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特許7358660締め付けボルト内に流動ループを有するコンプレッサ用ロータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】締め付けボルト内に流動ループを有するコンプレッサ用ロータ
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/28 20060101AFI20231002BHJP
【FI】
F04D29/28 Z
F04D29/28 C
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022580989
(86)(22)【出願日】2020-07-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-06-22
(86)【国際出願番号】 EP2020068662
(87)【国際公開番号】W WO2022002406
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2023-03-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521001582
【氏名又は名称】シーメンス エナジー グローバル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS ENERGY GLOBAL GMBH & CO. KG
(74)【代理人】
【識別番号】110003317
【氏名又は名称】弁理士法人山口・竹本知的財産事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100075166
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 巖
(74)【代理人】
【識別番号】100133167
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100169627
【弁理士】
【氏名又は名称】竹本 美奈
(72)【発明者】
【氏名】ミニー,ケビン
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-194217(JP,A)
【文献】特表2016-500420(JP,A)
【文献】特開2006-138255(JP,A)
【文献】特開2003-129997(JP,A)
【文献】特開2001-41191(JP,A)
【文献】特表2016-540927(JP,A)
【文献】実開昭63-92098(JP,U)
【文献】米国特許第06267553(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 1/00-13/16、
17/00-19/02、
21/00-25/16、
29/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサ内のロータ構造であって、
ロータ軸に沿って延在するボアを有する締め付けボルトであって、前記ボアが、前記締め付けボルト内の貫通孔と流通するように内部空間を画定した、前記締め付けボルトと、
前記締め付けボルトによって支持される複数のインペラ本体と、
を含み、
前記複数のインペラ本体のうちの第1のインペラ本体は、プロセス流体に対して圧縮の第1段を提供するように配置され、後続の各インペラ本体は、前記プロセス流体に対して圧縮の後続の段を提供し、
任意の2つの隣接するインペラ本体、又はインペラ本体と隣接するロータ軸とが、それぞれハース・カップリング又はカービック・カップリングによって互いに機械的に連結され、
流体流入部を用いて流動ループが画定され、前記流体流入部は、少なくとも部分的に、前記締め付けボルトの半径方向外面と、前記複数のインペラ本体の各インペラ本体との間に形成される流路に沿って延在し、
さらに、流体戻り部を用いて前記流動ループが画定され、前記流体戻り部の少なくとも一部は、前記締め付けボルトの前記内部空間内を延在する流路によって画定され、
前記貫通孔によって、前記流体流入部と前記流体戻り部の間で流通が成立される、
