まれる。装置構造データには、構造体データや可動部位データ、接続部位データなどが含まれる。構造体データは、装置を構成する部位毎の構造体を形状やサイズ、材質などにより特定するデータである。
【0016】
この構造体データには、更に、形状データ、構造条件データ及び材質データなどが含まれるものとしてもよい。形状データは、例えば、3次元CADデータとしてもよい。構造条件データには、例えば、構造体の強度やヤング率、重量、導電性や絶縁性などの情報が含まれるものとしてもよい。材質データには、例えば、構成されている材質の情報、例えば、樹脂、金属、セラミックなどの情報を含むものとしてもよい。例えば、配列装置52において、構造体データには、第1アーム部材55aの骨格や第2アーム部材55bの骨格、両者を接続する接続部材などの形状、構造条件、材質などの情報が含まれる。可動部位データには、例えば、エンドエフェクタ60の回動軸、第1アーム部材55aの回動軸、第2アーム部材55bの回動軸などの位置や方向、可動範囲の情報、第3支持部55cの回転軸(垂直軸)の位置や方向、可動範囲の情報などが含まれる。この可動部位データによって、例えば、アーム部材55の可動範囲や可動方向などが規定される。接続部位データには、例えば、台座部57の固定部位や、エンドエフェクタ60の接続部位、方向変更採取部61の接続部位、撮像装置58の接続部位の規格、位置及び大きさなどの情報が含まれる。この接続部位データによって、例えば、接続可能な配列装置52や、エンドエフェクタ60に装着可能な方向変更採取部61や撮像装置58などが規定される。
【0017】
処理モデルの情報には、例えば、ワークWを用いた移動処理、採取処理、配置処理、方向変換処理、組込処理、撮像処理及び画像処理のうち1以上の情報が含まれる。この処理モデルは、構造体が実行する処理に関連して規定されるものであり、例えば、装置において、搬送装置51には「移送処理」、配列装置52には「移動処理、採取処理、配置処理」などが関連として対応付けられる。また、周辺装置において、方向変更採取部61には「採取処理」、撮像装置58には「撮像処理」、制御部には「画像処理」などが関連として対応付けられる。また、各処理モデルの中にも、例えば、「撮像処理」には、静止画撮像、動画撮像、連続撮像など、複数の処理概念が含まれることがあり、それぞれに応じた処理条件などが設定される。処理能力データには、例えば、その装置における、処理可能なワークWの大きさや質量、装置の動作速度、加速度、ワークに付与可能な圧力(加圧、負圧)、荷重、使用可能な電流、電圧、エネルギー量などが含まれる。装着対象情報には、その装置に接続可能な他の装置及び/又はその装置に接続可能な周辺装置に関する情報、例えば装置IDや周辺装置IDなどが含まれる。この装着対象情報は、上記接続部位データに基づいて設定される。この装置DB31に含まれる情報により、その装置の大きさ、形状、可動範囲、処理内容などが規定される。
【0018】
周辺装置DB32には、周辺装置の識別情報(ID)、その周辺装置の用途情報、周辺装置の外形などの構造的なデータを含む部材構造データ、その周辺装置に対応付けられた処理モデルの情報、その周辺装置の基本スペックを含む処理能力データ、その周辺装置が接続可能な装置及び/又はその周辺装置が接続可能な他の周辺装置に関する情報を含む装着対象情報、その周辺装置の価格に関する価格データなどが含まれる。この周辺装置DB32に含まれる情報は、上述した装置DB31と同様であるものとして、その詳細な説明を省略する。この周辺装置DB32に含まれる情報により、その周辺装置の大きさ、形状、可動範囲、処理内容などが規定される。
【0019】
アプリDB33は、装置や周辺装置に用いられる処理モデルを含む制御ソフトウエア(アプリ)の情報を含むデータベースである。このアプリDB33には、例えば、アプリの識別情報(ID)、そのアプリの用途情報、そのアプリが利用可能な装置及び/又は周辺装置に関する情報を含む適用対象情報、そのアプリに対応付けられた処理モデルの情報、その周辺装置の価格に関する価格データなどが含まれる。アプリは、特定の装置や周辺装置などの構造体に用いられるものであり、構造体と共に、あるいは構造体とは別に作製、販売される。このようなアプリとして、具体的には、特定の撮像装置58に用いられる撮像処理の制御内容などが挙げられる。また、アプリは、作業システム50に用いられる装置や周辺装置などの構造体のトレーサビリティツール、画像処理データ作成ツールや分析ツール等としてもよい。このアプリDB33に含まれるアプリを構造体に適用することによって特定のワークWなどに対するその構造体の制御などが好適化される。
【0020】
