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特許7358750ポリエステル製プリフォーム及びそのボトル
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  • 特許-ポリエステル製プリフォーム及びそのボトル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】ポリエステル製プリフォーム及びそのボトル
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/22 20060101AFI20231003BHJP
   B65D 1/02 20060101ALI20231003BHJP
   B32B 1/02 20060101ALI20231003BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20231003BHJP
   B29C 49/06 20060101ALI20231003BHJP
   G01J 3/50 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
B29C49/22
B65D1/02 110
B65D1/02 210
B32B1/02
B32B27/36
B29C49/06
G01J3/50
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019041918
(22)【出願日】2019-03-07
(65)【公開番号】P2020142465
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 伴成
(72)【発明者】
【氏名】引地 紀敬
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】山崎 友
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕一
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-095631(JP,U)
【文献】特開平11-077744(JP,A)
【文献】特開2011-256328(JP,A)
【文献】特開2017-202853(JP,A)
【文献】特開2004-148616(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00 - 49/80
B32B 1/00 - 43/00
B65D 1/00 - 1/48
B65D 23/00 - 25/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル系樹脂のバージン材とメカニカルリサイクル材とを用いて有底筒状に成形され、二軸延伸ブローによりボトルに成形されるポリエステル製プリフォームであって、
前記バージン材から成る外層及び内層と、
前記外層と前記内層との間に設けられ、前記メカニカルリサイクル材を含んで成る中間層と、
を備える多層構造を有し、
前記中間層は、前記二軸延伸ブローによって延伸される前記ボトルの胴部に相当する部分に設けられ、前記二軸延伸ブローによっても延伸されない前記ボトルの口部に相当する部分に設けられず、
前記中間層の上端は、前記二軸延伸ブローによって延伸される部分に設けられ、
前記ボトルの前記口部に相当する部分におけるL表色系のL値から、前記ボトルの前記胴部に相当する部分における前記L値を差し引いた差分値は、0.0より大きく3.0より小さい値である、
ポリエステル製プリフォーム。
【請求項2】
前記外層、前記内層及び前記中間層を備える全層の肉厚に占める前記中間層の肉厚は、2%以上70%以下である、
請求項1に記載のポリエステル製プリフォーム。
【請求項3】
全重量に占める前記メカニカルリサイクル材の含有量は、2重量%以上70重量%以下である、
請求項1又は2に記載のポリエステル製プリフォーム。
【請求項4】
ポリエステル系樹脂のバージン材とメカニカルリサイクル材とを用いて有底筒状に成形されたポリエステル製プリフォームに対して二軸延伸ブローを行うことで成形されたポリエステル製ボトルであって、
前記バージン材から成る外層及び内層と、
前記外層と前記内層との間に設けられ、前記メカニカルリサイクル材を含んで成る中間層と、
を備える多層構造を有し、
前記中間層は、前記二軸延伸ブローによって延伸成形された前記ボトルの胴部に設けられ、前記プリフォームの前記二軸延伸ブローによっても延伸されない部分に相当する前記ボトルの口部に設けられず、
前記中間層の上端は、前記二軸延伸ブローによって延伸成形された部分に設けられ、
前記ボトルの前記口部におけるL表色系のL値から、前記ボトルの前記胴部における前記L値を差し引いた差分値は、0.0より大きく3.0より小さい値である、
