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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】ウォーム減速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 55/24 20060101AFI20231003BHJP
   F16H 1/16 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
F16H55/24
F16H1/16 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019076883
(22)【出願日】2019-04-15
(65)【公開番号】P2020176632
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000811
【氏名又は名称】弁理士法人貴和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 将司郎
(72)【発明者】
【氏名】原田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】村田 良太
(72)【発明者】
【氏名】松本 壮太
【審査官】増岡 亘
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-42913(JP,A)
【文献】特開2004-306898(JP,A)
【文献】特表2006-513906(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 55/24
F16H 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングに回転自在に支持され、外周面にホイール歯を有するウォームホイールと、
前記ハウジングに回転自在に支持され、外周面に、前記ホイール歯と噛合するウォーム歯を有するウォームと、
前記ウォームに、直接または円筒状のブッシュを介して外嵌された内輪、および、外輪を有する転がり軸受と、
前記ウォームの先端部を、前記ウォームホイールに近づく方向に押圧するパッドと、
前記パッドに、前記ウォームホイールに近づく方向の弾力を付与する弾性部材と、
前記ハウジングに内嵌固定され、内周面に、前記外輪を内嵌保持する軸受保持面を有し、かつ、前記ウォームホイールに対する前記パッドの遠近動方向である第1の方向に直交する第2の方向に対向する1対の内側面を含むパッド係合部を有するホルダと、を備え、
前記パッドは、
前記第1の方向に関して前記ウォームホイールに近い側の側面に、前記ウォームの先端部外周面を押圧する押圧部を有し、かつ、前記第1の方向に関して前記ウォームホイールから遠い側の側面に、前記弾性部材により押圧される少なくとも1つの被押圧部を有する、基部と、
前記基部のうち、前記第2の方向に関する両側の端部から、前記第1の方向に関して前記ウォームホイールに近づく方向に延出し、かつ、前記第2の方向に関する外側面に、前記パッド係合部の内側面に弾性的に接触する弾性接触面を有する、1対の弾性片とを含み、
前記押圧部は、前記ウォームの先端部の曲率半径よりもわずかに大きい曲率半径を有する半円筒面状の凹曲面であり、
前記パッドを前記ホルダの前記パッド係合部に係合する以前の自由状態において、前記1対の弾性片の前記弾性接触面同士の前記第2の方向に関する幅寸法が、前記ホルダの1対の内側面同士の前記第2の方向に関する幅寸法よりも大きく、
前記パッドは、前記1対の弾性片が弾性的に復元しようとすることによって、前記1対の弾性片の前記弾性接触面を、前記ホルダの1対の内側面に弾性的に接触させる、
ウォーム減速機。
【請求項2】
前記第1の方向が、前記ウォームホイールの中心軸と、前記外輪の中心軸とに直交する方向である、請求項1に記載のウォーム減速機。
【請求項3】
前記少なくとも1つの被押圧部が、前記基部の、前記第1の方向に関して前記ウォームホイールから遠い側の側面のうち、前記外輪の中心軸を含み、かつ、前記第2の方向に直交する第1の仮想平面を挟んで対称となる2箇所位置に備えられており、
前記ウォームの中心軸に直交する第2の仮想平面に関する断面において、それぞれの前記被押圧部のうちで前記弾性部材により押圧される部分と前記ウォームの中心軸とを結ぶ仮想直線と、前記第1の方向とのなす角度が、15度以上60度以下である、請求項2に記載のウォーム減速機。
【請求項4】
前記パッドが、前記第1の仮想平面に関して対称な形状を有する、請求項3に記載のウォーム減速機。
【請求項5】
前記弾性部材が、前記少なくとも1つの被押圧部を、前記ウォームホイールに近づく方向に押圧するコイル部と、該コイル部の両側の端部から折れ曲がり、かつ、前記ホルダに対し支持された1対の腕部とを備える、捩りコイルばねである、請求項1~4のうちのいずれかに記載のウォーム減速機。
【請求項6】
前記パッドが、前記基部と前記1対の弾性片との接続部のうち、前記第2の方向に関する内側面に1対の切り欠き部を有する、請求項1~5のうちのいずれかに記載のウォーム減速機。
