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特許7358784眼鏡レンズ加工用装置および眼鏡レンズ加工用プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】眼鏡レンズ加工用装置および眼鏡レンズ加工用プログラム
(51)【国際特許分類】
   B24B 9/14 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
B24B9/14 H
B24B9/14 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019104763
(22)【出願日】2019-06-04
(65)【公開番号】P2020196108
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000135184
【氏名又は名称】株式会社ニデック
(72)【発明者】
【氏名】中子 裕也
(72)【発明者】
【氏名】作田 隆真
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-252854(JP,A)
【文献】特開2014-106265(JP,A)
【文献】特開平11-090805(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0001435(US,A1)
【文献】特開平05-329748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼鏡レンズを研削加工するための眼鏡レンズ加工用装置であって、
少なくとも眼鏡レンズの材質情報を含むレンズ加工情報を取得するレンズ加工情報取得手段と、
前記レンズ加工情報における前記材質情報と、様々な材質の眼鏡レンズを事前に加工することで得たデータに基づいて作成された予測テーブルまたは演算式と、を利用して、眼鏡レンズを研削加工するための加工具によって眼鏡レンズを加工可能と予測される加工予測枚数情報を取得する加工予測枚数情報取得手段と、
前記加工予測枚数情報を出力する出力手段と、
を備え
前記予測テーブルまたは前記演算式は、前記材質情報毎に設定された材質係数を考慮した予測テーブルまたは演算式であることを特徴とする眼鏡レンズ加工用装置。
【請求項2】
請求項1の眼鏡レンズ加工用装置において、
前記レンズ加工情報取得手段は、前記眼鏡レンズにおける少なくとも2つの異なる材質情報を前記レンズ加工情報として取得し、
前記加工予測枚数情報取得手段は、前記少なくとも2つの異なる材質情報を含む前記レンズ加工情報に基づいて、前記加工予測枚数情報を取得することを特徴とする眼鏡レンズ加工用装置。
【請求項3】
請求項1または2の眼鏡レンズ加工用装置において、
前記レンズ加工情報取得手段は、さらに、前記加工具の形状情報を前記レンズ加工情報として取得し、
前記加工予測枚数情報取得手段は、少なくとも前記加工具の形状情報を含む前記レンズ加工情報に基づいて、前記加工予測枚数情報を取得することを特徴とする眼鏡レンズ加工用装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかの眼鏡レンズ加工用装置において、
前記レンズ加工情報取得手段は、さらに、前記眼鏡レンズに前記加工具が施す加工種類情報を前記レンズ加工情報として取得し、
前記加工予測枚数情報取得手段は、少なくとも前記加工種類情報を含む前記レンズ加工情報に基づいて、前記加工予測枚数情報を取得することを特徴とする眼鏡レンズ加工用装置。
【請求項5】
眼鏡レンズを研削加工するための眼鏡レンズ加工用装置にて用いられる眼鏡レンズ加工用プログラムであって、前記眼鏡レンズ加工用装置のプロセッサに実行されることで、
少なくとも眼鏡レンズの材質情報を含むレンズ加工情報を取得するレンズ加工情報取得ステップと、
前記レンズ加工情報における前記材質情報と、様々な材質の眼鏡レンズを事前に加工することで得たデータに基づいて作成された予測テーブルまたは演算式と、を利用して、眼鏡レンズを研削加工するための加工具によって眼鏡レンズを加工可能と予測される加工予測枚数情報を取得する加工予測枚数情報取得ステップと、
前記加工予測枚数情報を出力する出力ステップと、
を前記眼鏡レンズ加工用装置に実行させ
前記予測テーブルまたは前記演算式は、前記材質情報毎に設定された材質係数を考慮した予測テーブルまたは演算式であることを特徴とする眼鏡レンズ加工用プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼鏡レンズを加工するための眼鏡レンズ加工用装置、および眼鏡レンズ加工用プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡レンズを加工する眼鏡レンズ加工装置が知られている。この装置では、眼鏡レンズに、加工具を用いて、粗加工、ヤゲン加工、平加工、等の様々な加工を施すことで、眼鏡レンズを所望の形状に研削することができる。
【0003】
ところで、このような装置は、加工具の調整や交換のタイミングを報知するものが考えられている。例えば、特許文献1では、眼鏡レンズに未加工の部分があるか否かを検出し、未加工の部分があった場合に、加工具に不具合(折れ、破損、変形、位置ずれ、等)が生じていることを報知する。また、例えば、特許文献2では、レンズの加工時間またはレンズの回転数を計測し、これらのいずれかが基準を超えた場合に、加工具のドレッシングが必要である旨を報知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-198359号公報
【文献】特開2002-205251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記装置においては、加工具の調整や交換が必要な状況となった際に報知されるため、その加工具に対する調整準備や交換準備をしづらい問題があった。
【0006】
