(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】シール部材および接続構造
(51)【国際特許分類】
F16J 15/08 20060101AFI20231002BHJP
F16J 15/06 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
F16J15/08 A
F16J15/06 N
(21)【出願番号】P 2022101094
(22)【出願日】2022-06-23
【審査請求日】2022-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】391001169
【氏名又は名称】櫻護謨株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千葉 健二
【審査官】山本 健晴
(56)【参考文献】
【文献】特開昭47-010310(JP,A)
【文献】特開平08-247291(JP,A)
【文献】特開2020-101277(JP,A)
【文献】特開2002-364750(JP,A)
【文献】国際公開第2011/024889(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/08
F16J 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料によって形成されたシール部材であって、
軸を中心とする環状の本体部と、
弾性的に変形可能に形成され、前記軸に沿う方向に並び、前記本体部と接続されるとともに前記本体部から前記軸に向けて延びる環状の一対のダイヤフラム部と、
前記一対のダイヤフラム部の間の溝と、を有し、
前記一対のダイヤフラム部は、前記溝と反対側に位置する一対の第1面を有し、
前記本体部は、前記軸に向けて互いに離れるように傾斜するとともに、前記一対の第1面と接続された一対の第2面を有
し、
前記一対のダイヤフラム部は、前記本体部と接続された根元部と、前記根元部と反対側の先端部と、をそれぞれ有し、
前記一対のダイヤフラム部の前記先端部同士の間隔は、前記一対のダイヤフラム部の前記根元部同士の間隔よりも大きく、
前記軸と前記一対の第1面の一方とがなす角度は、前記軸と前記一対の第2面の一方とがなす角度よりも小さい、
シール部材。
【請求項2】
請求項
1に記載のシール部材と、
前記シール部材が収容される収容部を有する第1継手と、
前記第1継手と接続される第2継手と、を備え、
前記収容部は、前記一対の第1面の一方および前記一対の第2面の一方と接触し、前記軸に対して傾斜する第3面を有し、
前記第2継手は、前記一対の第1面の他方および前記一対の第2面の他方と接触し、前記軸に対して傾斜する第4面を有し、
前記収容部に前記シール部材が収容されるとともに前記第1継手と前記第2継手とが接続された状態において、前記一対のダイヤフラム部の一方は、前記第3面と弾性的に接触し、前記一対のダイヤフラム部の他方は、前記第4面と弾性的に接触する、
接続構造。
【請求項3】
前記第1継手と前記第2継手とが接続された状態において、前記第3面および前記第4面は、前記軸に向けて互いに離れるように傾斜している、
請求項
2に記載の接続構造。
【請求項4】
前記第2継手は、前記第4面が形成されるとともに、前記第1継手に向けて突出する凸部をさらに有し、
前記第1継手は、前記第1継手と前記第2継手とが接続された状態において、前記凸部が位置する凹部をさらに有する、
請求項
2に記載の接続構造。
【請求項5】
前記第1継手と前記第2継手とを接続する、クランプ型の接続具をさらに備える、
請求項
2に記載の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール部材および接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
