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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】エレベータシステム
(51)【国際特許分類】
   B66B 13/26 20060101AFI20231002BHJP
   B66B 3/00 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
B66B13/26 F
B66B3/00 P
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022202334
(22)【出願日】2022-12-19
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒメネス セバスチャン ピーシ
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-165541(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110796654(CN,A)
【文献】特開2000-35317(JP,A)
【文献】特開2021-127251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 13/26
B66B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかご内に設置され、ドアのシルを撮影範囲に含むカメラと、
前記カメラにより撮影された撮影画像の前記シルが映るエリアに紐を検知するための紐検知エリアを設定する設定手段と、
前記撮影画像に基づき、前記紐検知エリアに対応する紐検知対象画像を生成する生成手段と、
前記紐検知対象画像と、前記紐検知対象画像に対応する基準画像とをそれぞれ、マトリクス状の多数のブロックに区切り、前記紐検知対象画像の各ブロックの輝度値と前記基準画像の各ブロックの輝度値とを比較し、予め設定された第1閾値以上の輝度差を有するブロックを第1検知ブロックとして検知する第1検知手段と、
前記第1検知ブロックが前記紐検知対象画像の最上部から最下部に亘って連続的に並ぶ場合に、前記紐検知エリアから線状物体を検知する第2検知手段と、
前記線状物体が検知された紐検知対象画像の各ブロック行において、連続的に並ぶ第1検知ブロックの数が予め設定された第2閾値を超える部分がない場合に、前記紐検知エリアから紐を検知する第3検知手段と、
を備えることを特徴とする、エレベータシステム。
【請求項2】
前記第3検知手段は、
前記線状物体が検知された紐検知対象画像の少なくとも1つのブロック行において、前記第2閾値を超える部分があった場合、前記紐検知エリアから紐を検知しないことを特徴とする、
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項3】
前記基準画像は、
前記乗りかごを利用する利用者がいない状態であり、かつ、前記ドアが全開状態の時に、前記カメラにより撮影された画像であって、当該画像から紐検知エリア部分が抽出された画像であることを特徴とする、
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項4】
前記生成手段は、
前記撮影画像から紐検知エリア部分を抽出した紐検知エリア画像を生成し、
所定期間の間に生成した複数の紐検知エリア画像にノイズ平均化処理を実行して1つの平均画像を生成し、
前記平均画像に適応的ヒストグラム平坦化処理を実行して前記紐検知対象画像を生成することを特徴とする、
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項5】
前記第1検知手段は、
前記第1検知ブロックとして検知しなかったブロックのうち、2つ以上の前記第1検知ブロックと接触するブロックを第2検知ブロックとして検知し、
前記第2検知手段は、
前記第1検知ブロックまたは前記第2検知ブロックが前記紐検知対象画像の最上部から最下部に亘って連続的に並ぶ場合に、前記紐検知エリアから線状物体を検知することを特徴とする、
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項6】
前記第1検知手段は、
行方向または列方向に隣接する2つ以上の前記第1検知ブロックを検知した場合、これら第1検知ブロックを、1つの第1検知ブロック群として検知し、
前記第1検知ブロックとして検知しなかったブロックのうち、2つ以上の前記第1検知ブロックまたは前記第1検知ブロック群と接触するブロックを前記第2検知ブロックとして検知することを特徴とする、
請求項5に記載のエレベータシステム。
【請求項7】
前記ドアの戸開閉動作を制御するエレベータ制御装置をさらに備え、
前記エレベータ制御装置は、
前記第3検知手段から前記紐を検知した旨の検知結果を受けると、前記ドアの戸閉動作を禁止して、前記ドアの戸開状態を維持する、あるいは、前記ドアを反転戸開させることを特徴とする、