本開示は、上記従来技術に鑑み、眼鏡レンズを加工する加工具の寿命を事前に予測することができる眼鏡レンズ加工用装置および眼鏡レンズ加工用プログラムを提供することを技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本開示は、以下のような構成を備えることを特徴とする。
【0008】
(1)本開示の第1態様に係る眼鏡レンズ加工用装置は、眼鏡レンズを研削加工するための眼鏡レンズ加工用装置であって、少なくとも眼鏡レンズの材質情報を含むレンズ加工情報を取得するレンズ加工情報取得手段と、前記レンズ加工情報における前記材質情報と、様々な材質の眼鏡レンズを事前に加工することで得たデータに基づいて作成された予測テーブルまたは演算式と、を利用して、眼鏡レンズを研削加工するための加工具によって眼鏡レンズを加工可能と予測される加工予測枚数情報を取得する加工予測枚数情報取得手段と、前記加工予測枚数情報を出力する出力手段と、を備え、前記予測テーブルまたは前記演算式は、前記材質情報毎に設定された材質係数を考慮した予測テーブルまたは演算式であることを特徴とする
(2)本開示の第態様に係る眼鏡レンズ加工用プログラムは、眼鏡レンズを研削加工するための眼鏡レンズ加工用装置にて用いられる眼鏡レンズ加工用プログラムであって、前記眼鏡レンズ加工用装置のプロセッサに実行されることで、少なくとも眼鏡レンズの材質情報を含むレンズ加工情報を取得するレンズ加工情報取得ステップと、前記レンズ加工情報における前記材質情報と、様々な材質の眼鏡レンズを事前に加工することで得たデータに基づいて作成された予測テーブルまたは演算式と、を利用して、眼鏡レンズを研削加工するための加工具によって眼鏡レンズを加工可能と予測される加工予測枚数情報を取得する加工予測枚数情報取得ステップと、前記加工予測枚数情報を出力する出力ステップと、を前記眼鏡レンズ加工用装置に実行させ、前記予測テーブルまたは前記演算式は、前記材質情報毎に設定された材質係数を考慮した予測テーブルまたは演算式であることを特徴とする
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】眼鏡レンズ加工用装置の外観図である。
図2】レンズ加工機構部の概略図である。
図3】眼鏡レンズ加工用装置の制御系を示す図である。
図4】加工済みレンズの材質と加工割合を入力するための入力画面の一例である。
図5】レンズの加工可能枚数を報知するための表示画面の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<概要>
本開示の実施形態に係る眼鏡レンズ加工用装置の概要について説明する。なお、以下の<>にて分類された項目は、独立または関連して利用されうる。
【0011】
<レンズ加工情報取得手段>
本実施形態における眼鏡レンズ加工用装置は、レンズ加工情報取得手段(例えば、制御部80)を備える。レンズ加工情報取得手段は、少なくとも眼鏡レンズ(以下、レンズ)の材質情報を含むレンズ加工情報を取得する。例えば、レンズの材質情報は、レンズを加工するための所定の加工具によって加工される、レンズの材質に関する情報である。一例として、プラスチック、ポリカーボネイト、アクリル、ガラス、等の少なくともいずれかが挙げられる。もちろん、レンズの材質情報は、これらとは異なる材質であってもよい。
【0012】
レンズ加工情報取得手段は、眼鏡レンズ加工用装置が備えた所定の加工具によって加工されるレンズの材質情報を取得してもよい。また、レンズ加工情報取得手段は、眼鏡レンズ加工用装置とは異なる別の装置が備えた所定の加工具によって加工されるレンズの材質情報を受信することで取得してもよい。なお、レンズ加工情報取得手段は、所定の加工具が加工したレンズの材質情報を、これらが記憶されたサーバから呼び出すことで取得してもよい。言い換えると、レンズ加工情報取得手段は、眼鏡レンズ加工用装置、眼鏡レンズ加工用装置とは異なる別の装置、あるいはサーバ、等から、所定の加工具を用いて加工されるレンズの材質情報を取得してもよい。もちろん、レンズ加工情報取得手段は、操作者による操作手段(例えば、スイッチ部6)の操作によって、所定の加工具を用いて加工されるレンズの材質情報を取得してもよい。
【0013】
レンズ加工情報取得手段は、レンズ加工情報として、レンズにおける少なくとも2つの異なる材質情報を取得してもよい。レンズ加工情報取得手段は、所定の加工具によって加工されるレンズにおいて、少なくとも2つの異なる材質情報を取得可能であってもよい。一例として、所定の加工具が、プラスチックレンズとポリカーボネイトレンズを加工した場合、2つの異なる材質情報が取得される。また、一例として、所定の加工具が、プラスチックレンズとポリカーボネイトレンズとアクリルレンズを加工した場合、3つの異なる材質情報が取得される。
【0014】
レンズ加工情報取得手段が、レンズ加工情報として、レンズにおける少なくとも2つの異なる材質情報を取得する際には、レンズにおける少なくとも2つの異なる材質情報が、各々の割合として取得されてもよい。つまり、レンズ加工情報取得手段は、レンズ加工情報として、レンズにおける少なくとも2つの異なる材質情報の割合を取得してもよい。この場合、レンズ加工情報取得手段は、眼鏡レンズ加工用装置、眼鏡レンズ加工用装置とは異なる別の装置、あるいはサーバ、等から、所定の加工具を用いて加工されるレンズの材質情報の割合を、自動で取得してもよい。また、この場合、レンズ加工情報取得手段は、操作者による操作手段の操作によって、所定の加工具を用いて加工されるレンズの材質情報の割合を、手動で取得してもよい。
【0015】
例えば、レンズの材質情報の割合は、レンズの材質情報の比率が把握できるものであればよい。一例として、レンズの材質情報の割合は、所定の加工具を用いて加工する予定のレンズにおいて、その材質毎の加工予定枚数を、比率として表したものであってもよい。なお、レンズの材質情報の割合は、割合、歩合、百分率、等の少なくともいずれかで表したものであってもよい。
【0016】
