(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】配線形成方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/11 20060101AFI20231002BHJP
H05K 3/40 20060101ALI20231002BHJP
【FI】
H05K1/11 B
H05K1/11 N
H05K3/40 B
H05K3/40 K
(21)【出願番号】P 2022504760
(86)(22)【出願日】2020-03-02
(86)【国際出願番号】 JP2020008621
(87)【国際公開番号】W WO2021176499
(87)【国際公開日】2021-09-10
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】榊原 亮
(72)【発明者】
【氏名】富永 亮二郎
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-071417(JP,A)
【文献】特表2017-516295(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/11
H05K 3/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の高さを有する台座部材を樹脂材料により形成する台座部材形成工程と、
金属粒子を含む流体によって
、配線の一部が底上げされた状態となるように、前記台座部材が形成されていない位置から前記台座部材の表面
まで繋がる第1配線を形成する第1配線形成工程と、
前記台座部材及び前記第1配線の一部が露出するように前記台座部材及び前記第1配線を覆う樹脂層であって、前記台座部材の位置に合せて形成された傾斜面を有する樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、
金属粒子を含む流体によって
、前記傾斜面の
一部に
前記樹脂層の上面まで繋がる第2配線を形成し、且つ前記台座部材の上の前記第1配線と接続させるように前記第2配線を形成する第2配線形成工程と、
を含
み、
前記樹脂層形成工程において、
前記樹脂層を貫通し、前記傾斜面を内壁に有するビア穴が前記樹脂層に形成され、
前記樹脂層の上面は、
前記台座部材の表面よりも高い位置にあり、
前記樹脂層の前記傾斜面は、
下方から上方へ向かうに従って前記台座部材から離れる方向に傾斜し、
前記台座部材は、
前記ビア穴に合わせた形状をなす、配線形成方法。
【請求項2】
前記第2配線形成工程において、
前記第2配線を、前記第1配線の上部から、前記傾斜面に沿って前記樹脂層の上面まで繋がるように形成する、請求項1に記載の配線形成方法。
【請求項3】
前記台座部材は、
前記ビア穴を平面視した場合に、前記ビア穴の底部側に形成された開口の大きさ以上の大きさで形成される、請求
項1又は請求項2に記載の配線形成方法。
【請求項4】
前記台座部材形成工程において、
一方向に長い前記台座部材を形成し、
前記第1配線形成工程において、
前記台座部材の長手方向において並んで配置される複数の前記第1配線を形成し、
前記樹脂層形成工程において、
前記台座部材の長手方向に長い前記傾斜面を形成し、
前記第2配線形成工程において、
前記台座部材の上に配設された複数の前記第1配線の各々と接続させる複数の前記第2配線を形成する、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の配線形成方法。
【請求項5】
前記台座部材形成工程において、
複数の前記第1配線の各々における前記第2配線側の端部が同一の高さとなるように、前記台座部材の表面を形成する、請求項4に記載の配線形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、3次元積層造形により、金属粒子を含む流体によって配線を形成する配線形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、下記特許文献1に記載されているように、金属粒子を含む流体を吐出し、その吐出した流体を焼成することで、電子部品などを接続する回路を形成する技術が開発されている。特許文献1の配線形成方法では、金属粒子を含む流体によって第1配線を形成し、第1配線の上に紫外線硬化樹脂によって樹脂層を形成する。樹脂層にはビア穴が形成される。ビア穴は、内壁が傾斜しており、傾斜面の下端が第1配線の上面に連続している。樹脂層の上には、ビア穴の傾斜面を介して第1配線と接続される第2配線が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1に記載の技術によれば、3次元積層造形により、樹脂層の下に配設された第1配線と、樹脂層の上面に配設された第2配線とをビア穴の傾斜面に形成された配線により接続することができる。ここで、例えば、インクジェット方式により金属粒子を含む流体をビア穴の傾斜面に吐出した場合、傾斜面の角度が急であると、吐出した流体が傾斜面に沿って流れ落ちてしまう可能性がある。その結果、配線の厚みが局所的に減少する、あるいは断線が発生する虞があり、接続の信頼性が低下することが問題となる。
【0005】