動作プログラム34は、構造体の情報とこの構造体に関連する処理モデルの情報とを用いて仮想空間上で作業システムの動作(構造体の動作)を実現するプログラムである。動作プログラム34は、構造体を処理モデルの処理で動作させるいわゆるシミュレーションプログラムである。この動作プログラム34は、主装置に周辺装置が装着された状態や、装置と装置とが接続された状態、更にはこれらの組み合わせなどにおいて、装置DB31と周辺装置DB32とに含まれる情報を取得してその動作を実行し、実行した結果を、例えば動画として表示出力する。このとき、動作プログラム34は構造体及び処理モデルに適用する処理条件を適用し構造体における処理モデルの処理を仮想空間上で実現させる。
【0021】
設計PC40は、
図2に示す作業システム50に組み込まれる構造体、例えば、作業ロボットとしての配列装置52やその周辺に装着する周辺装置の設計などを行うコンピュータである。設計PC40は、情報処理装置として構成されており、CPU42などを含む制御装置41と、記憶部43と、表示部44と、入力装置45と、通信部46とを備える。なお、制御装置41や記憶部43、表示部44、入力装置45及び通信部46は、情報提供装置20で説明したものと同様のものとしてもよい。この設計PC40は、LAN12及び通信部46を介して情報提供装置20とデータのやりとりを行う。また、この設計PC40には、主装置や周辺装置の3次元データを作成する3次元CADなどのソフトウエアがインストールされている。この3次元CADは、開発者のスキルに応じ、情報提供装置20で取り扱い可能な仮想処理形式のデータを取り扱うものとしてもよいし、仮想処理形式のデータと異なる開発形式のデータを取り扱うものとしてもよい。
【0022】
次に、本実施形態のエコシステム10の動作、特に、新たに開発した構造体や処理モデルを含む開発対象物を開発者がエコシステム10に登録する処理について説明する。ここでは、具体例として、開発者が方向変更採取部61をエコシステム10に登録する処理について主として説明する。開発者は、市場のニーズに合わせた新たなエンドエフェクタ(方向変更採取部61)を開発対象物として開発を行う。まず、開発者は、構想設計段階において、機構の設計、配管設計、部品選定、接続部の設計及び電気回路の設計などを行う。また、開発者は、具体的な機能として、ワークWの吸着力を計算により求め、その吸着力に適合する設計を行う。次に、開発者は、構想設計の内容に基づいて、CADデータを作成する。開発者は、メカ部品の設計、エアー流路の設定、材質などの部材設定を行い、設計PC40を用いてCADデータを作成する。また、開発者は、構造体の接合部位における、リンク条件やすべり条件などを含む機構部連結条件を設定する。開発者は、構造体の形状、可動部位、接続部位などを設定し、方向変更採取部61の3次元CADデータを作成する。開発者は、開発対象物の3次元CADデータを作成したのち、動作プログラム34による仮想空間上での処理動作の検証を行う。
図4は、情報提供装置20のCPU22が実行する開発対象物処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、記憶部23に記憶され、設計PC40の作業者(開発者)による開始指示を受けて実行される。このルーチンを開始すると、制御装置21のCPU22は、情報提供画面70を設計PC40へ出力する(ステップS100)。
【0023】
図5は、設計PC40の表示部44に表示される情報提供画面70の一例を示す説明図である。情報提供画面70は、作業システム50の販売などにおいて情報を提供する画面であるが、設計PC40において、既存の装置や周辺装置、アプリなどを読み出して開発対象物に適用することが可能に構成されている。情報提供画面70には、カーソル71、用途入力欄72、装置入力欄73、周辺装置入力欄74、アプリ入力欄75、ワーク入力欄76、画像表示欄77などが配置されている。カーソル71は、画面上に配置された入力欄に対して作業者が選択及び入力指示するものであり、入力装置45の操作により画面上を移動する。用途入力欄72は、システムの用途を特定する情報を入力する欄である。用途入力欄72に用途が入力されると、装置DB31や周辺装置DB32に基づいて、その用途に適合する装置や周辺装置が優先的に情報提供画面70に表示される。なお、用途入力欄72や、その他入力欄では、プルダウンメニューにより選択項目が表示される。この情報提供画面70では、特定の項目が入力されると、それに応じて選択項目が増加したり減少したり変化する。例えば、装置が特定されると、その装置に接続可能な他の装置は選択可能に表示され、接続できない装置は選択不可になる。また、ワークのサイズや質量が入力されると、それを取り扱えない装置や周辺装置は選択不可になる。選択不可の態様としては、例えば、選択項目から削除されるものとしてもよいし、選択不可の態様(グレー表示など)で表示されるものとしてもよい。このような表示制御は、情報提供装置20から出力される情報に基づいて行われ、制御装置21により実現されてもよいし、制御装置41により実現してもよい。装置入力欄73は、所望の装置を選択入力する欄である。この装置入力欄73では、装置が選択されると、その装置に対応付けられた処理モデルが表示可能となり、その装置の画像が入力欄の隣の領域に表示される。