(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】二次電池用正極材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/58 20100101AFI20231002BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
H01M4/58
H01M4/36 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022072785
(22)【出願日】2022-04-26
【審査請求日】2022-05-27
(32)【優先日】2021-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】517232729
【氏名又は名称】台湾立凱電能科技股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Advanced Lithium Electrochemistry Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No. 2-1, Singhua Rd., Taoyuan Dist., Taoyuan City,330,Taiwan,
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】黄振溢
(72)【発明者】
【氏名】謝瀚緯
(72)【発明者】
【氏名】林元凱
(72)【発明者】
【氏名】王覺漢
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-153535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/58
H01M 4/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池用正極材料の製造方法であって、
リン酸金属リチウム材料及び第1導電性炭素を提供し、前記リン酸金属リチウム材料は複数の二次粒子で構成され、各前記複数の二次粒子は複数の一次粒子の凝集によって形成され、かつ前記複数の一次粒子の間に粒子間空隙が形成され
、前記複数の一次粒子の粒子径は50nmから500nmの範囲であり、前記複数の二次粒子の粒子径は2μmから100μmの範囲であり、前記第1導電性炭素の粒子径は10nmから200nmの範囲である、工程(a)と、
前記リン酸金属リチウム材料及び前記第1導電性炭素を機械的方法で混合し、複合材料を形成し、前記複合材料において、前記第1導電性炭素が前記粒子間空隙に均一に充填され
、前記機械的方法は機械的融合法(Mechanofusion method)である、工程(b)と、
第2導電性炭素、接着剤及び溶媒を提供する、工程(c)と、
前記複合材料、前記第2導電性炭素、前記接着剤及び前記溶媒を混合して、正極板を構成するための前記正極材料を形成
し、前記リン酸金属リチウム材料、前記第1導電性炭素と前記第2導電性炭素の合計、及び前記接着剤の重量比は、8:1:1である、工程(d)と、
を含むことを特徴とする、二次電池用正極材料の製造方法。
【請求項2】
前記リン酸金属リチウム材料の組成は、LiMPO
4を含み、ここで、Mは、鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、マグネシウム、チタン、アルミニウム、スズ、クロム、バナジウム、モリブデン及びこれらの組み合わせから選択されることを特徴とする、請求項1に記載の二次電池用正極材料の製造方法。
【請求項3】
前記機械的方法の動作温度は25℃から35℃の範囲であることを特徴とする、請求項
1に記載の二次電池用正極材料の製造方法。
【請求項4】
前記機械的方法の回転数は100rpmから2000rpmの範囲であることを特徴とする、請求項
1に記載の二次電池用正極材料の製造方法。
【請求項5】
前記複合材料に占める前記第1導電性炭素の重量パーセントは0.5%から10%であることを特徴とする、請求項1に記載の二次電池用正極材料の製造方法。
【請求項6】
