(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】センサ付き軸受および計測システム
(51)【国際特許分類】
F16C 41/00 20060101AFI20231003BHJP
G01M 13/04 20190101ALI20231003BHJP
【FI】
F16C41/00
G01M13/04
(21)【出願番号】P 2019227897
(22)【出願日】2019-12-18
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】柳野 浩志
(72)【発明者】
【氏名】岡村 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】柳沢 知之
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-112387(JP,A)
【文献】特開2018-096516(JP,A)
【文献】特開2003-262647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 41/00-41/04
G01M 13/04
G01B 7/00-7/34
B60C 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受と、
前記軸受に関する物理量を計測する第1のセンサと、
前記軸受の動作1サイクルごとにパルス信号を出力する第2のセンサと、
前記第2のセンサが出力する前記パルス信号をトリガとして、前記第1のセンサをオン状態に制御して計測を開始させ、前記第1のセンサによる計測が終了した後に当該第1のセンサをオフ状態に制御する制御部と、を備えることを特徴とするセンサ付き軸受。
【請求項2】
前記制御部は、
前記第2のセンサが出力する前記パルス信号を1回目に検出したとき、前記第1のセンサをオン状態に制御し、
前記第2のセンサが出力する前記パルス信号を2回目に検出したとき、前記第1のセンサによる計測を開始することを特徴とする請求項1に記載のセンサ付き軸受。
【請求項3】
前記制御部は、
前記1回目に前記パルス信号を検出してから所定の待機時間が経過した後に、前記2回目の前記パルス信号を検出することを特徴とする請求項2に記載のセンサ付き軸受。
【請求項4】
前記待機時間は、前記第1のセンサのウェイクアップ時間よりも長く設定されていることを特徴とする請求項3に記載のセンサ付き軸受。
【請求項5】
前記第2のセンサは、Z相信号を出力するZ相検出センサであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のセンサ付き軸受。
【請求項6】
前記第2のセンサは、ホールセンサであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のセンサ付き軸受。
【請求項7】
前記第2のセンサの更新周期は、前記軸受の動作1サイクルの周期よりも短いことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のセンサ付き軸受。
【請求項8】
前記第1のセンサは、前記軸受の振動を計測する加速度センサ、および前記軸受の外輪に対する内輪の相対的な回転角度を計測する角度センサの少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のセンサ付き軸受。
【請求項9】
前記軸受の外輪と内輪との相対的な回転に基づいて発電し、前記第1のセンサ、前記第2のセンサおよび前記制御部に電力を供給する発電部をさらに備えることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載のセンサ付き軸受。
【請求項10】
動作部を有する機器に関する物理量を計測する第1のセンサと、
前記動作部の動作1サイクルごとにパルス信号を出力する第2のセンサと、
前記第2のセンサが出力する前記パルス信号をトリガとして、前記第1のセンサをオン状態に制御して計測を開始させ、前記第1のセンサによる計測が終了した後に当該第1のセンサをオフ状態に制御する制御部と、を備えることを特徴とする計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、センサ付き軸受および計測システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、装置の異常検知を目的とし、回転機器の状態が正常状態であるか異常状態であるかを示す情報を収集する場面が増えている。回転機器の異常は、主に温度や振動に表れる。
車軸軸受の異常診断を行う異常診断装置として、例えば特許文献1に記載の技術がある。この技術は、1回転ごとに1パルスが出力される回転同期信号をトリガとして振動データのサンプリングを行い、その振動データを処理して車軸軸受の異常診断を行う技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、装置の異常診断を精度良く行なうためには、異常発生源の近くにセンサデバイスを配置する必要がある。そして、そのためには、センサデバイスの省電力化や小型化が必要である。しかしながら、上記特許文献1に記載の技術にあっては、センサデバイスの省電力化や小型化については言及されていない。
