(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物及びそれを応用する装置
(51)【国際特許分類】
G03F 7/031 20060101AFI20231002BHJP
C07D 209/86 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
G03F7/031
C07D209/86 CSP
(21)【出願番号】P 2022127499
(22)【出願日】2022-08-10
【審査請求日】2022-08-10
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】508054404
【氏名又は名称】達興材料股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホン ユィ ミン
(72)【発明者】
【氏名】ティン イー ハン
(72)【発明者】
【氏名】シュイ チュー ティン
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-105713(JP,A)
【文献】特開2017-167399(JP,A)
【文献】特表2017-501250(JP,A)
【文献】国際公開第2011/105518(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110066225(CN,A)
【文献】国際公開第2021/006315(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/139042(WO,A2)
【文献】特許第4600600(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/031
C07D 209/86
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ可溶性樹脂と、
前記アルカリ可溶性樹脂を構成する単量体と異なる重合性単量体と、
式Iに示されるオキシムエステル系化合物の少なくとも1種を含む光開始剤と、を含み、
【化1】
前記式I中、
R
1~R
4のそれぞれは、独立してC
1~C
20直鎖アルキル基、C
3~C
20分枝アルキル基、C
2~C
20直鎖アルケニル基、C
3~C
20分枝アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基を表し、且つ、該シクロアルキル基及び該アリール基は、置換されていない或いは任意の水素原子がC
1~C
20直鎖アルキル基、C
3~C
20分枝アルキル基、C
2~C
20直鎖アルケニル基またはC
3~C
20分枝アルケニル基に置換されており、
R
5は、水素、ハロゲン、ニトロ基、シアン基、C
1~C
20直鎖アルキル基、C
3~C
20分枝アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表し、且つ、該シクロアルキル基及び該アリール基は、置換されていない或いは任意の水素原子がC
1~C
20直鎖アルキル基またはC
3~C
20分枝アルキル基に置換されており、
R
6は、水素、C
1~C
20直鎖アルキル基、C
3~C
20分枝アルキル基、C
2~C
20直鎖アルケニル基、C
3~C
20分枝アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基を表し、且つ、該シクロアルキル基及び該アリール基は、置換されていない或いは任意の水素原子がC
1~C
20直鎖アルキル基、C
3~C
20分枝アルキル基、C
2~C
20直鎖アルケニル基またはC
3~C
20分枝アルケニル基に置換されており、
また、前記R
1~前記R
6が表す基は、構造中の任意の-CH
2-が置換されていない或いは-O-、-S-、-NH-、-C=O-、-O(C=O)-、-(C=O)O-、-NH(C=O)-及び-(C=O)NH-からなる群より選ばれた1つの置換基に置換されており、且つ、隣り合う2つの-CH
2-は、同時に前記置換基に置換されていなく、
R
7は、架橋環基または架橋環基を有する誘導体を表すことを特徴とする感光性樹脂組成物。
【請求項2】
前記式I中、
前記R
7は、-L
1-R
7’ を表し、
該L
1は、単結合、C
1~C
20直鎖アルキレン基、C
3~C
20分枝アルキレン基またはC
4~C
202価のシクロアルキルアルキル基を表し、
R
7’は、
【化2】
を表すことを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
前記式I中、
前記L
1は、単結合、C
1~C
3直鎖アルキレン基またはC
3~C
5分枝アルキレン基を表し、
R
7’は、
【化3】
を表すことを特徴とする請求項2に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
前記式I中、
前記R
1~前記R
4のそれぞれは、独立してC
1~C
8直鎖アルキル基、C
3~C
10分枝アルキル基またはC
3~C
6シクロアルキル基を表し、
前記R
5は、水素、シアン基、C
1~C
8直鎖アルキル基またはC
3~C
7シクロアルキル基を表し、
前記R
6は、水素、C
1~C
8直鎖アルキル基またはフェニル基を表し、
また、前記R
1~前記R
6が表す基は、構造中の任意の-CH
2-が置換されていない或いは-C=O-、-O(C=O)-及び-(C=O)O-からなる群より選ばれた1つの置換基に置換されており、且つ、隣り合う2つの-CH
2-は、同時に前記置換基に置換されていないことを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記式I中、
前記R
1~前記R
2のそれぞれは、独立してC
1~C
2直鎖アルキル基を表し、
前記R
3~前記R
4のそれぞれは、独立してC
1~C
5直鎖アルキル基またはC
3~C
10分枝アルキル基を表し、
前記R