周辺装置入力欄74は、装置に接続する周辺装置を入力する欄である。この周辺装置入力欄74においても、周辺装置が選択されると、それに対応付けられた処理モデルが表示可能となり、その周辺装置の画像が入力欄の隣の領域に表示される。アプリ入力欄75は、装置及び周辺装置などの構造体に適用するアプリを選択入力する欄である。このアプリ入力欄75では、アプリが選択されると、それに対応付けられた処理モデルが表示可能となり、その処理内容の詳細が入力欄の隣の領域に表示される。ワーク入力欄76は、取り扱うワークに関する情報を入力する欄であり、例えば、そのワークの種別や、機械的強度などの物性、質量、サイズ、形状などが入力可能である。画像表示欄77は、選択された装置や周辺装置が接続、装着された状態で表示される欄である。この画像表示欄77には、作業システム50の画像や動画が表示される。
【0024】
また、情報提供画面70には、仕様書出力キー78a、仮想処理実行キー78b、開発対象物情報入力キー78c、中止キー78d、登録依頼キー78eなどが配置されている。仕様書出力キー78aは、設計仕様書を出力するときに押下(クリック)されるキーである。仮想処理実行キー78bは、動作プログラム34による作業システム50の動作を画像表示欄77上で表示させるときに押下されるキーである。開発対象物情報入力キー78cは、開発対象物の情報を入力する際に押下されるキーである。中止キー78dは、現在の処理を中止する際に押下されるキーである。登録依頼キー78eは、開発対象物をエコシステム10に登録する際に押下されるキーであり、動作プログラム34による仮想空間上での処理動作が正常に行われた場合に押下可能に表示される。ここで、開発対象物情報入力キー78cが押下されると、CPU22は開発対象物情報入力画面80を表示部44に表示させる。
【0025】
図6は、設計PC40の表示部44に表示される開発対象物情報入力画面80の説明図である。この開発対象物情報入力画面80は、開発対象物情報入力キー78cが押下されると情報提供画面70の上に重ねて表示される。開発対象物情報入力画面80には、処理モデル入力欄81、処理条件情報入力欄82、設計仕様情報入力欄83、開発対象物データ入力欄84、入力キー85、中止キー86及び決定キー87などが配置されている。処理モデル入力欄81は、開発対象物が実行する処理モデルをコマンドとして入力する欄である。この処理モデル入力欄81には、処理モデルの入力欄と、処理モデルの処理内容の入力欄とが含まれる。開発者は、新たな処理モデルを処理モデル入力欄81に入力する場合には、処理モデルにより実行される処理内容を規定する情報を記述する。例えば、「方向変更」を新たな処理モデルとして加える際に、開発者は、方向変更に応じてワークWが描く軌跡、例えば回動軸64からの距離やワークWの方向変更時に占有する空間範囲の情報などについて規定する。処理条件情報入力欄82は、処理モデルの動作条件を入力する欄であり、例えば、移動処理における速度や加速度、ワークWを採取する際の把持力や吸引力などを入力可能である。新規の処理モデルを入力する際には、開発者は、処理モデルに規定される物理量(例えば、方向変更角度、方向変更速度など)を処理条件情報入力欄82に規定する。設計仕様情報入力欄83は、新たな開発対象物の設計仕様情報を入力する欄である。この設計仕様情報入力欄83には、開発対象物が構造体である場合は、その構造体の接続部位の情報やサイズの情報、材質などの情報が入力される。また、設計仕様情報入力欄83には、物理的なスペックの情報として、取り扱うことができるワークWの質量やサイズの情報、物理的に有する圧力ポート数やその接続口、装着可能な採取部材66の情報(例えばIDなど)が入力される。開発対象物データ入力欄84は、予め作成された構造体の3次元CADデータや、処理モデルのアプリなどを入力する欄である。開発対象物データ入力欄84には、該当するデータのファイル名などを入力する。中止キー86や決定キー87は、入力内容を中止、確定する際に押下されるキーである。作業者は、情報提供画面70や開発対象物情報入力画面80に対して各種必要な入力を行う。
【0026】
S100のあと、CPU22は、開発対象物のデータを入力する(S110)。CPU22は、例えば、開発対象物情報入力画面80に入力された開発対象物のデータを入力するものとしてもよい。また、CPU22は、設計PC40から開発形式の構造体の情報及び/又は開発形式の処理モデルの情報を取得したときには、CPU22は、所定の変換プログラムを実行し、動作プログラム34で使用可能な仮想処理形式の構造体の情報及び/又は仮想処理形式の処理モデルの情報へ変換するものとする。次に、CPU22は、既存の装置(周辺装置を含む)や処理モデル、アプリが選択された場合は選択された装置や処理モデル、アプリを装置DB31や周辺装置DB32、アプリDB33から読み出して取得する(S120)。開発者は、装置や処理モデル、アプリの選択を情報提供画面70で行う。また、CPU22は、機構部連結条件に基づいて、読み出した装置と開発対象物とを接続部位で接続させる処理や、アプリを装置に適用する処理を行う。なお、装置や処理モデル、アプリが選択されない場合は、CPU22は、このS120を省略し、開発対象物を単独で検証する。次に、CPU22は、処理条件を含む処理条件情報を設計PC40から取得したか否かを判定し(S130)、処理条件が入力されたときには、動作入力されたか否かを仮想処理実行キー78bが押下されたか否かに基づいて判定する(S140)。