請求項1に記載のエレベータシステム。
【請求項8】
前記第2閾値は、
前記乗りかごの床面から前記カメラまでの高さと、前記乗りかごの床面から検知対象の紐までの高さと、前記検知対象の紐の幅とに基づき設定されることを特徴とする、
請求項1に記載のエレベータシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータでは、利用者のペット(例えば、犬など)が乗りかごに乗車、あるいは、乗りかごから降車した時に、そのペットに繋がれたリーシュコード(紐)がドアに挟まれる事故が発生することがある。
【0003】
このような事故の発生を抑止する方法として、輪郭抽出により紐を検知する方法が考案されている。しかしながら、紐のような細い物体を、上記した輪郭抽出により正確に検知することは難しく、輪郭抽出を用いた検知方法では、信頼性に欠けるといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5690504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、紐のような細い物体を正確に検知することが可能なエレベータシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係るエレベータシステムは、カメラと、設定手段と、生成手段と、第1検知手段と、第2検知手段と、第3検知手段と、を備える。前記カメラは、乗りかご内に設置され、ドアのシルを撮影範囲に含む。前記設定手段は、前記カメラにより撮影された撮影画像の前記シルが映るエリアに紐を検知するための紐検知エリアを設定する。前記生成手段は、前記撮影画像に基づき、前記紐検知エリアに対応する紐検知対象画像を生成する。前記第1検知手段は、前記紐検知対象画像と、前記紐検知対象画像に対応する基準画像とをそれぞれ、マトリクス状の多数のブロックに区切り、前記紐検知対象画像の各ブロックの輝度値と前記基準画像の各ブロックの輝度値とを比較し、予め設定された第1閾値以上の輝度差を有するブロックを第1検知ブロックとして検知する。前記第2検知手段は、前記第1検知ブロックが前記紐検知対象画像の最上部から最下部に亘って連続的に並ぶ場合に、前記紐検知エリアから線状物体を検知する。前記第3検知手段は、前記線状物体が検知された紐検知対象画像の各ブロック行において、連続的に並ぶ第1検知ブロックの数が予め設定された第2閾値を超える部分がない場合に、前記紐検知エリアから紐を検知する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態に係るエレベータシステムの概略構成例を示す図である。
図2図2は、同実施形態に係る検知エリアを説明するための図である。
図3図3は、同実施形態に係る画像前処理部の機能構成例を示すブロック図である。
図4図4は、同実施形態に係るノイズ平均化処理部により実行される処理を説明するための図である。
図5図5は、同実施形態に係る検知処理部の機能構成例を示すブロック図である。
図6図6は、同実施形態に係る第1紐検知処理部により実行される処理を説明するための図である。
図7図7は、同実施形態に係る第1紐検知処理部により実行される処理を説明するための図である。
図8図8は、同実施形態に係る第1紐検知処理部により実行される処理を説明するための図である。
図9図9は、同実施形態に係る第2紐検知処理部により実行される処理を説明するための図である。
図10図10は、同実施形態に係る第3紐検知処理部により実行される処理を説明するための図である。
図11図11は、同実施形態に係るエレベータシステムの動作の一例を示すフローチャートである。
図12図12は、同実施形態に係る画像前処理部により実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
図13図13は、同実施形態に係る検知処理部により実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0009】
図1は、一実施形態に係るエレベータシステムの概略構成例を示す図である。
乗りかご11の出入口上部にカメラ12が設置されている。具体的には、カメラ12は、乗りかご11の出入口上部を覆う幕板11aの中にレンズ部分を直下方向、もしくは、乗場15側あるいは乗りかご11内部側に所定の角度だけ傾けて設置される。カメラ12は、例えば車載カメラなどの小型の監視用カメラであり、広角レンズもしくは魚眼レンズを有し、180度以上の視野角で乗りかご11内および乗場15を含む撮影対象を広範囲に撮影する。カメラ12は、後述するシルを撮影範囲に含む。カメラ12は、1秒間に数コマ(例えば、30コマ/秒)の画像を連続的に撮影可能である。
【0010】
