(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】液状マスターバッチ組成物、熱可塑性樹脂組成物、及び成形体
(51)【国際特許分類】
C08J 3/22 20060101AFI20231003BHJP
C08L 101/12 20060101ALI20231003BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20231003BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20231003BHJP
C08J 5/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
C08J3/22 CER
C08L101/12
C08K3/34
C08K3/22
C08J5/00 CEZ
(21)【出願番号】P 2019106328
(22)【出願日】2019-06-06
【審査請求日】2022-04-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 悠太
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 誠
(72)【発明者】
【氏名】草間 大輔
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-269141(JP,A)
【文献】特開2002-173580(JP,A)
【文献】特開2003-003075(JP,A)
【文献】特開2001-072842(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J3/00-3/28、99/00
C08K3/00-13/08、C08L1/00-101/14、
C08J5/00-5/02、5/12-5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
25℃における粘度が8,000mPa・s未満、かつ数平均分子量(Mn)が100~2000である液体樹脂(A)またはアセチルクエン酸トリブチル、及び平均粒径が5.0μm以上10μm未満であるブロッキング防止剤(C)を含み、
液体樹脂(A)は、脂肪酸ポリエステル樹脂、ポリアルキレングリコール樹脂、及びポリエーテルエステル樹脂からなる群より選ばれる少なくともいずれかであり、
ブロッキング防止剤(C)は、非晶質シリカ、非晶質シリカ‐アルミナ、及びアルミノケイ酸塩からなる群より選ばれる少なくともいずれかであり、
液状マスターバッチ組成物100重量%中の液体樹脂(A)の含有率が50重量%以上である、液状マスターバッチ組成物。
【請求項2】
粒度が50μm未満である、請求項
1記載の液状マスターバッチ組成物。
【請求項3】
熱可塑性樹脂(D)100重量部に対し、請求項1
または2記載の液状マスターバッチ組成物を0.1重量部~10重量部含有する熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂(D)が、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、シクロオレフィン・コポリマー(COC)樹脂、及びフッ素樹脂からなる群より選ばれる少なくともいずれかである請求項
3項記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項
3または4記載の熱可塑性樹脂組成物より成形されてなる成形体。
【請求項6】
請求項
3または4記載の熱可塑性樹脂組成物より成形されてなるフィルム。
【請求項7】
静摩擦係数および動摩擦係数がいずれも0.5未満である、請求項
6記載のフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状マスターバッチ組成物、それを用いた熱可塑性樹脂組成物、及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、食品包装等の用途を中心にプラスチックフィルムが広く使用されている。一般に、これらのプラスチックフィルムは、重ね合わせるとフィルム同士が密着して剥がれ難くなる(ブロッキング)という性質をもつ。このような問題を解消するために、熱可塑性樹脂にブロッキング防止剤を練りこんだ固形マスターバッチが使用されている。
【0003】
これまでの固形マスターバッチには、十分なブロッキング防止性を得るために、比較的粒径の大きいブロッキング防止剤が使用されてきたが、透明性が損なわれるといった課題があった。
【0004】
また、ブロッキング防止剤を含む熱可塑性樹脂を延伸し、フィルム化する場合、フィルム表面にボイド(主剤樹脂からブロッキング防止剤の剥離)が生じるといった問題がある。一般に、ブロッキング防止剤の粒径が大きいものであるほど、ボイドを生じやすいことが知られている。発生したボイドの大きさによっては、延伸後の巻き取り工程などにおいて、ブロッキング防止剤の粒子が脱落し、機械やフィルムを汚染するなどの問題を引き起こす恐れがある。
【0005】