5は、水素、シアン基、C
1~C
3直鎖アルキル基またはC
7シクロアルキル基を表し、
前記R
6は、水素、CH
3またはフェニル基を表すことを特徴とする請求項4に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
固体成分を100wt%として
前記オキシムエステル系化合物の含有量は、1wt%~30wt%の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
固体成分を100wt%として
前記アルカリ可溶性樹脂の含有量は、5wt%~60wt%の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
固体成分を100wt%として
前記重合性単量体の含有量は、5wt%~60wt%の範囲内にあることを特徴とする請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項9】
式Iに示され、
【化4】
前記式I中、
R
1~R
4のそれぞれは、独立してC
1~C
20直鎖アルキル基、C
3~C
20分枝アルキル基、C
2~C
20直鎖アルケニル基、C
3~C
20分枝アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基を表し、且つ、該シクロアルキル基及び該アリール基は、置換されていない或いは任意の水素原子がC
1~C
20直鎖アルキル基、C
3~C
20分枝アルキル基、C
2~C
20直鎖アルケニル基またはC
3~C
20分枝アルケニル基に置換されており、
R
5は、水素、ハロゲン、ニトロ基、シアン基、C
1~C
20直鎖アルキル基、C
3~C
20分枝アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表し、且つ、該シクロアルキル基及び該アリール基は、置換されていない或いは任意の水素原子がC
1~C
20直鎖アルキル基またはC
3~C
20分枝アルキル基に置換されており、
R
6は、水素、C
1~C
20直鎖アルキル基、C
3~C
20分枝アルキル基、C
2~C
20直鎖アルケニル基、C
3~C
20分枝アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基を表し、且つ、該シクロアルキル基及び該アリール基は、置換されていない或いは任意の水素原子がC
1~C
20直鎖アルキル基、C
3~C
20分枝アルキル基、C
2~C
20直鎖アルケニル基またはC
3~C
20分枝アルケニル基に置換されており、
また、前記R
1~前記R
6が表す基は、構造中の任意の-CH
2-が置換されていない或いは-O-、-S-、-NH-、-C=O-、-O(C=O)-、-(C=O)O-、-NH(C=O)-及び-(C=O)NH-からなる群より選ばれた1つの置換基に置換されており、且つ、隣り合う2つの-CH
2-は、同時に前記置換基に置換されていなく、
R
7は、架橋環基または架橋環基を有する誘導体を表すことを特徴とするオキシムエステル系化合物。
【請求項10】
前記式I中、
R
7は、-L
1-R
7’ を表し、
該L
1は、単結合、C
1~C
20直鎖アルキレン基、C
3~C
20分枝アルキレン基またはC
4~C
202価のシクロアルキルアルキル基を表し、
R
7’は、
【化5】
を表すことを特徴とする請求項9に記載のオキシムエステル系化合物。
【請求項11】
前記式I中、
該L
1は、単結合、C
1~C
3直鎖アルキレン基またはC
3~C
5分枝アルキレン基を表し、
R
7’は、
【化6】
を表すことを特徴とする請求項10に記載のオキシムエステル系化合物。
【請求項12】
前記式I中、
前記R
1~前記R
4のそれぞれは、独立してC
1~C
8直鎖アルキル基、C
3~C
10分枝アルキル基またはC
3~C
6シクロアルキル基を表し、
前記R
5は、水素、シアン基、C
1~C
8直鎖アルキル基またはC
3~C
7シクロアルキル基を表し、
前記R
6は、水素、C
1~C
8直鎖アルキル基またはフェニル基を表し、
また、前記R
1~前記R
6が表す基は、構造中の任意の-CH
2-が置換されていない或いは-C=O-、-O(C=O)-及び-(C=O)O-からなる群より選ばれた1つの置換基に置換されており、且つ、隣り合う2つの-CH
2-は、同時に前記置換基に置換されていないことを特徴とする請求項9に記載のオキシムエステル系化合物。
【請求項13】
前記式I中、
前記R
1~前記R
2のそれぞれは、独立してC
1~C
2直鎖アルキル基を表し、
前記R
3~前記R
4のそれぞれは、独立してC
1~C
5直鎖アルキル基またはC
3~C
10分枝アルキル基を表し、
前記R
5は、水素、シアン基、C
1~C
3直鎖アルキル基またはC
7シクロアルキル基を表し、
前記R
6は、水素、CH
3またはフェニル基を表すことを特徴とする請求項12に記載のオキシムエステル系化合物。
【請求項14】
フォトスペーサ、有色レジスト、半導体用フォトレジストの製造に応用することを特徴とする請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項15】
請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物で形成された有色レジストを含むことを特徴とする表示装置。
【請求項16】
請求項1~請求項8のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物で形成された半導体用フォトレジストを含むことを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性樹脂組成物に関し、特にオキシムエステル系化合物を含む感光性樹脂組成物及びその応用に関する
【背景技術】
【0002】