【0027】
S140で動作入力されたときには、CPU22は、仮想空間上での開発対象物の動作処理を実行させる(S150)。このとき、開発対象物が単独で構成されている場合は、CPU22は、処理条件を適用した状態で、開発対象物の動作処理を仮想空間上で実現させる。あるいは、開発対象物が主装置や周辺装置に組み込まれた作業システム50の状態であるときには、CPU22は、処理条件を適用した状態で、開発対象物を組み込んだ作業システム50の動作処理を仮想空間上で実現させる。CPU22は、選択されている構造体及びそれに関連する処理モデルにおいて、取得した処理条件を適用して仮想空間上で開発対象物を動作させ、その動作結果を動画として画像表示欄77に出力させる。このとき、CPU22は、設定された処理条件の速度、加速度でワークWを移動させた際に、把持力やワークWの質量などに応じて移動中にワークWの落下や把持位置のずれが生じるか否かなども含む計算を行う。また、CPU22は、開発対象物を動作させた際に、その構造体が他の構造体と干渉(接触)するか否かについても計算する。更に、CPU22は、設定された処理を実行した際に、処理にかかる時間なども計算する。S150のあと、CPU22は、開発対象物が正常に動作したか否かを上記計算結果に基づいて判定する(S160)。即ち、CPU22は、仮想空間上において、開発対象物によって実行されるべき所定の処理動作が正常に行なわれた否かを判定する。正常に動作できなかったときには、CPU22は、動作不良である旨作業者に報知し(S170)、S110以降の処理を実行する。動作不良を確認した作業者は、例えば、S110でCADデータ等の開発物対象データを修正したり、装置や周辺装置を変更したりして、現在構築されている開発対象物(又は作業システム50)を修正する。
【0028】
図7は、仮想空間上での方向変更採取部61の動作を示す説明図であり、
図7AがワークWを採取した図、
図7BがワークWの方向を変更しずれを生じた図、
図7Cが姿勢維持板68を新たに配設した図、
図7DがワークWの方向変更時に姿勢維持板68により姿勢が維持される説明図である。
図7では、開発対象物である方向変更採取部61を単独で動作検証した説明図である。設定した処理条件で方向変更採取部61を動作させた場合、ワークWのずれが生じることが明らかになる(
図7B)。そこで、開発者は、姿勢維持板68を配設する修正を開発対象物データに対し行い、再度、動作プログラム34で検証する。その結果、開発者は、姿勢維持板68により、方向変更に伴うワークWのずれを抑制することができることを、実物を製造することなく、仮想空間上で確認することができる。
【0029】
図8は、方向変更採取部61を組み込んだ作業システム50の仮想空間上での動作を示す説明図であり、
図8AがワークWを採取する図、
図8BがワークWを移動する図、
図8CがワークWを配置する図である。配列装置52がワークWを移動、及び方向変更する際に、把持力が足りない場合などは、方向変更採取部61からワークWが落下することがありうる。開発者は、処理条件を設定し、方向変更採取部61を備えた配列装置52を仮想空間上で動作させることにより、このようなワークWのずれや落下があるかなどについて、方向変更採取部61を製造する前に、事前に確認することができる。また、このエコシステム10においては、作業システム50が正常に動作できることが確認できた場合においても、例えば、トータルの処理時間についても検討することが可能であり、最適な装置環境を、実機を用意することなく検証することができる。また、仮想空間上での作業システム50の動作確認においては、例えば、想定される他種のワークWへの品種切り替え時の作業について検討することも可能である。更に、エコシステム10では、例えば、供給装置54のワークWの供給条件などを最適化するアプリを組み込んだ状態で、仮想空間上での作業システム50の動作確認を行うことにより、処理時間の短縮など効率化の検証も行うことができる。
【0030】
一方、S160で開発対象物(又は作業システム50)が正常に動作したときには、CPU22は、この開発対象物に対してエコシステム10への登録許可を行う(S180)。CPU22は、情報提供画面70の登録依頼キー78eを操作可能に表示させることにより、登録許可を行う。続いて、CPU22は、登録依頼を取得したか否かを登録依頼キー78eが押下されたか否かに基づいて判定し(S190)、登録依頼を取得したときには、設計仕様情報入力欄83に入力された内容に基づいてこの開発対象物の設計仕様情報を取得する(S200)。そして、CPU22は、開発対象物をエコシステム10へ登録する(S210)。CPU22は、この登録時に、開発対象物に対してIDを付与し、開発対象物に応じて、装置DB31、周辺装置DB32及びアプリDB33のいずれかにその情報及びデータを加える処理を行う。登録された開発対象物は、情報提供画面70で選択可能になる。