レンズ加工情報取得手段は、レンズ加工情報として、レンズに加工を施す加工具の形状情報を取得するようにしてもよい。例えば、加工具の形状情報としては、加工具の径、加工具の粒径、加工具の形状(例えば、テーパ形状、円柱形状、等)、加工具の加工種類(例えば、粗加工用、仕上げ加工用、面取加工用、溝堀加工用、穴加工用、等)等の少なくともいずれかが挙げられる。
【0017】
レンズ加工情報取得手段は、レンズ加工情報として、加工具がレンズに施す加工種類情報を取得するようにしてもよい。例えば、レンズ加工情報取得手段は、所定の加工具が、レンズに対して1種類の加工を施すことが可能な加工具であった際に、レンズに施す1つの加工種類情報を取得してもよい。また、例えば、レンズ加工情報取得手段は、所定の加工具が、レンズに対して複数種類の加工を施すことが可能な加工具であった際に(言い換えると、所定の加工具が複数種類の加工に兼用される加工具であった際に)、レンズに施す複数の加工種類情報を取得してもよい。例えば、このような加工種類情報としては、粗加工、仕上げ加工(ヤゲン加工および平加工)、面取加工、溝堀加工、穴加工、等の少なくともいずれかが挙げられる。
【0018】
なお、本実施形態において、レンズ加工情報取得手段は、レンズの材質情報、加工具の形状情報、および加工具が施す加工種類情報、に加えて、これらとは異なる情報を取得するようにしてもよい。例えば、加工具を用いた加工の時間に係る時間情報(一例として、加工時間の累計等)、加工具にかかる加工負荷に係る情報(一例として、加工負荷と加工時間の積算値、加工負荷量が所定の閾値に達した回数、等)、レンズの形状に関する形状情報(一例として、レンズの厚み、レンズの度数、等)、等を取得するようにしてもよい。
【0019】
<実加工枚数取得手段>
本実施形態における眼鏡レンズ加工用装置は、実加工枚数取得手段(例えば、制御部80)を備える。実加工枚数取得手段は、所定の加工具において実際に加工された加工済みレンズの加工枚数情報を取得する。例えば、実加工枚数取得手段は、所定の加工具を用いてレンズを加工する毎に、レンズの加工枚数を記憶手段に蓄積して記憶させることで、加工済みレンズの加工枚数情報を取得してもよい。また、例えば、実加工枚数取得手段は、操作者による操作手段の操作から、加工済みレンズの加工枚数情報を取得してもよい。なお、加工済みレンズの加工枚数情報は、眼鏡レンズ加工用装置に設けられた記憶手段(例えば、メモリ85)に記憶されてもよいし、眼鏡レンズ加工用装置の外部に接続された記憶手段(例えば、外部サーバ等)に記憶されてもよい。
【0020】
<加工予測枚数情報取得手段>
本実施形態における眼鏡レンズ加工用装置は、加工予測枚数情報取得手段(例えば、制御部80)を備える。加工予測枚数情報取得手段は、レンズ加工情報に基づいて、レンズを加工するための加工具によってレンズを加工可能と予測される加工予測枚数情報を取得する。加工予測枚数情報取得手段は、予め実験やシミュレーション等により作成された予測テーブルや演算式を用いて、加工具の加工予測枚数情報を取得してもよい。また、加工予測枚数情報取得手段は、機械学習アルゴリズム(例えば、ニューラルネットワーク、ランダムフォレスト、ブースティング、等)によって訓練された数学モデルを用いて、加工具の加工予測枚数情報を取得してもよい。これによって、所定の加工具で加工可能なレンズの枚数が、レンズの材質の違いを考慮することで精度よく取得される。
【0021】
本実施形態において、加工予測枚数情報取得手段は、レンズの材質情報に基づいて、加工具の加工予測枚数情報を取得する。この際、加工予測枚数情報取得手段は、レンズにおける少なくとも2つの異なる材質情報を含むレンズ加工情報に基づいて、加工具の加工予測枚数情報を取得するようにしてもよい。これによって、1つの加工具で複数の材質のレンズを加工する場合であっても、その加工具で加工可能なレンズの枚数を、精度よく取得することができる。もちろん、加工予測枚数情報取得手段は、レンズにおける少なくとも2つの異なる材質情報の割合を含むレンズ加工情報に基づいて、加工具の加工予測枚数情報を取得するようにしてもよい。一例として、加工枚数情報取得手段は、レンズの材質情報毎に予め設定された係数と、レンズの材質情報の割合と、を利用して加工具の加工予測枚数を計算し、これを加工予測枚数情報として取得するようにしてもよい。これによっても、加工具で加工可能なレンズの枚数を、より精度よく取得することができる。
【0022】
さらに、本実施形態において、加工予測枚数情報取得手段は、少なくとも加工具の形状情報を含むレンズ加工情報に基づいて、加工具の加工予測枚数情報を取得してもよい。この場合には、レンズにおける1つの材質情報と、加工具の形状情報と、が考慮されてもよい。また、この場合には、レンズにおける2つ以上の異なる材質情報と、加工具の形状情報と、が考慮されてもよい。また、この場合には、レンズにおける2つ以上の異なる材質情報の割合と、加工具の形状情報と、が考慮されてもよい。これによって、加工具毎に異なる加工具径や形状等が反映されるため、加工具で加工可能なレンズの枚数をより精度よく取得することができる。
【0023】
また、本実施形態において、加工予測枚数情報取得手段は、少なくとも加工種類情報を含むレンズ加工情報に基づいて、加工具の加工予測枚数情報を取得してもよい。この場合には、レンズにおける1つの材質情報と、加工具の加工種類情報と、が考慮されてもよい。また、この場合には、レンズにおける2つ以上の異なる材質情報と、加工具の加工種類情報と、が考慮されてもよい。また、この場合には、レンズにおける2つ以上の異なる材質情報の割合と、加工具の加工種類情報と、が考慮されてもよい。
【0024】
もちろん、加工予測枚数情報取得手段は、レンズの材質情報と、加工具の形状情報と、加工具が施す加工種類情報と、を含むレンズ加工情報に基づいて、加工具の加工予測枚数情報を取得してもよい。この場合には、レンズにおける1つの材質情報と、加工具の形状情報と、加工具の加工種類情報と、が考慮されてもよい。また、この場合には、レンズにおける2つ以上の異なる材質情報と、加工具の形状情報と、加工具の加工種類情報と、が考慮されてもよい。また、この場合には、レンズにおける2つ以上の異なる材質情報の割合と、加工具の形状情報と、加工具の加工種類情報と、が考慮されてもよい。