【請求項7】
前記1対の弾性片のそれぞれは、前記第2の方向に関する内側面に、前記ウォームの先端部の曲率半径よりもわずかに大きい曲率半径を有する部分円筒面状の凹曲面部を有する、請求項1~6のうちのいずれかに記載のウォーム減速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば電動パワーステアリング装置に組み込んで使用するウォーム減速機に関する。
【背景技術】
【0002】
図12は、自動車用のステアリング装置の1例を示している。ステアリングホイール100の回転は、ステアリングギヤユニット101の入力軸102に伝達され、入力軸102の回転に伴って左右1対のタイロッド103が押し引きされて、前車輪に舵角が付与される。ステアリングホイール100は、ステアリングシャフト104の後端部に支持固定されており、ステアリングシャフト104は、ステアリングコラム105の内側を軸方向に挿通し、かつ、ステアリングコラム105に回転自在に支持されている。ステアリングシャフト104の前端部は、自在継手106を介して中間シャフト107の後端部に接続され、中間シャフト107の前端部は、別の自在継手108を介して、入力軸102に接続されている。
【0003】
図12のステアリング装置は、電動モータ109を補助動力源として、ステアリングホイール100を操作するのに要する力の低減を図る電動アシスト機構を備える。電動アシスト機構には減速機が組み込まれるが、この減速機として、ウォーム減速機が一般的に使用されている。図13は、特許第4381024号公報に記載されている、ウォーム減速機の従来構造の1例を示している。ウォーム減速機110は、ハウジング111と、ウォームホイール112と、ウォーム113とを備える。
【0004】
ハウジング111は、ホイール収容部114と、自身の中心軸がホイール収容部114の中心軸に対し捩れの位置に存在し、かつ、軸方向中間部がホイール収容部114内に開口したウォーム収容部115とを有する。ウォームホイール112は、外周面にホイール歯116を有し、ホイール収容部114の内側に回転自在に支持されたステアリングシャフト104(図12参照)の前側部分に、ステアリングシャフト104と同軸に支持固定されている。
【0005】
ウォーム113は、軸方向中間部外周面に、ホイール歯116と噛合するウォーム歯117を有している。ウォーム113は、ウォーム歯117を挟んだ軸方向2箇所位置を、1対の玉軸受118a、118bにより、ウォーム収容部115の内側に回転自在に支持されている。1対の玉軸受118a、118bのうち、ウォーム113の先端側(図13の右側)の玉軸受118aの外輪は、ウォーム収容部115の奥端側部分の内側に内嵌固定されたホルダ119に圧入されている。玉軸受118aの内輪は、ウォーム113のうちでウォーム歯117よりも先端側に位置する部分に設けられた大径部120に、合成樹脂製のブッシュ121を介して隙間嵌により外嵌されている。すなわち、玉軸受118aの内輪は、ウォーム113の大径部120に隙間嵌で外嵌されたブッシュ121にがたつきなく外嵌されている。ウォーム113の基端側(図13の左側)の玉軸受118bの外輪は、ウォーム収容部115の開口部に圧入されており、玉軸受118bの内輪は、ウォーム113の基端部に外嵌されている。ウォーム113の基端部には、電動モータ109の出力軸が、トルクの伝達を可能に接続されている。すなわち、ウォーム113は、電動モータ109により回転駆動可能となっている。
【0006】
ウォーム減速機110では、ホイール歯116とウォーム歯117との噛合部に、ウォーム減速機110を構成する部品のそれぞれの寸法誤差や組立誤差などに基づいて、不可避のバックラッシュが存在する。このバックラッシュの存在に基づき、ステアリングシャフト104の回転方向を変える際に、噛合部で耳障りな歯打ち音が発生する場合がある。図示の例では、このような歯打ち音の発生を抑えるために、ウォーム113の先端部を、ウォームホイール112側に向けて弾性的に付勢している。
【0007】
すなわち、ウォーム113の基端部はウォーム収容部115に対し、ラジアル隙間を有する玉軸受118bにより、若干の揺動変位を可能に支持されている。ウォーム113の大径部120の外周面と、ブッシュ121の内周面との間には環状隙間が存在する。ウォーム113の先端部にはパッド122が外嵌され、パッド122とホルダ119との間に捩りコイルばね123が設置されている。捩りコイルばね123によって、パッド122を、電動モータ109の中心軸とウォームホイール112の中心軸に直交する第1の方向(図13の上下方向)に関して、ウォームホイール112側に向けて弾性的に押圧することにより、ウォーム113の先端部を、第1の方向に関してウォームホイール112側(図13の上側)に向けて弾性的に押圧(付勢)している。これにより、ホイール歯116とウォーム歯117との間のバックラッシュが抑えられ、歯打ち音の発生が抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第4381024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許第4381024号公報に記載の構造では、ウォーム113の先端部を、ウォームホイール112に近づく方向に押圧可能とするため、ウォーム113の大径部120の外周面と、ブッシュ121の内周面との間に環状隙間が存在する。