(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20231003BHJP
B41J 11/42 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
B41J2/01 101
B41J2/01 125
B41J2/01 305
B41J2/01 401
B41J11/42
(21)【出願番号】P 2019125974
(22)【出願日】2019-07-05
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松井 康祐
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0090493(US,A1)
【文献】特開2000-190468(JP,A)
【文献】特開平10-058638(JP,A)
【文献】特開2010-076152(JP,A)
【文献】特開2019-045934(JP,A)
【文献】特開昭60-076343(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41J 11/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドから昇華性インクを吐出し担持体に印画画像を形成する印画部と、
前記担持体の前記印画画像を記録媒体に昇華転写する転写部と、
前記印画部と前記転写部との間に設けられ、前記担持体の前記印画画像を乾燥する乾燥部と、
を備え
、
前記転写部は、
加熱ローラーと、
当該加熱ローラーに対向して配置され、前記加熱ローラーの所定領域を加圧する加圧ベルトと、
を備え、
前記加熱ローラーと前記加圧ベルトとの間を、前記担持体及び前記記録媒体を加熱及び加圧しながら通過させ、
前記乾燥部は、前記加熱ローラーの所定領域に中間転写ベルトである前記担持体を巻き付けて搬送することで具現化されており、
前記中間転写ベルトの搬送速度に基づいて、前記転写部及び又は前記乾燥部での前記加熱ローラーに対する前記中間転写ベルトの巻き付け量を変更する巻き付け量変更部を、さらに備える、
インクジェット記録装置。
【請求項2】
インクジェットヘッドから昇華性インクを吐出し担持体に印画画像を形成する印画部と、
前記担持体の前記印画画像を記録媒体に昇華転写する転写部と、
前記印画部と前記転写部との間に設けられ、前記担持体の前記印画画像を乾燥する乾燥部と、
を備え、
前記転写部は、
加熱ローラーと、
当該加熱ローラーに対向して配置され、前記加熱ローラーの所定領域を加圧する加圧ベルトと、
を備え、
前記加熱ローラーと前記加圧ベルトとの間を、前記担持体及び前記記録媒体を加熱及び加圧しながら通過させ、
前記乾燥部は、前記加熱ローラーの所定領域に中間転写ベルトである前記担持体を巻き付けて搬送することで具現化されており、
前記加熱ローラーの温度に基づいて、前記転写部及び又は前記乾燥部での前記加熱ローラーに対する前記中間転写ベルトの巻き付け量を変更する巻き付け量変更部を、さらに備える、
インクジェット記録装置。
【請求項3】
インクジェットヘッドから昇華性インクを吐出し担持体に印画画像を形成する印画部と、
前記担持体の前記印画画像を記録媒体に昇華転写する転写部と、
前記印画部と前記転写部との間に設けられ、前記担持体の前記印画画像を乾燥する乾燥部と、
を備え、
前記転写部は、
加熱ローラーと、
当該加熱ローラーに対向して配置され、前記加熱ローラーの所定領域を加圧する加圧ベルトと、
を備え、
前記加熱ローラーと前記加圧ベルトとの間を、前記担持体及び前記記録媒体を加熱及び加圧しながら通過させ、
前記乾燥部は、前記加熱ローラーの所定領域に中間転写ベルトである前記担持体を巻き付けて搬送することで具現化されており、
前記インクジェットヘッドから吐出される前記昇華性インクの量に基づいて、前記転写部及び又は前記乾燥部での前記加熱ローラーに対する前記中間転写ベルトの巻き付け量を変更する巻き付け量変更部を、さらに備える、
インクジェット記録装置。
【請求項4】
前記担持体は、前記印画部、前記乾燥部及び前記転写部に亘って連続する長尺状の担持体である、
請求項1
から3のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記担持体は、無端状の中間転写ベルトである、
