(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】車両前部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/04 20060101AFI20231003BHJP
B60R 1/06 20060101ALI20231003BHJP
B60J 1/02 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
B62D25/04 A
B60R1/06 D
B60J1/02 J
(21)【出願番号】P 2019203434
(22)【出願日】2019-11-08
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】石岡 大貴
(72)【発明者】
【氏名】原 康洋
(72)【発明者】
【氏名】是石 智正
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 順平
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-162021(JP,A)
【文献】実開昭59-132414(JP,U)
【文献】特開2007-55318(JP,A)
【文献】特開2019-89447(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/00 ー 25/24
B60R 1/06
B60J 1/00 ー 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロントウインドシールドガラスの車両幅方向外端部に沿って延在された第1柱と、前記第1柱に対して略車両前後方向に所定の間隔を空けて配置された第2柱と、前記第1柱と前記第2柱とを略車両前後方向に連結する少なくとも一つの連結部材とを含み、格子枠形状をなす車両用ピラーと、
前記第1柱と前記第2柱との間に架け渡されることで、前記格子枠形状の枠内を覆いかつ車両外部が視認可能な透明窓部材と、
前記連結部材の車両上方側又は車両下方側において前記車両用ピラーに固定されると共に、鏡面が前記透明窓部材に対向して配置され、車両側部後方を視認するためのアウタミラーと、を備え、
前記車両用ピラーは、
前記第1柱及び前記第2柱の双方が延在方向の中間部で屈曲されて、下部側が略車両上下方向に延在し、上部側が略車両後方側に延在しており、前記第1柱及び前記第2柱の断面積は、前記上部側よりも前記下部側の方が小さくなるように構成され、
前記アウタミラーは、前記車両用ピラーの前記下部側において、前記鏡面が前記透明窓部材に対向して配置されている、
車両前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の車両前部構造は、車両前後方向に間隔を空けて配置された第1柱と第2柱によって構成された車両用ピラーを備えている。この車両用ピラーは、第1柱と第2柱に透明窓部材が架け渡されており、第1柱と第2柱とで形成される開口を覆っている。これにより、運転席に着座した乗員が車両用ピラーの開口から透明窓部材を介して車両外部を視認することができるため、乗員の視認性が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術では、車両の前方側部に配置されるアウタミラーの視認性を向上させる点について考慮していない。よって、上記先行技術は、この点において改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、乗員の視認性を向上させることができる車両前部構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の本発明に係る車両前部構造は、フロントウインドシールドガラスの車両幅方向外端部に沿って延在された第1柱と、前記第1柱に対して略車両前後方向に所定の間隔を空けて配置された第2柱と、前記第1柱と前記第2柱とを略車両前後方向に連結する少なくとも一つの連結部材とを含み、格子枠形状をなす車両用ピラーと、前記第1柱と前記第2柱との間に架け渡されることで、前記格子枠形状の枠内を覆いかつ車両外部が視認可能な透明窓部材と、前記連結部材の車両上方側又は車両下方側において前記車両用ピラーに固定されると共に、鏡面が前記透明窓部材に対向して配置され、車両側部後方を視認するためのアウタミラーと、を備え、前記車両用ピラーは、前記第1柱及び前記第2柱の双方が延在方向の中間部で屈曲されて、下部側が略車両上下方向に延在し、上部側が略車両後方側に延在しており、前記第1柱及び前記第2柱の断面積は、前記上部側よりも前記下部側の方が小さくなるように構成され、前記アウタミラーは、前記車両用ピラーの前記下部側において、前記鏡面が前記透明窓部材に対向して配置されている。