本開示は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、3次元積層造形により傾斜面に配線を形成する場合に、配線の接続の信頼性を向上できる配線形成方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は、所所定の高さを有する台座部材を樹脂材料により形成する台座部材形成工程と、金属粒子を含む流体によって、配線の一部が底上げされた状態となるように、前記台座部材が形成されていない位置から前記台座部材の表面まで繋がる第1配線を形成する第1配線形成工程と、前記台座部材及び前記第1配線の一部が露出するように前記台座部材及び前記第1配線を覆う樹脂層であって、前記台座部材の位置に合せて形成された傾斜面を有する樹脂層を形成する樹脂層形成工程と、金属粒子を含む流体によって、前記傾斜面の一部に前記樹脂層の上面まで繋がる第2配線を形成し、且つ前記台座部材の上の前記第1配線と接続させるように前記第2配線を形成する第2配線形成工程と、を含み、前記樹脂層形成工程において、前記樹脂層を貫通し、前記傾斜面を内壁に有するビア穴が前記樹脂層に形成され、前記樹脂層の上面は、前記台座部材の表面よりも高い位置にあり、前記樹脂層の前記傾斜面は、下方から上方へ向かうに従って前記台座部材から離れる方向に傾斜し、前記台座部材は、前記ビア穴に合わせた形状をなす、配線形成方法を開示する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の配線形成方法によれば、台座部材の上に第1配線を形成する。傾斜面を台座部材の位置に合せて形成し、傾斜面の上に第2配線を形成する。第2配線と台座部材の上の第1配線を接続する。これにより、台座部材の上に第1配線を形成することで、所定の高さまで第1配線を底上げして配設することができる。第1配線をより高い位置まで持って行くことで、傾斜面の角度を緩やかにして第2配線を接続することができる。第2配線を形成する際に、金属粒子を含む流体が傾斜面で流れ落ちることを抑制でき、第2配線をより均一な厚さで形成し断線の発生を抑制することができる。第2配線の接続の信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図4】配線の形成工程を説明するための模式図である。
【
図5】配線の形成工程を説明するための模式図である。
【
図6】配線の形成工程を説明するための模式図である。
【
図7】配線の形成工程を説明するための模式図である。
【
図8】配線の形成工程を説明するための模式図である。
【
図11】別例における、1つのビア穴で複数組の配線を接続した状態を示す図である。
【
図12】複数の配線を形成した台座部材の表面を示す模式図である。
【
図13】別例における、1つのビア穴で複数組の配線を接続した状態を示す図である。
【
図14】電子部品を実装した状態を平面視した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(電子デバイス製造装置の構成)
以下、本開示の好適な実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に電子デバイス製造装置10を示す。電子デバイス製造装置10は、搬送装置20と、第1造形ユニット22と、第2造形ユニット24と、装着ユニット26と、第3造形ユニット29と、制御装置27(
図2、
図3参照)を備える。それら搬送装置20、第1造形ユニット22、第2造形ユニット24、装着ユニット26、第3造形ユニット29は、電子デバイス製造装置10のベース28の上に配置されている。ベース28は、平面視において概して長方形状をなしている。以下の説明では、ベース28の長手方向をX軸方向、ベース28の短手方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向の両方に直交する方向をZ軸方向と称して説明する。
【0010】
搬送装置20は、X軸スライド機構30と、Y軸スライド機構32とを備えている。そのX軸スライド機構30は、X軸スライドレール34と、X軸スライダ36とを有している。X軸スライドレール34は、X軸方向に延びるように、ベース28の上に配設されている。X軸スライダ36は、X軸スライドレール34によって、X軸方向にスライド可能に保持されている。さらに、X軸スライド機構30は、電磁モータ38(
図2参照)を有しており、電磁モータ38の駆動により、X軸スライダ36をX軸方向の任意の位置に移動させる。また、Y軸スライド機構32は、Y軸スライドレール50と、ステージ52とを有している。Y軸スライドレール50は、Y軸方向に延びるように、ベース28の上に配設されている。Y軸スライドレール50の一端部は、X軸スライダ36に連結されている。そのため、Y軸スライドレール50は、X軸方向に移動可能とされている。ステージ52は、Y軸スライドレール50によって、Y軸方向にスライド可能に保持されている。Y軸スライド機構32は、電磁モータ56(
図2参照)を有しており、電磁モータ56の駆動により、ステージ52をY軸方向の任意の位置に移動させる。これにより、ステージ52は、X軸スライド機構30及びY軸スライド機構32の駆動により、ベース28上の任意の位置に移動する。
【0011】
ステージ52は、基台60と、保持装置62と、昇降装置64とを有している。基台60は、平板状に形成され、上面に基材70が載置される。保持装置62は、X軸方向における基台60の両側部に設けられている。保持装置62は、基台60に載置された基材70のX軸方向の両縁部を挟むことで、基台60に対して基材70を固定的に保持する。また、昇降装置64は、基台60の下方に配設されており、基台60をZ軸方向で昇降させる。
【0012】
第1造形ユニット22は、ステージ52の基台60に載置された基材70の上に配線を造形するユニットであり、第1印刷部72と、焼成部74とを有している。第1印刷部72は、インクジェットヘッド76(
図2参照)を有しており、基台60に載置された基材70の上に、導電性インクを線状に吐出する。導電性インクは、本開示の金属粒子を含む流体の一例である。導電性インクは、例えば、主成分としてナノメートルサイズの金属(銀など)の微粒子を溶媒中に分散させたものを含み、熱により焼成されることで硬化する。導電性インクは、例えば、数百ナノメートル以下のサイズの金属ナノ粒子を含んでいる。金属ナノ粒子の表面は、例えば、分散剤によりコーティングされており、溶媒中での凝集が抑制されている。
【0013】