また、ウォーム113の大径部120の外周面と、ブッシュ121の内周面との間に存在する環状隙間よりも小さいが、ウォーム113の先端部とパッド122の通孔との間にも環状隙間が存在する。したがって、ステアリングシャフト104の回転方向を変える際に、ホイール歯116からウォーム歯117に加わる反力のうち、ウォームホイール112の軸方向に関する成分の向きが変わって、ウォーム113の先端部が、捩りコイルばね123による押圧方向と直角な方向(図13の表裏方向)に変位する可能性がある。
【0010】
本発明は、上述のような事情に鑑み、ウォームの先端部に、ウォームホイールに近づく方向の弾力を付与する手段を備えるウォーム減速機において、ウォームの先端部が付勢方向と直角な方向に変位するのを抑えることができる構造を実現することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のウォーム減速機は、ハウジングと、ウォームホイールと、ウォームと、転がり軸受と、パッドと、弾性部材と、ホルダとを備える。
前記ウォームホイールは、前記ハウジングに回転自在に支持され、外周面にホイール歯を有する。
前記ウォームは、前記ハウジングに回転自在に支持され、外周面に、前記ホイール歯と噛合するウォーム歯を有する。
前記転がり軸受は、前記ウォームの先端部に直接または円筒状のブッシュを介して外嵌された内輪と、外輪とを有する。なお、前記転がり軸受は、前記内輪の外周面に形成された内輪軌道と、前記外輪の内周面に形成された外輪軌道との間に転動自在に配置された複数個の転動体をさらに有する。
前記パッドは、前記ウォームの先端部を、前記ウォームホイールに近づく方向に押圧する。
前記弾性部材は、前記パッドに、前記ウォームホイールに近づく方向の弾力を付与する。換言すれば、前記弾性部材は、前記パッドを、前記ウォームホイールに近づく方向に弾性的に付勢する。
前記ホルダは、前記ハウジングに内嵌固定され、内周面に、前記外輪を内嵌保持する軸受保持面を有し、かつ、前記ウォームホイールに対する前記パッドの遠近動方向である第1の方向に直交する第2の方向に対向する1対の内側面を含むパッド係合部を有する。
前記パッドは、基部と、1対の弾性片とを含む。
前記基部は、前記ウォームホイールに対する前記パッドの遠近動方向(前記パッドが、前記パッド係合部に沿って変位可能な方向)である第1の方向に関して前記ウォームホイールに近い側の側面に、前記ウォームの先端部外周面を押圧する押圧部を有し、かつ、前記第1の方向に関して前記ウォームホイールから遠い側の側面に、前記弾性部材により押圧される少なくとも1つの被押圧部を有する。
前記1対の弾性片は、前記基部のうち、前記第1の方向に直交する第2の方向に関する両側の端部から、前記第1の方向に関して前記ウォームホイールに近づく方向に延出し、かつ、前記第2の方向に関する外側面に、前記パッド係合部の内側面に弾性的に接触する弾性接触面を有する。
前記押圧部は、前記ウォームの先端部の曲率半径よりもわずかに大きい曲率半径を有する半円筒面状の凹曲面である。
前記パッドを前記ホルダの前記パッド係合部に係合する以前の自由状態において、前記1対の弾性片の前記弾性接触面同士の前記第2の方向に関する幅寸法が、前記ホルダの1対の内側面同士の前記第2の方向に関する幅寸法よりも大きい。
前記パッドは、前記1対の弾性片が弾性的に復元しようとすることによって、前記1対の弾性片の前記弾性接触面を、前記ホルダの1対の内側面に弾性的に接触させる。
なお、前記第2の方向は、前記ウォームの基端部にトルクの伝達を可能に接続される電動モータの出力軸の中心軸(該中心軸の延長線を含む)に直交する仮想平面内において、前記第1の方向に直交する方向である。
【0012】
前記第1の方向は、前記ウォームホイールの中心軸と、前記ハウジングに対し前記ホルダを介して支持固定された前記外輪の中心軸とに直交する方向であることができる。
この場合、前記少なくとも1つの被押圧部を、前記基部の、前記第1の方向に関して前記ウォームホイールから遠い側の側面のうち、前記外輪の中心軸を含み、かつ、前記第2の方向に直交する第1の仮想平面を挟んで対称となる2箇所位置に備えることができ、前記ウォームの中心軸に直交する第2の仮想平面に関する断面において、それぞれの前記被押圧部のうちで前記弾性部材により押圧される部分と前記ウォームの中心軸とを結ぶ仮想直線と、前記第1の方向とのなす角度を、15度以上60度以下とすることができる
この場合、前記パッドは、前記第1の仮想平面に関して対称な形状を有することができる。
【0013】
前記弾性部材は、前記少なくとも1つの被押圧部を、前記ウォームホイールに近づく方向に押圧するコイル部と、該コイル部の両側の端部から折れ曲がり、かつ、前記ホルダに対し支持された1対の腕部とを備える、捩りコイルばねにより構成することができる。
【0014】
前記パッドは、前記基部と前記1対の弾性片との接続部のうち、前記第2の方向に関する内側面に1対の切り欠き部を有することができる。