各階の乗場15において、乗りかご11の到着口には乗場ドア14が開閉自在に設置されている。乗場ドア14は、乗りかご11の到着時にかごドア13に係合して開閉動作する。なお、動力源(ドアモータ)は乗りかご11側にあり、乗場ドア14はかごドア13に追従して開閉するだけである。以下の説明においては、かごドア13が戸開しているときには乗場ドア14も戸開しており、かごドア13を戸閉しているときには乗場ドア14も戸閉しているものとする。また、以下の説明において、単に「ドア」と述べた場合には、かごドア13と乗場ドア14の両方を含むものとする。なお、本実施形態においては、かごドア13および乗場ドア14が、2枚戸両開きのドアである場合を想定するが、これに限定されず、かごドア13および乗場ドア14は、他のタイプのドア(例えば、2枚戸片開きのドアなど)であっても構わない。
【0011】
カメラ12によって連続的に撮影された各画像(映像)は、画像処理装置20によってリアルタイムに解析処理される。なお、図1では、便宜的に画像処理装置20を乗りかご11から取り出して示しているが、実際には、画像処理装置20がカメラ12と共に幕板11aの中に収納されている。
【0012】
画像処理装置20は、記憶部21と、制御部22とを備えている。記憶部21は、カメラ12によって撮影された画像を逐次保存するとともに、制御部22の処理に必要なデータを一時的に保存しておくためのバッファエリアを有する。なお、記憶部21には、後述する画像前処理部による各種前処理が施された画像がさらに保存されてもよい。また、記憶部21には、制御部22の処理において使用される基準画像がさらに保存されてもよい。基準画像とは、利用者がいない状態であり、かつ、ドアが全開状態の時にカメラ12によって撮影された画像から、後述する紐検知エリア部分が抽出された画像である。
【0013】
制御部22は、カメラ12の撮影画像を用いて、乗りかご11内や乗場15にいる利用者や物体を検知する。この制御部22を機能的に分けると、検知エリア設定部23と、画像前処理部24と、検知処理部25とで構成される。
【0014】
検知エリア設定部23は、カメラ12の撮影画像上で、利用者(エレベータを利用する人)や物体を検知するための検知エリアを設定する。具体的には、検知エリア設定部23は、図2に示すように、乗場15の出入口付近の床面(が映るエリア)に第1検知エリアE1を設定し、ドアのシル16(が映るエリア)に第2検知エリアE2を設定する。シル16とは、ドアの開閉動作をガイドするための部材であり、開閉動作時にドアが移動する移動経路上に設けられる。なお、第1検知エリアE1は、乗場15から乗りかご11に向けて移動する利用者(つまり、乗りかご11に乗車する利用者)、または、乗りかご11から乗場15に向けて移動する利用者(つまり、乗りかご11から降車する利用者)を検知するための検知エリアであり、利用者検知エリアE1と称されてもよい。また、第2検知エリアE2は、シル16上に位置する紐を検知するための検知エリアであり、紐検知エリアE2と称されてもよい。
【0015】
なお、本実施形態においては、検知エリア設定部23が、2つの検知エリアE1,E2を設定する場合を想定したが、これに限定されず、検知エリア設定部23は、例えば乗りかご11内の出入口付近の床面等にさらに検知エリアを設定してもよい。
【0016】
画像前処理部24は、カメラ12の撮影画像に対して各種前処理を実行する。なお、画像前処理部24により実行される各種前処理については後述するため、ここではその詳しい説明を省略する。
【0017】
検知処理部25は、検知エリア設定部23により設定された検知エリア毎に、人または物(人または物の動き)を検知する検知処理を実行する。具体的には、検知処理部25は、図2に示すように、カメラ12の撮影画像上に設定された検知エリアを多数のブロックに区切り、各ブロックの輝度値の変化に着目して、人または物を検知する。
【0018】
なお、図2に示すように、紐検知エリアE2は、利用者検知エリアE1よりも小さいサイズのブロックで区切られる。より詳しくは、利用者検知エリアE1を区切る1つのブロックには、撮影画像を構成する16(=4×4)個の画素が含まれるのに対し、紐検知エリアE2を区切る1つのブロックには、撮影画像を構成する1(=1×1)個の画素が含まれる。詳細については後述するが、このように、紐検知エリアE2を利用者検知エリアE1よりも小さいサイズのブロックで区切ることにより、紐検知エリアE2においては、幅の細い物体(例えば、紐)を精度よく検知することが可能である。
【0019】
エレベータ制御装置30は、乗りかご11に設置される各種機器類(行先階ボタンや照明等)の動作を制御する。また、エレベータ制御装置30は、画像処理装置20に対して、かごドア13の戸開閉状態を示す状態信号を定期的に出力する。
【0020】
エレベータ制御装置30は、戸開閉制御部31と、通知部32と、を備えている。
戸開閉制御部31は、乗りかご11が乗場15に到着した時のかごドア13の戸開閉動作を制御する。より詳しくは、戸開閉制御部31は、乗りかご11が乗場15に到着した時にかごドア13を戸開し、例えば所定時間経過後にかごドア13を戸閉する。戸開閉制御部31は、かごドア13の全戸開中または戸閉動作中に、画像処理装置20(検知処理部25)により人または物が検知された場合、かごドア13の戸閉動作を禁止して、かごドア13が全戸開中の場合は戸開状態を維持し(かごドア13の戸開時間を延長し)、かごドア13が戸閉動作中の場合は反転戸開を行う。通知部32は、画像処理装置20(検知処理部25)により人または物が検知された場合、利用者に注意を喚起するためのメッセージを通知する。