ロータ構造。
【請求項2】
前記流動ループの前記流体流入部は、前記プロセス流体に曝される第1の位置と流体的につなげられ、かつ、前記流体戻り部は、前記圧縮の最終段の下流に配置された第2の位置と流体的につなげられる、請求項1に記載のロータ構造。
【請求項3】
前記第1の位置と前記第2の位置の間の圧力差は、前記流動ループ内で流体の流れを成立させる、請求項2に記載のロータ構造。
【請求項4】
前記複数のインペラ本体は、一様な態様で前記ロータ軸に沿って配置され、前記締め付けボルトの前記貫通孔は、前記圧縮の第1段の上流点と下流点の間に位置する、請求項2に記載のロータ構造。
【請求項5】
さらに、前記圧縮の最終段の下流に配置されるバランス・ピストンを含み、前記第1の位置は、前記圧縮の最終段の出口に配置され、前記第2の位置は、前記バランス・ピストンを通って前記流体戻り部と流体的につなげられる、請求項4に記載のロータ構造。
【請求項6】
前記複数のインペラ本体は、第1の方向で前記プロセス流体の流れを受け入れるように配置された前記複数のインペラ本体の一部を含む第1の圧縮部と、前記第1の方向と反対方向の第2の方向で前記プロセス流体の流れを受け入れるように配置された前記複数のインペラ本体の残りを含む第2の圧縮部と、を有し、
前記第1の位置は、前記第2の圧縮部の圧縮の最終段の出口に配置され、かつ
前記第2の位置は、前記第1の圧縮部と前記第2の圧縮部の間の隔壁スペーサに配置される、請求項2に記載のロータ構造。
【請求項7】
前記貫通孔は、前記第2の圧縮部の圧縮の第1段の上流点と下流点の間に位置する、請求項6に記載のロータ構造。
【請求項8】
前記流体戻り部の別の部分が、前記締め付けボルトの半径方向外面と、前記第1の圧縮部の各インペラ本体との間に形成されるさらなる流路によって画定される、請求項6に記載のロータ構造。
【請求項9】
さらに、前記締め付けボルトの他の位置に設けられた第2の貫通孔が前記締め付けボルトに画定されて、前記締め付けボルトの内部空間内に延在する流路と、前記さらなる流路との間で流通を成立させるようにした、請求項8に記載のロータ構造。
【請求項10】
前記第2の貫通孔は、前記第1の圧縮部の圧縮の前記第1段の上流点と下流点の間に位置する、請求項9に記載のロータ構造。
【請求項11】
前記複数のインペラ本体の各インペラ本体は、2つの隣接するインペラ本体のそれぞれの各表面と隣接するように、2つの互いに対向する表面を含む、請求項1乃至10のうちのいずれかに記載のロータ構造。
【請求項12】
さらに、前記締め付けボルトに取り付けられる2つのロータ軸を備え、
前記複数のインペラ本体の各インペラ本体は、前記2つのロータ軸の対応するロータ軸の表面と、隣接するインペラ本体とそれぞれ隣接するように、2つの相互に対向する表面を備える、請求項1乃至11のうちのいずれかに記載のロータ構造。
【請求項13】
任意の2つの隣接するインペラ本体、又はインペラ本体と隣接するロータ軸とが、ロータ軸を中心に回転するように、それぞれハース・カップリングによって互いに機械的に連結される、請求項1乃至10のうちのいずれかに記載のロータ構造。
【請求項14】
さらに、前記複数のインペラ本体のうち任意の2つの隣接するインペラ本体のうちの少なくとも一部の各外面上、又は、対応するインペラ本体と隣接するロータ軸の各外面上に、シール要素を配置した、請求項1乃至10のうちのいずれかに記載のロータ構造。
【請求項15】
コンプレッサ内のロータ構造であって、
締め付けボルトと、当該締め付けボルトの各端部に取り付けられる2つのロータ軸と、
前記2つのロータ軸の間に配置されて、前記締め付けボルトによって支持される複数のインペラ本体と、
前記複数のインペラ本体を前記ロータ軸に沿って互いに機械的に連結するように配置された複数のハース・カップリングと、
前記コンプレッサによって処理されるプロセス流体が前記ハース・カップリング上に進むことを抑制するため、前記複数のインペラ本体の任意の2つの隣接するインペラ本体の半径方向外面上に取り付けられるシール素子と、
を含み、
前記2つのロータ軸のそれぞれに対して、前記複数のインペラ本体のうち対応するインペラ本体が隣接する関係にあり、前記対応するインペラ本体は、前記ロータ軸に沿って、前記締め付けボルトの周りで1つ又は複数の空洞部と流通する少なくとも1つの導管を画定し、