ポリエステル製ボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエステル製プリフォーム及びそのボトルに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル製ボトルをブロー成形により製造するためのプリフォームは、ブロー成形に先立って、赤外線ヒータ等によって予め加熱される(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平05-154899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のプリフォームは、赤外線ヒータから照射された赤外線の大部分が透過してしまうため、プリフォームの加熱効率が低い可能性がある。また、特許文献1に記載のプリフォームは、合成樹脂製であり、ポリエステル系樹脂の再生材料が用いられていないため、環境負荷及びコストの低減という点において改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、上述のような問題点を解決することを課題の一例とする。すなわち、本発明の課題の一例は、環境負荷及びコストを低減しつつ、プリフォームの加熱効率を向上させることが可能なボトルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るポリエステル製プリフォームは、ポリエステル系樹脂のバージン材とメカニカルリサイクル材とを用いて有底筒状に成形され、二軸延伸ブローによりボトルに成形されるポリエステル製プリフォームであって、前記バージン材から成る外層及び内層と、前記外層と前記内層との間に設けられ、前記メカニカルリサイクル材を含んで成る中間層と、を備える多層構造を有し、前記中間層は、前記二軸延伸ブローによって延伸される前記ボトルの胴部に相当する部分に設けられ、前記二軸延伸ブローによっても延伸されない前記ボトルの口部に相当する部分に設けられず、前記中間層の上端は、前記二軸延伸ブローによって延伸される部分に設けられ、前記ボトルの前記口部に相当する部分におけるL表色系のL値から、前記ボトルの前記胴部に相当する部分における前記L値を差し引いた差分値は、0.0より大きく3.0より小さい値である。
【0007】
好適には、前記ポリエステル製プリフォームにおいて、前記外層、前記内層及び前記中間層を備える全層の肉厚に占める前記中間層の肉厚は、2%以上70%以下である。
【0008】
好適には、前記ポリエステル製プリフォームにおいて、全重量に占める前記メカニカルリサイクル材の含有量は、2重量%以上70重量%以下である。
【0009】
本発明に係るポリエステル製ボトルは、ポリエステル系樹脂のバージン材とメカニカルリサイクル材とを用いて有底筒状に成形されたポリエステル製プリフォームに対して二軸延伸ブローを行うことで成形されたポリエステル製ボトルであって、前記バージン材から成る外層及び内層と、前記外層と前記内層との間に設けられ、前記メカニカルリサイクル材を含んで成る中間層と、を備える多層構造を有し、前記中間層は、前記二軸延伸ブローによって延伸成形された前記ボトルの胴部に設けられ、前記プリフォームの前記二軸延伸ブローによっても延伸されない部分に相当する前記ボトルの口部に設けられず、前記中間層の上端は、前記二軸延伸ブローによって延伸成形された部分に設けられ、前記ボトルの前記口部におけるL表色系のL値から、前記ボトルの前記胴部における前記L値を差し引いた差分値は、0.0より大きく3.0より小さい値である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るポリエステル製プリフォーム及びそのボトルは、環境負荷及びコストを低減しつつ、プリフォームの加熱効率を向上させることが可能なボトルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係るボトルを模式的に示す図である。
図2図1に示されたボトルを製造するためのプリフォームを模式的に示す図である。
図3図1及び図2に示されたボトル及びプリフォームのそれぞれの縦断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
本実施形態では、ボトル1の中心軸Zに沿った方向を「軸方向」とも称し、ボトル1の中心軸Zを回転軸として周回する方向を「周方向」とも称し、ボトル1の中心軸Zに直交する方向を「径方向」とも称する。また、本実施形態では、ボトル1の口部3から底部6へ向かう軸方向を「下方」とも称し、ボトル1の底部6から口部3へ向かう軸方向を「上方」とも称する。また、本実施形態では、ボトル1の中心軸Zに沿った平面でボトル1を切断した断面を「縦断面」とも称し、ボトル1の中心軸Zに直交する平面でボトル1を切断した断面を「横断面」とも称する。プリフォーム100についても同様である。
