(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】現金処理装置
(51)【国際特許分類】
G07D 11/24 20190101AFI20231003BHJP
G07D 11/34 20190101ALI20231003BHJP
G07D 11/60 20190101ALI20231003BHJP
【FI】
G07D11/24
G07D11/34
G07D11/60
(21)【出願番号】P 2019184105
(22)【出願日】2019-10-04
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140958
【氏名又は名称】伊藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100137888
【氏名又は名称】大山 夏子
(74)【代理人】
【識別番号】100190942
【氏名又は名称】風間 竜司
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 幸治
【審査官】小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-144786(JP,A)
【文献】特開2017-117234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 9/00-13/00
G07D 1/00- 3/16
G07G 1/00- 1/14
G06Q 40/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現金処理装置であって、
釣銭準備金および売上金を収納する現金収納部と、
1または2以上の自動釣銭機で用いられる釣銭準備金を前記現金収納部から出金する出金取引、前記1または2以上の自動釣銭機から回収された現金を前記現金収納部に収納する入金取引、および、前記1または2以上の自動釣銭機での売上金額を算出する締上取引、を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記締上取引
の度に、前記現金収納部に収納されている現金の金額、前記出金取引で出金された釣銭準備金の金額、および前記入金取引で入金された現金の金額から、前記現金収納部に収納されている釣銭準備金の金額を算出し、当該釣銭準備金の金額が所定の参照金額と異なる場合に、金額の不一致を示すエラー画面を生成
し、前記エラー画面に対する操作に基づき、表示画面を、前記現金処理装置の動作履歴の照会を実行するための操作画面に遷移させる、
現金処理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記動作履歴の照会結果として、障害履歴、取引履歴、または操作履歴を表示画面に表示させる、請求項1に記載の現金処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記現金収納部に釣銭準備金を補充する補充取引を制御し、
前記現金処理装置は、前記補充取引により補充された前記釣銭準備金の金額を前記所定の参照金額として記憶する記憶部をさらに備える、請求項1に記載の現金処理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記現金収納部に釣銭準備金を補充する補充取引を制御し、
前記現金処理装置は、前記補充取引により補充された前記釣銭準備金の金額を前記所定の参照金額として外部装置から受信する通信部をさらに備える、請求項1に記載の現金処理装置。
【請求項5】
前記現金処理装置は、前記締上取引において算出された前記釣銭準備金の金額を記憶する記憶部をさらに備え、
前記制御部は、新たな前記締上取引において、前記記憶部に記憶されている前記釣銭準備金の金額を前記所定の参照金額として用いる、請求項1に記載の現金処理装置。
【請求項6】
前記制御部は前記現金収納部に収納されている現金の金額を管理しており、前記締上取引において、前記制御部が管理している前記現金の金額が確定金額でない不確定状態である場合、前記制御部は前記不確定状態を示すエラー画面を生成する、請求項1~
5までのいずれか一項に記載の現金処理装置。
【請求項7】
前記制御部は
、前記不確定状態を示すエラー画面に対する操作に基づき、表示画面を
、前記不確定状態を解除するための精査取引を実行するための操作画面に遷移させる、請求項
6に記載の現金処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現金処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小売店やスーパーマーケットなどの流通施設および商業施設において、現金の出金取引および入金取引を行う現金処理装置が設置されている。現金処理装置は、出金取引では、例えば操作者が金種ごとに指定した枚数の現金を出金用の現金収納部から出金する。出金取引で出金された現金は、自動釣銭機で釣銭準備金として使用される。入金取引では、自動釣銭機から回収された現金が現金処理装置に入金され、当該現金が上記出金用の現金収納部に収納される。入金取引で入金された現金は釣銭準備金および売上金を含み得る。
【0003】
ここで、商業施設における現金処理装置の具体的な運用例を説明する。まず、商業施設を運営する事業者の本部が釣銭準備金を商業施設に交付し、商業施設のスタッフが当該釣銭準備金を現金処理装置に補充取引により入金する。そして、現金処理装置が出金取引により釣銭準備金を出金し、スタッフは当該釣銭準備金を自動釣銭機に入金する。自動釣銭機では、当該釣銭準備金を用いて各会計での精算処理が行われる。そして、自動釣銭機の運用が終了すると、スタッフが自動釣銭機から現金を回収し、回収した現金を現金処理装置に入金取引により入金する。入金取引の際に、「入金金額(自動釣銭機から回収されて現金処理装置に入金された現金の金額」-「出金金額(現金処理装置から出金されて自動釣銭機に供給された現金の金額)」の演算により、自動釣銭機での個別売上金額が算出される。