【0025】
例えば、このように、加工具が施す加工種類情報を用いることで、特に、眼鏡レンズに複数種類の加工を施すことが可能な加工具においても、その加工具で加工可能なレンズの枚数を、より精度よく取得することができる。
【0026】
なお、本実施形態において、加工予測枚数情報取得手段は、加工済みレンズの加工枚数情報に基づいて、加工具における加工予測枚数情報を取得するための処理方法を更新することによって、加工予測枚数情報を取得するようにしてもよい。この場合、加工予測枚数情報取得手段は、加工具におけるレンズの加工可能枚数の予測に用いられる予測テーブルや演算式を更新することによって、加工具の加工予測枚数情報を取得する構成としてもよい。これによって、加工具が加工可能なレンズ枚数の予測精度が最適化される。
【0027】
また、この場合、加工予測枚数情報取得手段は、機械学習アルゴリズムによって訓練された数学モデルを更新することによって、加工具における加工予測枚数情報を取得する構成としてもよい。例えば、機械学習アルゴリズムによる所定の入力用データと出力用データを用いた訓練済みの数学モデルに対し、新たに取得した入力用データと出力用データを反映させることによって、学習済みの数学モデルを更新した、新規の数学モデルを作成してもよい。一例として、加工具を交換してから次の加工具に交換するまでの期間に得られた、加工済みレンズの材質情報と、加工済みレンズの加工枚数情報と、が入力用データおよび出力用データとして新たに取得されてもよい。加工予測枚数情報取得手段は、訓練によって各入力と各出力との相関データ(例えば、重み、バイアス、等)を更新することで、加工具が加工可能なレンズ枚数の予測精度を最適化してもよい。
【0028】
<出力手段>
本実施形態における眼鏡レンズ加工用装置は、出力手段(制御部80)を備える。出力手段は、加工具の加工予測枚数情報を出力する。出力手段は、加工具の加工予測枚数情報を、表示手段(例えば、モニタ5)への表示による出力、音声ガイドの発生による出力、メモリやサーバ等への保存による出力、プリンタ等への印刷による出力、等の少なくともいずれかによって出力してもよい。加工具の加工予測枚数情報が出力されることで、操作者は、所定の加工具で加工可能な精度のよいレンズの枚数を事前に把握することができ、調整や交換に対する準備を効率的に進めることができる。
【0029】
本実施形態において、出力手段は、加工具の加工予測枚数情報を、加工具が加工可能なレンズの総枚数として出力してもよい。例えば、このようなレンズの総枚数は、加工具が所定の材質のレンズを加工することが可能な総枚数として出力されてもよい。一例として、加工具がプラスチックレンズを加工することが可能な総枚数、加工具がポリカーボネイトレンズを加工することが可能な総枚数、等の少なくともいずれかが出力されてもよい。もちろん、例えば、このようなレンズの総枚数は、加工具が少なくとも2つの異なる材質のレンズを加工することが可能な総枚数として出力されてもよい。一例として、加工具が、プラスチックレンズとポリカーボネイトレンズを加工することが可能な総枚数、等が出力されてもよい。なお、この場合には、レンズの材質情報の割合等が考慮された総枚数が出力されてもよい。
【0030】
また、例えば、このようなレンズの総枚数は、加工具が所定の加工種類の加工を施すことが可能なレンズの総枚数として出力してもよい。一例として、加工具が粗加工を施すことが可能なレンズの総枚数、加工具が仕上げ加工を施すことが可能なレンズの総枚数、等の少なくともいずれかが出力されてもよい。もちろん、一例として、加工具が、粗加工と仕上げ加工を施すことが可能なレンズの総枚数、等が出力されてもよい。なお、この場合には、レンズに施す加工種類情報等が考慮された総枚数が出力されてもよい。
【0031】
また、本実施形態において、出力手段は、加工具の加工予測枚数情報を、レンズの材質情報に基づいた内訳として出力してもよい。言い換えると、出力手段は、加工具が加工可能なレンズの総枚数に関して、レンズの材質情報毎に、加工可能なレンズの枚数を出力してもよい。なお、この場合には、レンズの材質情報の割合等を考慮して、各々の内訳が出力されてもよい。同様に、本実施形態において、出力手段は、加工具の加工予測枚数情報を、加工具が施す加工種類情報に基づいた内訳として出力してもよい。言い換えると、出力手段は、加工具が加工可能なレンズの総枚数に関して、加工具の加工種類毎に、加工可能なレンズの枚数を出力してもよい。なお、この場合には、レンズに施す加工種類情報等を考慮して、各々の内訳が出力されてもよい。
【0032】
なお、本開示は、本実施形態に記載する装置に限定されない。例えば、下記実施形態の機能を行う端末制御ソフトウェア(プログラム)を、ネットワークまたは各種記憶媒体等を介してシステムあるいは装置に供給し、システムあるいは装置の制御装置(例えば、CPU等)がプログラムを読み出して実行することも可能である。
【0033】
<実施例>
本実施形態に係る眼鏡レンズ加工用装置の一実施例について説明する。以下では、眼鏡レンズ加工用装置の左右方向(水平方向)をX方向、上下方向(鉛直方向)をY方向、前後方向をZ方向として表す。
【0034】
図1は、眼鏡レンズ加工用装置の外観図である。玉型形状測定装置(以下、加工装置)1は、ベース2、筐体3、窓4、モニタ5、眼鏡枠形状測定ユニット20、ブロッカーユニット30、レンズ加工機構部10(図2参照)、等を備える。
【0035】
ベース2には、レンズ加工機構部10、眼鏡枠形状測定ユニット20、ブロッカーユニット30、等が一体的に取り付けられる。窓4は開閉可能であり、レンズをレンズ加工機構部10に出し入れするために用いる。モニタ5は、タッチパネル機能をもつディスプレイである。すなわち、モニタ5が操作部(コントローラ)として機能する。なお、モニタ5はタッチパネル式でなくてもよく、モニタ5と操作部とを別に設ける構成であってもよい。この場合には、マウス、ジョイスティック、キーボード、携帯端末、等の少なくともいずれかを操作部として用いてもよい。モニタ5から入力された操作指示に応じた信号は、後述する制御部80に出力される。