【0021】
図3は、画像前処理部24の機能構成例を示すブロック図である。図3に示すように、画像前処理部24は、紐検知エリア抽出部24aと、ノイズ平均化処理部24bと、ヒストグラム平坦化処理部24cと、を備えている。
【0022】
紐検知エリア抽出部24aは、カメラ12の撮影画像から紐検知エリアE2部分を抽出した紐検知エリア画像を生成する。
【0023】
ノイズ平均化処理部24bは、所定期間(例えば、1秒)の間に紐検知エリア抽出部24aにより生成された複数の紐検知エリア画像を用いて、1つの平均画像を生成する。
例えば、図4に示すように、カメラ12により1秒間で30枚の画像が撮影され、紐検知エリア抽出部24aから30枚の紐検知エリア画像i,i,…,i30を得ることができる場合、ノイズ平均化処理部24bは、紐検知エリア画像i~i30にそれぞれ含まれる画素a~aの輝度値の平均値をそれぞれ算出して、平均画像iaveを生成する。
【0024】
より詳しくは、ノイズ平均化処理部24bは、30枚の紐検知エリア画像i~i30にそれぞれ含まれる画素aの輝度値の平均値を、平均画像iaveに含まれる画素aの輝度値として算出する。また、ノイズ平均化処理部24bは、30枚の紐検知エリア画像i~i30にそれぞれ含まれる画素aの輝度値の平均値を、平均画像iaveに含まれる画素aの輝度値として算出する。ノイズ平均化処理部24bは、平均画像iaveに含まれる画素a~aの輝度値についても同様にして算出し、1つの平均画像iaveを生成する。
【0025】
ノイズ平均化処理部24bにおいて平均画像iaveを生成することにより、次のような事態が発生してしまうことを防ぐことが可能である。例えば、所定の紐検知エリア画像に含まれる所定の画素の輝度値が、他の紐検知エリア画像に含まれる対応する画素の輝度値から大きく離れた値を示す場合であって、当該所定の紐検知エリア画像がそのまま、後述する紐検知処理に使用されてしまった場合、当該所定の画素の輝度値がノイズとなり、紐を誤検知してしまう、あるいは、紐を検知できない可能性がある。しかしながら、ノイズ平均化処理部24bにおいて所定の紐検知エリア画像に含まれるノイズを平均化した平均画像iaveを生成し、当該平均画像iaveを紐検知処理に使用することで、当該所定の紐検知エリア画像に含まれるノイズが紐検知処理に与える影響を抑制することが可能であり、上記した事態の発生を防ぐことが可能である。
【0026】
ヒストグラム平坦化処理部24cは、ノイズ平均化処理部24bにより生成された平均画像iaveに対して、適応用的ヒストグラム平坦化(CLAHE)処理を実行する。これによれば、平均画像iaveに発生し得る白飛びを抑制すると共に、当該平均画像iaveのコントラストを補正することが可能なため、後述する紐検知処理時に予め設定された値(第1閾値)以上の輝度差を有するブロックを検知し易くすることが可能である。
【0027】
紐検知エリア抽出部24aと、ノイズ平均化処理部24bと、ヒストグラム平坦化処理部24cとによる各種前処理が施された画像(以下、紐検知対象画像と表記)は、記憶部21(例えば、記憶部21のバッファエリア)に記憶される。
【0028】
図5は、検知処理部25の機能構成例を示すブロック図である。図5に示すように、検知処理部25は、第1紐検知処理部25aと、第2紐検知処理部25bと、第3紐検知処理部25cと、を備えている。
【0029】
第1紐検知処理部25aは、画像前処理部24による各種前処理が施された紐検知対象画像と、記憶部21に予め記憶された基準画像とを取得する。紐検知対象画像と基準画像は、どちらも紐検知エリアE2部分を映した画像であるため、第1紐検知処理部25aは、取得したこれら画像を、図2に示した小さいサイズのブロックで区切る処理を実行する。
【0030】
第1紐検知処理部25aは、紐検知対象画像の各ブロックの輝度値と、基準画像の各ブロックの輝度値とを比較し、その結果、予め設定された値(第1閾値)以上の輝度差を有するブロックが存在した場合には、当該ブロックを紐検知ブロック(第1検知ブロック)として検知する。また、第1紐検知処理部25aは、紐検知対象画像と基準画像との比較において、紐検知ブロックとして検知しなかったブロック(つまり、上記した輝度差を有さないブロック)のうち、任意の方向(列方向(縦方向)、行方向(横方向)、または列方向および行方向と交差する方向(斜め方向))において、2つ以上の紐検知ブロックまたは紐検知ブロック群と接触するブロックを疑問符ブロック(第2検知ブロック)として検知する。なお、本実施形態において、紐検知ブロック群は、縦方向または横方向に隣接する2つ以上の紐検知ブロックからなるブロック群と定義される。つまり、斜め方向に接触する2つ以上の紐検知ブロックでは、紐検知ブロック群は構成されないものとする。
【0031】
ここで、図6図8を参照して、疑問符ブロックを検知する処理(第1紐検知処理部25aにより実行される処理)について具体的に説明する。なお、図6図8では、紐検知ブロックとして検知されたブロックには「1」を付し、疑問符ブロックとして検知されたブロックには「?」を付すものとする。
