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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-29
(45)【発行日】2023-10-10
(54)【発明の名称】培養システム
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/36 20060101AFI20231002BHJP
【FI】
C12M1/36
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023030546
(22)【出願日】2023-02-28
(62)【分割の表示】P 2022126544の分割
【原出願日】2022-07-29
【審査請求日】2023-03-01
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 温
(74)【代理人】
【識別番号】100135862
【弁理士】
【氏名又は名称】金木 章郎
(72)【発明者】
【氏名】近藤 昌幸
(72)【発明者】
【氏名】神保 陽一
(72)【発明者】
【氏名】北川 文彦
(72)【発明者】
【氏名】堀岡 悟
(72)【発明者】
【氏名】前田 駿太
【審査官】飯濱 翔太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-174557(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0380923(US,A1)
【文献】特許第7241225(JP,B1)
【文献】国際公開第2013/161885(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/122528(WO,A1)
【文献】特開2015-165783(JP,A)
【文献】特開平07-023766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
C12N 1/00-7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体培養により細胞凝集塊を形成する培養システムであって、
液体を収容し、液体を導出する導出口と液体を導入する導入口とを有する培養部と、
前記導出口と前記導入口とを液体導通可能にする経路部と、
前記培養部と前記経路部との少なくとも一方において、液体中の成分及び/又は液体の性状を監視可能な監視部と、
前記培養部と前記経路部との少なくとも一方において、液体中の成分及び/又は液体の性状を調整可能な調整部と、
前記監視部の監視結果に基づいて前記調整部を制御可能な制御部と、
前記培養部内の液体を攪拌する攪拌部と、を備え、
前記液体培養は、前記攪拌部による攪拌によって液体中の細胞が浮遊される浮遊培養であり、
前記制御部は、所定の攪拌条件に基づいて前記攪拌部を制御し、
前記調整部は、液体に必要成分を付与する成分付与部及び/又は液体から不要成分を除去する成分除去部を有し、
前記制御部は、前記監視部の監視結果に基づいて、前記成分付与部及び/又は前記成分除去部を制御し、液体中の成分及び/又は液体の性状を調整し、
前記制御部は、前記調整部を制御して、培養の進行に基づいて、前記培養部の液体の量を培養開始時の液体の量よりも多くし、
前記導出口は、前記培養開始時の液体の液面よりも高
前記調整部は、培養に必要な気体成分を液体に供給可能な気体交換膜を有する、培養システム。
【請求項2】
前記気体交換膜は、シリコーン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン及びポリメチルペンテンのいずれか一つを含む中空糸ガス交換膜である、請求項に記載の培養システム。
【請求項3】
液体培養により細胞凝集塊を形成する培養システムであって、
液体を収容し、液体を導出する導出口と液体を導入する導入口とを有する培養部と、
前記導出口と前記導入口とを液体導通可能にする経路部と、
前記培養部と前記経路部との少なくとも一方において、液体中の成分及び/又は液体の性状を監視可能な監視部と、
前記培養部と前記経路部との少なくとも一方において、液体中の成分及び/又は液体の性状を調整可能な調整部と、
前記監視部の監視結果に基づいて前記調整部を制御可能な制御部と、
前記培養部内の液体を攪拌する攪拌部と、を備え、
前記液体培養は、前記攪拌部による攪拌によって液体中の細胞が浮遊される浮遊培養であり、
前記制御部は、所定の攪拌条件に基づいて前記攪拌部を制御し、
前記調整部は、液体に必要成分を付与する成分付与部及び/又は液体から不要成分を除去する成分除去部を有し、
前記制御部は、前記監視部の監視結果に基づいて、前記成分付与部及び/又は前記成分除去部を制御し、液体中の成分及び/又は液体の性状を調整し、
前記制御部は、前記調整部を制御して、培養の進行に基づいて、前記培養部の液体の量を培養開始時の液体の量よりも多くし、
前記導出口は、前記培養開始時の液体の液面よりも高く
前記成分付与部及び/又は前記成分除去部を含む接液部が取り付け可能であり、かつ、前記調整部に対して着脱可能なパネルをさらに備える、培養システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、培養システムに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞を培養するシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2013/161885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来の細胞培養システムは、細胞培養液を通過させ、細胞や細胞凝集塊を通過させないフィルターの使用が前提となっている。このため、細胞や細胞凝集塊が局所的にフィルターに押圧され、細胞や細胞凝集塊を損傷させたり分断させたりする可能性があった。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものである。その目的は、細胞凝集塊を的確に成長させることができる培養システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による培養システムの特徴は、
液体培養により細胞凝集塊を形成する培養システムであって、
液体を収容し、液体を導出する導出口と液体を導入する導入口とを有する培養部と、
前記導出口と前記導入口とを液体導通可能にする経路部と、
前記培養部と前記経路部との少なくとも一方において、液体中の成分及び/又は液体の性状を監視可能な監視部と、
前記培養部と前記経路部との少なくとも一方において、液体中の成分及び/又は液体の性状を調整可能な調整部と、
前記監視部の監視結果に基づいて前記調整部を制御可能な制御部と、
前記培養部内の液体を攪拌する攪拌部と、を備え、
前記液体培養は、前記攪拌部による攪拌によって液体中の細胞が浮遊される浮遊培養であり、
前記制御部は、所定の攪拌条件に基づいて前記攪拌部を制御し、
前記調整部は、液体に必要成分を付与する成分付与部及び/又は液体から不要成分を除去する成分除去部を有し、
前記制御部は、前記監視部の監視結果に基づいて、前記成分付与部及び/又は前記成分除去部を制御し、液体中の成分及び/又は液体の性状を調整し、
前記制御部は、前記調整部を制御して、培養の進行に基づいて、前記培養部の液体の量を培養開始時の液体の量よりも多くし、
前記導出口は、前記培養開始時の液体の液面よりも高
前記調整部は、培養に必要な気体成分を液体に供給可能な気体交換膜を有することである。
【発明の効果】
【0007】
細胞凝集塊を的確に成長させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】培養システム1の概要を示すブロック図である。
図2】第1の実施の形態による培養システム1-1の詳細を示すブロック図である。
図3】第2の実施の形態による培養システム1-2の詳細を示すブロック図である。
図4】培養容器110-2における導入口227-2及び導出口231-2の位置を示す概略図である。
図5】監視装置300-2が有する各種のセンサを示すブロック図である。
図6】培養システム1-2の処理の概要を示すタイムチャートである。
図7】培養システム1-2の処理によって成長する細胞凝集塊の状態を示す概略図である。
図8】第3の実施の形態による培養システム1-3の詳細を示すブロック図である。
図9】培養システム1-3の処理の概要を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<<<<培養システム1の概要>>>>
培養システム1は、細胞を培養する培養システムである。具体的には、培養システム1は、細胞を成長させつつ、細胞によって細胞凝集塊を形成するシステムである。なお、細胞が順次に凝集するだけでなく、一旦、凝集した一部の細胞が分離する場合もある。全体として、最終的に所望する大きさの細胞凝集塊を形成できればよい。なお、細胞凝集塊は、大きくなりすぎてもよくない。細胞凝集塊の内側の細胞に栄養を供給できる程度の大きさが好ましい。
【0010】
<<<細胞>>>
細胞は、培養システム1によって培養する対象である。細胞を培養することで、細胞を分裂させて細胞を増やす。細胞同士が接触することで、細胞凝集塊(細胞凝集体)を形成する。培養システム1は、細胞を成長させて、細胞凝集塊を形成するシステムである。
【0011】
細胞は、培地中で細胞凝集塊を形成するものであればよく、特に限定されない。細胞は、哺乳類由来であることが好ましく、ヒト、サルなどの霊長類又はマウス等の研究に一般的に使用される種由来であることが好ましい。細胞の例としては、再生医療に関する研究に使用される細胞、細胞製剤として使用される細胞が挙げられ、具体的には、ES細胞及びiPS細胞などの多能性幹細胞、ネフロン前駆細胞、尿管芽細胞及び間質前駆細胞などの各種前駆細胞、間葉系幹細胞、神経幹細胞及び脂肪幹細胞などの各種幹細胞が挙げられる。細胞は、多能性幹細胞から誘導された細胞、不死化細胞又は株化細胞であってもよく、組織から単離された初代培養細胞であってもよい。また、目的に応じて、正常細胞であってもよく、疾患又は遺伝子異常もしくは導入遺伝子を有する細胞であってもよい。
【0012】
<<<培地>>>
培養システム1で用いる培地は、新規培地と環送培地とがある。新規培地は、後述する培養容器110-1(リアクター)などに新たに供給される培地である。環送培地は、既に培養容器110-1などに供給され培養に使用された培地のうち、循環や廃棄のために環送された培地である。
【0013】
培地は、細胞に応じて適切な培地を選択して使用することができ、特に限定されない。また、細胞培養に有用な従来公知の材料及び添加剤を適宜に使用することができる。基礎培地として、例えば、DMEM、DMEMHG、EMEM、IMDM(Iscove's Modified Dulbecco's Medium)、GMEM(Glasgow's MEM)、RPMI-1640、α-MEM、Ham's Medium F-12、Ham's Medium F-10、Ham's Medium F12K・・・などがある。添加物として、アミノ酸、ビタミン、無機塩類、タンパク質(成長因子)、グルコース、抗生物質、シグナル伝達阻害剤、還元剤、緩衝剤等を添加することが好ましい。さらに血清(好ましくは哺乳動物由来の血清(例えばウシ胎仔血清、ヒト血清等))を添加してもよい。血清の代替として、サプリメントを使用することもできる。
【0014】
<<<細胞懸濁液>>>
細胞懸濁液とは、細胞や細胞凝集塊が培地に分散された系である。培養容器110-1には、細胞懸濁液として細胞や細胞凝集塊及び培地が貯留される。
【0015】
<<<攪拌>>>
攪拌とは、細胞懸濁液中の細胞や細胞凝集塊や培地を変位させることを意味する。攪拌により、培地の変位とともに細胞や細胞凝集塊が変位する。主に、培地の変位(対流)に伴って細胞や細胞凝集塊も変位する。なお、細胞懸濁液に対する動作は、細胞を変位できればよく、攪拌だけでなく、振盪等の動作でもよい。
【0016】
<<<対流>>>
対流とは、培地の流れによって細胞や細胞凝集塊が運ばれる現象をいう。
【0017】
<<<浮遊>>>
浮遊とは、主に、細胞や細胞凝集塊が培養容器(例えば、後述する培養容器110-1など)の壁面に接触していない状態を意味する。培養容器の壁面は、細胞や細胞凝集塊が接触する可能性があるすべての面である。例えば、培養容器が円筒状や角筒状の形状を有する場合には、壁面は、底面及び側面の内側の面である。培養容器が球状の形状を有する場合には、球面の内側の面である。なお、細胞や細胞凝集塊の一部が培養容器の壁面に接触した状態であっても、培地が変位することによって、壁面から容易に離隔できる状態も浮遊に含まれる。
【0018】
<<<剪断応力>>>
剪断応力とは、変位する培地と、細胞や細胞凝集塊との間に、相対的な変位の差から生ずる応力をいう。
【0019】
<<<凝集>>>
凝集とは、細胞同士が集まり、大きな塊を形成することをいう。なお、一旦、凝集した場合でも、培養の過程で、剪断応力などによって細胞や小さい凝集塊が分離する場合もある。分離する場合が含まれても、最終的に細胞凝集塊が大きくなるように培養できればよい。なお、細胞凝集塊の大きさは問わない。少なくとも2つの細胞同士が凝集した状態は細胞凝集塊に含まれる。細胞同士が凝集した状態を細胞凝集体と称してもよい。
【0020】
<<<<培養システム1の構成>>>>
図1は、培養システム1の構成の概略を示すブロック図である。
【0021】
<<培養システム1の第1の態様>>
培養システム1の第1の態様によれば、
液体培養により細胞凝集塊を形成する培養システム1であって、
液体を収容し、液体を導出する導出口12と液体を導入する導入口14とを有する培養部10と、
前記導出口12と前記導入口14とを液体導通可能にする経路部20と、
前記培養部10と前記経路部20との少なくとも一方において、液体中の成分及び/又は液体の性状を監視可能な監視部30と、
前記培養部10と前記経路部20との少なくとも一方において、液体中の成分及び/又は液体の性状を調整可能な調整部40と、
前記監視部30の監視結果に基づいて前記調整部40を制御可能な制御部50と、を備える培養システム1が提供される。
【0022】
培養システム1は、液体培養によって細胞凝集塊を形成するためのシステムである。 培養システム1は、
培養部10と、
経路部20と、
監視部30と、
調整部40と、
制御部50と、
を備える。
【0023】
<培養部10>
培養部10は、液体を収容する。培養部10は、導出口12と導入口14とを有する。導出口12は、培養部10から液体を導出する口である。導入口14は、液体を培養部10に導入するための口である。
【0024】
<液体>
液体は、培養部10に収容されることができ、導出口12から導出され、導入口14から導入できる流動可能な媒体であればよい。例えば、液体は、培地や細胞懸濁液などにすることができる。
【0025】
<経路部20>
経路部20は、導出口12と導入口14とを液体導通可能にする。経路部20は、導出口12と導入口14とを連通する。経路部20によって、導出口12と導入口14との間で液体が流動することができる。
【0026】
<監視部30>
監視部30は、液体中の成分及び/又は液体の性状を監視できる。監視部30は、液体中の成分と液体の性状とのうちの少なくとも一方を監視できる。監視部30は、培養部10と経路部20との少なくとも一方において、液体中の成分や液体の性状を監視できる。
【0027】
<調整部40>
調整部40は、液体中の成分及び/又は液体の性状を調整できる。調整部40は、液体中の成分と液体の性状とのうちの少なくとも一方を調整できる。調整部40は、培養部10と経路部20との少なくとも一方において、液体中の成分や液体の性状を調整できる。
