IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社JVCケンウッドの特許一覧

<>
  • 特許-車両用電子機器及び制御方法 図1
  • 特許-車両用電子機器及び制御方法 図2
  • 特許-車両用電子機器及び制御方法 図3
  • 特許-車両用電子機器及び制御方法 図4
  • 特許-車両用電子機器及び制御方法 図5
  • 特許-車両用電子機器及び制御方法 図6
  • 特許-車両用電子機器及び制御方法 図7
  • 特許-車両用電子機器及び制御方法 図8
  • 特許-車両用電子機器及び制御方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】車両用電子機器及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/26 20060101AFI20231003BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
G01C21/26 C
G09B29/00 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019185735
(22)【出願日】2019-10-09
(65)【公開番号】P2021060329
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】308036402
【氏名又は名称】株式会社JVCケンウッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅田 章典
(72)【発明者】
【氏名】村上 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】児島 知希
【審査官】佐々木 佳祐
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-014924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 21/00-25/00
G08G 1/00-99/00
G09B 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の現在位置の位置情報を取得する位置情報取得部と、
地図上において車両の現在位置に対応するエリアを特定可能な地図を示す地図情報を記憶した地図情報記憶部と、
前記位置情報取得部が取得した前記位置情報と、前記地図情報記憶部に記憶した前記地図情報とに基づいて、前記車両の現在位置に対応するエリアを特定するエリア特定部と、
を備え、
前記地図情報は、国、都道府県、市区町村、州、地方等を含むエリアの境界を特定可能な情報であり、
前記エリアの境界は、前記境界が車両が通行可能な場所から外れる場合、車両が通行可能な場所における境界線に比べて疎な点の集合として規定される、
車両用電子機器。
【請求項2】
車両の現在位置の位置情報を取得する位置情報取得部と、
地図上において車両の現在位置に対応するエリアを特定可能な地図を示す地図情報を記憶した地図情報記憶部と、
前記位置情報取得部が取得した前記位置情報と、前記地図情報記憶部に記憶した前記地図情報とに基づいて、前記車両の現在位置に対応するエリアを特定するエリア特定部と、
を備え、
前記地図情報は、国、都道府県、市区町村、州、地方等を含むエリアの境界を特定可能な情報であり、
前記エリアの境界は、前記境界が海岸線を含む場合、海岸線を陸地における境界線に比べて疎な点の集合として規定される、
両用電子機器。
【請求項3】
前記地図情報は、前記エリアの境界を外側に拡大する場合、前記エリアの境界を示す各点をエリアの外側に移動した点の集合として規定される、
請求項1または2に記載の車両用電子機器。
【請求項4】
前記エリア特定部が特定した前記車両のエリアに応じて、前記車両用電子機器の機能に対する制御を行う機能制御部、
を備える請求項1からのいずれか一項に記載の車両用電子機器。
【請求項5】
車両の現在位置の位置情報を取得する位置情報取得ステップと、
前記位置情報取得ステップによって取得された前記位置情報と、地図上において車両の現在位置に対応するエリアを特定可能な地図を示し、国、都道府県、市区町村、州、地方等を含むエリアの境界を特定可能な地図情報を記憶した地図情報記憶部に記憶した前記地図情報とに基づいて、前記車両の現在位置に対応するエリアを特定するエリア特定ステップと、