前記工程(d)は、基板上に前記正極材料を塗布し、乾燥して前記正極板を形成する工程(d1)をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の二次電池用正極材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池用正極材料の製造方法、特に電池の充放電性能を安定して向上させる二次電池用正極材料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在科学技術の急速な発展の中で、再利用可能な二次電池は、電動キャリア、エネルギー貯蔵などの分野で広く利用されている。これらの二次電池は、より高い効率と利便性を追求するために、優れるエネルギー密度と充放電性能が求められる。二次電池の性能の優劣は通常、選択した正極材料と密接に関連していることに留意されたい。
【0003】
二次電池の正極材料として、例えば、リン酸金属リチウム(LiMPO4)は、電極を形成するために、導電性炭素、接着剤及び溶媒と混合する必要がある。しかし、この従来の製造プロセスでは、各成分の均一性を確保し、さらに良好な充放電性能を提供するために、さまざまなプロセスパラメータを調整する必要がある。プロセスパラメータは極めて正確な調整が必要であるため、電極内の各成分の均一性を確保することは困難であり、不均一な組成は電池の性能に悪影響を及ぼす。
【0004】
このような事情に鑑み、電池の充放電性能を安定して向上させる二次電池用正極材料の製造方法をどのように開発するかは、この技術分野で早急に解決すべき重要な課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、電池の充放電性能を安定して向上させる二次電池用正極材料の製造方法を提供することにある。リン酸金属リチウム材料は複数の二次粒子で構成され、かつ各複数の二次粒子は複数の一次粒子からなる。リン酸金属リチウム材料及び第1導電性炭素を、機械的融合法などの機械的方法により複合材料を形成し、複合材料における第1導電性炭素を複数の一次粒子間に形成された粒子間空隙に均一に充填させる。さらに、複合材料は、例えば脱泡攪拌機により、第2導電性炭素、接着剤及び溶媒と混合して正極材料を形成し、これをアルミニウム箔などの基板上に塗布して正極板を形成する。予め一部の導電性炭素とリン酸金属リチウム材料を機械的方法で混合しておくことにより、導電性炭素はリン酸金属リチウム材料の一次粒子の間に均一に充填され、それによって、粒子間空隙による界面インピーダンスを低減し、材料組成の均一性を向上させる。導電性炭素の一部はすでに複合材料に存在するため、その後複合材料、接着剤及び溶媒を混合すると、少量の導電性炭素を加えるだけで、所望の正極材料を形成することができる。スラリー混合時に少ない導電性炭素を添加することにより、スラリーの粘度を下げ、固形分の含有量を増やすことができ、また、基板上の正極材料の面密度(Loading density)を増加させ、さらに、正極材料と基板との接着力を高めることができる。前記のように形成された正極材料は、そのプロセスがシンプルで制御しやすく、それによって製造された正極板は、高い充放電率(C-rate)でも、高い静電容量を維持し、良好な急速充電性能を有する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、リン酸金属リチウム材料及び第1導電性炭素を提供し、リン酸金属リチウム材料は複数の二次粒子で構成され、各複数の二次粒子は複数の一次粒子の凝集によって形成され、かつ複数の一次粒子の間に粒子間空隙が形成される、工程(a)と、リン酸金属リチウム材料と第1導電性炭素を機械的方法で混合して、複合材料を形成し、複合材料において、第1導電性炭素が粒子間空隙に均一に充填される、工程(b)と、第2導電性炭素、接着剤及び溶媒を提供する工程(c)と、複合材料、第2導電性炭素、接着剤及び溶媒を混合して、正極板を構成するための正極材料を形成する工程(d)と、を含む二次電池用正極材料の製造方法を提供する。
【0007】
一実施形態では、リン酸金属リチウム材料の組成は、LiMPO4を含み、ここで、Mは、鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、マグネシウム、チタン、アルミニウム、スズ、クロム、バナジウム、モリブデン及びこれらの組み合わせから選択される。