【0014】
図1は、本実施形態に係るボトル1を模式的に示す図である。
【0015】
ボトル1は、飲料及び液体調味料のような食品等の内容物を収容可能な容器である。特に、ボトル1は、ミネラルウォータ等の香り又は風味に敏感な内容物を収容可能なボトルであってよい。ボトル1は、炭酸飲料等の自生圧力を有する内容物を収容可能な耐圧ボトルであってよい。
【0016】
ボトル1は、ポリエステル系樹脂のバージン材と、ポリエステル系樹脂のメカニカルリサイクル材とを用いて成形されたポリエステル製ボトルである。このポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンフラノエート、及び、これらの共重合ポリエステル等の樹脂が挙げられる。好適には、このポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂である。すなわち、ボトル1は、ポリエチレンテレフタレート樹脂のバージン材と、ポリエチレンテレフタレート樹脂のメカニカルリサイクル材とを用いて成形されたボトルであってよい。
【0017】
メカニカルリサイクル材は、回収された使用済みのポリエステル系樹脂製品を、選別、粉砕、風選分離、及び、洗浄した後、高温下で樹脂内部の汚染物質等を除染することによって得られた再生材料である。一方、ケミカルリサイクル材は、回収された使用済みのポリエステル系樹脂製品を、選別、粉砕、風選分離、及び、洗浄した後、解重合を行うことによりポリエステル系樹脂の原料又は中間原料にまで分解及び精製し、再重合して得られた再生材料である。一般的に、メカニカルリサイクル材は、ケミカルリサイクル材に比べて、熱履歴の影響が残るため黄色味が強いものの、大規模な分解設備及び重合設備を用いないため製造コストが低い。
【0018】
メカニカルリサイクル材は、除染後の形態であるフレーク状の形態で市場に流通している。或いは、メカニカルリサイクル材は、必要に応じて固相重合を行い、フレーク状のメカニカルリサイクル材を押出機等で固めたペレット状の形態で市場に流通している。フレーク状のメカニカルリサイクル材は、ペレット状のメカニカルリサイクル材よりも製造コストが低い。ボトル1の成形には、フレーク状及びペレット状の何れかの形態を有するメカニカルリサイクル材が用いられてもよいし、フレーク状の形態を有するメカニカルリサイクル材と、ペレット状の形態を有するメカニカルリサイクル材とをブレンドして用いられてもよい。
【0019】
ボトル1は、図1に示されるように、ボトル1の一端部であり内容物が注出される注出口31及びサポートリング32を有する口部3と、ボトル1の他端部であり接地部61を有する底部6とを備える。更に、ボトル1は、径方向外方に広がりながら口部3から下方へ延びる肩部4と、肩部4から下方に延びて底部6に連なる胴部5とを備える。
【0020】
図2は、図1に示されたボトル1を製造するためのプリフォーム100を模式的に示す図である。
【0021】
ボトル1は、プリフォーム100を加熱してブロー成形することによって製造される。好適には、ボトル1は、試験管形状のような有底筒状のプリフォーム100を二軸延伸ブロー成形することによって製造される。プリフォーム100は、上述のようなポリエステル系樹脂を用いた射出成形等によって成形される。
【0022】
プリフォーム100は、図2に示されるように、ボトル1の口部3に相当する上部101と、ボトル1の底部6に相当する下部103と、ボトル1の肩部4及び胴部5に相当し、上部101及び下部103の間に位置する中部102とを備える。
【0023】
上部101は、注出口31からサポートリング32までの部分であり、二軸延伸ブロー成形によって延伸されない部分である非延伸部Mである。中部102及び下部103は、サポートリング32より下方の部分であり、二軸延伸ブロー成形によって延伸される部分である延伸部Nである。
【0024】
図3は、図1及び図2に示されたボトル1及びプリフォーム100のそれぞれの縦断面を示す図である。図3では、ボトル1及びプリフォーム100のそれぞれの要部拡大図を付して、中間層13の分布状況を示している。
【0025】
プリフォーム100は、上述のメカニカルリサイクル材をバージン材にブレンドして射出成形等により成形した単層構造を有するのではなく、バージン材から成る層と、メカニカルリサイクル材を含んで成る層とを共射出成形等により成形した多層構造を有する。このプリフォーム100を二軸延伸ブロー成形することによって製造されたボトル1も、プリフォーム100と同様の多層構造を有する。
【0026】
具体的には、プリフォーム100は、バージン材から成る外層111及び内層112と、外層111と内層112との間に設けられ、メカニカルリサイクル材を含んで成る中間層113とを備える。同様に、ボトル1は、バージン材から成る外層11及び内層12と、外層11と内層12との間に設けられ、メカニカルリサイクル材を含んで成る中間層13とを備える。ボトル1及びプリフォーム100は、径方向外方から内方に向かって、外層/中間層/内層の順に積層された2種3層の層構成を有する。