【0036】
<眼鏡枠形状測定ユニット>
眼鏡枠形状測定ユニット20は、フレームのリムに測定子を接触させ、測定子を移動させることで、玉型形状(この場合は、リムの内形形状)を測定するための構成を備えていてもよい。なお、眼鏡枠形状測定ユニット20の詳細な構成については、例えば、特開2014-52222号公報を参照されたい。
【0037】
<ブロッカーユニット>
ブロッカーユニット30は、レンズLEにおける光学特性を測定するための測定光学系、と、レンズLEにおける光学特性とは異なる情報(例えば、外形形状、印点、隠しマーク、等)を取得するための測定光学系と、を兼ねた光学系を備えていてもよい。また、ブロッカーユニット30は、レンズLEの前面に加工冶具であるカップを装着するための構成を備えていてもよい。なお、ブロッカーユニット30の詳細な構成については、例えば、特開2013-212573号公報を参照されたい。
【0038】
本実施例において、ブロッカーユニット30は、前述の光学系を利用して、デモレンズまたは型板の形状を撮像することで、玉型形状(この場合は、デモレンズまたは型板の外形形状)を測定するために用いることもできる。
【0039】
<レンズ加工機構部>
図2は、レンズ加工機構部10の概略図である。レンズ加工機構部10は、筐体3の内部に配置される。例えば、レンズ加工機構部10は、砥石群100、キャリッジ部200、レンズ形状測定ユニット400、レンズ加工ユニット500、等を備える。
【0040】
<砥石群>
砥石群100は、レンズLEを研削するための加工具として用いられる。砥石群100は、プラスチック用の粗砥石100a、高カーブレンズの仕上げ用砥石100b、平鏡面仕上げ用砥石100c、ヤゲン加工用および平加工用の仕上げ砥石100d、ガラス用の粗砥石100e、等を備える。砥石群100は、砥石回転軸101に取り付けられている。砥石回転軸101は、モータ102により回転される。後述するレンズチャック軸202に挟持されたレンズの周縁は、モータ102の駆動により回転する砥石群100に圧接されることで加工される。
【0041】
<キャリッジ部>
キャリッジ部200は、キャリッジ201、レンズチャック軸202、移動支基203、モータ(モータ210および220)、等を備える。キャリッジ201は、レンズチャック軸(レンズ回転軸)202を保持する。キャリッジ201は、左腕201Lと右腕201Rからなる。レンズチャック軸202は、レンズを保持する。レンズチャック軸202は、左チャック軸202Lおよび右チャック軸202Rからなる。
【0042】
キャリッジ201の左腕201Lには、左チャック軸202Lが回転可能かつ同軸に保持される。キャリッジ201の右腕201Rには、右チャック軸202Rが回転可能かつ同軸に保持される。右腕201Rにはモータ220が取り付けられており、モータ220を駆動させると、図示なきギヤ等の回転伝達機構が回転する。左右の左チャック軸202Lおよび202Rは、この回転伝達機構を介すことで、互いに同期して回転する。また、右腕201Rにはモータ210が取り付けられており、モータ210を駆動させると、右チャック軸202Rが左チャック軸202L側に移動する。これにより、レンズは左右の左チャック軸202Lおよび102Rに保持される。
【0043】
キャリッジ201は、移動支基203上に搭載される。移動支基203は、レンズチャック軸202と、砥石回転軸101に平行なシャフト(シャフト208および209)と、に沿ってキャリッジ201を移動させる。移動支基203の後部には、シャフト208と平行に延びる図示なきボールネジが取り付けられている。このボールネジは、モータ230の回転軸に取り付けられている。モータ230が駆動すると、キャリッジ201は移動支基203とともにX軸方向(すなわち、レンズチャック軸202の軸方向)に直線移動する。モータ230の回転軸には、キャリッジ201のX軸方向の移動を検出する図示なきエンコーダが設けられる。また、移動支基203には、Y軸方向(すなわち、左チャック軸202Lおよび右チャック軸202Rと、砥石回転軸101と、の軸間距離を変動する方向)に延びるシャフト205が固定される。移動支基203にはモータ240が固定され、モータ240の駆動がY軸方向に延びるボールネジ207に伝達される。キャリッジ201は、ボールネジ207の回転によって、Y軸方向に移動する。モータ240の回転軸には、キャリッジ201のY軸方向の移動を検出する図示なきエンコーダが設けられる。
【0044】
<レンズ形状測定ユニット>
レンズ形状測定ユニット400は、デモレンズに測定子を接触させ、測定子を移動させることで、玉型形状(この場合は、デモレンズの外形形状)を測定するための構成を備えていてもよい。例えば、デモレンズから玉型形状を測定する際には、デモレンズをレンズチャック軸202で挟持し、デモレンズの周縁を測定子の側面に接触させた状態で、デモレンズを回転させる。デモレンズの外形形状に応じて、測定子が後方向(レンズチャック軸202から測定子が離れる方向)に移動されるため、その移動位置を検知することで、デモレンズの外形形状を測定することができる。
【0045】
また、レンズ形状測定ユニット400は、デモレンズの外形形状を測定するための測定ユニットの他、レンズLEにおけるレンズ面形状(前面形状および後面形状の少なくともいずれか)を測定するための測定ユニットとして用いることができる。例えば、レンズLEのレンズ面形状を測定する際には、レンズLEをレンズチャック軸202で挟持し、レンズLEの前面あるいは後面に測定子の先端を接触させた状態で、レンズLEを回転させる。このとき、玉型形状に基づいて、レンズチャック軸202のY軸方向の移動が制御される。レンズLEの前面および後面における玉型形状に対応したX軸方向の位置を検知することで、レンズLEのレンズ面形状(例えば、レンズ面の玉型形状に対応するコバ位置、レンズ面のカーブ値、コバ面の傾斜角度、コバ面の厚み、等)を測定することができる。