【0007】
請求項1に記載の本発明に係る車両前部構造では、フロントウインドシールドガラスの車両幅方向外端部に沿って延在された第1柱と、第1柱に対して略車両前後方向に所定の間隔を空けて配置された第2柱とを有する車両用ピラーを備えている。車両用ピラーは、この第1柱と第2柱とを含む枠形状に形成されており、枠形状の枠内は、第1柱と第2柱に架け渡された透明窓部材で覆われている。したがって、例えば、車両の運転席に着座した乗員が車両用ピラーの枠内から透明窓部材を介して車両外部を視認することができる。これにより、死角が減り、乗員の車両の進行方向に対する視認性が向上する。
【0008】
さらに、車両用ピラーには、アウタミラーが固定されており、アウタミラーの鏡面が第1柱と第2柱との間に架け渡された透明窓部材に対向して配置されている。したがって、例えば、運転席に着座した乗員が車両用ピラーの枠内から透明窓部材を介して鏡面を視認することができる。これにより、乗員がアウタミラーを確認する際の視認性が向上する。
【0009】
ここで、「対向して配置」とは、乗員(運転者)が車両の側部後方を視認できるように鏡面が透明窓部材に対して向き合って配置されることを意図しており、透明窓部材を板厚方向に沿って車両外側に平行移動させた場合に、透明窓部材と鏡面とが干渉する位置に配置されていることである。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、請求項1に係る車両前部構造は、乗員の視認性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施形態に係る車両前部構造が適用された車両の側面図である。
【
図2】
図1の2-2線に沿って切断した状態を模式的に示す車両前部の正面図である。
【
図3】
図1の3-3線に沿って切断した状態を拡大して示すピラーの拡大平断面図である。
【
図4】走行時における運転者の視野を模式的に示す車両前部の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、
図1~
図4を用いて、本実施形態に係る車両前部構造が適用された車両10について説明する。なお、各図に適宜示される矢印FRは車両前方側を示しており、矢印UPは車両上方側を示しており、矢印RHは車両右側を示している。また、以下の説明で特記なく前後、上下、左右の方向を用いる場合は、車両前後方向の前後、車両上下方向の上下、進行方向を向いた場合の左右を示すものとする。
【0013】
図1及び
図2に一部示されるように、車両10は、車両10の下部に配置されて、骨格部材を構成する図示しないフレーム構造体と、このフレーム構造体の上に固定されたボデー12を有している。
【0014】
このボデー12は、車両前後方向に長い略直方体に形成されており、左右一対の側壁部12Aと、一対の側壁部12Aの間に車両幅方向に架け渡されて、車室14の床面を構成するフロア12Bと、車室14の天井部を構成するルーフ12Cとを備えている。また、車室14内の車両前方側には、運転席用の車両用シート16が配設されており、この車両用シート16には、運転者Dが着座している。
【0015】
車両用シート16は、車室14内の車両前方側かつ車両幅方向中央に配置されており、サスペンションタワー18の間を車両幅方向に架け渡されたフロア12Bの上に固定されている。この車両用シート16は、図示しないブラケットを介してフロア12Bに固定されたシートクッション16Aと、シートクッション16Aに傾倒可能に支持されたシートバック16Bと、を有している。また、シートバック16Bの上端には、運転者Dの頭部支持するヘッドレスト16Cが取り付けられている。
【0016】