【0015】
前記1対の弾性片のそれぞれは、前記第2の方向に関する内側面に、前記ウォームの先端部の曲率半径よりもわずかに大きい曲率半径を有する部分円筒面状の凹曲面部を有することができる。
【発明の効果】
【0016】
上述のような本発明のウォーム減速機によれば、ウォームホイールの回転方向を変える際に、ウォームの先端部が弾性部材による付勢方向と直角な方向に変位するのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、本発明の実施の形態の1例のウォーム減速機を組み込んだステアリング装置を下方から見た斜視図である。
図2図2は、本発明の実施の形態の1例のウォーム減速機を組み込んだステアリング装置の端面図である。
図3図3は、図1のA-A断面図である。
図4図4は、図1のB-B断面図である。
図5図5は、付勢機構を取り出して示す斜視図である。
図6図6は、付勢機構を取り出して示す端面図である。
図7図7は、図6の左方から見た側面図である。
図8図8は、図7のC-C断面図である。
図9図9は、付勢機構の分解斜視図である。
図10図10(A)は、パッドを取り出して示す斜視図であり、図10(B)は、パッドを、図10(A)と異なる方向から見た斜視図である。
図11図11(A)は、パッドの正面図であり、図11(B)は、図11(A)の右側から見た側面図であり、図11(C)は、図11(A)の上方から見た平面図であり、図11(D)は、パッドの背面図である。
図12図12は、ステアリング装置の従来構造の1例を示す部分切断側面図である。
図13図13は、図12のD-D拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1図11(D)は、本発明の実施の形態の1例を示している。本例のステアリング装置1は、ステアリングシャフト2と、ステアリングコラム3と、電動アシスト機構4とを備える。
【0019】
ステアリングシャフト2は、ステアリングコラム3の内側を軸方向に挿通し、かつ、ステアリングコラム3に回転自在に支持されている。ステアリングシャフト2の後端部(図1の右端部)には、ステアリングホイール100(図12参照)が支持固定され、ステアリングシャフト2の前端部は、自在継手106(図12参照)を介して中間シャフト107の後端部に、トルクの伝達を可能に接続される。ステアリングコラム3は、支持ブラケット5を介して車体に支持される。
【0020】
本例のステアリング装置は、ステアリングホイール100の前後位置を調節可能とするテレスコピック機構と、ステアリングホイール100の上下位置を調節可能とするチルト機構とを備える。このために、ステアリングシャフト2を、前側のインナシャフト6と後側のアウタチューブ7とを、トルク伝達可能に、かつ、伸縮可能に組み合わせることにより構成し、ステアリングコラム3を、前側のアウタコラム8と後側のインナコラム9とを伸縮可能に組み合わせることにより構成している。
【0021】
アウタコラム8の前端部には、電動アシスト機構4を構成するウォーム減速機10のハウジング11を介して前側ブラケット12が固設されており、この前側ブラケット12は、車体の幅方向に配置された枢軸に対しこの枢軸を中心とする揺動変位を可能に支持されている。アウタコラム8は、アウタコラム8の軸方向に伸長するスリット13を形成することにより、後側部分の内径を拡縮可能に構成されている。支持ブラケット5は、アウタコラム8の後側部分を、車体の幅方向両側から挟持する1対の支持板部14を有する。1対の支持板部14は、調節レバー15の操作に基づいて、それぞれの内側面同士の間隔を拡縮可能に構成されている。これにより、本例のステアリング装置は、ステアリングホイール100の前後位置および上下位置を調節可能としたモードと、ステアリングホイール100を調節後の位置に保持するモードとを切り換え可能に構成されている。
【0022】
電動アシスト機構4は、運転者がステアリングホイール100を操作するのに要する力の低減を図るためのものである。本例の電動アシスト機構4は、電動モータ16の補助動力をステアリングシャフト2に付与する、コラムアシスト式である。具体的には、本例の電動アシスト機構4は、電動モータ16の出力軸17の回転を、ウォーム減速機10により減速して、ステアリングシャフト2に付与するように構成されている。
【0023】
ウォーム減速機10は、ハウジング11と、ウォームホイール18と、ウォーム19と、転がり軸受20と、付勢機構21とを備える。
【0024】
ハウジング11は、ホイール収容部22と、このホイール収容部22の中心軸に対し捩れの位置にある中心軸を有し、かつ、軸方向中間部がホイール収容部22内に開口したウォーム収容部23とを備える。本例では、ハウジング11は、アウタコラム8の前端部に、ホイール収容部22の中心軸とアウタコラム8の中心軸とが同軸となるように支持固定されている。
【0025】
ウォームホイール18は、外周面に、はすば歯車であるホイール歯24を有し、かつ、ホイール収容部22の内側に回転自在に支持されている。本例では、ウォームホイール18は、ステアリングシャフト2のインナシャフト6の前側部の周囲に、このインナシャフト6と一体に回転するように支持固定されている。