オキシムエステル系化合物は、優れた感光性を有するので、光開始剤として広く使用され、且つ、例えばRGBカラーレジスト(RGB color resist)、ブラックマトリックスレジスト(black matrix resist)、フォトスペーサ(photospacer)、半導体用フォトレジストなどの光電デバイス(optoelectronic device)に応用する光硬化性材料の製造に応用されている。
【0003】
特許文献1には、下記の化学式で示される光重合開始剤が開示されている。
【0004】
【0005】
該式中で、
R1~R11のそれぞれは、独立して水素、ハロゲン、置換されたまたは置換されていないC1~C20アルキル基、置換されたまたは置換されていないC2~C20アルケニル基、置換されたまたは置換されていないC3~C10シクロアルキル基、置換されたまたは置換されていないC4~C20シクロアルケニル基、ヒドロキシ基、置換されたまたは置換されていないC1~C20アルコキシ基、置換されたまたは置換されていないC2~C20アルケニルオキシ基、置換されたまたは置換されていないC1~C20アルカノイル基、置換されたまたは置換されていないC2~C20アルケノイル基、置換されたまたは置換されていない且つ環を構成する炭素原子数が6~14のアリール基または置換されたまたは置換されていない且つ環を構成する原子数3~14のヘテロ環基を表し、
Arは、置換されたまたは置換されていない且つ環を構成する炭素原子数が6~14のアリール基または置換されたまたは置換されていない且つ環を構成する原子数が5~14のヘテロアリール基を表し、
Wは、単結合または酸素原子を表し、
Zは、単結合、酸素原子または>NR3’(R3’は、置換されたまたは置換されていないC1~C20アルキル基を表し、或いはR3に連接して窒素原子と共に環を構成する)を表す。
【0006】
各種の光電デバイスの性質に対する要求が上がるに伴い、光開始剤とするオキシムエステル系化合物の溶解度及び熱安定性、及びオキシムエステル系化合物を含む感光性樹脂組成物の膜形成性(film forming)、現像性(developability)、感光度などの性質に対する要求も上がる。従って、これからの各種の光電デバイスの必要を満足するために、より優れるオキシムエステル系化合物を開発する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、オキシムエステル系化合物、オキシムエステル系化合物を含む感光性樹脂組成物及びそれを応用する装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を実現するために、本発明は、アルカリ可溶性樹脂と、
前記アルカリ可溶性樹脂を構成する単量体と異なる重合性単量体と、
式Iに示されるオキシムエステル系化合物の少なくとも1種を含む光開始剤と、を含み、
【0010】
【0011】
前記式I中、
R1~R4のそれぞれは、独立してC1~C20直鎖アルキル基、C3~C20分枝アルキル基、C2~C20直鎖アルケニル基、C3~C20分枝アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基を表し、且つ、該シクロアルキル基及び該アリール基は、置換されていない或いは任意の水素原子がC1~C20直鎖アルキル基、C3~C20分枝アルキル基、C2~C20直鎖アルケニル基またはC3~C20分枝アルケニル基に置換されており、
R5は、水素、ハロゲン、ニトロ基、シアン基、C1~C20直鎖アルキル基、C3~C20分枝アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表し、且つ、該シクロアルキル基及び該アリール基は、置換されていない或いは任意の水素原子がC1~C20直鎖アルキル基またはC3~C20分枝アルキル基に置換されており、
R6は、水素、C1~C20直鎖アルキル基、C3~C20分枝アルキル基、C2~C20直鎖アルケニル基、C3~C20分枝アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基を表し、且つ、該シクロアルキル基及び該アリール基は、置換されていない或いは任意の水素原子がC1~C20直鎖アルキル基、C3~C20分枝アルキル基、C2~C20直鎖アルケニル基またはC3~C20分枝アルケニル基に置換されており、
また、前記R1~前記R6が表す基は、構造中の任意の-CH2-が置換されていない或いは-O-、-S-、-NH-、-C=O-、-O(C=O)-、-(C=O)O-、-NH(C=O)-及び-(C=O)NH-からなる群より選ばれた1つの置換基に置換されており、且つ、隣り合う2つの-CH2-は、同時に前記置換基に置換されていなく、
R7は、架橋環基または架橋環基を有する誘導体を表すことを特徴とする感光性樹脂組成物を提供する。
【0012】
また、本発明は、式Iに示され、
【0013】
【0014】
前記式I中、
R1~R4のそれぞれは、独立してC1~C20直鎖アルキル基、C3~C20分枝アルキル基、C2~C20直鎖アルケニル基、C3~C20分枝アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基を表し、且つ、該シクロアルキル基及び該アリール基は、置換されていない或いは任意の水素原子がC1~C20直鎖アルキル基、C3~C20分枝アルキル基、C2~C20直鎖アルケニル基またはC3~C20分枝アルケニル基に置換されており、
R5は、水素、ハロゲン、ニトロ基、シアン基、C1~C20直鎖アルキル基、C3~C20分枝アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表し、且つ、該シクロアルキル基及び該アリール基は、置換されていない或いは任意の水素原子がC1~C20直鎖アルキル基またはC3~C20分枝アルキル基に置換されており、
R6は、水素、C1~C20直鎖アルキル基、C3~C20分枝アルキル基、C2~C20直鎖アルケニル基、C3~C20分枝アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基を表し、且つ、該シクロアルキル基及び該アリール基は、置換されていない或いは任意の水素原子がC1~C20直鎖アルキル基、C3~C20分枝アルキル基、C2~C20直鎖アルケニル基またはC3~C20分枝アルケニル基に置換されており、