【0004】
その後、現金処理装置は、商業施設の管理者が行う操作に基づき、現金処理装置で管理されている釣銭準備金の金額および売上金の金額などが印刷されたレシートを出力するための有高照会取引を実行する。管理者は、当該レシートに印刷されている釣銭準備金の金額が補充取引で入金した釣銭準備金の金額に一致するか否かを確認し、一致を確認した後に締上取引を実行する。締上取引では、複数の自動釣銭機の個別売上金額を合計することで、売上金額が確定される。このような売上金額の算出については例えば以下の特許文献1にも開示されている。そして、管理者は、売上回収取引により、確定された売上金額に相当する現金を現金処理装置から回収する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した現金処理装置での現金管理には幾つかの問題があった。例えば、事業者の本部は、商業施設に対し、現金管理の厳格化のために上述した有高照会取引による釣銭準備金の確認を毎日実施するように指示を出し得る。しかし、有高照会取引を毎日実施することは管理者にとって煩雑である、管理者が有高照会取引を実施し忘れることがある、などの問題がある。さらに、有高照会取引が行われても、管理者は目視でレシートを確認するので、確認ミスが生じることも考えられる。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、現金管理をより正確に行うことが可能な、新規かつ改良された現金処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、釣銭準備金および売上金を収納する現金収納部と、1または2以上の自動釣銭機で用いられる釣銭準備金を前記現金収納部から出金する出金取引、前記1または2以上の自動釣銭機から回収された現金を前記現金収納部に収納する入金取引、および、前記1または2以上の自動釣銭機での売上金額を算出する締上取引、を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記締上取引の度に、前記現金収納部に収納されている現金の金額、前記出金取引で出金された釣銭準備金の金額、および前記入金取引で入金された現金の金額から、前記現金収納部に収納されている釣銭準備金の金額を算出し、当該釣銭準備金の金額が所定の参照金額と異なる場合に、金額の不一致を示すエラー画面を生成し、前記エラー画面に対する操作に基づき、表示画面を、前記現金処理装置の動作履歴の照会を実行するための操作画面に遷移させる、現金処理装置が提供される。
【0009】
前記制御部は、前記動作履歴の照会結果として、障害履歴、取引履歴、または操作履歴を表示画面に表示させてもよい。前記制御部は、前記現金収納部に釣銭準備金を補充する補充取引を制御し、前記現金処理装置は、前記補充取引により補充された前記釣銭準備金の金額を前記所定の参照金額として記憶する記憶部をさらに備えてもよい。
【0010】
前記制御部は、前記現金収納部に釣銭準備金を補充する補充取引を制御し、前記現金処理装置は、前記補充取引により補充された前記釣銭準備金の金額を前記所定の参照金額として外部装置から受信する通信部をさらに備えてもよい。
【0011】
前記現金処理装置は、前記締上取引において算出された前記釣銭準備金の金額を記憶する記憶部をさらに備え、前記制御部は、新たな前記締上取引において、前記記憶部に記憶されている前記釣銭準備金の金額を前記所定の参照金額として用いてもよい。
【0012】
前記制御部は前記現金収納部に収納されている現金の金額を管理しており、前記締上取引において、前記制御部が管理している前記現金の金額が確定金額でない不確定状態である場合、前記制御部は前記不確定状態を示すエラー画面を生成してもよい。
【0013】
前記制御部は、前記不確定状態を示すエラー画面に対する操作に基づき、表示画面を、前記不確定状態を解除するための精査取引を実行するための操作画面に遷移させてもよい。
【発明の効果】
【0016】
以上説明した本発明によれば、現金管理をより正確に行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態による現金処理装置の構成を示す説明図である。
【
図2】操作表示部に表示されるメニュー画面の具体例を示す説明図である。
【
図3】売上金額入力画面の具体例を示す説明図である。
【
図7】入金取引の動作を示すフローチャートである。
【
図9】金額の不一致を示すエラー画面の具体例を示す説明図である。
【
図10】変形例によるエラー画面の具体例を示す説明図である。
【
図11】調査取引画面の具体例を示す説明図である。
【
図12】第2の動作例によるエラー画面の具体例を示す説明図である。
【
図13】第2の動作例による調査取引画面を示す説明図である。
【
図14】第3の動作例に関するシステム構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0019】
また、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素を、同一の符号の後に異なるアルファベットを付して区別する場合もある。ただし、実質的に同一の機能構成を有する複数の構成要素の各々を特に区別する必要がない場合、複数の構成要素の各々に同一符号のみを付する。
【0020】
<1.現金処理装置の構成>
本発明の実施形態は、小売店やスーパーマーケットなどの流通施設および商業施設に設置される現金処理装置に適用される。本実施形態による現金処理装置は、例えば、自動釣銭機で用いられる釣銭準備金として紙幣および硬貨を出金する出金取引、および自動釣銭機から回収された紙幣および硬貨を入金する入金取引などを実行可能である。以下、このような本発明の実施形態による現金処理装置の構成を説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態による現金処理装置1の構成を示す説明図である。