前記2つのロータ軸のそれぞれを通る少なくとも1つの導管が含められ、当該少なくとも1つの導管は、前記2つのロータ軸のそれぞれの半径方向内面に第1の開口部を含み、前記ロータ軸に沿って、前記締め付けボルトの周りの1つ又は複数の空洞部と流通する前記少なくとも1つの導管との流通を可能にし、
前記2つのロータ軸のそれぞれの少なくとも1つの導管は、前記2つのロータ軸のそれぞれの半径方向外面に第2の開口部を含み、前記プロセス流体が前記シール素子を通って、前記締め付けボルトの周りの1つ又は複数の空洞部内へと漏れる際に形成される流体の流れ用の出口を提供可能にした、
ロータ構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示される実施形態は、概して、ターボ機械の分野に関し、より詳細には、コンプレッサ等の、ターボ機械に用いられるロータに関する。
【背景技術】
【0002】
ターボ機械は、石油産業及びガス産業で幅広く用いられており、例えば、プロセス流体を圧縮させたり、熱エネルギーを機械的エネルギーへと変換させたり、流体の溶解等を行うために用いられている。このようなターボ機械の一例を挙げると、遠心コンプレッサ等のコンプレッサ(又は圧縮機)がある。
【図面の簡単な説明】
【0003】
図1図1は、ターボ機械(非限定的な例を挙げると、遠心コンプレッサ)を含む工業分野に使用可能な、本開示内容のロータ構造の非限定的な一実施形態の要部断面図である。
図2図2は、一様な構成で配置された複数の圧縮段を含む、本開示内容のロータ構造の非限定的な一実施形態の要部断面図であって、コンプレッサ内の流動ループを示す図である。
図3図3は、背中合わせの構成で配置された複数の圧縮段を含む、本開示内容のロータ構造の非限定的な一実施形態の要部断面図であって、コンプレッサ内の流動ループを示す図である。
図4図4は、特定の非限定的な構造関係及び/又は動作関係を示す要部拡大断面図であって、締め付けボルトの周りに配置される1つ又は複数の空洞部をベントさせるための、本開示内容の実施形態で適用可能なベント構成を示す図である。
図5図5は、締め付けボルトの非限定的な一実施形態の要部を示す図であって、本開示内容の流動ループ内の流通を成立させるボア及び貫通孔の配置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
当業者には理解可能なように、ターボ機械(例えば、遠心コンプレッサ)内では、締め付けボルト又はタイボルト構造(当該技術分野では、他、貫通ボルト、スルーボルト、又はタイロッド構造ともいう)のロータ(又は回転子)が用いられることがある。締め付けボルトは、複数のインペラ本体(又は羽根車本体)を支持しており、複数のインペラ本体のうち隣接するもの同士を互いに連結することがある。その際、弾性的に平均化される連結技術(又はカップリング技術)が用いられることがあるが、例えば、ハース・カップリング(hirth coupling)技術又はカービック・カップリング(curvic coupling)技術が用いられることがある。このような種類のカップリングでは、2つの部品の間で堅固な連結を形成するため、噛み合う歯車の歯又はフェースギヤ歯(それぞれ、直線状又は曲線状)の異なる形態が用いられることがある。
【0005】
このようなカップリングに関連する構造では、大きく変化する力(例えば、遠心力)の影響を受けており、例えば、その力は、開始時のゼロRPM(毎分の回転)のロータ速度から最大のロータ速度(例えば、数万RPM等)まで変化し得る。さらに、このようなカップリング及び関連する構造では、コンプレッサによって処理されるプロセス流体の中に存在し得る汚染物質及び/又は副産物の影響を受けることが起こり得る。その場合、カップリング及び関連する構造が影響を受けて、それらの長期耐久性が影響を受けることが起こり得る。例えば、二酸化炭素(CO2)と、液体の水とが、高圧レベルで組合せられると、炭酸(H2CO3)が形成され得るが、この化学化合物は、鋼部品又は鋼製部品を腐食させたり、錆させたり、又はピット化する(窪みをつける)虞がある。また、プロセス流体中には物理的破片が存在する可能性もあるが、それがハース・カップリングや関連構造物に達すると、それらの機能性及び耐久性が影響を受けることも起こり得る。