そこで、本発明は、省電力化および小型化を実現することができる計測システム、およびそれを利用したセンサ付き軸受を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一つの態様のセンサ付き軸受は、軸受と、前記軸受に関する物理量を計測する第1のセンサと、前記軸受の動作1サイクルごとにパルス信号を出力する第2のセンサと、前記第2のセンサが出力する前記パルス信号をトリガとして、前記第1のセンサをオン状態に制御して計測を開始させ、前記第1のセンサによる計測が終了した後に当該第1のセンサをオフ状態に制御する制御部と、を備える。
このように、計測に必要なときだけONするように第1のセンサのON、OFFを切り替えることが可能であるため、省電力化を実現することができる。また、デバイス内部で生成した信号をトリガとすることができるので、筐体外部からの信号入力が不要であり、小型化を実現することができる。したがって、例えば軸受の内輪と外輪との狭い空間にも格納可能であり、同一筐体でセンサデバイスを構築することが可能になる。
【0006】
また、上記のセンサ付き軸受において、前記制御部は、前記第2のセンサが出力する前記パルス信号を1回目に検出したとき、前記第1のセンサをオン状態に制御し、前記第2のセンサが出力する前記パルス信号を2回目に検出したとき、前記第1のセンサによる計測を開始してもよい。
この場合、軸受の動作1サイクルごとに発生するパルス信号を利用して、自動的に第1のセンサによる計測を開始することができる。そのため、計測者側の手間を省くことができ、省人化を実現することができる。
【0007】
さらに、上記のセンサ付き軸受において、前記制御部は、前記1回目に前記パルス信号を検出してから所定の待機時間が経過した後に、前記2回目の前記パルス信号を検出してもよい。この場合、第1のセンサをオン状態に切り替える制御が行われた後、所定の待機時間が経過した後に計測を開始することができる。そのため、適切な計測が可能となる。
また、上記のセンサ付き軸受において、前記待機時間は、前記第1のセンサのウェイクアップ時間よりも長く設定されていてもよい。この場合、第1のセンサをオン状態に切り替える制御が行われた後、当該センサが確実に立ち上がってから計測を開始することができる。例えば第1のセンサが複数種類のセンサを含む場合であっても、すべてのセンサが確実に立ち上がってから計測を開始することができ、適切な計測が可能となる。
【0008】
さらにまた、上記のセンサ付き軸受において、前記第2のセンサは、Z相信号を出力するZ相検出センサであってもよい。この場合、既存の原点検出信号をトリガ信号として使用することが可能である。そのため、トリガ信号を新たに用意する必要がない。
また、上記のセンサ付き軸受において、前記第2のセンサは、ホールセンサであってもよい。この場合、簡易な構成で適切に軸受の動作1サイクルごとにパルス信号を出力することができる。
さらに、上記のセンサ付き軸受において、前記第2のセンサの更新周期は、前記軸受の動作1サイクルの周期よりも短くてもよい。この場合、第2のセンサは、軸受の動作1サイクルごとに適切にパルス信号を出力することができる。したがって、信号検出もれを防止することができ、適切なタイミングで第1のセンサを制御することができる。
【0009】
また、上記のセンサ付き軸受において、前記第1のセンサは、前記軸受の振動を計測する加速度センサ、および前記軸受の外輪に対する内輪の相対的な回転角度を計測する角度センサの少なくとも一方を含んでいてもよい。この場合、軸受のどの位置(角度)でどのような振動が生じているかを把握することができる。
さらに、上記のセンサ付き軸受は、前記軸受の外輪と内輪との相対的な回転に基づいて発電し、前記第1のセンサ、前記第2のセンサおよび前記制御部に電力を供給する発電部をさらに備えていてもよい。この場合、外部からの電源供給が不要な自己発電機能を有するセンサ付き軸受において、消費電力を抑えつつ、軸受に関する物理量を計測することができる。
【0010】
また、本発明の一つの態様の計測システムは、動作部を有する機器に関する物理量を計測する第1のセンサと、前記動作部の動作1サイクルごとにパルス信号を出力する第2のセンサと、前記第2のセンサが出力する前記パルス信号をトリガとして、前記第1のセンサをオン状態に制御して計測を開始させ、前記第1のセンサによる計測が終了した後に当該第1のセンサをオフ状態に制御する制御部と、を備える。
このように、計測に必要なときだけONするように第1のセンサのON、OFFを切り替えることが可能であるため、省電力化を実現することができる。また、デバイス内部で生成した信号をトリガとすることができるので、計測システム外部からの信号入力が不要であり、小型化を実現することができる。したがって、例えば小型のデバイス筐体にも格納可能であり、同一筐体でセンサデバイスを構築することが可能になる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一つの態様によれば、センサデバイスの省電力化および小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本実施形態における計測システムの概要を示す図である。
【
図2】
図2は、計測データの取得処理手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、計測処理を示すタイミングチャートである。