尚、インクジェットヘッド76は、例えば、圧電素子を用いたピエゾ方式によって複数のノズルから導電性インクを吐出する。また、導電性インク(金属ナノ粒子を含む流体)を吐出する装置としては、複数のノズルを備えるインクジェットヘッドに限らず、例えば、1つのノズルを備えたディスペンサーでも良い。また、導電性インクに含まれる金属ナノ粒子の種類は、銀に限らず、銅、金等でも良い。また、導電性インクに含まれる金属ナノ粒子の種類数は、1種類に限らず、複数種類でも良い。
【0014】
焼成部74は、照射装置78(
図2参照)を有している。照射装置78は、例えば、基材70の上に吐出された導電性インクを加熱する赤外線ヒータを備えている。導電性インクは、赤外線ヒータから熱を付与されることで焼成され、配線を形成する。ここでいう導電性インクの焼成とは、例えば、エネルギーを付与することによって、溶媒の気化や金属ナノ粒子の保護膜、つまり、分散剤の分解等が行われ、金属ナノ粒子が接触又は融着することで、導電率が高くなる現象である。そして、導電性インクを焼成することで、配線を形成することができる。尚、導電性インクを加熱する装置は、赤外線ヒータに限らない。例えば、電子デバイス製造装置10は、導電性インクを加熱する装置として、赤外線ランプ、レーザ光を導電性インクに照射するレーザ照射装置、あるいは導電性インクを吐出された基材70を炉内に入れて加熱する電気炉を備えても良い。
【0015】
また、第2造形ユニット24は、基台60に載置された基材70の上に樹脂層を造形するユニットであり、第2印刷部84と、硬化部86とを有している。第2印刷部84は、インクジェットヘッド88(
図2参照)を有しており、基台60に載置された基材70の上に紫外線硬化樹脂を吐出する。紫外線硬化樹脂は、紫外線の照射により硬化する樹脂である。尚、インクジェットヘッド88が紫外線硬化樹脂を吐出する方式は、例えば、圧電素子を用いたピエゾ方式でもよく、樹脂を加熱して気泡を発生させ複数のノズルから吐出するサーマル方式でも良い。
【0016】
硬化部86は、平坦化装置90(
図2参照)と、照射装置92(
図2参照)とを有している。平坦化装置90は、インクジェットヘッド88によって基材70の上に吐出された紫外線硬化樹脂の上面を平坦化するものである。平坦化装置90は、例えば、紫外線硬化樹脂の表面を均しながら余剰分の樹脂を、ローラもしくはブレードによって掻き取ることで、紫外線硬化樹脂の厚みを均一にさせる。また、照射装置92は、光源として水銀ランプもしくはLEDを備えており、基材70の上に吐出された紫外線硬化樹脂に紫外線を照射する。これにより、基材70の上に吐出された紫外線硬化樹脂が硬化し、樹脂層を形成することができる。
【0017】
また、装着ユニット26は、基台60に載置された基材70の上に、電子部品を配置するユニットであり、供給部100と、装着部102とを有している。供給部100は、テーピング化された電子部品を1つずつ送り出すテープフィーダ110(
図2参照)を複数有しており、各供給位置において、電子部品を供給する。電子部品は、例えば、温度センサ等のセンサ素子である。尚、電子部品の供給は、テープフィーダ110による供給に限らず、トレイによる供給でも良い。
【0018】
装着部102は、装着ヘッド112(
図2参照)と、移動装置114(
図2参照)とを有している。装着ヘッド112は、電子部品を吸着保持するための吸着ノズルを有している。吸着ノズルは、正負圧供給装置(図示省略)から負圧が供給されることで、エアの吸引により電子部品を吸着保持する。そして、正負圧供給装置から僅かな正圧が供給されることで、電子部品を離脱する。また、移動装置114は、テープフィーダ110の供給位置と、基台60に載置された基材70との間で、装着ヘッド112を移動させる。これにより、装着部102は、吸着ノズルにより電子部品を保持し、吸着ノズルによって保持した電子部品を、基材70の上に配置する。
【0019】
また、第3造形ユニット29は、基台60に載置された基材70の上に、導電性ペーストを塗布するユニットである。導電性ペーストは、例えば、マイクロサイズの金属粒子(マイクロフィラなど)を、樹脂製の接着剤に含めた粘性流体である。マイクロサイズの金属マイクロ粒子は、例えば、フレーク状態の金属(銀など)である。金属マイクロ粒子は、銀に限らず、金、銅などや複数種類の金属でも良い。接着剤は、例えば、エポキシ系の樹脂を主成分として含んでいる。導電性ペーストは、加熱により硬化し、例えば、配線に接続される接続端子の形成に使用される。接続端子とは、例えば、電子部品の部品端子に接続するバンプ、外部機器などに接続する外部電極などである。
【0020】
また、第3造形ユニット29は、導電性ペーストを吐出(塗布)する装置としてディスペンサー130を有する。尚、導電性ペーストを塗布する装置は、ディスペンサーに限らず、スクリーン印刷装置やグラビア印刷装置でも良い。また、本開示における「塗布」とは、流体をノズルなどから吐出する動作や、スクリーン印刷やグラビア印刷によって対象物の上に流体を付着させる動作を含む概念である。ディスペンサー130は、基材70や樹脂層の上に導電性ペーストを吐出する。吐出された導電性ペーストは、例えば、第1造形ユニット22の焼成部74によって加熱され硬化することで接続端子(外部電極など)を形成する。
【0021】
ここで、導電性ペーストは、例えば、数十マイクロメートル以下のサイズの金属マイクロ粒子を含んでいる。導電性ペーストは、加熱されることで接着剤(樹脂など)が硬化し、フレーク状の金属同士が接触した状態で硬化する。上記したように導電性インクは、例えば、加熱によって金属ナノ粒子同士が融着することで一体化した金属となり、金属ナノ粒子同士が接触しているだけの状態に比べて導電率が高くなる。一方、導電性ペーストは、接着剤の硬化によってマイクロサイズの金属マイクロ粒子を互いに接触させて硬化する。このため、導電性インクを硬化して形成した配線の抵抗(電気抵抗率)は、例えば、数~数十マイクロΩ・cmと極めて小さく、導電性ペーストを硬化した配線の抵抗(数十~数千マイクロΩ・cm)に比べて小さい。従って、導電性インクは、低抵抗の回路配線など、低い抵抗値を要求される造形物の造形に適している。
【0022】