航空、宇宙機器の燃料系統などで用いられる配管、一般工業配管などの各種の配管系統において、配管同士の接続には、様々な継手および接続構造が利用されている。各々の配管の端部に設けられた継手同士を接続する際には、配管内を流れる流体の漏洩を防止することを目的として、Oリング、ガスケットなどのシール部材が設けられる場合がある。シール部材を形成する材料は、適宜選択される。従来、金属材料で形成されたシール部材に関して、様々な提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、メタルガスケットの外周面にV字状の円周溝を有し、当該円周溝の深さAと当該メタルガスケットの断面における水平方向の長さBとの比(円周溝の深さA/水平方向の長さB)の値が0.1~0.95であり、V字状の円周溝の切込み角度が30~120°であることを特徴とするメタルガスケットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されたメタルガスケットを踏まえても、金属材料で形成されたシール部材には種々の問題がある。例えば、シール部材には、振動が作用する環境など様々な環境において、配管内を流れる流体の漏洩を防止するためのシール性が要求される。そこで、本発明は、優れたシール性を有するシール部材および接続構造を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係るシール部材は、金属材料によって形成されたシール部材であって、軸を中心とする環状の本体部と、弾性的に変形可能に形成され、前記軸に沿う方向に並び、前記本体部と接続されるとともに前記本体部から前記軸に向けて延びる環状の一対のダイヤフラム部と、前記一対のダイヤフラム部の間の溝と、を有する。
【0007】
前記一対のダイヤフラム部は、前記本体部と接続された根元部と、前記根元部と反対側の先端部と、をそれぞれ有し、前記一対のダイヤフラム部の前記先端部同士の間隔は、前記一対のダイヤフラム部の前記根元部同士の間隔よりも大きくてもよい。
【0008】
前記一対のダイヤフラム部は、前記溝と反対側に位置する第1面をさらに有し、前記本体部は、前記第1面と接続された第2面をさらに有し、前記軸と前記第1面とがなす角度は、前記軸と前記第2面とがなす角度と異なってもよい。
【0009】
一実施形態に係る接続構造は、前記シール部材と、前記シール部材が収容される収容部を有する第1継手と、前記第1継手と接続される第2継手と、を備え、前記収容部は、前記一対のダイヤフラム部の一方と接触する第3面を有し、前記第2継手は、前記一対のダイヤフラム部の他方と接触する第4面を有し、前記収容部に前記シール部材が収容されるとともに前記第1継手と前記第2継手とが接続された状態において、前記一対のダイヤフラム部の前記一方は、前記第3面と弾性的に接触し、前記一対のダイヤフラム部の前記他方は、前記第4面と弾性的に接触する。
【0010】
前記第2継手は、前記第4面が形成されるとともに、前記第1継手に向けて突出する凸部をさらに有し、前記第1継手は、前記第1継手と前記第2継手とが接続された状態において、前記凸部が位置する凹部をさらに有してもよい。前記第1継手と前記第2継手とを接続する、クランプ型の接続具をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、優れたシール性を有するシール部材および接続構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る接続構造を示す概略的な平面図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る接続構造を示す概略的な側面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る接続構造を示す概略的な分解図である。
【
図4】
図4は、
図3に示された継手を示す概略的な部分断面図である。
【
図5】
図5は、
図3に示された継手を示す概略的な部分断面図である。
【
図6】
図6は、
図3に示されたシール部材を示す概略的な正面図である。
【
図7】
図7は、
図3に示されたVII部を示す概略的な拡大断面図である。
【
図8】
図8は、継手と継手とが接続された状態を説明するための図である。
【
図9】
図9は、接続構造の変形例を示す概略的な側面図である。
【
図10】
図10は、接続構造の変形例を示す概略的な分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、シール部材および接続構造の一実施形態について説明する。なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有される。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【0014】
各図において、連続して配置される同一または類似の要素については符号を省略することがある。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を省略することがある。
