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特許7358640酸化アルミニウム絶縁体を備えた冷却装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】酸化アルミニウム絶縁体を備えた冷却装置
(51)【国際特許分類】
   H10N 60/00 20230101AFI20231002BHJP
   H10N 15/00 20230101ALI20231002BHJP
   H10N 60/80 20230101ALI20231002BHJP
【FI】
H10N60/00 Z
H10N15/00
H10N60/80
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022525121
(86)(22)【出願日】2020-10-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-06
(86)【国際出願番号】 US2020053789
(87)【国際公開番号】W WO2021108032
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】16/696,372
(32)【優先日】2019-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ハサウェイ、アーロン アシュリー
(72)【発明者】
【氏名】プシビシュ、ジョン エックス.
(72)【発明者】
【氏名】ヤング、ロバート マイルズ
(72)【発明者】
【氏名】エングブレヒト、エドワード アール.
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0259018(US,A1)
【文献】COURTOIS, Herve et al.,High-performance electronic cooling with superconducting tunnel junctions,Comptes Rendus Physique,2016年08月20日,Vol. 17,pp. 1139-1145,DOI:10.1016/j.crhy.2016.08.010
【文献】PEKOLA, J. P. et al.,NIS chip refrigeration,Cryogenics,1999年08月,Vol. 39,pp. 653-657
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 15/00、60/00、60/80
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体冷却装置であって、
第1の常伝導金属パッドと、
前記第1の常伝導金属パッド上に配置されるとともに、ギャップによって互いに分離された第1のアルミニウム層および第2のアルミニウム層と、
前記第1のアルミニウム層上に形成された第1の酸化アルミニウム層、および前記第2のアルミニウム層上に形成された第2の酸化アルミニウム層と、
前記第1の酸化アルミニウム層上に配置された第1の超伝導体パッド、および前記第2の酸化アルミニウム層上に配置された第2の超伝導体パッドと、
前記第1の超伝導体パッドに結合された第1の導電性パッド、および前記第2の超伝導体パッドに結合された第2の導電性パッドと、
を備え、前記第1の導電性パッドと前記第2の導電性パッドとの間にバイアス電圧が印加されることで、前記第1の常伝導金属パッドからホットエレクトロンが除去される、固体冷却装置。
【請求項2】
前記第1の導電性パッドおよび前記第2の導電性パッドの各々は常伝導金属で形成されており準粒子トラップとして機能する、請求項1に記載の固体冷却装置。
【請求項3】
前記第1および第2のアルミニウム層は、前記アルミニウム層が前記第1の常伝導金属パッド上で逆近接を生じる厚さを有しており、前記酸化アルミニウム層は、絶縁体としての機能を発揮する厚さを有している、請求項1に記載の固体冷却装置。
【請求項4】
前記第1の常伝導金属パッドは、第1の基板上もしくは該第1の基板内かまたは前記第1の基板を覆う誘電体層上もしくは該誘電体層内に配置されており、前記第1および第2の導電性パッドは、第2の基板上もしくは該第2の基板内に配置されており、
前記第1の導電性パッドは、第1の導電性コンタクトのセットによって前記第1の超伝導体パッドに結合されており、前記第2の導電性パッドは、第2の導電性コンタクトのセットによって前記第2の超伝導体パッドに結合されている、請求項1に記載の固体冷却装置。
【請求項5】
前記第1の導電性コンタクトのセットおよび前記第2の導電性コンタクトのセットがバンプ接合部であり、前記バンプ接合部により前記第1の基板が前記第2の基板に結合されている、請求項に記載の固体冷却装置。
【請求項6】
1の基板における前記第1の常伝導金属パッドの側とは反対側に温度センサが配置されている、請求項1に記載の固体冷却装置。
【請求項7】
第2の常伝導金属パッドであって、前記第1の常伝導金属パッドおよび前記第2の常伝導金属パッドは第1の基板上もしくは該第1の基板内かまたは前記第1の基板を覆う誘電体層上もしくは該誘電体層内に配置されるとともにギャップによって互いに分離されている、前記第2の常伝導金属パッドと、
前記第2の常伝導金属パッド上に配置されるとともにギャップによって分離された第3のアルミニウム層および第4のアルミニウム層と、
前記第3のアルミニウム層上に形成された第3の酸化アルミニウム層、および前記第4のアルミニウム層上に形成された第4の酸化アルミニウム層と、