【
図4】
図4は、Z相検出センサの更新周期を説明する図である。
【
図5】
図5は、センサ付き軸受の構成を示す分解斜視図である。
【
図6】
図6は、センサ付き軸受の構成を示す分解斜視図である。
【
図7】
図7は、カバーとコイル基板の構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。
なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0014】
本実施形態では、回転機器に関する物理量を計測する計測システムについて説明する。
本実施形態における計測システムは、センサデバイス内部で発生する信号をトリガとして、回転機器に関する物理量を計測する計測用センサを必要なときだけオン状態とするともに、自動的に当該センサによる計測を開始することができるシステムである。
この計測システムは、例えば、センサ付き軸受に適用することができる。当該センサ付き軸受は、軸受と、軸受に関する物理量を検出する第1のセンサと、軸受の動作1サイクルごとにパルス信号を出力する第2のセンサと、を備える。また、当該センサ付き軸受は、パルス信号をトリガとして、第1のセンサをオン状態として計測を開始させ、第1のセンサによる計測が終了した後に当該第1のセンサをオフ状態に制御する制御部を備える。ここで、上記物理量は、軸受の回転角度や軸受の振動を示す加速度等とすることができる。つまり、第1のセンサは、軸受の外輪に対する内輪の相対的な回転角度を検出する角度センサや、軸受の振動を検出する加速度センサとすることができる。また、第2のセンサは、例えば、1回転ごとに原点位置信号(Z相信号)を出力するホールセンサとすることができる。
【0015】
まず、計測システムの概要について、
図1を参照しながら説明する。
ここでは、計測システム200が、軸受に関する物理量として軸受の振動(加速度)と位置(回転角度)と示す計測データを取得する場合について説明する。
計測システム200は、制御部210と、計測部220と、を備える。
制御部210は、マイクロコンピュータ(マイコン)により構成することができる。制御部210は、CPU211を備える。また、制御部210は、内部メモリを備えることもできる。計測部220は、加速度センサ221と、角度センサ222と、ホールセンサ223と、を備える。加速度センサ221および角度センサ222は、軸受に関する物理量を計測するための計測用センサ(第1のセンサ)である。ホールセンサ223は、原点検出用のZ相信号であるパルス信号を出力するZ相検出センサ(第2のセンサ)である。
【0016】
CPU211は、内部メモリや計測用センサ221、222の初期化を行い、ホールセンサ223からのZ相信号を計測開始トリガとして、計測用センサ221、222による計測を開始する。具体的には、CPU211は、計測開始トリガ生成までに2回Z相を検出する。CPU211は、1回目のZ相検出で計測用センサ221、222をオフ状態からオン状態に切り替え、2回目のZ相検出を計測開始トリガとして、計測用センサ221、222による計測を開始する。
【0017】
計測が開始されると、加速度センサ221および角度センサ222は、センサ内部において、それぞれ定められた更新周期で計測値を更新し、保持する。CPU211は、加速度センサ221および角度センサ222から所定のタイミングで計測値を取得し、内部メモリ等に保存する。計測が終了すると、CPU211は、計測用センサ221、222をオフ状態に切り替える。つまり、計測用センサ221、222は、計測に必要なときだけオン状態とされ、それ以外の期間はオフ状態とされる。
なお、制御部210は、DMAコントローラ(Direct Memory Access Controller:DMAC)を備えていてもよい。この場合、DMACは、DMAトリガを入力すると、CPU211を介さずに、加速度センサ221および角度センサ222がそれぞれ保持する最新の計測値(センサデータ)を内部メモリ等に転送するDMA転送を行う。このようにDMA転送によりデータ取得およびデータ格納を行うことで、CPU211の負荷を軽減することができる。
【0018】
また、上記の内部メモリに保存される計測データは、計測用センサ221、222から得られるバイナリデータ(生データ)であってもよい。この場合、データ記録時に、例えば16進数表記から10進数表記への変換などのデータ処理が不要であり、高速なデータ格納が可能である。また、データ処理による負荷を軽減させることができるとともに、消費電力を低減させることができる。
また、計測用センサ221、222から取得した計測データは、制御部210の外部に設けられた外部メモリに保存するようにしてもよい。外部メモリは、例えばSRAM等により構成することができる。なお、外部メモリは、NAND型またはNOR型のフラッシュメモリ等であってもよい。
【0019】
図2は、計測データの取得処理の手順を示すフローチャートである。
この
図2に示す処理は、例えばユーザが電源をオン状態とするなど、制御部210に電力が供給されたタイミングで開始される。なお、
図2に示す処理が開始される前は、加速度センサ221および角度センサ222はオフ状態である。
まずステップS1において、CPU211は、加速度センサ221および角度センサ222を初期化する。
【0020】
