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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】モータ装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/20 20160101AFI20231003BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20231003BHJP
   H02K 3/50 20060101ALI20231003BHJP
   H02K 11/30 20160101ALI20231003BHJP
【FI】
H02K11/20
B62D5/04
H02K3/50 A
H02K11/30
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018134391
(22)【出願日】2018-07-17
(65)【公開番号】P2020014310
(43)【公開日】2020-01-23
【審査請求日】2021-06-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】杉森 弦太
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-082614(JP,A)
【文献】特開2016-119799(JP,A)
【文献】国際公開第2012/093678(WO,A1)
【文献】特開平11-082359(JP,A)
【文献】特開2018-033197(JP,A)
【文献】特開2014-234102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/20
B62D 5/04
H02K 3/50
H02K 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸を有するモータと、
前記モータへの給電経路である複数相のモータバスバーと、
前記モータバスバーを介して前記モータへの給電を制御する制御回路と、
前記モータバスバー及び前記制御回路を収容するハウジングと、を備えたモータ装置であって、
定のモータバスバーは、前記モータ装置が取付対象に取り付けられた状態において、前記制御回路よりも重力方向下側に配置されており、
前記制御回路は、前記特定のモータバスバーへの給電状態の変化に基づいて、前記ハウジング内に浸水が生じたことを検出する浸水検出手段を備え、
前記モータは、前記回転軸が重力方向と交差するように配置され、
前記モータは、磁石を有するとともに前記回転軸と一体回転可能に固定されたロータと、コイルを有するとともに前記ロータの外周面との間に径方向に隙間を空けて配置されたステータとを有し、
前記コイルは、第1モータコイルと第2モータコイルとを含み、
前記複数相のモータバスバーは、当該複数相のモータバスバーを一系統とした、第1モータバスバーと第2モータバスバーとを含み、
前記制御回路は、第1制御回路と第2制御回路とを含み、
前記第1制御回路は、前記第1モータバスバーを通じた前記第1モータコイルへの給電を制御し、
前記第2制御回路は、前記第2モータバスバーを通じた前記第2モータコイルへの給電を制御し、
前記特定のモータバスバーを前記第1モータバスバーとする場合、前記第1モータバスバーは、前記第1モータコイル及び前記第2モータコイルよりも重力方向下側に配置されているとともに、前記第2モータバスバーは前記第1モータコイル及び前記第2モータコイルよりも重力方向上側に配置されているモータ装置。
【請求項2】
前記複数相のモータバスバーは、3相のモータバスバーであり、
前記制御回路は、前記3相のモータバスバーの電圧値を監視することによって、前記3相のモータバスバーの短絡を検出するための判定処理を実行するように構成されており、
前記判定処理は、前記3相のモータバスバーの電圧値の関係が、3相交流としての関係から所定時間継続して崩れているか否かを検出する処理であり、
前記浸水検出手段は、前記判定処理を実行することによって、前記ハウジング内に浸水が生じたことを検出する請求項1に記載のモータ装置。
【請求項3】
前記第1モータバスバーは、重力方向と略直交する方向に並んで配置されている請求項1又は請求項2に記載のモータ装置。
【請求項4】
軸方向に往復移動するラック軸と前記モータの前記回転軸の回転を前記ラック軸の往復移動に変換して前記ラック軸に伝達する伝達機構とを収容するラックハウジングに前記ハウジングが連結され、
前記ハウジングは、前記ラック軸よりも重力方向下側に配置されている請求項1~のいずれか一項に記載のモータ装置。
【請求項5】
前記ハウジングは、軸方向に往復移動するラック軸と前記モータの前記回転軸の回転を前記ラック軸の往復移動に変換して前記ラック軸に伝達する伝達機構とを収容するとともに、前記ラック軸及び転舵輪を連結するタイロッドとラックハウジングとの間に接続されて前記ハウジングの水密構造よりも耐水性が脆弱な部位であるラックブーツによって内部への浸水を抑制する構造をなす前記ラックハウジングよりも、耐水性に優れた水密構造をなす請求項1~のいずれか一項に記載のモータ装置。
【請求項6】
前記複数相のモータバスバー及び前記制御回路が接続されている基板を有し、