前記第3の酸化アルミニウム層上に配置された第3の超伝導体パッド、および前記第4の酸化アルミニウム層上に配置された第4の超伝導体パッドであって、前記第2の導電性パッドの第1の端部が前記第2の超伝導体パッドに結合されており、前記第2の導電性パッドの第2の端部が前記第3の超伝導体パッドに結合されている、前記第3の超伝導体パッドおよび前記第4の超伝導体パッドと、
前記第4の超伝導体パッドに結合された第3の導電性パッドと、
をさらに備える請求項1に記載の固体冷却装置。
【請求項8】
前記第1の導電性パッドに結合された第1の電気ワイヤおよび前記第3の導電性パッドに結合された第2の電気ワイヤをさらに備えており、前記第1の電気ワイヤと前記第2の電気ワイヤとの間に前記バイアス電圧が印加されることで、前記第1の常伝導金属パッドおよび第2の常伝導金属パッドからホットエレクトロンが除去される、請求項7に記載の固体冷却装置。
【請求項9】
複数の冷凍ステージを備える冷凍システムであって、前記複数の冷凍ステージのうちの最終のステージは、冷凍容器と、該冷凍容器に関して配置された複数の固体冷却装置であって請求項1に記載の固体冷却装置とを含む、冷凍システム。
【請求項10】
固体冷却装置を製造する方法であって、
第1の基板上もしくは該第1の基板内かまたは前記第1の基板を覆う誘電体層上もしくは該誘電体層内に第1の常伝導金属パッドを形成すること、
前記第1の常伝導金属パッド上にアルミニウム層を形成すること、
前記アルミニウム層に対して酸化処理を行うことで、前記アルミニウム層を覆う酸化アルミニウム層を形成すること、
前記酸化アルミニウム層上に超伝導体層を形成すること、
前記超伝導体層上に、パターニングされたマスクを形成すること、
前記超伝導体層、前記酸化アルミニウム層、および前記アルミニウム層のそれぞれ一部を除去するためのエッチング処理を前記パターニングされたマスクに基づいて行うことにより、第1の常伝導金属-絶縁体-超伝導体(NIS)接合部と第2のNIS接合部とを形成すること、
を備え、前記第1のNIS接合部は、前記第1の常伝導金属パッド、第1のアルミニウム層、前記第1のアルミニウム層を覆う第1の酸化アルミニウム層、および前記第1の酸化アルミニウム層を覆う第1の超伝導体パッドを含み、前記第2のNIS接合部は、前記第1の常伝導金属パッド、第2のアルミニウム層、前記第2のアルミニウム層を覆う第2の酸化アルミニウム層、および前記第2の酸化アルミニウム層を覆う第2の超伝導体パッドを含み、前記第1および第2のNIS接合部はギャップによって互いに分離されている、方法。
【請求項11】
1の導電性パッドと第2の導電性パッドとを第2の基板上または該第2の基板内に形成すること、
前記第1の導電性パッドを前記第1の超伝導体パッドに結合すること、および前記第2の導電性パッドを前記第2の超伝導体パッドに結合すること、
をさらに備え、前記第1の導電性パッドと前記第2の導電性パッドとの間にバイアス電圧が印加されることで前記第1の常伝導金属パッドからホットエレクトロンが除去される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の超伝導体パッドおよび前記第1の導電性パッドのうちの一方の上に第1の導電性コンタクトのセットを形成すること、
前記第2の超伝導パッドおよび前記第2の導電性パッドのうちの一方の上に第2の導電性コンタクトのセットを形成すること、
前記第1の導電性コンタクトのセットにより前記第1の超伝導体パッドを前記第1の導電性パッドに結合すること、および前記第2の導電性コンタクトのセットにより前記第2の超伝導体パッドを前記第2の導電性パッドに結合すること、
をさらに備え、
前記第1および第2の導電性コンタクトのセットがバンプ接合部であり、前記バンプ接合部により前記第1の基板が前記第2の基板に結合されている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の基板における前記第1の常伝導金属パッドの側とは反対側の第2の側を薄化すること、および前記第2の側に温度センサを製造すること
をさらに備える請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の基板上もしくは該第1の基板内かまたは前記第1の基板を覆う誘電体層上もしくは該誘電体層内に第2の常伝導金属パッドを形成することであって、
前記第1の常伝導金属パッド上にアルミニウム層を形成することは、前記第2の常伝導金属パッド上に前記アルミニウム層を形成することをさらに含み、
前記超伝導体層、前記酸化アルミニウム層、および前記アルミニウム層のそれぞれ一部を除去するためのエッチング処理を前記パターニングされたマスクに基づいて行うことは、第3のNIS接合部と第4のNIS接合部とを形成することをさらに含み、前記第3のNIS接合部は、前記第2の常伝導金属パッド、第3のアルミニウム層、前記第3のアルミニウム層を覆う第3の酸化アルミニウム層、および前記第3の酸化アルミニウム層を覆う第3の超伝導体パッドを含み、前記第4のNIS接合部は、前記第2の常伝導金属パッド、第4のアルミニウム層、前記第4のアルミニウム層を覆う第4の酸化アルミニウム層、および前記第4の酸化アルミニウム層を覆う第4の超伝導体パッドを含み、前記第3のNIS接合部は、第2のギャップによって前記第2のNIS接合部と分離されるとともに、第3のギャップによって前記第4のNIS接合部と分離されている、前記第2の常伝導金属パッドを形成すること、
前記第2の導電性パッドを前記第3の超伝導体パッドに結合することであって、前記第2の導電性パッドの第1の端部が前記第2の超伝導体パッドに結合され、前記第2の導電性パッドの第2の端部が前記第3の超伝導体パッドに結合される、前記第2の導電性パッドを前記第3の超伝導体パッドに結合すること、
第3の導電性パッドを前記第4の超伝導体パッドに結合すること
をさらに備える請求項11に記載の方法。
【請求項15】
第1のワイヤを前記第1の導電性パッドに結合すること、および第2のワイヤを前記第3の導電性パッドに結合することをさらに備え、