【0006】
上記観点から、遠心コンプレッサが一貫して高い性能と長期間の耐久性とを備えることができるように、本開示内容の実施形態では、上記問題点を改善するため、コンプレッサによって処理されるプロセス流体が各ハース・カップリング上にまで達する流れを阻止するように、各ハース・カップリングを覆うように配置されたシール要素(又はシール・エレメント)を備えることできる。
【0007】
ただし、本発明者は、シール要素が用いられたとしても、依然として、締め付けボルトの周りに配置され得る1つ又は複数の空洞部内では、プロセス流体の漏れ又は漏洩が生じ得ることを認識している。上記のような空洞部内にプロセス流体が漏れると、例えば、ロータ構造の空気力学的特性及び/又は回転体動力学的特性が有害な影響を受ける虞がある。例えば、そのような空洞部内に凝縮物又は湿気が閉じ込められると、潜在的に、ロータ振動のレベルの増加を招く虞がある。また、例えば、高圧側の領域から低圧側の領域まで高圧ガスが漏れると、ガスの再循環(リサイクル)が増えて、空気力学的特性が低減する虞がある。そこで、本開示内容の実施形態では、締め付けボルトを介した流通を提供するように流動ループ(又はフローループ)を備えるが、これは、適当に圧力を受けることで、何らかの残留漏れがハース・カップリング上に伝わることを抑制できるように構成されている。本開示内容の実施形態では、排出用出口等のベント構成を選択的に備えて、上記のような空洞部を排出(ベント)させることも可能である。
【0008】
以下に記載される詳細な説明では、上記実施形態について十分に理解することができるように、様々な特定の詳細についても記載されている。しかしながら、当業者であれば、そのような特定の詳細を伴わなくとも、本開示内容の実施形態を実装することが可能であり、本発明の態様は本開示内容の実施形態に限定されず、本発明の態様は様々な他の実施形態によっても実装可能なことを理解するであろう。また、必要以上に冗長な説明を省くべく、当業者であれば理解可能な他の例示、方法、手順、構成部品等についての詳述を割愛している。
【0009】
本発明の実施形態の理解を助けるべく、様々な操作について、複数の分かれたステップとして説明する場合があり得る。ただし、その説明の順番は、特段の但し書きがない限り、例示された順番で行われるべきものとして限定的に解釈されるべきではなく、また、その順番に依存するものとして限定的に解釈されるべきではない。また、「一実施形態」という語句が繰り返して用いられる場合、必ずしも、同一の実施形態を指すとは限らないように、その語句が用いられ得るものとする。
【0010】
また、本開示内容の実施形態は、互いに排他的な実施形態として解釈されるべきではない。当業者であれば、所与の用途の必要性に応じて、開示された複数の実施形態の態様を、適当に組み合わせることができることを理解するであろう。
【0011】
図1には、本開示内容のロータ構造100について、非限定的な一実施形態の要部断面図が例示されている。そのロータ構造100は、ターボ機械を利用する工業的用途に用いることができる。ターボ機械について、非限定的な例として、コンプレッサ(例えば、遠心コンプレッサ等)を挙げることができる。
【0012】
本開示内容の一実施形態では、締め付けボルト102が、ロータ軸103に沿って、締め付けボルト102の第1の端部と第2の端部との間で延在している。締め付けボルト102の第1の端部に対して、第1のロータ軸104を取り付けることができる。また、締め付けボルト102の第2の端部に対して、第2のロータ軸104を取り付けることができる。これらロータ軸104、104は、当該技術分野では、スタブ軸又はスタブシャフトとしても呼ぶことができる。特定の実施形態では、2つよりも多い数のロータ軸を含み得ることを理解されたい。
【0013】
これらロータ軸104、104の間には、複数のインペラ本体106(例えば、インペラ本体106-106)を配置することが可能になっている。例示した実施形態では、インペラ本体の数は6であり、従ってn=6である。なお、この数は一例に過ぎず、この例は、本開示内容の実施形態に用いられるインペラ本体の数を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0014】