【0031】
S210のあと、S130で処理条件が入力されていないとき、S140で動作入力されていないとき、又はS190で登録依頼を取得していないときには、CPU22は、処理終了が入力されたか否かを判定する(S220)。CPU22は、情報提供画面70を閉じる操作が行われたか否かに基づいてこの判定を行うものとする。処理終了が入力されていないときには、CPU22は、S110以降の処理を実行する。即ち、必要に応じて開発対象物の変更を入力し、仮想空間上での動作処理を行い、その結果を画像表示欄77に表示出力する。一方、S220で処理終了が入力されたときには、CPU22は、このルーチンを終了する。このように、開発者は、動作プログラム34の実行により、開発対象物を試作することなく、開発対象物単独での動作や作業システム50へ適用したときの動作などを事前に確認することができる。
【0032】
次に、エコシステム10の動作、特に、作業ロボットによる自動化に関する情報を顧客に提供する処理について説明する。ここでは、主として、店舗PC16から取得した情報に基づいて情報提供装置20が情報を提供する処理について説明する。また、情報提供装置20が、作業システム50(
図2参照)を構築する場合の処理について具体例として説明する。
図9は、情報提供装置20のCPU22が実行する情報提供処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、記憶部23に記憶され、店舗15の作業者(説明員)による開始指示を受けて実行される。このルーチンを開始すると、制御装置21のCPU22は、情報提供画面70(
図5参照)を店舗PC40へ出力する(ステップS300)。
【0033】
S300のあと、CPU22は、作業システム50の用途が入力済みか否かを用途入力欄72への入力内容に基づいて判定する(S310)。システム用途が入力済みであるときには、CPU22は、入力された用途に適合する構造体や処理モデル、アプリを抽出し、店舗PC16へ出力する(S320)。CPU22は、構造体や処理モデル、アプリの抽出を装置DB31、周辺装置DB32及びアプリDB33を利用して行う。また、CPU22は、この抽出した情報を店舗PC16での情報提供画面70の表示制御に利用する。次に、CPU22は、構造体(装置)及びそれに関連する処理モデルが選択済みであるか否かを判定し(S330)、構造体及び処理モデルが選択済みであるときには、CPU22は、構造体を表示処理する(S340)。このとき、構造体が複数選択されているときには、これらを接続した状態で画像表示欄77に表示させる。また、アプリが選択されたときには、その後の処理において、そのアプリを装置又は周辺部材に適用する。続いて、CPU22は、処理条件が入力済みであるか否かを処理条件を含む処理条件情報を店舗PC16から取得したか否かに基づいて判定し(S350)、処理条件が入力済みであるときには、作業システム50の動作処理が入力されたか否かを仮想処理実行キー78bが押下されたか否かに基づいて判定する(S360)。なお、作業システム50が動作可能な程度に構造体や処理モデルが選択されていないときには、S360は否定判定されるものとしてもよい。
【0034】
S360で動作入力されたときには、CPU22は、仮想空間上での作業システム50の動作処理を実行させ(S370)、作業システム50が正常に動作したか否かを判定し(S380)、正常に動作していないときには動作不良を報知させ(S390)、S310位以降の処理を実行する。このS370~S390の処理において、CPU22は、開発対象物処理ルーチンのS150~S170と同様の処理を行うものとする。一方、S380で、作業システム50が正常に動作したときには(例えば
図8参照)、CPU22は、設計仕様書の出力依頼を入力したか否かを仕様書出力キー78aの押下の有無に基づいて判定する(S400)。設計仕様書の出力依頼を入力したときには、CPU22は、設計仕様の情報を含む設計仕様情報を店舗PC160に出力する(S410)。店舗PC16は、設計仕様情報に含まれる設計仕様書を印刷出力するものとしてもよい。そして、CPU22は、情報提供の処理終了が入力されたか否かを情報提供画面70の入力に基づいて判定し(S420)、処理終了が入力されたときには、このルーチンを終了する。一方、S420で処理終了が入力されていないとき、S310でシステムの用途が入力済みでないとき、S330で構造体及び処理モデルが選択済みでないとき、S350で処理条件が入力済みでないとき、S360で動作入力がされていないときには、CPU22は、S310以降の処理を実行する。店舗15において、顧客は、情報提供画面70に表示される動画を確認し、実際に作業システム50を製造、購入することなく、出力された処理結果に基づいて複数の構造体を組み合わせた場合にどのように処理が実行されるかを仮想空間上で確認することができる。