【0027】
プリフォーム100では、外層111、内層112及び中間層113を備える全層の肉厚に占める中間層113の肉厚が、ボトル1の胴部5に相当する部分において、2%以上70%以下となるように構成される。好適には、プリフォーム100では、全層の肉厚に占める中間層113の肉厚が、胴部5の軸方向の中央部51に相当する部分において、2%以上70%以下となるように構成される。中間層113の肉厚が2%以上70%以下の範囲外である場合、プリフォーム100を多数個取りで成形する射出成形機では、そのホットランナーバランスにより、多数個取りされる複数のプリフォーム100の間で中間層113の肉厚の偏りが発生し易い。このため、プリフォーム100では、中間層113の肉厚を2%以上70%以下となるように構成することによって、中間層113が所望の肉厚で形成された均一なプリフォーム100を安定的に製造することができる。ボトル1においても、外層11、内層12及び中間層13を備える全層の肉厚に占める中間層13の肉厚が、胴部5の軸方向の中央部51において、2%以上70%以下となるように構成される。
【0028】
プリフォーム100は、全重量に占めるメカニカルリサイクル材の含有量が、2重量%以上70重量%以下となるように構成される。これは、上述の中間層113の肉厚の比率と同様に、メカニカルリサイクル材の含有量が2重量%以上70重量%以下の範囲外である場合には、多数個取りされる複数のプリフォーム100の間で含有量の偏りが発生し易いためである。ボトル1においても、全重量に占めるメカニカルリサイクル材の含有量が、2重量%以上70重量%以下となるように構成される。
【0029】
なお、ボトル1におけるメカニカルリサイクル材の含有量が、25重量%以上であると、エコマークを取得することができ、環境負荷の低い容器として認知され易いため、好適である。このことから、全層の肉厚に占める中間層13の肉厚は、胴部5の軸方向の中央部51において、25%以上であると好適である。プリフォーム100におけるメカニカルリサイクル材の含有量及び中間層113の肉厚についても同様である。
【0030】
また、プリフォーム100では、上述のような多層構造を有するため、メカニカルリサイクル材の射出タイミングを制御することによって、中間層113の位置が制御され得る。具体的には、プリフォーム100では、中間層113が、中部102及び下部103に設けられ、上部101には設けられないよう制御され得る。すなわち、中間層113は、プリフォーム100のサポートリング32より下方にある延伸部Nに設けられるものの、サポートリング32以上にある非延伸部Mには設けられない。言い換えると、プリフォーム100の上部101は、バージン材のみから成るバージン材層110の単層構造を有するように構成される。そして、プリフォーム100の中部102及び下部103は、バージン材のみから成る外層111及び内層112と、メカニカルリサイクル材を含んで成る中間層113との多層構造を有するように構成される。
【0031】
このため、ボトル1においても、中間層13が、肩部4、胴部5及び底部6に設けられ、口部3には設けられないように構成される。言い換えると、ボトル1の口部3は、バージン材のみから成るバージン材層10の単層構造を有するように構成される。そして、ボトル1の肩部4、胴部5及び底部6は、バージン材のみから成る外層11及び内層12と、メカニカルリサイクル材を含んで成る中間層13との多層構造を有するように構成される。
【0032】
プリフォーム100では、中間層113の位置を上述のように制御することによって、プリフォーム100の色彩を調整することができる。具体的には、プリフォーム100では、中間層113が設けられない上部101におけるL表色系のL値から、中間層113が設けられた中部102及び下部103におけるL値を差し引いた差分値ΔLが、0.0より大きく3.0より小さい値となるように調整される。好適には、プリフォーム100では、差分値ΔLが、0.1以上2.2以下の値となるように調整される。ボトル1においても、中間層13が設けられていない口部3におけるL値から、中間層13が設けられた胴部5におけるL値を差し引いた差分値ΔLが、0.0より大きく3.0より小さい値となるように調整される。好適には、ボトル1では、差分値ΔLが、0.1以上2.2以下の値となるように調整される。
【0033】
プリフォーム100の上部101では、中間層113が設けられないため、バージン材から成る。このため、プリフォーム100の上部101は、無色透明であり、L値が89.0以上となり得る。一方、プリフォーム100の中部102及び下部103では、中間層113が設けられており、メカニカルリサイクル材を含んで成る。このため、中部102及び下部103は、上部101よりも低い明度となり得る。