一例を挙げると、複数のインペラ本体のうちの第1のインペラ本体106は、プロセス流体を圧縮する第1段を提供することができるように配置されており、これに続く各インペラ本体は、プロセス流体を圧縮する後続の各段を提供することができる。図1及び図3には、それぞれ、中央に取付けられた構成の実施形態が、背中合わせの構成のインペラの圧縮段を有するように例示されている。この構成は、コンプレッサ構成の一例に過ぎず、本開示内容における実施形態の適用可能性を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0015】
背中合わせの構成では、コンプレッサは、例えば、第1のコンプレッサ部を含むが、そこには複数のインペラ本体の幾つかが含まれる。第1のコンプレッサ部の各インペラ本体は、第1の方向に沿って、プロセス流体の流れを受け入れるように配置された入口(インレット)をそれぞれ有している。各インペラ本体の各入口は、各インペラ本体の背面に対向して配置されている。さらに、コンプレッサは、第2のコンプレッサ部を含むが、そこには複数のインペラ本体の残りが含まれる。第2のコンプレッサ部の各インペラ本体は、第1の方向とは反対方向の第2の方向に沿って、プロセス流体の流れを受け入れるように配置された入口をそれぞれ有している。即ち、第1のコンプレッサ部の圧縮段は、第2のコンプレッサ部の圧縮段とは反対方向に向きが定められている。背中合わせの構成の利点の1つを挙げると、その固有の特性として、各コンプレッサ部の複数のインペラ中に生じる軸方向のスラスト力を低減させて、実質的にバランスを取ることができるようになっている。2つのコンプレッサ部が反対方向に向きを定めているので、各部で生じる軸方向スラスト力は反対方向に作用する。このことは、不均衡なスラスト力が生じ得るガス注入作業等の、高圧、高密度の圧縮分野では、特に有益となり得る。
【0016】
再度図1を参照すると、複数のインペラ本体106は、締め付けボルト102によって支持されており、その際、ロータ軸103に沿って、複数のハース・カップリングを用いて互いに機械的に連結されているが、例えば、ハース・カップリング108-108n-1を用いて連結されている。例示した実施形態では、上述したように、インペラ本体の数が6つであるので、隣接するインペラ本体106の間にあるハース・カップリングの数は5つである。この際、追加の2つのハース・カップリング109及び109をそれぞれ用いて、インペラ本体106n、106を、それぞれ対応して隣接するロータ軸104、104に対して機械的に連結することができることを理解されたい。なお、インペラ本体及びハース・カップリングについての上記構成は一例に過ぎず、本発明はその一例に限定されないことを理解されたい。
【0017】
隣接するインペラ本体の間で円周方向に延在する連結部をそれぞれ(例えば360度で)つなげるように、複数のシール要素120を配置することができる。それによって、コンプレッサによって処理されるプロセス流体が、対応するハース・カップリング108まで流れることを抑制することが可能になっている。さらに、インペラ本体(例えば、インペラ本体106;インペラ本体106)と、それらと対応して隣接する2つのロータ軸104、104の各ロータ軸(例えば、ロータ軸104;ロータ軸104)との間で密封機能を提供するために、シール要素140を用いることも可能である。この際、インペラ本体106は、ハース・カップリング109によって、対応するロータ軸104と機械的に連結されており、またインペラ本体106は、ハース・カップリング109によって、対応するロータ軸104と機械的に連結されている。
【0018】
図2には、本開示内容のロータ構造200について、非限定的な一実施形態の要部断面図が例示されている。この際、圧縮の各段は、矢印201で例示しているように、共通の方向に沿って、一様に(同一方向に)整列するように配置されている。図2に概略的に例示するように、本開示内容のロータ構造200は、対応する流動ループ202を含むことができる。流動ループ202について非限定的な一例を挙げると、これは、流体流入部204(概略的に破線で例示している)を用いて画定することができ、少なくとも部分的に、複数のインペラ本体の各インペラ本体と、締め付けボルト102の半径方向外面208との間に形成される流路206に沿って延在する。