を含み、
前記エリアの境界は、前記境界が車両が通行可能な場所から外れる場合、車両が通行可能な場所における境界線に比べて疎な点の集合として規定される、
制御方法。
【請求項6】
車両の現在位置の位置情報を取得する位置情報取得ステップと、
前記位置情報取得ステップによって取得された前記位置情報と、地図上において車両の現在位置に対応するエリアを特定可能な地図を示し、国、都道府県、市区町村、州、地方等を含むエリアの境界を特定可能な地図情報を記憶した地図情報記憶部に記憶した前記地図情報とに基づいて、前記車両の現在位置に対応するエリアを特定するエリア特定ステップと、
を含み、
前記エリアの境界は、前記境界が海岸線を含む場合、海岸線を陸地における境界線に比べて疎な点の集合として規定される、
制御方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電子機器及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナビゲーションに使用される地図情報について、海岸線、道路を直線の組み合わせで表現するに際し、海岸線を構成する直線に比べて、道路を構成する直線を細かくする技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-325692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ナビゲーションシステムが使用する詳細な地図情報は、道路の情報、地形の情報、建物または施設の情報などを含む。このような詳細な地図情報は、情報量が多く、記憶容量が大きい記憶装置を要する。また、詳細な地図情報を用いて処理等を行う場合、処理の負荷が増大するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、エリアを判定可能な地図情報を軽量化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る車両用電子機器は、車両の現在位置の位置情報を取得する位置情報取得部と、地図上において車両の現在位置に対応するエリアを特定可能な地図を示す地図情報を記憶した地図情報記憶部と、前記位置情報取得部が取得した前記位置情報と、前記地図情報記憶部に記憶した前記地図情報とに基づいて、前記車両の現在位置に対応するエリアを特定するエリア特定部と、を備え、前記地図情報は、国、都道府県、市区町村、州、地方等を含むエリアの境界を特定可能な情報であり、前記エリアの境界は、前記境界を示す点の集合として規定される。
【0007】
本発明に係る制御方法は、車両の現在位置の位置情報を取得する位置情報取得ステップと、前記位置情報取得ステップによって取得された前記位置情報と、地図上において車両の現在位置に対応するエリアを特定可能な地図を示し、国、都道府県、市区町村、州、地方等を含むエリアの境界を特定可能な地図情報を記憶した地図情報記憶部に記憶した前記地図情報とに基づいて、前記車両の現在位置に対応するエリアを特定するエリア特定ステップと、を含み、前記エリアの境界は、前記境界を示す点の集合として規定される。
【0008】
本発明に係るプログラムは、車両の現在位置の位置情報を取得する位置情報取得ステップと、前記位置情報取得ステップによって取得された前記位置情報と、地図上において車両の現在位置に対応するエリアを特定可能な地図を示し、国、都道府県、市区町村、州、地方等を含むエリアの境界を特定可能な地図情報を記憶した地図情報記憶部に記憶した前記地図情報とに基づいて、前記車両の現在位置に対応するエリアを特定するエリア特定ステップと、を含み、前記エリアの境界は、前記境界を示す点の集合として規定される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エリアを判定可能な地図情報を軽量化することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第一実施形態に係る車両用記録装置の構成例を示すブロック図である。
図2図2は、第一実施形態に係る地図情報の一例を示す図である。
図3図3は、第一実施形態に係る地図情報の一例を説明する概略図である。
図4図4は、第一実施形態に係る車両用記録装置における処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図5図5は、第二実施形態に係る地図情報の一例を説明する図であり、海岸線のエリアの境界のデータを間引きした図である。