図1に示したように、本実施形態による現金処理装置1は、紙幣投入口101と、紙幣一時保留部103と、紙幣鑑別部105と、万券カセット107と、五千券カセット109と、千券カセット111と、回収カセット113と、リジェクト部115と、硬貨投入口117と、硬貨鑑別部119と、硬貨一時保留部121と、硬貨返却部123と、出金ホッパ125と、硬貨回収庫127と、硬貨出金箱129と、カードリーダ部131と、操作表示部133と、制御部150と、記憶部160と、通信部170と、を備える。
【0022】
紙幣投入口101、紙幣一時保留部103、紙幣鑑別部105、万券カセット107、五千券カセット109、千券カセット111、回収カセット113およびリジェクト部115は、図示しない紙幣搬送部によって繋がれている。具体的には、紙幣搬送部は、紙幣一時保留部103から紙幣鑑別部105を経由して各紙幣カセットへ紙幣を搬送する双方向の紙幣搬送路、および紙幣一時保留部103から紙幣鑑別部105を経由して回収カセット113へ紙幣を搬送する双方向の紙幣搬送路を含む。同様に、硬貨投入口117、硬貨鑑別部119、硬貨一時保留部121、硬貨返却部123、出金ホッパ125、硬貨回収庫127および硬貨出金箱129は図示しない硬貨搬送部によって繋がれている。具体的には、硬貨搬送部は、硬貨一時保留部121から出金ホッパ125へ硬貨を搬送するための硬貨搬送路、および出金ホッパ125から硬貨回収庫127へ硬貨を搬送する硬貨搬送路を含む。以下、紙幣搬送部および硬貨搬送部を単に搬送部と総称する場合もある。
【0023】
紙幣投入口101は、現金処理装置1に入金される紙幣が投入される投入口である。また、紙幣投入口101は、紙幣の出金口でもあり、入金取引の取り消しにより返却される紙幣、出金される紙幣、および紙幣鑑別部105により正常ではないとしてリジェクトされた紙幣が紙幣投入口101から取り出される。
【0024】
紙幣一時保留部103には、入金取引における計数時に一時的に紙幣が集積される。また、紙幣鑑別部105は、投入された紙幣の金種、および投入された紙幣が正常な紙幣であるか否かなどを各種センサによって鑑別する。
【0025】
万券カセット107、五千券カセット109、および千券カセット111は、それぞれ万券、五千券、および千券の紙幣を収納する第1の現金収納部である。具体的には、万券カセット107、五千券カセット109、および千券カセット111(各紙幣カセット)には、バラ状態の各種紙幣が釣銭準備金として収納される。また、各紙幣カセットには、入金取引で入金され、紙幣鑑別部105で正常と鑑別された各種紙幣が収納され得る。さらに、出金取引時には、各紙幣カセットから各種紙幣が出金される。
【0026】
回収カセット113は、売上金を収納するための第2の現金収納部である。売上回収取引において、売上金を構成する紙幣が回収カセット113に搬送される。
【0027】
リジェクト部115には、紙幣鑑別部105によって正常な紙幣ではないと鑑別された紙幣、すなわちリジェクトされた紙幣が集積される。具体的には、リジェクト部115には、入金取引時に紙幣一時保留部103から収納のために紙幣を搬送する過程で紙幣鑑別部105によってリジェクトされた紙幣、各紙幣カセットから出金を行う過程で紙幣鑑別部105によってリジェクトされた紙幣、締め取引時に各紙幣カセットから回収カセット113に紙幣を搬送する過程で紙幣鑑別部105によってリジェクトされた紙幣などが集積される。
【0028】
硬貨投入口117は、硬貨が投入される開口である。また、硬貨鑑別部119は、投入された硬貨の金種、および投入された硬貨が正常な硬貨であるか否かなどを各種センサによって鑑別する。さらに、硬貨一時保留部121には、入金取引における計数時に一時的に硬貨が集積される。
【0029】
硬貨返却部123は、硬貨の返却口であり、計数が行われた後に入金取引の取り消しがなされた硬貨が硬貨返却部123から返却される。出金ホッパ125は、金種別に硬貨を収納する現金収納部の一例であり、出金取引では出金ホッパ125から各種硬貨が出金され、入金取引では投入された各種硬貨が出金ホッパ125に収納され得る。
【0030】
硬貨回収庫127は、売上金を収納するための現金収納部である。売上回収取引において、売上金を構成する硬貨が硬貨回収庫127に搬送される。また、硬貨出金箱129は、出金取引時に硬貨を出金するための硬貨出金口である。
【0031】
カードリーダ部131は、レジカードやIDカード等に書き込まれた情報を読み取る。レジカードやIDカード等に書き込まれる情報として、例えば、カードを利用するスタッフを識別するための情報、許可されている取引の種類を示す情報、および使用するレジ(POSレジスタおよび自動釣銭機)を示す識別情報が挙げられる。なお、現金処理装置1は、カードリーダ部131に加えて、あるいはカードリーダ部131に代えて、指紋認識を行う指紋認識部、または暗証番号の入力を受け付ける暗証番号入力部を有してもよい。
【0032】
操作表示部133は、スタッフによる操作を検出する操作部としての機能、および各種画面を表示する表示部としての機能を包含する。表示部としての機能は、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ装置、液晶ディスプレイ(LCD)装置、OLED(Organic Light Emitting Diode)装置により実現される。また、操作部としての機能は例えばタッチパネルにより実現される。なお、表示部および操作部の機能は分離して構成されてもよい。
【0033】
制御部150は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの実行において使用するプログラムや、その実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶するRAM(Random Access Memory)等で構成される。