【0019】
さらに、流動ループ202は、流体戻り部210(概略的に二点鎖線で例示している)を用いて画定されており、この際、流体戻り部210の少なくとも一部は、締め付けボルト102内を延在する流路(又はフローチャネル)212によって画定されている。例えば、流路212は、締め付けボルト102の中心線上で、ロータ軸103に沿って延在するボア109(図5参照)によって画定される内部空間を通って延在してもよい。さらに、流体流入部204と流体戻り部210の間で流通を成立させるため、締め付けボルト102の中実コアを貫通するように貫通孔214(図5参照)を締め付けボルト102に画定することができる。非限定的な一実施形態では、貫通孔214は、圧縮の第1段(図2の第1段を参照)の上流点と下流点の間に位置することができる。
【0020】
非限定的な一実施形態では、流動ループ202の流体流入部204は、プロセス流体に曝される第1の位置と流体的につなげられており、また、流体戻り部210は、圧縮の段のいずれからも外側の第2の位置と流体的につなげられている。第1の位置と第2の位置の間の圧力差(Δp)が、流動ループ内における流体の流れを成立させている。
【0021】
図2に例示した本開示内容のロータ構造200では、第1の位置は、圧縮の最終段(図2で第4段を参照)の出口に配置することができ、また、第2の位置は、圧縮の最終段の下流に配置されたバランス・ピストン216に配置することができる。当業者ならば容易に理解できるように、バランス・ピストン216と関連してバランス・ピストン・シールが一般的に使用されており、それによって、高圧領域(例えば、第1の位置)を比較的低圧領域(例えば、第2の位置)に対して密封させて、高圧領域から比較的低圧領域まで、締め付けボルトの周りで、残留物の漏れを防止させ、又は少なくとも漏れを低減させている。このバランス・ピストン・シールは、バランス・ピストン216の回転部と静止部との間で軸方向に延在するラビリンス・シールであってもよい。
【0022】
なお、上記の第1の位置と第2の位置との間に形成される圧力差は、コンプレッサの効率に及ぼす影響が小さいように作用するが、それは、そのような位置の間での圧力差は、例えば、圧縮の第1段と圧縮の最終段との間に置かれる圧力差の場合と対比して、比較的に小さいからであり、後者では、比較的に大きい圧力差が形成されるため、流路内に比較的に大きな質量の流れが生じて、コンプレッサの効率の低下をもたらし得る。
【0023】
なお、流体流入部204の上流に配置されたハース・カップリングの位置で生じる圧力レベルと対比して、流体流入部204は、最も高い圧力レベルが生じる位置にある。このため、流動ループ202内の圧力レベルは、その上流のハース・カップリングの位置で生じる圧力レベルと対比して、比較的により高くなり得る。この結果、シール要素120のいずれかを介して残留物の漏れが生じる場合、圧力の影響を受ける流動ループ202は、そのような漏れが各ハース・カップリング内へと侵入することを抑制する上で効果的となる。そうでなければ、そのような漏れが、ハース・カップリングの外径(OD)を介して侵入して、ハース・カップリングの内径(ID)上を進むことが起こり得る。流体流入部204で受け入れられるプロセス流体は、実質的に加圧されていて、温かく、液体凝縮物を一切含んでおらず、第1段の場合と同様で、凝縮物又は湿気が内部空洞部(例えば、締め付けボルトの周りの内部空洞部等)の中に閉じ込められることを抑制することができる。
【0024】
なお、ピストン・シール216内で軸方向に延在するバランス・ピストン・シールでは、その軸方向長さに沿って、何らかのデルタp(又はΔp)降下が生じ得る。従って、流体戻り部210の出口は、所与の態様では、必要に応じて、バランス・ピストン216上の軸方向位置に選択的に位置決めされてもよい。それによって、第1の位置と第2の位置との間で、ちょうど十分な圧力差(Δp)が生じて、流動ループが流動的に作用できるようにする。そして、過度の圧力差(Δp)が生じることにより、過度の質量の流れが流動ループを通って流れて、潜在的に過度の内部リサイクル損失や効率の低下をもたらすことが所与の態様で生じないようにできる。
【0025】