【0035】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の記憶部23が本開示の記憶部に相当し、CPU22が制御部に相当し、配列装置52が作業ロボットに相当する。なお、本実施形態では、情報提供装置20の動作を説明することにより本開示の情報提供方法の一例も明らかにしている。
【0036】
以上説明した本実施形態の情報提供装置20では、配列装置52(作業ロボット)に関連する構造体の情報とこの構造体に関連する処理モデルの情報とを用いて仮想空間上で構造体による処理モデルの処理を実現する動作プログラム34を有する。また、この情報提供装置20では、開発者が使用する設計PC40(情報処理装置)から新たな構造体と新たな処理モデルとのうち1以上を含む開発対象物のデータを取得し、取得した開発対象物のデータを用いて動作プログラム34により開発対象物による処理を仮想空間上で実現し、この開発対象物による処理結果を表示出力する。開発者は、実際に構造体を作製することなく、出力された処理結果に基づいて開発対象物がどのように処理を実行するかを仮想空間上で確認することができる。したがって、この情報提供装置20では、作業システム50に用いられる構造体や処理モデルの開発をより容易に実現することができる。
【0037】
また、制御装置21は、開発対象物の処理条件を含む処理条件情報を取得し、取得した処理条件を適用した状態で開発対象物による処理を仮想空間上で実現させる。この情報提供装置20では、処理条件に基づいた処理が仮想空間上に実現されるため、作業者は、処理条件を変更するなどして開発対象物の様々な処理状態を確認することができる。また、情報提供装置20は、2以上の構造体の情報と、構造体に関連する処理モデルの情報とを登録して記憶する記憶部23を備え、制御装置21は、取得した開発対象物と、記憶部23に登録されている構造体及び/又は処理モデルとを用いた作業システム50を動作プログラム34を実行することにより仮想空間上で実現させる。この情報提供装置20では、出力された処理結果に基づいて開発対象物が仮想空間の作業システム上でどのように処理を実行するかを確認することができる。更に、制御装置21は、開発対象物の情報として新たな処理モデルのデータを取得し記憶部23に登録されている構造体に取得した新たな処理モデルを組み込んで動作プログラム34を実行することにより開発対象物による処理を仮想空間上で実現させることもできる。また、制御装置21は、開発対象物の情報として新たな構造体のデータを取得し記憶部23に登録されている処理モデルを新たな構造体に組み込んで動作プログラム34を実行することにより開発対象物による処理を仮想空間上で実現させることもできる。この情報提供装置20は、例えば、既存の構造体に対して新たな処理モデルを付加する開発や、既存の処理モデルを用いた新たな構造体の開発などを容易に行う環境を提供することができる。
【0038】
また、制御装置21は、仮想空間上における開発対象物の動作が動作プログラム34で正常に行われた場合、この開発対象物の情報を動作プログラム34で使用可能な状態且つ選択可能な状態で記憶部23に登録する。この情報提供装置20では、新たな開発対象物(構造体や処理モデル)を登録し、他の開発者や顧客などがその開発対象物を利用することができるため、開発資源をより有効に活用することができる。また、制御装置21は、仮想空間上における開発対象物の動作が正常に行われた場合、この開発対象物の情報に基づいてこの開発対象物の設計仕様情報を登録する。この情報提供装置20では、登録された設計仕様情報を利用して、容易に開発対象物を製造することができる。更に、情報提供装置20は、各開発者の開発環境で開発された開発形式のデータをエコシステム10で利用可能な仮想処理形式のデータに変換するため、開発者は新たな構造体や処理モデルを開発しやすい。
【0039】
また、構造体には、作業ロボット、供給装置、搬送装置、撮像装置、エンドエフェクタ及びそれらの部位のうち1以上を含むため、この情報提供装置20では、上記各々の構造体について、仮想空間上で処理状態などを確認することができる。更に、構造体の情報には、形状データ、構造条件データ及び材質データのうち1以上を含むため、情報提供装置20では、形状、構造条件及び材料が規定されることにより、そのデータの内容に応じた構造体を仮想空間に実現することができる。更にまた、処理モデルには、ワークWを用いた移動処理、採取処理、配置処理、方向変換処理、組込処理、撮像処理及び画像処理のうち1以上を含むため、情報提供装置20では、仮想空間においてこれらの処理について確認することができる。
【0040】
なお、本開示は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0041】