【0015】
本実施形態においては、主に航空、宇宙機器の燃料系統、および一般工業配管などの各種の配管系統での使用が想定されるシール部材および接続構造を例示する。ただし、シール部材およびや接続構造は、その他の種々の配管系統にも適用することができる。
【0016】
シール部材および接続構造が適用可能な配管の口径は、例えば、口径が約2インチ~約4インチ(約50mm~約100mm)である。ただし、当該範囲以外の口径を有する配管においても適用することができる。シール部材および接続構造は、液体、気体などの様々な流体が送液される配管に適用可能である。
【0017】
図1は、本実施形態に係る接続構造100を示す概略的な平面図である。
図2は、本実施形態に係る接続構造100を示す概略的な側面図である。
図1に示すように、接続構造100は、継手10と、継手20と、継手10と継手20とを接続する接続具30と、を備えている。本実施形態においては、継手10が第1継手に相当し、継手20が第2継手に相当する。
図1は、継手10と継手20とが接続具30によって接続された状態を示している。
【0018】
継手10および継手20は、金属材料によって形成されている。金属材料は、例えばチタン合金、ステンレス鋼、ニッケル基合金などである。接続具30は、継手10および継手20の外周面に設けられている。接続具30は、例えば、クランプ型の接続具30である。
【0019】
接続具30は、第1クランプ片31と、第2クランプ片32と、を備えている。第1クランプ片31と第2クランプ片32とは、2つの締結部材Fによって固定されている。締結部材Fは、例えば、ボルトおよびナットで構成されている。
図1および
図2に示す例において、接続具30は、2つのクランプ片を有するが、3つ以上のクランプ片を有してもよい。
【0020】
図3は、本実施形態に係る接続構造100を示す概略的な分解図である。
図3のおいては、各要素の一部を断面にて示している。また、
図3においては、接続具30を省略して示している。以下、
図3に示すように、軸CXに沿う、軸CXと平行な方向を軸方向Dxと定義し、軸CXを中心として軸CXから離れる方向を径方向Drと定義し、軸CXを中心とした周方向Dθを定義する。
【0021】
継手10は、軸CXを中心とした筒状に形成されている。継手10は、端部10aと、端部10aと反対側の端部10bと、外周面11と、流路10Fを形成する内周面と、を有している。内周面は、端部10b側の内周面12Aと、内周面12Aよりも大きな径を有する内周面12Bと、を有している。継手10は、端部10a側に位置する端面13をさらに有している。
【0022】
継手10は、外周面11の端部10a側に他の部分よりも径方向Drに突出した環状の爪部11aを有している。外周面11は、端部10b側から端部10a側に向けて径が大きくなっている部分を含んでいる。端部10bには、例えば配管類が種々の形式で接続される。外周面11の端部10b側は、例えば、接続される配管の大きさに応じて他の部分よりも径が小さく形成される。
【0023】
継手20は、軸CXを中心とした筒状に形成されている。継手20は、端部20aと、端部20aと反対側の端部20bと、外周面21と、流路20Fを形成する内周面と、を有している。内周面は、端部20b側の内周面22Aと、内周面22Aよりも大きな径を有する内周面22Bと、を有している。継手20は、端部20a側に位置する端面23をさらに有している。
【0024】
継手20は、外周面21の端部20a側に他の部分よりも径方向Drに突出した環状の爪部21aを有している。接続構造100は、継手10の爪部11aと継手20の爪部21aとを第1クランプ片31および第2クランプ片32(
図1および
図2に示す)によって挟むとともに、締結部材F(
図1および
図2に示す)の各々を締め付けている。これにより、継手10および継手20は、軸方向Dxにおいて、互いに近づく方向に移動し、継手10と継手20とが接続される。
【0025】
外周面21は、端部20b側から端部20a側に向けて径が大きくなっている部分を含んでいる。端部20bには、例えば配管類が種々の形式で接続される。外周面21の端部20b側は、例えば、接続される配管の大きさに応じて他の部分よりも径が小さく形成される。
【0026】
継手10および継手20と接続される配管は、例えば、直管や、曲管、伸縮管、フレキシブルホースなどである。接続される配管は、継手10および継手20を形成する金属材料と同じ金属材料でもよいし、異なる金属材料でもよい。
【0027】