上記のような問題を解消するべく、特許文献1では、P型ゼオライトをカルシウムなどの2価金属でイオン交換した後、焼成することにより得られるイオン交換ゼオライト(非晶質ゼオライト)が提案されている。また、特許文献2では、表面処理剤成分としてアミノアルキルアルコキシシランを含み、コールターカウンター法で測定した体積基準の中位径(D50)が1.9~25.0μmであるシリカ・アルミナ非晶質粒子からなるブロッキング防止剤が提案されている。しかしながら、いずれの提案も固形マスターバッチでの使用を想定したものであり、分散性が低いために比較的大きな粒子が残ることにより透明性が損なわれ、ボイドの発生が多かった。また、PETやPMMA、PCなどのTgの比較的高い樹脂に関しては、ブロッキング防止性についても不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-078124号公報
【文献】特開平2-225314号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、優れたブロッキング防止性を有しながら、固体のブロッキング防止用マスターバッチより高い透明性で、ボイドの発生が少なく、かつIV低下の少ない液状マスターバッチ組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、25℃における粘度が8,000mPa・s未満、かつ数平均分子量(Mn)が100~2000である液体樹脂(A)またはアセチルクエン酸トリブチル、及びブロッキング防止剤(C)を含有する液状の組成物であることにより、優れたブロッキング防止性と、高い透明性を有し、ボイドの発生が少なく、かつIV低下の少ない液状マスターバッチ組成物を提供できることを見出した。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、特定粘度の液体樹脂(A)またはアセチルクエン酸トリブチルとブロッキング防止剤(C)を含む液状マスターバッチであることにより、従来の固体マスターバッチと比較して、製造時の熱劣化が抑制でき、優れたブロッキング防止性と高い透明性、ボイドの抑制、溶融粘度の低下(IV低下)が少ないといった効果を奏する。更に、特定の粘度の液体樹脂(A)またはアセチルクエン酸トリブチルを用いることで、ブロッキング防止剤(C)が成形体近傍に存在しやすくなり、従来の液体マスターバッチと比較して、より高いブロッキング防止性を発現することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の液状マスターバッチ組成物、熱可塑性樹脂組成物、及び成形体について詳細を説明するが、これに限定されない。
また、マスターバッチとは、樹脂に高濃度の添加剤を分散させた樹脂組成物であって、成形体の形成時に規定の倍率で主剤樹脂と混合し、プラスチックに機能を付与する役割を有する。
本発明における、液状マスターバッチ組成物とは、25℃において液状のマスターバッチのことを指す。
【0011】
《液状マスターバッチ組成物》
本発明の液状マスターバッチ組成物は、25℃における粘度が8,000mPa・s未満、かつ数平均分子量(Mn)が100~2000である液体樹脂(A)またはアセチルクエン酸トリブチル、及びブロッキング防止剤(C)を含む。この場合の「液状」とは、25℃において液状であることを指す。
このような液状マスターバッチ組成物と、後述する熱可塑性樹脂(D)とを混合して用いることで、ブロッキング防止性、透明性、ボイド個数、フィルム製造適性に優れた成形体を形成することができる。
【0012】
<液体樹脂(A)またはアセチルクエン酸トリブチル>
本発明の液体樹脂(A)またはアセチルクエン酸トリブチルは、ブロッキング防止剤(C)を分散する分散媒の役割であり、加えて、ブロッキング防止剤が成形体表面に存在しやすくなり、ブロッキング防止性の効果発現を促進する効果を奏する。また、本発明の液体樹脂(A)は、25℃における粘度が8,000mPa・s未満、であることを特徴とし、10~5,000mPa・sがより好ましく、100~3,000mPa・sが更に好ましい。上記範囲内であると、ブロッキング防止性の点で好ましい。本明細書における粘度はJIS K7117-1:1999に従ってB型粘度計を用いて25℃で測定した値である。
【0013】
また、液体樹脂(A)は、液状マスターバッチ組成物100重量%中、液体樹脂(A)を50重量%以上含むことが好ましく、より好ましくは60~90重量%、さらに好ましくは70~80重量%である。この範囲内であることにより、製造時の撹拌および分散工程で流動性を維持でき、分散性の点で好ましく、それにより、成形体の透明性が高いものとすることができる。
【0014】
また、液体樹脂(A)は、数平均分子量(Mn)が、100~3000であることが好ましく、200~2000であることがより好ましく、500~1500がさらに好ましく、1000~1500が特に好ましい。Mnが200以上であることによりフィルム製造適性とボイド個数の点で好ましく、Mnが2000以下であることにより、分散性とブロッキング防止性の点で好ましい。
【0015】
液体樹脂(A)の凝固点は、-5℃以下が好ましく、-50℃~-10℃がより好ましい。
【0016】