次にステップS2において、CPU211は、Z相を検出したか否かを判定する。そして、Z相が検出されていない場合にはZ相を検出するまで待機し、Z相を検出したと判定するとステップS3に移行する。
ステップS3では、CPU211は、計測用センサ221および222に電力を供給するよう制御して、計測用センサ221および222をオン状態にする。
【0021】
ステップS4では、CPU211は、ステップS3において計測用センサ221および222をオン状態としてから所定の待機時間twが経過しており、かつZ相を検出したか否かを判定する。ここで、待機時間twは、計測用センサ221および222のウェイクアップ時間(Turn-on-time)の長い方よりも長い時間に設定する。つまり、加速度センサ221のウェイクアップ時間がtto1、角度センサ222のウェイクアップ時間がtto2である場合、待機時間twは、tw>tto1かつtw>tto2に設定する。ここで、ウェイクアップ時間とは、センサに電源が供給されてから当該センサが適切に計測を開始できる状態となるまでの時間であり、各センサの仕様に応じて、例えば40ms~100msに設定されている。
【0022】
そして、CPU211は、このステップS4において、待機時間twが経過していないか、または待機時間twが経過しているがZ相を検出していない場合には、そのまま待機する。一方、CPU211は、待機時間twが経過し、かつZ相を検出したと判定した場合にはパルス信号を出力し、当該パルス信号を検知することで、計測開始トリガが入力されたと判断してステップS5に移行する。
ステップS5では、CPU211は、計測用センサ221および222による計測を開始する。
【0023】
ステップS6では、CPU211は、ステップS5における計測開始から所定の計測時間tmが経過したか否かを判定する。ここで、計測時間tmは、例えば1秒とすることができる。なお、計測時間tmは、計測データを記録するメモリの容量や消費電力との兼ね合いによって適宜設定することができる。
そして、CPU211は、計測開始から上記の計測時間tmが経過していないと判定した場合には、そのまま計測を継続し、計測開始から上記の計測時間tmが経過したと判定した場合には、ステップS7に移行する。
【0024】
なお、マイコンの選定によってはCPUの動作を止めた状態(低消費電力モード)でDMAを実施できる場合がある。したがって、上述したように制御部210がDMACを備えており、DMACによりセンサデータの取得を行うことが可能な場合は、計測時間tmの経過をマイコン内のタイマによって監視し、監視中はCPUの動作を止めておいてもよい。CPUの動作を止めることで、より低消費電力で計測システムを構築することができる。
【0025】
ステップS7では、CPU211は、計測用センサ221および222への電力供給を停止するよう制御して、計測用センサ221および222をオフ状態にする。
ステップS8では、CPU211は、メモリに保存された計測データを外部へ送信し、
図2の処理を終了する。
なお、連続して計測を行う場合には、ステップS8において計測データを送信した後、ステップS2に戻ってもよい。この場合、ステップS8において計測データを送信した後、ステップS2に戻るまでの間に、所定の待機時間を設けてもよい。
【0026】
以下、計測データの取得処理の流れについて、
図3を参照しながら詳細に説明する。なお、この
図3において、加速度センサ221をセンサ1、角度センサ222をセンサ2としている。
上述した
図2に示す処理が開始され、CPU211による計測用センサの初期化が完了すると、CPU211はZ相の入力待機状態となる。そして、
図3の時刻T1においてZ相を検出すると、これをZ相認識1回目として、各計測用センサ(センサ1、センサ2)をオン状態にする。すると、各計測用センサは、それぞれ所定のウェイクアップ時間t
to1、t
to2を経て、計測可能な状態へ移行する(ステップ1)。
【0027】
そして、CPU211は、時刻T1から、すべてのセンサのウェイクアップ時間tto1、tto2に対して「ウェイクアップ時間<tw」となる待機時間twが経過した後、2回目のZ相入力を受け付ける。つまり、1回目のZ相入力を受け付けた後(時刻T1以降)、待機時間twが経過するまでに検出したZ相入力は無視し、時刻T2においてZ相を検出すると、これをZ相認識2回目とする。この時刻T2では、CPU211は、計測用センサによる計測を開始する(ステップ2)。
計測用センサによる計測は、所定の計測時間tm継続して行う。つまり、CPU211は、計測開始(時刻T2)から計測時間tmが経過した時刻T3において計測を終了し、計測用センサをオフ状態とする。そして、CPU211は、計測データを外部装置に送信する。
【0028】
このように、CPU211は、Z相入力をトリガとして、計測用センサのON/OFF制御と、計測開始/終了の制御とを行う。
ここで、
図4に示すように、Z相検出センサ(ホールセンサ223)の更新周期は、軸受の動作1サイクルの周期(Z相が入力されるべき周期)よりも十分に短く設定されているものとする。
Z相検出センサの更新周期は、Z相がHレベルになる条件をみたしているかどうかを確認する周期であり、この周期が軸受の動作1サイクルの周期よりも長く設定されていると、Z相を取り漏らしてしまうことになる。したがって、Z相検出センサの更新周期は、可能な限り短いものを選ぶとZ相信号の検出漏れのリスクを抑えることができるため、好ましい。ただし、更新周期が短いほど、Z相検出センサの消費電力は増加するので、使用条件に応じて適宜選定するものとする。つまり、省電力化の観点においては、単純に更新周期の短いZ相検出センサを選定すればよいわけではないことに注意が必要である。