【0032】
図6では、紐検知対象画像と基準画像とを比較した結果、ブロックb,bが紐検知ブロックとして検知された場合を想定している(図6(a)参照)。この場合、第1紐検知処理部25aは、紐検知ブロックとして検知されなかったブロックb~b,bを順に評価し、各ブロックb~b,bが疑問符ブロックに相当するか否かを判定する。
【0033】
ここで、ブロックbは、紐検知ブロックbと縦方向において接触(隣接)し、かつ、紐検知ブロックbと斜め方向において接触しており、任意の方向において、2つ以上の紐検知ブロックと接触しているため、疑問符ブロックとして検知される(図6(b)参照)。同様に、ブロックbは、紐検知ブロックbと斜め方向において接触し、かつ、紐検知ブロックbと縦方向において接触(隣接)しており、任意の方向において、2つ以上の紐検知ブロックと接触しているため、疑問符ブロックとして検知される(図6(b)参照)。なお、その他のブロックb,b,b,b,bは、任意の方向において、2つ以上の紐検知ブロックと接触していないため、疑問符ブロックとして検知されない。
【0034】
図7では、紐検知対象画像と基準画像とを比較した結果、ブロックb,b,b~bが紐検知ブロックとして検知された場合を想定している。なお、紐検知ブロックb,b,b,bはそれぞれ、縦方向または横方向に隣接しており、紐検知ブロック群bG1を構成する。つまり、図7では、紐検知対象画像と基準画像とを比較した結果、紐検知ブロックbと紐検知ブロック群bG1とが検知された場合を想定している(図7(a)参照)。この場合、第1紐検知処理部25aは、紐検知ブロックとして検知されなかったブロックb,b,b,bを順に評価し、各ブロックb,b,b,bが疑問符ブロックに相当するか否かを判定する。
【0035】
ここで、ブロックbは、紐検知ブロック群bG1と接触し、かつ、紐検知ブロックbと斜め方向において接触しており、任意の方向において、2つ以上の紐検知ブロックまたは紐検知ブロック群と接触しているため、疑問符ブロックとして検知される(図7(b)参照)。同様に、ブロックbは、紐検知ブロック群bG1と接触し、かつ、紐検知ブロックbと横方向において接触(隣接)しており、任意の方向において、2つ以上の紐検知ブロックまたは紐検知ブロック群と接触しているため、疑問符ブロックとして検知される(図7(b)参照)。さらに、ブロックbは、紐検知ブロック群bG1と接触し、かつ、紐検知ブロックbと縦方向において接触(隣接)しており、任意の方向において、2つ以上の紐検知ブロックまたは紐検知ブロック群と接触しているため、疑問符ブロックとして検知される(図7(b)参照)。なお、ブロックbは、任意の方向において、2つ以上の紐検知ブロックまたは紐検知ブロック群と接触していないため、疑問符ブロックとして検知されない。
【0036】
図8では、紐検知対象画像と基準画像とを比較した結果、ブロックb,bが紐検知ブロックとして検知された場合を想定している。なお、紐検知ブロックb,bはそれぞれ、縦方向に隣接しており、紐検知ブロック群bG1を構成する。つまり、図8では、紐検知対象画像と基準画像とを比較した結果、紐検知ブロック群bG1が検知された場合を想定している(図8(a)参照)。この場合、第1紐検知処理部25aは、紐検知ブロックとして検知されなかったブロックb,b,b~bを順に評価し、各ブロックb,b,b~bが疑問符ブロックに相当するか否かを判定する。しかしながら、図8の場合においては、上記したように、紐検知対象画像と基準画像とを比較した結果として、1つの紐検知ブロック群bG1しか検知されておらず、いずれのブロックb,b,b~bも2つ以上の紐検知ブロックまたは紐検知ブロック群と接触することがないため、いずれのブロックb,b,b~bも疑問符ブロックとして検知されない(図8(b)参照)。
【0037】
再度図5の説明に戻る。
第2紐検知処理部25bは、第1紐検知処理部25aの処理結果に基づき、紐検知エリアE2に線状物体があるか否かを判定する。より詳しくは、第2紐検知処理部25bは、第1紐検知処理部25aにより多数のブロックに区切られた紐検知対象画像の最上部から最下部に亘って、第1紐検知処理部25aにより検知された紐検知ブロックまたは疑問符ブロックが任意の方向に接触して連続的に並んでいるか否かを判定し、紐検知エリアE2に線状物体があるか否かを判定する。換言すると、第2紐検知処理部25bは、マトリクス状に配列された多数のブロックで区切られた紐検知対象画像の乗場15に最も近いブロック行から乗りかご11に最も近いブロック行に亘って、任意の方向に接触する紐検知ブロックまたは疑問符ブロックが連続的に並んでいるか否かを判定し、紐検知エリアE2に線状物体があるか否かを判定する。
【0038】