【0046】
<レンズ加工ユニット>
レンズ加工ユニット500は、レンズLEに対して、穴加工、溝掘加工、および面取加工の少なくともいずれかを施す際に用いる。レンズ加工ユニット500には、レンズLEに穴加工を施す加工具としてのエンドミルと、レンズLEに溝掘りを施す加工具としての溝掘カッターと、の面取砥石と、が備えられてもよい。なお、レンズ加工ユニットの詳細な構成については、例えば、特開2017-177234号公報を参照されたい。
【0047】
<制御部>
図3は、加工用装置1の制御系を示す図である。制御部80は、一般的なCPU(プロセッサ)、RAM、ROM、等で実現される。例えば、CPUは、加工用装置1における各部の駆動を制御する。例えば、RAMは、各種の情報を一時的に記憶する。例えば、ROMには、CPUが実行する各種プログラムが記憶されている。なお、制御部80は、複数の制御部(つまり、複数のプロセッサ)によって構成されてもよい。
【0048】
例えば、制御部80には、モニタ5、スイッチ部6、各エンコーダ、各モータ(モータ102、210、220、230、240、等)、不揮発性メモリ85(以下、メモリ85)、等が電気的に接続されている。メモリ85は、電源の供給が遮断されても記憶内容を保持できる非一過性の記憶媒体であってもよい。例えば、メモリ85としては、ハードディスクドライブ、フラッシュROM、USBメモリ、等を使用することができる。
【0049】
メモリ85には、ブロッカーユニット30により測定されたレンズの外形形状、レンズ形状測定ユニット400により測定されたレンズの外形形状、眼鏡枠形状測定ユニット20により測定されたフレームの内形形状、等が記憶されてもよい。また、メモリ85には、レンズLEを加工具で加工し終えた加工済みレンズの枚数、加工済みレンズの材質、加工済みレンズに施した加工種類、等が記憶されてもよい。
【0050】
<制御動作>
加工用装置1において、レンズを加工する加工具は、新しいものを取り付けて以降、使用状況により加工性能が落ちていくため、適宜、交換等のメンテナンスを必要とする。そこで、本実施例では、加工具で加工するレンズの材質に関する情報を少なくとも利用して、その加工具が加工可能なレンズの枚数を予測し、操作者に報知する。以下、加工具として粗砥石100aを例に挙げ、これについて説明する。
【0051】
<加工具の交換>
操作者は、粗砥石100aに不具合(例えば、摩耗等)が生じたとき等に、粗砥石100aを交換する。例えば、このとき、粗砥石100aが砥石回転軸101から取り外され、新しい粗砥石100aが砥石回転軸101に取り付けられたことが、砥石回転軸101に設けられた図示なきマイクロスイッチにより検出されてもよい。また、例えば、このとき、粗砥石100aを交換したことが、操作者によるスイッチ部6の操作によって入力されてもよい。制御部80は、検出または入力された信号に基づいて、モニタ5に後述の入力画面40を表示する。
【0052】
<レンズ加工情報の取得>
図4は、レンズの材質と加工割合を入力するための入力画面40の一例である。入力画面40には、レンズの材質の数を入力するための数入力ボタン41、レンズの材質の種類を入力するための種類入力ボタン42、レンズの材質の加工割合を入力するための割合入力ボタン43、等が設けられてもよい。
【0053】
操作者は、粗砥石100aで加工するレンズの材質の数を数入力ボタン41から入力する。例えば、本実施例では、レンズの材質の数が2つであることが入力される。制御部80は、このような入力信号に基づいて、種類入力ボタン42と、割合入力ボタン43と、を対応する数に増減する。例えば、本実施例では、種類入力ボタン42と、割合入力ボタン43と、がそれぞれ2つずつ表示されるようになる。
【0054】
続いて、操作者は、粗砥石100aで加工するレンズの材質の種類を種類入力ボタン42から入力する。例えば、本実施例では、CR39レンズとポリカーボネイトレンズ(以下、PCレンズ)を材質とする2種類のレンズが指定される。また、操作者は、粗砥石100aで加工するレンズの材質の加工割合を割合入力ボタン43から入力する。例えば、本実施例では、CR39レンズとPCレンズを、それぞれ9:1の割合で加工することが入力される。
【0055】
なお、操作者が入力画面40にて入力する各々の条件は、操作者が決定した任意の値であってもよい。例えば、加工用装置1における使用状況の傾向、過去の加工実績、等を考慮した任意の値であってもよい。レンズの材質の加工割合は、おおよその割合であってもよい。操作者は、各々の条件を入力し終えると、設定ボタン44を操作する。
【0056】
<加工具の加工予測枚数情報の取得>
制御部80は、設定ボタン44からの操作信号に基づいて、粗砥石100aで加工することが可能なレンズの加工可能枚数を予測する。本実施例では、粗砥石100aの加工可能枚数を予測するための予測テーブルが、メモリ85に記憶されている。予測テーブルは、実験やシミュレーションを行い、様々な材質のレンズを事前に加工することで得たデータ等に基づいて作成されていてもよい。例えば、予測テーブルは、レンズの材質に応じて予め設定された材質係数を考慮して作成されていてもよい。例えば、CR39レンズやPCレンズの硬度、性質(熱硬化性または熱可塑性)、等の少なくともいずれかに応じて設定された材質係数が考慮されていてもよい。
【0057】
制御部80は、このような予測テーブルを用いて、設定されたレンズの材質と加工割合に基づいた、粗砥石100aによるレンズの加工可能枚数を予測する。すなわち、新しく交換された粗砥石100aで加工可能と予測されるレンズの枚数が取得される。例えば、本実施例では、粗砥石100aにおけるレンズの加工可能枚数が、530枚、等と取得される。
【0058】
<加工具の加工予測枚数情報の出力>