【0034】
この制御部150は、現金処理装置1の動作全般を制御する。例えば、制御部150は、各紙幣カセット、回収カセット113、出金ホッパ125および硬貨回収庫127などに収納されている現金の枚数を記憶部160に記憶させる管理部としての機能を包含する。また、制御部150は、各取引において搬送部による現金の搬送を制御する。また、制御部150は、レジカードやIDカードによる認証が終了すると、レジカードまたはIDカードに紐づけられている対象のレジを特定し、スタッフが所望の処理を選択するためのメニュー画面を操作表示部133に表示させ、メニュー画面においてスタッフにより選択された取引を制御する。以下、
図2を参照してメニュー画面の具体例を説明する。
【0035】
図2は、操作表示部133に表示されるメニュー画面40の具体例を示す説明図である。
図2に示したように、メニュー画面40は、「01:出金」ボタン、「02:入金」ボタン、「03:計数」ボタン、「04:補充」ボタン、「05:設定」ボタン、「06:売上回収」ボタン、「07:精査」ボタン、「08:照会」ボタン、「09:締上」ボタンなど、現金処理装置1が実行可能な取引と関連付けられた選択ボタンを含む。スタッフは、このメニュー画面40からの選択ボタンの選択により、所望の取引を現金処理装置1に実行させることが可能である。各取引の動作については、「第1の動作例」以降で詳細に説明する。
【0036】
図1に示した現金処理装置1の通信部170は、他の装置と通信する。例えば、現金処理装置1の上位端末が現金処理装置1に接続される場合、現金処理装置1の通信部170は、現金処理装置1が実行した各取引の情報(出金取引で出金された現金の金額、および入金取引で入金された現金の金額など)、現金処理装置1が収納している現金の金額を示す情報などを上位端末に送信してもよい。
【0037】
<第1の動作例>
以上、現金処理装置1の構成を説明した。続いて、現金処理装置1における各取引の第1の動作例を説明する。第1の動作例においては、特に、入金取引、設定取引および締上取引に創意工夫がなされている。
【0038】
(出金取引)
出金取引は、各紙幣カセットおよび出金ホッパ125から釣銭準備金を出金するための取引である。メニュー画面40においてスタッフにより「01:出金」ボタンが選択されることで、当該出金取引が開始する。制御部150は、出金取引において、金額指定出金または金種枚数指定出金などの出金方法に従って出金を制御する。
【0039】
具体的には、金額指定出金においては、スタッフにより出金金額が指定され、制御部150は、事前に用意されているルールに従って各金種の出金枚数を決定してもよい。例えば、上記ルールは、各金種の出金枚数の比率を規定するものであってもよいし、各金種の出金枚数の最低数を規定するものであってもよい。金種枚数指定出金においては、スタッフにより金種ごとの出金枚数が指定され、制御部150は、スタッフからの指定に従って各金種の出金を制御する。
【0040】
いずれの出金方法においても、各紙幣カセットから紙幣が排出され、搬送部が当該紙幣を紙幣投入口101に搬送する。また、出金ホッパ125から硬貨が繰り出され、当該硬貨を搬送部が硬貨出金箱129に搬送する。
【0041】
制御部150は、出金取引で出金された釣銭準備金が用いられるレジの識別情報と関連付けて出金金額を記憶部160に記憶させる。例えば、制御部150は、スタッフにより指定されたレジ、または認証に用いられたレジカードやIDカードに紐づけられているレジの識別情報と関連付けて出金金額を記憶部160に記憶させる。
【0042】
(入金取引)
入金取引は、レジ(POSレジスタおよび自動釣銭機)から回収された紙幣および硬貨を現金処理装置1内に収納するための取引である。メニュー画面40においてスタッフにより「02:入金」ボタンが選択されると、当該入金取引が開始する。制御部150は、入金取引において、紙幣投入口101および硬貨投入口117のシャッタを開放し、紙幣および硬貨の投入を誘導する入金誘導画面を操作表示部133に表示させる。その後、制御部150は、紙幣投入口101および硬貨投入口117から投入された紙幣および硬貨を計数する。ここで、紙幣鑑別部105により正常と判断された紙幣は紙幣一時保留部103に集積され、硬貨鑑別部119により正常と判断された硬貨は硬貨一時保留部121に集積される。また、紙幣鑑別部105によりリジェクトされた紙幣は紙幣投入口101から返却され、硬貨鑑別部119によりリジェクトされた硬貨は硬貨返却部123から返却される。
【0043】
ここで、ある種の現金処理装置は、計数により得られた入金合計金額を表示し、確認操作が行われた後に紙幣一時保留部に集積されている紙幣、および硬貨一時保留部に集積されている硬貨の収納処理を行う。しかし、そのような現金処理装置では、現金管理の正確性が不十分である。例えば、入金取引のためにレジから現金が回収される際に、レジへの現金の置忘れ、現金の紛失、および過剰な現金の回収などの事象が起こり得るが、このような事象により入金金額が不適切となっていることが検出されない。
【0044】
この点に関し、第1の動作例による入金取引では、入金金額の不足または過剰を適切に検出することにより、現金管理の正確性を向上することが可能である。具体的には、制御部150は、入金取引において、現金の回収元のレジにおける売上金額を入力するための売上金額入力画面を操作表示部133に表示させる。
【0045】
図3は、売上金額入力画面410の具体例を示す説明図である。
図3に示したように、売上金額入力画面410は、売上金額の入力を誘導するメッセージ411、売上金額の入力欄412、訂正ボタン414および確認ボタン416を含む。スタッフは、操作表示部133を操作して、売上金額の入力欄412に売上金額を入力する。入力された売上金額を訂正する場合に訂正ボタン414が選択され、入力された売上金額を確定する場合に確認ボタン416が選択される。なお、売上金額は、現金の回収元のレジのPOSレジスタまたは自動釣銭機において算出および表示され、スタッフはPOSレジスタまたは自動釣銭機に表示された売上金額を入力欄412に入力してもよい。例えば、POSレジスタは、POSレジスタを用いた売買の記録からレジでの売上金額を算出し、当該売上金額を表示してもよい。