また、前記R1~前記R6が表す基は、構造中の任意の-CH2-が置換されていない或いは-O-、-S-、-NH-、-C=O-、-O(C=O)-、-(C=O)O-、-NH(C=O)-及び-(C=O)NH-からなる群より選ばれた1つの置換基に置換されており、且つ、隣り合う2つの-CH2-は、同時に前記置換基に置換されていなく、
R7は、架橋環基または架橋環基を有する誘導体を表すことを特徴とするオキシムエステル系化合物を提供する。
【0015】
また、本発明は、上記の感光性樹脂組成物で形成された有色レジストを含むことを特徴とする表示装置を提供する。
【0016】
また、本発明は、上記の感光性樹脂組成物で形成された半導体用フォトレジストを含むことを特徴とする半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のオキシムエステル系化合物の分子構造には、主要骨格とするカルバゾール基(carbazole)と、オキシムエステル基を含む置換基2つと、架橋環基または架橋環基を有する誘導体とを含むので、該オキシムエステル系化合物は、高い熱安定性及び一般的に感光性樹脂組成物の製造に使用する溶媒に対して良好な溶解度を有して、感光性樹脂組成物の光開始剤として特に好適である。
【0018】
また、該オキシムエステル系化合物を含む本発明の感光性樹脂組成物は、高い感光性を有するので、半導体用フォトレジスト、有色レジスト、フォトスペーサなどの光硬化性材料の製造に応用することに好適であって、特にブラックマトリックスレジストの製造に応用することに好適である。また、本発明の感光性樹脂組成物は、良好な膜形成性及び現像性を有するので、それを応用する本発明の表示装置にムラ欠陥が生じることを避けることができる。
【0019】
また、本発明のオキシムエステル系化合物の熱安定性が高いので、本発明の感光性樹脂組成物も良好な熱安定性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書で使用される場合、用語「(メタ)アクリレート((meth)acrylate)」は、アクリレートやメタクリレートを指す。
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「アルケニル基」は、少なくとも1つの炭素―炭素二重結合を持つ炭化水素基を指し、即ち、2つの炭素―炭素二重結合を持つ炭化水素基や3つの炭素―炭素二重結合を持つ炭化水素基などを含む。
【0022】
本発明の感光性樹脂組成物は、アルカリ可溶性樹脂と、重合性単量体と、光開始剤とを含む。
【0023】
該アルカリ可溶性樹脂の種類は特に制限なく、光硬化性材料の技術領域において知られているアルカリ可溶性樹脂を使用でき、且つ光硬化性材料の技術領域の通常の知識を有する者が感光性樹脂組成物の実際応用に応じて選択できる。
【0024】
一部の実施形態において、該アルカリ可溶性樹脂は、(メタ)アクリレート系樹脂、ノボラック系樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルフェノール(polyvinylphenol)系樹脂及びカルボキシル基含有のウレタン(urethane) 系樹脂からなる群から一種または多種が選ばれたものである。
【0025】
(メタ)アクリレート系樹脂としては、例えば、カルボキシル基含有の(メタ)アクリレート系樹脂、ヒドロキシ基含有の(メタ)アクリレート系樹脂及びエポキシ基含有の(メタ)アクリレート系樹脂の一種または多種が選ばれるが、それに限らない。
【0026】
ノボラック系樹脂としては、例えば、カルボキシル基含有のノボラック系樹脂が選ばれるが、それに限らない。
【0027】
エポキシ樹脂としては、例えば、カルボキシル基含有のエポキシ樹脂が選ばれるが、それに限らない。
【0028】
本発明の感光性樹脂組成物がより優れた現象性を有するようにするために、該感光性樹脂組成物の固体成分を100wt%として、該アルカリ可溶性樹脂の含有量は、5wt%~60wt%の範囲内にあることが好ましく、10wt%~50wt%の範囲内にあることがより好ましく、12wt%~30wt%の範囲内にあることが更に好ましい。
【0029】
前記重合性単量体は、前記アルカリ可溶性樹脂を構成する単量体と異なるものであって、該重合性単量体の種類は特に制限なく、光硬化性材料の技術領域において知られている重合性単量体を使用でき、且つ光硬化性材料の技術領域の通常の知識を有する者が感光性樹脂組成物の実際応用に応じて選択できる。
【0030】
一部の実施形態において、該重合性単量体は、エポキシ基含有の重合性単量体、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を含有する重合性単量体及びエポキシ基及びエチレン性不飽和結合を含有する重合性単量体からなる群から一種または多種が選ばれたものである。
【0031】
エポキシ基含有の重合性単量体としては、例えば、ビスフェノールフルオレンエポキシ(bisphenol fluorene epoxy)、3,4-エポキシ-1-シクロヘキサンカルボン酸3,4-エポキシシクロヘキサン-1-イルメチル(3,4-Epoxycyclohexylmethyl 3,4-epoxycyclohexanecarboxylate、CAS登録番号:2386-87-0)などが選ばれるが、それに限らない。
【0032】