液体樹脂(A)としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等のエポキシ系樹脂、脂肪酸ポリエステル樹脂、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリエーテルエステル樹脂、またはアセチルクエン酸トリブチル等が挙げられるが、主剤樹脂がポリエチレンテレフタレート(PET)やポリカーボネートなどの高い成型温度が必要な場合にも、耐熱性が高く、帯電防止性も優れる点で、脂肪酸ポリエステル樹脂、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリエーテルエステル樹脂、またはアセチルクエン酸トリブチルが好ましい。
【0017】
[脂肪酸ポリエステル樹脂]
脂肪族多価カルボン酸と多価アルコールとの反応によって得られるポリエステル樹脂である。
【0018】
脂肪酸ポリエステル樹脂を構成する脂肪族多価カルボン酸は、カルボキシル基を2つ以上有する脂肪族カルボン酸であれば、特に制限されるものではなく、例えば、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、トリカルバリル酸、1,3,6-ヘキサントリカルボン酸、1,3,5-ヘキサントリカルボン酸等の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。これらの脂肪族カルボン酸は、1種単独で用いても良く、2種以上を用いても良い。
【0019】
脂肪酸ポリエステル樹脂を構成する多価アルコールは、水酸基を2つ以上有するアルコールであれば、特に制限されるものではなく、例えば、エチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-オクタデカンジオール等の脂肪族グリコール及びジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても良く、2種以上を用いても良い。
【0020】
脂肪酸ポリエステル樹脂の具体例として、アデカサイザーPN‐170(ADEKA社
製、25℃での粘度800mPa・s、凝固点-15℃、アジピン酸ポリエステル樹脂)、アデカサイザーP-200(ADEKA社製、25℃での粘度2,600mPa・s、凝固点-20℃、アジピン酸ポリエステル樹脂)、アデカサイザーPN-250(ADEKA社製、25℃での粘度4,500mPa・s、凝固点-20℃、アジピン酸ポリエステル樹脂)等が挙げられる。
【0021】
[ポリアルキレングリコール樹脂]
ポリアルキレングリコール樹脂は一般的には炭素数が1~6の繰り返し単位を有するアルキレングリコールから構成されることが多いが、25℃における粘度が10,000mPa・s以下である限り、様々なポリアルキレングリコールを使用することができる。相溶性、吸水性の観点から、炭素数が2~4の繰り返し単位を有するポリアルキレングリコール樹脂が好ましい。
【0022】
ポリアルキレングリコール樹脂の具体例としては、例えば、いずれも繰り返し単位中の炭素数が2であるポリエチレングリコールや、いずれも繰り返し単位中の炭素数が3であるポリトリメチレングリコールおよびポリプロピレングリコールや、いずれも繰り返し単位中の炭素数が4であるポリテトラメチレングリコールおよびポリブチレングリコール等が挙げられる。
【0023】
[ポリエーテルエステル樹脂]
ポリエーテルエステル樹脂は、上記脂肪族多価カルボン酸と上記アルキレングリコールをエステル化させたものである。
【0024】
ポリエーテルエステル樹脂の具体例として、アデカサイザーRS‐107(ADEKA社製、25℃での粘度20mPa・s、凝固点-47℃、アジピン酸エーテルエステル系樹脂)、アデカサイザーRS-700(ADEKA社製、25℃での粘度30mPa・s、凝固点-53℃、ポリエーテルエステル系樹脂)等が挙げられる。
【0025】
<ブロッキング防止剤(C)>
本発明のブロッキング防止剤(C)は、平均粒径が1.0μm以上10μm未満であり、4.0μm以上8.0μm未満のものが好ましい。上記範囲内にあることで、ブロッキング防止性の点で好ましい。
なお、本明細書で記載する「粒径」とは、体積平均のメディアン径である。ブロッキング防止剤の粒径は、例えば、レーザー回折法粒度測定装置を用いて、ブロッキング防止剤を分散させた溶媒を測定、解析することで、算出することができる。
【0026】
ブロッキング防止剤(C)の配合量としては、液状マスターバッチ組成物100重量%中、5~30重量%が好ましく、10~20重量%が更に好ましい。上記範囲内にあることで、透明性、ボイド個数の点で好ましい。
【0027】