前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとの間にバイアス電圧が印加されることで前記第1の常伝導金属パッドおよび第2の常伝導金属パッドからホットエレクトロンが除去される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して冷凍に関し、具体的には、酸化アルミニウム絶縁体を備えた冷却装置に関する。本願は、2019年11月26日に出願された米国特許出願第16/696,372号に基づく優先権を主張するものであり、その全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
バイアス電圧を用いることによる常伝導金属(normal metal)-絶縁体-超伝導体(NIS)接合を介した「ホット」エレクトロンのトンネリングによる固体電子冷却は1K未満で動作することが証明されており、より一般的な室温付近のペルチェ熱電冷凍機のように実質的に動作する。これらのNISクライオクーラーは、超伝導回路で使用されるジョセフソン接合と同じ材料かつ同じリソグラフィ製造工程で構成されており、ジョセフソン接合のコンポーネントと基本的には完全に互換性がある。これらは、ジョセフソン接合それ自体と共に一体化されて同時に製造され得る。しかしながら、現在、NISクーラーの温度スローは非常に限られており、高温側と低温側の最大温度差は約150mKである。
【0003】
NISクーラーの最大性能に対する主な制限の1つは、装置を流れる大電流から生じる非平衡準粒子が超伝導リード内に存在することである。超伝導体中の低い準粒子緩和速度と熱伝導率は、接合部の近傍でこれらのホットパーティクルを結合して超伝導電極の深刻な過熱をもたらす。超伝導体中の準粒子の蓄積を減らすためのいくつかの方法がある。最も一般的な方法は、準粒子トラップと呼ばれる超伝導体に結合される常伝導金属を使用することにより、準粒子を常伝導金属に移動させて電子-電子および電子-フォノンの相互作用によってエネルギーを緩和することである。この装置は、常伝導金属-絶縁体-超伝導体-常伝導(NISN)接合と呼ばれる。
【発明の概要】
【0004】
一実施例において、固体冷却装置が開示される。固体冷却装置は、第1の常伝導金属パッドと、前記第1の常伝導金属パッド上に配置されるとともに、ギャップによって互いに分離された第1のアルミニウム層および第2のアルミニウム層と、前記第1のアルミニウム層上に形成された第1の酸化アルミニウム層と、前記第2のアルミニウム層上に形成された第2の酸化アルミニウム層と、前記第1の酸化アルミニウム層上に配置された第1の超伝導体パッドと、前記第2の酸化アルミニウム層上に配置された第2の超伝導体パッドと、を備える。装置はさらに、前記第1の超伝導体パッドに結合された第1の導電性パッドと、前記第2の超伝導体パッドに結合された第2の導電性パッドと、を備え、前記第1の導電性パッドと前記第2の導電性パッドとの間にバイアス電圧が印加されたときに前記第1の常伝導金属パッドからホットエレクトロンが除去される。
【0005】
別の実施例において、固体冷却装置を製造する方法が開示される。方法は、第1の基板上もしくは該第1の基板内かまたは前記第1の基板を覆う誘電体層上もしくは該誘電体層内に第1の常伝導金属パッドを形成すること、前記第1の常伝導金属パッド上にアルミニウム層を形成すること、前記アルミニウム層に対して酸化処理を行うことで、前記アルミニウム層を覆う酸化アルミニウム層を形成すること、前記酸化アルミニウム層上に超伝導体層を形成すること、を備える。方法はさらに、パターニングされたマスクを前記超伝導体層上に形成すること、前記超伝導体層、前記酸化アルミニウム層、および前記アルミニウム層のそれぞれ一部を除去するためのエッチング処理を前記パターニングされたマスクに基づいて行うことにより、第1の常伝導金属-絶縁体-超伝導体(NIS)接合部と第2のNIS接合部とを形成すること、を備え、前記第1のNIS接合部は、前記第1の常伝導金属パッド、第1のアルミニウム層、前記第1のアルミニウム層を覆う第1の酸化アルミニウム層、および前記第1の酸化アルミニウム層を覆う第1の超伝導体パッドを含み、前記第2のNIS接合部は、前記第1の常伝導金属パッド、第2のアルミニウム層、前記第2のアルミニウム層を覆う第2の酸化アルミニウム層、および前記第2の酸化アルミニウム層を覆う第2の超伝導体パッドを含み、前記第1および第2のNIS接合部は、ギャップによって互いに分離されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、固体冷却装置の断面図を示す。
図2図2は、製造の初期段階における固体冷却器の第1部分の断面図を示す。
図3図3は、材料堆積処理を実行した後の酸化処理中の図2の構造の概略断面図を示す。
図4図4は、酸化処理を実行した後の図3の構造の概略断面図を示す。
図5図5は、超伝導体堆積処理後の図4の構造の概略断面図を示す。
図6図6は、フォトレジストの堆積およびパターニング後のエッチング処理中の図6の構造の概略断面図を示す。
図7図7は、エッチング処理後にフォトレジスト材料層を除去した後の図6の構造の概略断面図を示す。
図8図8は、裏面薄化処理後に温度センサを形成した後の図7の構造の概略断面図を示す。
図9図9は、製造の初期段階における固体冷却器の第2部分の断面図を示す。
図10図10は、フォトレジスト材料層の堆積およびパターニング後の図9の構造の概略断面図を示す。
図11図11は、導電性材料堆積処理後の図10の構造の概略断面図を示す。
図12図12は、フォトレジスト材料と余分な導電性材料とをリフトオフした後の図11の構造の概略断面図を示す。
図13図13は、図12の冷却器の第2部分を反転して図8の冷却器の第1部分に結合することによる固体冷却器の形成を示す。