また、車両用シート16よりも車両前方側には、車両10の車体前面に形成された開口部20を覆うフロントウインドシールドガラス22(以下、「Frガラス22」とする。)が設けられている。このFrガラス22は開口部20に固定される透明の窓部材であり、車室14の内側と車室14の外側とを隔てている。また、Frガラス22は、板厚方向を略車両前後方向とし、車両幅方向及び車両上下方向に延在すると共に、側面視で車両上方側に向かうにつれて若干車両後方側へと傾けられている。
【0017】
図示はしないが、Frガラス22の上端部は、車両幅方向に延び、開口部20の上縁を構成し、かつ、ルーフ12Cの前端部を構成するフロントヘッダに接続されている。また、Frガラス22の下端部は、車両幅方向に延び、開口部20の下縁を構成するカウルに接続されている。
【0018】
Frガラス22は、一定の板厚で形成されており、Frガラス22の車両幅方向中間部分が車両前方側へ凸となるように穏やかな湾曲形状とされている。そして、Frガラス22の車両幅方向外側には、車両用ピラーとしてのピラー30が左右一対にそれぞれ設けられている。
【0019】
左右一対のピラー30は、延在方向の中間部が屈曲しており、側面視で車両後方側かつ車両下方側に開放された略L字状に形成されている。ピラー30の下部は、Frガラス22の車両幅方向外端部に沿って配置された直線部30Aとされており、略車両上下方向に延在している。また、ピラー30の上部は、直線部30Aの上端から緩やかに屈曲して車両後方側に延在する屈曲部30Bとされている。以下、車両幅方向右側のピラー30について説明するが、車両幅方向左側のピラー30も同様の構成とされている。
【0020】
ピラー30は、車両前方部分を構成する第1柱32と、車両後方部分を構成する第2柱40と、を備えている。また、ピラー30は、第1柱32と第2柱40を車両前後方向にそれぞれ連結する上部連結部材52と下部連結部材54とを備えている。
【0021】
第1柱32は、延在方向の中間部が屈曲すると共に、側面視で車両後方側かつ車両下方側に開放された略L字状に形成されている。
【0022】
ここで、
図3には、
図1の3-3線に沿って、ピラー30の直線部30Aを、延在方向(車両上下方向)と直交する方向で切断した状態を示す平断面図が示されている。
【0023】
この図に示されるように、第1柱32は、閉断面を形成する第1ピラーアウタ34と第1ピラーインナ36とを含んでいる。第1ピラーアウタ34は、鋼板製とされ、車室14側に開放された略ハット型の断面を有している。
図3に基づいて説明すると、第1ピラーアウタ34は、車両幅方向外側に面して配置された外側壁34Aと、外側壁34Aの前端部及び後端部から車両幅方向内側に延在し、車両前後方向に対向して配置された一対の側壁34Bと、を含む。また、車両前方側の側壁34Bの先端部に前フランジ部34Cが形成されている。さらに、車両後方側の側壁34Bの先端部に後フランジ部34Dが形成されている。
【0024】
第1ピラーインナ36は、鋼板製とされ、断面形状が略クランク状に形成されている。この第1ピラーインナ36は、車室14側から第1ピラーアウタ34の開口を塞ぐように設けられている。そして、第1ピラーインナ36の前端部及び後端部は、第1ピラーアウタ34の前フランジ部34C及び後フランジ部34Dにそれぞれ接合されている。これにより、第1柱32では、第1ピラーアウタ34と第1ピラーインナ36とによって、閉断面構造が形成されている。なお、この閉断面の断面積は、ピラー30の屈曲部30Bを構成する部位の方が、直線部30Aを構成する部位よりも大きくなるように設定されている。つまり、第1柱32は、直線部30Aよりも屈曲部30Bのほうが太くなるように形成されている(
図1参照)。
【0025】
また、第1ピラーアウタ34の車両前方側には、第1柱32の車両外側の意匠面を構成する第1アウタパネル38が配置されている。第1アウタパネル38は、車両後方側に開放された略U字状に形成されており、第1ピラーアウタ34の車両前方側の側壁34Bを車室14の外側から覆うように配置されている。第1アウタパネル38の開放端には、互いに離間する方向に延在する第1取付フランジ部38Aがそれぞれ形成されている。第1取付フランジ部38Aは、車室14の外側から第1ピラーアウタ34の外側壁34Aと前フランジ部34Cとにそれぞれ接合されている。これにより、第1ピラーアウタ34と第1アウタパネル38によって閉断面構造が形成されている。