ブロッキング防止剤(C)の種類としては、例えば、シリカ、アルミナ、アルミノケイ酸塩、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、カオリン、酸化チタン、フッ化カルシウム、ゼオライト、硫化モリブデン等の無機微粒子、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリアクリル、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリフェニレンスルフィド、熱可塑性エラストマー等の有機微粒子、不飽和脂肪酸アマイド、飽和脂肪酸アマイド、ポリエチレンワックス、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ステアリルステアレート、ステアリン酸モノグリセリド等の滑剤が挙げられるが、フィルム表面に物理的に凹凸を生じさせられる点で無機微粒子が好ましく、なかでも優れたブロッキング防止性を発現できるといった点で非晶質シリカ、非晶質シリカ‐アルミナ、アルミノケイ酸塩が更に好ましく、吸湿性の低いアルミノケイ酸塩が特に好ましい。
なお、一般的に充填剤として用いられるものであっても、ブロッキング防止効果を有するものは、本発明におけるブロッキング防止剤(C)に相当する。
【0028】
本発明の液状マスターバッチ組成物には、本発明の効果を阻害しない範囲で、アルカリ金属やアルカリ土類金属または亜鉛の金属石けん、ハイドロタルサイト、ハロゲン系、リン系または金属酸化物等の難燃剤、エチレンビスアルキルアマイド等の滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤、着色剤などを含有させることができる。
【0029】
<液状マスターバッチ組成物の製造方法>
本発明における液状マスターバッチ組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、液状樹脂(A)とブロッキング防止剤(C)と、更に必要に応じて各種添加剤とを加え、ヘンシェルミキサーやタンブラー、ディスパー等で混合し、シルバーソンミキサー(シルバーソン社製)を用いて分散することで、液状マスターバッチ組成物を得ることができる。分散装置は、上記以外にもニーダー、ロールミル、ボールミル、サンドミル等、任意の装置を使用することができる。成型加工が容易で分散性に優れるといった理由からシルバーソンミキサーやロールミルを用いることが好ましい。
【0030】
また、粗大粒子によるブツやゲル物の発生を抑制でき、フィルム上で均一なブロッキング防止性を得ることができるという点から、液状マスターバッチ組成物の粒度は、100μm未満が好ましく、80μm未満がさらに好ましく、50μm未満が特に好ましい。
【0031】
《成形体》
成形体は、本発明の液状マスターバッチ組成物を含む熱可塑性樹脂組成物より形成してなる。
【0032】
熱可塑性樹脂組成物は、成形体形成用として、例えば、ペレット状、粉末状、顆粒状あるいはビーズ状等の形状とすることもでき、中でもペレット状が好ましい。
熱可塑性樹脂組成物をペレット状とするための製造方法としては、押出機による押出成形の後、ペレタイザーを用いてカッティングするといった一般的な方法をとることができ、また、これらのペレット状成形体を粉砕することで、粉末状あるいは顆粒状の成形体を得ることができる。同様に、押出成形した後、アンダーウォーターカッター等でカッティングすることにより、ビーズ状の成形体を得ることができる。
【0033】
また、液状マスターバッチ組成物と熱可塑性樹脂(D)とを溶融混練した熱可塑性樹脂組成物とし、そのまま成形することもできる。
【0034】
このように、液状マスターバッチ組成物を含む熱可塑性樹脂組成物を成形加工して成形体を得る際の成形方法は、キャップ等の成型に用いられる射出成型や、容器やボトルなどの成型に用いられる押出成型、ブロー成型などを用いることができ、特に限定されるものではないが、高い帯電防止性、透明性が要求されることからTダイ成形やインフレーション成形によるシートやフィルム形状のものが好適である。
【0035】
成形体100重量%中のブロッキング防止剤(C)の含有量は、0.05重量%以上、1重量%以下であることが好ましく、0.1重量%以上、0.5重量%以下であることが更に好ましい。0.05重量%以上であることにより、ブロッキング防止性の点で好ましく、1重量%以下であることにより、フィルム製造適性、ボイド個数の点で好ましい。
【0036】
「熱可塑性樹脂組成物」
熱可塑性樹脂組成物は、本発明の液状マスターバッチ組成物と、熱可塑性樹脂(D)を含有し、成形体を形成するための樹脂組成物である。
また、熱可塑性樹脂(D)100重量部に対する液状マスターバッチ組成物の含有量は、フィルム製造適性、透明性、及びボイド個数の点より、0.1~10重量部であることが好ましく、0.2~5重量部が特に好ましい。
【0037】
<熱可塑性樹脂(D)>
本発明の熱可塑性樹脂(D)((以下、単に「樹脂(D)」と略記することがある)は、成形体を形成する際、液状マスターバッチ組成物と一緒に配合して使用する主剤樹脂であって、25℃における粘度が8,000mPa・s未満である液体樹脂(A)は除く。
【0038】
熱可塑性樹脂(D)としては特に制限はなく、ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン樹脂や、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、ポリアミド樹脂、シクロオレフィン・コポリマー(COC)樹脂、塩化ビニル樹脂またはフッ素樹脂等の樹脂が使用できる。一般に、成型時に高い温度を要するため、耐熱性が高く、また、高い透明性が要求される、Tgの低い樹脂の方がブロッキング防止性に優れる等の理由から、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、シクロオレフィン・コポリマー(COC)樹脂、またはフッ素樹脂、等が好適に使用できる。