接続構造100は、継手10と継手20との間に設けられたシール部材40をさらに備えている。継手10、シール部材40、および継手20は、この順で軸方向Dxに沿って並んでいる。この状態において、端面13は、端面23と対向している。
【0028】
続いて、継手10の詳細な構造について、説明する。
図4は、
図3に示された継手10を示す概略的な部分断面図である。継手10は、収容部14と、凹部15と、を有している。凹部15および収容部14は、軸方向Dxにおいて、端部10a側からこの順で並んでいる。
【0029】
収容部14には、シール部材40(
図3に示す)が収容される。収容部14は、軸方向Dxに見て、軸CXを中心とする円状に形成されている。収容部14は、内周面16と、接触面17(第3面)と、を有している。内周面16は、軸方向Dxに一様な径を有している。内周面16の径は、内周面12Bの径よりも大きい。
【0030】
接触面17は、シール部材40と接触する面である。接触面17は、内周面12Bと内周面16とに接続されている。接触面17は、環状に形成され、軸CXに対して傾斜する、平坦な面である。
図4に示す例において、接触面17は、径方向Drにおいて、一定の割合で傾斜している。
【0031】
凹部15には、継手10と継手20とが接続された状態において、凸部25(
図5に示す)が位置する。凹部15は、端面13よりも端部10b側に向けて窪んでいる。凹部15は、軸方向Dxに見て、収容部14と同心円状に形成されている。凹部15は、内周面18と、接続面19と、有している。
【0032】
内周面18は、軸方向Dxに一様な径を有している。内周面18の径は、内周面16の径よりも大きい。接続面19は、内周面16と内周面18とに接続されている。例えば、接続面19は、環状に形成され、軸CXに対して直交している。
【0033】
続いて、継手20の詳細な構造について、説明する。
図5は、
図3に示された継手20を示す概略的な部分断面図である。継手20は、凸部25を有している。凸部25は、継手10と継手20とが接続された状態において、凹部15に位置する。凸部25は、継手10に向けて、端面23よりも突出している。
【0034】
凸部25は、軸方向Dxに見て、軸CXを中心とする円状に形成されている。凸部25は、外周面26と、接続面27と、接触面28(第4面)と、を有している。外周面26は、軸方向Dxに一様な径を有している。外周面26の径は、内周面18の径よりも小さい。
【0035】
接続面27は、継手10と継手20とが接続された状態において、接続面19と対向する。例えば、凸部25の軸方向Dxの長さL2(
図5に示す)は、凹部15の軸方向Dxの長さL1(
図4に示す)よりも大きいため、継手10と継手20とが接続されると、接続面27は、接続面19と接触する。他の観点からは、継手10と継手20とが接続された状態において、端面13は、端面23と接触しない。
【0036】
接触面28は、シール部材40と接触する面である。接触面28は、内周面22Bと接続面27とに接続されている。接触面28は、環状に形成され、軸CXに対して傾斜する、平坦な面である。
図4に示す例において、接触面28は、径方向Drにおいて、一定の割合で傾斜している。
【0037】
続いて、シール部材40について、説明する。
図6は、
図3に示されたシール部材40を示す概略的な正面図である。
図7は、
図3に示されたVII部を示す概略的な拡大断面図である。シール部材40は、本体部50と、本体部50と接続された一対のダイヤフラム部61,71と、一対のダイヤフラム部61,71の間の溝80と、を有している。
【0038】
本実施形態においては、ダイヤフラム部61は、一対のダイヤフラム部61,71の一方に相当し、ダイヤフラム部71は、一対のダイヤフラム部61,71の他方に相当する。ダイヤフラム部61,71は、例えばシール部、突出部、皿ばね部、リップ部、弾性部などと呼ばれる場合がある。
【0039】
シール部材40は、金属材料によって形成されている。シール部材40を形成する金属材料は、例えば、125000psi(861MPa)以上の降伏応力または耐力を有している。一例として、金属材料は、析出硬化型合金であって、ステンレス鋼、チタン合金、ニッケル基合金などである。
【0040】
本体部50と一対のダイヤフラム部61,71とは、例えば、切削加工などの機械加工によって、一体的に形成されている。シール部材40は、3Dプリンタなどを用いた3次元造形により製作されてもよいし、3次元造形および機械加工によって製作されてもよい。
【0041】