【0034】
プリフォーム100は、二軸延伸ブロー成形に先立って、赤外線ヒータ及び高周波加熱装置等を用いた赤外線の照射によって加熱されることが多い。特に、プリフォーム100では、二軸延伸ブロー成形で延伸部Nが適切に延伸するよう、延伸部Nである中部102及び下部103が所定の延伸温度に到達するまで加熱される。この際、一般的なプリフォームでは、プリフォームの中部及び下部がバージン材のみから成り、無色透明であるため、赤外線ヒータ等から照射された赤外線の大部分が透過してしまい、赤外線の吸収率が低い。このため、一般的なプリフォームでは、多大な加熱時間及び消費電力が必要となってしまい、プリフォームの加熱効率が低い。
【0035】
一方、プリフォーム100では、中部102及び下部103が、メカニカルリサイクル材を含んで成るため、バージン材のみから成る場合よりも明度が低くなる。このため、プリフォーム100では、バージン材のみから成る場合と比べて、赤外線が中部102及び下部103に多く吸収されることから、赤外線の吸収率を高めることができる。それにより、プリフォーム100では、バージン材のみから成る場合と比べて、加熱時間及び消費電力を低減することができ、プリフォームの加熱効率を向上させることができる。
【0036】
以上のように、本実施形態に係るプリフォーム100は、ポリエステル系樹脂のバージン材から成る外層111及び内層112と、メカニカルリサイクル材を含んで成る中間層113とを備える多層構造を有する。このため、本実施形態に係るプリフォーム100は、メカニカルリサイクル材を使用するボトル1を提供することができる。
【0037】
更に、本実施形態に係るプリフォーム100は、上述のような多層構造を有するため、メカニカルリサイクル材を含んで成る中間層113の位置を制御することができる。特に、本実施形態に係るプリフォーム100では、中間層113が中部102及び下部103に設けられ、上部101に設けられないよう構成され得る。すなわち、本実施形態に係るプリフォーム100では、ボトル1の肩部4、胴部5及び底部6に相当する部分に中間層113が設けられ、ボトル1の口部3に相当する部分に中間層113が設けられないよう構成され得る。好適には、本実施形態に係るプリフォーム100は、口部3に相当する部分におけるL表色系のL値から、胴部5に相当する部分におけるL値を差し引いた差分値ΔLが、0.0より大きく3.0より小さい値となるように構成され得る。このため、本実施形態に係るプリフォーム100では、二軸延伸ブロー成形に先立って加熱したい箇所の明度を、バージン材のみから成る場合よりも低くすることができる。それにより、本実施形態に係るプリフォーム100は、バージン材のみから成る場合と比べて、赤外線の吸収率を高めることができ、プリフォームの加熱効率を向上させることができる。
【0038】
このように、本実施形態に係るプリフォーム100は、環境負荷及びコストを低減しつつ、プリフォームの加熱効率を向上させることが可能なボトルを提供することができる。
【0039】
更に、本実施形態に係るプリフォーム100は、全層の肉厚に占める中間層113の肉厚を2%以上70%以下とする。それにより、本実施形態に係るプリフォーム100では、多数個取りされる複数のプリフォーム100の間で中間層113の肉厚を均一化することができる。その結果、本実施形態に係るプリフォーム100は、中間層13の肉厚が均一なボトルを安定的に製造することができる。
【0040】
更に、本実施形態に係るプリフォーム100は、全重量に占めるメカニカルリサイクル材の含有量を2重量%以上70重量%以下とする。それにより、本実施形態に係るプリフォーム100では、多数個取りされる複数のプリフォーム100の間でメカニカルリサイクル材の含有量を均一化することができる。その結果、本実施形態に係るプリフォーム100は、メカニカルリサイクル材の含有量が均一なボトルを安定的に製造することができる。
【0041】
また、本実施形態に係るプリフォーム100において、中間層113は、ボトル1の口部3に相当する部分である上部101には設けられない。口部3は、胴部5よりも肉厚が厚く、ラベル等で覆われず、キャップ開封時に間近で目視される箇所であるため、その色相がユーザに目立ち易い。本実施形態に係るプリフォーム100では、これを用いて製造されたボトル1の口部3は中間層13が設けられておらずバージン材から成り、口部3の色相は無色透明となるため、高い外観性を確保可能なボトルを提供することができる。
【0042】
[他の実施形態]