図6図6は、第三実施形態に係る地図情報の一例を説明する図であり、道路から外れるエリアの境界のデータを間引きした図である。
図7図7は、第四実施形態に係る地図情報の一例を説明する図であり、エリアの境界を拡大した図である。
図8図8は、通常のエリアの境界と、エリアを拡大した境界とを説明する図である。
図9図9は、第四実施形態に係る地図情報の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る車両用記録装置、制御方法及びプログラムの実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態により本発明が限定されるものではない。本実施形態では、車両用電子機器は、車両用記録装置10として説明する。
【0012】
[第一実施形態]
図1は、第一実施形態に係る車両用記録装置10の構成例を示すブロック図である。車両用記録装置10は、例えば、いわゆるドライブレコーダである。車両用記録装置10は、GNSS(Global Navigation Satellite System)の一例であるGPS(Global Positioning System)受信部11と、カメラ(撮影部)12と、記憶部13と、地図情報記憶部14と、制御部20とを有する。
【0013】
GPS受信部11は、GPS受信回路、GPS受信アンテナ等から構成されており、GPS信号を受信する。GPS受信部11は、受信したGPS信号を位置情報取得部21に出力する。
【0014】
カメラ12は、車両の周辺を撮影するカメラである。カメラ12は、例えば、車両の全方位を撮影する。カメラ12は、例えば、車両の前方に配置され、車両の前方を中心とした周辺を撮影する。カメラ12は、機能制御部24によって撮影及び保存に関する処理が制御される。より詳しくは、カメラ12は、機能制御部24からの制御信号に基づいて、撮影開始と撮影終了とが制御される。カメラ12は、機能制御部24からの制御信号に基づいて、撮影した映像データが記憶部13に保存される。映像データは、例えば毎秒30フレームの画像から構成される動画像である。
【0015】
記憶部13は、車両用記録装置10における種々のデータを記録する。記憶部13は、例えば、車両の走行中および駐車中にカメラ12が撮影した映像データを記録する。記憶部13は、例えば、SDカードのようなRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)などの半導体メモリ素子、または、ハードディスク、ソリッドステートドライブなどの記憶装置で実現することができる。記憶部13は、複数の異なるメモリなどで構成されてもよい。または、図示しない通信装置を介して無線接続される外部記憶装置であってもよい。記憶部13は、機能制御部24から出力された制御信号に基づいて、映像データを記録する。
【0016】
地図情報記憶部14は、地図上において車両の現在位置に対応するエリアを特定可能な地図を示す地図情報を記憶している。地図情報は、車両の現在位置に応じたエリアを特定するための情報である。より詳しくは、地図情報は、例えば、国、都道府県、市区町村、州、地方等を含む地域(エリア)の境界を特定可能な輪郭の情報である。エリアは、車両用記録装置10の撮影記録の開始と停止を含む機能制限、撮影時のフレームレート、車両用記録装置10が管理する時計のタイムゾーン、車両用記録装置10が使用する距離または速度等の単位系、保存する映像データのファイル名またはフォルダ名等、または、常時撮影の要否を含む機能制御を規定する地域であってもよい。地図情報は、エリアの境界を示す、エリアの輪郭が特定可能なものであればよい。言い換えると、地図情報は、エリアの境界を示す、閉じた領域を特定可能なものであればよい。地図情報は、例えば、いわゆるナビゲーションシステムが使用する詳細な地図情報のような、道路の情報、地形の情報、建物または施設の情報などを含まない。地図情報記憶部14は、図示しない通信部を介して接続される、外部の記憶装置であってもよい。
【0017】