本体部50は、軸CXを中心とする環状に形成されている。
図7に示すように、本体部50は、外周面51と、外周面51と接続された一対の面52,53と、を有している。一対の面52,53は、それぞれ第2面に相当する。外周面51は、軸方向Dxに一様な径を有している。外周面51の径は、内周面12Bの径よりも大きく、内周面16の径よりも小さい。そのため、収容部14には、シール部材40を収容することができる。
【0042】
一対の面52,53は、軸CXに向けて、互いに離れるように傾斜している平坦な面である。そのため、本体部50の厚さは、軸CXに向けて、一定の割合で増加している。軸方向Dxおよび径方向Drと直交する方向に見て、軸CXと面52とがなす角度は、軸CXと面53とがなす角度と実質的に等しい。
【0043】
ダイヤフラム部61,71は、環状に形成されている。
図6に示すように、ダイヤフラム部61,71は、軸方向Dxに見て、本体部50と同心円状に形成されている。
図7に示すように、ダイヤフラム部61,71は、軸方向Dxに並び、本体部50から軸CXに向けて延びている。
【0044】
ダイヤフラム部61,71は、本体部50と接続された根元部62,72と、根元部62,72と反対側の先端部63,73と、を有している。ダイヤフラム部61,71は、例えば、根元部62,72から先端部63,73に沿って、一様な厚さを有している。ダイヤフラム部61,71は、本体部50の厚さよりも小さい厚さを有している。
【0045】
図7に示す例において、一対のダイヤフラム部61,71は、軸CXに向けて、互いに離れるように傾斜している。ダイヤフラム部61は本体部50よりも軸方向Dx一方側に突出し、ダイヤフラム部71は本体部50よりも軸方向Dx他方側に突出している。そのため、先端部63と先端部73との間隔W1は、根元部62と根元部72との間隔W2よりも大きい(W1>W2)。
【0046】
ダイヤフラム部61は、面64(第1面)と、面64と反対側の面65と、面64と面65とを接続する先端面66と、をさらに有している。ダイヤフラム部71は、面74(第1面)と、面74と反対側の面75と、面74と面75とを接続する先端面76と、をさらに有している。面64,74は、軸方向Dxにおいて、溝80と反対側に位置している。
【0047】
面64は面52と滑らかに接続され、面74は面53と滑らかに接続されている。面64,74は、軸CXに向けて、互いに離れるように傾斜している平坦な面である。面65は、面75と対向している。
【0048】
上述の通り、ダイヤフラム部61およびダイヤフラム部71は、異なる方向に本体部50から延出している。軸方向Dxおよび径方向Drと直交する方向に見て、軸CXと面64とがなす角度は、軸CXと面74とがなす角度と実質的に等しい。
【0049】
図7に示すように、軸CXと面64,74とがなす角度を角度θ1とし、軸CXと面52,53とがなす角度を角度θ2とする。例えば、角度θ1は、角度θ2と異なっている。一例では、角度θ1は、角度θ2よりも小さい(
θ1<θ2)。ただし、角度θ1および角度θ2の大きさは、この例に限られない。
【0050】
溝80は、軸CXに向けて開口している。溝80は、周方向Dθの全体に形成されている。溝80は、断面が略U字型に形成されている。面65と面75とは、面81によって、滑らか接続されている。
【0051】
シール部材40が上述のように形成されることで、一対のダイヤフラム部61,71は、弾性的に変形可能である。ダイヤフラム部61,71は、例えば、面64,74が軸CXに対して角度θ2の位置に傾斜するまで変形可能である。ダイヤフラム部61,71が変形可能な範囲は、上述の例に限られない。
【0052】
図8は、継手10と継手20とが接続された状態を説明するための図である。
図8においては、継手10、継手20、およびシール部材40の一部の断面にて、継手10と継手20とが接続された状態を示している。図示されていないが、継手10および継手20は、接続具30によって接続されている。
図8においては、変形前のダイヤフラム部61,71を破線にて示している。
【0053】
継手10と継手20とが接続された状態において、凸部25は凹部15に位置している。接続面19は、接続面27と接触している。本体部50の面52およびダイヤフラム部61の面64は、収容部14の接触面17と接触している。本体部50の面53およびダイヤフラム部71の面74は、凸部25の接触面28と接触している。
【0054】