【0008】
一実施形態では、複数の一次粒子の粒子径は50nmから500nmの範囲である。
【0009】
一実施形態では、複数の二次粒子の粒子径は2μmから100μmの範囲である。
【0010】
一実施形態では、第1導電性炭素の粒子径は10nmから200nmの範囲である。
【0011】
一実施形態では、機械的方法は機械的融合法(Mechanofusion method)である。
【0012】
一実施形態では、機械的方法の動作温度は25℃から35℃の範囲である。
【0013】
一実施形態では、機械的方法の回転数は100rpmから2000rpmの範囲である。
【0014】
一実施形態では、複合材料に占める第1導電性炭素の重量パーセントは0.5%から10%である。
【0015】
一実施形態では、工程(d)は、基板上に正極材料を塗布し、乾燥して正極板を形成する工程(d1)をさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の二次電池用正極材料の製造方法のフローチャートである。
【
図4】本発明の正極材料で構成された正極板の概略構造図である。
【
図5A】本発明の対照群と実施例1の異なる充放電率(C-rate)での電位-静電容量充電曲線である。
【
図5B】本発明の対照群と実施例1の異なる充放電率(C-rate)での電位-静電容量放電曲線である。
【
図6A】本発明の対照群と実施例2の異なる充放電率(C-rate)での電位-静電容量充電曲線である。
【
図6B】本発明の対照群と実施例2の異なる充放電率(C-rate)での電位-静電容量放電曲線である。
【
図7A】本発明の対照群と実施例3の異なる充放電率(C-rate)での電位-静電容量充電曲線である。
【
図7B】本発明の対照群と実施例3の異なる充放電率(C-rate)での電位-静電容量放電曲線である。
【
図8A】本発明の対照群と実施例4の異なる充放電率(C-rate)での電位-静電容量充電曲線である。
【
図8B】本発明の対照群と実施例4の異なる充放電率(C-rate)での電位-静電容量放電曲線である。
【
図9A】本発明の対照群、実施例1、実施例2、実施例3及び実施例4の異なる充放電率(C-rate)での静電容量-サイクル回数充電曲線である。
【
図9B】本発明の対照群、実施例1、実施例2、実施例3及び実施例4の異なる充放電率(C-rate)での静電容量-サイクル回数放電曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の特徴と利点を示すいくつかの典型的な実施形態について、後述の説明において詳細に記述する。本発明は異なる態様において様々な変化を有することができ、いずれも本発明の範囲から逸脱することなく、かつその説明及び図面は本質的に例示するために用いられものであり、本発明を限定する意図はないことを理解されたい。
【0018】
図1から
図4を参照する。
図1は本発明の二次電池用正極材料の製造方法のフローチャートである。
図2は本発明の二次粒子の概略構造図である。
図3は本発明の複合材料の概略構造図である。
図4は本発明の正極材料で構成された正極板の概略構造図である。まず、工程S1に示すように、リン酸金属リチウム材料及び第1導電性炭素C1を提供する。リン酸金属リチウム材料は、複数の二次粒子10で構成される。
図2に示すように、各複数の二次粒子10は、複数の一次粒子100の凝集によって形成され、かつ複数の一次粒子100の間に粒子間空隙200が形成される。リン酸金属リチウム材料の組成は、LiMPO
4を含み、ここで、Mは、鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、マグネシウム、チタン、アルミニウム、スズ、クロム、バナジウム、モリブデン及びこれらの組み合わせから選択される。本実施形態では、リン酸金属リチウム材料は、例えば、炭素被覆リン酸鉄リチウム(LFP/C)であり、第1導電性炭素C1は、例えば、超高密度高導電性カーボンブラック(Super P)である。Super Pは純度が高く、導電性に優れ、粒子の周囲に分散して分岐状の導電性ネットワークを形成することで、電解質が酸化物粒子に好適に接触し、それによって、正極板2全体の導電性が向上する。もちろん、本発明はこれに限定されるものではなく、第1導電性炭素C1は、例えば、カーボンナノチューブやグラフェンなどの炭素材料であってもよい。本実施形態では、複数の一次粒子100の粒子径は50nmから500nmの範囲である。複数の二次粒子10の粒子径は2μmから100μmの範囲である。第1導電性炭素C1の粒子径は10nmから200nmの範囲である。