前記基板は重力方向と直交する水平方向に対して交差して設けられており、前記第1モータバスバーは、前記基板の重力方向における最下点に接続されている請求項1~のいずれか一項に記載のモータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されるように、モータ及びモータへの給電をインバータを通じて制御するマイコンをモータケースに収容したモータ装置が存在している。インバータとモータの巻線との間は、モータ線によって接続されている。これらのマイコン、インバータ、及びモータ線は同一基板上に配置されている。モータケースのシール性の低下等の各種の要因に起因して、モータケースの内部に水が入ることがある。特許文献1では、マイコンの異常検出部は、モータ線とモータケースとの間の抵抗の変化を検出することにより、モータケースの内部への浸水を検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-119799号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、モータケースの内部への浸水を検出するための構成をモータケースの内部に設けたことを開示するのみであり、モータケースの内部への浸水を検出するための構成を重力方向に対してどのように配置するのかについては何ら考慮していない。このため、重力の影響によってマイコンが先に浸水することで、フェイルセーフ等のモータの管理ができないような自体を招いてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するモータ装置は、回転軸を有するモータと、前記モータへの給電経路である複数相のモータバスバーと、前記モータバスバーを介して前記モータへの給電を制御する制御回路と、前記モータバスバー及び前記制御回路を収容するハウジングと、を備えたモータ装置であって、複数相のうち少なくとも2相の特定のモータバスバーは、前記モータ装置が取付対象に取り付けられた状態において、前記制御回路よりも重力方向下側に配置されており、前記制御回路は、前記特定のモータバスバーへの給電状態の変化に基づいて、前記ハウジング内に浸水が生じたことを検出する浸水検出手段を備えている。
【0006】
モータ装置のハウジングの内部に水が入った場合、入り込んだ水は重力の影響によってハウジングの内部において重力方向下側へと移動する。そこで、上記構成によれば、重力方向を考慮してハウジングの内部に浸水が発生したことを検出できる配置を採用している。ハウジングの内部に相当量の水が入った場合には、制御回路が浸水するよりも前に、制御回路よりも重力方向下側に配置されている少なくとも2相の特定のモータバスバーが浸水する。このため、特定のモータバスバーへの給電状態の変化を把握することにより、浸水検出手段によって制御回路が浸水するよりも前にモータ装置の内部に浸水が生じたことを検出することができるようになる。これにより、制御回路が浸水するよりも前にモータ装置の内部に浸水が生じたことを検出できることから、浸水を検出した後のモータの駆動を管理することができるため、例えばフェイルセーフ等の制御を実行することができるようになる。
【0007】
上記のモータ装置において、前記特定のモータバスバーは、重力方向と略直交する方向に並んで配置されていることが好ましい。
上記構成によれば、特定のモータバスバーを重力方向と直交する方向に並んで配置していることから、特定のモータバスバーを重力方向に並んで配置する場合と比べると、モータの径方向のサイズについて大きくなる傾向を抑制することができる。
【0008】
上記のモータ装置において、前記モータは、前記回転軸が重力方向と交差するように配置され、前記モータは、磁石を有するとともに前記回転軸と一体回転可能に固定されたロータと、コイルを有するとともに前記ロータの外周面との間に径方向に隙間を空けて配置されたステータとを有し、前記特定の前記モータバスバーは、前記コイルよりも重力方向下側に配置されていることが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、ハウジングの内部に入り込んだ水によってモータバスバーが浸水する際、特定のモータバスバーがコイルよりも重力方向下側に配置されていることから、コイルが浸水するよりも前にモータバスバーが浸水することになる。このため、特定のモータバスバーへの給電状態の変化を把握することにより、コイルが浸水するよりも前にモータ装置の内部に浸水が生じたことを検出することができるようになる。
【0010】
上記のモータ装置において、複数相の前記モータバスバーを一系統とした複数系統のモータバスバーを備え、複数系統のうち少なくとも1系統の前記モータバスバーは、複数系統のうち他系統の前記モータバスバーよりも、重力方向下側に配置されていることが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、ハウジングの内部に入り込んだ水によってモータバスバーが浸水する際、複数系統のモータバスバーのうち少なくとも1系統のモータバスバーは、他系統のモータバスバーよりも先に浸水することになる。このため、重力方向下側に配置されている少なくとも1系統のモータバスバーへの給電状態の変化を把握することで、複数系統のモータバスバーのうち他系統のモータバスバーが浸水するよりも前に、モータ装置の内部に浸水が生じたことを検出することができるようになる。また、1系統のモータバスバーへの給電状態の変化を通じてハウジングの内部への浸水を検出したときであっても、他系統のモータバスバーは未だ浸水していないことがある。このような場合、他系統のモータバスバーが浸水するまでの間は、他系統のモータバスバーを通じてモータの駆動制御を継続することができる。
【0012】
上記のモータ装置は、軸方向に往復移動するラック軸と前記モータの前記回転軸の回転を前記ラック軸の往復移動に変換して前記ラック軸に伝達する伝達機構とを収容するラックハウジングに前記ハウジングが連結され、前記ハウジングは、前記ラック軸よりも重力方向下側に配置されているものに好適である。
【0013】
上記構成によれば、モータ装置の内部に浸水しやすい配置とされていることから、制御回路が浸水するよりも前にモータ装置の内部に浸水が生じたことを検出できる構成を採用していることは有意である。
【0014】
上記のモータ装置において、前記ハウジングは、軸方向に往復移動するラック軸と前記モータの前記回転軸の回転を前記ラック軸の往復移動に変換して前記ラック軸に伝達する伝達機構とを収容するとともに、前記ラック軸及び転舵輪を連結するタイロッドとラックハウジングとの間に接続されて前記ハウジングの水密構造よりも耐水性が脆弱な部位であるラックブーツによって内部への浸水を抑制する構造をなす前記ラックハウジングよりも、耐水性に優れた水密構造をなすことが好ましい。
【0015】
上記構成によれば、ラックブーツを介したラックハウジングの内部への浸水よりも、モータ装置の内部への浸水が生じにくくすることができる。
上記のモータ装置において、複数相の前記モータバスバー及び前記制御回路が接続されている基板を有し、前記基板は重力方向と直交する水平方向に対して交差して設けられており、前記特定のモータバスバーは、前記基板の重力方向における最下点に接続されていることが好ましい。