このとき、ダイヤフラム部61,71は、破線で示す位置から、実線で示す位置まで弾性的に変形している。すなわち、ダイヤフラム部61は接触面17と弾性的に接触し、ダイヤフラム部71は接触面28と弾性的に接触している。
【0055】
例えば、軸CXと接触面17とがなす角度は軸CXと面52とがなす角度と実質的に同等であるため、ダイヤフラム部61は、軸CXと面64とがなす角度が角度θ2(
図7に示す)と等しくなるまで弾性的に変形している。この状態において、面52と面64とは、平坦な面を形成している。
【0056】
例えば、軸CXと接触面28とがなす角度は軸CXと面53とがなす角度と実質的に同等であるため、ダイヤフラム部71は、軸CXと面74とがなす角度が角度θ2(
図7に示す)と等しくなるまで弾性的に変形している。この状態において、面53と面74とは、平坦な面を形成している。このように、継手10と継手20とが接続された状態において、一対のダイヤフラム部61,71の変形量が実質的に等しくなるように、設定されている。
【0057】
このとき、例えば、ダイヤフラム部61の先端面66は内周面12Bと並び、ダイヤフラム部71の先端面76は内周面22Bと並んでいる。これにより、流路10F,20Fを流れる流体の圧力損失を抑制することができる。
【0058】
以上のように構成されたシール部材40であれば、弾性的に変形可能に形成された一対のダイヤフラム部61,71を有している。継手10と継手20との間において、ダイヤフラム部61,71が弾性的に変形することにより、ダイヤフラム部61には接触面17を押す力が働き、ダイヤフラム部71には接触面28を押す力が働く。
【0059】
これにより、継手10および継手20は、軸方向Dxにおいて互いに離れる方向に移動しようとする。継手10と継手20とは接続具30によって接続されているため、ダイヤフラム部61,71は、変形した状態で維持される。
【0060】
ダイヤフラム部61の面64は収容部14の接触面17と互いに押し合い、ダイヤフラム部71の面74は凸部25の接触面28と互い押し合う。その結果、シール部材40によって、継手10と継手20とが気密に接続されることで、継手10と継手20との間からの流体の漏洩を防止することができる。
【0061】
さらに、一対のダイヤフラム部61,71の間には、溝80が形成されている。例えば、流路10F,20Fを高圧の流体が流れる場合には、溝80が高圧の流体によって満たされため、ダイヤフラム部61が接触面17を押す力はより大きくなり、ダイヤフラム部71が接触面28を押す力はより大きくなる。これにより、高圧の流体を送液する場合であっても、流体が漏洩しにくい。
【0062】
シール部材40は、上述のような金属材料によって形成されている。そのため、弾性変形した際におけるダイヤフラム部61,71に働く力は大きくなり、面64および面74に大きな圧力を発生させることができるため、ダイヤフラム部61,71が皿ばねのように機能する。これにより、シール部材40のシール性を向上させることができる。
【0063】
本実施形態においては、軸CXと接触面17とがなす角度は軸CXと面52とがなす角度と実質的に同等であり、軸CXと接触面28とがなす角度は軸CXと面53とがなす角度と実質的に同等である。
【0064】
そのため、収容部14の接触面17のほぼ全面が本体部50の面52およびダイヤフラム部61の面64と接触し、凸部25の接触面28のほぼ全面が本体部50の面53およびダイヤフラム部71の面74と接触しているため、よりシール性を向上させることができる。
【0065】
以上のようなシール部材40を備える接続構造100であれば、例えば、高圧(例えば、15MPa以上。一例では、約21MPa。)の流体が送液される場合であっても、シール部材40によって、十分な気密性を確保することができる。
【0066】
航空、宇宙機器などの配管系統には、過酷な環境下で激しい振動が長時間にわたり作用する場合がある。このような環境下であっても、シール部材40を備える接続構造100であれば、十分なシール性を有し、流体の漏洩を防ぐことができる。
【0067】
ここで、過酷な環境とは、雰囲気が高温の場合(例えば、200度以上。一例では、260度以上。)、または雰囲気が低温の場合(例えば、約-200度以下。一例では、-254度。)が含まれ、送液される流体の温度が高温の場合(例えば、200度以上。一例では、260度以上。)、または送液される流体の温度が低温の場合(例えば、約-200度以下。一例では、-254度。)が含まれる。
【0068】