【0026】
なお、前フランジ部34Cに接合された第1取付フランジ部38Aには、止水用のシール材50を介してFrガラス22の車両幅方向外端部が接合されている。また、外側壁34Aに接合された第1取付フランジ部38Aには、止水用のシール材50を介して後述する第1透明窓部材60の車両前後方向の前端部が接合されている。
【0027】
一方、ピラー30の車両後方部分を構成する第2柱40は、第1柱32と同様、側面視で車両後方側かつ車両下方側に開放された略L字状に形成されている。この第2柱40の上端部は、第1柱32の上端部と近接して配置されている。そして、当該上端部から下端部に向かうにつれて第1柱32との間隔が略車両前後方向に徐々に広がるように構成されている。これにより、第2柱40は、第1柱32と車両前後方向に所定の間隔を空けて配置されている。
【0028】
図3に示されるように、第2柱40は、閉断面を形成する第2ピラーアウタ42と第2ピラーインナ44とを含んでいる。第2ピラーアウタ42は、鋼板製とされ、車室14側に開放された略ハット型の断面を有している。
図3に示される平断面に基づいて説明すると、第2ピラーアウタ42は、車両幅方向外側に面して配置された外側壁42Aと、外側壁42Aの前端部及び後端部から車両幅方向内側に延在し、車両前後方向に対向して配置された一対の側壁42Bと、を含む。また、車両前方側の側壁42Bの先端部に前フランジ部42Cが形成されている。さらに、車両後方側の側壁42Bの先端に後フランジ部42Dが形成されている。
【0029】
第2ピラーインナ44は、鋼板製とされ、断面形状が略クランク状に形成されている。この第2ピラーインナ44は、車室14側から第2ピラーアウタ42の開口を塞ぐように設けられている。そして、第2ピラーインナ44の前端部及び後端部は、第2ピラーアウタ42の前フランジ部42C及び後フランジ部42Dにそれぞれ接合されている。これにより、第2柱40では、第2ピラーアウタ42と第2ピラーインナ44とによって、閉断面構造が形成されている。なお、この閉断面の断面積は、第1柱32と同様に、ピラー30の屈曲部30Bを構成する部位の方が、直線部30Aを構成する部位よりも大きくなるように設定されている。
【0030】
また、第2ピラーアウタ42の車両後方側には、第2柱40の車両外側の意匠面を構成する第2アウタパネル46が配置されている。第2アウタパネル46は、車両前方側に開放された略U字状に形成されており、第2ピラーアウタ42の車両後方側の側壁42Bを車室14の外側から覆うように配置されている。第2アウタパネル46の開放端には、互いに離間する方向に延在する第2取付フランジ部46Aがそれぞれ形成されている。この第2取付フランジ部46Aは、車室14の外側から第2ピラーアウタ42の外側壁42Aと前フランジ部42Cとにそれぞれ接合されている。これにより、第2ピラーアウタ42と第2アウタパネル46とによって閉断面構造が形成されている。
【0031】
なお、前フランジ部42Cに接合された第2取付フランジ部46Aには、止水用のシール材50を介して後述する第1透明窓部材60の車両前後方向の後端部が接合されている。一方、外側壁42Aに接合された第2取付フランジ部46Aには、止水用のシール材50を介してサイドガラス24の車両前後方向の前端部が接合されている。
【0032】
上記構成の第1柱32及び第2柱40は、上部連結部材52と下部連結部材54を用いて車両前後方向に連結されている。上部連結部材52及び下部連結部材54は、鋼板製の補強部材とされ、車両前後方向を長手方向とする長尺状に形成されている。なお、これらの断面剛性を高めるために、上部連結部材52及び下部連結部材54の断面形状を閉断面やハット型の断面形状にしてもよい。
【0033】
上部連結部材52は、ピラー30の上部において第1柱32と第2柱40を車両前後方向に連結している。また、下部連結部材54は、ピラー30の下端部において、第1柱32と第2柱40を車両前後方向に連結している。このようにして、ピラー30は、第1柱32、第2柱40、上部連結部材52、下部連結部材54を備えることにより全体として格子枠状に形成されている。これにより、ピラー全体の剛性が向上する。
【0034】