【0046】
制御部150は、売上金額入力画面410で入力された売上金額および出金取引で当該レジに出金された釣銭準備金の金額の合計金額と、入金取引で入金された現金の金額である入金金額とを比較し、比較結果に応じた画面を生成して操作表示部133に表示させる。入金取引に際してレジから全ての現金が回収される場合、上記の合計金額と入金金額が一致することが適切である。以下、
図4~
図6を参照し、比較結果に応じて生成される画面の具体例を説明する。
【0047】
図4は、入金一致画面420の具体例を示す説明図である。入金一致画面420は、上述した合計金額と入金金額が一致する場合に表示される画面である。
図4に示したように、入金一致画面420は、確認操作を誘導するメッセージ421、比較結果表示422および確認ボタン424を含む。比較結果表示422に含まれる要釣銭返納金額は、出金取引で出金された釣銭準備金の金額である。比較結果表示422に含まれる過不足は、入金金額から、売上金額および要釣銭返納金額の合計金額を減算して得られる結果である。入金一致画面420では過不足が「0円」であるので、比較結果表示422には「一致」が示されている。
【0048】
図5は、入金不足画面430の具体例を示す説明図である。入金不足画面430は、上述した合計金額に対して入金金額が不足する場合に表示される画面である。
図5に示したように、入金不足画面430は、操作誘導メッセージ431、比較結果表示432、追加入金ボタン434および現外ボタン436を含む。操作誘導メッセージ431は、追加入金ボタン434の選択または現外ボタン436の選択を誘導するメッセージである。また、
図5に示した例では過不足が「-10,000円」であるので、比較結果表示432には「不足」が示されている。スタッフは、不足分を入金する場合には追加入金ボタン434を選択し、追加入金を行う。一方、不足分が現金処理装置1外で管理される損券または損貨である場合には、スタッフは現外ボタン436を選択し、損券または損貨の金額を入力する。
【0049】
図6は、入金過剰画面440の具体例を示す説明図である。入金過剰画面440は、上述した合計金額を入金金額が上回っている場合に表示される画面である。
図6に示したように、入金過剰画面440は、操作誘導メッセージ441、比較結果表示442および確認ボタン444を含む。操作誘導メッセージ441は、現金を返却して入金を取り消すことを説明するメッセージ、および確認ボタン444の選択を誘導するメッセージを含む。また、
図6に示した例では、過不足が「5000円」であるので、比較結果表示442には「過剰」が示されている。当該入金過剰画面440においてスタッフが確認ボタンを選択することで、現金処理装置1は入金された現金を返却する。
【0050】
ここで、
図7を参照し、上述した入金取引の流れを整理する。
【0051】
図7は、入金取引の動作を示すフローチャートである。
図7に示したように、スタッフがレジから現金を回収し、スタッフにより紙幣投入口101および硬貨投入口117に現金が投入されると(S304)、制御部150が、紙幣投入口101および硬貨投入口117に投入された現金を計数する(S308)。
【0052】
そして、制御部150が操作表示部133に売上金額入力画面を表示させ(S312)、現金の回収元のレジでの売上金額をスタッフが入力する(S316)。そして、制御部150は、売上金額入力画面で入力された売上金額および出金取引で当該レジに出金された釣銭準備金の金額の合計金額と、入金取引で入金された現金の金額である入金金額とを比較する。上記の合計金額と入金金額が一致する場合(S320/過不足無し)、制御部150は、
図4を参照して説明した入金一致画面を操作表示部133に表示させ(S324)、入金一致画面での確認操作に基づき現金の収納処理を制御する(S328)。
【0053】
一方、上記の合計金額に対して入金金額が不足する場合(S320/不足)、制御部150は、
図5を参照して説明した入金不足画面を操作表示部133に表示させ(S332)、入金不足画面への操作に応じて追加入金または現外処理を制御する(S336)。
【0054】
上記の合計金額を入金金額が上回る場合(S320/過剰)、制御部150は、
図6を参照して説明した入金過剰画面を操作表示部133に表示させ(S340)、入金過剰画面での確認操作に基づき現金の返却を制御する(S344)。
【0055】
以上説明した入金取引によれば、レジへの現金の置忘れ、現金の紛失、および過剰な現金の回収などの事象が起こった場合に、入金金額の不足または過剰を適切に検出し、入金不足画面または入金過剰画面を表示できるので、現金管理の正確性を向上することが可能である。
【0056】
(計数取引)
計数取引は、投入された紙幣および硬貨の計数を行った後、紙幣および硬貨を返却する取引である。メニュー画面40においてスタッフにより「03:計数」ボタンが選択されると、当該計数取引が開始する。制御部150は、計数取引において、紙幣投入口101および硬貨投入口117のシャッタを開放し、紙幣および硬貨の投入を誘導する入金誘導画面を操作表示部133に表示させる。その後、制御部150は、紙幣投入口101および硬貨投入口117から投入された紙幣および硬貨を計数する。ここで、紙幣鑑別部105により正常と判断された紙幣は紙幣一時保留部103に集積され、硬貨鑑別部119により正常と判断された硬貨は硬貨一時保留部121に集積される。また、紙幣鑑別部105によりリジェクトされた紙幣は紙幣投入口101から返却され、硬貨鑑別部119によりリジェクトされた硬貨は硬貨返却部123から返却される。
【0057】