請求項
4に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記乾燥部及び前記転写部の加熱源は、同一の加熱ローラーである、
請求項1から
5のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項7】
前記乾燥部を構成する加熱源と、前記転写部を構成する加熱源は、同一の温度制御部によって制御される、
請求項1から
6のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項8】
前記転写部に前記記録媒体を搬送する記録媒体搬送部を、さらに備え、
前記記録媒体搬送部は、印画画像が形成された前記担持体が前記転写部に到達するタイミングに同期するように、前記転写部に前記記録媒体を送り込む、
請求項1から7のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項9】
前記印画部は、前記記録媒体の種類に応じて印画条件を変更する、
請求項1から8のいずれか一項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項10】
インクジェットヘッドから昇華性インクを吐出し担持体に印画画像を形成するステップと、
前記担持体に形成された前記印画画像を記録媒体に昇華転写するステップと、
前記担持体に形成された前記印画画像が前記記録媒体に昇華転写される前に乾燥するステップと、
を含み、
前記担持体は、印画部、乾燥部及び転写部に亘って連続する長尺状の担持体であり、
前記印画画像の形成、前記乾燥、及び、前記昇華転写を、前記長尺状の担持体を介して連続して行
い、
前記転写部は、
加熱ローラーと、
当該加熱ローラーに対向して配置され、前記加熱ローラーの所定領域を加圧する加圧ベルトと、
を備え、
前記加熱ローラーと前記加圧ベルトとの間を、前記担持体及び前記記録媒体を加熱及び加圧しながら通過させ、
前記乾燥部は、前記加熱ローラーの所定領域に中間転写ベルトである前記担持体を巻き付けて搬送することで具現化されており、
前記中間転写ベルトの搬送速度に基づいて、前記転写部及び又は前記乾燥部での前記加熱ローラーに対する前記中間転写ベルトの巻き付け量を変更するステップを、さらに含む、
インクジェット記録方法。
【請求項11】
インクジェットヘッドから昇華性インクを吐出し担持体に印画画像を形成するステップと、
前記担持体に形成された前記印画画像を記録媒体に昇華転写するステップと、
前記担持体に形成された前記印画画像が前記記録媒体に昇華転写される前に乾燥するステップと、
を含み、
前記担持体は、印画部、乾燥部及び転写部に亘って連続する長尺状の担持体であり、
前記印画画像の形成、前記乾燥、及び、前記昇華転写を、前記長尺状の担持体を介して連続して行い、
前記転写部は、
加熱ローラーと、
当該加熱ローラーに対向して配置され、前記加熱ローラーの所定領域を加圧する加圧ベルトと、
を備え、
前記加熱ローラーと前記加圧ベルトとの間を、前記担持体及び前記記録媒体を加熱及び加圧しながら通過させ、
前記乾燥部は、前記加熱ローラーの所定領域に中間転写ベルトである前記担持体を巻き付けて搬送することで具現化されており、
前記加熱ローラーの温度に基づいて、前記転写部及び又は前記乾燥部での前記加熱ローラーに対する前記中間転写ベルトの巻き付け量を変更するステップを、さらに含む、
インクジェット記録方法。
【請求項12】
インクジェットヘッドから昇華性インクを吐出し担持体に印画画像を形成するステップと、
前記担持体に形成された前記印画画像を記録媒体に昇華転写するステップと、
前記担持体に形成された前記印画画像が前記記録媒体に昇華転写される前に乾燥するステップと、
を含み、
前記担持体は、印画部、乾燥部及び転写部に亘って連続する長尺状の担持体であり、
前記印画画像の形成、前記乾燥、及び、前記昇華転写を、前記長尺状の担持体を介して連続して行い、
前記転写部は、
加熱ローラーと、
当該加熱ローラーに対向して配置され、前記加熱ローラーの所定領域を加圧する加圧ベルトと、
を備え、
前記加熱ローラーと前記加圧ベルトとの間を、前記担持体及び前記記録媒体を加熱及び加圧しながら通過させ、
前記乾燥部は、前記加熱ローラーの所定領域に中間転写ベルトである前記担持体を巻き付けて搬送することで具現化されており、