【0016】
特定のモータバスバーが基板の重力方向における最下点に接続されていることから、基板が浸水する際には、最初に特定のモータバスバーが浸水することになる。このことから、モータ装置の内部への浸水を検出しやすい構造とすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明のモータ装置によれば、制御回路が浸水するよりも前にハウジングの内部への浸水を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ステアリング装置の概略構成を示すブロック図。
図2】モータ装置の概略構成図。
図3】モータバスバーと回路基板との接続構造を示す概略構成図。
図4】回路基板に搭載された制御回路及びモータバスバーを回転軸の軸方向から見たときの概略構成図。
図5】2相のモータバスバーが短絡した場合の各相のモータバスバーの電圧値の関係を示すグラフ。
図6】他の実施形態において、回路基板に搭載された制御回路及びモータバスバーを回転軸の軸方向から見たときの概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
電動パワーステアリング装置(以下、「EPS」という。)に搭載されたモータ装置の一実施形態について説明する。
図1に示すように、EPS1は、運転者によるステアリングホイール10の操作に基づいて転舵輪3を転舵させる操舵機構2と、操舵機構2にステアリング操作を補助するための補助力を発生させるモータ装置20を有するアクチュエータ4とを備えている。
【0020】
操舵機構2は、ステアリングホイール10が連結されているステアリング軸11と、ステアリング軸11の回転に応じて軸方向に往復移動するラック軸12と、ラック軸12が往復移動可能に挿通されるハウジングとしてのラックハウジング13とを備えている。ステアリング軸11は、ステアリングホイール10と連結されたコラム軸11aと、コラム軸11aの下端部に連結された中間軸11bと、中間軸11bの下端部に連結されたピニオン軸11cとを有している。ラックハウジング13は、それぞれ円筒状に形成された第1ラックハウジング14と第2ラックハウジング15とを連結してなる。ラック軸12とピニオン軸11cとは、第2ラックハウジング15内に所定の交差角をもって配置されている。ラックアンドピニオン機構18は、ラック軸12に形成されたラック歯16とピニオン軸11cに形成されたピニオン歯17とが噛合されることで構成されている。また、ラック軸12の両端には、タイロッド19が連結されている。タイロッド19の先端は、転舵輪3が組み付けられたナックルに連結されている。ラックハウジング13の軸方向における端部とタイロッド19との間には、蛇腹筒状体のラックブーツ19aがそれぞれ配置されている。ラックブーツ19aは、水等の異物がラックハウジング13の内部に侵入することを抑制している。EPS1では、ステアリング操作に伴うステアリング軸11の回転運動は、ラックアンドピニオン機構18を介してラック軸12の軸方向の往復直線運動に変換される。この軸方向の往復直線運動がタイロッド19を介してナックルに伝達されることにより、転舵輪3の転舵角、すなわち車両の進行方向が変更される。
【0021】
アクチュエータ4は、駆動源としてのモータ21を有するモータ装置20と、モータ21の回転軸21aの回転を伝達するベルト伝達機構22と、ベルト伝達機構22を介して伝達された回転運動をラック軸12の往復移動運動に変換するボールねじ機構23とを備えている。ベルト伝達機構22及びボールねじ機構23は、伝達機構を構成している。モータ装置20は、ラック軸12よりも重力方向下側に配置されている。モータ装置20は、車室外に配置されているとともに、取付対象であるラックハウジング13の重力方向下側の部分と連結されている。モータ21の回転軸21aはラック軸12と平行に配置されている。なお、厳密には、モータ21の回転軸21aは、ベルト伝達機構22のベルトのテンションによって、わずかに平行から傾いて配置されている。本実施形態では、重力方向は、モータ21の回転軸21aと直交する方向である。アクチュエータ4は、第1ラックハウジング14と第2ラックハウジング15との連結部分に設けられている。アクチュエータ4は、モータ21の回転軸21aの回転運動をベルト伝達機構22を介してボールねじ機構23に伝達するとともに、ボールねじ機構23によってラック軸12の往復直線運動に変換することで操舵機構2にアシスト力を付与する。操舵機構2にアシスト力が付与されることにより、運転者のステアリング操作が補助される。
【0022】
モータ装置20は、モータ21への給電を制御する電子制御装置30を有している。また、車両には、報知部100が搭載されている。報知部100は、例えばインストルメントパネル等に設けられた警告灯である。報知部100は、電子制御装置30に接続されている。電子制御装置30は、何らかの異常が生じた場合、報知部100を点灯させる。
【0023】
モータ装置20について説明する。
図2に示すように、モータ装置20は、モータ21及び電子制御装置30を収容するハウジングとしてのモータハウジング24を備えている。
【0024】
モータハウジング24は、開口部を有する有底円筒状の第1モータハウジング25及び開口部を有する有底円筒状の第2モータハウジング26を有している。モータ装置20がEPS1に搭載された状態において、第1モータハウジング25及び第2モータハウジング26は、重力方向と直交する方向に分割されている。モータハウジング24の内部には、ヒートシンク27が設けられている。ヒートシンク27は、第1モータハウジング25の開口部に嵌合されている。また、第2モータハウジング26の開口部がヒートシンク27(第1モータハウジング25の開口部)と対向した状態で、第2モータハウジング26にヒートシンク27が取り付けられている。ヒートシンク27及び第2モータハウジング26は、それらの外周面に設けられた円環状のフランジ部において、互いにボルト28で固定されている。ヒートシンク27のフランジ部に設けられた円環状の凹部と第2モータハウジング26のフランジ部に設けられた円環状の凹部との間には、モータハウジング24の内部への水等の異物の侵入を抑制するための第1シール部29cが設けられている。第1シール部29cには、例えばOリングが採用されている。また、ヒートシンク27の外周面に設けられた円環状の凹部と第1モータハウジング25の内周面との間には、モータハウジング24の内部への水等の異物の侵入を抑制するための第2シール部29dが設けられている。ヒートシンク27と第1モータハウジング25の内面との間には、それらに囲まれることにより第1空間S1が形成されている。ヒートシンク27と第2モータハウジング26の内面との間には、それらに囲まれることにより第2空間S2が形成されている。