【0028】
<制御部50>
制御部50は、監視部30の監視結果に基づいて調整部40を制御することができる。
【0029】
液体中の成分や液体の性状を監視し、その監視結果に基づいて、液体中の成分や液体の性状を調整するので、的確に細胞を成長させて細胞凝集塊を形成することができる。
【0030】
<<培養システム1の第2の態様>>
培養システム1の第2の態様は、第1の態様において、
前記培養部10内の液体を攪拌する攪拌部60をさらに備え、
前記制御部50は、所定の攪拌条件に基づいて前記攪拌部60を制御する。
【0031】
<<培養システム1の第3の態様>>
培養システム1の第3の態様は、第2の態様において、
前記液体培養は、前記攪拌部60による攪拌によって液体中の細胞が浮遊される浮遊培養である。
【0032】
<<培養システム1の第4の態様>>
培養システム1の第4の態様は、第2の態様において、
前記攪拌部60は、液体を流動させる可動体62を有する。
【0033】
<<培養システム1の第5の態様>>
培養システム1の第5の態様は、第2の態様において、
前記攪拌部60は、前記培養部10を振盪させる振盪機構64を有する。
【0034】
<<培養システム1の第6の態様>>
培養システム1の第6の態様は、第2の態様において、
前記所定の攪拌条件は、細胞の核形成及び細胞凝集塊のサイズに基づいて予め決定された条件である。
【0035】
前述したように、監視部30は、液体中の成分と液体の性状とのうちの少なくとも一方を監視する。監視部30は、監視した結果、少なくとも一つの性状情報や、少なくとも一つの成分情報や、細胞凝集塊のサイズに関するサイズ情報などの各種の情報を出力する。所定の攪拌条件は、監視部30から出力された各種の情報に基づいて決定される。
【0036】
例えば、監視部30は、後述するように、細胞凝集塊を撮像する撮像部32を有する。撮像部32は、細胞凝集塊の大きさを決定できるサイズ情報を出力する。制御部50は、監視部30が出力したサイズ情報を取得する。制御部50は、サイズ情報から細胞凝集塊の大きさを決定することができる。制御部50は、細胞凝集塊の大きさに基づいて所定の攪拌条件を決定する。例えば、細胞凝集塊の大きさに応じて攪拌速度を決定する。
【0037】
<攪拌部60>
培養システム1は、攪拌部60をさらに備える。攪拌部60は、培養部10内の液体を攪拌する。攪拌部60は、所定の攪拌条件で培養部10内の液体を攪拌する。制御部50は、所定の攪拌条件を満たすように攪拌部60を制御して動作させる。
【0038】
攪拌部60は、液体を流動させる可動体62を有してもよい。攪拌部60は、培養部10を振盪させる振盪機構64を有してもよい。攪拌部60は、細胞凝集塊を適切に形成するために、液体を変動(振動、変位など)させるものであればよい。
【0039】
所定の攪拌条件は、細胞凝集塊を適切に形成するための条件である。なお、所定の攪拌条件は、培養の段階に応じて異なる。所定の攪拌条件は、細胞同士については接触する可能性を高め、かつ、形成した細胞凝集塊同士については、接着(肥大化)しないよう分散させるとともに、形成した細胞凝集塊に加わる剪断応力が大きくならないようにする条件である。所定の攪拌条件をこのように定めることで、まず、細胞同士が接触する可能性を高め、細胞凝集塊を形成しやすくできる。さらに、形成した細胞凝集塊を適度に分散させることで、細胞凝集塊同士が接着(肥大化)しないようにできる。さらにまた、細胞凝集塊に加わる剪断応力が大きくならないようにすることで、形成された細胞凝集塊が分断されることを防止できる。
【0040】
所定の攪拌条件は、細胞の核形成及び細胞凝集塊のサイズに基づいて予め決定されている。所定の攪拌条件は、細胞の核形成の程度や細胞凝集塊のサイズに応じて、互いに異なる攪拌条件にすることができる。細胞凝集塊の成長に応じた適切な攪拌条件にすることができる。所定の攪拌条件は、予備実験などによって予め定められ、補助記憶装置など(図示せず)に記憶される。制御部50は、補助記憶装置から所定の攪拌条件を読み出して、攪拌部60を制御する。
【0041】
監視部30は、少なくとも一つの性状情報や、少なくとも一つの成分情報や、細胞凝集塊のサイズに関するサイズ情報などの各種の情報を出力する。所定の攪拌条件は、監視部30から出力された各種の情報に基づいて決定される。例えば、監視部30は、後述するように、細胞凝集塊を撮像する撮像部32を有する。撮像部32は、細胞凝集塊の大きさを決定できるサイズ情報を出力する。また、監視部30は、光学分析、例えば、ラマン分光などによって、グルコースや乳酸の濃度を測定する。制御部50は、監視部30が出力したサイズ情報を取得する。制御部50は、サイズ情報から細胞凝集塊の大きさを決定することができる。制御部50は、細胞凝集塊の大きさに基づいて所定の攪拌条件を決定する。例えば、細胞凝集塊の大きさが所定の大きさ以上となった場合には、細胞凝集塊の大きさに応じて攪拌速度を決定する。
【0042】
<<培養システム1の第7の態様>>
培養システム1の第7の態様は、第1の態様ないし第6の態様において、
前記培養部10及び前記経路部20の少なくとも一部を内部に収納可能な恒温槽80を、さらに備える。
【0043】
<恒温槽80>
恒温槽80は、培養部10と経路部20との少なくとも一方の少なくとも一部を収容できる。培養部10や経路部20を恒温槽80に収納することで、安定した環境下で細胞凝集塊を形成することができる。なお、安定した環境で細胞凝集塊を形成できれば、恒温槽80を用いなくてもよい。
【0044】
<<培養システム1の第8の態様>>
培養システム1の第8の態様は、第1の態様ないし第7の態様において、
前記培養部10及び前記経路部20の液体を外部から加温可能な外部ヒーター82を、さらに備える。
【0045】
<外部ヒーター82>
外部ヒーター82は、培養部10内の液体や、経路部20の液体を外部から加温できる。外部ヒーター82によって液体を温めることで、細胞凝集塊の形成に適切な環境にすることができる。
【0046】
<<培養システム1の第9の態様>>
培養システム1の第9の態様は、第1の態様ないし第8の態様において、
前記導出口12は、培養開始時の液体の液面よりも高い。
【0047】
培養を開始する時点においては、導出口12は、培養部10に収容されている液体の液面よりも高い。言い換えれば、培養を開始する時点においては、液体の液面が、導出口12よりも低くなるように、液体は培養部10に収容されている。
【0048】
フィルター又は物理的な機構などにより、成長していない細胞や小さい細胞凝集塊が、導出口12から排出されるのを防止できる。
【0049】
<<培養システム1の第10の態様>>
培養システム1の第10の態様は、第1の態様ないし第9の態様において、
前記監視部30は、液体の性状に関する情報として、液体の温度に関する情報と、液体の水素イオン濃度に関する情報と、液体中の溶存酸素濃度に関する情報と、のうちの少なくとも一つの性状情報を出力可能であり、
前記制御部50は、前記監視部30が出力した前記少なくとも一つの性状情報を取得する。
【0050】
<液体の性状に関する情報(性状情報)>
液体の性状に関する情報には、例えば、
液体の温度に関する情報や、
液体の水素イオン濃度に関する情報や、
液体中の溶存酸素濃度に関する情報など
がある。
【0051】
<制御部50の制御>
監視部30は、これらの情報のうちの少なくとも一つの性状情報を出力できる。監視部30から出力された性状情報は、制御部50に供給される。制御部50は、これらの少なくとも一つの性状情報を取得することができる。監視部30は、取得した少なくとも一つの性状情報を用いて、調整部40や攪拌部60などを制御することができる。
【0052】
<<培養システム1の第11の態様>>
培養システム1の第11の態様は、第1の態様ないし第10の態様において、
前記監視部30は、液体中の成分に関する情報として、電解質に関する情報、アミノ酸に関する情報、グルコースに関する情報、乳酸に関する情報のうちの少なくとも一つの成分情報を出力可能であり、
前記制御部50は、前記監視部30が出力した前記少なくとも一つの成分情報を取得する。
【0053】
前記監視部30は、液体中の成分に関する情報として、アンモニアに関する情報を出力できるようにしてもよい。
【0054】
<液体中の成分に関する情報>
液体中の成分に関する情報(成分情報)には、例えば、
電解質に関する情報
アミノ酸に関する情報
グルコースに関する情報
乳酸に関する情報など
がある。
【0055】
<制御部50の制御>
監視部30は、これらの情報のうちの少なくとも一つの成分情報を出力できる。監視部30から出力された成分情報は、制御部50に供給される。制御部50は、これらの少なくとも一つの成分情報を取得することができる。監視部30は、取得した少なくとも一つの成分情報を用いて、調整部40や攪拌部60などを制御することができる。
【0056】
<<培養システム1の第12の態様>>
培養システム1の第12の態様は、第1の態様ないし第11の態様において、
前記監視部30は、前記培養部10内の細胞凝集塊のサイズに関するサイズ情報を出力可能であり、
前記制御部50は、前記監視部30が出力したサイズ情報を取得する。
【0057】
監視部30は、培養部10内に存在する細胞凝集塊のサイズに関するサイズ情報を出力することができる。監視部30から出力されたサイズ情報は、制御部50に供給される。制御部50は、サイズ情報を取得することができる。監視部30は、取得したサイズ情報を用いて、調整部40や攪拌部60などを制御することができる。
【0058】
<<培養システム1の第13の態様>>
培養システム1の第13の態様は、第12の態様において、
前記監視部30は、前記培養部10の細胞凝集塊を撮像する撮像部32を有し、
前記制御部50は、細胞凝集塊の撮像データから細胞凝集塊のサイズを前記サイズ情報として取得する。
【0059】
監視部30は、撮像部32を有する。撮像部32は、培養部10の細胞凝集塊を撮像する。撮像部32は、細胞凝集塊だけでなく、細胞凝集塊とともに液体なども撮像することができる。撮像部32は、サイズ情報を出力する。サイズ情報は、撮像部32が細胞凝集塊などを撮像した撮像データなどにすることができる。サイズ情報は、細胞凝集塊の大きさを決定できるデータを含んだ情報であればよい。
【0060】
制御部50は、監視部30が出力したサイズ情報を取得する。制御部50は、取得したサイズ情報に各種の画像処理などを施して細胞凝集塊の大きさを決定する。例えば、各種の画像処理によって細胞凝集塊の輪郭などを抽出し、細胞凝集塊の大きさを決定することができる。
【0061】
また、制御部50は、培養部10を撮像した様々な撮像データと、これらの撮像データの各々に対応する細胞凝集塊の大きさの実測値とを教師データとして事前に機械学習しておくことで、撮像データから学習結果を参照して細胞凝集塊の大きさを決定するように構成してもよい。
【0062】
なお、撮像部32が各種の画像処理を実行したり各種の演算処理などを実行したりできる機能を有する場合(例えば、スマートカメラなど)には、撮像部32において撮像データから細胞凝集塊の大きさを決定して出力することができる。この場合には、サイズ情報は、細胞凝集塊の大きさを示す情報となる。制御部50は、細胞凝集塊の大きさを直接取得することができる。
【0063】
<<培養システム1の第14の態様>>
培養システム1の第14の態様は、第1の態様ないし第13の態様において、
前記調整部40は、液体に必要成分を付与する成分付与部42及び/又は液体から不要成分を除去する成分除去部44を有し、
前記制御部50は、前記監視部30の監視結果に基づいて、前記成分付与部42及び/又は前記成分除去部44を制御し、液体中の成分及び/又は液体の性状を調整する。
【0064】
調整部40は、成分付与部42及び/又は成分除去部44を有する。調整部40は、成分付与部42と成分除去部44とのうちの少なくとも一方を有する。成分付与部42は、液体に必要成分を付与する。成分除去部44は、液体から不要成分を除去する。
【0065】
制御部50は、監視部30が出力した監視結果に基づいて、成分付与部42や成分除去部44を制御する。成分付与部42や成分除去部44の制御により、液体中の成分や液体の性状を調整することができる。液体中の成分や液体の性状を調整することにより、培養部10の環境を細胞凝集塊の成長に適切な状態にすることができる。
【0066】
<<培養システム1の第15の態様>>
培養システム1の第15の態様は、第1の態様ないし第14の態様において、
前記調整部40は、培養に必要な気体成分を液体に供給可能な気体交換膜46を有する。
【0067】
調整部40は、気体交換膜46(例えば、後述する気体交換モジュール416-1など)を有する。気体交換膜46は、培養に必要な気体成分を液体に供給できる。培養に必要な気体成分の供給により、培養部10の環境を細胞凝集塊の成長に適切な状態にすることができる。
【0068】
<<培養システム1の第16の態様>>
培養システム1の第16の態様は、第15の態様において、
前記気体交換膜46は、シリコーン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン及びポリメチルペンテンのいずれか一つを含む中空糸ガス交換膜である。
【0069】
中空糸ガス交換膜を用いるので、目詰まりしにくい均質膜により長期間の使用が可能となり、システムの小型化を図ることができる。
【0070】
<<培養システム1の第17の態様>>
培養システム1の第17の態様は、第1の態様ないし第16の態様において、
前記調整部40は、透析膜を有する。
【0071】
調整部40は、透析膜(例えば、後述する透析モジュール412-1や透析モジュール472-3など)を有するので、栄養素や代謝産物の組成を連続的に是正したり、成長因子を再利用したりして培地を調整して、長期間に亘って培地を使用し続けることができる。
【0072】
<<培養システム1の第18の態様>>
培養システム1の第18の態様は、第1の態様ないし第17の態様において、
前記制御部50は、前記監視部30の監視結果に基づいて、前記調整部40を制御して、液体にpH調整剤を添加して液体の水素イオン濃度を調整する。
【0073】
細胞の培養に適切な水素イオン濃度範囲に維持することができる。適切な水素イオン濃度範囲は、細胞の種類によって異なり、哺乳類由来の細胞では、例えば、pH7.2以上7.4以下に制御することが好ましい。
【0074】
<<培養システム1の第19の態様>>
培養システム1の第19の態様は、第1の態様ないし第18の態様において、
前記監視部30は、液体と接する気体中の二酸化炭素濃度に関する情報を、さらに、出力可能であり、
前記制御部50は、前記監視部30の二酸化炭素濃度に関する情報に基づいて、前記調整部40を制御して、二酸化炭素を供給して液体の水素イオン濃度を調整する。
【0075】
二酸化炭素濃度に関する情報も利用することで、細胞を培養する環境を的確に維持することができる。
【0076】
<<培養システム1の第20の態様>>
培養システム1の第20の態様は、第1の態様ないし第19の態様において、
前記調整部40は、調整用の成分毎の流量を調整する流量調整部48を有し、
前記制御部50は、前記監視部30の監視結果に基づいて、前記流量調整部48を制御する。
【0077】
調整部40は、流量調整部48を有する。流量調整部48は、調整用の成分毎の流量を調整する。流量調整部48は、例えば、バルブやポンプなどにすることができる。なお、ポンプは、流量調整が可能であればよく、例えば、ローラーポンプ、往復動ポンプ、遠心ポンプ、プロペラポンプなどにすることができる。バルブの開閉の頻度などで流量を調整することができる。ポンプの回転数やポンプの駆動の頻度などで、流量を調整することができる。流量調整部48は、成分毎に別個に流量を調整できる。成分毎に流量を調整できるので、細胞凝集塊の成長に必要な成分を過不足なく培養部10に供給することができる。
【0078】