図14図14は、図1の固体デバイスなどの固体デバイスを使用する冷凍システムのブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本開示は、1つまたは複数のNIS接合部またはNISN接合部を含む固体冷却装置であって、NIS装置またはNISN装置の絶縁体が酸化アルミニウム薄膜層から形成されている固体冷却装置に関する。酸化アルミニウム薄膜層は、アルミニウム層の酸化処理中に形成される。一例では、アルミニウム層は常伝導金属として機能する。これは、常伝導金属層上に配置されたときに逆近接するように十分に薄いアルミニウム層を選択することによって発生し得る。常伝導金属は、極低温の操作装置の温度で超伝導を起こさない金属である。冷凍システムは、冷凍容器と、冷凍容器に関して配置された複数のそのような固体冷却装置とを含み得る。固体冷却装置は、複数の冷凍ステージにおける最後の冷凍ステージを形成してミリケルビン温度まで冷却することができる。
【0008】
NIS装置内またはNISN装置内における絶縁体は、バンドの相対レベルが2つの材料の界面で変化し得るため、常伝導金属と超伝導体材料との間の制御されるバンドギャップを容易化するものである。また、この絶縁体は、低温の常伝導金属への熱の戻りを妨げることから、超伝導体金属から常伝導金属への熱の戻りを妨げる。アルミニウム層の酸化により形成された酸化アルミニウム薄膜層を利用することで、制御された絶縁体厚さを提供し、これにより、容易に形成される良好な動作性能特性を備えた絶縁体を提供するとともに、絶縁体としてのその機能を保証する。
【0009】
図1は、1つまたは複数のNIS装置またはNISN装置を使用する固体冷却装置10の一例の断面図を示している。固体冷却装置10は、極低温冷却用途で使用される冷凍ステージとして構成され得るものであり、この固体構造は、真空中に存在して超伝導回路を保持する冷凍容器に関して配置される複数の固体冷却装置のうちの1つである。複数の固体構造は、極低温冷凍システムの最終ステージを提供し、低温側の冷凍ステージから熱を除去することによって効率的な冷却を可能にするとともに、複数の冷凍ステージのうちの最後の冷凍ステージの高温側からの熱の戻りを防ぐことができる。固体冷却装置は1つまたは複数のNIS接合部またはNISN接合部を含み、絶縁体層は酸化アルミニウム層から形成されている。
【0010】
図1に示されるように、固体冷却装置10は、冷凍ステージの低温側に配置された第1の基板12と、冷凍ステージの高温側に配置された第2の基板32とを含む。第1の基板12は超伝導回路を含む第1のチップであってよく、第2の基板32は従来型のまたは超伝導回路を含む第2のチップであってよい。あるいは、第1および第2の基板12,32は、半導体または絶縁体などの材料の固体ブロックであってよい。第1の常伝導金属パッド14は第1の基板12の上面に配置されており、第2の常伝導金属パッド16は、第2の基板12の上面に第1の常伝導金属パッド14に隣接して配置されている。第1の常伝導金属パッド14は、ギャップ15によって第2の常伝導金属パッド16から離間している。第1の常伝導金属パッド14および第2の常伝導金属パッド16は誘電体層13内に配置されているが、誘電体層13上に配置されてもよいし、基板12内に配置されてもよいし、または誘電体層13を備えることなく配置されてもよい。第1の常伝導金属パッド14および第2の常伝導金属パッド16は、チタンタングステン合金(TiW)または銅(Cu)などの常伝導金属で形成されている。任意の温度センサ50は、第1の基板12の下側に位置し得るとともに酸化ルテニウムで形成され得る。
【0011】
第1のアルミニウム層26は第1の常伝導金属パッド14の第1の端部に配置されており、第2のアルミニウム層27は、ギャップ49によって互いに分離された第1の常伝導金属パッド14の第2の端部に配置されている。第3のアルミニウム層33は第2の常伝導金属パッド16の第1の端部に配置されており、第4のアルミニウム層39は、ギャップ51によって互いに分離された第2の常伝導金属パッド16の第2の端部に配置されている。第1のアルミニウム層26は、第1の超伝導体パッド30でキャップされた第1の酸化アルミニウム層28を含み、第2のアルミニウム層27は、第2の超伝導体パッド31でキャップされた第2の酸化アルミニウム層29を含み、第3のアルミニウム層33は、第3の超伝導体パッド37でキャップされた第3の酸化アルミニウム層35を含み、第4のアルミニウム層39は、第4の超伝導体パッド43でキャップされた第4の酸化アルミニウム層41を含む。
【0012】
第1、第2、第3、および第4のアルミニウム層26,27,33,39の各々は、常伝導金属層上に配置されたときに常伝導金属として振る舞うように逆近接するのに十分に薄い厚さ(例えば、約9ナノメートル)を有するように選択されている。したがって、第1、第2、第3、および第4のアルミニウム層26,27,33,39は、第1および第2の常伝導金属パッド14,16と協働して、それぞれのNISトンネル接合部またはNISNトンネル接合部の常伝導金属層を形成する。また、第1、第2、第3、および第4の酸化アルミニウム層28,29,35,41は、NIS接合部またはNISNトンネル接合部に絶縁体を提供するのに十分な厚さ(例えば、約9オングストローム)を有するように選択されている。第1の常伝導金属パッド14、第1のアルミニウム層26、第1の酸化アルミニウム層28、および第1の超伝導体パッド30は、第1のNIS接合部18を形成している。第1の常伝導金属パッド14、第2のアルミニウム層27、第2の酸化アルミニウム層29、および第2の超伝導体パッド31は、第2のNIS接合部20を形成している。第2の常伝導金属パッド16、第3のアルミニウム層33、第3の酸化アルミニウム層35、および第3の超伝導体パッド37は、第3のNIS接合部22を形成しており、第2の常伝導金属パッド16、第4のアルミニウム層39、第4の酸化アルミニウム層41、および第4の超伝導体パッド43は、第4のNIS接合部24を形成している。