例えば、航空、宇宙機器などの配管系統において、口径が約2インチ(約50mm)以上の配管を上述のような環境で使用する場合であっても、本実施形態に係るシール部材40および接続構造100であれば、流体の漏洩を防ぐことができる。他の観点からは、接続構造100は、耐振動性、耐高圧性、および耐熱性などが優れている。このように、本実施形態であれば、配管系統に使用される場合において、優れたシール性を有するシール部材40を提供することができる。
【0069】
以上のように構成された接続構造100であれば、シール部材40が収容される収容部14を有している。このような収容部14にシール部材40を収容することによって、振動が作用するような環境、および配管の接続作業時などにおいて、シール部材40が径方向Drにずれにくく、面64,74が接触面17,28と接触した状態を維持することができる。
【0070】
これにより、継手10と継手20との間にシール部材40を安定して設けることができるため、シール部材40によって流体の漏洩を防ぎ、確実に流体を流すことができる。本実施形態であれば、流体の漏洩が発生しにくい接続構造100を提供することができる。
【0071】
本実施形態において、継手10は凹部15を有し、継手20は凸部25を有している。継手10と継手20とを接続する際に、凸部25が凹部15に位置するため、継手10および継手20の位置決めが容易になり、接続する際における作業性を向上させることができる。
【0072】
さらに、凸部25が凹部15に位置するため、継手10に対して継手20がずれにくくなり、継手10および継手20によって両側からシール部材40を確実に挟むことができる。
【0073】
さらに、収容部14が接触面17を有し、凸部25が接触面28を有するため、接触面17および接触面28が一対のダイヤフラム部61,71の面64,74と確実に接触することができる。その結果、本実施形態であれば、接続構造100の信頼性を向上させることができる。
【0074】
本実施形態の接続具30はクランプ型の接続具30であるため、継手10と継手20との接続における作業性を向上させることができる。例えば、ユニオン式の継手の場合、配管の口径が約2インチ(約50mm)以上に大きくなると、ナットの二面幅が大きくなるため、使用する工具も大きくなる。これにより、配管の口径が大きくなると、接続における作業性が低下する。
【0075】
接続具30であれば、口径の大きな配管であっても、接続における作業性が低下しにくい。さらに、接続具30であれば、構造もシンプルであるため、接続構造100の質量を小さくすることができ、配管の取り回しも向上する。そのため、スペースの制約があるような場所であっても、接続構造100であれば、取り付けることができる。
【0076】
なお、本実施形態に係る接続構造100は、接続具30によって継手10と継手20とが接続されているが、他の構造によって接続されてもよい。
図9は、接続構造100の変形例を示す概略的な側面図である。
図10は、接続構造100の変形例を示す概略的な分解図である。
【0077】
継手10は端部10aに位置するフランジ部91を有し、継手20は、端部20aに位置するフランジ部92を有している。フランジ部92は、フランジ部91に対応した口径に形成されている。この場合、フランジ部91とフランジ部92とは、図示しない複数の締結部材(例えば、ボルトおよびナット)によって接続される。
【0078】
ここでは、一例として、フランジ部91,92を有する構造を説明したが、継手10と継手20とを接続するために他の構造を適用してもよい。本実施形態においては、継手10が収容部14を有しているが、継手20が収容部14を有してもよい。この場合、接触面17は、内周面12Bと接続面19とに接続される。
【符号の説明】
【0079】
100…接続構造、10…継手(第1継手)、14…収容部、15…凹部、17…接触面(第3面)、20…継手(第2継手)、25…凸部、28…接触面(第4面)、30…接続具、40…シール部材、50…本体部、52,53…面(第2面)、61,71…ダイヤフラム部、62,72…根元部、63,73…先端部、64,74…面(第1面)、80…溝。
【要約】
【課題】 優れたシール性を有するシール部材および接続構造を提供する。
【解決手段】 一実施形態に係るシール部材は、金属材料によって形成されたシール部材であって、軸を中心とする環状の本体部と、弾性的に変形可能に形成され、前記軸に沿う方向に並び、前記本体部と接続されるとともに前記本体部から前記軸に向けて延びる環状の一対のダイヤフラム部と、前記一対のダイヤフラム部の間の溝と、を有する。
【選択図】
図8