<<培養システム1の第21の態様>>
培養システム1の第21の態様は、第1の態様ないし第20の態様において、
前記調整部40は、本体部86と、本体部86に対して着脱可能なパネル84と、を有する。
【0079】
本体部86は、主に、固定的に設置されたり配置されたりする部品や部材である。本体部86は、筐体など(図示せず)を有する。本体部86の筐体の外面部は、フックなどの掛止部材を有する。パネル84は、掛止部材に掛止されたり係止されたりする。パネル84は、本体部86から取り外したり、本体部86に取り付けたりすることができる。なお、パネル84は、本体部86の一定の位置に着脱可能であればよく、フックなどの機構的なもののほか、マグネットなどの各種の係止機構を用いることができる。
【0080】
<本体部86及び非接液部>
調整部40は、非接液部と接液部とを有する。非接液部は、主に、流動する液体と接触しない部品や部材などである。例えば、非接液部は、液体を流動させるためのポンプを作動させるための電動モータや、電動モータを駆動するための駆動回路や、液体を貯留する液体貯留部42a及び44a(例えば、タンクなど)や、貯留部を冷却するための冷却装置などの非消耗品である。本体部86には、非接液部を構成する部品や部材が、収納されたり設置されたりする。液体貯留部42a及び44aについては後述する。
【0081】
<パネル84及び接液部>
接液部は、主に、流動する液体と接触する部品や部材などである。例えば、接液部は、環送管や供給管などのほか、前述した成分付与部42や成分除去部44や気体交換膜46や透析膜などである。接液部は、主に、消耗品等として扱われる部品や部材からなる。パネル84には、接液部を構成する部品や部材が取り付けられる。パネル84に設けることで、調整部40に関連する部品や部材の交換作業を容易にかつ簡便にすることができる。
【0082】
具体的には、調整部40で用いる部材や部品のうち、接液する(滅菌が必要な)部材や部品を脱着可能なパネル84に配置する。特に、環送管や供給管や、これらを接続するためのコネクタなどの消耗部品や使い捨て部品として扱う部材や部品などをパネル84に設けるように構成し、これらの部材や部品などをパネル84に予め設けておくことで、迅速かつ容易にパネル84の交換作業などをすることができる。なお、交換頻度などから酸素供給モジュールなどのモジュールをパネル84に設けてもよい。
【0083】
配管やコネクタなどの部品は、パネル84において事前に互いに連結されて配置される。このようにすることで、配管やコネクタなどの部品を、事前にパネル84においてポンプやバルブと連通可能な状態に形成しておくことができる。
【0084】
パネル84では、配管やコネクタなどの複数の部品が互いに干渉しないように配置しておくことができ、作業性を高めることができる。さらに、複数の部品の状態を視認しやすいので、交換などの必要性を容易に認識することができる。
【0085】
なお、パネル84の大きさや形状などは問わない。パネル84は、配管やコネクタなどの複数の部品を搭載でき、ポンプやバルブなどの他の部材に対して着脱可能なものであればよい。
【0086】
<<培養システム1の第22の態様>>
培養システム1の第22の態様は、第1の態様ないし第21の態様において、
前記経路部20から液体を排出可能な廃棄部70を、さらに備える。
【0087】
廃棄部70に液体を排出できるので、培養部10に収容する液体の液体中の成分や液体の性状を細胞凝集塊の成長に必要なもののみに調整できる。培養部10に収容する液体を適量に調整することができる。
【0088】
<<培養システム1の第23の態様>>
培養システム1の第23の態様は、第22の態様において、
前記経路部20から液体を前記廃棄部70に排出させる排出機構72を、さらに備え、
前記制御部50は、前記排出機構72を制御して、前記培養部10の液体を、循環プライミングとして前記経路部20に流動させた後に、前記廃棄部70に排出させる。循環プライミングは、経路部20の共洗い及び経路部20への培地充填ために行う処理である。さらに、気体交換モジュールや透析モジュールや酸素供給モジュールなどの各種のモジュールを有する場合には、モジュールも循環プライミングによって共洗いすることができる。
【0089】
培養部10の液体を、循環プライミングとして経路部20に流動させて排出するので、 培養部10の液体を有効に活用することができる。
【0090】
<<培養システム1の第24の態様>>
培養システム1の第24の態様は、第1の態様ないし第23の態様において、
前記制御部50は、前記監視部30の監視結果に基づいて、液体中の成分及び/又は液体の性状を所定の値又は所定の範囲に制御する。
【0091】
細胞凝集塊の成長の程度や液体の状態に応じて、細胞凝集塊を的確に成長させ続けることができる。
【0092】
<<培養システム1の第25の態様>>
培養システム1の第25の態様は、第1の態様ないし第24の態様において、
前記制御部50は、前記調整部40を制御して、培養の進行に基づいて、前記培養部10の液体の量を培養開始時の液体の量よりも多くする。
【0093】
細胞の大きさや細胞凝集塊の成長の程度に応じて、液体の量を定めるので、細胞や細胞凝集塊が培養部10から導出されることを防止して、細胞や細胞凝集塊を培養部10内に留まらせて細胞凝集塊を成長させることができる。
【0094】
<<培養システム1の第26の態様>>
培養システム1の第26の態様は、第25の態様において、
前記制御部50は、
前記培養部10の液体の量が前記培養開始時の液体の量であるときに、第1の攪拌制御と前記第1の攪拌制御とは異なる第2の攪拌制御とを交互に切り替えて前記攪拌部を制御する第1の処理を実行する。
【0095】
細胞同士を接触しやすくして細胞凝集塊が形成されやすい状態と、形成された細胞凝集塊を安定化させる状態との双方の状態を繰り返すことで、培養部10内で的確に細胞凝集塊を成長させることができる。
【0096】
<<培養システム1の第27の態様>>
培養システム1の第27の態様は、第26の態様において、
前記制御部50は、
前記第1の処理の後に、前記攪拌部を前記第1の攪拌制御によって動作させ、かつ、前記培養部10の液体の量を前記調整部40によって段階的に調整させる第2の処理を実行する。
【0097】
細胞凝集塊の大きさに応じて細胞凝集塊を徐々に成長させて、培養部10から導出されない程度の大きさに近づくように成長させることができる。
【0098】
<<培養システム1の第28の態様>>
培養システム1の第28の態様は、第27の態様において、
前記制御部50は、前記調整部40を制御して、
前記第2の処理の後に、前記培養部10の液体の液面が前記導出口12よりも高いときに、前記経路部20を介して前記液体を交換する第3の処理を実行する。
【0099】
細胞凝集塊を培養部10から導出されない程度の大きさまでに成長させることができ、液体を循環させることで、細胞凝集塊を最終的に所望する大きさに至るまで成長させることができる。
【0100】
<<遮光部分SP>>
図1に示すように、恒温槽80、経路部20及び調整部40は、遮光部材(遮光部分SP)によって遮光されている。恒温槽80、経路部20及び調整部40を遮光することにより、添加物等の光劣化や分解を防ぐことで液体(例えば、培地)の寿命を長くするとともに、監視部30による監視結果の精度、例えば、培地成分の測定や、撮像等の精度を向上させることができる。
【0101】
<<冷却部分CP>>
図1に示すように、調整部40の成分付与部42は、成分付与に関連する液体を貯留する液体貯留部42aを有し、成分除去部44は、成分除去に関連する液体を貯留する液体貯留部44aを有する。成分付与部42の液体貯留部42a及び成分除去部44の液体貯留部44aは、冷却部材(冷却部分CP)によって冷却されている。液体貯留部42a及び44aを冷却することにより、添加物等の劣化や分解を防ぐことができる。
【0102】
<<<<第1の実施の形態~第3の実施の形態>>>>
以下では、第1の実施の形態~第3の実施の形態による培養システムについて説明する。なお、以下はあくまで一例であり、本明細書中において一例として挙げている第1の実施の形態~第3の実施の形態や変更例などは、特定のものに対して適用されると限定的に解すべきでなく、どのような組み合わせであってもよい。例えば、ある実施の形態についての変更例は、他の実施の形態の変更例でもある。また、ある変更例と別の変更例が独立して記載されていたとしても、ある変更例と別の変更例を組み合わせたものも記載されていると理解すべきである。
【0103】
<<<<第1の実施の形態の詳細>>>>
送液ポンプなどで培地を流動させる培養システムを用いて細胞凝集塊を培養する場合に、培地の流動に伴って細胞凝集塊が分離フィルターを通過したときには、細胞凝集塊が分離する可能性が生ずる。このため、ある程度のサイズ(細胞分離フィルターの孔径以上)にまで細胞凝集塊を成長させないと、この培養システムを適用することが困難になり得る。このため、細胞凝集塊のプレ培養を別に必要になり得た。
【0104】
また、細胞の種類やロットによっては、増殖率(凝集塊成長速度)が異なることが知られている。このため、培養過程では、培養環境を監視し、培養条件を制御することが必要となる。しかしながら、従来の培養システムでは、培養槽内の流量を一定にする制御のみが行われていた。このため、細胞の種類やロットが異なった場合には、従来の培養システムでは、培養条件(循環流量など)の最適化に時間がかかる可能性があった。
【0105】
以下では、第1の実施の形態について図面に基づいて説明する。図2は、第1の実施の形態による培養システム1-1の概略構成を示す構成図である。
【0106】
培養システム1-1は、主に、
培養装置100-1と、
経路構造体200-1と、
監視装置300-1と、
調整装置400-1と、
制御装置500-1と、
攪拌装置600-1と、
を備える。
【0107】
<<培養装置100-1>>
培養装置100-1は、培養容器110-1を有する。培地及び細胞が、培養容器110-1に収容される。細胞は、培養容器110-1で培養される。培養容器110-1内で、細胞を培養し、細胞同士の接触により細胞凝集塊を成長させる。培養装置100-1では、細胞凝集塊のサイズを制御しつつ、細胞凝集塊を成長させる。
【0108】
<<経路構造体200-1>>
経路構造体200-1は、培養装置100-1と調整装置400-1との間に介在する。培養容器110-1は、導出口112-1及び導入口114-1を有する。導出口112-1及び導入口114-1は、経路構造体200-1に接続される。経路構造体200-1は、導出口112-1及び導入口114-1と連通する。
【0109】
培養容器110-1に収容されている培地が、導出口112-1から導出されて経路構造体200-1を経て、調整装置400-1に供給される。調整装置400-1の培地は、経路構造体200-1を経て、導入口114-1から培養容器110-1に導入される。経路構造体200-1は、培養装置100-1と調整装置400-1との間で培地を流動させることができる。
【0110】
<<監視装置300-1>>
監視装置300-1は、培養装置100-1における、細胞や培地の状態を監視する。例えば、第1の実施の形態による培養システム1-1では、監視装置300-1は、成分等監視装置310-1からなる。成分等監視装置310-1は、pH、溶存酸素、グルコース、乳酸、温度、凝集塊サイズを検出する。成分等監視装置310-1は、検出したpH、溶存酸素、グルコース、乳酸、温度、凝集塊サイズを示す情報(成分等に関する情報)を出力する。成分等監視装置310-1から出力された成分に関する情報は、制御装置500-1に供給される。
【0111】
<<調整装置400-1>>
調整装置400-1は、制御装置500-1から発せられた指示情報(コマンドや指示量など)に従って、気体交換モジュール416-1や透析モジュール412-1を制御する。培養容器110-1から調整装置400-1に供給された培地が、気体交換モジュール416-1や透析モジュール412-1によって調整される。調整された培地は、培養容器110-1に戻される。
【0112】
調整装置400-1は、物質交換技術によって、培地を調整する。例えば、調整装置400-1は、酸素を富化させたり、栄養素や代謝産物の組成を連続的に是正したり、培地中に残っている成長因子を再利用したりして、培地を調整する。なお、残っている成長因子は、新規の培地に添加したものと細胞が産生したものとの双方が含まれる。
【0113】
<<制御装置500-1>>
制御装置500-1は、監視装置300-1の成分等監視装置310-1から出力された成分に関する情報を受信する。制御装置500-1は、成分に関する情報に応じて、指示情報を生成して出力する。指示情報は、培地組成に応じて、操作条件を変更したり、pH調整剤や成長因子などを追加したりする情報である。
【0114】
<<攪拌装置600-1>>
攪拌装置600-1は、培養装置100-1の培養容器110-1に収容されている培地を攪拌する。培地を攪拌することにより、細胞同士を接触しやすくして、細胞凝集塊を成長させる。前述したように、所定の攪拌条件は、培養の段階に応じて異なる。所定の攪拌条件は、細胞同士については接触する可能性を高め、かつ、形成した細胞凝集塊同士については、接着(肥大化)しないよう分散させ、かつ、形成した細胞凝集塊に加わる剪断応力が大きくならないようにする条件である。所定の攪拌条件をこのように定めることで、細胞同士が接触する可能性を高めることで、細胞凝集塊を形成しやすくできる。形成した細胞凝集塊を適度に分散させることで、細胞凝集塊同士が接着(肥大化)しないようにできる。細胞凝集塊に加わる剪断応力が大きくならないようにすることで、形成された細胞凝集塊が分断されることを防止できる。
【0115】
<<<<第2の実施の形態の詳細>>>>
以下では、第2の実施の形態について図面に基づいて説明する。
【0116】
図3は、第2の実施の形態による培養システム1-2の詳細を示すブロック図である。図4は、培養容器110-2における導入口227-2及び導出口231-2の位置の関係を示す概略図である。なお、図3に示す矢印を有する破線は、制御関連の信号の入力や出力を示す。さらに、図3で破線で囲んだ2つの領域は、それぞれ、遮光する構成要素を示す遮光部分SPと、冷却した構成要素を示す冷却部分CPとである。
【0117】
<<<培養システム1-2の構成>>>
培養システム1-2は、主に、
培養装置100-2と、
経路構造体200-2と、
監視装置300-2と、
調整装置400-2と、
制御装置500-2と、
攪拌装置600-2と、
を有する。
【0118】
<<経路構造体200-2>>
経路構造体200-2は、
供給系220-2と、
環送系230-2と、
を有する。
【0119】
<供給系220-2>
供給系220-2は、
供給管222-2と、
供給管224-2と、
供給管226-2と、
を有する。供給系220-2によって、培地は、培養装置100-2に導入される。
【0120】
<環送系230-2>
環送系230-2は、
環送管232-2と、
環送管234-2と、
環送管236-2と、
環送管238-2と、
を有する。培養装置100-2に収容されている培地は、環送系230-2に導出される。環送系230-2に導出された培地は、供給系220-2に戻される(環送される)。
【0121】
<循環系240-2>
供給系220-2及び環送系230-2によって循環系240-2が構成される。
【0122】
<<新規培地及び環送培地>>
培地には、新規培地又は環送培地がある。
【0123】
<新規培地>
新規培地は、後述する培地タンク452-2に貯留されている新たな培地である。新規培地は、培地タンク452-2から培養装置100-2に供給される。
【0124】
<環送培地>
環送培地は、培養装置100-2に既に貯留されて、細胞の培養に用いられた培地である。環送培地は、培地タンク452-2から環送系230-2に導出されて、供給系220-2に環送される。環送培地は、培地タンク452-2に再び戻されたり(循環)、後述する廃液タンク260-2に廃棄されたりする。