【0029】
このようにして計測システム200により送信された計測データは、例えば送信先の外部装置において、軸受の異常診断に用いられる。例えば、加速度データと角度データとが一対一で対応した計測データを取得するようにすれば、その計測データをもとに、回転中どの角度でどのような振動が起きているのかを把握することができ、異常発生箇所(角度)を特定することができる。
【0030】
以上説明したように、本実施形態における計測システム200は、軸受の動作1サイクルごとに発生するパルス信号をトリガとして、計測用センサをオン状態に制御して計測を開始させ、計測用センサによる計測が終了した後に当該計測用センサをオフ状態に制御する。具体的には、計測システム200は、上記パルス信号としてZ相信号を用い、軸受の1回転ごとに出力されるZ相を検出する。そして、計測システム200は、Z相を1回目に検出したとき、計測用センサをオン状態に制御し、Z相を2回目に検出したとき、計測用センサによる計測を自動的に開始する。
【0031】
このように、計測用センサのON、OFFの切り替えを制御するので、計測の直前まで計測用センサをOFFにしておき、必要なときだけセンサをONするようにすることができる。計測用センサを細かくON/OFFすることができるので、省電力化を図ることができる。
また、デバイス内部で生成した信号をトリガとすることができるので、別途外部からのトリガ信号の入力が不要であり、そのための外部端子との接続コネクタが不要となるため、小型化を実現することができる。したがって、小型のデバイス筐体であっても同一筐体内に計測システム200を格納することが可能である。
【0032】
また、原点検出用のZ相信号を計測開始トリガとして活用できるため、センサデバイス単体で計測を開始できる。外部からの計測開始信号を必要とすることなく、自動的に計測を開始することができるので、計測者側の手間を省くことができ、省人化を実現することができる。
このように、省電力化、デバイス小型化、計測開始自動化(省人化)を実現することができるので、異常発生源の近くにデバイスを配置することができ、ノイズの影響を抑えた診断が可能になる
【0033】
また、原点検出用のZ相信号を計測開始トリガとしているため、毎回同じ位置(回転角度)で計測を開始することができる。したがって、複数回計測を行った場合には、計測データを容易に重ね合わせ、機械的に平均化するなどの処理が可能となる。これにより、異常箇所特定の信頼性が向上する。さらに、省電力化、小型化を狙う中で、搭載・使用できるメモリには限りがあるが、上述したように同じ位置から計測できることは、過不足なく計測データを取得するうえで有利である。
さらに、回転機器における既存のZ相検出センサからのZ相信号(原点検出信号)をトリガとして使用するので、トリガ信号を新たに用意する必要がない。
【0034】
また、1回目にZ相を検出してから所定の待機時間twが経過した後に、2回目のZ相を検出するので、計測用センサをオン状態に切り替える制御が行われた後、計測用センサが適切に動作可能な状態となってから計測を開始することができる。ここで、待機時間twをすべての計測用センサのウェイクアップ時間よりも長い時間に設定すれば、すべての計測用センサが確実に立ち上がってから計測を開始することができる。
さらに、Z相検出センサの更新周期は、軸受の動作1サイクルの周期よりも短く設定する。これにより、Z相検出センサは、軸受の動作1サイクルごとに適切にパルス信号を出力することができる。したがって、信号検出もれを防止することができ、適切なタイミングで計測用センサを制御することができる。
【0035】
(実施例)
以下、本発明の実施例について説明する。
図5および
図6は、上述した計測システム200を備えるセンサ付き軸受1の構成を示す分解斜視図である。
図5は、センサ付き軸受1をカバー10側から見た図であり、
図6は、センサ付き軸受1を軸受120側から見た図である。
センサ付き軸受1は、センサ付き発電ユニット100と、軸受120と、を備える。センサ付き発電ユニット100は、軸受120の一方の側面に取り付けられる。センサ付き発電ユニット100は、カバー10と、コイル基板20と、回転部30と、回路基板40と、を備える。センサ付き発電ユニット100が有する基板は、ポッティング剤などにより保護されている。なお、センサ付き発電ユニット100は、基板上の電子回路の保護を目的として、バックカバーを備えていてもよい。この場合、バックカバーは、例えば、センサ付き発電ユニット100における軸受120に対向する面側(
図5および
図6の回転部30と軸受120との間)に設置することができる。
また、ここでは、センサ付き軸受1は、
図5および
図6に示すようにセンサ付き発電ユニット100と軸受120とが別体である軸受-センサ別体型デバイスである場合について説明するが、軸受側に追加工を施し、軸受にカバーを圧入するなどして軸受-センサ一体型デバイスとしてもよい。
【0036】
カバー10は、リング状の平板部材であり、例えば、ケイ素鋼板、炭素鋼(JIS規格 SS400またはS45C)、マルテンサイト系ステンレス(JIS規格 SUS420)またはフェライト系ステンレス(JIS規格 SUS430)などのような磁性を有する材料により形成される。