特に、本実施形態における上部連結部材52の配置は、車両10の前面衝突時におけるピラー30の変形を抑制する点において効果的とされている。上部連結部材52は、ピラー30の屈曲部30Bにおける直線部30A側の端部に配置されており、上部第1柱32の屈曲部と第2柱40の屈曲部とを連結している。この第1柱32及び第2柱40の屈曲部は、車両10の前面衝突時にピラー30の下部に荷重が入力された場合、変形の起点になり易い。したがって、第1柱32及び第2柱40の屈曲部間を上部連結部材52で連結することによりピラー30が効果的に補強され、車両10の前面衝突時におけるピラー30の変形を抑制することができる。
【0035】
図1に示されるように、上記構成のピラー30には、第1柱32及び第2柱40の下部、上部連結部材52、下部連結部材54によって略矩形状の枠部が形成されており、この枠部の内側が第1透明窓部材60で覆われている。また、第1柱32及び第2柱40の上部、上部連結部材52、によって略三角形状の枠部が形成されており、この枠部の内側が第2透明窓部材62で覆われている。第1透明窓部材60は、車室14の車両幅方向の側部の一部を構成しており、第2透明窓部材62は、車室14の天井面の一部を構成している。なお、第1透明窓部材60が、本発明における「透明窓部材」に相当する。
【0036】
第1透明窓部材60及び第2透明窓部材62は、ガラス又は透明の繊維強化樹脂等により構成されていている。これにより、車室14内にいる乗員等は、第1透明窓部材60及び第2透明窓部材62を介して車両10の外部を視認することができる。
【0037】
特に、第1透明窓部材60は、運転者DのアイポイントEPに対して斜め前方側に配置されており、運転者Dの車両の進行方向の視認性を高めている(
図4参照)。なお、アイポイントEPとは、運転者Dの両眼の中間点であり、運転者Dの両眼を結ぶ線の中央点である。また、本実施形態におけるアイポイントEPの位置は、例えば、AM50ダミー(米国人成人男性の50パーセンタイル)と同程度の体格を有する運転者Dが車両用シート16に運転姿勢で着座した状態におけるアイポイントEPの位置に基づいて設定される。運転者Dの視認性の詳細は、後述する。
【0038】
第1透明窓部材60は、一定の板厚で形成されており、第1柱32に接合された第1アウタパネル38における第1取付フランジ部38Aと、第2柱40の第2アウタパネル46における第2取付フランジ部46Aとの間に架け渡されている。また、第1透明窓部材60は、平面視で車両前方から後方に向かうにつれて車両幅方向外側にオフセットするように傾けられている。このため、第1透明窓部材60は、車両10の斜め前方側に面して配置されている。
【0039】
この第1透明窓部材60の車両幅方向外側には、ピラー30に固定されたアウタミラー64が配置されている。アウタミラー64は、鏡面66を備える本体部64Aと、本体部64Aをピラー30に固定するための固定部64Bを備えている。本体部64Aは、略矩形の板状に形成され、略車両前後方向を厚み方向として配置されている。また、本体部64Aは、車両前後方向の後方側面に鏡面66を備えている。固定部64Bは、例えばパイプ材で構成されており、一端が本体部64Aの下端部に接合され、他端がピラー30に接合されている。本実施形態では、固定部64Bの他端はピラー30の直線部30Aに配置された第1柱32に接合されている。なお、固定部64Bの他端を第2柱40や上部連結部材52に固定してもよい。
【0040】
また、本実施形態では、運転者Dが第1柱32と第2柱40の間からアウタミラー64を介して車両後方又は車両側部が確認できるように、アウタミラー64の鏡面66が第1透明窓部材60に対向して(向き合って)配置されている。
【0041】
なお、
図3は、運転者DのアイポイントEPの高さにおけるピラー30の平断面図である。この図には、視認可能領域VAと、第1透明窓部材60を板厚方向に沿って車両外側に平行移動させた場合の軌跡S1が図示されている。この図に示されるように、視認可能領域VAは、第1透明窓部材60において、第1柱32及び第2柱40にそれぞれ取り付けられたガーニッシュ48(ピラー30の車室14側の意匠面)の間の空間に対応する領域である。また、第1透明部材60と鏡面66は、第1透明窓部材60を板厚方向に沿って車両外側に平行移動させた場合に互いに干渉する位置に配置されている。これにより、運転者Dは、第1透明窓部材60の視認可能領域VAを通して、車両10の外部及びアウタミラー64の鏡面を見ることができる。