【0125】
<<培養装置100-2>>
培養装置100-2は、培養容器110-2を有する。培養容器110-2は、細胞懸濁液を収容するための容器である。培養容器110-2は、細胞を培養するためのバイオリアクタとして機能する。培養容器110-2内で、細胞は分裂して増える。培養容器110-2内で、細胞同士の接触により細胞凝集塊が成長する。
【0126】
<供給管226-2及び環送管232-2>
図4に示すように、培養容器110-2には、供給管226-2及び環送管232-2が配置される。
【0127】
<導入口227-2>
供給管226-2は、導入口227-2を有する。導入口227-2は、培養容器110-2に向かって開口する。培養容器110-2に供給される培地は、供給管226-2を流動する。供給管226-2には、新規培地と環送培地との双方が流動する。供給管226-2を流動した培地は、導入口227-2から培養容器110-2に導入される。導入された培地は、培養容器110-2に貯留される。
【0128】
<導出口231-2>
環送管232-2は、導出口231-2を有する。導出口231-2は、培養容器110-2に向かって開口する。培養容器110-2に貯留されている培地が、導出口231-2を介して環送管232-2に導出される。培養容器110-2から導出された培地は、環送管232-2を流動する。
【0129】
後述するように、細胞懸濁液の液面を導出口231-2よりも低くなるように制御しているときには、環送管232-2には、培地(環送培地)及び細胞は、導出されない。一方、細胞懸濁液の液面を導出口231-2よりも高くした場合には、細胞凝集塊が環送管232-2に導出されない程度に、循環ポンプ210-2を動作させる。このように制御することで、環送管232-2に細胞が導出されにくくできる。なお、環送管232-2の導出口231-2の近くに細胞がある場合は、導出口231-2から導出される可能性が生ずる。このため、後述する細胞-培地分離フィルター120-2を設けて、環送管232-2に細胞が導出された場合であっても、環送管234-2以降に細胞が流出しないようにしている。環送管232-2に導出された培地は、循環したり又は廃棄されたりする。
【0130】
<導入口227-2及び導出口231-2の位置>
図4に示すように、導出口231-2は、導入口227-2よりも低い位置に配置されている。
【0131】
<細胞懸濁液の液面の高さ>
【0132】
細胞懸濁液の液面が導出口231-2よりも高いときには、後述する循環ポンプ210-2を駆動することで培地を導出口231-2から導出させることができる。後述する培地交換循環培養処理のときに、細胞懸濁液の液面を導出口231-2よりも高くして、培地を循環させることができる。
【0133】
一方、細胞懸濁液の液面が導出口231-2よりも低いときには、培地を導出口231-2から導出させることができない。後述する間欠攪拌培養処理や培地追加培養処理では、細胞懸濁液の液面を導出口231-2よりも低くして、培地及び細胞が導出口231-2から導出されないようにする。
【0134】
このように、循環ポンプ210-2の駆動及び細胞懸濁液の液面の高さによって、培養容器110-2からの培地の導出を制御できる。
【0135】
導入口227-2は、培養容器110-2の上部に位置づけられている。細胞懸濁液の液面が最も高くなったときでも、導入口227-2は細胞懸濁液と接触することはない。これにより、導入口227-2を清浄に保つことができる。
【0136】
<<攪拌装置600-2>>
<攪拌装置600-2の構成>
攪拌装置600-2は、培養容器110-2に貯留された培地を攪拌する。攪拌装置600-2は、マグネティックスターラー610-2を有する。マグネティックスターラー610-2は、攪拌子612-2及び駆動モータ614-2を有する。攪拌子612-2は、駆動モータ614-2の回転動作が伝えられて回転する。
【0137】
<攪拌装置600-2による攪拌>
攪拌子612-2の回転により、培地が攪拌される。培地の攪拌により、細胞懸濁液中の細胞や細胞凝集塊が変位する。細胞が変位することで、細胞同士が接触しやすい状態となり、細胞同士の接触により細胞凝集塊の形成が促進される。細胞凝集塊が変位することにより、細胞と接触しやすい状態となり、細胞凝集塊は、細胞との接触により、さらに大きくなる。なお、細胞自体も細胞分裂することで増殖して細胞凝集塊を形成する。
【0138】
<駆動モータ614-2の回転数>
駆動モータ614-2の回転数は、制御装置500-2によって制御される。駆動モータ614-2を回転させることで、培地を流動させることができる。
【0139】
駆動モータ614-2の最低回転数(培地の最低流速に対応)は、細胞や細胞凝集塊が培養容器110-2の壁面に接触しない程度にするのが好ましい。培養容器110-2の壁面は、細胞や細胞凝集塊が接触する可能性があるすべての面である。例えば、培養容器110-2が筒状や筒状の形状を有する場合には、壁面は、底面及び側面の内側の面である。一方、駆動モータ614-2の最高回転数(培地の最高流速に対応)は、培養容器110-2内を変位する細胞が浮き上がり、循環ポンプ210-2の作動による流動によって導出口231-2から導出されない程度が好ましい。細胞凝集塊は、大きくなると重くなり沈みやすくなり、培養容器110-2の底面と接触しやすくなる。このため、制御装置500-2は、細胞凝集塊の成長(細胞凝集塊の大きさなど)に応じて、駆動モータ614-2の回転数を大きくするように制御するのが好ましい。
【0140】
<駆動モータ614-2の回転方向>
駆動モータ614-2は、一定の方向に回転する。例えば、駆動モータ614-2は、平面視で時計回り又は反時計回りで回転する。なお、駆動モータ614-2と適宜に反転させてもよい。回転方向を反転させることで、細胞同士が接触する可能性や、細胞と細胞凝集塊とが接触する可能性を高めることができる。
【0141】
<攪拌装置600-2の変形例>
前述した例では、攪拌装置600-2は、マグネティックスターラー610-2を有する例を示した。これに限らず、攪拌装置600-2は、インペラを取付けたシャフトを培養容器110-2に入れて、回転または上下往復することで攪拌する装置でもよい(図示せず)。また、攪拌装置600-2は、ローラーボトル、振盪フラスコおよび培養バッグなどを回転・振盪機を使用する装置でもよい(図示せず)。攪拌装置600-2は、スピナーフラスコ(培養容器110-2と攪拌子(攪拌翼)からなる)などで構成してもよい。攪拌装置600-2は、培地を流動させるものであればよい。攪拌装置600-2は、細胞懸濁液に力を加えて培地を流動させることができるものであればよい。
【0142】
<<調整装置400-2>>
調整装置400-2は、新規培地や環送培地を培養装置100-2に供給する。調整装置400-2は、循環ポンプ駆動部210A-2と供給ポンプ駆動部410A-2とを有する。
【0143】
<循環ポンプ駆動部210A-2>
循環ポンプ駆動部210A-2は、循環ポンプ210-2及び環送管232-2~環送管238-2(環送系230-2)を有する。
【0144】
<循環ポンプ210-2>
循環ポンプ210-2は、培養装置100-2に貯留されている培地を、導出口231-2から環送管232-2に導出する。環送管232-2に導出された環送培地は、循環ポンプ210-2によって、環送管234-2~238-2を経て、酸素供給モジュール420-2に導かれる。環送培地は、酸素供給モジュール420-2を経た後に、供給ポンプ駆動部410A-2に導かれる。循環ポンプ210-2を作動させることにより、導出口231-2→環送管232-2→環送管234-2→環送管236-2→循環ポンプ210-2→環送管238-2→酸素供給モジュール420-2→・・・のように、環送培地を導く。
【0145】
培養装置100-2に貯留されている細胞凝集塊が、環送管232-2に導出されない程度に、循環ポンプ210-2を動作させる。例えば、循環ポンプ210-2の回転を適宜に低くすることで、環送管232-2~環送管238-2を流れる環送培地の流速を小さくする。環送管232-2~環送管238-2における流速を小さくすることで、細胞凝集塊の重力沈降速度が上回り、培養装置100-2に貯留されている細胞凝集塊を環送管232-2に導出しないようにできる。
【0146】
<細胞-培地分離フィルター120-2>
循環ポンプ駆動部210A-2は、細胞-培地分離フィルター120-2を有する。細胞-培地分離フィルター120-2は、環送管232-2及び環送管234-2の間に設けられている。前述したように、細胞凝集塊が環送管232-2に導出されない程度に、循環ポンプ210-2を動作させる。しかしながら、細胞凝集塊を形成していない細胞が浮遊して、環送管232-2に導出される可能性もある。このため、細胞-培地分離フィルター120-2を設けることによって、環送管234-2以降に細胞が流出しないようにできる。
【0147】
<サンプリングポート130-2>
循環ポンプ駆動部210A-2は、サンプリングポート130-2を有する。サンプリングポート130-2で、流動する環送培地をサンプリングする。サンプリングされた培地は、各種の分析装置などによって分析され、培地の状態を取得することができる。
【0148】
<供給ポンプ駆動部410A-2>
供給ポンプ駆動部410A-2は、酸素供給モジュール420-2とpH調整剤供給部430-2とグルコース濃縮液供給部440-2と培地供給部450-2と循環ヒーター460-2と供給管222-2~供給管226-2(供給系220-2)を有する。
【0149】
<酸素供給モジュール420-2>
酸素供給モジュール420-2は、循環する環送培地に酸素を加える。酸素供給モジュール420-2は、圧力レギュレータ(図示せず)及びバルブ422-2を介して酸素ボンベ424-2に接続されている。バルブ422-2は、制御装置500-2の制御信号に応じて開閉動作する。バルブ422-2が、開状態となったときに、酸素供給モジュール420-2を介して酸素ボンベ424-2から環送培地に酸素が供給される。バルブ422-2が、閉状態となったときには、環送培地への酸素は遮断される。
【0150】
<pH調整剤供給部430-2>
pH調整剤供給部430-2は、pH調整剤タンク432-2及び供給ポンプ434-2を有する。pH調整剤タンク432-2には、pH調整剤が貯留されている。供給ポンプ434-2は、制御装置500-2の制御信号に応じて動作する。供給ポンプ434-2が動作すると、pH調整剤タンク432-2に貯留されているpH調整剤が供給管222-2に導出される。導出されたpH調整剤は、供給管222-2を流動している環送培地に加えられる。
【0151】
<グルコース濃縮液供給部440-2>
グルコース濃縮液供給部440-2は、グルコース濃縮液タンク442-2及び供給ポンプ444-2を有する。グルコース濃縮液タンク442-2には、グルコース濃縮液が貯留されている。供給ポンプ444-2は、制御装置500-2の制御信号に応じて動作する。供給ポンプ444-2が動作すると、グルコース濃縮液タンク442-2に貯留されているグルコース濃縮液が供給管222-2に導出される。導出されたグルコース濃縮液は、供給管222-2を流動している環送培地に加えられる。
【0152】
<培地供給部450-2>
培地供給部450-2は、培地タンク452-2と供給ポンプ454-2と培地ヒーター456-2とを有する。培地タンク452-2には、新規培地が貯留されている。供給ポンプ454-2は、制御装置500-2の制御信号に応じて動作する。供給ポンプ454-2が動作すると、培地タンク452-2に貯留されている新規培地が培地ヒーター456-2を介して供給管222-2に導出される。
【0153】
培地ヒーター456-2は、新規培地を所望する温度になるように加温する。なお、後述する循環ヒーター460-2によっても新規培地は加温される。培地タンク452-2は、低い温度で新規培地を貯留する。このため、循環ヒーター460-2のみでは、培養容器110-2に供給するには、加温が不十分になりやすい。培地ヒーター456-2は、新規培地がある程度の温度になるように予備的に加温する。加温された新規培地は、供給管222-2を流動している環送培地に加えられる。
【0154】
<循環ヒーター460-2>
循環ヒーター460-2は、環送培地、新規培地、pH調整剤、グルコース濃縮液(以下では、簡便のため、環送培地又は新規培地を区別せず、単に培地と称する。また、pH調整剤、グルコース濃縮液を含めて、単に培地と称する。)を加温する。循環ヒーター460-2は、通過する培地を、培養容器110-2への供給に適した温度になるように加温する。具体的には、循環ヒーター460-2は、培養容器110-2における細胞の培養に適した温度となるように、通過する培地を加温する。
【0155】
循環ヒーター460-2は、制御装置500-2の制御信号に応じて動作する。循環ヒーター460-2は、制御信号に応じて、通過する培地を加温する。
【0156】
<<三方バルブ250-2及び廃液タンク260-2>>
三方バルブ250-2は、循環ヒーター460-2を通過した培地の流れを制御する。三方バルブ250-2は、培地供給状態又は培地廃棄状態のうちのいずれかの状態に切り替えることができる。
【0157】
<培地供給状態>
培地供給状態は、培地を培養容器110-2に供給する状態である。培地供給状態は、供給管224-2と供給管226-2とが連通する状態である。三方バルブ250-2が培地供給状態となったときには、供給管224-2及び供給管226-2を介して培地が培養容器110-2に供給される。
【0158】
<培地廃棄状態>
培地廃棄状態は、培地を廃液タンク260-2に排出する状態である。培地廃棄状態は、供給管224-2と廃棄管262-2とが連通する状態である。三方バルブ250-2が培地廃棄状態となったときには、供給管224-2及び廃棄管262-2を介して培地が廃液タンク260-2に廃棄される。廃棄される培地は、廃液タンク260-2に導かれる。
【0159】
三方バルブ250-2は、制御装置500-2の制御信号に応じて動作する。三方バルブ250-2は、制御信号に応じて、培地供給状態又は培地廃棄状態となる。
【0160】
<<遮光部分SP>>
図3に示すように、培養容器110-2と、環送管232-2と、環送管234-2と、環送管236-2と、環送管238-2と、細胞-培地分離フィルター120-2と、サンプリングポート130-2と、酸素供給モジュール420-2と、供給管222-2と、供給管224-2と、供給管226-2と、pH調整剤供給部430-2と、グルコース濃縮液供給部440-2と、培地供給部450-2とは、遮光部材(遮光部分SP)によって遮光されている。遮光することにより、添加物等の光劣化や分解を防ぐとともに、監視装置300-2による監視結果の精度、例えば、培地成分の測定や、撮像等の精度を向上させることができる。
【0161】
<<冷却部分CP>>
pH調整剤タンク432-2と、グルコース濃縮液タンク442-2と、培地タンク452-2とは、低温恒温槽(冷却部分CP)によって冷却されている。pH調整剤供給部430-2と、グルコース濃縮液供給部440-2と、培地供給部450-2とを冷却することにより、前述した添加物等の劣化や分解を防ぐことができる。
【0162】
<<監視装置300-2>>
監視装置300-2は、各種のセンサなどの検出装置を有する。検出装置から発せられる検出信号は、制御装置500-2に送信される。
【0163】
図5は、監視装置300-2が有する各種のセンサを示すブロック図である。図5に示すように、監視装置300-2は、
温度センサ312-2と、
溶存酸素センサ314-2と、
pHセンサ316-2と、
液面センサ318-2と、
を有する。
【0164】
<温度センサ312-2>
温度センサ312-2は、培養容器110-2に貯留された培地の温度を検出する。温度センサ312-2は、検出した温度を示す検出信号を出力する。