このカバー10の軸受120と対向する側の面には、
図6に示すように、回路基板40が取り付けられている。回路基板40は、電源基板41と、センサ基板42とを備える。電源基板41およびセンサ基板42は、例えばカバー10に開けられた雌ねじ穴に、黄銅など非磁性材料のボルトが締結することで、当該カバー10に固定される。この場合、ボルトは、カバー10に取り付けられた状態で、カバー10から突出しない長さを有する。なお、電源基板41およびセンサ基板42は、必要に応じて任意に分割または一体化することができる。
【0037】
また、カバー10には、貫通孔が開けられており、この貫通孔は、樹脂などの不導体材料で形成された蓋17で密閉されている。後述するように、センサ基板42には、アンテナ47(後述の
図7参照)が実装される。カバー10は導体で製作されているので、アンテナ47からの電磁波をシールドする作用を有する。しかしながら、アンテナ47は蓋17と対向する位置に配置され、これにより、アンテナ47の電磁波は、蓋17を介して、外部の通信部へ到達することができる。
【0038】
コイル基板20は、カバー10の軸受120と対向する側の面に取り付けられている。コイル基板20は、例えば接着剤を介してカバー10に固定されている。
図7は、カバー10とコイル基板20の構成例を示す平面図である。コイル基板20は、フレキシブル基板21と、フレキシブル基板21に設けられたコイルパターン23と、フレキシブル基板21に設けられた複数のヨーク25と、を有する。なお、ヨーク25の設置は任意である。フレキシブル基板21の平面視による形状は、回転軸Axを中心とする正円のリング状である。コイルパターン23は、フレキシブル基板21の厚さ方向に積層された複数の平面コイルを有する。平面コイルとは、絶縁体の所定の面上にパターニングされて設けられた導電体のパターンである。本実施形態においては、導電体のパターンが絶縁体の複数の面上に形成されている。これに限られず、導電体のパターンが絶縁体の1つの面上に形成されていてもよい。コイルパターン23のターン数は平面コイルの積層数に比例する。本実施形態では、センサ付き発電ユニット100の用途によって、平面コイルの積層数を変化させ発電量を調整してもよい。
また、コイルパターン23は、平面視で、回転軸Axを中心とする円の円周方向に沿って凹凸が交互に並ぶように延設されている。この凹凸の凹部にヨーク25が1つずつ配置されている。コイルパターン23は、後述するエンコーダマグネットの磁気変化を検出できる位置に角度センサを配置するため、一部円形を欠けさせる形状となってもかまわない。
【0039】
また、電源基板41とセンサ基板42とは、平面視で、コイル基板20よりも例えば外周側に取り付けられている。電源基板41には、電源部43が実装されている。電源部43は、発電部50(後述の
図8参照)から供給された単相交流電力を直流電圧に変換して、センサ基板42へ供給する。
【0040】
センサ基板42には、センサ44と、制御回路部45と、アンテナ47とが実装されている。センサ44は、例えば、加速度センサ441と、温度センサ442と、角度センサ443と、ホールセンサ444と、を有する。なお、センサ44、制御回路部45およびアンテナ47は、別々のIC(Integrated Circuit)チップで構成されていてもよいし、それらの一部または全部が1つのICチップで構成されていてもよい。
【0041】
また、
図7では簡略化しているが、コイルパターン23の両端は、リード線16を介して電源基板41に接続される。なお、本実施形態において、コイルパターン23と電源基板41との接続は、リード線16ではなく、FPC(Flexible Printed Circuit)コネクタを介して行われてもよい。または、コイル基板20を延長して電源基板41と直接接続されてもよい。FPCコネクタを使用した接続では、半田が不要となるので、センサ付き発電ユニット100の生産性をさらに高めることができる。
【0042】
図5および
図6に戻って、回転部30は、リング状の磁気トラック31と、リング状の基材33と、リング状の取付け治具35と、Z相用小型磁石36と、を有する。基材33および取付け治具35は、磁性を持つ金属材料であることが望ましい。
磁気トラック31は、基材33の一方の面側に設けられている。基材33は、磁気トラック31の外形よりも大きく、Z相用小型磁石36は、基材33の一方の面側において磁気トラック31よりも外周側に設けられている。なお、Z相用小型磁石36およびそれに対応するホールセンサ444を含むセンサ基板42は、磁気トラック31の内側に配置されていてもよい。
取付け治具35は、基材33の他方の面側に固定されている。取付け治具35は、基材33の他方の面側から、基材33の中央に位置する貫通した開口部を通って、基材33の一方の面側に突き出ている。基材33の一方の面側はカバー10と対向する面側である。基材33の他方の面側は軸受120と対向する面側である。
なお、磁気トラック31は、基材33に対して着脱可能な構成であってもよい。また、磁気トラック31は、軸受120に設けられていてもよい。この場合、例えば、磁気トラック31は、軸受120に形成された溝に圧入されていてもよい。
【0043】