【0026】
ウォーム19は、軸方向中間部外周面に形成された、ねじ状のウォーム歯25をウォームホイール18のホイール歯24と噛合させ、かつ、ウォーム収容部23の内側に回転自在に支持されている。
【0027】
ウォーム19は、基端部(図3および図4の左端部)内周面に雌スプライン部26を有する。この雌スプライン部26と、電動モータ16の出力軸17の外周面に形成された雄スプライン部27とをスプライン係合させることにより、ウォーム19の基端部と電動モータ16の出力軸17とを、トルクの伝達を可能に、かつ、ウォーム19の若干の揺動変位を可能に接続している。なお、電動モータ16は、ハウジング11のウォーム収容部23の開口側の端部に、ねじ止めにより結合固定されている。
【0028】
ウォーム19は、基端部外周面を、先端側に向かうほど外径が段階的に大きくなる段付円筒面としている。具体的には、ウォーム19は、基端部外周面に、ウォーム歯25から遠い側から順に、小径円筒面部28と、嵌合面部29と、大径円筒面部30とを有し、かつ、大径円筒面部30とウォーム歯25との間部分に、基端側を向いた段差部31を有する。
【0029】
ウォーム19の基端部は、ウォーム収容部23の開口側部分の内周面に形成された軸受保持部32に、玉軸受33により、回転および揺動変位を可能に支持されている。玉軸受33は、外輪34と、内輪35と、外輪34の内周面と内輪35の外周面との間に転動自在に配置された複数個の玉36とを備える。
【0030】
外輪34は、外周面を、ウォーム収容部23の軸受保持部32に締り嵌めで内嵌し、かつ、軸受保持部32の奥端側に形成された段差部37と、ウォーム収容部23の開口側部分の内周面に係止された止め輪38との間で軸方向両側から挟持されている。すなわち、外輪34の軸方向片側面(図3の右側面)は、段差部37に突き当てられ、かつ、外輪34の軸方向他側面(図3の左側面)は、止め輪38に突き当てられている。
【0031】
内輪35は、内周面を、ウォーム19の嵌合面部29に隙間嵌で外嵌し、かつ、段差部31と、小径円筒面部28に圧入およびかしめにより固定されたスペーサ39との間で、1対の弾性体40を介して、軸方向両側から挟持されている。すなわち、内輪35の軸方向片側面は、段差部31に、弾性体40を介して突き当てられ、かつ、内輪35の軸方向他側面は、スペーサ39に、弾性体40を介して突き当てられている。
【0032】
以上のような構成により、ウォーム19の基端部は、ウォーム収容部23の軸受保持部32に対して、回転および揺動変位を可能に支持されている。
【0033】
また、ウォーム19は、先端部外周面を、段付円筒面としている。具体的には、ウォーム19は、先端部(図3および図4の右端部)外周面に、ウォーム歯25に近い側の大径筒部41と、ウォーム歯25から遠い側の小径筒部42とを有する。
【0034】
なお、本例のウォーム減速機10では、後述する第1の方向から見て、ウォームホイール18の中心軸O18と、ウォーム19の中心軸(電動モータ16の出力軸17の中心軸O17)とが直交している。
【0035】
本例のウォーム減速機10では、ウォーム19の先端部外周面と、ウォーム収容部23の奥端部内周面との間に、転がり軸受20と付勢機構21とを設置している。これにより、ウォーム19の先端部に、ウォームホイール18に近づく方向の弾力を付与して(ウォーム19の先端部を、ウォームホイール18に近づく方向に弾性的に付勢して)、ホイール歯24とウォーム歯25との噛合部でのバックラッシュを抑えている。本例では、付勢機構21により、ウォーム19の先端部を、後述するホルダ48を介してハウジング11に支持固定される、転がり軸受20の外輪45の中心軸(中心軸の延長線を含む)O45と、ウォームホイール18の中心軸O18とに直交する第1の方向(図3の上下方向)に関して、ウォームホイール18に近づく方向に弾性的に付勢している。
【0036】
ウォーム収容部23は、奥端部内周面を、段付円筒面としている。具体的には、ウォーム収容部23は、奥端部内周面に、開口側に近い側から順に、ホルダ保持部43と、小径部44とを有する。
【0037】
転がり軸受20は、外輪45と、内輪46と、外輪45の内周面に形成された外輪軌道と内輪46の外周面に形成された内輪軌道との間に転動自在に配置された複数個の転動体47とを備える。図示の例では、転がり軸受20を、転動体47として玉を使用したラジアル玉軸受としているが、ラジアル荷重を支承可能であれば、転動体として円筒ころや円すいころなどを使用した、ラジアル転がり軸受を採用することもできる。
【0038】
外輪45は、ハウジング11のウォーム収容部23のホルダ保持部43に、付勢機構21のホルダ48を介して回転不能に内嵌されている。
【0039】
内輪46は、円筒状のブッシュ49を介して、ウォーム19の大径筒部41に隙間嵌で外嵌されている。すなわち、ブッシュ49を内輪46の内周面に軽圧入し、かつ、ブッシュ49を大径筒部41に隙間嵌で外嵌している。ウォーム19の先端部は、ブッシュ49の内周面と大径筒部41との間に存在する環状隙間に基づいて、第1の方向に関する変位が可能となっている。なお、ブッシュ49は、ウォーム19を構成する金属材料に対する摩擦係数が小さい、合成樹脂またはアルミニウム合金などの軽合金などにより構成することが好ましい。