一方で、導電性ペーストは、硬化時に接着剤を硬化させることで、他の部材との接着性を高めることができ、導電性インクに比べて他の部材との密着性に優れている。ここでいう他の部材とは、導電性ペーストを吐出等して付着させる部材であり、例えば、樹脂層、配線、電子部品の部品端子などである。従って、導電性ペーストは、電子部品を樹脂層に固定する接続端子など、機械的強度(引っ張り強度など)が要求される造形物の造形に適している。本実施形態の電子デバイス製造装置10では、このような導電性インクと導電性ペーストを使い分けて、特性を活かすことで、電気的性質及び機械的性質を向上した電子回路を製造できる。
【0023】
次に、電子デバイス製造装置10の制御装置27の構成について説明する。
図2及び
図3に示すように、制御装置27は、コントローラ120、複数の駆動回路122、記憶装置124を備えている。複数の駆動回路122は、上記電磁モータ38,56、保持装置62、昇降装置64、インクジェットヘッド76、照射装置78、インクジェットヘッド88、平坦化装置90、照射装置92、テープフィーダ110、装着ヘッド112、移動装置114に接続されている(
図2参照)。さらに、駆動回路122は、第3造形ユニット29に接続されている(
図3参照)。
【0024】
コントローラ120は、CPU,ROM,RAM等を備え、コンピュータを主体とするものであり、複数の駆動回路122に接続されている。記憶装置124は、RAM、ROM、ハードディスク等を備えており、電子デバイス製造装置10の制御を行う制御プログラム126が記憶されている。コントローラ120は、制御プログラム126をCPUで実行することで、搬送装置20、第1造形ユニット22、第2造形ユニット24、装着ユニット26、第3造形ユニット29等の動作を制御可能となっている。以下の説明では、コントローラ120が、制御プログラム126を実行して各装置を制御することを、単に「装置が」と記載する場合がある。例えば、「コントローラ120がステージ52を移動させる」とは、「コントローラ120が、制御プログラム126を実行し、駆動回路122を介して搬送装置20の動作を制御して、搬送装置20の動作によってステージ52を移動させる」ことを意味している。
【0025】
(電子デバイス製造装置の動作)
本実施形態の電子デバイス製造装置10は、上記した構成によって、配線、接続端子及び電子部品を含んだ電子デバイスを造形物として製造する。以下の説明では、電子部品を実装した回路基板を電子デバイス(造形物)として製造する場合について説明する。尚、以下に説明する造形物の構造、製造手順等は、一例である。また、例えば、記憶装置124の制御プログラム126には、完成時の回路基板をスライスした各層の三次元のデータが設定されている。コントローラ120は、制御プログラム126のデータに基づいて第1造形ユニット22等を制御し、紫外線硬化樹脂等を吐出、硬化等させて、回路基板を形成する。
【0026】
まず、コントローラ120は、ステージ52の基台60に基材70がセットされると、ステージ52を移動させつつ、基材70の上に電子デバイスの造形を行なう。
図4に示すように、基材70の上面には、例えば、熱によって剥離可能な剥離フィルム150が貼り付けられており、その剥離フィルム150の上に造形物(電子デバイスなど)が形成される。剥離フィルム150は、加熱されることで、造形物とともに基材70から剥離される。尚、基材70と造形物を分離する方法は、剥離フィルム150を用いる方法に限らない。例えば、基材70と造形物の間に、熱によって溶ける部材(サポート材など)を配置し、溶かして分離しても良い。また、剥離フィルム150などの分離する部材を用いずに、基材70の上に直接造形しても良い。
【0027】
コントローラ120は、基材70をセットされると、
図4に示すように、剥離フィルム150の上に台座部材149を形成する。コントローラ120は、後述する樹脂層153(
図6参照)のビア穴155の位置に合せて台座部材149を形成する。この台座部材149やビア穴155の位置は、例えば、記憶装置124に記憶された制御プログラム126のデータに設定されている。コントローラ120は、第2造形ユニット24のインクジェットヘッド88から紫外線硬化樹脂を剥離フィルム150の上に吐出する処理と、吐出した紫外線硬化樹脂へ硬化部86の照射装置92から紫外線を照射する処理を繰り返し実行することで、台座部材149を形成する。
【0028】
具体的には、コントローラ120は、ステージ52を、第2造形ユニット24の下方に移動させ、第2印刷部84を制御して、インクジェットヘッド88から紫外線硬化樹脂を剥離フィルム150の上に薄膜状に吐出する。コントローラ120は、インクジェットヘッド88を制御して、ビア穴155(
図6参照)の底部に対応する位置に、紫外線硬化樹脂を吐出させる。硬化部86は、照射装置92により、薄膜状の紫外線硬化樹脂に紫外線を照射する。これにより、剥離フィルム150の上に、薄膜状の台座部材が形成される。尚、コントローラ120は、薄膜状に吐出した紫外線硬化樹脂を、平坦化装置90により平坦化する処理を適宜実行しても良い。コントローラ120は、ビア穴155の底部の位置に、紫外線硬化樹脂の吐出位置を調整し、紫外線硬化樹脂の吐出、紫外線の照射を、繰り返し実行することで、台座部材149を形成する。
【0029】
次に、コントローラ120は、第1造形ユニット22の下方に、ステージ52を移動させる。コントローラ120は、
図5に示すように、第1印刷部72を制御してインクジェットヘッド76によって台座部材149の表面及び剥離フィルム150の上に導電性インクを吐出する。インクジェットヘッド76は、配線パターンに応じて線状に導電性インクを吐出する。この配線パターンは、例えば、製造したい造形物に応じて制御プログラム126に設定されている。
図5に示す配線パターンは、例えば、剥離フィルム150の所定の位置(
図5では右端の位置)から台座部材149の上面まで接続されるパターンである。本実施形態のコントローラ120は、