エポキシ基及びエチレン性不飽和結合を含有する重合性単量体としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート(ethylene glycol diglycidyl ether di(meth)acrylate)、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート(diethylene glycol diglycidyl ether di(meth)acrylate)、フタル酸ジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート(phthalic acid diglycidyl ether di(meth)acrylate)、グリセロールポリグリシジルエーテルポリ(メタ)アクリレート(glycerol polyglycidyl ether poly(meth)acrylate)、4―ビニル-1,2-エポキシシクロヘキサン(1,2-epoxy-4-vinylcyclohexane、CAS番号:106-86-5)などが選ばれるが、それに限らない。
【0033】
少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を含有する重合性単量体としては、例えば、1つのビニル基を含有する重合性単量体及び2つ以上のビニル基を含有する重合性単量体の一種または多種が選ばれるが、それに限らない。
【0034】
1つのビニル基を含有する重合性単量体としては、例えば、(メタ)アクリレート系化合物、(メタ)アクリルアミド系化合物またはヒドロキシ基(メタ)アクリレート系化合物などが選ばれるが、それに限らない。
【0035】
2つ以上のビニル基を含有する重合性単量体としては、例えば、トリプロピレングリコールジアクリレート(tripropylene glycol diacrylate、TPGDA)、トリメチロールプロパントリアクリレート(trimethylolpropane triacrylate、TMPTA)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(pentaerythritol triacrylate、PETA)またはジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(di-pentaerythritol hexaacrylate、DPHA)などが選ばれるが、それに限らない。
【0036】
本発明の感光性樹脂組成物がより優れた硬化性を有するようにするために、該感光性樹脂組成物の固体成分を100wt%として、該重合性単量体の含有量は、5wt%~60wt%の範囲内にあることが好ましく、10wt%~50wt%の範囲内にあることがより好ましく、12wt%~30wt%の範囲内にあることが更に好ましい。
【0037】
前記光開始剤は、式Iに示されるオキシムエステル系化合物の少なくとも1種を含む。
【0038】
【0039】
前記式I中、R1~R4のそれぞれは、独立してC1~C20直鎖アルキル基、C3~C20分枝アルキル基、C2~C20直鎖アルケニル基、C3~C20分枝アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基を表し、且つ、該シクロアルキル基及び該アリール基は、置換されていない或いは任意の水素原子がC1~C20直鎖アルキル基、C3~C20分枝アルキル基、C2~C20直鎖アルケニル基またはC3~C20分枝アルケニル基に置換されている。
【0040】
一部の実施形態において、前記R1~前記R4のそれぞれは、独立してC1~C8直鎖アルキル基、C3~C10分枝アルキル基またはC3~C6シクロアルキル基を表す。一部の実施形態において、前記R1~前記R2のそれぞれは、独立してC1~C2直鎖アルキル基を表し、前記R3~前記R4のそれぞれは、独立してC1~C5直鎖アルキル基またはC3~C10分枝アルキル基を表す。
【0041】
前記式I中、R5は、水素、ハロゲン、ニトロ基、シアン基、C1~C20直鎖アルキル基、C3~C20分枝アルキル基、シクロアルキル基またはアリール基を表し、且つ、該シクロアルキル基及び該アリール基は、置換されていない或いは任意の水素原子がC1~C20直鎖アルキル基またはC3~C20分枝アルキル基に置換されている。
【0042】
一部の実施形態において、前記R5は、水素、シアン基、C1~C8直鎖アルキル基またはC3~C7シクロアルキル基を表す。一部の実施形態において、前記R5は、水素、シアン基、C1~C3直鎖アルキル基またはC7シクロアルキル基を表す。
【0043】
前記式I中、R6は、水素、C1~C20直鎖アルキル基、C3~C20分枝アルキル基、C2~C20直鎖アルケニル基、C3~C20分枝アルケニル基、シクロアルキル基またはアリール基を表し、且つ、該シクロアルキル基及び該アリール基は、置換されていない或いは任意の水素原子がC1~C20直鎖アルキル基、C3~C20分枝アルキル基、C2~C20直鎖アルケニル基またはC3~C20分枝アルケニル基に置換されており、
一部の実施形態において、前記R6は、水素、C1~C8直鎖アルキル基またはフェニル基を表す。一部の実施形態において、前記R6は、水素、CH3またはフェニル基を表す。
【0044】
また、前記R1~前記R6が表す基は、構造中の任意の-CH2-が置換されていない或いは-O-、-S-、-NH-、-C=O-、-O(C=O)-、-(C=O)O-、-NH(C=O)-及び-(C=O)NH-からなる群より選ばれた1つの置換基に置換されており、且つ、隣り合う2つの-CH2-は、同時に前記置換基に置換されることができないので、同時に前記置換基に置換されない。
【0045】
一部の実施形態において、前記R1~前記R6が表す基は、構造中の任意の-CH2-が置換されていない或いは-C=O-、-O(C=O)-及び-(C=O)O-からなる群より選ばれた1つの置換基に置換されており、且つ、隣り合う2つの-CH2-は、同時に前記置換基に置換されない。
【0046】
前記R1~前記R6において、該シクロアルキル基は、置換されていない時、炭素数が例えば3~10に範囲内にあり、置換されていない該シクロアルキル基の具体態様は、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などであるがそれらに限らない。該アリール基は、置換されていない時、炭素数が例えば5~10に範囲内にあり、置換されていない該アリール基の具体態様は、例えば、フェニル基、ナフチル基などであるがそれらに限らない。