上述の実施形態において、プリフォーム100の中間層113は、ボトル1の肩部4に相当する部分に設けられているが、必ずしも肩部4に相当する部分に設けられていなくてもよい。すなわち、プリフォーム100の中間層113は、少なくとも胴部5に相当する部分に設けられていればよい。肩部4は、ラベル又はフィルムで覆われることが少ないと共に、内容物の収容量を確認するために間近で目視されるため、肩部4の色相がユーザに目立ち易い。一方、胴部5は、ラベル又はフィルムで覆われるため、胴部5の色相がユーザに目立ち難い。このため、プリフォーム100では、肩部4に相当する部分がバージン材から成り無色透明の色相となることによって、高い外観性と利便性とを確保可能なボトルを提供することができる。ボトル1の中間層13についても同様である。
【0043】
また、プリフォーム100の中間層113は、メカニカルリサイクル材を含んで成る層である。すなわち、中間層113は、メカニカルリサイクル材のみから成る層であってもよいし、メカニカルリサイクル材とバージン材とがブレンドされた層であってもよい。更に、中間層113は、ボトル1又はプリフォーム100の成形工程で発生したスクラップを粉砕再生したリグラインド材と、メカニカルリサイクル材とがブレンドされた層であってもよい。ボトル1の中間層13についても同様である。
【0044】
また、プリフォーム100の中間層113は、メカニカルリサイクル材を含んで成る層の単層構造ではなく、特定の機能性を有する樹脂から成る層との多層構造を有していてよい。特定の機能性を有する樹脂は、例えば、エチレンビニルアルコール共重合体及びポリアミド系樹脂等のガスバリア性を有する樹脂、ガスバリア性を有する樹脂に酸化性有機成分及び遷移金属触媒が配合された酸素吸収性を有する樹脂であってよい。ボトル1の中間層13についても同様である。
【0045】
[その他]
上述の実施形態において、ボトル1は、特許請求の範囲に記載された「ポリエステル製ボトル」の一例に該当する。外層11及び内層12は、特許請求の範囲に記載された「ポリエステル製ボトル」の「外層」及び「内層」の一例に該当する。中間層13は、特許請求の範囲に記載された「ポリエステル製ボトル」の「中間層」の一例に該当する。胴部5及び口部3は、特許請求の範囲に記載された「ポリエステル製ボトル」の「胴部」及び「口部」の一例に該当する。プリフォーム100は、特許請求の範囲に記載された「ポリエステル製プリフォーム」の一例に該当する。外層111及び内層112は、特許請求の範囲に記載された「ポリエステル製プリフォーム」の「外層」及び「内層」の一例に該当する。中間層113は、特許請求の範囲に記載された「ポリエステル製プリフォーム」の「中間層」の一例に該当する。
【0046】
上述の実施形態は、変形例を含めて各実施形態同士で互いの技術を適用することができる。上述の実施形態は、本発明の内容を限定するものではなく、特許請求の範囲を逸脱しない程度に変更を加えることができる。
【0047】
上述の実施形態及び特許請求の範囲で使用される用語は、限定的でない用語として解釈されるべきである。例えば、「含む」という用語は、「含むものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「含有する」という用語は、「含有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「備える」という用語は、「備えるものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。「有する」という用語は、「有するものとして記載されたものに限定されない」と解釈されるべきである。
【実施例
【0048】
上述の実施形態に係るプリフォームの具体的な実施例について、表1を参照しながら説明する。以下で述べる実施例は、本発明の内容を限定するものではない。
【0049】
表1は、実施例1~8及び比較例1~3に係るプリフォームの評価内容を示す。
【0050】
実施例1~8及び比較例1~3では、プリフォームの成形に用いられるポリエステル系樹脂として、市販のポリエチレンテレフタレート樹脂のバージン材と、市販のポリエチレンテレフタレート樹脂のメカニカルリサイクル材とを使用した。バージン材は、バージン材-1及びバージン材-2の2種類を使用した。
【0051】
実施例1~8に係るプリフォームは、層構成が多層である多層プリフォームとした。具体的には、実施例1~8に係る多層プリフォームは、外層(バージン材)/中間層(メカニカルリサイクル材)/内層(バージン材)という2種3層の多層プリフォームとした。比較例1~3に係るプリフォームは、層構成が単層である単層プリフォームとした。具体的には、比較例1~3に係る単層プリフォームは、バージン材-1若しくはバージン材-2のみから成る単層プリフォーム、又は、メカニカルリサイクル材のみから成る単層プリフォームとした。
【0052】
[多層プリフォームの作製]
実施例1~8に係る多層プリフォームの作製では、まず、各実施例に対応する含有量の比率となるよう、外層及び内層に用いられるバージン材と、中間層に用いられるメカニカルリサイクル材の樹脂量を調整した。そして、外層及び内層で共用の射出機と、中間層用の射出機とを備えた共射出成形機を使用して、多層プリフォームを成形した。多層プリフォームの重量は24gであった。