【0165】
<溶存酸素センサ314-2>
溶存酸素センサ314-2は、培養容器110-2に貯留された培地の溶存酸素の量を検出する。溶存酸素センサ314-2は、検出した溶存酸素の量を示す検出信号を出力する。
【0166】
<pHセンサ316-2>
pHセンサ316-2は、培養容器110-2に貯留された培地のpHの値を検出する。pHセンサ316-2は、検出したpHの値を示す検出信号を出力する。
【0167】
<液面センサ318-2>
液面センサ318-2は、培養容器110-2に貯留された細胞懸濁液の液面を検出する。液面センサ318-2は、液面の有無(液面が位置するか否か)を示す検出信号を出力する。
【0168】
例えば、培養容器110-2の互いに異なる液面位置の各々に複数の液面センサを、液面センサ318-2として設ける(図示せず)。複数の液面センサのうち、液面が位置する液面センサのみが、液面が存在することを示す信号を出力する。複数の液面センサのうち、液面が位置しない液面センサは、液面が存在しないことを示す信号を出力する。このようにすることで、培養容器110-2の細胞懸濁液の液面の位置を取得できる。
【0169】
<カメラ320-2>
監視装置300-2は、カメラ320-2を有してもよい。カメラ320-2は、培養容器110-2で培養されている細胞や細胞凝集塊を撮像する。カメラ320-2は、撮像した画像を示す検出信号を出力する。撮像する画像は、静止画でも動画でもよい。細胞や細胞凝集塊の状態(大きさなど)を取得できる画像であればよい。
【0170】
<<制御装置500-2>>
制御装置500-2は、監視装置300-2から発せられた各種の検出信号に基づいて、各種の演算処理やデータ処理や判断処理を実行して、ポンプなど制御する。
【0171】
制御装置500-2は、主に、プロセッサ(CPU(中央処理装置)など)、ROM(リードオンリーメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、I/F(インターフェース装置)、補助記憶装置(HDD(ハードディスクドライブ)やSSD(ソリッドステートドライブ)など)、入力操作装置(キーボード、マウス、タッチパネルなど)などを備える。例えば、パーソナルコンピュータ、タブレット型コンピュータ、携帯型端末装置や、これに準じた装置などにすることができる。
【0172】
制御装置500-2は、I/F(インターフェース装置)を介して、
攪拌装置600-2と、
バルブ422-2と、
三方バルブ250-2と、
循環ポンプ210-2と、
供給ポンプ434-2と、
供給ポンプ444-2と、
供給ポンプ454-2と、
培地ヒーター456-2と、
循環ヒーター460-2と、
の各々に制御信号を送信する。
【0173】
<マグネティックスターラー610-2の制御>
制御装置500-2は、攪拌装置600-2に、駆動モータ614-2の回転数を示す制御信号を送信する。
【0174】
回転数は、培養容器110-2内で、細胞同士が接触しやすく、細胞が壁部と接触せず、かつ導出口231-2まで浮き上がらない程度の回転数である。培養容器110-2の壁面は、細胞や細胞凝集塊が接触する可能性があるすべての面である。例えば、培養容器110-2が筒状の形状を有する場合には、壁面は、底面及び側面の内側の面である。この回転数は、予備実験などによって決定されており、予め補助記憶装置などに記憶されている。
【0175】
また、前述したように、細胞凝集塊は、成長に伴って重くなり沈みやすくなり、培養容器110-2の底面と接触しやすくなる。この回転数も、予備実験などによって決定されており、培養開始からの経過時間に対応付けられて、予め補助記憶装置などに記憶されている。制御装置500-2は、培養開始からの経過時間に応じた回転数を補助記憶装置などから読み出し、マグネティックスターラー610-2に送信する。
【0176】
<バルブ422-2の制御>
制御装置500-2は、バルブ422-2の開状態又は閉状態を示す制御信号をバルブ422-2に送信する。制御装置500-2が開状態を示す制御信号をバルブ422-2に送信すると、バルブ422-2は開状態となる。バルブ422-2が開状態となると、酸素ボンベ424-2と酸素供給モジュール420-2とが連通する。酸素が酸素供給モジュール420-2を介して環送培地に供給される。
【0177】
制御装置500-2が閉状態を示す制御信号をバルブ422-2に送信すると、バルブ422-2は閉状態となる。バルブ422-2が閉状態となると、酸素ボンベ424-2と酸素供給モジュール420-2とは連通しなくなり、酸素の環送培地への供給が停止する。
【0178】
制御装置500-2は、溶存酸素センサ314-2が出力した検出信号から、培養容器110-2の培地の溶存酸素の量を取得する。制御装置500-2は、予め定められた目標溶存酸素濃度となるようにバルブ422-2を制御する。例えば、PID制御(Proportional-Integral-Differential制御)により、取得した溶存酸素の量に基づいて、目標溶存酸素濃度となるようにバルブ422-2を制御する。なお、酸素の供給は、後述する培地交換循環培養処理において実行される。
【0179】
<三方バルブ250-2の制御>
制御装置500-2は、培地供給状態又は培地廃棄状態を示す制御信号を三方バルブ250-2に送信する。制御装置500-2が培地供給状態を示す制御信号を三方バルブ250-2に送信すると、供給管224-2と供給管226-2とを連通させる。供給管224-2と供給管226-2との連通により、供給管224-2及び供給管226-2を介して培地が培養容器110-2に供給される。
【0180】
制御装置500-2が培地廃棄状態を示す制御信号を三方バルブ250-2に送信すると、供給管224-2と廃棄管262-2とを連通させる。供給管224-2と廃棄管262-2との連通により、供給管224-2及び廃棄管262-2を介して、培地が廃液タンク260-2に廃棄される。
【0181】
<循環ポンプ210-2の制御>
制御装置500-2は、作動又は停止を示す制御信号を循環ポンプ210-2に送信する。制御装置500-2が、作動を示す制御信号を循環ポンプ210-2に送信すると、循環ポンプ210-2は作動する。これにより、培地を循環させることができる。制御装置500-2が、停止を示す制御信号を循環ポンプ210-2に送信すると、循環ポンプ210-2は停止する。これにより、培地の循環を停止することができる。
【0182】
制御装置500-2は、循環ポンプ210-2の回転数を示す情報を制御信号に含めて循環ポンプ210-2に送信することもできる。循環ポンプ210-2は、制御信号が示す回転数で作動する。循環ポンプ210-2の回転数を変更することにより、培地の単位時間当たりの流量(流速)を調整することができる。循環ポンプ210-2の回転数は、予備実験などによって決定されており、単位時間当たりの流量に対応付けられて、補助記憶装置などに予め記憶される。
【0183】
制御装置500-2が、培地供給状態を示す制御信号を三方バルブ250-2に送信し、作動を示す制御信号を循環ポンプ210-2に送信すると、三方バルブ250-2は培地供給状態となり、循環ポンプ210-2は作動する。このように制御することで、培養容器110-2→導出口231-2→環送管232-2→環送管234-2→環送管236-2→循環ポンプ210-2→環送管238-2→酸素供給モジュール420-2→供給管222-2→循環ヒーター460-2→供給管224-2→供給管226-2→導入口227-2→培養容器110-2のようにして、培地を循環させることができる。
【0184】
制御装置500-2が、培地廃棄状態を示す制御信号を三方バルブ250-2に送信し、作動を示す制御信号を循環ポンプ210-2に送信すると、三方バルブ250-2は培地廃棄状態となり、循環ポンプ210-2は作動する。このように制御することで、培養容器110-2→導出口231-2→環送管232-2→環送管234-2→環送管236-2→循環ポンプ210-2→環送管238-2→酸素供給モジュール420-2→供給管222-2→循環ヒーター460-2→供給管224-2→廃棄管262-2→廃液タンク260-2のようにして、培地を廃棄することができる。
【0185】
<供給ポンプ434-2の制御>
制御装置500-2は、作動又は停止を示す制御信号を供給ポンプ434-2に送信する。制御装置500-2が、作動を示す制御信号を供給ポンプ434-2に送信すると、供給ポンプ434-2は作動する。供給ポンプ434-2が作動することで、pH調整剤タンク432-2に貯留されているpH調整剤が供給管222-2に導出される。
【0186】
制御装置500-2が、停止を示す制御信号を供給ポンプ434-2に送信すると、供給ポンプ434-2は停止する。供給ポンプ434-2が停止することで、pH調整剤の供給管222-2への導出は停止する。
【0187】
制御装置500-2は、供給ポンプ434-2の回転数を示す情報を制御信号に含めて供給ポンプ434-2に送信することもできる。供給ポンプ434-2は、制御信号が示す回転数で作動する。供給ポンプ434-2の回転数を変更することにより、pH調整剤の単位時間当たりの流量(流速)を調整することができる。供給ポンプ434-2の回転数は、予備実験などによって決定されており、単位時間当たりの流量に対応付けられて、補助記憶装置などに予めに記憶されている。
【0188】
<供給ポンプ444-2の制御>
制御装置500-2は、作動又は停止を示す制御信号を供給ポンプ444-2に送信する。制御装置500-2が、作動を示す制御信号を供給ポンプ444-2に送信すると、供給ポンプ444-2は作動する。供給ポンプ444-2が作動することで、グルコース濃縮液タンク442-2に貯留されているグルコース濃縮液が供給管222-2に導出される。
【0189】
制御装置500-2が、停止を示す制御信号を供給ポンプ444-2に送信すると、供給ポンプ444-2は停止する。供給ポンプ444-2が停止することで、グルコース濃縮液の供給管222-2への導出は停止する。
【0190】
制御装置500-2は、供給ポンプ444-2の回転数を示す情報を制御信号に含めて供給ポンプ444-2に送信することもできる。供給ポンプ444-2は、制御信号が示す回転数で作動する。供給ポンプ444-2の回転数を変更することにより、グルコース濃縮液の単位時間当たりの流量(流速)を調整することができる。供給ポンプ444-2の回転数は、予備実験などによって決定されており、単位時間当たりの流量に対応付けられて、補助記憶装置などに予め記憶される。
【0191】
<供給ポンプ454-2の制御>
制御装置500-2は、作動又は停止を示す制御信号を供給ポンプ454-2に送信する。制御装置500-2が、作動を示す制御信号を供給ポンプ454-2に送信すると、供給ポンプ454-2は作動する。供給ポンプ454-2が作動することで、培地タンク452-2に貯留されている新規培地が供給管222-2に導出される。
【0192】
制御装置500-2が、停止を示す制御信号を供給ポンプ454-2に送信すると、供給ポンプ454-2は停止する。供給ポンプ454-2が停止することで、新規培地の供給管222-2への導出は停止する。
【0193】
制御装置500-2は、供給ポンプ454-2の回転数を示す情報を制御信号に含めて供給ポンプ454-2に送信することもできる。供給ポンプ454-2は、制御信号が示す回転数で作動する。供給ポンプ454-2の回転数を変更することにより、新規培地の単位時間当たりの流量(流速)を調整することができる。供給ポンプ454-2の回転数は、予備実験などによって決定されており、単位時間当たりの流量に対応付けられて、補助記憶装置などに予め記憶される。
【0194】
<培地ヒーター456-2の制御>
制御装置500-2は、作動又は停止を示す制御信号を培地ヒーター456-2に送信する。制御部が、作動を示す制御信号を培地ヒーター456-2に送信すると、培地ヒーター456-2は作動する。培地ヒーター456-2が作動することで、培地タンク452-2に貯留されている新規培地は、培地ヒーター456-2によって加温されて供給管222-2に導出される。
【0195】
制御装置500-2が、停止を示す制御信号を培地ヒーター456-2に送信すると、培地ヒーター456-2は停止する。
【0196】
制御装置500-2は、培地ヒーター456-2の電流値を示す情報を制御信号に含めて培地ヒーター456-2に送信することもできる。培地ヒーター456-2は、制御信号が示す電流値で作動する。培地ヒーター456-2の電流値を変更することにより、新規培地を加温する温度を調整することができる。培地ヒーター456-2の電流値は、予備実験などによって決定されており、温度に対応付けられて、補助記憶装置などに予め記憶される。
【0197】
<循環ヒーター460-2の制御>
制御装置500-2は、作動又は停止を示す制御信号を循環ヒーター460-2に送信する。制御部が、作動を示す制御信号を循環ヒーター460-2に送信すると、循環ヒーター460-2は作動する。循環ヒーター460-2が作動することで、循環ヒーター460-2を通過する培地は、循環ヒーター460-2によって加温される。
【0198】
制御装置500-2が、停止を示す制御信号を循環ヒーター460-2に送信すると、循環ヒーター460-2は停止する。
【0199】
制御装置500-2は、循環ヒーター460-2の電流値を示す情報を制御信号に含めて循環ヒーター460-2に送信することもできる。循環ヒーター460-2は、制御信号が示す電流値で作動する。循環ヒーター460-2の電流値を変更することにより、循環ヒーター460-2を通過する培地の温度を調整することができる。循環ヒーター460-2の電流値は、予備実験などによって決定されており、温度に対応付けられて、補助記憶装置などに予め記憶される。
【0200】
<<<培養システム1-2の処理>>>
図6は、培養システム1-2の処理の概要を示すタイムチャートである。図7は、培養システム1-2の処理によって成長する細胞凝集塊の状態を示す概略図である。
【0201】
培養システム1-2の処理は、
播種処理と
間欠攪拌培養処理と
培地追加培養処理と
培地交換循環培養処理と
を有する。
【0202】
<<播種処理>>
播種処理は、培養容器110-2に細胞懸濁液を準備する処理である。播種処理によって、培地に細胞が分散した細胞懸濁液を生成することができる。播種処理は、制御装置500-2による処理でも、作業員による手作業でもよい。細胞同士が接触しやすくするために、培養容器110-2内の細胞懸濁液の液面が、導出口231-2よりも低くなるように準備すればよい。
【0203】
図6に示すタイムチャートに沿って、間欠攪拌培養処理、培地追加培養処理、培地交換循環培養処理について説明する。
【0204】
<<間欠攪拌培養処理>>
間欠攪拌培養処理は、初期段階における細胞凝集化処理である。間欠攪拌培養処理によって、細胞凝集塊が生成される。間欠攪拌培養処理は、図7(a)に示すように、攪拌と停止とを少なくとも1回実行する。間欠攪拌培養処理は、攪拌と停止とを複数回に亘って繰り返すのが好ましい。細胞懸濁液を攪拌することで、細胞同士が接触しやすい状態にして凝集化を促進する。攪拌を停止することにより、細胞同士が接触した状態を保ち、安定した細胞凝集塊を生成する。
【0205】
図6に示す例では、間欠攪拌培養処理は、処理番号IN1~IN4、・・・である。図6に示す例では、攪拌と停止とを複数回に亘って繰り返す。間欠攪拌培養処理では、培養容器110-2内の培地の量(細胞懸濁液の量)は一定である。
【0206】
<供給ポンプ434-2及び供給ポンプ444-2、バルブ422-2、培地ヒーター456-2及び循環ヒーター460-2の制御>
間欠攪拌培養処理では、制御装置500-2は、停止を示す制御信号を供給ポンプ434-2及び供給ポンプ444-2に送信する。これにより、間欠攪拌培養処理では、pH調整剤及びグルコース濃縮液は、培地に供給されない。