【0025】
第1モータハウジング25の内部である第1空間S1には、モータ21が収容されている。モータ21としては、三相ブラシレスモータが採用されている。モータ21は、第1モータハウジング25の内周面に嵌合された円筒状のステータ40と、回転軸21aの外周に嵌合されるとともにステータ40の内周に隙間を空けて配置されている円筒状のロータ50とを備えている。回転軸21aは、第1空間S1と第2空間S2とを繋ぐようにヒートシンク27に形成された貫通孔27aを貫通して配置されている。回転軸21aの第2の端部、すなわち図2中の第2モータハウジング26側の端部は、第2空間S2に位置している。回転軸21aの第1の端部、すなわち図2中の第2モータハウジング26と反対側の端部は、第1モータハウジング25の外部に位置している。回転軸21aは、大径部21bと、大径部21bを軸方向において挟むように位置する第2小径部21c及び第1小径部21dとを有している。第2小径部21cは、大径部21bよりも第2モータハウジング26側に位置している。第1小径部21dは、大径部21bよりも第2モータハウジング26と反対側に位置している。第2小径部21cとヒートシンク27の貫通孔27aに設けられた凹み27bとの間には、第2軸受29bが設けられている。第2軸受29bは、ヒートシンク27に対して第2小径部21cを回転可能に支持する。第1モータハウジング25の底部には凹み25aが形成されている。第1小径部21dと凹み25aの内周面との間には、第1軸受29a及び第3シール部29eが設けられている。第1軸受29aは、第1モータハウジング25に対して第1小径部21dを回転可能に支持する。第3シール部29eには、例えばリップシールが採用されている。第3シール部29eは、第1モータハウジング25の内部への水等の異物の侵入を抑制している。モータハウジング24は、第1シール部29c、第2シール部29d、及び第3シール部29eのシール性によって、ラックブーツ19aによるラックハウジング13の水密構造よりも耐水性に優れた水密構造をなしている。ラックブーツ19aは、モータハウジング24の耐水性よりも耐水性が脆弱な部位である。
【0026】
ロータ50は、回転軸21aの大径部21bと一体回転可能に固定されている円筒状のロータコア51と、ロータコア51の外周に固定されている複数の永久磁石52とを備えている。各永久磁石52は、ロータコア51の周方向に異なる磁極(N極、S極)が交互に並ぶようにロータコア51の外周に固定されている。
【0027】
ステータ40は、ステータコア41と、インシュレータ42と、コイルとしての第1モータコイル43a及び第2モータコイル43bとを有している。ステータコア41は、第1モータハウジング25の内周面に固定されている。第1モータコイル43a及び第2モータコイル43bは、ステータコア41にインシュレータ42を介して巻回されている。モータ装置20は、第1モータバスバー60及び第2モータバスバー70を有している。
【0028】
図2及び図3に示すように、第1モータバスバー60は、本体部61、及び本体部61における第2モータハウジング26の底面側の端部である第2の端部と回路基板31とを接続するための接続部62を有している。各相(U相、V相、W相)の本体部61の第2の端部と反対側の端部である第1の端部は、第1空間S1に位置している。各相の本体部61の第1の端部は、各相に対応する第1モータコイル43aの各相の端部44aに接続されている。本体部61は、端部44aに接続されている第1部分と、ヒートシンク27に形成された第1貫通孔27cを貫通して配置されている第2部分と、端部44aに接続された部分及び第1貫通孔27cを貫通する部分を接続している第3部分とを有している。第1貫通孔27cは、第1空間S1と第2空間S2とを繋ぐようにヒートシンク27を貫通して3つ形成されている。第1貫通孔27cは、重力方向と直交する方向に延びている。第1部分は、重力方向と直交する方向に延びている。第3部分は、第1部分及び第2部分と接続するとともに重力方向に延びている。第2部分は、重力方向と直交する方向に延びている。第2部分は、各相に対応する第1貫通孔27cをそれぞれ貫通している。第2部分は、回路基板31に形成された第2貫通孔31aを貫通して配置されている。第2貫通孔31aは、回路基板31を重力方向と直交する方向に貫通して3つ形成されている。第2部分は、重力方向と直交する方向に延びている。本体部61の第2の端部は、第2空間S2に位置している。接続部62の第2モータハウジング26の底面と反対側の端部である第1の端部は、回路基板31に半田等により固定されている。回路基板31と接続部62の第1の端部とは、回路基板31の重力方向における最下点に接続されている。最下点とは、回路基板31の重力方向において最も下側の位置の近傍の部分である。接続部62の第1の端部と反対側の端部である第2の端部及び本体部61の第2の端部は、ボルト63により固定されている。
【0029】
各相の第2モータバスバー70は、本体部71、及び本体部71における第2モータハウジング26の底面側の端部である第2の端部と回路基板31とを接続するための接続部72を有している。接続部72の第2の端部及び本体部71の第2の端部は、ボルト73により固定されている。本体部71は、各相に対応する第2モータコイル43bの各相の端部44bに接続されている第1部分と、ヒートシンク27に形成された第3貫通孔27dを貫通して配置されている第2部分と、端部44bに接続された部分及び第3貫通孔27dを貫通する部分を接続している第3部分とを有している。各相の本体部71の第3部分は、第1空間S1と第2空間S2とを繋ぐようにヒートシンク27に形成された3つの第3貫通孔27d、及び回路基板31に形成された3つの第4貫通孔31bを貫通して配置されている。第2モータバスバー70の構成は、第1モータバスバー60の構成と同様である。第1モータバスバー60は、第2モータバスバー70よりも重力方向下側に配置されている。