【0047】
該シクロアルキル基及び該アリール基は、置換されている態様である時、任意の水素原子がC1~C20直鎖アルキル基、C3~C20分枝アルキル基、C2~C20直鎖アルケニル基またはC3~C20分枝アルケニル基(R5の場合、C1~C20直鎖アルキル基またはC3~C20分枝アルキル基)に置換されている以外、任意の水素原子がハロゲン、アルキニル基、アリール基、シクロアルキル基または複素環に置換されることもできる。
【0048】
R7は、架橋環基または架橋環基を有する誘導体を表す。
【0049】
本明細書で使用される場合、用語「架橋環基」とは、2つ以上の環が、直接に連接していない2個の原子を共用している構造を有する環基を指す。
【0050】
一部の実施形態において、R7は、-L1-R7’ を表し、該L1は、単結合、C1~C20直鎖アルキレン基、C3~C20分枝アルキレン基またはC4~C202価のシクロアルキルアルキル基を表し、R7’は、
【0051】
【0052】
を表す。
【0053】
一部の実施形態において、該L1は、単結合、C1~C3直鎖アルキレン基またはC3~C5分枝アルキレン基を表し、R7’は、
【0054】
【0055】
を表す。
【0056】
一部の実施形態において、式Iに示されるオキシムエステル系化合物は、下記の式I-1~式I-15に示されるオキシムエステル系化合物の一種または多種が選ばれるものである。
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
式Iに示されるオキシムエステル系化合物の共通の製造方法は、下記の化学反応式Iに示され、また、一般の有機合成方法に基づいて必要に応じて具体的な合成条件を選択や調整することができる。
【0063】
【0064】
本発明の感光性樹脂組成物がより優れた膜形成性及び硬化性を有するようにするために、該感光性樹脂組成物の固体成分を100wt%として、該式Iに示されるオキシムエステル系化合物の含有量は、1wt%~30wt%の範囲内にあることが好ましく、2wt%~20wt%の範囲内にあることがより好ましく、5wt%~15wt%の範囲内にあることが更に好ましい。
【0065】
本発明の感光性樹脂組成物は、選択的に他の薬剤を更に含むことができ、該他の薬剤としては、例えば、分散剤、顔料、溶媒、カップリング剤、界面活性剤、塗布性向上剤(coating improving agent)、現像改良剤(development modifying agent)、紫外線吸収剤、酸化防止剤などが挙げられるが、それらに限らない。
【0066】
本発明の感光性樹脂組成物は、フォトスペーサ、有色レジスト、半導体用フォトレジストなどの光硬化性材料の製造の分野に応用することができる。
【0067】
本発明の表示装置は、本発明の感光性樹脂組成物から形成された有色レジストを含む。該有色レジストとしては、例えば、RGBカラーレジスト、ブラックマトリックスレジストが挙げられる。
【0068】
本発明の半導体装置は、本発明の感光性樹脂組成物から形成された半導体用フォトレジストを含む。
【0069】
以下、本発明の実施例について説明する。これらの実施例は、例示的かつ説明的なものであり、且つ、本発明を限定するものと解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0070】
[実施例1]式I-1に示されるオキシムエステル系化合物
下記の内容及び化学反応式I-1~I-4が合わせて示される反応経路により式I-1に示されるオキシムエステル系化合物を合成した。
【0071】
【0072】
(1)氷浴環境で16.7gのカルバゾールと200mLのジクロロメタンとを三つ口フラスコ中に投入し、そして33.33gの三塩化アルミニウムを該三つ口フラスコ中に添加してから30分間攪拌した後、24.5gのブタノイルクロリドを徐々に滴下し且つ室温環境で2時間反応し、そして、三つ口フラスコ中に氷水を添加して反応を中止させて、反応産物を得た。
【0073】
該反応産物をジクロロメタンで抽出すると共に有機層を収集してから、該有機層を5wt%の炭酸水素ナトリウム水溶液で中和し、そして、水及び飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで脱水し、最後に濃縮して中間産物を得た。
【0074】
該中間産物をカラムクロマトグラフィーで[固定相がMerck silica gel 60(70-230 mesh ASTM)、移動相が酢酸エチル:n-ヘプタン=1:4~1:2のグラジエント溶離(gradient elution)]純化を行って、18.4gの化合物1aを得た(収率が60%)。
【0075】
質量分析計(Perkin Elmer GC Clarus 600)で該化合物1aの分子量を分析し、その結果はMS(m/z):307.2(M+H)+である。
【0076】
核磁気共鳴装置(Bruker Avance III HD 400 MHz)で該化合物1aの分子構造を分析し、その結果は1H-NMR(CDCl3、400MHz)、δ(ppm):8.772(2H,d,J=1.2 Hz)、8.633(1H,s)、8.141-8.117(2H,m)、7.478(2H,d,J=8.4Hz)、3.084(4H,t,J=7.2Hz)、1.871-1.797(4H,m)、1.054(6H,t,J=7.6Hz)である。
(2)室温環境で、30.7gの該化合物1aと、100mLのジメチルスルホキシドと、22.0gの1-アダマンチルメタクリラート(1-adamantyl methacrylate)と、27.64gの炭酸カリウムとをフラスコに投入してから、該フラスコ中の混合物を50℃で6時間反応させて反応産物を得た。
【0077】
該反応産物を水に入れて、酢酸エチルで抽出すると共に有機層を収集してから、該有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで脱水し、最後に濃縮して中間産物を得た。
【0078】