図2は、第一実施形態に係る地図情報の一例を示す図である。図3は、第一実施形態に係る地図情報の一例を説明する概略図である。エリアの境界は、境界を示す、複数の点の集合として規定される。本実施形態では、エリアの境界は、緯度及び経度で示される、複数の点の集合として規定される。例えば、図2は、B国の地図情報である。図2に示すように、地図情報は、閉じた領域の境界を示す点の集合をテーブルとして記憶する。境界を示す点とは、境界線の上に位置する点、及び、境界線を近似する近似境界線の上に位置する点を含む。図2に示す地図情報は、B国の輪郭である閉じた領域を、番号「1」の最初の点から番号「N」の最後の点までの集合として規定する。各点は、各点の位置を示す緯度及び経度の情報を有する。本実施形態では、地図情報は、閉じた領域の境界線上に位置する、例えば緯度及び経度の情報である。このテーブルに記憶された各点を1番からN番まで順番にたどって、N番から1番に戻るように各点を直線で結ぶと、閉じた領域であるエリアの境界、言い換えると、B国の輪郭が示される。
【0018】
図3には、A国とB国とC国との境界が示されている。図3には、B国の閉じた領域が表示されている。図3には、A国の一部とC国の一部とが示されていて、A国の閉じた領域とC国の閉じた領域とは示されていない。図3において、隣接する点の距離は等間隔である。
【0019】
地図情報記憶部14は、地図情報更新部22によってデータ更新が可能である。地図情報記憶部14は、例えば、エリアの境界が変更されるごと、または、任意のタイミングで、データが更新される。
【0020】
制御部20は、車両用記録装置10の各部を制御する。制御部20は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などで構成された演算処理装置である。制御部20は、図示しない記憶部に記憶されているプログラムをメモリにロードして、プログラムに含まれる命令を実行する。制御部20は、位置情報取得部21と、地図情報更新部22と、エリア特定部23と、機能制御部24とを有する。制御部20には図示しない内部メモリが含まれ、内部メモリは制御部20におけるデータの一時記憶などに用いられる。
【0021】
位置情報取得部21は、車両の現在位置を示す位置情報を取得する。位置情報取得部21は、GPS受信部11が受信した電波に基づいて、車両の現在位置の位置情報を公知の方法によって算出する。位置情報取得部21は、準天頂衛星を含む他の測位システムを使用して、車両の現在位置の位置情報を算出してもよい。位置情報は、経緯度及び高度など位置推定に必要な情報で特定されるものとする。
【0022】
地図情報更新部22は、地図情報記憶部14に記憶した地図情報を更新する。地図情報更新部22は、例えば、エリアの境界が変更されるごと、または、任意のタイミングで、データを更新する。
【0023】
エリア特定部23は、車両の現在位置に対応するエリアを特定する。より詳しくは、エリア特定部23は、位置情報取得部21が取得した位置情報と、地図情報記憶部14が記憶した地図情報とに基づいて、車両の現在位置に対応するエリアを特定する。エリア特定部23は、地図情報記憶部14が記憶する地図情報から、車両の現在位置の位置情報が示す緯度及び経度に対応するエリアを特定する。例えば、エリア特定部23は、位置情報に応じて、A国、B国といったエリアを特定する。
【0024】
機能制御部24は、車両用記録装置10の機能を制御する。本実施形態では、機能制御部24は、車両用記録装置10の撮影記録の開始と停止とを制御する。
【0025】
機能制御部24は、エリア特定部23が特定したエリアに応じて、車両用記録装置10の機能を制御してもよい。例えば、機能制御部24は、エリア特定部23が特定したエリアに応じて、撮影記録の開始と停止、撮影時のフレームレート、車両用記録装置10が管理する時計のタイムゾーン、車両用記録装置10が使用する距離または速度等の単位系、保存する映像データのファイル名またはフォルダ名等、または、常時撮影の要否を制御してもよい。
【0026】
次に、図4を用いて、制御部20における処理の流れについて説明する。図4は、第一実施形態に係る車両用記録装置10における処理の流れの一例を示すフローチャートである。車両用記録装置10が起動している間、位置情報取得部21は、常時、車両の現在位置を示す位置情報を取得しているものとする。車両用記録装置10は、所定の時間間隔、または、所定の走行距離間隔で、図4に示すフローチャートの処理を実行する。
【0027】
制御部20は、エリア特定部23によって、車両の現在位置に対応するエリアを特定する(ステップS101)。より詳しくは、エリア特定部23によって、地図情報記憶部14が記憶する地図情報と、位置情報取得部21が取得した位置情報とに基づいて、車両の現在位置に対応するエリアを特定する。制御部20は、ステップS102へ進む。
【0028】