【0019】
次に、工程S2に示すように、LFP/Cなどのリン酸金属リチウム材料及びSuper Pなどの第1導電性炭素C1を機械的方法で混合して、複合材料1を形成する。
図3に示すように、複合材料1において、Super Pなどの第1導電性炭素C1は、粒子間空隙200に均一に充填されている。導電性炭素を一次粒子100の間に充填することにより、リン酸金属リチウム(LFP)などの二次粒子10内部の界面インピーダンスを低減することができる。本実施形態では、機械的方法は、例えば機械的融合法(Mechanofusion method)であり、かつ動作温度が、例えば25℃から35℃の範囲であり、回転数が、例えば100rpmから2000rpmの範囲である。複合材料1において、Super Pなどの第1導電性炭素C1が占める重量パーセントは、例えば0.5%から10%である。
【0020】
その後、工程S3に示すように、第2導電性炭素C2、接着剤B及び溶媒を提供する。本実施形態では、第2導電性炭素C2は、例えばSuper Pであり、接着剤Bは、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)であり、溶媒は、例えばメチルピロリドン(NMP)である。
【0021】
最後に、工程S4に示すように、複合材料1、第2導電性炭素C2、接着剤B及び溶媒を混合して、正極材料を形成する。本実施形態では、正極材料は、例えば脱泡攪拌機により混合して形成され、かつ混合時にリン酸金属リチウム材料、導電性炭素の合計(第1導電性炭素C1と第2導電性炭素C2の合計)及び接着剤Bの重量比は、例えば8:1:1である。もちろん、重量比は、実際の要求に応じて調整でき、本発明はこれに限定されない。本実施形態では、複合材料1、接着剤B、溶媒及び第2導電性炭素C2を混合することによって形成された正極材料を、アルミニウム箔などの基板Sに塗布し、乾燥して正極板2を形成する。正極板2の構造を
図4に示す。複合材料1は基板S上に位置し、接着剤Bは二次粒子10の外層に位置し、かつ第2導電性炭素C2は二次粒子10の間に位置する。
【0022】
以下に、本発明のプロセスと効果を実施例により詳細に説明する。
【0023】
実施例1
【0024】
リン酸金属リチウム材料及び第1導電性炭素を提供する。リン酸金属リチウム材料は複数の二次粒子で構成され、かつ各複数の二次粒子は複数の一次粒子の凝集によって形成される。リン酸金属リチウム材料は、炭素被覆リン酸鉄リチウム(LFP/C)であり、第1導電性炭素はSuper Pである。リン酸鉄リチウム(LFP)二次粒子は球形であり、かつ複数の一次粒子の凝集によって形成される。複数の一次粒子の間に粒子間空隙が形成される。
【0025】
リン酸金属リチウム材料と第1導電性炭素を機械的方法で混合して、複合材料を形成する。第1導電性炭素が粒子間空隙に均一に充填される。複合材料は、25℃から35℃の動作温度範囲で、機械的融合法(Mechanofusion method)により、回転数600rpmで10分間混合し、さらに、回転数1200rpmで30分間混合して製造される。複合材料に占める第1導電性炭素の重量パーセントは、約0.47%である。
【0026】
第2導電性炭素、接着剤及び溶媒を提供する。第2導電性炭素はSuper Pであり、接着剤はPVDFであり、溶媒はNMPである。
【0027】
複合材料、第2導電性炭素、接着剤及び溶媒を混合して、正極材料を形成し、さらに、前記正極材料を基板に塗布し、乾燥して正極板を形成する。混合時に、リン酸金属リチウム材料、導電性炭素(第1導電性炭素と第2導電性炭素の合計)及び接着剤の重量比は8:1:1である。換言すれば、添加される第2導電性炭素の重量は、複合材料における第1導電性炭素の重量パーセントを考慮して調整する必要がある。本実施例において、複合材料に占める第1導電性炭素の重量パーセントは約0.47%であるため、複合材料、第2導電性炭素及び接着剤の重量比は8.04:0.96:1である。混合時に、まず、溶媒を脱泡攪拌機内に加え、回転数1200rpmで30分間作動する。次に、第2導電性炭素と接着剤を加え、回転数1200rpmで30分間作動する。最後に、複合材料を加え、回転数1200rpmで60分間、130rpmで30分間作動する。混合が完了した後、形成された正極材料をアルミニウム箔の基板に塗布し、乾燥して正極板を形成する。