該中間産物をカラムクロマトグラフィーで[固定相がMerck silica gel 60(70-230 mesh ASTM)、移動相が酢酸エチル:n-ヘプタン=1:4]純化を行って、26.4gの化合物1bを得た(収率が50%)。
【0079】
質量分析計(Thermo Scientific TSQ Altis)で該化合物1bの分子量を分析し、その結果はMS(m/z):528.4(M+H)+である。
【0080】
核磁気共鳴装置で該化合物1bの分子構造を分析し、その結果は1H-NMR(CDCl3、400MHz)、δ(ppm):8.772(2H,d,J=1.2 Hz)、8.171-8.145(2H,m)、7.480(2H,d,J=8.8Hz)、4.678-4.622(1H,m)、4.307-4.251(1H, m)、3.098-3.010(5H,m)、2.059(3H,s)、1.866-1.811(9H,m)、1.563(5H,s)、1.233-1.166(4H,m)、1.051(6H,t,J=7.2Hz)である。
(3)氷浴環境で52.8gの該化合物1bと、200mLのテトラヒドロフランと、20.3gの濃塩酸とをフラスコ中に投入し、そして29.3gの亜硝酸イソアミルを該三つ口フラスコ中に徐々に滴下し且つ氷浴環境で反応させて反応産物を得た。
【0081】
該反応産物を飽和炭酸カリウム水溶液で中性になるまで中和した後、濃縮してテトラヒドロフランを除去し、そして、200mLの酢酸エチルで抽出すると共に有機層を収集した。該有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで脱水し、最後に濃縮して中間産物を得た。
【0082】
該中間産物をカラムクロマトグラフィーで[固定相がMerck silica gel 60(70-230 mesh ASTM)、移動相が酢酸エチル:n-ヘプタン=1:3]純化を行って、23.4gの化合物1cを得た(収率が40%)。
【0083】
質量分析計(Thermo Scientific TSQ Altis)で該化合物1cの分子量を分析し、その結果はMS(m/z):586.4(M+H)+である。
【0084】
核磁気共鳴装置で該化合物1cの分子構造を分析し、その結果は1H-NMR(CDCl3、400MHz)、δ(ppm):8.954(2H,s)、8.563(2H,s)、8.030-8.004(2H,m)、7.236(2H,d,J=8.8Hz)、4.526-4.472(1H,m)、4.200-4.141(1H,m)、2.990-2.900(1H,m)、2.767(4H,q,J=7.6Hz)、2.115(3H,s)、1.968(6H,s)、1.610(6H,s)、1.148(6H,t,J=7.6Hz)、1.063(3H,d,J=6.8Hz)である。
(4)氷浴環境で23.4gの該化合物1cと、80mLの酢酸エチルと、12.3gの無水酢酸とをフラスコ中に投入して反応させて反応産物を得た。
【0085】
該反応産物を飽和炭酸カリウム水溶液で中性になるまで中和した後、酢酸エチルで抽出すると共に有機層を収集した。該有機層を水及び飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで脱水し、最後に濃縮して中間産物を得た。
【0086】
該中間産物をカラムクロマトグラフィーで[固定相がMerck silica gel 60(70-230 mesh ASTM)、移動相が酢酸エチル:n-ヘプタン=1:3]純化を行って、式I-1に示されるオキシムエステル系化合物である18.7gの化合物1dを得た(収率が70%)。
【0087】
質量分析計(Thermo Scientific TSQ Altis)で該化合物1dの分子量を分析し、その結果はMS(m/z):692.3(M+Na)+である。
【0088】
核磁気共鳴装置で該化合物1dの分子構造を分析し、その結果は1H-NMR(CDCl3、400MHz)、δ(ppm):8.915(2H,d,J=1.2Hz)、8.287-8.261(2H,m)、7.510(2H,d,J=8.8Hz)、4.688-4.632(1H,m)、4.303-4.247(1H,m)、3.081-2.991、(1H,m)、2.852(4H,q,J=7.6Hz)、2.285(6H,s)、2.073(3H,s)、1.935-1.868(6H,m)、1.574(6H,s)、1.250-1.112(9H,m)である。
【0089】
[比較例1]オキシムエステル系化合物
比較例1のオキシムエステル系化合物は、下式に示される。
【0090】
【0091】
[比較例2]オキシムエステル系化合物
比較例2のオキシムエステル系化合物は、下式に示される。
【0092】
【0093】
比較例2のオキシムエステル系化合物の製造方法は、式I-1に示されるオキシムエステル系化合物の製造方法とほぼ同じであって異なる部分は、ステップ(2)における1-アダマンチルメタクリラートをシクロヘキシルアクリラート (cyclohexyl acrylate)に変更した点である。
[比較例3]オキシムエステル系化合物
比較例3のオキシムエステル系化合物は、下式に示される。
【0094】
【0095】
[オキシムエステル系化合物の評価項目]
<溶解度>
以下の方法で実施例1及び比較例1~比較例3のオキシムエステル系化合物の溶解度を測定した。
【0096】
25℃の環境で、攪拌しながら、オキシムエステル系化合物がプロピレングリコールメチルエーテルアセタート(略称PGMEA)に溶解できなくなるまでオキシムエステル系化合物を持続的に10.0gのPGMEAに添加し、その時のオキシムエステル系化合物の使用量を溶解量上限値として記録し、以下の算式で溶解度を計算した。
溶解度(wt%)=オキシムエステル系化合物の溶解量上限値÷(オキシムエステル系化合物の溶解量上限値+PGMEAの使用量)×100%
<熱安定性>
以下の方法で実施例1及び比較例1~比較例3のオキシムエステル系化合物の熱安定性を測定した。
【0097】