第2紐検知処理部25bは、乗場15に最も近いブロック行から乗りかご11に最も近いブロック行に亘って、任意の方向に接触する紐検知ブロックまたは疑問符ブロックが連続的に並んでいると判定した場合、紐検知エリアE2から線状物体を検知する(つまり、紐検知エリアE2に線状物体があると判定する)。一方、第2紐検知処理部25bは、乗場15に最も近いブロック行から乗りかご11に最も近いブロック行に亘って、任意の方向に接触する紐検知ブロックまたは疑問符ブロックが連続的に並んでいないと判定した場合(つまり、第1紐検知処理部25aにより、少なくとも1つのブロック行において、紐検知ブロックまたは疑問符ブロックが全く検知されていなかった場合)、紐検知エリアE2に線状物体がないことを検知する(つまり、紐検知エリアE2に線状物体がないと判定する)。
【0039】
ここで、図9を参照して、第2紐検知処理部25bにより実行される処理について具体的に説明する。なお、図9では、紐検知ブロックとして検知されたブロックには「1」を付し、疑問符ブロックとして検知されたブロックには「?」を付すものとする。
【0040】
まず、第1紐検知処理部25aによる処理の結果として、紐検知対象画像が多数のブロックに区切られ、かつ、紐検知ブロックと疑問符ブロックとが図9(a)のように検知されている場合を想定する。この場合、第2紐検知処理部25bは、図9(a)の破線のように、任意の方向において接触する紐検知ブロックまたは疑問符ブロックを用いて、乗場15に最も近いブロック行から乗りかご11に最も近いブロック行に亘る1本の線を描くことが可能である。このため、第2紐検知処理部25bは、乗場15に最も近いブロック行から乗りかご11に最も近いブロック行に亘って、任意の方向に接触する紐検知ブロックまたは疑問符ブロックが連続的に並んでいると判定し、紐検知エリアE2から線状物体を検知する。
【0041】
なお、図9(a)では、乗場15に最も近いブロック行から乗りかご11に最も近いブロック行に亘る1本の線が図中破線のように描かれる場合を想定したが、これに限定されず、乗場15に最も近いブロック行から乗りかご11に最も近いブロック行に亘る1本の線は、任意の方向に接触する紐検知ブロックまたは疑問符ブロックを用いてさえいれば、どのように描かれても構わない。
【0042】
次に、第1紐検知処理部25aによる処理の結果として、紐検知対象画像が多数のブロックに区切られ、かつ、紐検知ブロックと疑問符ブロックとが図9(b)のように検知されている場合を想定する。この場合、第2紐検知処理部25bは、任意の方向において接触する紐検知ブロックまたは疑問符ブロックを用いて、乗場15に最も近いブロック行から乗りかご11に最も近いブロック行に亘る1本の線を描くことができない。このため、第2紐検知処理部25bは、乗場15に最も近いブロック行から乗りかご11に最も近いブロック行に亘って、任意の方向に接触する紐検知ブロックまたは疑問符ブロックが連続的に並んでいないと判定し(あるいは、破線で囲まれた2つのブロック行において紐検知ブロックまたは疑問符ブロックが途切れてしまっていることを検知し)、紐検知エリアE2に線状物体がないことを検知する。
【0043】
再度図5の説明に戻る。
第3紐検知処理部25cは、第2紐検知処理部25bにより検知された線状物体の幅を評価し、当該線状物体が紐であるか否かを判定する。より詳しくは、第3紐検知処理部25cは、第2紐検知処理部25bにより線状物体が検知された紐検知対象画像の各ブロック行毎に、連続的に並ぶ紐検知ブロックの数(つまり、横方向に隣接する紐検知ブロックの数)が予め設定された値(第2閾値)を超える部分があるか否かを判定する。なお、線状物体の幅の評価においては、疑問符ブロックは用いられず、紐検知ブロックのみが用いられる。
【0044】
ここで、例えば、カメラ12が幕板11aの中に設置され(より詳しくは、乗りかご11の床面からおよそ2130mmの高さに設置され)、かつ、ペットに繋がれた紐が乗りかご11の床面からおよそ530mmの高さにあることを想定した場合、当該ペットに繋がれた紐は、およそ3ブロックの幅を持って紐検知対象画像に映ることが予想される。このため、本実施形態においては、上記した第2閾値が「3」に設定される場合を想定するが、この値はあくまで一例であり、第2閾値は、撮影環境(例えば、乗りかご11の床面からカメラ12までの高さ)や、乗りかご11の床面から検知対象の紐までの高さ、検知対象の紐の基準となる幅などに応じて任意に変更されて構わない。
【0045】
第3紐検知処理部25cは、少なくとも1つのブロック行において、上記した第2閾値を超える部分があると判定した場合、第2紐検知処理部25bにより検知された線状物体は紐よりも幅広な物体であり、当該線状物体が紐でないことを検知する。一方、第3紐検知処理部25cは、いずれのブロック行においても、上記した第2閾値を超える部分がないと判定した場合、第2紐検知処理部25bにより検知された線状物体を、紐として検知する。つまり、この場合、第3紐検知処理部25cは、紐検知エリアE2から紐を検知する。
【0046】
ここで、図10を参照して、第3紐検知処理部25cにより実行される処理について具体的に説明する。なお、図10では、紐検知ブロックとして検知されたブロックに「1」を付すものとする。
【0047】