【0028】
実施例2
【0029】
実施例2の製造工程は実施例1とほぼ同じであるが、実施例2の複合材料において、第1導電性炭素が占める重量パーセントは約1.21%である。それに応じて、実施例2で脱泡攪拌機に添加された複合材料、第2導電性炭素及び接着剤の重量比は、8.1:0.9:1である。
【0030】
実施例3
【0031】
実施例3の製造工程は実施例1とほぼ同じであるが、実施例3の複合材料において、第1導電性炭素が占める重量パーセントは約3.65%である。それに応じて、実施例3で脱泡攪拌機に添加された複合材料、第2導電性炭素及び接着剤の重量比は、8.3:0.7:1である。
【0032】
実施例4
【0033】
実施例4の製造工程は実施例1とほぼ同じであるが、実施例4の複合材料において、第1導電性炭素が占める重量パーセントは約8.09%である。それに応じて、実施例4で脱泡攪拌機に添加された複合材料、第2導電性炭素及び接着剤の重量比は、8.17:0.3:1である。
【0034】
対照群
【0035】
対照群のリン酸金属リチウム材料は、第1導電性炭素と予め混合して複合材料を形成するのではなく、リン酸金属リチウム材料、第2導電性炭素及び接着剤を重量比8:1:1で脱泡攪拌機に直接添加し、実施例1と同じプロセスで正極板を形成する。
【0036】
図5Aから
図8Bを参照する。
図5Aから
図5Bは、本発明の対照群と実施例1のそれぞれ1C、3C及び5Cの充放電率(C-rate)での充放電試験曲線である。
図6Aから
図6Bは、本発明の対照群と実施例2のそれぞれ1C、3C及び5Cの充放電率(C-rate)での充放電試験曲線である。
図7Aから
図7Bは、本発明の対照群と実施例3のそれぞれ1C、3C及び5Cの充放電率(C-rate)での充放電試験曲線である。
図8Aから
図8Bは、本発明の対照群と実施例4のそれぞれ1C、3C及び5Cの充放電率(C-rate)での充放電試験曲線である。
図5Aから
図8Bは、本発明の実施例1~4及び対照群の正極板を同じ条件で半電池試験を行った結果である。図面に示すように、本発明の実施例1~4では、1C、3C及び5Cの充放電率(C-rate)で充放電する時、その静電容量はいずれも対照群より大きい。高い充放電率(C-rate)の条件で、実施例1~4の静電容量は、対照群に比べてより著しく向上し、良好な急速充電性能を有することに留意されたい。
【0037】
以下の表1は、対照群、実施例1、実施例2、実施例3及び実施例4の1Cの充放電率(C-rate)で4.2Vに充電した場合の静電容量試験結果の比較である。表1に示すように、実施例1~4は対照群に比べて、電位が4.2Vである場合の静電容量が、いずれもわずかに増加し、増加幅は約1%から4%であり、そのうち、複合材料に占める第1導電性炭素の重量パーセントが1.21%である実施例2が最適である。このことから、本発明は予めリン酸金属リチウム材料と導電性炭素を機械的方法で混合することで、導電性炭素が均一に分散し、かつその後の混合時の導電性炭素の割合が減少し、さらに塗布時の面密度及び正極材料と基板との接着力が向上することが分かる。これにより、本発明の正極材料の静電容量が向上し、良好な充放電性能を有する。
【0038】
以下の表2は、対照群、実施例1、実施例2、実施例3及び実施例4の3Cの充放電率(C-rate)で4.2Vに充電した場合の静電容量試験結果の比較である。表2に示すように、実施例1~4は対照群に比べて、電位が4.2Vである場合の静電容量が、いずれも大幅に増加し、増加幅は約5%から12%であり、そのうち、複合材料に占める第1導電性炭素の重量パーセントが1.21%である実施例2が最適である。このことから、本発明は予めリン酸金属リチウム材料と導電性炭素を機械的方法で混合することで、導電性炭素が均一に分散し、かつその後の混合時に添加される導電性炭素の割合が減少し、さらに塗布時の面密度及び正極材料と基板との接着力が向上することが分かる。これにより、本発明の正極材料の静電容量が向上し、良好な充放電性能を有する。