前記インクジェットヘッドから吐出される前記昇華性インクの量に基づいて、前記転写部及び又は前記乾燥部での前記加熱ローラーに対する前記中間転写ベルトの巻き付け量を変更するステップを、さらに含む、
インクジェット記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に昇華転写型のインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、昇華転写型のインクジェット記録方法が、特許文献1などで提案されている。
【0003】
昇華転写型のインクジェット記録方法は、昇華性インクを中間転写媒体に付着させ、インクの水分を加熱により蒸発させ、濃縮した後に中間転写媒体を記録媒体に圧接させて転写することにより、紙などの記録媒体へのインクの滲みや浸透を抑えるようになっている。
【0004】
特に、記録媒体が布帛である場合には、インクジェットヘッドによりダイレクトにインクを塗布すると布帛に滲みが生じてしまうので、このようなダイレクト型と比較して、昇華転写型のインクジェット記録装置は優れていると言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら従来、昇華転写型のインクジェット記録装置を具現化するための構成については、十分な検討がなされていなかった。
【0007】
本発明の目的は、コンパクトな構成で、布帛などの記録媒体に高品質の昇華転写を行うことができるインクジェット記録装置及びインクジェット記録方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のインクジェット記録装置の一つの態様は、
インクジェットヘッドから昇華性インクを吐出し担持体に印画画像を形成する印画部と、
前記担持体の前記印画画像を記録媒体に昇華転写する転写部と、
前記印画部と前記転写部との間に設けられ、前記担持体の前記印画画像を乾燥する乾燥部と、
を備える。
【0009】
本発明のインクジェット記録方法の一つの態様は、
インクジェットヘッドから昇華性インクを吐出し担持体に印画画像を形成するステップと、
前記担持体に形成された前記印画画像を記録媒体に昇華転写するステップと、
前記担持体に形成された前記印画画像が前記記録媒体に昇華転写される前に乾燥するステップと、
を含み、
前記担持体は、印画部、乾燥部及び転写部に亘って連続する長尺状の担持体であり、
前記印画画像の形成、前記乾燥、及び、前記昇華転写を、前記長尺状の担持体を介して連続して行う。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、印画画像の形成、印画画像の乾燥、及び、印画画像の昇華転写を同一装置で行うことができるので、コンパクトな構成で、布帛などの記録媒体に高品質の昇華転写を行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態のインクジェット記録装置の全体構成図
【
図2A】他の実施の形態のインクジェット記録装置の構成を示す図
【
図2B】他の実施の形態のインクジェット記録装置の構成を示す図
【
図3】他の実施の形態のインクジェット記録装置の構成を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図である。
【0014】
インクジェット記録装置100は、インクジェットヘッド111を有する印画部110と、担持体としての中間転写ベルト120と、加熱ローラー131と、加圧ベルト141と、を有する。
【0015】
印画部110は、インクジェットヘッド111及びこれを駆動する駆動部(図示せず)などからなる。インクジェットヘッド111は、昇華性インクを吐出し、中間転写ベルト120に印画画像を形成する。本実施の形態の場合、印画部110は、インクジェットヘッド111を、中間転写ベルト120の搬送方向(図中の矢印aの方向)に対して垂直方向を主走査として駆動する行うシャトルタイプである。ただし、印画部110としては、シャトルタイプに限らず、ラインタイプを採用してもよい。
【0016】
中間転写ベルト120の転写面側(つまりインクジェットヘッド111に対向する面)は、例えば研磨によるブラスト加工が施されている。これにより、昇華性インクがベルト表面に広がりにくいようになっている。この結果、中間転写ベルト120上での画質劣化が抑制される。