本実施形態では、磁気トラック31と基材33とを合わせて、エンコーダマグネットという。例えば、エンコーダマグネットは、金属製の基材の一方の面にプラスチックマグネットが形成され、形成されたプラスチックマグネットの表面にN極とS極とが交互に着磁されることにより形成される。取付け治具35は、エンコーダマグネットを、センサ付き発電ユニット100と軸受120とに通される軸部に取り付けるために使用される。
【0044】
磁気トラック31は、N極31NとS極31Sとからなる磁極対311を複数有する。複数の磁極対311は、磁気トラック31の円周方向に並んでいる。N極31NおよびS極31Sは、交互に配置されている。
また、磁気トラック31における隣り合うN極31NとS極31Sとの中心間の距離は、コイル基板20における隣り合うヨーク25の中心間の距離と同じ長さになっている。
【0045】
本実施形態では、回転軸Ax(
図7参照)を中心に、コイル基板20に対して磁気トラック31が相対的に回転すると、隣り合うヨーク25のうち一方のヨーク25がN極と対向するときは、他方のヨーク25はS極と対向する。また、一方のヨーク25がS極と対向するときは、他方のヨーク25はN極と対向する。つまり、コイル基板20の隣り合うヨーク25は、磁気トラック31の同一磁極と対向することはない。これにより、一方のヨーク25を通る磁束密度の変化の位相と、他方のヨーク25を通る磁束密度の変化の位相は、180°ずれた状態となる。
【0046】
このように、コイル基板20に対して磁気トラック31が相対的に回転すると、ヨーク25と対向する磁極が交互に替わる。これにより、ヨーク25を通る磁束密度が周期的に変化する。この磁束密度の周期的な変化に応じて、ヨーク25の周りに位置するコイルパターン23に電圧変化(例えば、正弦波の交流電圧)が発生する。
【0047】
図8は、センサ付き軸受1が備える回路基板40の構成例を示す図である。回路基板40は、上述したように、電源基板41と、センサ基板42と、を備える。ここで、センサ基板42は、角度センサ基板42aと、制御基板42bと、を備える。
電源基板41は、整流回路43aを備える。この整流回路431は、電源部43(
図7参照)に含まれる。
【0048】
発電部50は、磁気トラック31(
図5参照)とコイル基板20(
図6参照)と、を備える。発電部50は、軸受120の外輪と内輪との相対的な回転に基づいて発電し、センサ基板42に電力を供給する。
発電部50は、単相交流電力を発電して整流回路431に出力する。整流回路431は、発電部50で発電された単相交流電力を全波整流して直流電力へと変換する。整流回路431としてダイオードブリッジが例示されるが、本実施形態はこれに限定されない。整流回路431から出力された直流電力は、不図示の平滑回路により平滑化され安定した電源となる。その後、不図示の蓄電回路および蓄電器に蓄電される。蓄電器に蓄電された直流電力は、不図示の定電圧出力回路により一定電圧に調整された後、センサ基板42に出力される。
【0049】
センサ基板42の角度センサ基板42aには、角度センサ443と、ホールセンサ444とが実装されている。また、センサ基板42の制御基板42bには、加速度センサ441と、マイコン451と、DC-DCコンバータ452と、無線モジュール(送信部)453と、が実装されている。マイコン451、DC-DCコンバータ452および無線モジュール453は、制御回路部45(
図7参照)に含まれる。
加速度センサ441および角度センサ443は、DC-DCコンバータ452を介して電源基板41から供給される直流電力を使用して、加速度や回転角度を検出する。DC-DCコンバータ452は、マイコン451が備えるCPUの制御下で、加速度センサ441および角度センサ443に電源基板41から供給される直流電力を供給する。
【0050】
角度センサ443は、磁気トラック31に対向するように角度センサ基板42aに実装されている。磁気トラック31を有する回転部30は軸受120の内輪に固定されており、角度センサ443は、軸受120の内輪と共に磁気トラック31が回転することによって変化する磁束密度を検出することによって、軸受120の外輪に対する内輪の回転角度を検出する。
なお、角度センサ443の種類は、インクリメンタル型であってもよいし、アブソリュート型であってもよい。
【0051】
ホールセンサ444は、DC-DCコンバータ452を介して電源基板41から供給される直流電力を使用して、Z相を検出する。Z相用小型磁石36に対向するように角度センサ基板42aに実装されている。Z相用小型磁石36を有する回転部30は軸受120の内輪に固定されており、ホールセンサ444は、軸受120の内輪と共にZ相用小型磁石36が回転することによって変化する磁束密度を検出することによって、Z相を検出する。
【0052】
マイコン451は、特に図示しないが、CPUや内部メモリを備える。また、マイコン451は、DMACを備えていてもよい。マイコン451は、センサ44から取得した計測値を内部メモリ等に書き込む。
ここで、マイコン451は、
図1の制御部210に対応している。また、センサ44が
図1の計測部220に対応している。
【0053】
無線モジュール453は、マイコン451が備えるCPUの制御下で、内部メモリ等に記憶されたデータを外部に送信する。この無線モジュール453は、
図7のアンテナ47を備える。例えば、無線モジュール453は、無線通信によりデータを外部装置に送信する。送信されたデータは、外部装置の通信部で受信され、処理される。