【0039】
以下の表3は、対照群、実施例1、実施例2、実施例3及び実施例4の5Cの充放電率(C-rate)で4.2Vに充電した場合の静電容量試験結果の比較である。表3に示すように、実施例1~4は対照群に比べて、電位が4.2Vである場合の静電容量が、いずれも大幅に増加する。実施例1~3の静電容量の増加幅は約20%から30%であり、そのうち、複合材料に占める第1導電性炭素の重量パーセントが1.21%である実施例2が最適であることに留意されたい。このことから、本発明は予めリン酸金属リチウム材料と導電性炭素を機械的方法で混合することで、導電性炭素が均一に分散し、かつその後の混合時に添加される導電性炭素の割合が減少し、さらに塗布時の面密度及び正極材料と基板との接着力が向上することが分かる。これにより、本発明の正極材料は、高い充放電率(C-rate)でも高い静電容量を維持し、良好な急速充電性能を有する。
【0040】
図9Aから
図9Bを参照する。
図9Aは、本発明の対照群、実施例1、実施例2、実施例3及び実施例4の異なる充放電率(C-rate)での静電容量-サイクル回数充電曲線である。
図9Bは、本発明の対照群、実施例1、実施例2、実施例3及び実施例4の異なる充放電率(C-rate)での静電容量-サイクル回数放電曲線である。
図9Aから
図9Bは、本発明の実施例1~4及び対照群の正極板を同じ条件で半電池試験を行った結果である。
図9A、9Bにおいて、対照群、実施例1、実施例2、実施例3及び実施例4は、0.1C、0.2C、0.5C、1C、3C、5C、10Cの充放電率(C-rate)で順次に、それぞれ5~10サイクルの静電容量試験を行う。図面に示すように、1C、3C、5Cの充放電率(C-rate)で、本発明の実施例1~3の静電容量は対照群より大幅に高める。このことから、本発明は予めリン酸金属リチウム材料と導電性炭素を機械的方法で混合することで、導電性炭素が均一に分散し、かつその後の混合時に添加される導電性炭素の割合が減少し、さらに塗布時の面密度及び正極材料と基板との接着力が向上することが分かる。これにより、本発明の正極材料は、高い充放電率(C-rate)でも高い静電容量を維持し、良好な急速充電性能を有する。
【0041】
上記のように、本発明は、電池の充放電性能を安定して向上させる二次電池用正極材料の製造方法を提供する。リン酸金属リチウム材料は複数の二次粒子で構成され、かつ各複数の二次粒子は複数の一次粒子からなる。リン酸金属リチウム材料及び第1導電性炭素を、機械的融合法などの機械的方法により複合材料を形成し、複合材料における第1導電性炭素を複数の一次粒子間に形成された粒子間空隙に均一に充填させる。さらに、複合材料は、例えば脱泡攪拌機により、第2導電性炭素、接着剤及び溶媒と混合して正極材料を形成し、これをアルミニウム箔などの基板上に塗布して正極板を形成する。予め一部の導電性炭素とリン酸金属リチウム材料を機械的方法で混合しておくことにより、導電性炭素はリン酸金属リチウム材料の一次粒子の間に充填され、それによって、粒子間空隙による界面インピーダンスを低減し、材料組成の均一性を向上させる。導電性炭素の一部はすでに複合材料に存在するため、その後複合材料、接着剤及び溶媒を混合すると、少量の導電性炭素を加えるだけで、所望の正極材料を形成することができる。スラリー混合時に少ない導電性炭素を添加することにより、スラリーの粘度を下げ、固形分の含有量を増やすことができ、また、基板上の正極材料の面密度(Loading density)を増加させ、さらに、正極材料と基板との接着力を高めることができる。前記のように形成された正極材料は、そのプロセスがシンプルで制御しやすく、それによって製造された正極板は、高い充放電率(C-rate)でも、高い静電容量を維持し、良好な急速充電性能を有する。
【0042】
本発明は、当業者なら様々な修正を加えることができるが、特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することはない。
【符号の説明】
【0043】
1:複合材料
2:正極板
10:二次粒子
100:一次粒子
200:粒子間空隙
B:接着剤
C1:第1導電性炭素
C2:第2導電性炭素
S:基板
S1、S2、S3、S4:工程