【0039】
液体樹脂(A)と、熱可塑性樹脂(D)の好ましい組合せとしては、液体樹脂(A)が、ポリアルキレングリコール樹脂である場合、熱可塑性樹脂(D)は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、またはポリアミド樹脂であることが好ましく、特に好ましくは、ポリエステル樹脂である。また、液体樹脂(A)が、脂肪族ポリエステル樹脂である場合、熱可塑性樹脂(D)が、ポリカーボネート樹脂である場合が好ましい。
液体樹脂(A)が、ポリアルキレングリコールエステル樹脂である場合、熱可塑性樹脂(D)は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、またはポリアミド樹脂であることが好ましく、特に好ましくは、ポリエステル樹脂である。
アセチルクエン酸トリブチルである場合、熱可塑性樹脂(D)は、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、またはポリアミド樹脂であることが好ましく、特に好ましくは、ポリアミド樹脂である。
これらは、アクリル樹脂の中でも、ポリメチルメタクリレート樹脂が好ましい。
【0040】
[アクリル樹脂]
アクリル樹脂は、以下に例示する(メタ)アクリル系モノマーを重合することによって得ることができる。モノマーとしては、例えば、アルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマー、グリシジル基を有する(メタ)アクリル系モノマー、酢酸ビニルやプロピオン酸ビニル等のビニルエステル、無水マレイン酸、ビニルエーテル、スチレン等が挙げられる。尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは「アクリルおよび/またはメタクリル」を、「(メタ)アクリレート」とは「アクリレートおよび/またはメタクリレート」を、それぞれ意味する。具体的には、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂が好ましい。
【0041】
[ポリエステル樹脂]
ポリエステル樹脂は、カルボン酸成分(カルボキシル基を有する化合物)と水酸基成分(水酸基を有する化合物)とを重合することによって得ることができる。
【0042】
ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分としては、安息香酸、p-tert-ブチル安息香酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、無水コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、テトレヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、テトラクロル無水フタル酸、1、4-シクロヘキサンジカルボン酸、無水トリメリット酸、メチルシクロヘキセントリカルボン酸無水物、無水ピロメリット酸、ε-カプロラクトン等が挙げられる。
【0043】
ポリエステル樹脂を構成する水酸基成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1、3-ブチレングリコール、1、6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリエチレングリコール、3-メチルペンタンジオール、1、4-シクロヘキサンジメタノール等のジオールの他、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の水酸基を3つ以上有する多官能アルコールが挙げられる。
【0044】
[ポリアミド樹脂]
ポリアミド樹脂は、例えば、上述したカルボン酸成分と、アミノ基を2個以上有する化合物を反応させることによって得ることができる。例えば、カルボン酸成分と、アミノ基を2個以上有する化合物(Am)とを脱水縮合反応させて得ることができる。
【0045】
アミノ基を2個以上有する化合物(Am)としては、公知のものを使用することができ、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン等の脂肪族ポリアミン;イソホロンジアミン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジアミン等の脂環式ポリアミンを含む脂肪族ポリアミン;フェニレンジアミン、キシリレンジアミン等の芳香族ポリアミン;1,3-ジアミノ-2-プロパノール、1,4-ジアミノ-2-ブタノール、1-アミノ-3-(アミノメチル)-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン-1-オール、4-(2-アミノエチル)-4,7,10-トリアザデカン-2-オール、3-(2-ヒドロキシプロピル)-o-キシレン-α,α’-ジアミン等のジアミノアルコールが挙げられる。