【0017】
中間転写ベルト120は、無端状のベルトであり、加熱ローラー131と駆動ローラー161とに架け渡されている。中間転写ベルト120は、駆動ローラー161が回転駆動されることにより、図中の矢印aの方向に搬送される。
【0018】
インクジェット記録装置100は、記録媒体搬送部150を有する。記録媒体搬送部150は、送りローラー151、巻取りローラー152及び押えローラー153を有し、送りローラー151に巻回されている記録媒体1を巻取りローラー152で巻き取る。
【0019】
本実施の形態の場合、記録媒体1は布帛である。より具体的には、記録媒体1は、ポリエステルの繊維である。
【0020】
加熱ローラー131の所定領域に巻き付けられた中間転写ベルト120と加圧ベルト141との間に、記録媒体1が導入される。これにより、記録媒体1は、中間転写ベルト120の方向に加圧され加熱されながら、中間転写ベルト120の搬送方向と同一方向に搬送される。
【0021】
本実施の形態のインクジェット記録装置100においては、中間転写ベルト120の加熱ローラー131への巻き付け開始位置から、中間転写ベルト120への記録媒体1の接触開始位置までの、加熱ローラー131及び中間転写ベルト120の領域は、乾燥部130として機能する。
【0022】
また、本実施の形態のインクジェット記録装置100においては、中間転写ベルト120への記録媒体1の接触開始位置から、中間転写ベルト120への記録媒体1の接触終了位置までの、加熱ローラー131、中間転写ベルト120及び加圧ベルト141の領域は、転写部140として機能する。
【0023】
乾燥部130は、中間転写ベルト120の表面に付着された昇華性インクを記録媒体1への昇華転写前に加熱ローラー131の熱によって乾燥させる。これにより、昇華転写時のインクの滲み等を抑制できる。
【0024】
乾燥部130における、加熱ローラー131への中間転写ベルト120の巻回長、つまり乾燥距離は、加熱ローラー131の周囲長の1/4以上であり、かつ1/2以下であることが好ましい。ここで、周囲長の1/4以上とすることにより、加熱して乾燥する距離を長くすることができる。これは、加熱ローラー131の小型化へも寄与する。また、周囲長の1/2以下とすることにより、加熱ローラー131を共用している転写部140が中間転写ベルト120の表面に付着された昇華性インクを記録媒体1に昇華転写するのに十分な距離を確保できる。
【0025】
転写部140における、加熱ローラー131への加圧ベルト141及び中間転写ベルト120の巻回長は、加熱ローラー131の周囲長の1/4以上であり、かつ1/2以下であることが好ましい。ここで、上記巻回長を周囲長の1/4以上とすることにより、中間転写ベルト120の表面に付着された昇華性インクを加熱・加圧して昇華・転写する距離を長くすることができる。これは、加熱ローラー131の小型化へも寄与する。また、周囲長の1/2以下とすることにより、加熱ローラー131を共用している乾燥部130が昇華性インクを乾燥するのに十分な距離を確保できる。
【0026】
因みに、
図1の例では、転写部140の加圧ベルト141は、4つのローラー141a~141dに懸架されている。2つのローラー141a、141bは、加熱ローラー131に対向して設けられている。加熱ローラー131への加圧ベルト141の巻回長は、2つのローラー141a、141bの配置によって決まる。ローラー141a、141bのうち一方はテンションローラーとすることが好ましい。これにより、テンションローラーのテンションを制御することで、転写部140での加圧力を変更できるようになる。
【0027】
加熱ローラー131は内部に加熱源を有し、この加熱源は加熱ローラー131の表面温度が150℃~230℃の範囲となるように制御される。
【0028】
インクジェット記録装置100は、作業台154を有する。作業台154は、記録媒体1が転写部140に導入される直前の位置に配置されている。これにより、例えば作業者は作業台154を用いて布帛である記録媒体1を所望のサイズに切断する切断作業を行うことができる。
【0029】