制御部20は、機能制御部24によって、エリア特定部23が特定したエリアに応じて、車両用記録装置10の機能を制御する(ステップS102)。例えば、機能制御部24によって、エリア特定部23が特定したエリアに応じて、撮影記録の開始と停止、撮影時のフレームレート、車両用記録装置10が管理する時計のタイムゾーン、車両用記録装置10が使用する距離または速度等の単位系、保存する映像データのファイル名またはフォルダ名等、または、常時撮影の要否を制御する。制御部20は、処理を終了する。
【0029】
上述したように、本実施形態では、地図情報は、車両の現在位置に応じたエリアを特定するための情報であり、いわゆるナビゲーションシステムが使用する詳細な地図情報のような、道路の情報、地形の情報、建物または施設の情報などを含まない。本実施形態では、地図情報は、エリアの境界を、境界を示す点の集合として規定する。本実施形態によれば、エリアの判定等の処理に使用する地図情報の容量を抑制することができる。本実施形態によれば、地図情報のデータ容量が抑制されるので、地図情報を記憶する記憶装置の記憶容量も抑制することができる。本実施形態によれば、地図情報の容量が抑制されるので、地図情報を使用する、エリアの判定等の処理の負荷を低減することができる。これらにより、本実施形態は、ドライブレコーダのような車両用電子機器に無理なく搭載することができる。
【0030】
[第二実施形態]
図5を参照しながら、本実施形態に係る車両用記録装置10について説明する。図5は、第二実施形態に係る地図情報の一例を説明する図であり、海岸線のエリアの境界のデータを間引きした図である。車両用記録装置10は、基本的な構成は第一実施形態の車両用記録装置10と同様である。以下の説明においては、車両用記録装置10と同様の構成要素には、同一の符号または対応する符号を付し、その詳細な説明は省略する。本実施形態では、地図情報記憶部14が第一実施形態と異なる。
【0031】
地図情報記憶部14は、エリアの境界が海岸線を含む場合、海岸線を陸地に比べて疎な点の集合として規定した地図情報を記憶する。図5には、D市とE市の境界が黒い丸で示されている。図5では、エリアの境界が海岸線である部分は、エリアの境界が陸地である部分に比べて、隣接する点の距離が遠い。海岸線などの他エリアに隣接していない2点間の距離は他エリアに隣接している陸地などのそれと比較して長くしてもよい。言い換えると、海岸線などの他エリアに隣接していない部分では、エリアの境界データの精度は、エリアの境界が陸地である部分に比べて低くてもよい。エリアの境界が海岸線である部分では、隣接する点の距離を例えば数100m程度より大きく、エリアの境界が陸地である部分では、隣接する点の距離を例えば数m程度より小さくしてもよい。具体的な距離は実際の境界の形状、地図情報の精度、解像度、縮尺、縮尺、地域、地形などの様々な条件に合わせて設定される。例えば、エリアの境界が海岸線である部分のうち領域Lでは、陸地が突出した点Rと点Qのみを点の集合としてもよい。この場合、領域Lにおいては、エリアの境界が、点Rと点Qとを結んだ近似境界線である直線Mになる。エリアの境界が海岸線である部分では、点の集合がエリアの境界を正確に示していなくてもよい。
【0032】
通常、車両が海洋上に位置することはないので、海洋上には特定すべきエリアが設定されない。そこで、海岸線を海洋上にすらず、言い換えると、エリアの境界を海洋上にずらしても車両のエリアの判定には問題がない。
【0033】
例えば、入り組んだ海岸線がエリアの境界である場合、陸地部分をすべて含む点の集合によってエリアの境界を規定してもよい。例えば、図5に示す地図情報では、海岸線の領域Lにおけるエリアの境界を、点Qと点Rとのみによって規定してもよい。この場合、領域Lにおけるエリアの境界は、点Qと点Rとを結んだ直線Mになる。
【0034】
上述したように、本実施形態では、地図情報は、エリアの境界が海岸線を含む場合、海岸線を陸地に比べて疎な点の集合として規定する。本実施形態では、地図情報が、エリアの境界が海岸線を含む場合、海岸線に重なるエリアの境界を簡略化及び簡素化することができる。本実施形態によれば、地図情報の容量をより抑制することができる。
【0035】
[第三実施形態]
図6は、第三実施形態に係る地図情報の一例を説明する図であり、道路から外れるエリアの境界のデータを間引きした図である。車両用記録装置10は、基本的な構成は第一実施形態の車両用記録装置10と同様である。本実施形態では、地図情報記憶部14が第一実施形態と異なる。
【0036】