図3には、本開示内容のロータ構造200’について、非限定的な一実施形態の要部断面図が例示されている。この際、例えば、2つの圧縮段(第1段、第2段参照)を含む第1の圧縮部220と、さらなる2つの圧縮段(第3段、第4段参照)を含む第2の圧縮部222との背中合わせの構成では、組み合わされてコンプレッサを形成し、ロータ軸103に沿って複数のインペラ本体が配置されている。この例では、矢印226及び228で概略的に例示しているように、第1の圧縮部220の複数のインペラは、第2の圧縮部222の複数の圧縮段に対して反対方向に向きを定めている。
【0026】
図3に概略的に示すように、本開示内容のロータ構造200’は、それに対応して流動ループ202’を備えているが、これは、概念的には、図2を参照して説明した流動ループ202と類似している。この際、流動ループ202’は、流体流入部204’(概略的に破線で示す)を用いて画定されているが、これは、少なくとも部分的に、締め付けボルト102の半径方向外面208と、第2の圧縮部222の各インペラ本体との間に形成される流路206’に沿って延在する。
【0027】
さらに、流動ループ202’は、流体戻り部210’(概略的に二点鎖線で示す)を用いて画定されており、この際、流体戻り部210’の少なくとも一部は、締め付けボルト102内に延在する流路212’によって画定されている。流路212’は、締め付けボルト102の内部空間を通って延在している。本実施形態では、締め付けボルト102の半径方向外面208と、第1の圧縮部220の各インペラ本体の間に形成されるさらなる流路211によって、流体戻り部210’の別の部分が画定されている。
【0028】
非限定的な例では、流動ループ202’の流体流入部204’は、プロセス流体に曝される第1の位置と流体的につなげられており、また、流体戻り部210’は、圧縮の段のいずれからも外側にある第2の位置と流体的につなげられている。第1の位置と第2の位置の間の圧力差(ΔP)は、流動ループ内における流体の流れを成立させている。
【0029】
本実施形態では、第1の位置は、第2の圧縮部222の圧縮の最終段(第4段)の出口に配置することができ、第2の位置は、中央に位置するバランス・ピストン218(当該技術分野では、隔壁スペーサとしても知られている)に配置することができる。当業者であれば、通常、隔壁スペーサ218と組み合わせて隔壁シールが用いられており、高圧の領域(例えば、第1の位置)を比較的低圧の領域(例えば、第2の位置)に関して密封させて、第4段から第2段までの残留物の漏れを防止させるか、少なくとも低減させることができ、また、高圧の領域204’から比較的低圧の領域210’まで締め付けボルトに関する漏れを防止させるか、少なくとも低減させることができることを理解するであろう。
【0030】
背中合わせのコンプレッサ構成での隔壁スペーサは、一様な(まっすぐ並んだ)コンプレッサ構成でのバランス・ピストンと概念的に類似して機能できることを理解されたい。隔壁は、非回転部品であって、部分的に隔壁シールを保持しており、隔壁シールは、対応する回転部品(隔壁スペーサ)に対して密封機能を提供している。繰り返しになるが、このような第1の位置と第2の位置の間に形成される圧力差は、コンプレッサの効率に対する影響が小さいように作用する。それは、上記の位置の間での圧力差は、例えば、圧縮の第1段と最終段の間に置かれる圧力差での流れの態様と対比して、比較的に低いからであり、後者の場合、比較的に大きな圧力差が形成されるため、流路中に比較的に大きな質量の流れを生じさせて、圧縮の効率の低下をもたらし得る。
【0031】
本実施形態は、少なくとも次の利点を有し得る。図2を参照して説明したように、流体流入部204’は、例えば、残りのハース・カップリングの位置で生じる各圧力レベルと対比して、最も高い圧力レベルが生じ得る位置にあるため、流動ループ202’内の圧力レベルは、上記残りのハース・カップリングの位置で生じる各圧力レベルと対比して、比較的に高くなり得る。このため、シール要素120のいずれかを介して何らかの漏れが生じた場合、圧力の影響を受けている流動ループ202’は、そのような漏れが各ハース・カップリングに侵入することを抑制する上で効果的となる。そうでなければ、そのような漏れは、ハース・カップリングの外径(OD)を介して侵入して、その内径(ID)上を進むことが起こり得る。繰り返しになるが、流体流入部204’で受け入れられるプロセス流体は、実質的に加圧されていて、温かく、いかなる液体凝縮物も含んでいないため、凝縮物や湿気が内部空洞部(例えば、締め付けボルトの周りの内部空洞部等)内に閉じ込められることを抑制することができる。