まず、第1紐検知処理部25aによる処理の結果として、紐検知対象画像が多数のブロックに区切られ、かつ、紐検知ブロックが図10(a)のように検知され、第2紐検知処理部25bによる処理の結果として、線状物体が検知された場合を想定する。この場合、第3紐検知処理部25cは、いずれのブロック行においても、連続的に並ぶ紐検知ブロックの数が「3」(第2閾値)を超える部分はないと判定し、紐検知エリアE2から紐を検知する。
【0048】
なお、ここでは詳細な説明を省略するが、図10(b)~(e)の場合においても同様に、第3紐検知処理部25cは、いずれのブロック行においても、連続的に並ぶ紐検知ブロックの数が「3」(第2閾値)を超える部分はないと判定し、紐検知エリアE2から紐を検知する。
【0049】
一方、第1紐検知処理部25aによる処理の結果として、紐検知対象画像が多数のブロックに区切られ、かつ、紐検知ブロックが図10(f)のように検知され、第2紐検知処理部25bによる処理の結果として、線状物体が検知された場合を想定する。この場合、第3紐検知処理部25cは、破線で囲まれた2つのブロック行(第4ブロック行、第5ブロック行)において、連続的に並ぶ紐検知ブロックの数が「3」(第2閾値)を超える部分があると判定し、第2紐検知処理部25bにより検知された線状物体が紐でないことを検知する。
【0050】
次に、図11のフローチャートを参照して、本実施形態に係るエレベータシステムの動作の一例について説明する。
紐検知期間になると(ステップS1のYes)、制御部23は、エレベータ制御装置30から得られる状態信号に基づいて、かごドア13が全閉状態か否かを判定する(ステップS2)。
【0051】
上記したステップS2の処理において、かごドア13が全閉状態でないと判定された場合(ステップS2のNo)、制御部23の画像前処理部24は、カメラ12の撮影画像に対して各種前処理を実行する(ステップS3)。なお、ステップS3のより詳しい説明は図12を用いて後述するため、ここではその詳しい説明を省略する。
【0052】
その後、制御部23の検知処理部25は、画像前処理部24により各種前処理が施された画像を用いて紐検知処理を実行し(ステップS4)、ここでの一連の動作を終了させる。なお、ステップS4のより詳しい説明は図13を用いて後述するため、ここではその詳しい説明を省略する。
【0053】
図12は、図11に示すステップS3の処理をより詳しく説明するためのフローチャートである。
まず、画像前処理部24の紐検知エリア抽出部24aは、当該紐検知期間(例えば、1秒)の間にカメラ12により撮影された複数の画像から、紐検知エリアE2部分をそれぞれ抽出して、複数の紐検知エリア画像を生成する(ステップS11)。
【0054】
続いて、画像前処理部24のノイズ平均化処理部24bは、紐検知エリア抽出部24aにより生成された複数の紐検知エリア画像を用いてノイズ平均化処理を実行し、1つの平均画像iaveを生成する(ステップS12)。
【0055】
しかる後、画像前処理部24のヒストグラム平坦化処理部24cは、ノイズ平均化処理部24bにより生成された平均画像iaveに対して、適応的ヒストグラム平坦化処理を実行して、1つの紐検知対象画像を生成し(ステップS13)、ここでの一連の処理を終了させる。
【0056】
図13は、図11に示すステップS4の処理をより詳しく説明するためのフローチャートである。
まず、検知処理部25の第1紐検知処理部25aは、画像前処理部24のヒストグラム平坦化処理部24cにより生成された紐検知対象画像と、記憶部21に予め記憶された基準画像とを取得し、取得したこれら画像を、紐検知エリアE2に対して予め定められたサイズのブロックで区切る処理を実行する(つまり、図2に示した小さいサイズのブロックで区切る処理を実行する)(ステップS21)。
【0057】
続いて、第1紐検知処理部25aは、紐検知対象画像の各ブロックの輝度値と、基準画像の各ブロックの輝度値とを順に比較し、予め設定された第1閾値以上の輝度差を有するブロックを、紐検知ブロックとして検知する(ステップS22)。
【0058】
また、第1紐検知処理部25aは、上記したステップS22の処理において紐検知ブロックとして検知しなかったブロックのうち、任意の方向において、2つ以上の紐検知ブロックまたは紐検知ブロック群と接触するブロックを、疑問符ブロックとして検知する(ステップS23)。
【0059】
次に、検知処理部25の第2紐検知処理部25bは、上記したステップS22,S23の処理が実行された紐検知対象画像に基づいて、紐検知エリアE2に線状物体があるか否かを判定する。より詳しくは、第2紐検知処理部25bは、上記したステップS22,S23の処理が実行された紐検知対象画像の最上部から最下部に亘って、任意の方向に接触する紐検知ブロックまたは疑問符ブロックが連続的に並んでいるか否かを判定する(ステップS24)。
【0060】
上記したステップS24の処理において、紐検知対象画像の最上部から最下部に亘って、任意の方向に接触する紐検知ブロックまたは疑問符ブロックが連続的に並んでいないと判定された場合(ステップS24のNo)、第2紐検知処理部25bは、紐検知エリアE2に線状物体がないことを検知し(ステップS25)、ここでの一連の処理を終了させる。
【0061】