図7に示すように、1つのビア穴155を通じて、下層の配線151と、上層の配線159を接続する。このため、コントローラ120は、インクジェットヘッド76を制御して、例えば、下層の配線151に対応した位置に導電性インクを吐出する。
【0030】
次に、コントローラ120は、焼成部74を制御して、台座部材149や剥離フィルム150の上に吐出した導電性インクを、照射装置78の赤外線ヒータによって加熱する。これにより、導電性インクを焼成することで、
図5に示すように、台座部材149及び剥離フィルム150の上に配線151を形成することができる。
【0031】
図9は、後述するビア穴155を有する樹脂層153を平面視した状態を示している。尚、
図9は、後述する電子部品163(
図8参照)の図示を省略している。また、
図9は、下層の配線151を破線で示している。台座部材149は、例えば、所定の高さH1(
図4参照)で形成され、平面視した場合に円形をなす、薄い板状に形成されている(
図9参照)。台座部材149の角は、導電性インクの粘性に応じた湾曲した形状をなしている。
図5に示すように、配線151は、剥離フィルム150の上から台座部材149の上まで連続して形成される。これにより、剥離フィルム150の上と、台座部材149の上(高さH1の位置)とを配線151により導通させることができる。換言すれば、配線151の一部は、高さH1だけ底上げされた状態となる。ここで、例えば、インクジェット方式により導電性インクを台座部材149の表面や曲面に吐出した場合、表面や曲面の角度が急であると、吐出した導電性インクが流れ落ちてしまう可能性がある。その結果、配線151の厚みが局所的に減少する、あるいは断線が発生する虞がある。このため、台座部材149の高さH1や、台座部材149の曲面と基材70とのなす角度θ1(
図4参照)は、例えば、配線151を形成する導電性インクが極力流れ落ちない値、あるいは導電性インクを積層して導通を取れる値を設定することが好ましい。
【0032】
また、台座部材149の上には、配線151,159や、後述する樹脂層153を形成する(
図7参照)。このため、台座部材149の高さH1は、配線151,159や樹脂層153を形成する際に、インクジェットヘッド76,88や平坦化装置90のローラ等と干渉しない高さであることが好ましい。
【0033】
次に、コントローラ120は、
図6に示すように、配線151や台座部材149の上を覆うように、剥離フィルム150の上に樹脂層153を形成する。コントローラ120は、樹脂層153を形成する際に、台座部材149及び配線151の一部が露出するビア穴155を樹脂層153に形成する(
図9参照)。コントローラ120は、第2造形ユニット24のインクジェットヘッド88から紫外線硬化樹脂を吐出する処理と、吐出した紫外線硬化樹脂へ硬化部86の照射装置92から紫外線を照射する処理とを繰り返し実行することで、ビア穴155を有する樹脂層153を形成する。
【0034】
具体的には、コントローラ120は、ステージ52を、第2造形ユニット24の下方に移動させ、第2印刷部84を制御して、配線151や台座部材149を覆うようにインクジェットヘッド88から紫外線硬化樹脂を剥離フィルム150の上に薄膜状に吐出する。コントローラ120は、インクジェットヘッド88を制御して、台座部材149及び配線151の一部を露出するビア穴155を除いた箇所に、紫外線硬化樹脂を吐出させる。つまり、インクジェットヘッド88は、台座部材149及び配線151の一部をビア穴155から露出させ、台座部材149及び配線151の他の部分を覆うように、剥離フィルム150の上に紫外線硬化樹脂を薄膜状に吐出する。コントローラ120は、薄膜状に紫外線硬化樹脂を吐出した後、膜厚が均一となるように平坦化装置90により平坦を実行しても良い。そして、硬化部86は、照射装置92により、薄膜状の紫外線硬化樹脂に紫外線を照射する。これにより、剥離フィルム150の上に薄膜状の樹脂層が形成される。
【0035】
コントローラ120は、台座部材149及び配線151の一部を露出させるように、紫外線硬化樹脂の吐出位置を調整し、紫外線硬化樹脂の吐出、平坦化、紫外線の照射を、適宜繰り返し実行することで、ビア穴155を有する樹脂層153を形成する。
図6に示すように、コントローラ120は、内壁が傾斜したすり鉢状のビア穴155を形成する。ビア穴155の内壁には、上側の上側開口155Aから下側(配線151側)の下側開口155Bに向かうに従って、内径を小さくするように傾いた傾斜面157が形成される。下層の配線151及び台座部材149は、ビア穴155の下側開口155Bから上面を露出させた状態となる(
図9参照)。
【0036】
図9に示すように、台座部材149は、樹脂層153(基板)を平面視した場合に、例えば、円形の下側開口155B(ビア穴155)よりも長い内径で形成された円板形状をなしている。このように、台座部材149は、例えば、ビア穴155に合わせた形状をなし、ビア穴155の内径よりも長い(外径が大きい)形状で形成される。
【0037】
従って、本実施形態の台座部材149は、ビア穴155を平面視した場合に、ビア穴155の底部側に形成された下側開口155Bの大きさ以上の大きさで形成されている。これによれば、ビア穴155の下側開口155Bよりも大きい大きさで台座部材149を形成する。平面視においてより広がった台座部材149を形成することで、台座部材149の高さH1を維持しつつ、台座部材149の斜面の傾きを小さく(なだらかに)することができる。導電性インクが流れ落ちることを抑制でき、台座部材149の上に形成する配線151の厚みが局所的に減少する、あるいは断線が発生することを抑制できる。
【0038】
次に、コントローラ120は、樹脂層153を形成すると、
図7に示すように、ビア穴155の傾斜面157の一部に、樹脂層153の上面153Aまで引き出される上層の配線159を形成する。コントローラ120は、ビア穴155内で配線151に配線159を接続する。詳述すると、コントローラ120は、第1印刷部72を制御して、インクジェットヘッド76によって、ビア穴155の底部や傾斜面157に、導電性インクを線状に吐出する。コントローラ120は、ビア穴155内の配線151の位置に合わせて、導電性インクを吐出する(