【0207】
また、間欠攪拌培養処理では、制御装置500-2は、閉状態を示す制御信号をバルブ422-2に送信する。これにより、間欠攪拌培養処理では、酸素は、培地に供給されない。
【0208】
間欠攪拌培養処理では、制御装置500-2は、培地供給状態を示す制御信号を三方バルブ250-2に送信する。これにより、間欠攪拌培養処理では、三方バルブ250-2は培地供給状態となる。
【0209】
間欠攪拌培養処理では、制御装置500-2は、停止を示す制御信号を培地ヒーター456-2及び循環ヒーター460-2に送信する。これにより、間欠攪拌培養処理では、培地ヒーター456-2及び循環ヒーター460-2は、作動せず停止した状態となる。
【0210】
<攪拌制御(処理番号IN1、IN3、・・・)>
制御装置500-2は、補助記憶装置などに記憶されている回転数を読み出し、マグネティックスターラー610-2に回転数を送信する。制御装置500-2は、マグネティックスターラー610-2の駆動モータ614-2を作動させて攪拌子612-2を回転させる。これにより、攪拌子612-2が回転し、培地の攪拌が開始される。
【0211】
<停止制御(処理番号IN2、IN4、・・・)>
制御装置500-2は、攪拌を開始してから攪拌時間が経過した後に、停止する制御信号をマグネティックスターラー610-2に送信する。これにより、駆動モータ614-2は停止し、攪拌子612-2が静止する。攪拌子612-2の静止により、培地は徐々に減速して停止する。
【0212】
<2回目以降の攪拌と停止との繰り返し>
2回目以降の攪拌(図6の処理番号IN3など)は、攪拌を停止させてから停止時間が経過した後に開始する。前述した攪拌制御を実行することで攪拌を開始する。
【0213】
<間欠攪拌培養処理の主な特徴>
間欠攪拌培養処理では、攪拌と停止とが少なくとも1回実行される。攪拌と停止とは複数回繰り返して実行されるのが好ましい。攪拌と停止とを繰り返すことによって、安定した細胞凝集塊を徐々に成長させることができる(図7(a)参照)。
【0214】
<攪拌と停止とを繰り返す最大反復回数>
攪拌と停止とを繰り返す最大反復回数は、間欠攪拌培養処理によって、細胞凝集塊が、所望する大きさとなり、所望する数に増えるまでの回数である。最大反復回数は、細胞の種類などに基づく。最大反復回数は、予備実験などによって決定されており、補助記憶装置などに予め記憶される。制御装置500-2は、最大反復回数に達するまで、攪拌と停止とを繰り返す。
【0215】
<攪拌時間及び停止時間>
駆動モータ614-2を回転させている攪拌時間や、駆動モータ614-2を停止させている停止時間も、細胞の種類や、目的とする細胞凝集塊の大きさなどに基づく。攪拌時間及び停止時間は、予備実験などによって決定されており、補助記憶装置などに予め記憶される。制御装置500-2は、攪拌時間及び停止時間を読み出し、攪拌時間や停止時間に達したか否かを判断する。
【0216】
<その他>
攪拌と停止とを繰り返す場合に、攪拌時間の各々は、全て同じ時間でも、互いに異なる時間でもよい。同様に、攪拌と停止とを繰り返す場合に、停止時間の各々は、全て同じ時間でも、互いに異なる時間でもよい。
【0217】
カメラ320-2で撮像した画像に基づいて、細胞凝集塊の大きさや数を取得して、攪拌時間や、停止時間や、繰り返すか否かを決定してもよい。撮像した画像に様々な画像処理を施すことにより、細胞凝集塊の大きさや数を取得しやすい画像に変換するのが好ましい。
【0218】
また、駆動モータ614-2を完全に停止させずに、遅く回転させて、遅い流速で培地を変位させてもよい。細胞や細胞凝集塊に加わる剪断応力が急に変化することを防止できる。
【0219】
攪拌を開始するときや、攪拌を停止するときに、マグネティックスターラー610-2の駆動モータ614-2の速度を徐々に変化させてもよい。細胞や細胞凝集塊に加わる剪断応力を緩やかに変化させることができる。
【0220】
攪拌している間に、駆動モータ614-2の回転方向を反転させてもよい。また、攪拌する度に駆動モータ614-2の回転方向を反転させてもよい。細胞同士が接触する可能性や、細胞凝集塊と細胞とが接触する可能性を変化させたり高めたりできる。
【0221】
<<培地追加培養処理及び培地追加準備処理>>
培地追加培養処理は、中間段階における細胞凝集化処理である。培地追加培養処理によって、図7(b)に示すように、培地を順次に追加することにより細胞凝集塊を成長させる。
【0222】
培地を順次に追加することにより、細胞を分裂させて細胞を増やすとともに、細胞凝集塊を大きくする。細胞凝集塊に含まれていない細胞が分裂すると、新たに細胞凝集塊と接触することで細胞凝集塊を大きくする。細胞凝集塊に含まれている細胞が分裂すると、含まれている細胞凝集塊を大きくする。
【0223】
培地追加培養処理の開始の時点では、細胞凝集塊は未だ小さい。このため、培地を循環させると環送管232-2などに入り込む可能性があり、培地追加培養処理では培地を循環させない。培地追加培養処理によって、細胞凝集塊を成長させて、環送管232-2に入り込まない程度までに大きくする。
【0224】
図6に示す例では、培地追加培養処理は、処理番号AD1~AD2、・・・である。なお、図6に示すように、培地追加培養処理の前に、培地追加準備処理(処理番号PA1)を実行する。培地追加準備処理は、培地プライミング処理である。
【0225】
なお、培地追加準備処理及び培地追加培養処理では、間欠攪拌培養処理に引き続き、pH調整剤、グルコース濃縮液及び酸素は、培地に供給されない。
【0226】
<培地追加準備処理(処理番号PA1)>
制御装置500-2は、作動を示す制御信号を培地ヒーター456-2及び循環ヒーター460-2に送信する。これにより、培地を追加するよりも前に、培地ヒーター456-2及び循環ヒーター460-2が作動する。培地を追加するときには、培地を的確に加温することができる。
【0227】
制御装置500-2は、補助記憶装置などに記憶されている回転数を読み出し、マグネティックスターラー610-2に回転数を送信する。制御装置500-2は、マグネティックスターラー610-2の駆動モータ614-2を作動させて攪拌子612-2を回転させる。これにより、所定の回転数で攪拌子612-2が回転し、改めて攪拌が開始される。
【0228】
制御装置500-2は、培地廃棄状態を示す制御信号を三方バルブ250-2に送信する。これにより、三方バルブ250-2は、供給管224-2と廃棄管262-2とを連通させる。
【0229】
制御装置500-2は、作動を示す制御信号を供給ポンプ454-2に送信する。これにより、培地タンク452-2に貯留されている新規培地は、培地ヒーター456-2によって加温されて供給管222-2に導出される。
【0230】
供給管222-2に導出された新規培地は、循環ヒーター460-2を通過して、供給管224-2を流動して三方バルブ250-2に到達する。三方バルブ250-2に到達した新規培地は、廃棄管262-2に向かって導かれ、廃液タンク260-2に廃棄される。これにより、循環ヒーター460-2が取り付けられている供給管、供給管224-2及び三方バルブ250-2を新規培地によって洗浄(培地プライミング)することができる。
【0231】
培地プライミングは、次のように実行される。培地タンク452-2に貯留されている新規の培地を、供給ポンプ454-2を用いて供給管222-2へ流動させる。流動する培地は、培地ヒーター456-2と循環ヒーター460-2の供給路及び三方バルブ250-2を経由して廃棄管262-2を通って廃液タンク260-2に到達する。流動させる培地によって、これらの管などを洗浄することを培地プライミングと称する。
【0232】
制御装置500-2は、所定の時間が経過した後に、停止を示す制御信号を供給ポンプ454-2に送信する。これにより、新規培地の供給管222-2への導出が停止し、培地プライミングが終了する。所定の時間は、細胞の種類や供給ポンプ454-2の回転数に基づく。所定の時間は、予備実験などによって決定されており、予め補助記憶装置などに記憶されている。
【0233】
<培地追加培養処理>
培地追加準備処理(PA1)の後、培地追加培養処理が実行される。培地追加培養処理は、図6に示す処理番号AD1~AD2、・・・である。
【0234】
<培地追加処理(処理番号AD1)>
【0235】
制御装置500-2は、培地供給状態を示す制御信号を三方バルブ250-2に送信する。これにより、三方バルブ250-2は培地供給状態となる。なお、前述したように、培地ヒーター456-2及び循環ヒーター460-2は既に作動している。
【0236】
制御装置500-2は、作動を示す制御信号を供給ポンプ454-2に送信する。これにより、培地タンク452-2に貯留されている新規培地は、培地ヒーター456-2によって加温されて供給管222-2に導出される。
【0237】
供給管222-2に導出された新規培地は、循環ヒーター460-2によって加温され、供給管224-2を流動して三方バルブ250-2に到達する。三方バルブ250-2に到達した新規培地は、供給管226-2に向かって導かれ、導入口227-2から培養容器110-2に導入される。このようにして、新規培地が培養容器110-2に追加される。
【0238】
制御装置500-2は、所定の時間が経過した後に、停止を示す制御信号を供給ポンプ454-2に送信する。これにより、新規培地の培養容器110-2への1回目の追加が完了する。
【0239】
所定の時間は、追加する培地の量に対応する時間である。所定の時間は、細胞の種類や供給ポンプ454-2の回転数などに基づく。所定の時間は、予備実験などによって決定されており、予め補助記憶装置などに記憶されている。
【0240】
制御装置500-2は、培地ヒーター456-2及び循環ヒーター460-2にも停止を示す制御信号を送信する。これにより、供給ポンプ454-2、培地ヒーター456-2及び循環ヒーター460-2は停止する。
【0241】
<培地追加処理(処理番号AD2)>
培地追加処理(処理番号AD2)は、前述した培地追加処理(処理番号AD1)によって培地が追加された後、所定の時間を経た後に、再び培地を追加する処理である。
【0242】
制御装置500-2は、新規培地の培養容器110-2への追加が完了してから所定の時間が経過した後に、作動を示す制御信号を培地ヒーター456-2及び循環ヒーター460-2に送信する。これにより、次に培地を追加するよりも前に、培地ヒーター456-2及び循環ヒーター460-2が作動する。培地を追加するときには、培地を的確に加温することができる。
【0243】
なお、三方バルブ250-2は、既に培地廃棄状態となっており、供給管224-2と廃棄管262-2とは連通している。
【0244】
制御装置500-2は、作動を示す制御信号を供給ポンプ454-2に送信する。これにより、培地タンク452-2に貯留されている新規培地は、培地ヒーター456-2によって加温されて供給管222-2に導出される。
【0245】
供給管222-2に導出された新規培地は、循環ヒーター460-2によって加温され、供給管224-2を流動して三方バルブ250-2を経て、供給管226-2の導入口227-2から培養容器110-2に導入される。このようにして、再び新規培地が培養容器110-2に追加される。
【0246】
制御装置500-2は、所定の時間が経過した後に、停止を示す制御信号を供給ポンプ454-2に送信する。これにより、新規培地の培養容器110-2への2回目の追加が完了する。
【0247】
所定の時間は、追加する培地の量に対応する時間である。所定の時間は、細胞の種類や供給ポンプ454-2の回転数などに基づく。所定の時間は、予備実験などによって決定されており、予め補助記憶装置などに記憶されている。なお、所定の時間は、1回目の新規培地の追加の所定の時間と同じ時間でも、異なる時間でもよい。
【0248】
<培地追加処理(処理番号AD2以降)>
処理番号AD1及びAD2と同様にして、培地の追加を、複数回に亘って繰り返すことができる。
【0249】
<液面の位置及び培地追加培養処理の終了>
新規培地を培養容器110-2に追加するたびに、培養容器110-2に貯留されている細胞懸濁液の液面は徐々に高くなる。培地の追加により、細胞懸濁液の液面が、導出口231-2よりも高くなったときに、培地追加培養処理を終了する。
【0250】
細胞懸濁液の液面を導出口231-2よりも高くすることで、培地を導出口231-2から環送管232-2に導出できる状態となる。
【0251】
<培地追加培養処理の特徴>
培地追加培養処理は、培地を追加することによって、細胞をさらに成長させ分裂させて、細胞凝集塊を大きくする。培地追加培養処理では、少なくとも1回、培地が追加される。培地追加培養処理では、複数回、培地を追加するのが好ましい。
【0252】
培地を追加する回数や追加する培地の量は、細胞の種類や所望する凝集塊の大きさなどに基づく。これらも、予備実験などによって決定されており、予め補助記憶装置などに記憶されている。
【0253】
<その他>
培地を追加する量は、追加の度に同じ量でもよいし、追加毎に互いに異なる量でもよい。
【0254】
カメラ320-2で撮像した画像に基づいて、細胞凝集塊の大きさや数を取得して、追加する培地の量や追加する回数などを決定してもよい。撮像した画像に様々な画像処理を施すことにより、細胞凝集塊の大きさや数を取得しやすい画像に変換するのが好ましい。
【0255】
<<培地交換循環培養処理及び培地循環準備処理>>
培地交換循環培養処理は、最終段階における細胞凝集化処理である。培地交換循環培養処理によって、細胞凝集塊を目的とする最終段階まで成長させる(大きくする)。培地を順次に交換することで、新たな培地を供給し、細胞をさらに分裂させて細胞を増やして細胞凝集塊を大きくする。さらに、培地を循環させるとともに、pH調整剤などを追加することで、培地だけでなく、細胞の成長に必要な栄養も供給して、細胞をさらに分裂させて細胞を増やして、細胞凝集塊を大きくする。
【0256】
培地追加培養処理の最終段階で、細胞凝集塊は、既に環送管232-2などに入り込まない程度に大きく成長している。このため、培地交換循環培養処理では、培地の供給では不足する栄養分を、培地を循環させることで、pH調整剤やグルコース濃縮液や溶存酸素量を追加する。最終的に所望する大きさの細胞凝集塊にすることができる。
【0257】
図6に示す例では、培地交換循環培養処理は、処理番号EX1-1~EX1-3、EX2-1~EX2-3、EX3-1~EX3-3、・・・である。培地交換循環培養処理では、培地の排出と供給と循環を複数回繰り返す。
【0258】
なお、図6に示すように、培地交換循環培養処理の前に、培地循環準備処理(処理番号PE1~PE3)を実行する。培地循環準備処理は、循環プライミング処理である。
【0259】
<培地循環準備処理(処理番号PE1~PE3)>
【0260】
前述したように、培地ヒーター456-2及び循環ヒーター460-2は、既に作動している。また、培地循環準備処理では、培地追加培養処理に引き続き、pH調整剤、グルコース濃縮液及び酸素は、培地に供給されない。
【0261】
<循環プライミング(処理番号PE1)>
制御装置500-2は、培地廃棄状態を示す制御信号を三方バルブ250-2に送信する。これにより、三方バルブ250-2は培地廃棄状態となる。
【0262】
制御装置500-2は、作動を示す制御信号を循環ポンプ210-2に送信する。これにより、循環ポンプ210-2が作動する。循環ポンプ210-2の作動により、培養容器110-2に貯留されている培地が、導出口231-2を介して環送管232-2に導出される。環送管232-2に導出された培地は、培養容器110-2→導出口231-2→環送管232-2→環送管234-2→環送管236-2→循環ポンプ210-2→環送管238-2→酸素供給モジュール420-2→供給管222-2→循環ヒーター460-2→供給管224-2→廃棄管262-2のようにして、廃液タンク260-2に廃棄される。