例えば、上述した実施形態では、制御装置21は、動作プログラム34により、仮想空間上で開発対象物の動作を実現し、処理結果を動画で出力すると共に、正常に実行されたか否かの判定結果を出力するものとしたが、処理結果を動画でのみ出力するものとしてもよいし、判定結果のみを出力するものとしてもよい。このいずれの情報提供装置20によっても、作業システムに用いられるものの開発をより容易に実現することができる。
【0042】
上述した実施形態では、仮想空間上における開発対象物の動作が正常に行われた場合、開発対象物の設計仕様情報を登録するものとしたが、この設計仕様情報の登録を省略してもよい。この情報提供装置20によっても、作業システムに用いられるものの開発をより容易に実現することはできる。
【0043】
上述した実施形態では、制御装置21は、開発形式のデータを仮想処理形式のデータに変換するものとしたが、仮想処理形式のデータを受け付けるものとして、このデータ変換を省略してもよい。
【0044】
上述した実施形態では、本開示を動作プログラム34による動作処理を実行する情報提供装置20として説明したが、特にこれに限定されず、情報提供方法としてもよいし、情報提供プログラムとしてもよい。特に、本開示を情報提供装置20として実現するのみでなく、クラウド上で実現するものとしてもよい。また、上述した実施形態では、情報提供装置20のCPU22が動作プログラムを実行することにより開発対象物による処理を仮想空間上で実現させるものとしたが、これに限定されず、設計PC40のCPU42が動作プログラムを実行することにより開発対象物による処理を仮想空間上で実現させるものとしてもよい。例えば、設計PC40が情報提供装置として機能するものとしてもよい。
【0045】
ここで、本開示の情報提供装置において、前記制御部は、前記開発対象物の処理条件を含む処理条件情報を取得し、取得した処理条件を適用した状態で前記開発対象物による処理を仮想空間上で実現させるものとしてもよい。この情報提供装置では、処理条件に基づいた処理が仮想空間上に実現されるため、作業者は、処理条件を変更するなどして開発対象物の様々な処理状態を確認することができる。ここで「処理条件」には、例えば、処理に用いる物理量などが含まれ、具体的には、大きさ、質量、速度、加速度、圧力、電流、電圧、エネルギー、時間などが含まれる。
【0046】
本開示の情報提供装置は、2以上の前記構造体の情報と、前記構造体に関連する処理モデルの情報とを登録して記憶する記憶部、を備え、前記制御部は、前記取得した前記開発対象物と、前記記憶部に登録されている前記構造体及び/又は前記処理モデルとを用いた前記作業システムを前記動作プログラムを実行することにより仮想空間上で実現させるものとしてもよい。この情報提供装置では、出力された処理結果に基づいて開発対象物が仮想空間の作業システム上でどのように処理を実行するかを確認することができる。
【0047】
本開示の情報提供装置は、2以上の前記構造体の情報と、前記構造体に関連する処理モデルの情報とを登録して記憶する記憶部、を備え、前記制御部は、前記開発対象物の情報として前記新たな処理モデルのデータを取得し前記記憶部に登録されている前記構造体に、該取得した前記新たな処理モデルを組み込んで前記動作プログラムを実行することにより前記開発対象物による処理を仮想空間上で実現させるか、前記開発対象物の情報として前記新たな構造体のデータを取得し、前記記憶部に登録されている処理モデルを前記新たな構造体に組み込んで前記動作プログラムを実行することにより前記開発対象物による処理を仮想空間上で実現させるものとしてもよい。この情報提供装置は、例えば、既存の構造体に対して新たな処理モデルを付加する開発や、既存の処理モデルを用いた新たな構造体の開発などを容易に行う環境を提供することができる。
【0048】
本開示の情報提供装置は、2以上の前記構造体の情報と、前記構造体に関連する処理モデルの情報とを登録して記憶する記憶部、を備え、前記制御部は、前記仮想空間上における前記開発対象物の動作が前記動作プログラムで正常に行われた場合、該開発対象物の情報を前記動作プログラムで使用可能な状態且つ選択可能な状態で前記記憶部に登録するものとしてもよい。この情報提供装置では、新たな開発対象物(構造体や処理モデル)を登録し、他の開発者や顧客などがその開発対象物を利用することができるため、開発資源をより有効に活用することができる。
【0049】
本開示の情報提供装置は、前記制御部は、前記仮想空間上における前記開発対象物の動作が正常に行われた場合、該開発対象物の情報に基づいて該開発対象物の設計仕様情報を登録するものとしてもよい。この情報提供装置では、登録された設計仕様情報を利用して、容易に開発対象物を製造することができる。
【0050】