地図情報記憶部14は、エリアの境界が車両が通行可能な場所から外れる場合、車両が通行可能な場所に比べて疎な点の集合として規定した地図情報を記憶する。図6には、D市とE市との境界が黒い丸で示されている。例えば、地図情報は、エリアの境界が道路外である場合、エリアの境界が道路上である場合に比べて、隣接する点の距離が遠い。道路外の2点間の距離は道路上のそれと比較して長くしてもよい。具体的な距離は実際の境界の形状、地図情報の精度、解像度、縮尺、縮尺、地域、地形などの様々な条件に合わせて設定される。
【0037】
車両が通行可能な場所以外に位置することは通常ないので、車両が通行可能な場所以外では、エリアの境界データの精度は、車両が通行可能な場所に比べて低くてもよい。車両が通行可能な場所では、高い精度のエリアの境界データを使用して車両のエリアをより正確に判定できることが望ましい。そこで、車両が通行可能な場所では、車両が通行可能な場所以外に比べて、エリアの境界データを密な点の集合として規定することが好ましい。
【0038】
図6では、エリアの境界が道路上に位置する領域S及び領域Tでは、エリアの境界が車両が通行可能な場所から外れる、他の場所に比べて、エリアの境界が密な点の集合として規定されている。
【0039】
上述したように、本実施形態は、地図情報は、エリアの境界が車両が通行可能な場所から外れる場合、車両が通行可能な場所に比べて疎な点の集合として規定する。本実施形態では、エリアの境界が車両が通行可能な場所から外れる場合、エリアの境界を簡略化及び簡素化することができる。本実施形態によれば、地図情報の容量をより抑制することができる。
【0040】
[第四実施形態]
図7ないし図9を参照しながら、本実施形態に係る車両用記録装置10について説明する。図7は、第四実施形態に係る地図情報の一例を説明する図であり、エリアの境界を拡大した図である。図8は、通常のエリアの境界と、エリアを拡大した境界とを説明する図である。図9は、第四実施形態に係る地図情報の他の例を示す図である。車両用記録装置10は、基本的な構成は第一実施形態の車両用記録装置10と同様である。本実施形態では、地図情報記憶部14が第一実施形態と異なる。
【0041】
地図情報記憶部14は、エリアの境界を外側に拡大した地図情報を記憶する。エリアの境界を拡大した地図情報は、各点をエリアの外側に移動した点の集合として規定される。より詳しくは、エリアの境界を拡大した地図情報は、緯度及び経度がエリアの外側に移動された点の集合である。各点をエリアの外側に移動する移動量Δdは、例えば、数m程度以上、数100m程度以下としてもよい。具体的な移動量Δdは実際の境界の形状、地図情報の精度、解像度、縮尺、縮尺、地域、地形などの様々な条件に合わせて設定される。
【0042】
図7図8に示す地図情報は、通常のエリアの境界を黒い丸で示し、B国の拡大したエリアの境界を白い丸で示す。エリアの境界を拡大した地図情報と通常の地図情報とは、集合に含まれる点の数が変化しない。これにより、エリアの境界を拡大しても、地図情報のデータ量は増加しない。
【0043】
エリア特定部23は、位置測定の精度が低くても、車両が所定のエリアに位置することを漏れなく特定したい場合などには、エリアの境界を拡大した地図情報を使用してエリアを特定してもよい。例えば、エリア特定部23は、車両の現在位置がエリアの境界から所定距離以内に位置する場合、エリアの境界を拡大した地図情報を使用してエリアを特定してもよい。例えば、エリア特定部23は、位置情報取得部21による位置精度が低い場合、エリアの境界を拡大した地図情報を使用してエリアを特定してもよい。
【0044】
エリアの境界を拡大した地図情報は、地図情報記憶部14に記憶された、通常の地図情報を元にして、エリア特定部23が処理を行う際に動的にエリアの境界を拡大してもよい。この場合は、拡大した第2領域の地図情報を2重に持つ必要がなく、あらかじめ記憶しておく地図情報のデータ量を削減することができる。
【0045】
図9に示すように、地図情報は、エリアの境界を特定可能な輪郭の情報と、輪郭の情報に付随する情報を有してもよい。図9に示す地図情報は、図2に示す地図情報に加えて、各点について、付随情報を有する。付随情報は、例えば、当該エリアにおける地図の拡大・縮小の要否などを含む制御情報である。地図の拡大・縮小の要否の情報とは、海岸線など他のエリアに非隣接の点について、拡大または縮小の対象外とするか否かを示すための情報である。動的にエリアの境界を拡大・縮小する処理を行う場合、付随情報として記憶された、地図の拡大・縮小が「要」である点については、拡大・縮小処理を実行し、地図の拡大・縮小が「否」である点については、拡大・縮小処理を実行しない。これにより、動的にエリアの境界を拡大・縮小する処理における演算量を低減することができる。