【0053】
多層プリフォームの成形の際、中間層用の射出機の射出タイミングを制御して、中間層の位置を制御した。具体的には、ボトルの口部に相当する多層プリフォームの非延伸部では、中間層が設けられないよう、中間層用の射出機からのメカニカルリサイクル材の射出を停止した。ボトルの肩部以降に相当する多層プリフォームの延伸部では、中間層が設けられるよう、中間層用の射出機からメカニカルリサイクル材を射出させた。
【0054】
[単層プリフォームの作製]
比較例1~3に係る単層プリフォームの作製では、射出成形機を使用して、バージン材又はメカニカルリサイクル材のみから成る単層プリフォームを成形した。単層プリフォームの重量は、24gであった。
【0055】
[プリフォーム温度の測定]
作製した多層プリフォーム及び単層プリフォームを、一定速度で回転させながら、赤外線ヒータを用いて16秒間加熱した。加熱後の多層プリフォーム及び単層プリフォームのそれぞれにおいて、胴部の軸方向の中央部に相当する部分の外面の温度を、放射温度計を使用して測定した。
【0056】
[色彩の測定]
作製した多層プリフォーム及び単層プリフォームの口部に相当する部分又は胴部に相当する部分を細かくカットした試料を、凍結粉砕機(SPEX CertiPrep,Inc.社製 6700フリーザーミル)を用いて液体窒素で冷却下3~10分間凍結粉砕して粉末とした。そして、この粉末の7gを対象として、分光色彩計(日本電色工業株式会社製 SE-2000)を使用して、L表色系におけるL値を、次の条件にて測定した。
測定法:反射法、JIS Z-8722に準拠する0-45°後分光方式
【0057】
[評価結果]
プリフォームの口部に相当する部分におけるL値から胴部に相当する部分におけるL値を差し引いた差分値ΔLと、加熱したプリフォームの温度測定結果を用いて、実施例及び比較例に係るプリフォームの加熱効率を評価した。
【0058】
比較例1~3に係るプリフォームでは、表1に示されるように、差分値ΔLが何れも0.0であった。すなわち、比較例1~3によれば、バージン材又はメカニカルリサイクル材のみから成る単層プリフォームであると、口部に相当する部分のL値と胴部に相当する部分のL値とにおいて差がない結果となることが分かった。そして、比較例1~3によれば、バージン材のみから成る単層プリフォームであると、加熱時の温度が104℃となり、メカニカルリサイクル材のみから成る単層プリフォームであると、加熱時の温度が107℃となることが分かった。
【0059】
一方、実施例1~8に係るプリフォームでは、表1に示されるように、差分値ΔLが0.1以上2.2以下であった。すなわち、実施例1~8によれば、中間層が口部に相当する部分には設けられず、中間層が少なくとも胴部に相当する部分に設けられるよう構成された多層プリフォームとすることで、口部に相当する部分のL値から胴部に相当する部分のL値を差し引いた差分値ΔLが、0.0より大きく3.0より小さい値となることが分かった。そして、実施例1~8によれば、中間層が少なくとも胴部に相当する部分に設けられるよう構成された多層プリフォームとすることで、加熱時の温度が105℃以上107℃以下となり、バージン材のみから成る単層プリフォームの加熱時の温度よりも高温となることが分かった。
【0060】
また、実施例1~8によれば、多層プリフォームの全重量に占めるメカニカルリサイクル材の含有量が2重量%以上70重量%以下であると、差分値ΔLが0.0より大きく3.0より小さい値となることが分かった。そして、実施例1~8によれば、メカニカルリサイクル材の含有量が2重量%以上70重量%以下であると、加熱時の温度が105℃以上107℃以下となり、バージン材のみから成る単層プリフォームの加熱時の温度よりも高温となることが分かった。
【0061】
このようなことから、実施例1~8に係るプリフォームでは、メカニカルリサイクル材の使用により環境負荷及びコストを低減することができる。更に、実施例1~8に係るプリフォームでは、二軸延伸ブロー成形に先立って加熱したい箇所の明度をバージン材のみから成る場合よりも低くすることができるため、赤外線の吸収率を高めることができ、プリフォームの加熱効率を向上させることができる。更に、実施例1~8に係るプリフォームでは、多数個取りされる複数の多層プリフォームの間で中間層の肉厚を均一化することができるため、中間層の肉厚が均一なボトルを安定的に製造することができる。
【0062】
【表1】
【符号の説明】
【0063】
1 ボトル
3 口部
4 肩部
5 胴部
6 底部
10 バージン材層
11 外層
12 内層
13 中間層
31 注出口
32 サポートリング
51 中央部
61 接地部
100 プリフォーム
101 上部
102 中部
103 下部
110 バージン材層
111 外層
112 内層
113 中間層
M 非延伸部
N 延伸部
Z 中心軸
図1
図2
図3