本開示の情報提供装置において、前記制御部は、前記情報処理装置から開発形式の前記構造体の情報及び/又は開発形式の前記処理モデルの情報を取得し、前記動作プログラムで使用可能な仮想処理形式の前記構造体の情報及び/又は前記仮想処理形式の前記処理モデルの情報へ変換するものとしてもよい。この情報提供装置では、各開発者の開発環境で開発されたものを、本開示のシステムで利用可能な形式に変換するため、開発者は新たな構造体や処理モデルを開発しやすい。
【0051】
本開示の情報提供装置において、前記構造体には、前記作業ロボット、供給装置、搬送装置、撮像装置、前記ワークに対して処理を実行するエンドエフェクタ及びそれらの部位のうち1以上を含むものとしてもよい。この情報提供装置では、上記各々の構造体について、仮想空間上で処理状態などを確認することができる。
【0052】
本開示の情報提供装置において、前記構造体の情報には、形状データ、構造条件データ及び材料データのうち1以上を含むものとしてもよい。この情報提供装置では、形状、構造条件及び材料が規定されることにより、そのデータの内容に応じた構造体を仮想空間に実現することができる。
【0053】
本開示の情報提供装置において、前記処理モデルには、前記ワークを用いた移動処理、採取処理、配置処理、方向変換処理、組込処理、撮像処理及び画像処理のうち1以上を含むものとしてもよい。この情報提供装置では、仮想空間においてこれらの処理について確認することができる。
【0054】
本開示の情報提供方法は、
ワークに対して所定の作業を行う作業ロボットを含む作業システムに用いられる情報提供方法であって、
前記作業ロボットに関連する構造体の情報と該構造体に関連する処理モデルの情報とを用いて仮想空間上で該構造体による該処理モデルの処理を実現する動作プログラムが存在し、
(a)開発者が使用する情報処理装置から新たな前記構造体と新たな前記処理モデルとのうち1以上を含む開発対象物のデータを取得するステップと、
(b)取得した前記開発対象物のデータを用いて前記動作プログラムを実行することにより前記開発対象物による処理を仮想空間上で実現させるステップと、
(c)前記開発対象物により仮想空間上で実現された処理結果を出力するステップと、
を含むものである。
【0055】
この情報提供方法では、上述した情報提供装置と同様に、開発者は、実際に構造体を作製することなく、出力された処理結果に基づいて開発対象物がどのように処理を実行するかを仮想空間上で確認することができる。したがって、この情報提供装置では、作業システムに用いられる構造体や処理モデルの開発をより容易に実現することができる。なお、この情報提供方法において、上述した情報提供装置の態様を採用してもよいし、上述した情報提供装置の機能を発現するステップを含むものとしてもよい。
【0056】
本開示のプログラムは、上述した情報提供方法の各ステップを1以上のコンピュータが実行するものである。このプログラムは、コンピュータが読み取り可能な記録媒体(例えばハードディスク、ROM、FD、CD、DVDなど)に記録されていてもよいし、伝送媒体(インターネットやLANなどの通信網)を介してあるコンピュータから別のコンピュータへ配信されてもよいし、その他どのような形で授受されてもよい。このプログラムを1つのコンピュータに実行させるか又は複数のコンピュータに各ステップを分担して実行させれば、上述した情報提供方法の各ステップが実行されるため、この方法と同様の作用効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本明細書で開示する情報提供装置、情報提供方法及びそのプログラムは、ワークに対して所定作業を実行する装置の技術分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0058】
10 エコシステム、11 ネットワーク、12 LAN、15 店舗、16 店舗PC、18 配置部材、20 情報提供装置、21 制御装置、22 CPU、23 記憶部、24 表示部、25 入力装置、26 通信部、31 装置DB、32 周辺装置DB、33 アプリDB、34 動作プログラム、40 設計PC40、41 制御装置、42 CPU、43 記憶部、44 表示部、45 入力装置、46 通信部、50 作業システム、51 搬送装置、52 配列装置、52a 制御装置、53 基台、54 供給装置、55 アーム部材、55a 第1アーム部材、55b 第2アーム部材、55c 第3支持部、57 台座部、58 撮像装置、59 接続部、60 エンドエフェクタ、61 方向変更採取部、62 接続部、63 第1部材、64 回動軸、65 第2部材、66 採取部材、67 外部配管、68 姿勢維持板、70 情報提供画面、71 カーソル、72 用途入力欄、73 装置入力欄、74 周辺装置入力欄、75 アプリ入力欄、76 ワーク入力欄、77 画像表示欄、78a 仕様書出力キー、78b 仮想処理実行キー、78c 開発対象物情報入力キー、78d 中止キー、78e 登録依頼キー、80 開発対象物情報入力画面、81 処理モデル入力欄、82 処理条件情報入力欄、83 設計仕様情報入力欄、84 開発対象物データ入力欄、86 中止キー、87 決定キー、W ワーク。