図9参照)。導電性インクは、ビア穴155内で露出する配線151から、傾斜面157を経由して、樹脂層153の上面153Aに至るまで吐出される。
【0039】
尚、コントローラ120は、上層の配線159を形成する前に、配線151の上の余分な樹脂を除去しても良い。樹脂層153の造形において、余分な紫外線硬化樹脂が下側開口155Bから露出した配線151の上に付着する虞がある。このため、コントローラ120は、例えば、ビア穴155の下側開口155Bから露出する配線151に向かってレーザなどを照射し配線151の上の余分な樹脂の残滓を除去しても良い。これにより、配線151と配線159との接続部分における抵抗を減らすことができる。
【0040】
コントローラ120は、焼成部74を制御し、配線151の上部から樹脂層153の上面153Aに至るまで吐出された導電性インクに、照射装置78の赤外線ヒータから熱を加える。これにより、導電性インクを焼成し、下層の配線151と電気的に接続された上層の配線159を形成できる。樹脂層153に形成された下層の各配線パターンと上層の各配線パターンを導通させることができる(
図9参照)。尚、ビア穴155の傾斜面157の傾斜角度θ2(
図7参照)は、例えば、25度以下である。傾斜面157の基材70と平行な方向に沿った長さは、例えば、数百μmである。また、樹脂層153の厚さは、例えば、20~40μmである。
【0041】
ここで、
図10は、比較例の配線151,159及び樹脂層153の断面を示している。
図10の回路基板は、下層の配線151の下には、台座部材149が形成されていない。上記した配線151と同様に、配線159を形成する際に、導電性インクをビア穴155の傾斜面157に吐出した場合、傾斜面157の傾斜角度θ2が急であると、吐出した導電性インクが傾斜面157に沿って流れ落ちてしまう可能性がある。その結果、配線159の厚みが局所的に減少する、あるいは断線が発生する虞があり、接続の信頼性が低下する。また、本実施形態のコントローラ120は、
図6の製造工程(樹脂層形成工程の一例)において、樹脂層153を貫通し、傾斜面157を内壁に有するビア穴155を樹脂層153に形成する。このような傾斜面157を有するビア穴155において、導電性インクが傾斜面157から流れ落ちることを抑制するために傾斜角度θ2を小さくすると、樹脂層153の厚みが一定であれば、ビア穴155の上側開口155Aの直径L1は、傾斜角度θ2を小さくするのに反比例して長くなってしまう。樹脂層153におけるビア穴155の占有面積が増大し、配線151,159の配線密度が低下する。
【0042】
そこで、本実施形態の配線形成方法では、
図4及び
図5に示すように、まず、台座部材149を形成し、台座部材149の上に下層の配線151を形成する。そして、
図7に示すように、台座部材149で高く上げた下層の配線151と上層の配線159を傾斜面157の下方で接続している。これにより、台座部材149により配線151を底上げしたことで、直径L1が長くなること(上側開口155Aの拡大)を抑制しつつ、傾斜面157の傾斜角度θ2を小さくすることができる。換言すれば、直径L1を短くしてビア穴155を小さくできる。これにより、直径L1を小さくして配線151,159の配線密度を高めつつ、配線159の接続の信頼性を向上できる。
【0043】
また、
図8に示すように、コントローラ120は、例えば、配線159を形成した後、樹脂層153の上面153Aの配線159に電子部品163を実装する。具体的には、コントローラ120は、例えば、配線159を形成した後、第3造形ユニット29の下方にステージ52を移動させる。コントローラ120は、第3造形ユニット29を制御してディスペンサー130によって配線159の上に導電性ペーストを吐出する。
【0044】
コントローラ120は、導電性ペーストを吐出した後、装着ユニット26の下方へステージ52を移動させ、装着部102により電子部品163の装着を行なう。装着部102の装着ヘッド112は、電子部品163の部品端子165が導電性ペーストの位置となるように配置する。そして、コントローラ120は、第1造形ユニット22の焼成部74によって導電性ペーストを加熱して硬化することでバンプ167を形成する。電子部品163の部品端子165は、バンプ167を介して配線159に電気的に接続される。このようにして、本実施形態の電子デバイス製造装置10は、電子部品163を実装した回路基板(配線151,159を有する樹脂層153)を形成することができる。
【0045】
尚、上記した配線151,159を有する樹脂層153の製造工程、造形物の構造等は、一例である。例えば、コントローラ120は、上層の配線159を形成した後、ビア穴155を樹脂層(紫外線硬化樹脂)で埋めても良い。そして、コントローラ120は、埋めた樹脂層の上に、さらにビア穴を有する樹脂層を形成し、配線159と接続される上層の配線を形成しても良い。この場合、配線151と同様に、台座部材149を形成して配線159を底上げしても良い。即ち、多層の基板を形成する際に、各層に台座部材149を適宜形成しても良い。
【0046】
また、
図9に示す例では、1つのビア穴155で一組の配線151,159を接続したが、1つのビア穴155で複数組の配線151,159を接続しても良い。
図11は、1つのビア穴155で、複数組の配線151,159を接続した状態を示している。
図11に示すように、例えば、コントローラ120は、1つのビア穴155内で接続される配線151,159の組み合わせを、所定のピッチP1を間に設けて並んで形成する。コントローラ120は、例えば、ビア穴155を、穴径が一方向(