【0263】
制御装置500-2は、液面センサ318-2から出力された検出信号から、細胞懸濁液の液面が導出口231-2よりも低くなったときに、停止を示す制御信号を循環ポンプ210-2に送信する。これにより、循環ポンプ210-2は停止する。
【0264】
これにより、循環プライミングが終了する。循環プライミングにより、環送管232-2~238-2、循環ポンプ210-2、酸素供給モジュール420-2、供給管222-2~224-2、循環ヒーター460-2、三方バルブ250-2を、培養容器110-2に収容されている培地(環送培地)によって洗浄することができる。
【0265】
<追加(処理番号PE2)>
制御装置500-2は、培地供給状態を示す制御信号を三方バルブ250-2に送信する。これにより、三方バルブ250-2は培地供給状態となる。
【0266】
制御装置500-2は、停止を示す制御信号を循環ヒーター460-2に送信する。これにより、循環ヒーター460-2は停止する。なお、培地ヒーター456-2は既に作動している。
【0267】
制御装置500-2は、作動を示す制御信号を供給ポンプ454-2に送信する。これにより、培地タンク452-2に貯留されている新規培地は、培地ヒーター456-2によって加温されて供給管222-2に導出される。
【0268】
供給管222-2に導出された新規培地は、循環ヒーター460-2によって加温され、供給管224-2を流動して三方バルブ250-2に到達する。三方バルブ250-2に到達した新規培地は、供給管226-2に向かって導かれ、導入口227-2から培養容器110-2に導入される。このようにして、新規培地が培養容器110-2に追加される。
【0269】
制御装置500-2は、液面センサ318-2から出力された検出信号から、細胞懸濁液の液面が導出口231-2よりも高くなったときに、停止を示す制御信号を供給ポンプ454-2に送信する。これにより、供給ポンプ454-2は停止する。
【0270】
制御装置500-2は、停止を示す制御信号を培地ヒーター456-2に送信する。これにより、培地ヒーター456-2は停止する。
【0271】
このようにして、新規培地を培養容器110-2に追加することができる。
【0272】
<循環1(処理番号PE3)>
制御装置500-2は、作動を示す制御信号を循環ヒーター460-2に送信する。これにより、循環ヒーター460-2が作動する。これにより、培地を循環させるよりも前に、循環ヒーター460-2が作動する。培地を循環させるときに、培地を的確に加温することができる。なお、培地ヒーター456-2は、停止している。
【0273】
制御装置500-2は、バルブ422-2の開状態を示す制御信号をバルブ422-2に送信する。バルブ422-2を開状態にすることで、酸素供給モジュール420-2から、循環する培地に酸素を供給する。
【0274】
制御装置500-2は、作動を示す制御信号を供給ポンプ434-2に送信する。供給ポンプ434-2を作動させることで、pH調整剤タンク432-2に収容されているpH調整剤を、循環する培地に供給する。
【0275】
制御装置500-2は、作動を示す制御信号を供給ポンプ444-2に送信する。供給ポンプ444-2を作動させることで、グルコース濃縮液タンク442-2に収容されているグルコース濃縮液を、循環する培地に供給する。
【0276】
制御装置500-2は、作動を示す制御信号を循環ポンプ210-2に送信する。これにより、循環ポンプ210-2が作動する。なお、前述した追加(処理番号PE2)で、三方バルブ250-2は培地供給状態となっている。
【0277】
循環ポンプ210-2の作動により、培養容器110-2に貯留されている培地が、導出口231-2を介して環送管232-2に導出される。環送管232-2に導出された培地(環送培地)は、培養容器110-2→導出口231-2→環送管232-2→環送管234-2→環送管236-2→循環ポンプ210-2→環送管238-2→酸素供給モジュール420-2→供給管222-2→循環ヒーター460-2→供給管224-2→供給管226-2→導入口227-2→培養容器110-2のように循環する。
【0278】
この後の処理では、循環している培地への酸素の供給とpH調整剤の供給とグルコース濃縮液の供給は、継続される。
【0279】
制御装置500-2は、液面センサ318-2から出力された検出信号から、細胞懸濁液の液面が導出口231-2よりも低くなったときに、停止を示す制御信号を循環ポンプ210-2に送信する。これにより、循環ポンプ210-2は停止する。
【0280】
<培地交換循環培養処理>
前述した培地循環準備処理(処理番号PE1~PE3)の後、培地交換循環培養処理が実行される。
【0281】
<排出(処理番号EX1-1)>
制御装置500-2は、培地の排出よりも前に、作動を示す制御信号を培地ヒーター456-2に送信する。培地ヒーター456-2が作動する。これにより、培地を循環させるよりも前に、培地ヒーター456-2が作動する。培地を循環させるときに、培地を的確に加温することができる。なお、循環ヒーター460-2は既に作動している。なお、培地ヒーター456-2は、停止している。
【0282】
次に、制御装置500-2は、培地廃棄状態を示す制御信号を三方バルブ250-2に送信する。これにより、三方バルブ250-2は、培地廃棄状態となる。
【0283】
次に、制御装置500-2は、作動を示す制御信号を循環ポンプ210-2に送信する。これにより、循環ポンプ210-2が作動する。循環ポンプ210-2の作動により、培養容器110-2に貯留されている培地が、導出口231-2を介して環送管232-2に導出される。環送管232-2に導出された培地は、培養容器110-2→導出口231-2→環送管232-2→環送管234-2→環送管236-2→循環ポンプ210-2→環送管238-2→酸素供給モジュール420-2→供給管222-2→循環ヒーター460-2→供給管224-2→廃棄管262-2と経由して、廃液タンク260-2に廃棄される。すなわち、細胞の成長に用いた培地を廃棄する。
【0284】
次に、制御装置500-2は、液面センサ318-2から出力された検出信号から、細胞懸濁液の液面が導出口231-2よりも低くなったときに、停止を示す制御信号を循環ポンプ210-2に送信する。これにより、循環ポンプ210-2は、停止する。
【0285】
<供給(処理番号EX1-2)>
制御装置500-2は、培地供給状態を示す制御信号を三方バルブ250-2に送信する。これにより、三方バルブ250-2は培地供給状態となる。
【0286】
制御装置500-2は、作動を示す制御信号を培地ヒーター456-2に送信する。これにより、を培地ヒーター456-2は作動する。なお、循環ヒーター460-2は、既に作動している。
【0287】
次に、制御装置500-2は、作動を示す制御信号を供給ポンプ454-2に送信する。これにより、培地タンク452-2に貯留されている新規培地は、培地ヒーター456-2によって加温されて供給管222-2に導出される。
【0288】
供給管222-2に導出された新規培地は、循環ヒーター460-2を通過して、供給管224-2を流動して三方バルブ250-2に到達する。三方バルブ250-2に到達した新規培地は、供給管226-2に向かって導かれ、培養容器110-2に導入される。
【0289】
制御装置500-2は、液面センサ318-2から出力された検出信号から、細胞懸濁液の液面が導出口231-2よりも高くなったときに、供給ポンプ454-2及び培地ヒーター456-2を停止する。このようにして、新規培地を培養容器110-2に供給することができる。
【0290】
<循環2(処理番号EX1-3)>
制御装置500-2は、作動を示す制御信号を循環ポンプ210-2に送信する。これにより、循環ポンプ210-2が作動する。なお、前述した追加(処理番号PE2)で、三方バルブ250-2は培地供給状態となっている。循環ポンプ210-2の作動により、培養容器110-2に貯留されている培地が、導出口231-2を介して環送管232-2に導出される。環送管232-2に導出された培地は、培養容器110-2→導出口231-2→環送管232-2→環送管234-2→環送管236-2→循環ポンプ210-2→環送管238-2→酸素供給モジュール420-2→供給管222-2→循環ヒーター460-2→供給管224-2→供給管226-2→導入口227-2→培養容器110-2のように循環する。
【0291】
<排出(処理番号EX1-1)、供給(処理番号EX1-2)、循環2(処理番号EX1-3)以降の処理>
排出(処理番号EX1-1)、供給(処理番号EX1-2)、循環2(処理番号EX1-3)と同様にして、排出、供給、循環の処理を複数回に亘って繰り返す(EX2-1~EX2-3、EX3-1~EX3-3、・・・)。
【0292】
排出、供給、循環の処理を複数回に亘って繰り返すことによって、細胞凝集塊を所望する目的とする最終段階まで成長させる(大きくする)ことができる。
【0293】
<培地の排出、培地の供給、培地の循環の繰り返し>
培地の排出、培地の供給、培地の循環を繰り返す。繰り返す回数は、最終的に所望する細胞凝集塊の大きさや数などに基づく。繰り返す回数は、予備実験などで定めることができる。
【0294】
<循環ポンプ210-2による流速>
循環ポンプ210-2の回転数によって、循環する培地の単位時間当たりの流量(流速)が定まる。培地交換循環培養処理では、目的とする最終段階まで細胞凝集塊を成長させる。細胞凝集塊が重くなり、培養容器110-2の底に沈みやすくなる。このため、循環ポンプ210-2の回転数を大きくして、培地の流速を早くすることで、細胞凝集塊を浮遊させることができる。細胞凝集塊を浮遊させることで、培養容器110-2の底面との接触を防止することができる。
【0295】
細胞凝集塊の大きさに応じた循環ポンプ210-2の回転数は、予備実験などによって決定できる。さらに、培養開始からの経過時間に応じた細胞凝集塊の大きさも、予備実験などによって決定できる。これらの関係から、循環ポンプ210-2の回転数を、培養開始からの経過時間などに対応付けて、予め補助記憶装置などの記憶部に記憶されることができる。
【0296】
制御装置500-2は、培養開始からの経過時間などに応じて循環ポンプ210-2の回転数を読み出し、循環ポンプ210-2を制御する。細胞凝集塊の成長(細胞凝集塊の大きさなど)に応じて、駆動モータ(図示せず)を回転させる。細胞凝集塊を浮遊させた状態を維持して的確に成長させることができる。
【0297】
pH調整剤、グルコース濃縮液及び溶存酸素量は、細胞の種類や所望する凝集塊の大きさなどに応じて定めることができる。pH調整剤、グルコース濃縮液及び溶存酸素量も、予備実験などによって決定できる。
【0298】
カメラ320-2で撮像したデータを画像解析などで、細胞凝集塊の大きさや数を取得して、終了するか否かを判断してもよい。撮像した画像に様々な画像処理を施すことにより、細胞凝集塊の大きさや数を取得しやすい画像に変換するのが好ましい。
【0299】
<<<<第3の実施の形態の詳細>>>>
以下に、第3の実施の形態について図面に基づいて説明する。図8は、第3の実施の形態による培養システム1-3の詳細を示すブロック図である。図9は、培養システム1-3の処理の概要を示すタイムチャートである。なお、図8に示す矢印を有する破線は、制御関連の信号の入力や出力を示す。図8で破線で囲んだ2つの領域は、それぞれ、遮光する構成要素を示す遮光部分SPと、冷却した構成要素を示す冷却部分CPとである。
【0300】
<<<培養システム1-3の構成>>>
図8では、図3に示した第2の実施の形態による培養システム1-2と同様の構成要素については、同じ符号を付した。第2の実施の形態による培養システム1-2と異なる構成について、説明する。
【0301】
第2の実施の形態による培養システム1-2では、調整装置400-2として、pH調整剤供給部430-2(pH調整剤タンク432-2及び供給ポンプ434-2)と、グルコース濃縮液供給部440-2(グルコース濃縮液タンク442-2及び供給ポンプ444-2)とを有する。一方、第3の実施の形態による培養システム1-3は、pH調整剤供給部430-2及びグルコース濃縮液供給部440-2の代替の装置を有する。
【0302】
また、第2の実施の形態による培養システム1-2は、予備実験などで予め定められた条件に従って制御するシステムであった。これに対して、第3の実施の形態による培養システム1-3は、培養容器110-2で培養されている細胞や細胞凝集塊をカメラ320-2で撮像する。撮像データから細胞凝集塊のサイズなどを取得して、培養終了のタイミングを判断するシステムである。なお、取得した細胞凝集塊のサイズによって、培養条件、特に、攪拌条件や攪拌速度を決定してもよい。
【0303】
<<調整装置400-3>>
調整装置400-3は、pH調整剤供給部430-2及びグルコース濃縮液供給部440-2の代わりに、
透析モジュール472-3と、
透析環送ポンプ474-3と、
透析供給ポンプ476-3と、
透析液タンク478-3と、
を有する。
【0304】
なお、調整装置400-3は、
培地供給部450-2
培地タンク452-2
供給ポンプ454-2
培地ヒーター456-2
循環ヒーター460-2
も有する。これらは、第2の実施の形態による培養システム1-2と同様の構成であり、同様に機能する。
【0305】
<透析モジュール472-3>
透析モジュール472-3は、培養容器110-2内の細胞の成長に伴って排出された老廃物などをろ過することで除去し、細胞の成長に必要な成分(例えば、グルコースやアミノ酸やビタミンや無機塩類など)を培地に供給する。透析モジュール472-3は、環送管238-2の途中に配置される。
【0306】
<透析環送ポンプ474-3>
透析環送ポンプ474-3は、透析モジュール472-3で老廃物などが除去された液体を透析液タンク478-3に導出する。
【0307】
<透析供給ポンプ476-3>
透析供給ポンプ476-3は、透析液タンク478-3に貯留されている透析液を透析モジュール472-3に供給する。これにより、細胞の成長に必要な成分を培地に供給することができる。
【0308】
<透析液タンク478-3>
透析液タンク478-3には、透析液が貯留されている。透析液には、グルコースやアミノ酸やビタミンや無機塩類などが十分に含まれている。例えば、透析液は、前述した基礎培地であるDMEM、DMEMHG、EMEM、IMDM(Iscove's Modified Dulbecco's Medium)、GMEM(Glasgow's MEM)、RPMI-1640、α-MEM、Ham's Medium F-12、Ham's Medium F-10、Ham's Medium F12K・・・などである。さらに、添加物であるアミノ酸、ビタミン、無機塩類、タンパク質(成長因子)、グルコース、抗生物質、シグナル伝達阻害剤、還元剤、緩衝剤等を添加してもよい。
【0309】
第2の実施の形態による培養システム1-2では、pH調整剤及びグルコース濃縮液を細胞の成長に必要な成分として循環培地に追加する。これに対して、第3の実施の形態による培養システム1-3では、透析モジュール472-3を用いて、透析環送ポンプ474-3及び透析供給ポンプ476-3を動作させる。これにより、透析モジュールを介して培地に含まれている老廃物などを除去しつつ、透析液に含まれる栄養素などを培地に追加することができる。
【0310】
<<遮光部分SP>>
図8に示すように、培養容器110-2と、環送管232-2と、環送管234-2と、環送管236-2と、環送管238-2と、細胞-培地分離フィルター120-2と、サンプリングポート130-2と、透析モジュール472-3と、酸素供給モジュール420-2と、供給管222-2と、供給管224-2と、供給管226-2と、透析液タンク478-3と、培地供給部450-2とは、遮光部材(遮光部分SP)によって遮光されている。遮光することにより、添加物等の光劣化や分解を防ぐとともに、監視部30による監視結果の精度、例えば、培地成分の測定や、撮像等の精度を向上させることができる。