【0040】
付勢機構21は、ホルダ48と、パッド50と、弾性部材である捩りコイルばね51とを備える。
【0041】
ホルダ48は、ウォーム収容部23のホルダ保持部43に内嵌固定され、内周面に、転がり軸受20の外輪45を内嵌保持する軸受保持面55を有し、かつ、第1の方向に直交する第2の方向(図4の上下方向、図6および図8の左右方向)に対向する1対の内側面76を含むパッド係合部58を有する。このために、本例のホルダ48は、筒状部52と、この筒状部52の軸方向片側(図3および図4の右側)の端部から径方向内側に向かって伸長する、略円輪状の側板部53と、この側板部53の軸方向片側面の径方向内側部から軸方向片側に向けて突出する、略U字形の突出部54とを備える。なお、ホルダ48は、十分な強度および剛性を有する金属材料製とすることが好ましい。また、ホルダ48は、電動モータ16の出力軸17の中心軸O17を含み、かつ、第2の方向に直交する第1の仮想平面αを挟んで対称な形状を有する。
【0042】
筒状部52は、内周面に、転がり軸受20の外輪45を内嵌保持する軸受保持面55を有し、かつ、外周面に、円周方向複数箇所に断面三角形の突条56を配置することにより構成された嵌合面部57を有する。本例では、筒状部52の軸受保持面55に外輪45の外周面を締り嵌めで内嵌し、かつ、嵌合面部57を、ウォーム収容部23のホルダ保持部43に圧入することにより、転がり軸受20の外輪45を、ホルダ48を介して、ウォーム収容部23に回転不能に内嵌固定している。
【0043】
側板部53は、径方向中央部にパッド案内孔77を有する。本例では、パッド案内孔77は、長径の方向が第1の方向を向いた略長円形の透孔により構成されている。すなわち、パッド案内孔77は、第2の方向に関して両側に配置された直線部の両端部同士を、円弧形の曲線部により接続した、略長円形の開口形状を有する。なお、第2の方向は、ウォーム19の基端部にトルクの伝達を可能に接続された電動モータ16の出力軸17の中心軸(中心軸の延長線を含む)O17に直交する第2の仮想平面内において、第1の方向に直交する方向であって、本例では、ウォームホイール18の軸方向に一致する。
【0044】
突出部54は、側板部53の軸方向片側面(図3および図4の右側面)のパッド案内孔77の開口部を囲む径方向内側部分のうち、ウォームホイール18から遠い側の端部を除く部分から軸方向片側に向けて突出している。突出部54は、外周面を部分円筒面としており、かつ、内周面を、パッド案内孔77の内面形状に沿った形状としている。すなわち、突出部54の内周面は、第2の方向に関して両側に配置された平坦面の端部同士を、部分円筒面である曲面部により接続することにより構成されている。すなわち、本例では、パッド係合部58は、パッド案内孔77の内面と突出部54の内周面とにより構成され、かつ、1対の内側面76は、パッド案内孔77の内面のうち、第2の方向に関して両側に配置された部分と、突出部54の内周面のうち、第2の方向に関して両側に配置された平坦面とにより構成されている。
【0045】
突出部54は、外周面のうちで、第2の方向に関する反対側2箇所位置に、互いに近づく方向に凹んだ引っ掛け凹部59をそれぞれ有し、かつ、円周方向両側の端部に係合凹部60をそれぞれ有する。
【0046】
パッド50は、略逆U字形の端面形状を有する基部61と、この基部61のうち、第1の方向に関してウォームホイール18に近い側の端部かつ第2の方向の両側の端部から、第1の方向に関してウォームホイール18に近づく方向に延出する1対の弾性片62とを備える。パッド50は、ウォーム19を構成する金属材料に対する摩擦係数が小さい、合成樹脂またはアルミニウム合金などの軽合金などにより構成することが好ましい。また、パッド50は、第1の仮想平面αを挟んで対称な形状を有する。
【0047】
基部61は、第1の方向に関して、ウォームホイール18に近い側(図11(A)および図11(D)の下側)の側面に、ウォーム19の小径筒部42を押圧する押圧部63を有し、かつ、第1の方向に関してウォームホイール18から遠い側(図11(A)および図11(D)の上側)の側面に、捩りコイルばね51により押圧される1対の被押圧部64を有する。本例では、1対の被押圧部64は、基部61の、第1の方向に関してウォームホイール18から遠い側の側面のうち、第1の仮想平面αを挟んで対称となる2箇所位置に備えられている。また、押圧部63と1対の被押圧部64とは、押圧部63の曲率中心を中心とする径方向に関して重畳して配置されている。
【0048】
本例の基部61は、略U字形の端面形状を有する基部本体65と、1対の係合凸部66と、庇部67とを備える。1対の係合凸部66は、基部本体65の幅方向両側面のうちで、第1の方向に関してウォームホイール18から遠い側の端部から幅方向に突出している。庇部67は、基部本体65のうち、第1の方向に関してウォームホイール18から遠い側の側面の軸方向片側の端部から、第1の方向に関してウォームホイール18から離れる方向に突出している。
【0049】