インクジェット記録装置100は、中間転写ベルト120の搬送方向に対して、転写部140よりも下流側でかつ印画部110の上流側に、ベルトクリーニング部170を有する。ベルトクリーニング部170はクリーニングブレード171を有し、当該クリーニングブレード171は駆動ローラー161の方向に中間転写ベルト120を押し付けるようにして中間転写ベルト120の表面に残った昇華性インクを除去する。
【0030】
以上の構成において、先ず、インクジェットヘッド111から昇華性インクが吐出され、これが記録媒体1に付着することで、中間転写ベルト120上に印画画像が形成される。
【0031】
次に、中間転写ベルト120上に付着した昇華性インクが乾燥部130において加熱ローラー131の熱によって乾燥される。
【0032】
次に、乾燥後の中間転写ベルト120、及び、記録媒体1が、転写部140に搬送される。具体的には、乾燥後の中間転写ベルト120、及び、記録媒体1が、加熱ローラー131と加圧ベルト141との間を通過するように搬送される。これにより、転写部140において、中間転写ベルト120及び記録媒体1が加熱・加圧されることにより、中間転写ベルト120上の昇華性インクが記録媒体1に昇華転写される。
【0033】
以上説明したように、本実施の形態によれば、インクジェット記録装置100が、インクジェットヘッド111から昇華性インクを吐出し中間転写ベルト120に印画画像を形成する印画部110と、中間転写ベルト120上に付着した昇華性インクを乾燥する乾燥部130と、中間転写ベルト120上の乾燥後の昇華性インクを記録媒体1に転写する転写部140と、を有することにより、コンパクトな構成で、記録媒体1に高品質の昇華転写を行うことができるインクジェット記録装置を実現できる。つまり、本実施の形態の構成によれば、乾燥部と転写部とを別々の装置で具現化する場合と比較して、中間転写ベルト120を介在させて、印画画像の形成、乾燥、及び、昇華転写を連続して行うことができるようになるので、装置を1ユニット化することが可能となり、インクジェットによる印画から滲みのない昇華転写までを1つの装置でコンパクトに実現することができるようになる。
【0034】
因みに、担持体として紙を使用した従来の昇華転写は、一般に、乾燥装置と転写定着装置が別個に設けられていた。具体的には、インクジェットヘッドによって昇華性インクが塗布された紙は、乾燥装置によって乾燥されると、一旦乾燥装置から取り出された後に、転写装置へと挿入されるようになっていた。よって、全体としての装置構成が大型化する欠点があった。これに対して、本実施の形態の構成では、乾燥部130と転写部140が1ユニットで構成されており、非常にコンパクトな構成で、乾燥と昇華転写とを行うことができる。加えて、中間転写ベルト120を用いているので、紙を用いた場合と比較して、廃棄物が生じないメリットもある。
【0035】
また、本実施の形態のインクジェット記録装置100は、乾燥部130の乾燥と、転写部140の昇華転写とを同一の加熱ローラー131を用いて行う。つまり、加熱を共有化している。これにより、加熱するための構成を簡単化できる。また、乾燥部130を構成する加熱源と、転写部140を構成する加熱源を、同一の温度制御部によって制御することにより、温度制御も簡単化できる。
【0036】
また、本実施の形態のインクジェット記録装置100は、転写部140に記録媒体1を搬送する記録媒体搬送部150を、さらに備え、記録媒体搬送部150は、印画画像が形成された中間転写ベルト120が転写部140に到達するタイミングに同期するように、転写部140に記録媒体1を送り込む。これにより、記録媒体1の所定位置に中間転写ベルト120上の印画画像を昇華転写することができる。
【0037】
上述の実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することの無い範囲で、様々な形で実施することができる。
【0038】
(1)印画部110は、記録媒体1の種類に応じて印画条件を変更してもよい。例えば、記録媒体1が布帛である場合には、布帛の厚みに応じて昇華性インクの吐出量を変更してもよい。例えば、布帛が厚くなるほど昇華性インクの吐出量を増加する。
【0039】