なお、本実施形態では、センサ付き軸受1と外部装置とが無線通信を行う場合について説明したが、センサ付き軸受1と外部装置との間で通信可能な構成であれば、その通信規格は問わない。つまり、センサ付き軸受1から外部装置へのデータ送信は、有線通信により行ってもよい。
【0054】
上述したように、本実施形態における計測システム200は、省電力化、小型化、計測開始自動化を実現することができ、小型のデバイス筐体内にも格納可能である。したがって、本計測システム200は、上記のような磁気エンコーダを利用したセンサ付き軸受1において、軸受の内輪と外輪との狭い空間にも格納可能で、同一筐体でセンサデバイスを構築することが可能になる。また、外部からの電源供給の無い自己発電機能を有するデータ無線送信型のデバイスにも適用可能である。
このように、自己発電機能を有するデータ無線送信型のセンサ付き軸受1に適用した計測システム200は、自己発電機能により生成された微小な電力を用いて、所望のタイミングで適切に軸受に関する物理量を計測し、外部装置へ無線送信することが可能である。
なお、ここでは、自己発電機能を有するセンサ付き軸受1に適用する場合について説明したが、電源は外部給電であってもよい。
【0055】
さらに、上述したセンサ付き軸受1は、例えば水車の軸受部に適用することができる。
図9は、センサ付き軸受1を備えるペルトン水車300の構成を示す図である。
ペルトン水車300は、羽根車(ランナ)311を備える。ランナ311の外周には、多数個の羽根(バケット)312が設けられている。
また、ペルトン水車300は、複数個(
図9では、2個)のノズル321を備える。各ノズル321内には、ニードル弁322が進退移動可能に配置されている。ニードル弁322によってノズル321の開度を制御し、ノズル321の先端から水を噴射すると、羽根312がその水を受け、羽根車311が回転する。ペルトン水車300は、この羽根車311の回転によって発電する。
【0056】
羽根車311の回転中は、各羽根312に水が当たることで軸受に振動が発生する。このとき、ペルトン水車300が備える複数の羽根312のうちのいずれかに何らかの異常が発生している場合、その羽根312に水が当たったときの振動レベルは、他の羽根312に水が当たったときの振動レベルとは異なる。
したがって、ペルトン水車300の軸受部に上述したセンサ付き軸受1を設置して、軸受の振動と回転位置(角度)とを対応付けた計測データを取得し、取得した計測データを解析することで、どの羽根311に異常が発生しているかを特定することができる。例えば、4番目の羽根312に異常が発生していると特定された場合、異常が発生している4番目の羽根312のみを修理、交換することができ、メンテナンスのコストを低減させることができる。
【0057】
(変形例)
上記実施形態においては、Z相検出センサとしてホールセンサを用いる場合について説明したが、Z相検出センサの種類は上記に限定されない。Z相検出センサは、回転機器の動作1サイクル(1回転)ごとに1パルスを出力するセンサであればよく、例えば光学式フォトセンサを用いることもできる。
【0058】
さらに、上記実施形態においては、回転機器が軸受である場合について説明したが、回転機器は、例えば歯車であってもよい。この場合にも、歯車の振動を計測する加速度センサや、歯車の回転角度を計測する角度センサをマイコンにつなぐことで、歯車の振動と回転位置(角度)とを含む計測データを取得する計測システムを構成することができる。この場合、取得された計測データをもとに、歯車のどの歯に異常が発生しているかといった診断も可能となる。
また、上記実施形態においては、軸受に関する物理量として、軸受の振動を示す加速度や軸受の回転位置(角度)を用いる場合について説明したが、物理量は振動(加速度)や位置(角度)に限定されない。例えば、物理量を計測する計測用センサとして、軸受において生じる摩擦音を検出する超音波センサを用いることもできる。
【0059】
また、上記実施形態においては、計測用センサとして加速度センサと角度センサとを用いる場合について説明したが、計測用センサは、1種類であってもよいし、3種類以上であってもよい。
【0060】
さらに、上記実施形態においては、計測データを軸受の異常診断に用いる場合について説明したが、計測データの使用方法は問わない。つまり、計測データは、異常診断以外にも使用可能である。
例えば、上述したセンサ付き軸受1をロボットアームの関節部に適用した場合、ロボットアームがどの角度であるときに振動が発生するかを特定することができる。したがって、この場合には、振動が発生しない軌道を描いてアーム先端が移動するようにティーチングするようにしてもよい。
【0061】
なお、上記の計測システムの構成は、1回転する回転機器に適用されるものではなく、例えば決まった場所(Z相に相当する場所)を揺動する回転機器にも適用可能である。
また、上記の計測システムの構成は、回転機器に限って適用されるものではなく、動作部を有する機器、例えば直動機構にも適用可能である。直動機構に適用した場合、その機器に関する物理量として水平方向の位置等を計測することができる。
【符号の説明】
【0062】
1…センサ付き軸受、100…センサ付き発電ユニット、120…軸受、200…計測システム、210…制御部、211…CPU、220…計測部、221…加速度センサ、222…角度センサ、223…ホールセンサ