【0311】
<<冷却部分CP>>
透析液タンク478-3と、培地タンク452-2とは、低温恒温槽(冷却部分CP)によって冷却されている。透析液タンク478-3と、培地タンク452-2とを冷却することにより、添加物等の劣化や分解を防ぐことができる。
【0312】
<<<培養システム1-3の処理>>>
図9は、培養システム1-3の処理の概要を示すタイムチャートである。培養システム1-3の処理では、透析モジュール472-3と、カメラ320-2とを用いる。なお、以下では、培養システム1-2の処理と同様の処理については、省略する。
【0313】
前述したように、カメラ320-2は、培養容器110-2で培養されている細胞や細胞凝集塊を撮像する。カメラ320-2によって撮像された撮像データから、細胞凝集塊のサイズなどを取得できる。
【0314】
図9に示すように、間欠攪拌培養処理(処理番号IN1~)及び培地追加準備処理(PA1)までは、培養システム1-2と同様に処理される。
【0315】
<<カメラモニタリングによる処理>>
培地追加準備処理(AD1~)から終了まで、制御装置500-2は、カメラモニタリングによる処理を実行する。カメラモニタリングによる処理は、カメラ320-2によって撮像された撮像データから取得した細胞凝集塊のサイズを用いた処理である。
【0316】
制御装置500-2は、細胞凝集塊のサイズが所定のサイズ以上となったか否かを判断し、細胞凝集塊のサイズが所定のサイズ以上となった場合には、細胞凝集塊のサイズに応じて、攪拌装置600-2の駆動モータ614-2の回転数(攪拌速度)や、循環ポンプ210-2の流量を制御する。このようにすることで、細胞凝集塊の成長に従って、適した制御をすることができる。
【0317】
<<<透析モジュール472-3を用いた処理>>>
培地循環準備処理(PE2~)から終了まで、制御装置500-2は、透析環送ポンプ474-3及び透析供給ポンプ476-3を、モニタリングしているグルコース濃度、乳酸濃度、pHを指標として動作させる。例えば、循環ポンプ210-2の流量、グルコース濃度、乳酸濃度、pHに応じて、透析環送ポンプ474-3及び透析供給ポンプ476-3を動作させる。このようにすることで、培地の流量に応じて、グルコースやアミノ酸やビタミンや無機塩類などを培地に追加することができる。
【0318】
<<<<実施の形態の範囲>>>>
上述したように、第1の実施の形態及び第3の実施の形態を記載した。しかし、この開示の一部をなす記載及び図面は、限定するものと理解すべきでない。ここで記載していない様々な実施の形態等が含まれる。
【0319】
<<<<発明の実施態様>>>>
<<第1の態様>>
培養システムの第1の態様によれば、
液体培養により細胞凝集塊を形成する培養システムであって、
液体を収容し、液体を導出する導出口と液体を導入する導入口とを有する培養部と、
前記導出口と前記導入口とを液体導通可能にする経路部と、
前記培養部と前記経路部との少なくとも一方において、液体中の成分及び/又は液体の性状を監視可能な監視部と、
前記培養部と前記経路部との少なくとも一方において、液体中の成分及び/又は液体の性状を調整可能な調整部と、
前記監視部の監視結果に基づいて前記調整部を制御可能な制御部と、を備える培養システムが提供される。
【0320】
液体中の成分や液体の性状を監視し、その監視結果に基づいて、液体中の成分や液体の性状を調整するので、的確に細胞を成長させて細胞凝集塊を形成することができる。
【0321】
<<第2の態様>>
培養システムの第2の態様は、第1の態様において、
前記培養部内の液体を攪拌する攪拌部をさらに備え、
前記制御部は、所定の攪拌条件に基づいて前記攪拌部を制御する。
【0322】
<<第3の態様>>
培養システムの第3の態様は、第2の態様において、
前記液体培養は、前記攪拌部による攪拌によって液体中の細胞が浮遊される浮遊培養である。
【0323】
<<第4の態様>>
培養システムの第4の態様は、第2の態様において、
前記攪拌部は、液体を流動させる可動体を有する。
【0324】
<<第5の態様>>
培養システムの第5の態様は、第2の態様において、
前記攪拌部は、前記培養部を振盪させる振盪機構を有する。
【0325】
<<第6の態様>>
培養システムの第6の態様は、第2の態様において、
前記所定の攪拌条件は、細胞の核形成及び細胞凝集塊のサイズに基づいて予め決定された条件である。
【0326】
監視部は、液体中の成分と液体の性状とのうちの少なくとも一方を監視する。監視部は、監視した結果、少なくとも一つの性状情報や、少なくとも一つの成分情報や、細胞凝集塊のサイズに関するサイズ情報などの各種の情報を出力する。所定の攪拌条件は、監視部から出力された各種の情報に基づいて決定される。
【0327】
例えば、監視部は、後述するように、細胞凝集塊を撮像する撮像部を有する。撮像部は、細胞凝集塊の大きさを決定できるサイズ情報を出力する。制御部は、監視部が出力したサイズ情報を取得する。制御部は、サイズ情報から細胞凝集塊の大きさを決定することができる。制御部は、細胞凝集塊の大きさに基づいて所定の攪拌条件を決定する。例えば、細胞凝集塊の大きさに応じて攪拌速度を決定する。
【0328】
細胞同士を接触する可能性を高めつつ、細胞凝集塊に加わる剪断応力が大きくならない程度(一旦、形成された細胞凝集塊が分断されない程度)に攪拌することができる。
【0329】
<<第7の態様>>
培養システムの第9の態様は、第1の態様ないし第6の態様において、
前記培養部及び前記経路部の少なくとも一部を内部に収納可能な恒温槽を、さらに備える。
【0330】
安定した環境下で細胞凝集塊を的確に成長させることができる。
【0331】
<<第8の態様>>
培養システムの第8の態様は、第1の態様ないし第7の態様において、
前記培養部及び前記経路部の液体を外部から加温可能な外部ヒーターを、さらに備える。
【0332】
外部ヒーターによって液体を温めることで、細胞凝集塊の形成に適切な環境にすることができる。
【0333】
<<第9の態様>>
培養システムの第9の態様は、第1の態様ないし第8の態様において、
前記導出口は、培養開始時の液体の液面よりも高い。
【0334】
フィルター又は物理的な機構などにより、成長していない細胞や小さい細胞凝集塊が、導出口から排出されるのを防止できる。
【0335】
<<第10の態様>>
培養システムの第10の態様は、第1の態様ないし第9の態様において、
前記監視部は、液体の性状に関する情報として、液体の温度に関する情報と、液体の水素イオン濃度に関する情報と、液体中の溶存酸素濃度に関する情報と、のうちの少なくとも一つの性状情報を出力可能であり、
前記制御部は、前記監視部が出力した前記少なくとも一つの性状情報を取得する。
【0336】
監視部は、取得した少なくとも一つの性状情報を用いて、調整部や攪拌部などを制御することができる。
【0337】
<<第11の態様>>
培養システムの第11の態様は、第1の態様ないし第10の態様において、
前記監視部は、液体中の成分に関する情報として、電解質に関する情報、アミノ酸に関する情報、グルコースに関する情報、乳酸に関する情報のうちの少なくとも一つの成分情報を出力可能であり、
前記制御部は、前記監視部が出力した前記少なくとも一つの成分情報を取得する。
【0338】
監視部は、取得した少なくとも一つの成分情報を用いて、調整部や攪拌部などを制御することができる。
【0339】
<<第12の態様>>
培養システムの第12の態様は、第1の態様ないし第11の態様において、
前記監視部は、前記培養部内の細胞凝集塊のサイズに関するサイズ情報を出力可能であり、
前記制御部は、前記監視部が出力したサイズ情報を取得する。
【0340】
監視部は、取得したサイズ情報を用いて、調整部や攪拌部などを制御することができる。
【0341】
<<第13の態様>>
培養システムの第13の態様は、第12の態様において、
前記監視部は、前記培養部の細胞凝集塊を撮像する撮像部を有し、
前記制御部は、細胞凝集塊の撮像データから細胞凝集塊のサイズを前記サイズ情報として取得する。
【0342】
<<第14の態様>>
培養システムの第14の態様は、第1の態様ないし第13の態様において、
前記調整部は、液体に必要成分を付与する成分付与部及び/又は液体から不要成分を除去する成分除去部を有し、
前記制御部は、前記監視部の監視結果に基づいて、前記成分付与部及び/又は前記成分除去部を制御し、液体中の成分及び/又は液体の性状を調整する、第1の態様ないし13のいずれか一項に記載の培養システム。
【0343】
制御部は、監視部が出力した監視結果に基づいて、成分付与部や成分除去部を制御する。成分付与部や成分除去部の制御により、液体中の成分や液体の性状を調整することができる。液体中の成分や液体の性状を調整することにより、培養部の環境を細胞凝集塊の成長に適切な状態にすることができる。
【0344】
<<第15の態様>>
培養システムの第15の態様は、第1の態様ないし第14の態様において、
前記調整部は、培養に必要な気体成分を液体に供給可能な気体交換膜を有する。
【0345】
培養に必要な気体成分の供給により、培養部の環境を細胞凝集塊の成長に適切な状態にすることができる。
【0346】
<<第16の態様>>
培養システムの第16の態様は、第15の態様において、
前記気体交換膜は、シリコーン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン及びポリメチルペンテンのいずれか一つからなる中空糸ガス交換膜である。
【0347】
中空糸ガス交換膜を用いるので、目詰まりしにくい均質膜により長期間の使用が可能となり、システムの小型化を図ることができる。
【0348】
<<第17の態様>>
培養システムの第17の態様は、第1の態様ないし第16の態様において、
前記調整部は、透析膜を有する。
【0349】
調整部は、透析膜を有するので、長期間に亘って培地を使用し続けることができる。
【0350】
<<第18の態様>>
培養システムの第18の態様は、第1の態様ないし第17の態様において、
前記制御部は、前記監視部の監視結果に基づいて、前記調整部を制御して、液体にpH調整剤を添加して液体の水素イオン濃度を調整する。
【0351】
細胞の培養に適切な水素イオン濃度範囲に維持することができる。
【0352】
<<第19の態様>>
培養システムの第19の態様は、第1の態様ないし第18の態様において、
前記監視部は、液体と接する気体中の二酸化炭素濃度に関する情報を、さらに、出力可能であり、
前記制御部は、前記監視部の二酸化炭素濃度に関する情報に基づいて、前記調整部を制御して、二酸化炭素を供給して液体の水素イオン濃度を調整する。
【0353】
二酸化炭素濃度に関する情報も利用することで、細胞を培養する環境を的確に維持することができる。
【0354】
<<第20の態様>>
培養システムの第20の態様は、第1の態様ないし第19の態様において、
前記調整部は、調整用の成分毎の流量を調整する流量調整部を有し、
前記制御部は、前記監視部の監視結果に基づいて、前記流量調整部を制御する。
【0355】
成分毎に流量を調整できるので、細胞凝集塊の成長に必要な成分を過不足なく培養部に供給することができる。
【0356】
<<第21の態様>>
培養システムの第21の態様は、第1の態様ないし第20の態様において、
前記調整部は、着脱可能なパネルに設けられる。
【0357】
調整部を着脱可能なパネルに設けたことにより、調整部に関連する部材や部品などの交換作業などを容易にすることができる。
【0358】
<<第22の態様>>
培養システムの第22の態様は、第1の態様ないし第21の態様において、
前記経路部から液体を排出可能な廃棄部70を、さらに備える。
【0359】
廃棄部70に液体を排出できるので、培養部に収容する液体の液体中の成分や液体の性状を細胞凝集塊の成長に必要なもののみに調整できる。培養部に収容する液体を適量に調整することができる。
【0360】
<<第23の態様>>
培養システムの第23の態様は、第22の態様において、
前記経路部から液体を前記廃棄部70に排出させる排出機構72を、さらに備え、
前記制御部は、前記排出機構72を制御して、前記培養部の液体を、循環プライミングとして前記経路部に流動させた後に、前記廃棄部70に排出させる。
【0361】
培養部の液体を、循環プライミングとして経路部に流動させて排出するので、培養部の液体を有効に活用することができる。
【0362】
<<第24の態様>>
培養システムの第24の態様は、第1の態様ないし第23の態様において、
前記制御部は、前記監視部の監視結果に基づいて、液体中の成分及び/又は液体の性状を所定の値又は所定の範囲に制御する。
【0363】
細胞凝集塊の成長の程度や液体の状態に応じて、細胞凝集塊を適切に成長させ続けることができる。
【0364】
<<第25の態様>>
培養システムの第25の態様は、第1の態様ないし第24の態様において、
前記制御部は、前記調整部を制御して、培養の進行に基づいて、前記培養部の液体の量を培養開始時の液体の量よりも多くする。
【0365】
細胞の大きさや細胞凝集塊の成長の程度に応じて、液体の量を定めるので、細胞や細胞凝集塊が培養部から導出されることを防止して、細胞や細胞凝集塊を培養部内に留まらせて細胞凝集塊を成長させることができる。
【0366】
<<第26の態様>>
培養システムの第26の態様は、第25の態様において、
前記制御部は、
前記培養部の液体の量が前記培養開始時の液体の量であるときに、第1の攪拌制御と前記第1の攪拌制御とは異なる第2の攪拌制御とを交互に切り替えて前記攪拌部を制御する第1の処理を実行する。
【0367】
細胞同士を接触しやすくして細胞凝集塊が形成されやすい状態と、形成された細胞凝集塊を安定化させる状態との双方の状態を繰り返すことで、培養部内で的確に細胞凝集塊を成長させることができる。
【0368】
<<第27の態様>>
培養システムの第27の態様は、第26の態様において、
前記制御部は、
前記第1の処理の後に、前記攪拌部を前記第1の攪拌制御によって動作させ、かつ、前記培養部の液体の量を前記調整部によって段階的に調整させる第2の処理を実行する。
【0369】
細胞凝集塊の大きさに応じて細胞凝集塊を徐々に成長させて、培養部から導出されない程度の大きさに近づくように成長させることができる。
【0370】
<<第28の態様>>
培養システムの第28の態様は、第27の態様において、
前記制御部は、前記調整部を制御して、
前記第2の処理の後に、前記培養部の液体の液面が前記導出口よりも高いときに、前記経路部を介して前記液体を交換する第3の処理を実行する。
【0371】
細胞凝集塊を培養部から導出されない程度の大きさまでに成長させることができ、液体を循環させることで、細胞凝集塊を最終的に所望する大きさに至るまで成長させることができる。
【符号の説明】
【0372】
1、1-1、1-2、1-3 培養システム
100-1、100-2 培養装置
200-1、200-2 経路構造体
300-1、300-2 監視装置
400-1、400-2 調整装置
500-1、500-2 制御装置
600-1、600-2 攪拌装置
【要約】
【課題】 十分に成長させた細胞凝集塊を生成することができる培養システムを提供する。
【解決手段】 液体培養により細胞凝集塊を形成する培養システムであって、液体を収容し、液体を導出する導出口と液体を導入する導入口とを有する培養部と、導出口と導入口とを液体導通可能にする経路部と、培養部と経路部との少なくとも一方において、液体中の成分及び/又は液体の性状を監視可能な監視部と、培養部と経路部との少なくとも一方において、液体中の成分及び/又は液体の性状を調整可能な調整部と、監視部の監視結果に基づいて調整部を制御可能な制御部と、を備える。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9