本例では、押圧部63は、ウォーム19の小径筒部42の曲率半径よりもわずかに大きい曲率半径を有する半円筒面状の凹曲面であって、基部本体65のうち、第1の方向に関してウォームホイール18に近い側の側面に備えられている。1対の被押圧部64は、部分円筒状の凸曲面であって、1対の係合凸部66のうち、第1の方向に関してウォームホイール18から遠い側の側面に備えられている。
【0050】
1対の弾性片62のそれぞれは、第2の方向に関する外側面(互いに反対側の側面)に、弾性接触面68を有する。弾性接触面68は、パッド50の軸方向他側部分を、ホルダ48のパッド係合部58に係合する(パッド係合部58の内側に配置する)以前の自由状態においては、図11(A)および図11(D)に示すように、第1の方向に関してウォームホイール18に近づく方向に向かうほど、第2の方向に関して外側に向かう方向に傾斜している。また、1対の弾性片62のそれぞれは、第2の方向に関する内側面に、ウォーム19の小径筒部42の曲率半径よりもわずかに大きい曲率半径を有する部分円筒面状の凹曲面部69を有する。
【0051】
本例のパッド50は、基部61と1対の弾性片62との接続部のうち、第2の方向に関する内側面および軸方向他側面に、切り欠き部70a、70bをそれぞれ有する。これにより、1対の弾性片62を、基部61との接続部を中心として、それぞれの先端部を第2の方向に関して互いに近づく方向に弾性変形しやすくしている。
【0052】
パッド50は、図8に示すように、1対の弾性片62の先端部同士を、第2の方向に関して互いに近づく方向に弾性変形させた状態で、基部本体65および1対の弾性片62の軸方向他側部分を、ホルダ48のパッド係合部58の内側に、第1の方向に関する摺動(第1の方向に関してウォームホイール18に対する遠近動)を可能に配置(係合)している。この状態では、弾性接触面68は、パッド係合部58の内側面76に弾性的に接触(当接)している。また、押圧部63と凹曲面部69とは、同一円筒面上に存在する。
【0053】
換言すれば、パッド50は、軸方向他側部分を、ホルダ48のパッド係合部58の内側に配置した状態において、略長円形の端面形状を有する本体部73と、この本体部73の中心部を貫通する嵌合孔74と、1対の係合凸部66と、庇部67とを備える。1対の係合凸部66は、本体部73の幅方向両側面のうちで、第1の方向に関してウォームホイール18から遠い側の端部から幅方向に突出している。庇部67は、本体部73のうち、第1の方向に関してウォームホイール18から遠い側の側面の軸方向片側の端部から、第1の方向に関してウォームホイール18から離れる方向に突出している。
【0054】
嵌合孔74は、内側に、ウォーム19の小径筒部42を相対回転可能に内嵌する。嵌合孔74は、第1の方向に関してウォームホイール18に近い側の端部に、本体部73の外周面と嵌合孔74の内周面とを連通する不連続部75を有し、かつ、内周面のうち、第2の方向に関する両側の端部に、径方向外方に凹んだ切り欠き部70aを有する。なお、本体部73の軸方向他側面のうち、第1の方向に関する位置が切り欠き部70aと一致する部分には、軸方向片側に凹んだ切り欠き部70bが備えられている。
【0055】
パッド50とパッド係合部58との係合を外すと、本体部73のうち、第1の方向に関してウォームホイール18に近い側の部分が、切り欠き部70a、70bが存在する部分を中心に弾性的に復元し、図11(A)~図11(D)に示すように、不連続部75の幅が拡がった状態になる。
【0056】
捩りコイルばね51は、ホルダ48とパッド50との間にかけ渡すように設置されており、パッド50を介して、ウォーム19の先端部に、第1の方向に関してウォームホイール18側に向かう方向の弾力を付与している。捩りコイルばね51は、金属線を曲げ成形することにより構成され、コイル部71と、このコイル部71の両側の端部から径方向内方に折れ曲がった1対の腕部72とを有する。
【0057】
コイル部71にホルダ48の突出部54を挿通し、かつ、1対の腕部72を引っ掛け凹部59に引っ掛けることにより、コイル部71に、このコイル部71を縮径させる方向の弾力が付与される。この弾力に基づいて、コイル部71の内周面を、パッド50のうち、1対の被押圧部64に押し付けることにより、このパッド50を介して、ウォーム19の先端部に、第1の方向に関してウォームホイール18側に向かう方向の弾力を付与している。これにより、ホイール歯24とウォーム歯25との噛合部でのバックラッシュを抑えている。
【0058】
なお、被押圧部64のうち、コイル部71の内周面により押圧される部分とウォーム19の中心軸O19とを結ぶ仮想直線と、第1の方向とのなす角度θは、0度よりも大きく90度未満であり、15度以上60度以下であることが好ましく、30度以上45度以下であることがより好ましい。本例では、角度θを、約40度としている。
【0059】
本例では、パッド50の基部本体65および1対の弾性片62の軸方向他側部分を、ホルダ48のパッド係合部58の内側に係合した状態で、1対の弾性片62に備えられた弾性接触面68を、ホルダ48のパッド係合部58の内側面76に弾性的に接触(当接)させている。このため、ステアリングホイール100を操作して、ステアリングシャフト2に支持固定されたウォームホイール18の回転方向を変えることで、ホイール歯24からウォーム歯25に加わる反力のうち、第2の方向に関する成分の向きが変化した場合でも、ウォーム19の先端部が第2の方向に変位するのを防止することができる。