さらに、制御部150は、計数により得られた入金合計金額を操作表示部133に表示させる。そして、スタッフにより入金合計金額の確認操作が行われると、紙幣一時保留部103の紙幣が紙幣投入口101から返却され、硬貨一時保留部121の硬貨が硬貨返却部123から返却される。
【0058】
(補充取引)
補充取引は、釣銭準備金として用いられる紙幣および硬貨を紙幣カセットおよび出金ホッパ125に補充するための取引である。メニュー画面40においてスタッフにより「04:補充」ボタンが選択されると、当該補充取引が開始する。制御部150は、補充取引において、紙幣投入口101および硬貨投入口117のシャッタを開放し、紙幣および硬貨の投入を誘導する入金誘導画面を操作表示部133に表示させる。そして、紙幣投入口101および硬貨投入口117に紙幣および硬貨が投入されると、制御部150は、投入された紙幣および硬貨を紙幣カセットおよび出金ホッパ125に収納するための制御を行う。
【0059】
(設定)
設定取引は、現金処理装置1に多様な情報を設定するための取引である。例えば、設定取引では、制御部150が操作表示部133に金額設定画面を表示させ、当該金額設定画面において、補充取引により現金処理装置1に補充された釣銭準備金の金額を設定することができる。
【0060】
図8は、金額設定画面450の具体例を示す説明図である。
図8に示したように、金額設定画面450は、補充された釣銭準備金の金額の入力を誘導する操作誘導メッセージ451、金額入力欄452および登録ボタン454を含む。制御部150は、金額入力欄452に釣銭準備金の金額が入力され、登録ボタン454が選択されると、金額入力欄452に入力された釣銭準備金の金額を記憶部160に記憶させる。
【0061】
(売上回収)
売上回収取引は、現金処理装置1から売上金を回収するための取引である。メニュー画面40においてスタッフにより「06:売上回収」ボタンが選択されると、当該売上回収取引が開始する。制御部150は、売上回収取引において、締上取引で確定された売上金額に相当する現金の、紙幣カセットから回収カセット113への移動、および出金ホッパ125から硬貨回収庫127への移動を制御する。そして、制御部150は、現金処理装置1の扉を解錠し、回収カセット113および硬貨回収庫127の脱着誘導を操作表示部133に表示させる。回収カセット113および硬貨回収庫127が脱着され、売上金がスタッフにより回収され、空の回収カセット113および硬貨回収庫127がセットされると、処理が完了する。スタッフは、回収した売上金を例えば金融機関などに入金する。なお、上記では売上回収取引で現金移動が行われる例を説明したが、締上取引で現金移動が行われてもよい。
【0062】
(精査取引)
精査取引は、現金処理装置1内の有高を集計するための処理である。メニュー画面40においてスタッフにより「07:精査」ボタンが選択されると、当該精査取引が開始する。制御部150は、精査取引において、現金処理装置1の扉を解錠し、紙幣カセットからの紙幣の取り出し、および出金ホッパ125からの硬貨の取り出しを誘導する画面を操作表示部133に表示させる。その後、スタッフにより紙幣および硬貨の取り出しが行われ、現金処理装置1の扉が閉められると、制御部150は、紙幣および硬貨の投入を誘導する画面を操作表示部133に表示させる。
【0063】
その後、制御部150は、紙幣投入口101および硬貨投入口117から投入された紙幣および硬貨を計数する。ここで、紙幣鑑別部105により正常と判断された紙幣は紙幣一時保留部103に集積され、硬貨鑑別部119により正常と判断された硬貨は硬貨一時保留部121に集積される。また、紙幣鑑別部105によりリジェクトされた紙幣は紙幣投入口101から返却され、硬貨鑑別部119によりリジェクトされた硬貨は硬貨返却部123から返却される。
【0064】
さらに、制御部150は、計数により得られた合計金額を操作表示部133に表示させる。そして、スタッフにより合計金額の確認操作が行われると、搬送部が紙幣一時保留部103から紙幣カセットに紙幣を搬送し、紙幣カセットが当該紙幣を収納する。同様に、搬送部が硬貨一時保留部121から出金ホッパ125に硬貨を搬送し、出金ホッパ125が当該硬貨を収納する。
【0065】
(照会取引)
照会取引は、現金処理装置1内の有高を照会するための取引である。メニュー画面40においてスタッフにより「08:照会」ボタンが選択されると、当該照会取引が開始する。制御部150は、照会取引において、記憶部160を参照して、各紙幣カセットおよび出金ホッパ125が収納している各金種の現金の枚数を操作表示部133に表示させる。
【0066】
(締上取引)
締上取引は、売上金額を確定するための取引である。メニュー画面40においてスタッフにより「09:締上」ボタンが選択されると、当該締上取引が開始する。制御部150は、締上取引において、例えば各入金取引での個別の売上金額を合計することにより、全体の売上金額を算出してもよい。
【0067】
ここで、当該動作例による締上取引では、上述した売上金額の確定に加えて、現金処理装置1に収納されている釣銭準備金の金額の正当性の確認が行われる。具体的には、制御部150は、現金処理装置1に収納されているとして記憶部160で管理されている現金の金額、出金取引で出金された釣銭準備金の金額、および入金取引で入金された現金の金額から、現金処理装置1に収納されている釣銭準備金の金額を算出し、当該釣銭準備金の金額が所定の参照金額に一致するか否かを確認する。より詳細には、制御部150は、所定の参照金額として設定取引において登録された釣銭準備金の金額を用い、以下の数式が満たされるか否かを確認してもよい。
(1)=(2)+(3)-(4)
(1):設定取引において登録された釣銭準備金の金額
(2):現金処理装置1に収納されている現金の金額
(3):出金取引により出金されたが、入金取引によりまだ入金されていない釣銭準備金の金額
(4):確定予定の全体の売上金額
【0068】