図11における左右方向)に長い穴(スリット形状)で形成する。ビア穴155は、平面視において、一方向に長い略長方形状の上側開口155A及び下側開口155Bを有している。台座部材149は、ビア穴155の形状に合わせて、平面視においてビア穴155の長手方向に長い略長方形の薄い板状に形成されている。そして、コントローラ120は、ビア穴155の長手方向に並んで、複数組の配線151,159を形成する。複数組の配線151,159のうち、中央の3組は、例えば、一方向(
図11における上下方向)に沿って一直線上に形成される。即ち、ビア穴155から下層の配線151を引き出す方向に沿って、その配線151に接続される上層の配線159を形成する。ビア穴155の傾斜面157には、ビア穴155の長手方向(
図11における左右方向)に沿って複数の配線159が並んで配置される。また、複数の下層の配線151は、横長の台座部材149の上に並んで配置される。
【0047】
ここで、
図9に示すように、1つのビア穴155に1組みの配線151,159だけを形成すると、ビア穴155の上側開口155Aの大きさに応じて、配線159の間のピッチP1(
図9参照)が増大する可能性がある。これに対し、
図11に示すように、1つのビア穴155内に複数組みの配線151,159をまとめて造形することで、配線151や配線159の間のピッチP1を極めて狭くすることができる。このピッチP1は、三次元積層造形の精度(インクジェット方式の解像度)にもよるが、例えば、数百μm以下まで狭くすることが可能となる。これにより、配線151,159の配線密度を極めて高くすることが可能となる。
【0048】
また、従来の基板製造においてビア穴やスルーホールの製造に用いられる無電解めっき法などでは、ビア穴の内壁の全面にめっきすることが一般的であり、
図11に示すような傾斜面157(内壁)の一部に配線を形成することは困難である。一方、本実施形態の電子デバイス製造装置10では、三次元積層造形を用いることで、傾斜面157の任意な位置に配線159を形成することができる。換言すれば、本実施形態の電子デバイス製造装置10は、この三次元積層造形の長所を活かして、1つのビア穴155内に複数組みの配線151,159を造形し、配線密度を高めることができる。
【0049】
従って、本実施形態のコントローラ120は、
図11に示すように、一方向に長い台座部材149を形成しても良い。また、コントローラ120は、台座部材149の長手方向において並んで配置される複数の配線151を形成し、台座部材149の長手方向に長い傾斜面157を有する樹脂層153を形成する。そして、コントローラ120は、台座部材149の上に配設された複数の配線151の各々と接続させる複数の配線159を形成しても良い。
【0050】
これによれば、樹脂層153に形成した1つの傾斜面157を通じて、複数の配線151,159を接続する。これにより、台座部材149を形成することで配線159の接続の信頼性を高めつつ、配線151,159の間のピッチP1を狭くし配線密度を高めることができる。
図9に示す1つの傾斜面157に配線151,159を1組だけ形成する場合に比べて、配線密度を極めて高くすることができる。引いては、回路基板などの造形物の小型化を図ることができる。
【0051】
また、複数の下層の配線151を形成する場合、コントローラ120は、台座部材149の形成において、複数の配線151の各々における配線159側の端部が同一の高さとなるように、台座部材149の表面を形成しても良い。
図12は、複数の配線151を形成した場合の台座部材149の表面149Aを示す模式図である。
図12に示すように、例えば、コントローラ120は、台座部材149の表面149Aを、平坦化装置90のローラなどで平坦化して平面を形成する。表面149Aは、例えば、台座部材149の下端から同一の高さH1(
図4参照)の平面で形成される。コントローラ120は、この同一高さの表面149Aに、所定のピッチで下層の配線151を形成する。そして、コントローラ120は、表面149A上の各配線151に接続されるように、上層の配線159(
図11参照)を形成しても良い。これによれば、複数の配線151の配線159側の端部が同一高さとなるように、台座部材149を同じ高さH1で形成する。複数組みの配線151,159を同一高さで接続する構造とすることで、インクジェットヘッド76を同一の高さにしたまま複数の配線151,159をまとめて造形することができる。複数組みの配線151,159を1つのビア穴155で接続する回路基板を製造する時間を短縮できる。
【0052】
また、
図11の左右方向における両端の配線151,159で図示すように、ビア穴155から下層の配線151を引き出す方向と、ビア穴155から上層の配線159を引き出す方向とは異なる方向でも良い。例えば、最も外側の一対の配線151を外側に広げるように配設しても良い。このように、1つのビア穴155から引き出す配線151,159の配設方向を変更することで、より自由な配線パターンを形成することができる。
【0053】
また、複数組みの配線151,159を配置するビア穴155は、一方向に沿って長い形状に限らない。
図13に示すように、例えば、位置のずれた複数のビア穴を互いに連結させて1つのビア穴155を形成しても良い。例えば、1組の配線151,159の接続位置に合せてビア穴を形成することが設計データとして制御プログラム126に設定されている場合、コントローラ120は、各ビア穴が所定距離以下に隣接しているか否かを判断しても良い。そして、コントローラ120は、所定距離以下に隣接していることに応じて、複数のビア穴を連結させても良い。ビア穴155の傾斜面157は、例えば、平面視において、櫛歯状の形状となる。これにより、複数のビア穴を重ねた分だけ配線151,159を近づけることができ、配線密度を高めることができる。
【0054】
また、
図14は、一例として、樹脂層153の上面153Aに電子部品163を実装した状態を平面視した図を示している。尚、
図14は、樹脂層153の図示を省略している。例えば、電子部品163は、