熱重量分析器(略称TGA、TA instruments社、型番:Q500)で、窒素雰囲気でオキシムエステル系化合物を室温(25℃)から110℃まで加熱してから30分間110℃を維持した後、10℃/minの加熱速度で110℃から400℃まで加熱し、オキシムエステル系化合物の5%の重量減少が生じた時の温度を記録した。
【0098】
オキシムエステル系化合物の熱安定性の評価は、5%の重量減少が生じた時の温度が230℃超える場合「◎」、5%の重量減少が生じた時の温度が200℃~230℃にある場合「〇」、5%の重量減少が生じた時の温度が200℃未満の場合「●」とし、その結果は表1に記録した。
【0099】
【0100】
表1の溶解度の結果からみると、比較例1~比較例3のオキシムエステル系化合物と比べて、実施例1の式I-1に示されるオキシムエステル系化合物のPGMEAに対する溶解度が高いので、本発明のオキシムエステル系化合物の溶媒に対する溶解度がより優れていることを証明した。
【0101】
表1の熱安定性の結果からみると、比較例1~比較例3に示されるオキシムエステル系化合物の5%の重量減少が生じた時の温度と比べて、実施例1の式I-1に示されるオキシムエステル系化合物の5%の重量減少が生じた時の温度が高いので、本発明のオキシムエステル系化合物の熱安定性がより優れていることを証明した。
【0102】
また、光硬化性材料の技術領域の通常の知識を有する者であれば、一般的に、感光性樹脂組成物の熱安定性は主に光開始剤の熱安定性により決められると認識されるので、本発明のオキシムエステル系化合物の熱安定性がより優れていることにより、本発明の感光性樹脂組成物もより優れた熱安定性を有することが分かる。
[応用例1] 感光性樹脂組成物
応用例1の感光性樹脂組成物は、式I-1に示されるオキシムエステル系化合物を光開始剤として使用し、以下の製造方法で製造した。
(1)40モルのメチルアクリル酸と、40モルのメタクリル酸ベンジル(benzyl methacrylate)と、10モルのメタクリル酸2-ヒドロキシエチル(2-hydroxyethyl methacrylate)と、10モルの2-[4-(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノキシ]エチルアクリレート(2-[4-(1-methyl-1-phenylethyl)phenoxy]ethyl acrylate)とを80℃で5時間共重合反応させて、アルカリ可溶性樹脂A(重量平均分子量が10000、酸価が90mgKOH/g)を得た。
【0103】
(2)60gのエポキシ化合物(DIC社、型番:N740、エポキシ当量:181g/当量)と、15gのアクリル酸と、200gのPGMEAと、2.5gの1-メチルイミダゾール(1-methylimidazole)と、0.15gの4-メトキシフェノール(4-methoxyphenol)とを100℃で10時間反応させて、エポキシアクリレート(epoxy acrylate)溶液(酸価が5mgKOH/g以下)を得た。そして、25重量部の該エポキシアクリレート溶液と2.5重量部の1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物(1,2,3,6-tetrahydrophthalic anhydride、CAS番号:85-43-8(THPA))とを80℃で4時間反応させて、アルカリ可溶性樹脂B(重量平均分子量が8000、酸価が100mgKOH/g)を得た。
(3)25重量部のアルカリ可溶性樹脂Bと、6重量部のアルカリ可溶性樹脂Aと、30重量部のジペンタエリトリトールヘキサアクリラート(dipentaerythritol hexaacrylate、DPHA、CAS番号:29570-58-9)と、6重量部の式I-1に示されるオキシムエステル系化合物と、260重量部の黒色顔料と、500重量部の溶媒(100重量部の3-エトキシプロピオン酸エチル(3-ethoxypropionic acid ethyl)及び400重量部のPGMEAにより構成された)とを均一に混合して、応用例1の感光性樹脂組成物を得た。
[参考例1及び参考例2] 感光性樹脂組成物
参考例1及び参考例2の感光性樹脂組成物の製造方法は、応用例1の感光性樹脂組成物の製造方法とほぼ同じであって異なる部分は、参考例1及び参考例2のそれぞれは、表2に示されるオキシムエステル系化合物を光開始剤として使用した。
【0104】
【0105】
[感光性樹脂組成物の評価項目]
ムラ欠陥検査:
以下の方法で応用例1、参考例1及び参考例2の感光性樹脂組成物のムラ欠陥を検査した。
【0106】
感光性樹脂組成物を基板に塗布した後、100℃で1分間乾燥して厚さ1.5μmの塗布膜を形成し、該塗布膜を室温に冷却した後、I線(波長365nmの水銀のスペクトル線)で該塗布膜を露光させ、そして、濃度1wt%のKOHの水溶液で露光された該塗布膜を24℃で40秒の現像を行ってパターン化された塗布膜を形成した後、高圧噴射洗浄機で該パターン化された塗布膜に対して30秒の高圧洗浄を行ってから、230℃で20分間ポストベーク(post-bake)して、黒色レジストを形成した。黄色光下で目視で該黒色レジストのムラ欠陥を検査した。その結果は、表3に示される。
【0107】
【0108】
表3に示されるように、参考例1及び参考例2の感光性樹脂組成物により形成された黒色レジストには、顕著なムラ欠陥が存在していることに対して、応用例1の感光性樹脂組成物により形成された黒色レジストには、ムラ欠陥がほぼ見えないことにより、本発明の感光性樹脂組成物は、より優れた膜形成性、現像性及び感光度を有することを証明した。
【0109】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、最も広い解釈の精神および範囲内に含まれる様々な構成として、全ての修飾および均等な構成を包含するものとする。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明の感光性樹脂組成物は、フォトスペーサ、有色レジスト、半導体用フォトレジストなどの光硬化性材料の製造に好適である。