【0030】
図2に示すように、第2モータハウジング26の底部には、外部電源に設けられたコネクタに嵌るコネクタ90が設けられている。コネクタ90には、第2モータハウジング26の底部を貫通する接続端子91が挿通されている。第2空間S2には、電子制御装置30が収容されている。電子制御装置30は、回路基板31を有している。回路基板31は、その延びる面がモータ21の回転軸21aと直交して配置されている。接続端子91の一端部は外部電源に接続される。接続端子91の他端部は、回路基板31に設けられた図示しない貫通孔に挿入された状態で半田等により固定されている。
【0031】
電子制御装置30は、回路基板31及び回転角検出部80を有している。回転角検出部80は、磁石81と、磁気センサ82a,82bとを有している。磁石81は、第2小径部21cにおける大径部21bと反対側の端部に取り付けられている。磁気センサ82a,82bは、回路基板31における第2小径部21c側の端面に取り付けられている。磁気センサ82a,82bは、回転軸21aの軸方向において、磁石81と隙間を介して対向している。磁気センサ82a,82bは、磁石81の回転に伴い変化する磁界に応じた電気信号を生成する。この電気信号は、モータ21の回転軸21aの回転角の演算に用いられる。
【0032】
回路基板31は、スペーサ83及びボルト84によりヒートシンク27に固定されている。回路基板31は、樹脂材料等により矩形平板状に形成されている。電子制御装置30は、第1制御回路32及び第2制御回路33を有している。第1制御回路32は、回転角検出部80(磁気センサ82a)からの電気信号等に基づきモータ21への給電を制御する制御量を演算するマイコンや、マイコンにより演算される制御量に基づき外部電源からの直流電力を3相交流電力に変換してモータ21に電力を供給する駆動回路などを有している。第1制御回路32は、第1モータバスバー60に接続されている。第1制御回路32は、第1モータバスバー60を通じた第1モータコイル43aへの給電を制御する。第2制御回路33は、回転角検出部80(磁気センサ82b)からの電気信号等に基づきモータ21への給電を制御する制御量を演算するマイコンや、マイコンにより演算される制御量に基づき外部電源からの直流電力を3相交流電力に変換してモータ21に電力を供給する駆動回路などを有している。第2制御回路33は、第2モータバスバー70に接続されている。第2制御回路33は、第2モータバスバー70を通じた第2モータコイル43bへの給電を制御する。第1制御回路32は、第2制御回路33と情報を共有するための通信部を有している。第2制御回路33は、第1制御回路32と情報を共有するための通信部を有している。第1制御回路32の通信部と第2制御回路33の通信部との間で通信が行われることにより、第1制御回路32及び第2制御回路33の保有する情報が互いに共有されている。
【0033】
第1制御回路32は、第2制御回路33よりも重力方向下側に配置されている。第1モータバスバー60は、第1制御回路32及び第2制御回路33よりも重力方向下側に配置されている。第1モータバスバー60は、第1モータコイル43aよりも重力方向下側に配置されている。第1モータバスバー60は、回転軸21aを中心とした場合、第1モータコイル43aよりも径方向外側に配置されている。第2モータバスバー70は、第2モータコイル43bよりも重力方向上側に配置されている。第2モータバスバー70は、回転軸21aを中心とした場合、第2モータコイル43bよりも径方向外側に配置されている。
【0034】
図4に示すように、第1モータバスバー60は、第1U相モータバスバー60u、第1V相モータバスバー60v、及び第1W相モータバスバー60wを有している。第1U相モータバスバー60u、第1V相モータバスバー60v、及び第1W相モータバスバー60wは、重力方向と直交する方向において並んで配置されている。すなわち、第1U相モータバスバー60u、第1V相モータバスバー60v、及び第1W相モータバスバー60wは、重力方向において同じ高さに配置されている。第1U相モータバスバー60u、第1V相モータバスバー60v、及び第1W相モータバスバー60wは、第1制御回路32に接続されている。第2モータバスバー70は、第2U相モータバスバー70u、第2V相モータバスバー70v、及び第2W相モータバスバー70wを有している。第2U相モータバスバー70u、第2V相モータバスバー70v、及び第2W相モータバスバー70wは、重力方向において並んで配置されている。すなわち、第2U相モータバスバー70u、第2V相モータバスバー70v、及び第2W相モータバスバー70wは、重力方向において同じ高さに配置されている。第2U相モータバスバー70u、第2V相モータバスバー70v、及び第2W相モータバスバー70wは、第2制御回路33に接続されている。回転軸21aの軸方向から見たとき、第1制御回路32、第1U相モータバスバー60u、第1V相モータバスバー60v、及び第1W相モータバスバー60wは、第2制御回路33、第2U相モータバスバー70u、第2V相モータバスバー70v、及び第2W相モータバスバー70wに対して、回転軸21aを中心として点対称に配置されている。
【0035】
第1制御回路32は、電圧監視回路を有している。電圧監視回路は、第1U相モータバスバー60u、第1V相モータバスバー60v、及び第1W相モータバスバー60wと接続されている分圧回路である。電圧監視回路では、2つの抵抗が直列接続されているとともに、相ごとにその抵抗の組が設けられている。第2制御回路33は、この電圧監視回路の各抵抗の抵抗値を記憶している。第1制御回路32は、電圧監視回路を通じて、第1U相モータバスバー60uの第1U相電圧値Vu1、第1V相モータバスバー60vの第1V相電圧値Vv1、及び第1W相モータバスバー60wの第1W相電圧値Vw1を取得する。第1制御回路32は、第1U相電圧値Vu1、第1V相電圧値Vv1、及び第1W相電圧値Vw1の関係が、通常なら互いに位相が120度ずれている3相交流としての関係から崩れているか否かに基づいて、第1U相モータバスバー60u、第1V相モータバスバー60v、及び第1W相モータバスバー60wの短絡を検出する。すなわち、第1制御回路32は、第1U相電圧値Vu1、第1V相電圧値Vv1、及び第1W相電圧値Vw1の少なくとも2相が同電位である状況が所定時間継続することに基づいて、第1U相モータバスバー60u、第1V相モータバスバー60v、及び第1W相モータバスバー60wの短絡を検出する。この所定時間は、3相交流において一時的に同電位になったと考えられない程度の時間に設定されている。