【0046】
[ポリカーボネート樹脂]
ポリカーボネート樹脂は、芳香族ジヒドロキシ化合物と、ホスゲン或いは炭酸ジエステル等のカーボネート前駆体とを反応させることにより容易に製造される。反応は公知の反応、例えば、ホスゲンを用いる場合は界面法により、また炭酸ジエステルを用いる場合は溶融状で反応させるエステル交換法により得ることができる。
【0047】
上記芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類4,4´-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4´-ジヒドロキシ-3,3´-ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4´-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4´-ジヒドロキシ-3,3´-ジメチルジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4´-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4´-ジヒドロキシ-3,3´-ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4´-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4´-ジヒドロキシ-3,3´-ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。これらは単独または2種以上混合して使用される。これらの他にピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4´-ジヒドロキシジフェニル類を混合して使用してもよい。更に、フロログルシン等の多官能性化合物を併用した分岐を有する芳香族ポリカーボネート樹脂を使用することも出来る。
【0048】
前記芳香族ジヒドロキシ化合物と反応させるカーボネート前駆体としては、例えば、ホスゲン、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等のジアリールカーボネート類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネート類等が挙げられる。
【0049】
ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、15,000~30,000が好ましく、16,000~27,000がより好ましい。なお、本明細書における粘度平均分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算される値である。
【0050】
ポリカーボネート樹脂の具体例としては、ユーピロンH-4000(三菱エンジニアリングプラスチック社製、粘度平均分子量16,000)ユーピロンS-3000(三菱エンジニアリングプラスチック社製、粘度平均分子量23,000)、ユーピロンE-2000(三菱エンジニアリングプラスチック社製、粘度平均分子量27,000)等が挙げられる。
【0051】
[シクロオレフィン・コポリマー(COC)樹脂]
COC樹脂は、主鎖および又は側鎖に脂環構造を有する非晶性の熱可塑性重合体である。脂環構造の種類としては、例えば、ノルボルネン重合体、単環の環状オレフィン重合体、環状共役ジエン重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及び、これらの水素化物等が挙げられる。中でも成形性と透明性に優れることから、ノルボルネン重合体が好適に用いることができる。ノルボルネン構造を有する単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3,7-ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8-ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ-3-エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ-3-エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などを挙げることができる。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基などを挙げることができる。
【0052】
COC樹脂の具体例としては、JSR ARTON F4520(JSR社製、ノルボルネン共重合体)等が挙げられる。
【0053】
[フッ素樹脂]