【0013】
第1、第2、第3、および第4のNIS接合部18,20,22,24の各々は、複数の導電性パッド(例えば、金パッド)への複数の導電性コンタクト40(例えば、金などの常伝導金属)を介して第2の基板32に結合されている。第1、第2、第3、および第4のNIS接合部18,20,22,24は第1の基板12上にあるものとして示されているが、第1、第2、第3、および第4のNIS接合部18,20,22,24またはその一部は第1の基板12内に埋め込まれてもよい。複数の導電性コンタクト40は、第1の基板12と第2の基板32との機械的接合部として機能するとともに、電流および熱の両方を輸送するように機能する複数のバンプ接合部であり得る。
【0014】
第1の導電性パッド34は第2の基板32上に配置されており、第1の導電性コンタクトのセットを介して第1の超伝導体パッド30に結合されている。第1の導電性パッド34は、第1のNIS接合部18が第1のNISN接合部を形成するための準粒子トラップとして機能し得る。第2の導電性パッド36は第2の基板32上に配置されており、第2の導電性コンタクトのセットを介して第2の超伝導体パッド31に結合された第1の端部を有している。第2の導電性パッド36の第2の端部は、第3の導電性コンタクトのセットを介して第3の超伝導体パッド37に結合されている。第3の導電性パッド38は第2の基板32上に配置されており、第4の導電性コンタクトのセットを介して第4の超伝導体パッド43に結合されている。第1の導電性パッド34の端部には第1の電気ワイヤ44が結合されており、第3の導電性パッド38の端部には第2の電気ワイヤ48が結合されている。第1の導電性パッド34、第2の導電性パッド36、および第3の導電性パッド38は第2の基板32上に示されているが、他の例では、第1の導電性パッド34、第2の導電性パッド36、および第3の導電性パッド38は第2の基板32内に配置され得る。
【0015】
動作時、第1の電気ワイヤ44と第2の電気ワイヤ48との間にバイアス電圧が印加されることで、電流が矢印Aの方向に流れる。すなわち、電流は第1の電気ワイヤ44から第1の導電性パッド34、第1のNISN接合部18、第2のNISN接合部20、第2の導電性パッド36、第3のNISN接合部22、第4のNISN接合部24、第3の導電性パッド38を介して第2の電気ワイヤ48に流れる。バイアス電圧は、第1の常伝導金属パッド14上および第2の常伝導金属パッド16上のホットエレクトロンおよびホットホールのエネルギーレベルを上昇させ、ここで、フェルミレベルより上のホットエレクトロンおよびフェルミレベルより下のホットホールは導電性パッドに向けて絶縁層を横切って超伝導パッドへとトンネルすることで第1および第2の常伝導金属パッド14,16から熱を除去する。これにより、固体冷却装置10の高温側と低温側との間の温度の低下およびデルタ温度の上昇がもたらされる。冷却は、ホットエレクトロンとホットホールのトンネリングによってもたらされる。この現象は電流経路に沿って交互に起こり、1つの接合部がホットエレクトロンのトンネリングによって冷却された後に続いて、次の接合部がホットホールのトンネリングによって冷却される。
【0016】
装置10内の常伝導金属は、金、白金などの常伝導金属か、あるいは、チタン、チタンタングステン、クロム、またはそれらの組み合わせなどの超伝導転移温度を超える金属で形成され得る。超伝導金属は、インジウム、ニオブ、アルミニウム、または他のいくつかの超伝導金属などの超伝導体で形成され得る。図1の例では、4つのNIS装置またはNISN装置が示されているが、2つのNIS装置またはNISN装置の任意の倍数により、固体冷却器を上記のように動作させることができる。
【0017】
次に、図2図13を参照して、図1の固体冷却器の形成に関連した製造について説明する。本実施例は、固体冷却器の第1部分および第2部分が連続して製造されるものとして示されているが、両方の部分を同時に製造することもできるし、あるいは、最初に第2部分を製造して次に第1部分を製造する逆の順序で製造することもできる。
【0018】
図2は、製造の初期段階における固体冷却器の第1部分の断面図を示している。第1の常伝導金属パッド62および第2の常伝導金属パッド64は、誘電体層66(例えば、酸化シリコン(SiO))内に配置されており、第1の基板60上に集合的に存在する。第1の常伝導金属パッド62および第2の常伝導金属パッド64は、チタンタングステン合金(TiW)または銅(Cu)などの常伝導金属で形成されている。第1の常伝導金属パッド62および第2の常伝導金属パッド64は、基板60上への誘電体66の堆積、パターニングされたフォトレジスト層内における常伝導金属レイアウトのフォトリソグラフィ処理、誘電体層66内への常伝導金属レイアウトのエッチングによる誘電体層66内への拡張された開口部の形成およびレジストの剥離、堆積された物理蒸着(physical vapor deposition)チタン(Ti)/窒化チタン(TiN)ライナー上へのタングステン(W)の化学蒸着(chemical vapor deposition)などの常伝導金属の蒸着、および誘電体層66とともに常伝導金属を平坦化するべく常伝導金属に対する化学機械研磨(CPM)処理によって形成され得る。
【0019】