【0036】
第2制御回路33は、電圧監視回路を有している。電圧監視回路は、第2U相モータバスバー70u、第2V相モータバスバー70v、及び第2W相モータバスバー70wと接続されている分圧回路である。電圧監視回路では、2つの抵抗が直列接続されているとともに、相ごとにその抵抗の組が設けられている。第2制御回路33は、この電圧監視回路の各抵抗の抵抗値を記憶している。第2制御回路33は、電圧監視回路を通じて、第2U相モータバスバー70uの第2U相電圧値Vu2、第2V相モータバスバー70vの第2V相電圧値Vv2、及び第2W相モータバスバー70wの第2W相電圧値Vw2を取得する。第2制御回路33は、第2U相電圧値Vu2、第2V相電圧値Vv2、及び第2W相電圧値Vw2の関係が、通常なら互いに位相が120度ずれている3相交流としての関係から崩れているか否かに基づいて、第2U相モータバスバー70u、第2V相モータバスバー70v、及び第2W相モータバスバー70wの短絡を検出する。すなわち、第2制御回路33は、第2U相電圧値Vu2、第2V相電圧値Vv2、及び第2W相電圧値Vw2の少なくとも2相が同電位である状況が所定時間継続することに基づいて、第2U相モータバスバー70u、第2V相モータバスバー70v、及び第2W相モータバスバー70wの短絡を検出する。
【0037】
第1制御回路32は、第1モータバスバー60の短絡を検出した場合、モータハウジング24の内部に浸水が生じたことや第1モータバスバー60の短絡故障が生じたことを報知する報知部100を点灯させるとともに、第1モータバスバー60への給電を停止する等のモータ21の駆動を停止させるフェイルセーフを実行する。第1制御回路32は、第1モータバスバー60の短絡を検出した場合、第1制御回路32の通信部と第2制御回路33の通信部との間の通信を通じて、第1モータバスバー60の短絡を検出した旨示す情報を第2制御回路33に伝達する。また、第2制御回路33は、第2モータバスバー70の短絡を検出した場合、第2モータバスバー70の短絡故障が生じたことを報知する報知部100を点灯させるとともに、第2モータバスバー70への給電を停止する等のモータ21の駆動を停止させるフェイルセーフを実行する。第2制御回路33は、第2モータバスバー70の短絡を検出した場合、第1制御回路32の通信部と第2制御回路33の通信部との間の通信を通じて、第2モータバスバー70の短絡を検出した旨示す情報を第1制御回路32に伝達する。そして、例えば、第1モータバスバー60の短絡の検出を通じて、モータハウジング24の内部への浸水を検出する場合には、第2モータバスバー70が正常であれば、第2制御回路33が第2モータバスバー70への給電を継続して行うことにより、モータ21の駆動の制御の冗長化が図られている。
【0038】
本実施形態では、第1制御回路32は、上述の短絡を検出する機能を用いて、モータハウジング24の内部への浸水を検出する浸水検出手段を備えている。具体的には、第1制御回路32は、モータハウジング24の内部への浸水時、第1モータバスバー60について、少なくとも2相が短絡する状態となることから、第1モータバスバー60の短絡の検出を用いてモータハウジング24の内部への浸水を検出している。例えば、図5は、第1U相電圧値Vu1、第1V相電圧値Vv1、及び第1W相電圧値Vw1、あるいは第2U相電圧値Vu2、第2V相電圧値Vv2、及び第2W相電圧値Vw2の関係を示している。図5では、例えば第1U相電圧値Vu1、第1V相電圧値Vv1、及び第1W相電圧値Vw1の関係が通常なら互いに位相が120度ずれている3相交流の関係である状態から第1U相電圧値Vu1及び第1V相電圧値Vv1が同電位である状況が所定時間継続している状況へと遷移している。第1U相電圧値Vu1及び第1V相電圧値Vv1が同電位である状況は一時的に生じることはあるものの、長期間継続した場合には、3相交流の関係が維持されているとはいえない。このことから、第1制御回路32は、第1U相電圧値Vu1及び第1V相電圧値Vv1が同電位である状況が所定時間継続していることに基づいて、第1U相モータバスバー60u及び第1V相モータバスバー60vの短絡、すなわちこれらが浸水によって短絡していることを検出することができる。また、第1U相電圧値Vu1及び第1W相電圧値Vw1が同電位である状況が所定時間継続していることに基づいて、第1U相モータバスバー60u及び第1W相モータバスバー60vの短絡、すなわちこれらが浸水によって短絡していることを検出することができる。また、第1V相電圧値Vv1及び第1W相電圧値Vw1が同電位である状況が所定時間継続していることに基づいて、第1V相モータバスバー60v及び第1W相モータバスバー60wの短絡、すなわちこれらが浸水によって短絡していることを検出することができる。その他、第1U相電圧値Vu1、第1V相電圧値Vv1、及び第1W相電圧値Vw1が同電位になる場合についても、第1U相モータバスバー60u、第1V相モータバスバー60v、及び第1W相モータバスバー60wの短絡、すなわちこれらが浸水によって短絡していることを検出することができる。これらの場合、第1制御回路32は、フェイルセーフを実行することにより、第1U相電圧値Vu1、第1V相電圧値Vv1、及び第1W相電圧値Vw1はほとんど「0」となる。
【0039】
このように、第1制御回路32及び第2制御回路33は、第1モータバスバー60への給電状態の変化からモータハウジング24の内部への浸水を検出することができる。
本実施形態の作用及び効果を説明する。
【0040】