【0032】
本実施形態では、流体流入部204’と流体戻り部210’の間で流通を成立させる貫通孔214の位置は、第2の圧縮部222の第1の圧縮段(第3段)の上流点と下流点との間であってよい。
【0033】
締め付けボルト102の他の位置に配置される第2の貫通孔230を締め付けボルト102に画定してもよく、それによって、締め付けボルト内を延在する流路212’と、さらなる流路211との間で流通を成立させてもよい。第2貫通孔230の位置は、第1の圧縮部220の圧縮の第1段(第1段)の上流点と下流点との間であってよい。
【0034】
図4には、本開示内容のロータ構造200’’について、非限定的な一実施形態の要部拡大断面図が例示されている。この際、複数のインペラ本体の各インペラ本体(例えば、インペラ本体106)は、ロータ軸104との関係で隣接している。本実施形態では、インペラ本体106は、少なくとも1つの軸方向に延在する導管(流路)160を含むことができ、それは、ロータ軸103に沿って、締め付けボルト102の周りに配置された1つ又は複数の空洞部162と流通可能になっている。
【0035】
非限定的な一実施形態では、少なくとも1つの半径方向に延在する導管164が、ロータ軸104を貫通するように構成することができる。半径方向に延在する導管164は、ロータ軸104の半径方向内面(内周面)168に開口部166を画定することができ、それによって、軸方向に延在する導管160と締め付けボルト102の周りの隙間180とを介した流通を可能にしてもよい。半径方向に延在する導管164は、ロータ軸104の半径方向外面(外周面)172に別の開口部170を画定することができ、それによって、例えば、ロータ軸に沿って締め付けボルトの周りに配置された1つ又は複数の空洞部162内に漏れることがあるプロセス流体を排出することを可能にしてもよい。インペラ本体106と、ロータ軸104とを参照して説明した上記構成は、それらに替えて、インペラ本体106と、それと隣接するロータ軸104図1参照)との組合せで実装することも可能である。
【0036】
図5には、締め付けボルト102について、非限定的な一実施形態の要部が例示されている。締め付けボルト102は、ボア109(概念的には、銃腔孔又はガン・ボア・ホールと類似する)と貫通孔214とを含むが、それらは、締め付けボルト102の中実コアを介した流通を可能にするように配置されている。また、プラグ107を用いて、貫通孔214の下流側でボア109を塞ぐことは可能である。
【0037】
動作上、本開示内容の実施形態では、シール要素を利用することができる。それらは、ハース・カップリングを覆うように適当に配置されて、コンプレッサによって処理されるプロセス流体が、各ハース・カップリング上を通ることを抑制するのに効果的である。このため、ハース・カップリング及び関連構造が、汚染物質、化学的副産物、及び/又は物理的破片に対して潜在的に晒されることを抑制することができる。
【0038】
動作上、本開示内容の実施形態では、図2及び図3を参照して説明したように、少なくとも部分的に締め付けボルトの内部を通る流動ループを用いることができる。動作上、流動ループは適当に圧力を受けることで、残留物のシール漏れがハース・カップリング上まで進むことを抑制することができる。
【0039】
動作上、本開示内容の実施形態では、図4を参照して説明したように、少なくとも部分的に、ロータ構造の複数のロータ軸の1つを通って延在するベント構成を選択的に用いることができる。
【0040】
以上、例示的な態様に基づいて、本開示内容の実施形態を説明した。当業者であれば、添付された特許請求の範囲に記載されているように、本発明の範囲及びその均等物の範囲から逸脱することなく、上記実施形態について、様々に、修正したり、追加したり、及び削除したりすることが可能なことを理解するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5