次に、構造に対する材料堆積が行われて図2の構造上にアルミニウム層67が形成されることで、図3の構造が提供される。アルミニウムは、標準的なコンタクト材料堆積を使用して堆積することができる。このアルミニウムの堆積に続き、アルミニウム層67の上面が図3に示されるように酸化処理200によって酸化される。この酸化処理200の結果、図4の構造に示されるように、酸化アルミニウムの薄膜層(例えば、9オングストローム)がアルミニウム層67上に形成されることで、酸化アルミニウム層68が形成される。次に、超伝導体材料層69(例えば、ニオブ)が酸化アルミニウム層68上に堆積されることで、図5の構造が提供される。超伝導体材料層69は、標準的な接触材料堆積を使用して堆積することができる。
【0020】
次に、フォトレジスト材料層90が図5の構造上に形成されて超伝導体材料層69上で開口部92がパターニングされることで、図6の構造が提供される。次に、エッチング処理210が図6の構造に対して行われることで、パターニングされた開口部92が誘電体層66、第1の常伝導金属パッド62、および第2の常伝導金属パッド64まで延長される。次に、フォトレジスト材料層90が除去されることで、第1のNIS接合部86、第2のNIS接合部88、第3のNIS接合部90、および第4のNIS接合部92を含む図7の構造が提供される。
【0021】
第1のNIS接合部86は、第1の常伝導金属パッド62、第1のアルミニウム層70、第1の酸化アルミニウム層71、および第1の超伝導体パッド79で形成される。第2のNIS接合部88は、第1の常伝導金属パッド62、第2のアルミニウム層72、第2の酸化アルミニウム層73、および第2の超伝導体パッド81で形成される。第3のNIS接合部90は、第2の常伝導金属パッド64、第3のアルミニウム層74、第3の酸化アルミニウム層75、および第3の超伝導体パッド83で形成され、第4のNIS接合部92は、第2の常伝導金属パッド64、第4のアルミニウム層76、第4の酸化アルミニウム層77、および第4の超伝導体パッド85で形成される。
【0022】
第1、第2、第3、および第4のアルミニウム層70,72,74,76は、常伝導金属層62,64と逆近接するのに十分に薄い厚さ(例えば、約9マイクロメートル)を有するように選択される。第1、第2、第3、および第4のアルミニウム層70,72,74,76は、第1および第2の導電性パッド62,64と協働してそれぞれのNISまたはNISNトンネル接合部の常伝導金属層を形成する。第1、第2、第3、および第4の酸化アルミニウム層71,73,75,77は、NISまたはNISNトンネル接合部に絶縁体を提供するのに十分な厚さ(例えば、約9オングストローム)を有するように選択されている。
【0023】
次に、第1の基板60の裏側が研削または化学機械研磨によって薄化される。任意の温度センサ84は、第1の基板60の裏側に形成され得る。この温度センサ84は、図8に示されるように、酸化ルテニウムの層を堆積し、次いで、パターニングされたフォトレジスト材料で覆った後に、酸化ルテニウムの層をエッチングすることで、第1の基板60の底部側に配置される。
【0024】
図9は、製造の初期段階における固体冷却器の第2部分を示している。第1の導電性パッド108、第2の導電性パッド110、および第3の導電性パッド112は、第2の基板100上に配置されている。第1の導電性パッド108、第2の導電性パッド110、および第3の導電性パッド112は、フォトレジスト材料を堆積およびパターニングし、金属蒸着処理を行って常伝導金属(例えば、金)および/または超伝導体金属を堆積し、その後(例えば、テープまたは溶媒を使用して)フォトレジストリフトオフ処理を行ってフォトレジストおよび余分な金属を除去することで、残存した金属を第1の導電性パッド108、第2の導電性パッド110、および第3の導電性パッド112の形とすることで、図9の構造に示されるように形成することができる。
【0025】
次に、フォトレジスト材料層114が図9の構造上に堆積されて開口部115がパターニングされることで、図10に示されるようにバンプレイアウト(例えば、画像反転レジスト)が提供される。次に、蒸着処理が行われて図10の構造上に金属(たとえば、金)が蒸着されることで、図11の構造が提供される。この場合も同様に、リフトオフ処理(例えば、テープまたは溶媒)が行われてフォトレジスト材料層116および余分な金属が除去されることで、図12に示されるように、第1の導電性パッド108、第2の導電性パッド110、および第3の導電性パッド112の表面に形成された複数の導電性コンタクト118(例えば、バンプ接合部)が提供される。導電性コンタクト118は、超伝導金属および/または常伝導金属から製造され得る。導電性コンタクト118は、図10図12に示されるような標準的なリフトオフ処理を使用するのとは対照的に、エッチングおよび堆積によって形成され得る。導電性コンタクトは、図示されている導電性パッド上または超伝導体パッド上のいずれかに形成され得る。
【0026】
次に、第2の基板100が反転されるとともに第1の基板60上に配置されて結合されることで、第3の導電性パッド112が第1の超伝導体パッド79に位置合わせされるとともに結合され、第2の導電性パッド110の第1の端部が第2の超伝導体パッド81に位置合わせされるとともに結合され、第2の導電性パッド110の第2の端部が第3の超伝導体パッド83に位置合わせされるとともに結合され、第1の導電性パッド108が第4の超伝導体パッド85に位置合わせされるとともに結合される。その結果、図13の構造が得られる。
【0027】