図5は、レンズの加工予測枚数(レンズの加工可能枚数)を報知するための表示画面の一例である。制御部80は、粗砥石100aによるレンズの加工可能枚数を取得すると、これを出力する。本実施例では、制御部80によって、レンズの加工可能枚数がモニタ5に表示される。一例として、制御部80は、レンズの加工可能枚数をメッセージ90(例えば、「加工可能枚数:530枚」等)として表示してもよい。操作者は、モニタ5に表示されるメッセージ90を確認することで、粗砥石100aにおけるレンズの加工可能枚数を把握して、レンズの加工を進めることができる。
【0059】
なお、上記では、粗砥石100aがレンズを加工することが可能な総枚数として、加工予測枚数を出力する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、粗砥石100aがレンズを加工することが可能な加工予測枚数の内訳として、加工予測枚数を出力する構成としてもよい。この場合、制御部80は、前述したレンズの材質係数と、レンズの材質毎の加工割合と、に基づいて、レンズの材質毎に取得されるレンズの加工可能枚数を出力してもよい。一例として、制御部80は、メッセージ90に「CR39レンズ:480枚、PCレンズ:50枚」等と表示してもよい。
【0060】
また、上記では、レンズに粗加工のみを施すことが可能な粗砥石100aを例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、レンズに仕上げ加工(ヤゲン加工および平加工)を施すことが可能な仕上げ砥石100dについても、同様に、レンズの加工可能枚数を取得し、これをモニタ5へ表示してもよい。この場合、仕上げ砥石100dに対しては、入力画面40に、レンズの材質の数、レンズの材質の種類、レンズの材質の割合、の各々を入力するためのボタンの他、レンズに施す加工種類を入力するためのボタンが表示されてもよい。例えば、レンズに施す加工種類は、レンズに施す加工種類の割合として入力可能になっていてもよい。
【0061】
制御部80は、入力された条件に基づいて、仕上げ砥石100dで加工することが可能なレンズの加工可能枚数を予測する。仕上げ砥石100dに対しては、その加工可能枚数を予測するための予測テーブルが、レンズの材質係数に加え、レンズに施す加工種類に応じて予め設定された加工種類係数を考慮して作成されていてもよい。例えば、ヤゲン加工と平加工で異なるレンズの研削量に応じて設定された加工種類係数が考慮されていてもよい。制御部80は、このような予測テーブルから、仕上げ砥石100dによるレンズの加工可能枚数を取得し、これメッセージ90として表示してもよい。
【0062】
なお、仕上げ砥石100dによるレンズの加工可能枚数は、仕上げ砥石100dがレンズを加工することが可能な総枚数として表示されてもよい。また、仕上げ砥石100dによるレンズの加工可能枚数は、仕上げ砥石100dがレンズに施すことが可能な加工種類の内訳として表示されてもよい。この場合、制御部80は、前述したレンズの加工種類係数と、レンズに施す加工種類の割合と、に基づいて、レンズに施す加工種類毎に取得されるレンズの加工可能枚数を出力してもよい。一例として、制御部80は、メッセージ90に「粗加工:300枚、仕上げ加工:230枚」等と表示してもよい。
【0063】
以上説明したように、例えば、本実施例における眼鏡レンズ加工用装置は、少なくとも眼鏡レンズの材質情報を含むレンズ加工情報を取得し、レンズ加工情報に基づいて、眼鏡レンズを加工するための加工具によって眼鏡レンズを加工可能と予測される加工予測枚数情報を取得し、加工予測枚数情報を出力する。これにより、所定の加工具で加工可能なレンズの枚数が、眼鏡レンズの材質の違いを考慮することで、精度よく予測される。また、操作者は、所定の加工具で加工可能な精度のよいレンズの枚数を事前に把握することができ、調整や交換に対する準備を効率的に進めることができる。
【0064】
また、例えば、本実施例における眼鏡レンズ加工用装置は、眼鏡レンズにおける少なくとも2つの異なる材質情報をレンズ加工情報として取得し、少なくとも2つの異なる材質情報を含むレンズ加工情報に基づいて、加工予測枚数情報を取得する。例えば、加工具にかかる負荷量等は、眼鏡レンズの材質毎に異なっているため、1つの加工具で複数の材質の眼鏡レンズを加工する場合であっても、その加工具で加工可能なレンズの枚数を、精度よく取得することができる。
【0065】
また、例えば、本実施例における眼鏡レンズ加工用装置は、眼鏡レンズにおける少なくとも2つの異なる材質情報の割合をレンズ加工情報として取得し、少なくとも2つの異なる材質情報の割合を含むレンズ加工情報に基づいて、加工予測枚数情報を取得する。加工具が複数の材質の眼鏡レンズを加工する割合を考慮することで、加工具で加工可能なレンズの枚数を、より精度よく取得することができる。
【0066】
また、例えば、本実施例における眼鏡レンズ加工用装置は、眼鏡レンズに加工具が施す加工種類情報をレンズ加工情報として取得し、少なくとも加工種類情報を含むレンズ加工情報に基づいて、加工予測枚数情報を取得する。これによって、特に、眼鏡レンズに複数種類の加工を施すことが可能な加工具においても、その加工具で加工可能なレンズの枚数を、より精度よく取得することができる。
【0067】
<変容例>
なお、本実施例では、操作者が入力画面40にて各々の条件に任意の値を入力する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、操作者が粗砥石100aを交換してから次の粗砥石100aに交換するまでの期間(つまり、粗砥石100aを取り換えるまでの期間)に得られる、粗砥石100aで実際に加工した加工済みレンズの材質および加工枚数に基づいて、各々の条件を自動的に入力する構成としてもよい。
【0068】
例えば、操作者は、レンズをレンズチャック軸202に挟持させ、レンズの周縁を加工するために必要な各々のデータ(例えば、レンズの玉型形状データ、レイアウトデータ、材質、加工モード、レンズ面形状データ、等)を入力する。続いて、操作者は、モニタ5に表示されたスイッチ部6から、レンズの加工を開始するための開始ボタンを選択する。制御部80は、開始ボタンからの入力信号に応じ、各々のデータに基づいた加工制御データを演算し、加工制御データに基づいてレンズの周縁を加工する。例えば、制御部80は、レンズチャック軸202の回転や移動を制御し、砥石群100が備える各々の砥石に対するレンズの相対的な位置を調整することで、レンズの周縁を粗加工する。