一方、上記したステップS24の処理において、紐検知対象画像の最上部から最下部に亘って、任意の方向に接触する紐検知ブロックまたは疑問符ブロックが連続的に並んでいると判定された場合(ステップS24のYes)、第2紐検知処理部25bは、紐検知エリアE2から線状物体を検知する。その後、第3紐検知処理部25cは、線状物体が検知された紐検知対象画像に基づいて、紐検知エリアE2に紐があるか否かを判定する。より詳しくは、第3紐検知処理部25cは、線状物体が検知された紐検知対象画像の各ブロック行毎に、連続的に並ぶ紐検知ブロックの数が予め設定された第2閾値を超える部分があるか否かを判定する(ステップS26)。
【0062】
上記したステップS26の処理において、少なくとも1つのブロック行において、上記した第2閾値を超える部分があると判定された場合(ステップS26のYes)、第3紐検知処理部25cは、第2紐検知処理部25bにより検知された線状物体が紐でないことを検知し(ステップS25)、ここでの一連の処理を終了させる。
【0063】
一方、上記したステップS26の処理において、いずれのブロック行においても、上記した第2閾値を超える部分がないと判定された場合(ステップS26のNo)、第3紐検知処理部25cは、第2紐検知処理部25bにより検知された線状物体は紐であると判定し、紐検知エリアE2から紐を検知し(ステップS27)、ここでの一連の処理を終了させる。
【0064】
なお、上記したステップS27の処理の後に、第3紐検知処理部25cは、紐検知エリアE2から紐を検知した旨の検知結果をエレベータ制御装置30に出力する。エレベータ制御装置30は、第3紐検知処理部25c(検知処理部25)から紐を検知した旨の検知結果を受けると、かごドア13の戸閉を禁止し、かごドア13の全戸開を維持する、あるいは、かごドア13を反転戸開させる。
【0065】
以上説明した本実施形態に係るエレベータシステムにおいては、紐検知エリアE2に対応する紐検知対象画像をマトリクス状の多数のブロックに区切り、各ブロックの輝度値の変化に着目して紐検知ブロックを検知し、当該紐検知ブロックが当該紐検知対象画像の最上部から最下部に亘って連続的に並ぶか否かと、当該紐検知ブロックの行方向における連続性とに基づいて、紐検知エリアE2から紐を検知する。このように、本実施形態に係るエレベータシステムにおいては、各ブロックの輝度値の変化に着目するだけでなく、そこから得られる紐検知ブロックの各種方向における連続性も考慮して紐を検知することができるため、例えば輪郭抽出により紐を検知する場合に比べて、正確に紐を検知することが可能であり、ペットに繋がれたリーシュコードがドアに挟まれてしまうような事故の発生をより確実に抑止することが可能である。
【0066】
また、本実施形態に係るエレベータシステムにおいては、紐検知ブロックとして検知されなかったブロックの一部を疑問符ブロックとして検知し、当該疑問符ブロックも紐検知処理に使用する。これによれば、例えば外光等の影響により、本来であれば紐検知ブロックとして検知されるべきブロックを紐検知ブロックとして検知できないような場合であっても、当該ブロックを疑問符ブロックとして検知できる可能性があり、紐検知エリアE2から紐を検知できる可能性を向上させ、上記した事故の発生をより確実に抑止することが可能である。
【0067】
以上説明した一実施形態によれば、紐のような細い物体を正確に検知することが可能なエレベータシステムを提供することが可能である。
【0068】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0069】
11…乗りかご、11a…幕板、12…カメラ、13…かごドア、14…乗場ドア、15…乗場、16…シル、20…画像処理装置、21…記憶部、22…制御部、23…検知エリア設定部、24…画像前処理部、24a…紐検知エリア抽出部、24b…ノイズ平均化処理部、24c…ヒストグラム平坦化処理部、25…検知処理部、25a…第1紐検知処理部、25b…第2紐検知処理部、25c…第3紐検知処理部、30…エレベータ制御装置、31…戸開閉制御部、32…通知部、E1…利用者検知エリア、E2…紐検知エリア。
【要約】
【課題】紐のような細い物体を正確に検知すること。
【解決手段】一実施形態に係るエレベータシステムは、カメラの撮影画像に基づき紐検知エリアに対応する紐検知対象画像を生成する生成手段と、紐検知対象画像と、紐検知対象画像に対応する基準画像とを、マトリクス状の多数のブロックに区切り、紐検知対象画像の各ブロックの輝度値と基準画像の各ブロックの輝度値とを比較し、予め設定された第1閾値以上の輝度差を有するブロックを第1検知ブロックとして検知する第1検知手段と、第1検知ブロックが紐検知対象画像の最上部から最下部に亘って連続的に並ぶ場合に、紐検知エリアから線状物体を検知する第2検知手段と、線状物体が検知された紐検知対象画像の各ブロック行において、連続的に並ぶ第1検知ブロックの数が予め設定された第2閾値を超える部分がない場合に、紐検知エリアから紐を検知する第3検知手段と、を備える。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13