なお、(3)に関し、入金取引で入金される現金には売上金も含まれ得るが、入金金額が出金金額に到達するまでは、入金取引で釣銭準備金が入金されたものとして扱ってもよい。
【0069】
そして、制御部150は、現金処理装置1に収納されている釣銭準備金の金額が参照金額と一致しない場合、金額の不一致を示すエラー画面を生成して、当該エラー画面を操作表示部133に表示させる。
【0070】
図9は、金額の不一致を示すエラー画面460の具体例を示す説明図である。
図9に示したように、エラー画面460は、釣銭登録金額表示461、装置内釣銭金額表示462、操作誘導メッセージ463、確認ボタン464および取消ボタン466を含む。釣銭登録金額表示461は、設定取引で登録されて、記憶部160が記憶している釣銭準備金の金額を示す。装置内釣銭金額表示462は、現金処理装置1に収納されている釣銭準備金の金額を示し、具体的には、上記数式の右辺に従って算出される金額を示す。操作誘導メッセージ463は、確認ボタン464の選択または取消ボタン466の選択を誘導するメッセージである。スタッフは、締上取引を継続する場合には確認ボタン464を選択し、締上取引を中止する場合には取消ボタン466を選択する。
【0071】
このように、当該動作例による締上取引では、売上金額の算出に加えて、現金処理装置1に収納されている釣銭準備金の金額の正当性を確認することができる。従って、締上取引とは別途に有高照会取引にて釣銭準備金の金額の確認をしなくてもよくなるので、スタッフの作業負荷が軽減される。さらに、当該動作例による締上取引では、釣銭準備金の金額の正当性を自動的に確認できるので、確認漏れ、確認ミスなどの発生を抑制することが可能である。
【0072】
-変形例
釣銭準備金の金額が参照金額と一致しない要因は幾つか考えられる。例えば、管理者のみ実施可能な「釣銭抜取取引」により現金が出金された場合、障害により現金処理装置1が現金を正しく収納できていない場合、などに釣銭準備金の金額が参照金額と相違し得る。これを踏まえ、変形例では、エラー画面から現金処理装置1の動作履歴の照会を実行するための操作画面である調査取引画面への遷移を可能とする。
【0073】
図10は、変形例によるエラー画面470の具体例を示す説明図である。
図10に示したように、変形例によるエラー画面470は、釣銭登録金額表示461、装置内釣銭金額表示462、操作誘導メッセージ473および確認ボタン474を含む。操作誘導メッセージ473は、金額の不一致の原因調査のために確認ボタン474を選択することを誘導する。制御部150は、確認ボタン474が選択されると、調査取引画面に表示画面を遷移させる。
【0074】
図11は、調査取引画面480の具体例を示す説明図である。
図11に示したように、調査取引画面480は、「1:障害履歴」ボタン481、「2:取引履歴」ボタン482、および「3:操作履歴」ボタン483を含む。制御部150は、「1:障害履歴」ボタン481が選択されると障害履歴を操作表示部133に表示させ、「2:取引履歴」ボタン482が選択されると取引履歴を操作表示部133に表示させ、「3:操作履歴」ボタン483が選択されると操作履歴を操作表示部133に表示させる。
【0075】
このような変形例によれば、エラー画面から調査取引画面に表示画面を遷移させることができるので、スタッフが不一致の原因を容易に調査することが可能となる。
【0076】
<第2の動作例>
以上、現金処理装置1の第1の動作例を説明した。続いて、現金処理装置1の第2の動作例を説明する。第1の動作例と第2の動作例とでは締上取引が異なるので、以下では第2の動作例による締上取引を主に説明する。
【0077】
現金処理装置1の状態として、確定状態および不確定状態が挙げられる。確定状態は、制御部150が管理する現金処理装置1内の現金の金額が確定金額である状態である。一方、不確定状態は、制御部150が管理する現金処理装置1内の現金の金額が確定金額でない状態である。例えば、現金処理装置1の扉が開かれ、紙幣カセットが抜き差しされた場合、紙幣カセット内の紙幣枚数が変化した可能性があるので、現金処理装置1の状態は不確定状態となり得る。
【0078】
現金処理装置1の状態が不確定状態である場合には、締上取引において第1の動作例で説明した数式により算出される釣銭準備金の金額も、実際に現金処理装置1に収納されている釣銭準備金の金額と異なり得る。そこで、第2の動作例による締上取引では、現金処理装置1の状態が不確定状態である場合に、制御部150が不確定状態を示すエラー画面を生成する。
【0079】
図12は、第2の動作例によるエラー画面510の具体例を示す説明図である。
図12に示したように、エラー画面510は、釣銭登録金額表示511、装置内釣銭金額表示512、調査誘導メッセージ513、確認ボタン514、不確定表示515および精査誘導メッセージ516を含む。不確定表示515は、現金処理装置1に対し不確定になる事象が発生したため状態が不確定状態であることを示す。装置内釣銭金額表示512には、上述した数式により算出される釣銭準備金の金額が示されるが、現金処理装置1の状態が不確定状態であるので、実際に現金処理装置1に収納されている釣銭準備金の金額と異なり得る。
【0080】
調査誘導メッセージ513は、釣銭登録金額表示511で示される金額と装置内釣銭金額表示512で示される金額が一致しない原因の調査を誘導するメッセージである。精査誘導メッセージ516は、不確定状態を解除するための精査取引を誘導するメッセージである。スタッフが確認ボタン514を選択すると、制御部150は、調査取引画面に表示画面を遷移させる。
【0081】
図13は、第2の動作例による調査取引画面520を示す説明図である。
図13に示したように、調査取引画面520は、「1:障害履歴」ボタン481、「2:取引履歴」ボタン482、および「3:操作履歴」ボタン483に加え、「4:精査」ボタン521を含む。制御部150は、「4:精査」ボタン521が選択されると、精査取引の制御を開始する。当該精査取引の実行により、現金処理装置1内に収納されている現金の金額が確定金額となる、すなわち、現金処理装置1の状態が確定状態となる。その後、スタッフが再度締上取引を実行する。