フッ素樹脂は含フッ素モノマーの共重合によって得ることができる。含フッ素モノマーとしてはフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブチレン、パーフルオロアクリル酸、パーフルオロメタクリル酸、アクリル酸又はメタクリル酸のフルオロアルキルエステル等のフッ素含有エチレン性不飽和化合物や シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル等のフッ素非含有エチレン性不飽和化合物が挙げられる。また含フッ素モノマーと共重合するモノマーとしてはブタジエン、イソプレン、クロロプレン等のフッ素非含有ジエン化合物でもよい。フッ素樹脂としては例えば、フッ化ビニリデンのホモポリマーであるポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF樹脂)、テトラフルオロエチレンのホモポリマーであるポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE樹脂)、エチレンとテトラフルオロエチレンの共重合体であるエチレン-テトラフルオロエチレンコポリマー(ETFE樹脂)等が挙げられる。
【0054】
フッ素樹脂の具体例としてKFポリマーW#1100(クレハ社製、PVDF樹脂)、フルオンPTFE CD123E(旭硝子社製、PTFE樹脂)、フルオンETFE C-55AP(旭硝子社製、ETFE樹脂)等が挙げられる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例に基づき本発明を更に詳しく説明するが、本発明は実施例に限定されるも
のではない。実施例中、部および%は、特に断りがない場合は、それぞれ、重量部および
重量%を表す。
【0056】
<粘度>
粘度は、JIS K7117-1:1999に従ってB型粘度計を用いて25℃で測定した値である。
【0057】
<粒度>
粒度は、JISK5600-2-5に従い、グラインドメーターを用いて25℃で測定した値である。
【0058】
<数平均分子量>
数平均分子量とは、標準ポリスチレン分子量換算による数平均分子量であり、高速液体クロマトグラフィー(東ソー株式社製、「HLC-8320GPC」)に、カラム:TSKgel SuperMultipore HZ-M(排除限分子量:2×106、理論段数:16,000段/本、充填剤材質:スチレン-ジビニルベンゼン共重合体、充填剤粒径:4μm、カラム温度40℃)を2本直列で用いることにより測定されるものである。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーである。
【0059】
<粘度平均分子量>
粘度平均分子量とは、溶媒としてメチレンクロライドを用い25℃で測定した溶液粘度より換算された値である。
【0060】
<平均粒径>
平均粒径は、下記の装置を用いて、コールターカウンター法により測定を行った。
装置:ベックマン・コールター社製精密粒度測定装置「Multisizer 4e」
【0061】
使用した材料を以下に列挙する。
<液体樹脂>
(A1):ユニオールD-1200(日油社製、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリプロピレングリコール樹脂、数平均分子量1200、粘度200mPa・s)
(A2):PEG-400(三洋化成工業社製、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリプロピレングリコール樹脂、数平均分子量400、粘度90mPa・s)
(A3):ユニオールD-400(日油社製、ポリアルキレングリコール樹脂、ポリプロピレングリコール樹脂、数平均分子量400、粘度100mPa・s)
(A4):アデカサイザーRS-107(ADEKA社製、エーテルエステル樹脂、アジピン酸エーテルエステル樹脂、数平均分子量430、粘度20mPa・s)
(A5):アデカサイザーPN-6810(ADEKA社製、アセチルクエン酸トリブチル、数平均分子量190、粘度43mPa・s)
(A6):アデカサイザーPN-250(ADEKA社製、脂肪酸ポリエステル樹脂、アジピン酸ポリエステル樹脂、数平均分子量2100、粘度4,500mPa・s)
(A’1):アデカサイザーPN-350(ADEKA社製、脂肪酸ポリエステル樹脂、アジピン酸ポリエステル樹脂、数平均分子量4500、粘度10,000mPa・s)
【0062】
<ブロッキング防止剤(C)>
(C1):シルトンAMT-100(水澤化学工業社製、アルミノケイ酸塩、ソジウムアルミノシリケート、平均粒径7.2μm)
(C2):シルトンJC-70(水澤化学工業社製、アルミノケイ酸塩、ソジウムカルシウムアルミノシリケート、平均粒径6.8μm)
(C3):KMP-600(信越化学工業社製、非晶質シリカ、平均粒径5.0μm)
(C4):シルトンAMT-20S(水澤化学工業社製、アルミノケイ酸塩、ソジウムアルミノシリケート、平均粒径1.7μm)
(C5):エポスターMA1006(日本触媒社製、アクリル系樹脂架橋物、平均粒径6.0μm)
(C’1):KMP-602(信越化学工業社製、非晶質シリカ、平均粒径30μm)
【0063】
<熱可塑性樹脂(D)>
(D1):ポリエステルMA-2101M(ポリエステル樹脂、ユニチカ製、粘度平均分子量20,000)
(D2):ユーピロンS-3000(ポリカーボネート樹脂、三菱エンジニアリングプラスチック社製、粘度平均分子量23,000)
(D3):アクリペットVH(ポリメチルメタクリレート系樹脂、三菱ケミカル社製、粘度平均分子量50,000)