【0042】
ここで、
図4に基づいて運転者Dの視認性について詳細に説明する。
図4は、車両10の走行時における運転者Dの視野を模式的に示す平面図である。図に示される領域F1は、車両10を前方へ直進させる際に必要とされる運転者Dの視野である。また、領域F2は、車両10を右折又は左折させる際に必要とされる運転者Dの視野である。また、
図4では、運転者DのアイポイントEPから延出され、第1柱32の車両幅方向両端部に接する一対の接線をT1で示し、同じく運転者DのアイポイントEPから延出され、第2柱40の車両幅方向両端部に接する一対の接線をT2で示している。一対の接線T1の間、及び、一対の接線T2の間の領域は、第1柱32及び第2柱40に阻害されて車両10の外部が視認できない領域となるため、運転者Dにとって死角領域BSとなる。
【0043】
本実施形態では、領域F1が、左右一対の第1柱32の内側の領域となるように設定されている。このため、ピラー30によって、直進時の運転者Dの視野に死角が生じない。一方、領域F2は、第1柱32の車両幅方向外端部に接する接線T1よりも車両幅方向外側かつ後方側の領域とされる。この領域F2は、第2柱40によって生じる死角領域BSと重なるが、ピラー30を第1柱32と第2柱40で構成したことにより、第1透明窓部材60の視認可能領域VAが領域F2内に設けられている。したがって、一本の柱部材でピラーを構成する場合と比較して視認可能領域VAが形成される分、運転者Dの死角となる領域を小さくすることができる。これにより、右折時又は左折時における運転者Dの視認性が向上する。
【0044】
また、運転者Dは、第1柱32と第2柱40の間に架け渡された第1透明窓部材60を介してアウタミラー64の鏡面を視認することができる。このため、運転姿勢のまま車両後方や車両側部の確認作業を行うことができる。
【0045】
(作用並びに効果)
以上説明した通り、本実施形態のピラー30は、Frガラス22の車両幅方向外端部に沿って延在された第1柱32と、第1柱32に対して略車両前後方向に所定の間隔を空けて配置された第2柱40とを有している。また、ピラー30は、第1柱32と第2柱40を含む枠形状に形成されており、枠形状の枠内は、第1柱32と第2柱40に架け渡された第1透明窓部材60で覆われている。したがって、例えば、車両10の運転席に着座した乗員(運転者D)が、ピラー30の枠内から第1透明窓部材60を介して車両10の外部を視認することができる。これにより、運転者Dの車両10の進行方向に対する視認性が向上する。
【0046】
さらに、ピラー30には、アウタミラー64が固定されており、アウタミラー64の鏡面66が第1柱32と第2柱40との間に架け渡された第1透明窓部材60に対向して配置されている。したがって、例えば、車両用シート16に着座した運転者Dが、ピラー30の枠内から第1透明窓部材60を介して鏡面66を視認することができる。これにより、運転者Dがアウタミラー64確認する際の視認性を向上させることができる。
【0047】
本実施形態では、第1柱32と第2柱40の上部と下部が車両前後方向に延在する上部連結部材52及び下部連結部材54で連結されており、ピラー30が格子枠状に形成されている。このため、ピラー30の剛性を向上させることができる。
【0048】
また、本実施形態では、ピラー30の断面積が、上部連結部材52を隔てて下方側に配置された直線部30Aよりも、上部連結部材52を隔てて上方側に配置された屈曲部30Bの方が大きくなるように設定されている。より具体的には、ピラー30を構成する第1柱32及び第2柱40の閉断面部の断面積が、直線部30Aよりも、上部連結部材52を隔てて上方側に配置された屈曲部30Bの方が大きくなるように設定されている。これにより、ピラー30の下部では、第1柱32と第2柱40の車両幅方向の寸法が抑制され、第1柱32と第2柱40の間隔を広げることができる。一方、ピラー30の上部では断面積が増すことによりピラー30の剛性が高められている。これにより、運転者Dの視認性を確保しつつ、ピラー部の剛性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0049】
22 フロントウインドシールドガラス
30 ピラー(車両用ピラー)
32 第1柱
40 第2柱
60 第1透明窓部材(透明窓部材)
64 アウタミラー