(1)モータ装置20のモータハウジング24の内部には、各種の要因によって水が入るおそれがある。例えば、第1シール部29cのシール性の低下やボルト28の緩みに起因して、ヒートシンク27及び第2モータハウジング26の間から水が内部に入り込むことがある。モータ装置20のモータハウジング24の内部に水が入った場合、入り込んだ水は重力の影響によって、モータハウジング24の内部において重力方向下側に移動する。本実施形態のモータ装置20では、重力方向を考慮してモータハウジング24の内部に浸水が発生したことを検出できる配置を採用している。すなわち、回転軸21aがラック軸12と平行になるようモータ装置20をEPS1に搭載していることから、モータハウジング24の内部に入り込んだ水は、モータハウジング24における重力方向下側の壁面へ向けて移動する。モータハウジング24の内部に相当量の水が入った場合には、第1制御回路32及び第2制御回路33が浸水するよりも前に、第1制御回路32及び第2制御回路33よりも重力方向下側に配置されている第1モータバスバー60が浸水する。このとき、第1U相モータバスバー60u、第1V相モータバスバー60v、及び第1W相モータバスバー60wのうち少なくとも2相が短絡する。第1制御回路32は、第1U相モータバスバー60uの第1U相電圧値Vu1、第1V相モータバスバー60vの第1V相電圧値Vv1、及び第1W相モータバスバー60wの第1W相電圧値Vw1を、すなわち3相の第1モータバスバー60の給電状態の変化を把握している。第1制御回路32は、第1U相電圧値Vu1、第1V相電圧値Vv1、及び第1W相電圧値Vw1の少なくとも2つが同電位である状況が所定時間継続していることに基づいて、第1U相モータバスバー60u、第1V相モータバスバー60v、及び第1W相モータバスバー60wのうち少なくとも2相が短絡していることを検出する。このことから、第1制御回路32は、第1U相電圧値Vu1、第1V相電圧値Vv1、及び第1W相電圧値Vw1の少なくとも2つが同電位である状況が所定時間継続していることに基づいて、モータ装置20のモータハウジング24の内部に浸水が生じたことを検出することができる。
【0041】
(2)比較例として、モータ装置には、第1制御回路32及び第2制御回路33が短絡を検出するよりも前に、第1制御回路32及び第2制御回路33が浸水するような配置が採用されるものがある。このような場合、第1制御回路32及び第2制御回路33が短絡を検出するよりも前に第1制御回路32及び第2制御回路33が浸水することで、第1制御回路32及び第2制御回路33によって制御されることなくモータ21が停止するといった事態が生じることがある。また、第1制御回路32及び第2制御回路33が短絡を検出するよりも前に第1制御回路32及び第2制御回路33が浸水した場合に、未だ第1制御回路32及び第2制御回路33が動作できたとしても、モータ21を制御するために用いられる状態量を誤検出した結果、想定外の方向にモータ21が駆動されるといった事態が生じるおそれがある。この点、本実施形態では、第1制御回路32及び第2制御回路33が浸水するよりも前に第1制御回路32及び第2制御回路33は短絡を検出できる、すなわちモータ装置20のモータハウジング24の内部に浸水が生じたことを検出できることから、このような事態が生じることを抑制することができる。このように、モータ装置20のモータハウジング24の内部に浸水が生じたことを検出できることから、浸水を検出した後のモータ21の駆動を管理することができるため、例えばフェイルセーフ等の制御を実行できるようになる。
【0042】
(3)本実施形態では、第1モータバスバー60の第1U相モータバスバー60u、第1V相モータバスバー60v、及び第1W相モータバスバー60wを、重力方向と直交する方向において並んで配置している。このことから、本実施形態では、第1U相モータバスバー60u、第1V相モータバスバー60v、及び第1W相モータバスバー60wを重力方向に並んで配置する場合と比べると、モータ21の径方向のサイズについて大きくなる傾向を抑制することができる。また、本実施形態では、第2モータバスバー70の第2U相モータバスバー70u、第2V相モータバスバー70v、及び第2W相モータバスバー70wを、重力方向と直交する方向において並んで配置している。このことから、本実施形態では、第2U相モータバスバー70u、第2V相モータバスバー70v、及び第2W相モータバスバー70wを重力方向に並んで配置する場合と比べると、モータ21の径方向のサイズについて大きくなる傾向を抑制することができる。
【0043】
(4)モータ装置20のモータハウジング24の内部に入り込んだ水によって第1モータバスバー60が浸水する際、第1モータバスバー60が第1モータコイル43aよりも重力方向下側に配置されていることから、第1モータコイル43aが浸水するよりも前に第1モータバスバー60が浸水することになる。このため、第1制御回路32は、第1モータバスバー60への給電状態の変化に基づいて、第1モータコイル43a及び第2モータコイル43bが浸水するよりも前に、第1モータバスバー60及び第2モータバスバー70の短絡の検出することができるようになる。
【0044】
(5)モータ装置20のモータハウジング24の内部に入り込んだ水によってモータバスバーが浸水する際、第1モータバスバー60及び第2モータバスバー70のうち、重力方向下側に位置する第1モータバスバー60が第2モータバスバー70よりも先に浸水することになる。このため、第1制御回路32は、第2モータバスバー70よりも重力方向下側に配置されている第1モータバスバー60への給電状態、すなわち第1U相電圧値Vu1、第1V相電圧値Vv1、及び第1W相電圧値Vw1の変化に基づいて、第2モータバスバー70が浸水するよりも前にモータ装置20のモータハウジング24の内部に浸水が生じたことを検出することができるようになる。また、第1モータバスバー60が浸水したことに起因する短絡を検出したときであっても、第2モータバスバー70は未だ浸水していないことがある。この場合、第2モータバスバー70が正常であれば、第2モータバスバー70を通じたモータ21の駆動制御を継続することもできる。このようにすれば、第2制御回路33あるいは第2モータバスバー70が浸水するまで、モータ21による運転者のステアリング操作の補助を継続することができる。
【0045】