【0069】
このとき、制御部80は、操作者がレンズを加工する毎に、粗砥石100aが加工した加工済みレンズの枚数を、順次、メモリ85に記憶させてもよい。制御部80がメモリ85への記憶を繰り返すことで、粗砥石100aを取り換えるまでの期間に、粗砥石100aが加工した加工済みレンズの材質毎の加工枚数が蓄積される。制御部80は、このように蓄積されたデータに基づいて、加工済みレンズの材質の数、加工済みレンズの材質の種類、および加工済みレンズの材質の加工割合を自動的に入力し、新しく取り付けた粗砥石100aで加工することが可能なレンズの加工可能枚数を予測してもよい。
【0070】
なお、本実施例では、レンズの材質(レンズの材質の割合)に基づいた、または、レンズの材質とレンズに施す加工種類(レンズに施す加工種類の割合)とに基づいた、予測テーブルを用いる構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。これらの予測テーブルは、レンズの材質およびレンズに施す加工種類に加えて、さらに、各々の加工具(ここでは、粗砥石100aまたは仕上げ砥石100d)の形状情報を考慮して作成されたものであってもよい。一例として、粗砥石100aの、砥石径、砥粒径、形状(例えば、円柱形状)、加工種類(例えば、粗加工用)、等の少なくともいずれかを考慮して作成されたものであってもよい。加工具毎に異なる加工具径や形状等を考慮することで、加工具で加工可能なレンズの枚数を、より精度よく取得することができる。
【0071】
なお、本実施例では、粗砥石100aの加工予測枚数を、予測テーブルを用いて取得する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、制御部80は、粗砥石100aの加工予測枚数を取得するための演算式を用いて、その加工可能枚数を予測する演算処理を行ってもよい。演算式は、予測テーブルと同様に、レンズの材質に応じて設定された材質係数を考慮して、予め作成され、メモリ85に記憶されていてもよい。
【0072】
なお、本実施例では、粗砥石100aの加工予測枚数を、予め設定された予測テーブル(あるいは、演算式)を用いて取得する構成を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、粗砥石100aの加工予測枚数は、逐次、更新される予測テーブル(あるいは、演算式)等を用いて取得する構成としてもよい。この場合、制御部80は、粗砥石100aを取り換えるまでの期間に、粗砥石100aが実際に加工した加工済みレンズの材質毎の加工枚数と、粗砥石100aで加工可能と予測されていたレンズの枚数(加工予測枚数)と、に基づいて、予測テーブルにおける材質係数を変化させることで、予測テーブルを更新してもよい。これによって、粗砥石100aの加工可能枚数の予測精度が最適化される。
【0073】
また、この場合、制御部80は、機械学習アルゴリズムによって予測テーブルを訓練することで、予測テーブルを更新してもよい。例えば、順伝播型のニューラルネットワークを利用して、所定のデータ(ここでは、粗砥石100aによって加工された加工済みレンズの材質毎の加工枚数)を入力するための入力層と、予測したいデータ(ここでは、粗砥石100aによるレンズの加工可能枚数)を生成するための出力層と、入力層と出力層の間の1つ以上の隠れ層と、に基づき、材質係数の重みやバイアスを調整することで、予測テーブルを更新してもよい。
【0074】
つまり、本実施例では、機械学習アルゴリズムによって訓練された、入力データと出力データとの関係を予測するための数学モデルに、少なくとも、加工済みレンズの材質と、加工済みレンズの加工枚数と、を入力することによって、数学モデルから粗砥石100aの加工可能枚数を予測する構成としてもよい。
【0075】
例えば、これらのように、加工具において実際に加工された加工済みレンズの加工枚数を取得し、加工済みレンズの加工枚数に基づいて予測のための処理方法を更新し、加工具における加工予測枚数情報を取得することによって、加工具が加工可能なレンズ枚数の予測精度が最適化され、適宜、精度よく加工可能枚数を取得することができるようになる。
【0076】
なお、本実施例では、砥石群100が備えた、粗砥石100aと、仕上げ砥石100dと、におけるレンズの加工予測枚数を取得する場合について例を挙げて説明したが、他の砥石においても同様に考えることができる。例えば、砥石群100が備えた、仕上げ用砥石100bと、平鏡面仕上げ用砥石100cと、ガラス用の粗砥石100eと、においても、レンズの材質、レンズに施す加工種類、加工具(ここでは、砥石)の形状情報、等の少なくともいずれかに基づいて、レンズの加工予測枚数を取得することができる。もちろん、レンズ加工ユニット500が備えた、エンドミルと、溝掘カッターと、面取砥石と、においても、レンズの材質、レンズに施す加工種類、加工具の形状情報、等の少なくともいずれかに基づいて、レンズの加工予測枚数を取得することができる。
【0077】
また、本実施例においては、加工具がレンズに複数種類の加工を施すことが可能な構成として、仕上げ砥石100dにおけるヤゲン加工と平加工を例に挙げて説明したが、加工具がレンズにいずれの加工種類の加工を施すことが可能な組み合わせであっても、レンズの加工予測枚数の取得について同様に考えることができる。一例として、加工具は、レンズに粗加工と仕上げ加工を施すことが可能な加工具であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 眼鏡レンズ加工用装置
10 レンズ加工機構部
40 入力画面
80 制御部
85 メモリ
100 砥石群
200 キャリッジ部
500 レンズ加工ユニット
図1
図2
図3
図4
図5