(2)中間転写ベルト120の搬送速度に基づいて、転写部140及び又は乾燥部130での加熱ローラー131に対する中間転写ベルト120の巻き付け量を変更する巻き付け量変更部を、さらに設けてもよい。例えば、中間転写ベルト120の搬送速度が速くなるほど、転写部140及び又は乾燥部130での加熱ローラー131に対する中間転写ベルト120の巻き付け量を多くする。このようすることで、中間転写ベルト120の搬送速度が変化した場合でも一様の転写性能及び乾燥性能を得ることができる。
【0040】
転写部140での中間転写ベルト120の巻き付け量を変化させるためには、例えばローラー141aや141bを加熱ローラー131の周方向に移動させればよい。また、乾燥部130での中間転写ベルト120の巻き付け量を変化させるためには、例えば
図2A及び
図2Bに示したように、加熱ローラー131への中間転写ベルト120の導入部付近に可動ローラー201を設け、当該可動ローラー201を加熱ローラー131の周方向に移動させればよい。
【0041】
図2Aは、中間転写ベルト120の印字面側に可動ローラー201を設けた例である。この場合、可動ローラー201が印字面を直接押圧すると乾燥前の画像なので乱れが発生するので、可動ローラー201は、非印字(描画)領域である中間転写ベルト120の両端部のみ接触するようになっている。
【0042】
図2Bは、中間転写ベルト120の印字面側とは反対の面側に可動ローラー201を設けた例である。この場合、可動ローラー201は印字面とは反対側から中間転写ベルト120に当接するので、画像の乱れを起こすことがなく、ベルトの全幅に亘って当接してもよい。なお、この場合、インクジェットヘッド111と可動ローラ201の間に、非印字(描画)領域の両端部のみ接触するローラーを設けて、インクジェットヘッド111と中間転写ベルト120との距離を一定に保つようにしてもよい。
【0043】
(3)加熱ローラー131の温度に基づいて、転写部140及び又は乾燥部130での加熱ローラー131に対する中間転写ベルト120の巻き付け量を変更する巻き付け量変更部を、さらに設けてもよい。例えば、加熱ローラー131の温度が低くなるほど、転写部140及び又は乾燥部130での加熱ローラー131に対する中間転写ベルト120の巻き付け量を多くする。このようすることで、加熱ローラー131の温度が変化した場合でも一様の転写性能及び乾燥性能を得ることができる。
【0044】
(4)インクジェットヘッド111から吐出される昇華性インクの量に基づいて、転写部140及び又は乾燥部130での加熱ローラー131に対する中間転写ベルト120の巻き付け量を変更する巻き付け量変更部を、さらに設けてもよい。例えば、吐出される昇華性インクの量が多くなるほど、転写部140及び又は乾燥部130での加熱ローラー131に対する中間転写ベルト120の巻き付け量を多くする。このようすることで、インク量が変化した場合でも一様の転写性能及び乾燥性能を得ることができる。
【0045】
(5)
図3に示したように、中間転写ベルト120の搬送方向に対して、転写部140の下流側でかつ印画部110の上流側に、中間転写ベルト120の温度を検知する温度検知部202を、さらに設けてもよい。このようにすることで、昇華転写後の中間転写ベルト120の温度を正確に把握できるようになり、乾燥及び転写に適した温度制御ができるようになる。つまり、中間転写ベルト120の温度は、転写部140での昇華性インクの記録媒体1への昇華転写による熱移転により、大きく変動する。よって、昇華転写が継続されると中間転写ベルト120の表面温度が不均一になり、加熱ローラー131での温度検出による温度制御のみでは、実際の中間転写ベルト120の表面温度と乖離した好ましくない温度制御となる可能性がある。温度検知部202を設け、その検知温度に基づいて加熱ローラー131の温度を制御することで、昇華転写による熱移転に起因する不都合を回避できる。
【0046】
(6)上述の実施の形態に加えて、中間転写ベルト120全体の表面温度が所定温度に到達したことを検出した後に、印画部110の印画を開始してもよい。このようにすることで、加熱ローラー131、加圧ベルト141及び中間転写ベルト120の温度が均一の温度に安定してから、昇華性インクの乾燥及び昇華転写が行われるようになるので、意図した乾燥性能及び昇華転写性能を得ることができるようになる。
【0047】
(7)また、中間転写ベルト120全体の表面温度が所定温度に到達するまでは印画せずに、中間転写ベルト120を空回ししてもよい。これにより、転写部140と中間転写ベルト120の温度が均一になるまで中間転写ベルト120が空転されるので、転写部140の温度上昇を促進して、ウォームアップ時間を短縮できる。