【0046】
または、エリアの境界を拡大した地図情報は、地図情報記憶部14に記憶した、通常のエリアである第一領域の地図情報に比べてエリアの境界を外側に拡大した第二領域の地図情報を記憶しておいてもよい。
【0047】
エリア特定部23は、図8に示す通常のエリアの境界の地図情報を使用すると、地点P1がA国に位置すると特定する。エリア特定部23は、図8に示すB国の拡大したエリアの境界の地図情報を使用すると、地点P1がB国に位置すると特定する。
【0048】
上述したように、本実施形態は、地図情報は、エリアの境界を外側に拡大した点の集合として規定する。本実施形態によれば、エリアの境界を拡大しても、エリアの判定等の処理に使用する地図情報の容量を抑制することができる。
【0049】
これに対して、ナビゲーションシステムが使用する詳細な地図情報は、情報量が多く、演算量が過大になるため、動的な地図の加工処理が困難である。本実施形態の地図情報は、地図情報のデータ量が、ナビゲーションシステムが使用する詳細な地図情報に比べて大幅に削減されるので、動的な地図の加工処理が実現可能である。
【0050】
本実施形態のように、エリアの境界を拡大するように地図を加工することによって、現在位置の測定精度が低い場合に、測定精度の誤差を吸収することができる。具体的には、エリアの境界が拡大されることによって、現在位置の測定精度が低く、当該エリアの境界の周辺に位置する場合に、当該エリアに位置すると判定されやすくなる。これにより、例えば、法令などで撮影記録が禁止されているエリアなどの境界を拡大することによって、撮影記録が禁止されているエリアに位置するにも関わらず、誤って撮影記録が可能なエリアに位置すると判定されることを回避することができる。このようにして、本実施形態によれば、法令に違反して誤って撮影記録する確率を低減し、法令を順守して撮影記録を回避する確率を向上することができる。
【0051】
さて、これまで本発明に係る車両用記録装置10について説明したが、上述した実施形態以外にも種々の異なる形態にて実施されてよいものである。
【0052】
図示した車両用記録装置10の各構成要素は、機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていなくてもよい。すなわち、各装置の具体的形態は、図示のものに限られず、各装置の処理負担や使用状況などに応じて、その全部または一部を任意の単位で機能的または物理的に分散または統合してもよい。
【0053】
車両用記録装置10の構成は、例えば、ソフトウェアとして、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。上記実施形態では、これらのハードウェアまたはソフトウェアの連携によって実現される機能ブロックとして説明した。すなわち、これらの機能ブロックについては、ハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、または、それらの組み合わせによって種々の形で実現できる。
【0054】
上記した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものを含む。さらに、上記した構成は適宜組み合わせが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において構成の種々の省略、置換または変更が可能である。すなわち、エリアごとに規定される法に則った制御を行う制御部であればよい。
【0055】
上記では、車両用電子機器の一例として車両用記録装置10について説明したが、これに限定されない。車両用電子機器は、ナビゲーションシステム、オーディオ装置、表示装置などでもよい。また、車両用電子機器とは、車両に搭載して使用する電子機器を含むものであり、スマートフォンなどの携帯端末機器を車両に搭載して使用する場合は、携帯端末機器も車両用電子機器に含まれるものである。
【0056】
制御部20は、車両の現在位置情報を外部のナビゲーションシステムから取得してもよい。
【符号の説明】
【0057】
10 車両用記録装置(車両用電子機器)
11 GPS受信部
12 カメラ
13 記憶部
14 地図情報記憶部
20 制御部
21 位置情報取得部
22 地図情報更新部
23 エリア特定部
24 機能制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9