図14は、図1の固体装置10などの固体装置を使用する冷凍システム250のブロック図を示している。冷凍システム250は、ステージ#1~ステージ#Nの複数のステージを含み、ここで、Nは、2以上の整数である。各冷凍ステージが前のステージからの追加の温度低下をもたらすことで、N番目のステージが最終ステージとなって最後の温度低下をもたらすとともに冷凍システム250の最低温度を提供する。他の例では、N番目のステージは最終ステージではなく、最初または中間のステージである。冷凍システム250におけるステージ#Nは冷凍容器260を含み、この容器には図1に示されるものと同様の複数の固体装置270が配置され、それら複数の固体装置270は容器260内で冷凍システム250の最終的な最低温度を提供するように協働する。容器260は、真空環境に位置するとともに超伝導回路を収容するように構成され得る。別の例では、他のステージの1つ以上は、ステージ#N内のものと同様な固体装置を使用することで冷凍システム250全体に段階的な温度降下を提供する。他の例では、冷凍容器260は、各固体装置270の最終的な常伝導金属層を提供する常伝導金属で形成され得る。
【0028】
説明を簡単にする目的のために、「覆う」という用語(および派生語)は、本開示全体を通じて、選択された方向における2つの隣接する表面の相対位置を示すために使用されている。さらに、本開示全体を通じて使用される「上」および「下」という用語は、選択された方向の対向する表面を示す。また、「上」および「下」という用語は、説明を目的として、選択された方向の相対位置を示す。実際、本開示全体で使用される例では、1つの選択された方向が示されている。しかしながら、上記で説明した例において、選択された方向は任意であり、本開示の範囲内で他の方向(例えば、逆方向、90度回転など)も可能である。
【0029】
以上の説明は、本主題の開示の例示である。本開示を説明する目的のために構成要素または方法のあらゆる考えられる組み合わせを記載することは勿論不可能であり、当業者は本開示のさらなる多くの組み合わせおよび置換が可能であることを認識し得る。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲を含む本出願の範囲内に含まれるすべてのそのような代替、変形、および変更を包含することが意図される。また、本開示または請求項が「1つの~」、「第1の~」、または「別の~」という要素を列挙するかまたはそれらの同等物を列挙する場合には、1つまたは2つ以上のそのような要素を含むと解釈されるべきであり、2つ以上のそのような要素を必須とするものでも、2つ以上のそのような要素を除外するものでもない。また、本明細書において使用される「含む」という用語は、含むがそれに限定されないことを意味する。最後に、「~に基づく」という用語は、少なくとも部分的に基づくことを意味する。
本開示に含まれる技術的思想を以下に記載する。
(付記1)
固体冷却装置であって、
第1の常伝導金属パッドと、
前記第1の常伝導金属パッド上に配置されるとともに、ギャップによって互いに分離された第1のアルミニウム層および第2のアルミニウム層と、
前記第1のアルミニウム層上に形成された第1の酸化アルミニウム層、および前記第2のアルミニウム層上に形成された第2の酸化アルミニウム層と、
前記第1の酸化アルミニウム層上に配置された第1の超伝導体パッド、および前記第2の酸化アルミニウム層上に配置された第2の超伝導体パッドと、
前記第1の超伝導体パッドに結合された第1の導電性パッド、および前記第2の超伝導体パッドに結合された第2の導電性パッドと、
を備え、前記第1の導電性パッドと前記第2の導電性パッドとの間にバイアス電圧が印加されることで、前記第1の常伝導金属パッドからホットエレクトロンが除去される、固体冷却装置。
(付記2)
前記第1の導電性パッドおよび前記第2の導電性パッドの各々は常伝導金属で形成されており準粒子トラップとして機能する、付記1に記載の固体冷却装置。
(付記3)
前記第1および第2のアルミニウム層は、前記アルミニウム層が前記第1の常伝導金属パッド上で逆近接を生じる厚さを有しており、前記酸化アルミニウム層は、絶縁体としての機能を発揮する厚さを有している、付記1に記載の固体冷却装置。
(付記4)
前記第1の常伝導金属パッドは、第1の基板上もしくは該第1の基板内かまたは誘電体層上もしくは該誘電体層内に配置されており、前記第1および第2の導電性パッドは、第2の基板上もしくは該第2の基板内に配置されている、付記1に記載の固体冷却装置。
(付記5)
前記第1の導電性パッドは、第1の導電性コンタクトのセットによって前記第1の超伝導体パッドに結合されており、前記第2の導電性パッドは、第2の導電性コンタクトのセットによって前記第2の超伝導体パッドに結合されている、付記4に記載の固体冷却装置。
(付記6)
前記第1の導電性コンタクトのセットおよび前記第2の導電性コンタクトのセットがバンプ接合部であり、前記バンプ接合部により前記第1の基板が前記第2の基板に結合されている、付記1に記載の固体冷却装置。
(付記7)
前記第1の基板における前記第1の常伝導金属パッドの側とは反対側に温度センサが配置されている、付記1に記載の固体冷却装置。
(付記8)
第2の常伝導金属パッドであって、前記第1の常伝導金属パッドおよび前記第2の常伝導金属パッドは第1の基板上もしくは該第1の基板内かまたは誘電体層上もしくは該誘電体層内に配置されるとともにギャップによって互いに分離されている、前記第2の常伝導金属パッドと、
前記第2の常伝導金属パッド上に配置されるとともにギャップによって分離された第3のアルミニウム層および第4のアルミニウム層と、
前記第3のアルミニウム層上に形成された第3の酸化アルミニウム層、および前記第4のアルミニウム層上に形成された第4の酸化アルミニウム層と、
前記第3の酸化アルミニウム層上に配置された第3の超伝導体パッド、および前記第4の酸化アルミニウム層上に配置された第4の超伝導体パッドであって、前記第2の導電性パッドの第1の端部が前記第2の超伝導体パッドに結合されており、前記第2の導電性パッドの第2の端部が前記第3の超伝導体パッドに結合されている、前記第3の超伝導体パッドおよび前記第4の超伝導体パッドと、
前記第4の超伝導体パッドに結合された第3の導電性パッドと、
をさらに備える付記1に記載の固体冷却装置。
(付記9)