図14における上下方向に沿って所定の間隔で複数の部品端子165が設けられている。ビア穴155は、この部品端子165が並ぶ方向に長い穴で形成されている。ビア穴155から引き出された各配線159は、傾斜面157を介して部品端子165に接続、即ち、電子部品163に接続されている。
【0055】
ICチップなどの電子部品163に設けられた複数の部品端子165は、
図14に示すように、一方向に並んで配置される場合がある。このような部品端子165の配列に合わせて長いビア穴155を形成し、そのビア穴155を通じて引き出される複数の配線159を形成しても良い。そして、複数の配線159の各々を複数の部品端子165の各々に接続する。これにより、電子部品163に接続される複数の配線159を3次元積層造形により高密度に形成できる。
【0056】
また、電子部品163に接続する配線は、下層の配線151に接続する配線159に限らない。例えば、
図14に示すように、ビア穴155内に一度入って台座部材149の上を通って折り返す(下層の配線151とは接続されない)折り返し配線169を形成しても良い。例えば、コントローラ120は、配線159を製造する工程において、導電性ペーストにより折り返し配線169を形成する。折り返し配線169は、例えば、樹脂層153の上面153Aから傾斜面157を介して下方に下がった後、台座部材149の上面を通り、傾斜面157を介して樹脂層153の別の位置の上面153Aに戻ってくる配線である。
【0057】
配線パターンによっては、配線159やビア穴155の近くを通るものの配線151が形成された下層に下がらず樹脂層153の上面153Aに配設したい配線が発生する。一方で、下層に下がらない配線を配設するためだけに、ビア穴155の一部を埋める、あるいはビア穴155を全部埋めた後に埋めた穴の上に配線を形成すると、製造工程が増え、製造時間の遅延や製造コストの増大を招く。これに対し、配線159と同一工程で折り返し配線169を形成することで、1回の工程で2種類の配線を形成し、製造時間の短縮と製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0058】
尚、複数の配線159を配設する傾斜面157は、ビア穴155の内壁に限らない。例えば、
図15に示すように、樹脂層153の端部に傾斜面157を形成しても良い。
図15の傾斜面157は、
図7に示すようなビア穴155の内壁ではなく、樹脂層153の端部に形成された端面である。コントローラ120は、例えば、下層の配線151を形成し、それを折り返すように、傾斜面157に沿って上層の配線159を形成する。コントローラ120は、配線159を形成した後、樹脂層161によって樹脂層153の端部を埋めても良い。この場合、コントローラ120は、配線151,159の接続位置(傾斜面157の位置)に合せて台座部材149を形成する。
【0059】
因みに、上記実施例において、配線151は、第1配線の一例である。下側開口155Bは、開口の一例である。配線159は、第2配線の一例である。導電性インク及び導電性ペーストは、金属粒子を含む流体の一例である。
図4の工程は、台座部材形成工程の一例である。
図5の工程は、第1配線形成工程の一例である。
図6の工程は、樹脂層形成工程の一例である。
図7の工程は、第2配線形成工程の一例である。
【0060】
以上、上記した本実施形態によれば以下の効果を奏する。
本実施形態の配線151,159の形成工程では、所定の高さH1を有する台座部材149を樹脂材料により形成する工程(
図4参照)と、導電性インクによって台座部材149の表面に配設される配線151を形成する工程(
図5参照)と、を有している。また、形成工程は、台座部材149の位置に合せて形成された傾斜面157を有する樹脂層153を形成する工程(
図6参照)と、導電性インクによって傾斜面157の上に配線159を形成し、且つ台座部材149の上の配線151と接続させるように配線159を形成する工程(
図7参照)と、を有している。
【0061】
これによれば、台座部材149の上に配線151を形成することで、所定の高さH1まで配線151を底上げして配設することができる。配線151をより高い位置まで持って行くことで、傾斜面157の角度を緩やかにして配線159を接続することができる。配線159を形成する際に、導電性インクが傾斜面157で流れ落ちることを抑制でき、配線159をより均一な厚さで形成し断線の発生を抑制することができる。配線159の接続の信頼性を向上できる。
【0062】
尚、本開示は、上記実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。
例えば、上記実施例では、1層の配線151,159を形成する場合について説明したが、複数の樹脂層153を重ねて複数層の配線151,159を、台座部材149、ビア穴155を介して接続しても良い。
また、樹脂層153は、電子部品163を実装しない回路基板でも良い。
また、台座部材149は、平面視において、ビア穴155の下側開口155Bよりも小さい内径の円板形状でも良い。即ち、台座部材149は、ビア穴155より小さく形状や大きさでも良い。
また、
図12に示す複数の配線151を接続する場合において、台座部材149の表面149Aを平面で形成しなくとも良い。例えば、表面149Aを斜面、曲面、凹凸面等で形成しても良い。
また、上記実施例では、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化樹脂が採用されているが、熱により硬化する熱硬化樹脂等の種々の硬化性樹脂を採用することが可能である。
また、本開示における3次元積層造形の方法としては、インクジェット方式や光造形法(SL:Stereo Lithography)に限らず、例えば、熱溶解積層法(FDM:Fused Deposition Molding)などの他の方法を採用できる。
【符号の説明】
【0063】
149 台座部材、149A 表面、151 配線(第1配線)、153 樹脂層、153A 上面、155 ビア穴、155B 下側開口(開口)、157 傾斜面、159 配線(第2配線)、H1 高さ。