【0048】
(8)また、加熱ローラー131又は中間転写ベルト120が所定温度に達するまでは(つまりウォームアップ時には)、インクジェットヘッド111を中間転写ベルト120から退避させるようにしてもよい。これにより、ウォームアップ時にインクジェットヘッド111が中間転写ベルト120からの熱によって加熱されないので、インクの増粘を回避できる。
【0049】
(9)上述の実施の形態に加えて、加圧ベルト141を懸架するローラー141a~141dのいずれか1つ以上が加熱機能を有し、加圧ベルト141を加熱してもよい。このようにすれば、中間転写ベルト120及び記録媒体1を、加熱ローラー131と加圧ベルト141の両方で加熱することができ、昇華転写の性能を向上させることができる。特に、記録媒体1として厚い布帛が用いられた場合などに有効である。
【0050】
(10)ベルトクリーニング部170で用いるクリーニング液を冷却し、クリーニングにより中間転写ベルト120の表面を冷却してもよい。このようにすることで、中間転写ベルト120からの熱によるインクジェットヘッド111の温度上昇を抑制し得、インクの増粘を回避できる。勿論、中間転写ベルト120の冷却方法はこれに限らず、例えばブロアによる送風によって中間転写ベルト120を冷却してもよい。
【0051】
(11)上述の実施の形態に加えて、
図3に示したように、中間転写ベルト120の搬送方向に対して、印画部110よりも上流側でかつベルトクリーニング部170より下流側に前処理材塗布部203を設けてもよい。前処理塗布部203は、中間転写ベルト120の表面(印画画像が形成される面)に受像液(前処理材)を塗布する。これにより、昇華性インクがベルト表面に広がりにくくなり、中間転写ベルト120上での印画画像の画質劣化が抑制される。また、前処理材塗布部203においてフレキソ(凸版)印刷方式を採用すれば、前処理材の塗工量を少なくでき、かつ、印画画像の形成位置に正確に前処理材を塗工できる。
【0052】
(12)上述の実施の形態に加えて、中間転写ベルト120の搬送位置を検出する位置検出部(エンコーダ)と、位置検出部からの情報を記憶する記憶部と、を有し、印画部110で印画開始するタイミングから印画画像位置を位置検出部からの位置情報として記憶し、記録媒体搬送部150が位置検出部からの位置情報に基づいて記録媒体1の転写部140への搬送開始タイミングを決定するようにしてもよい。このようにすれば、例えば記録媒体1が切断された布帛である場合に、切断された布帛への印画位置を合わせることができる。
【0053】
(13)上述の実施の形態では、記録媒体1として布帛を用いた場合について述べたが、記録媒体1はこれに限らず、例えば紙でもよい。ただし、上述の実施の形態では、加熱ローラー131の周囲長の1/4以上でかつ1/2以下の範囲で、加熱ローラー131に加圧ベルト141を巻き付け、加熱ローラー131と加圧ベルト141との間で記録媒体1を加熱及び加圧するようにしているので、記録媒体1が布帛である場合に、布帛の皺を伸ばして転写を確実に行うことができるといった効果を得ることができる。
【0054】
(14)上述の実施の形態では、昇華性インクの担持体として中間転写ベルト120を用いた場合について述べたが、担持体は例えば紙であってもよい。ただし、中間転写ベルト120を用いることにより、紙を用いた場合と比較して、繰り返して使用できるので、破棄物が生じない、及び、ランニングコストを低減できるといった利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、布帛などの記録媒体に昇華性インクによる画像を転写する技術として広く適用可能である。
【符号の説明】
【0056】
1 記録媒体
100 インクジェット記録装置
110 印画部
111 インクジェットヘッド
120 中間転写ベルト
130 乾燥部
131 加熱ローラー
140 転写部
141 加圧ベルト
141a~141d ローラー
150 記録媒体搬送部
151 送りローラー
152 巻取りローラー
153 押えローラー
154 作業台
161 駆動ローラー
170 ベルトクリーニング部
171 クリーニングブレード
201 可動ローラー
202 温度検知部
203 前処理材塗布部