(6)第1制御回路32及び第2制御回路33は、第1U相モータバスバー60u、第1V相モータバスバー60v、及び第1W相モータバスバー60wの短絡を検出するための判定処理を、モータ装置20のモータハウジング24の内部への浸水を検出するための判定処理にも用いている。このことから、モータ装置20のモータハウジング24の内部への浸水を検出するための制御構成が増えることを抑えることができる。
【0046】
(7)モータ装置20のモータハウジング24の内部に浸水しやすい配置とされている場合には、第1制御回路32及び第2制御回路33が浸水するよりも前にモータ装置20のモータハウジング24の内部に浸水が生じたことを検出できる浸水検出手段を採用していることは有意である。
【0047】
(8)ラックハウジング13は、モータ装置20のモータハウジング24の水密構造よりも耐水性が脆弱な部位であるラックブーツ19aを備えていることから、ラックブーツ19aを介したラックハウジング13の内部への浸水よりも、モータ装置20のモータハウジング24の内部への浸水が生じにくくすることができる。
【0048】
(9)第1モータバスバー60が回路基板31における最下点に接続されていることから、回路基板31が浸水する際には、最初に第1モータバスバー60が浸水することになる。このことから、モータ装置20のモータハウジング24の内部への浸水を検出しやすい配置とすることができる。
【0049】
なお、本実施形態は次のように変更してもよい。また、以下の他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
・第1制御回路32の通信部と第2制御回路33の通信部との間で通信を行わず、第1制御回路32及び第2制御回路33の保有する情報を互いに共有しないようにしてもよい。この場合、第1制御回路32及び第2制御回路33は、各相の電圧値を個別に取得するとともに、第1モータバスバー60の短絡及び第2モータバスバー70の短絡を個別に判定する。
【0050】
・第1モータバスバー60及び第2モータバスバー70からなる2系統のモータバスバーが採用されたが、3系統以上(複数系統)のモータバスバーが採用されてもよいし、1系統のモータバスバーが採用されてもよい。
【0051】
例えば図6に示すように、第1モータバスバー60及び第1制御回路32のみを設けるようにしてもよい。この場合においても、第1制御回路32が浸水するよりも前に第1モータバスバー60の短絡を検出できることから、浸水を検出した後のモータ21の駆動を管理できるようになる。
【0052】
・モータ21には、ブラシ付きモータが採用されてもよい。この場合、第1モータバスバー60及び第2モータバスバー70は、それぞれ2相のモータバスバーから構成されている。
【0053】
・第1モータコイル43aを第1モータバスバー60よりも径方向外側に配置してもよい。また、第2モータコイル43bを第2モータバスバー70よりも径方向外側に配置してもよい。
【0054】
・報知部100は、異常が生じたことを音によって報知するものであってもよい。
・第1モータバスバー60及び第2モータバスバー70の配置は適宜変更可能である。例えば、第1モータバスバー60の第1U相モータバスバー60u、第1V相モータバスバー60v、及び第1W相モータバスバー60wを重力方向に並んで配置してもよい。また、第1U相モータバスバー60u、第1V相モータバスバー60v、及び第1W相モータバスバー60wのうち2つのモータバスバーを、残る1つのモータバスバーよりも重力方向下側に配置してもよい。また、第2モータバスバー70の第2U相モータバスバー70u、第2V相モータバスバー70v、及び第2W相モータバスバー70wを重力方向に並んで配置してもよい。
【0055】
・第2モータバスバー70を第1制御回路32及び第2制御回路33よりも重力方向下側に配置してもよい。
・EPS1を、モータ21の回転軸21aとラック軸12の軸線とが交差するEPSに具体化してもよい。この場合、モータ21の回転軸21aは重力方向と交差する方向に延びている。また、EPS1を、モータ21の回転軸21aとラック軸12の軸線とが直交するEPSに具体化してもよい。この場合、モータ21の回転軸21aは重力方向と同じ方向に延びている。また、EPS1を、モータ21の回転軸21aをウォームホイールやウォームギヤ等からなる減速機構を介してラック軸12に機械的に連結したEPSに具体化してもよい。この場合、モータ21の回転軸21aは、重力方向と直交する水平方向に延びていてもよいし、水平方向から傾いて延びていてもよい。これらの場合であっても、第1モータバスバー60を、第1制御回路32及び第2制御回路33よりも重力方向下側に配置すればよい。
【0056】
・モータ装置20を、ラック軸12よりも重力方向上側に配置してもよいし、重力方向においてラック軸12と同じ位置に配置してもよい。
・モータ装置20をステアバイワイヤ式のステアリング装置に搭載してもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…EPS、2…操舵機構、3…転舵輪、4…アクチュエータ、10…ステアリングホイール、11…ステアリング軸、12…ラック軸、13…ラックハウジング、20…モータ装置、21…モータ、21a…回転軸、22…ベルト伝達機構、23…ボールねじ機構、24…モータハウジング、25…第1モータハウジング、26…第2モータハウジング、27…ヒートシンク、30…電子制御装置、31…回路基板、32…第1制御回路、33…第2制御回路、40…ステータ、41…ステータコア、42…インシュレータ、43a…第1モータコイル、43b…第2モータコイル、50…ロータ、51…ロータコア、52…永久磁石、60…第1モータバスバー、60u…第1U相モータバスバー、60v…第1V相モータバスバー、60w…第1W相モータバスバー、61…本体部、62…接続部、63…ボルト、70…第2モータバスバー、70u…第2U相モータバスバー、70v…第2V相モータバスバー、70w…第2W相モータバスバー、71…本体部、72…接続部、73…ボルト、80…回転角検出部、81…磁石、82a,82b…磁気センサ、83…スペーサ、84…ボルト、90…コネクタ、91…接続端子、100…報知部、S…空間、Vu1…第1U相電圧値、Vv1…第1V相電圧値、Vw1…第1W相電圧値、Vu2…第2U相電圧値、Vv2…第2V相電圧値、Vw2…第2W相電圧値。
図1
図2
図3
図4
図5
図6