【0060】
また、本例では、1対の被押圧部64を、基部61の、第1の方向に関してウォームホイール18から遠い側の側面のうち、電動モータ16の出力軸17の中心軸O17を含み、かつ、第2の方向に直交する第1の仮想平面αを挟んで対称となる2箇所位置に配置している。そして、捩りコイルばね51のコイル部71の内周面を、1対の被押圧部64に押し付けることで、パッド50を介して、ウォーム19の先端部に、第1の方向に関してウォームホイール18側に向かう方向の弾力を付与している。このため、1対の被押圧部64には、第1の方向に関してウォームホイール18に近づく方向成分だけなく、第2の方向に関して互いに反対向きの成分を有する力が加わる。この面からも、ウォームホイール18の回転方向が変わった場合に、ウォーム19の先端部が第2の方向に変位するのを防止することができる。
【0061】
本例では、ホルダ48およびパッド50はいずれも、電動モータ16の出力軸17の中心軸O17を含み、かつ、第2の方向に直交する第1の仮想平面αを挟んで対称な形状を有する。要するに、付勢機構21は、第1の仮想平面αを挟んで対称な形状を有する。したがって、例えば、右ハンドル車と左ハンドル車とのように、電動モータ16の取付方向が異なる場合であっても、部品を共通化することができる。
【0062】
また、本例では、パッド50の基部61と1対の弾性片62との接続部のうち、第2の方向に関する内側面および軸方向他側面に、切り欠き部70a、70bをそれぞれ形成している。これにより、1対の弾性片62が、それぞれの先端部を第2の方向に関して互いに近づく方向に弾性変形させる際に、弾性片62のそれぞれが、基部61の接続部を中心に変形するようにしている。この結果、ウォーム19の小径筒部42を押圧する押圧部63が変形しないようにすることができる。
【0063】
なお、本例では、ウォーム減速機10を、コラム式の電動アシスト機構に組み込んだ場合について説明したが、本発明のウォーム減速機は、コラム式に限らず、電動モータの補助動力を、ステアリングギヤユニットの入力軸であるピニオン軸に付与するピニオン式などの電動アシスト機構に組み込むこともできる。また、本発明のウォーム減速機は、電動アシスト機構に限らず、各種機械装置に組み込むことができる。
【0064】
また、本例では、第1の方向から見て、ウォームホイール18の中心軸O18と、ウォーム19の中心軸(電動モータ16の出力軸17の中心軸O17)とが直交する構造について説明したが、本発明は、ウォームホイールの中心軸と、ウォームの基端部にトルクの伝達を可能に接続される電動モータの出力軸の中心軸とに直交する方向から見て、前記ウォームホイールの中心軸と前記ウォームの中心軸とが斜交する(鋭角をなす)、斜交型のウォーム減速機に適用することもできる。
【符号の説明】
【0065】
1 ステアリング装置
2 ステアリングシャフト
3 ステアリングコラム
4 電動アシスト機構
5 支持ブラケット
6 インナシャフト
7 アウタチューブ
8 アウタコラム
9 インナコラム
10 ウォーム減速機
11 ハウジング
12 前側ブラケット
13 スリット
14 支持板部
15 調節レバー
16 電動モータ
17 出力軸
18 ウォームホイール
19 ウォーム
20 転がり軸受
21 付勢機構
22 ホイール収容部
23 ウォーム収容部
24 ホイール歯
25 ウォーム歯
26 雌スプライン部
27 雄スプライン部
28 小径円筒面部
29 嵌合面部
30 大径円筒面部
31 段差部
32 軸受保持部
33 玉軸受
34 外輪
35 内輪
36 玉
37 段差部
38 止め輪
39 スペーサ
40 弾性体
41 大径筒部
42 小径筒部
43 ホルダ保持部
44 小径部
45 外輪
46 内輪
47 転動体
48 ホルダ
49 ブッシュ
50 パッド
51 捩りコイルばね
52 筒状部
53 側板部
54 突出部
55 軸受保持面
56 突条
57 嵌合面部
58 パッド係合部
59 引っ掛け凹部
60 係合凹部
61 基部
62 弾性片
63 押圧部
64 被押圧部
65 基部本体
66 係合凸部
67 庇部
68 弾性接触面
69 凹曲面部
70a、70b 切り欠き部
71 コイル部
72 腕部
73 本体部
74 嵌合孔
75 不連続部
76 内側面
77 パッド案内孔
100 ステアリングホイール
101 ステアリングギヤユニット
102 入力軸
103 タイロッド
104 ステアリングシャフト
105 ステアリングコラム
106 自在継手
107 中間シャフト
108 自在継手
109 電動モータ
110 ウォーム減速機
111 ハウジング
112 ウォームホイール
113 ウォーム
114 ホイール収容部
115 ウォーム収容部
116 ホイール歯
117 ウォーム歯
118a、118b 玉軸受
119 ホルダ
120 大径部
121 ブッシュ
122 パッド
123 捩りコイルばね
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13