【0082】
以上説明したように、第2の動作例による締上取引では、不確定状態を示すエラー画面510を表示し、かつ、「4:精査」ボタン521を含む調査取引画面520に容易に遷移することが可能である。従って、現金管理の厳格化を図ると共に、締上取引に際して不確定状態を解除するためのスタッフの操作負荷を軽減することが可能である。
【0083】
<第3の動作例>
以上、現金処理装置1の第2の動作例を説明した。続いて、現金処理装置1の第3の動作例を説明する。第3の動作例と上述した動作例とでは締上取引および入金取引が異なるので、以下では第3の動作例による締上取引および入金取引を主に説明する。
【0084】
図14は、第3の動作例に関するシステム構成を示す説明図である。
図14に示したように、現金処理装置1はLANを介して上位端末20に接続され、上位端末20はネットワーク12を介して管理サーバ30に接続される。
【0085】
上位端末20は、現金処理装置1に関する情報、および現金処理装置1の動作などを管理する情報処理装置である。例えば、上位端末20は、現金処理装置1の通信部170から現金処理装置1が実行した各取引の情報を受信し、各取引の情報を記憶する。
【0086】
さらに、上位端末20は、現金処理装置1に補充取引により入金された釣銭準備金の金額を記憶する。例えば、スタッフが上位端末20を操作して上位端末20に釣銭準備金の金額を入力してもよいし、現金処理装置1に入力された釣銭準備金の金額を上位端末20が受信してもよい。または、各商業施設に交付された釣銭準備金の金額を管理サーバ30が管理している場合、上位端末20は、現金処理装置1が設置された商業施設に交付された釣銭準備金の金額を管理サーバ30から受信し、当該金額を記憶してもよい。
【0087】
現金処理装置1は、締上取引において、上位端末20に記憶されている釣銭準備金の金額を受信し、参照金額として当該釣銭準備金の金額を用い、現金処理装置1に収納されている釣銭準備金の金額の正当性を確認する。そして、現金処理装置1は、確認結果に応じて
図9、10、12などを参照して説明したエラー画面を生成し、当該エラー画面を操作表示部133に表示させる。
【0088】
また、現金処理装置1は、入金取引において、第1の動作例と同様に、レジでの売上金額および出金取引で当該レジに出金された釣銭準備金の金額の合計金額と、入金取引で入金された現金の金額である入金金額とを比較する。ただし、第3の動作例では、出金取引で当該レジに出金された釣銭準備金の金額が上位端末20に記憶されており、現金処理装置1は当該釣銭準備金の金額を上位端末20から受信して使用する。さらに、上位端末20にレジのPOSレジスタから各売買の記録が集められる場合、上位端末20にて各レジでの売上金額を記憶し、現金処理装置1は当該売上金額を上位端末20から受信して使用してもよい。
【0089】
このように、第3の動作例では、現金処理装置1と上位端末20との連携により現金管理の厳格化を図ることも可能である。
【0090】
<第4の動作例>
以上、現金処理装置1の第3の動作例を説明した。続いて、現金処理装置1の第4の動作例を説明する。第4の動作例と上述した動作例とでは締上取引が異なるので、以下では第4の動作例による締上取引を主に説明する。
【0091】
現金処理装置1に収納されている釣銭準備金の金額は各締上取引時に一定であるように現金処理装置1を運用する商業施設が多い。このような商業施設では、締上取引時に現金処理装置1で収納されている釣銭準備金の金額が、前回の締上取引時に現金処理装置1で収納されていた釣銭準備金の金額に一致することが望まれる。
【0092】
そこで、第4の動作例による締上取引では、第1の動作例で説明した数式の右辺により算出された、現金処理装置1で収納されている釣銭準備金の金額を記憶部160が記憶しておく。そして、新たな締上取引では、制御部150が、前回の締上取引で記憶された釣銭準備金の金額を参照金額として用いて、当該参照金額と新たに算出された現金処理装置1で収納されている釣銭準備金の金額とが一致するか否かを確認する。双方の金額が一致しない場合、制御部150は、
図9および
図10などを参照して説明したエラー画面を生成し、当該エラー画面を操作表示部133に表示させる。
【0093】
このように、参照金額として前回の締上取引時に現金処理装置1で収納されていた釣銭準備金の金額を用いることでも、他の動作例と同様に釣銭準備金の金額の正当性を自動的に確認することができる。
【0094】
<むすび>
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0095】
例えば、本明細書の現金処理装置1の処理における各ステップは、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はない。例えば、現金処理装置1の処理における各ステップは、フローチャートとして記載した順序と異なる順序で処理されても、並列的に処理されてもよい。
【0096】
また、現金処理装置1に内蔵されるCPU、ROMおよびRAMなどのハードウェアに、上述した現金処理装置1の各構成と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。また、該コンピュータプログラムを記憶させた記憶媒体も提供される。
【符号の説明】
【0097】
1 現金処理装置
101 紙幣投入口
103 紙幣一時保留部
105 紙幣鑑別部
107 万券カセット
109 五千券カセット
111 千券カセット
113 回収カセット
115 リジェクト部
117 硬貨投入口
119 硬貨鑑別部
121 硬貨一時保留部
123 硬貨返却部
125 出金ホッパ
127 硬貨回収庫
129 硬貨出金箱
131 カードリーダ部
133 操作表示部
150 制御部
160 記憶部
170 通信部
20 上位端末
30 管理サーバ