前記第1の導電性パッドに結合された第1の電気ワイヤおよび前記第3の導電性パッドに結合された第2の電気ワイヤをさらに備えており、前記第1の電気ワイヤと前記第2の電気ワイヤとの間に前記バイアス電圧が印加されることで、前記第1の常伝導金属パッドおよび第2の常伝導金属パッドからホットエレクトロンが除去される、付記8に記載の固体冷却装置。
(付記10)
前記第1の常伝導金属パッドは、チタンおよびチタンタングステンのうちの1つから形成される、付記1に記載の固体冷却装置。
(付記11)
複数の冷凍ステージを備える冷凍システムであって、前記複数の冷凍ステージのうちの最終のステージは、冷凍容器と、該冷凍容器に関して配置された複数の固体冷却装置であって付記1に記載の固体冷却装置とを含む、冷凍システム。
(付記12)
固体冷却装置を製造する方法であって、
第1の基板上もしくは該第1の基板内かまたは前記第1の基板を覆う誘電体層上もしくは該誘電体層内に第1の常伝導金属パッドを形成すること、
前記第1の常伝導金属パッド上にアルミニウム層を形成すること、
前記アルミニウム層に対して酸化処理を行うことで、前記アルミニウム層を覆う酸化アルミニウム層を形成すること、
前記酸化アルミニウム層上に超伝導体層を形成すること、
前記超伝導体層上に、パターニングされたマスクを形成すること、
前記超伝導体層、前記酸化アルミニウム層、および前記アルミニウム層のそれぞれ一部を除去するためのエッチング処理を前記パターニングされたマスクに基づいて行うことにより、第1の常伝導金属-絶縁体-超伝導体(NIS)接合部と第2のNIS接合部とを形成すること、
を備え、前記第1のNIS接合部は、前記第1の常伝導金属パッド、第1のアルミニウム層、前記第1のアルミニウム層を覆う第1の酸化アルミニウム層、および前記第1の酸化アルミニウム層を覆う第1の超伝導体パッドを含み、前記第2のNIS接合部は、前記第1の常伝導金属パッド、第2のアルミニウム層、前記第2のアルミニウム層を覆う第2の酸化アルミニウム層、および前記第2の酸化アルミニウム層を覆う第2の超伝導体パッドを含み、前記第1および第2のNIS接合部はギャップによって互いに分離されている、方法。
(付記13)
前記第1の導電性パッドと第2の導電性パッドとを第2の基板上または該第2の基板内に形成することをさらに備える付記12に記載の方法。
(付記14)
前記第1の導電性パッドを前記第1の超伝導体パッドに結合すること、および前記第2の導電性パッドを前記第2の超伝導体パッドに結合すること
をさらに備え、前記第1の導電性パッドと前記第2の導電性パッドとの間にバイアス電圧が印加されることで前記第1の常伝導金属パッドからホットエレクトロンが除去される、付記13に記載の方法。
(付記15)
前記第1の超伝導体パッドおよび前記第1の導電性パッドのうちの一方の上に第1の導電性コンタクトのセットを形成すること、
前記第2の超伝導パッドおよび前記第2の導電性パッドのうちの一方の上に第2の導電性コンタクトのセットを形成すること、
前記第1の導電性コンタクトのセットにより前記第1の超伝導体パッドを前記第1の導電性パッドに結合すること、および前記第2の導電性コンタクトのセットにより前記第2の超伝導体パッドを前記第2の導電性パッドに結合すること、
をさらに備える付記14に記載の方法。
(付記16)
前記第1および第2の導電性コンタクトのセットがバンプ接合部であり、前記バンプ接合部により前記第1の基板が前記第2の基板に結合されている、付記15に記載の方法。
(付記17)
前記第1の基板における前記常伝導金属パッドの側とは反対側の第2の側を薄化すること、および前記第2の側に温度センサを製造すること
をさらに備える付記12に記載の方法。
(付記18)
前記第1の基板上もしくは該第1の基板内かまたは前記第1の基板を覆う誘電体層上もしくは該誘電体層内に第2の常伝導金属パッドを形成することであって、
前記第1の常伝導金属パッド上にアルミニウム層を形成することは、前記第2の常伝導金属パッド上に前記アルミニウム層を形成することをさらに含み、
前記超伝導体層、前記酸化アルミニウム層、および前記アルミニウム層のそれぞれ一部を除去するためのエッチング処理を前記パターニングされたマスクに基づいて行うことは、第3のNIS接合部と第4のNIS接合部とを形成することをさらに含み、前記第3のNIS接合部は、前記第2の常伝導金属パッド、第3のアルミニウム層、前記第3のアルミニウム層を覆う第3の酸化アルミニウム層、および前記第3の酸化アルミニウム層を覆う第3の超伝導体パッドを含み、前記第4のNIS接合部は、前記第2の常伝導金属パッド、第4のアルミニウム層、前記第4のアルミニウム層を覆う第4の酸化アルミニウム層、および前記第4の酸化アルミニウム層を覆う第4の超伝導体パッドを含み、前記第3のNIS接合部は、第2のギャップによって前記第2のNIS接合部と分離されるとともに、第3のギャップによって前記第4のNIS接合部と分離されている、前記第2の常伝導金属パッドを形成すること、
前記第2の導電性パッドを前記第3の超伝導体パッドに結合することであって、前記第2の導電性パッドの第1の端部が前記第2の超伝導体パッドに結合され、前記第2の導電性パッドの第2の端部が前記第3の超伝導体パッドに結合される、前記第2の導電性パッドを前記第3の超伝導体パッドに結合すること、
第3の導電性パッドを前記第4の超伝導体パッドに結合すること
をさらに備える付記12に記載の方法。
(付記19)
第1のワイヤを前記第1の導電性パッドに結合すること、および第2のワイヤを前記第3の導電性パッドに結合することをさらに備える付記18に記載の方法。
(付記20)
前記第1のワイヤと前記第2のワイヤとの間にバイアス電圧が印加されることで前記第1の常伝導金属パッドおよび第2の常伝導金属パッドからホットエレクトロンが除去される、付記19に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14