(D4):アミランCM3001-N(ポリアミド樹脂、東レ製、粘度平均分子量50,000)
【0064】
<染料(E)>
(E1):スミプラストレッドHL2B(ソルベントレッド151、アンスラキノン系、住友化学製)
【0065】
[実施例1]
(液状マスターバッチ組成物(S-1)の製造)
液体樹脂(A1)90重量部、及びブロッキング防止剤(C1)10重量部を、シルバーソンミキサー(シルバーソン社製)にて混合、分散し、液状マスターバッチ組成物(S-1)を得た。
【0066】
[実施例2~12および比較例1~2]
(液状マスターバッチ組成物(S-2~12)及び(T-1~2)の製造)
表1、表2に示した原料及び配合量(重量部)とした以外は、(S-1)と同様の方法
で液状マスターバッチ組成物(S-2~12)及び(T-1~2)を得た。
しかし、液状マスターバッチ組成物(T-1)の粒度は100μm以上であり、実用可能な分散性の液状マスターバッチ組成物を得ることはできなかった。
ただし、実施例4、5、および10は参考例である。
【0067】
[比較例3]
(固体マスターバッチ組成物(T-3)の製造)
ブロッキング防止剤(C1)15重量部、及び熱可塑性樹脂(D1)85重量部を、二軸押出機(日本製鋼所社製)にて、280℃で溶融混練し、固体マスターバッチ組成物(T-6)を得た。
【0068】
<液状マスターバッチ組成物の評価>
得られた液状マスターバッチ組成物、および固体マスターバッチ組成物の製造適性について、以下の方法及び基準に基づいて評価した。結果を表1、2に示す。
【0069】
(分散性評価)
得られた液状マスターバッチ組成物の粒度を測定し、下記基準で評価を行った。
〇:粒度が50μm未満であり、良好
△:粒度が50μm以上100μm未満で実用可能
×:粒度が100μm以上であり、不可
【0070】
【0071】
【0072】
[実施例13]
(フィルム(SA-1)の製造)
液状マスターバッチ組成物(S-1)1重量部、及び熱可塑性樹脂(D1)100重量部を混合し、Tダイ成型機を用いて、280℃でフィルム成形し、厚さ100μmの単層フィルム(SA-1)を得た。
【0073】
[実施例14~28、比較例4]
(フィルム(SA-2~16)、(TA-1)の製造)
表3、4に示した原料及び配合量(重量部)とした以外は、(SA-1)と同様の方法で単層フィルム(SA-2~16)、(TA-1)を得た。
ただし、実施例16、17、および22は参考例である。
【0074】
[比較例5]
(フィルム(TA-2)の製造)
得られた固体マスターバッチ組成物(T-3)1重量部、及び熱可塑性樹脂(D1)100重量部を混合し、Tダイ成型機を用いて、280℃でフィルム成形し、厚さ100μmの単層フィルム(TA-2)を得た。
【0075】
<フィルムの評価>
得られたフィルムを用いて、固有粘度、HAZE(透明性)、静摩擦係数及び動摩擦係数(ブロッキング防止性)、ボイド個数を、以下の方法及び基準に基づいて評価した。結果を表3、4に示す。
【0076】
(フィルム製造適性評価)
得られたフィルムを、柴山科学製作所社製SS-600-L2を用いて、固有粘度(IV)を測定し、配合した熱可塑性樹脂(D)を100%とした場合の保持率をもとに、下記基準で評価を行った。
〇:IV保持率が95%以上であり、良好。
△:IV保持率が90%以上95%未満であり、実用可能。
×:IV保持率が90%未満であり、不可。
【0077】
(透明性評価)
作製したフィルムを23℃‐65%RH雰囲気化で24時間静置し、ガードナー社製ヘイズガードプラスを用いて、HAZE(%)を測定し、下記基準で評価を行った。
〇:20%未満であり、良好。
△:20%以上、25%未満であり、実用可能。
×:25%以上であり、不可。
【0078】
(ボイド個数評価)
菱化システム社製表面粗さ計VertScan2.0を用いて観察範囲630μm×470μmのフィルム表面形状を観察した。凹凸の無い平滑な面を基準とし、深さ0.25μm以上、平滑面での面積5μm2以上の凹みをボイドと規定し、その個数(個/mm2)を計測した。
〇:ボイド個数50個未満であり、良好。
△:ボイド個数50個以上、100個未満であり、実用可能。
×:ボイド個数100個以上
【0079】
(ブロッキング防止性評価)
作製したフィルムを23℃‐65%RH雰囲気化で24時間静置し、東洋精機製作所社製FRICTION TESTOR TRを用いて、該フィルム同士の静摩擦係数(μS)、動摩擦係数(μD)を測定し、下記基準で評価を行った。
〇:静摩擦係数、動摩擦係数いずれも0.5未満であり、良好。
△:静摩擦係数、動摩擦係数のいずれか高い方の値が0.5以上、1.0未満であり、
実用可能。
×:静摩擦係数、動摩擦係数のいずれか高い方の値が1.0以上であり、不可。
【0080】
【0081】
【0082】
表1~4に示すように、本発明の液状マスターバッチ組成物は、特定のブロッキング防止剤(C)を含有し、かつ液状であるため、優れたブロッキング防止性を示した。また、製造時の熱履歴が少なくて済むことから高い透明性を示し、固有粘度の低下(IV低下)を抑制することが可能であった。また、液状であり高い分散性となり、ボイドの発生を抑制することが可能となった。