(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】光パルス列エネルギー測定装置及び光パルス列エネルギー測定方法
(51)【国際特許分類】
G01J 11/00 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
G01J11/00
(21)【出願番号】P 2020002290
(22)【出願日】2020-01-09
【審査請求日】2022-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000000295
【氏名又は名称】沖電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141955
【氏名又は名称】岡田 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100085419
【氏名又は名称】大垣 孝
(72)【発明者】
【氏名】荒平 慎
【審査官】小澤 瞬
(56)【参考文献】
【文献】再公表特許第2018/105733(JP,A1)
【文献】特開2014-228504(JP,A)
【文献】特開平11-317727(JP,A)
【文献】特開平11-223575(JP,A)
【文献】特開平08-008833(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0018453(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00 - G01J 1/60
G01J 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ゲートが時間軸上に周期的に並ぶ光ゲート列を生成し、入力された、光パルスが時間軸上に周期的に並ぶ光パルス列が、前記光ゲート列を通過した通過光パルス列を出力する光ゲート部と、
前記通過光パルス列が入力される処理部と
を備え、
前記処理部は、
いずれか1つの光ゲートといずれか1つの光パルスの時間位置が同じ場合の、通過光パルス列の平均光強度Gated(0)と、いずれか1つの光パルスからいずれか1つの光ゲートがτ遅延している場合の、通過光パルス列の平均光強度Gated(τ)を取得する光強度取得手段と、
前記光強度取得手段で取得された平均光強度Gated(0)及びGated(τ)から、被測定光パルス列の光パルスに相当するエネルギー成分Xと、バックグラウンド光に相当するエネルギー成分Yを算出する演算手段と
を備え
、
前記光ゲートのゲート幅Δτは、前記被測定光パルス列のパルス幅Δtより大きく、
前記光ゲートのゲート幅Δτは、前記被測定光パルス列のパルス周期Tより小さく、
前記光ゲートの遅延τが、前記ゲート幅Δτより大きく、
前記光ゲートの遅延τが、前記被測定光パルス列のパルス周期Tから前記ゲート幅Δτを減算したものより小さい
ことを特徴とする光パルス列エネルギー測定装置。
【請求項2】
前記光ゲート列のピーク透過率がg
0であり、前記光ゲート列の最小透過率がbであり
、光ゲート列の繰返し周期がkT(kは1以上の整数)であり、及び、光ゲート列の平均ゲート透過率がG
outであるとき、
前記演算手段は、前記エネルギー成分X及びYを、以下の式(I)で算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の光パルス列エネルギー測定装置。
【数1】
【請求項3】
前記光ゲート列のピーク透過率がg
0であり、前記光ゲート列の最小透過率がbであり
、光ゲート列の繰返し周期がkT(kは1以上の整数)であるとき、
前記光強度取得手段は、さらに、光ゲート列が一定のピーク透過率g
0である場合の、通過光パルス列の出力光強度G
onと、光ゲート列が一定の最小透過率bである場合の、通過光パルス列の出力光強度G
offを取得し、
前記演算手段は、前記エネルギー成分X及びYの比を、以下の式(II)を用いて算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の光パルス列エネルギー測定装置。
【数2】
【請求項4】
光ゲートが時間軸上に周期的に並ぶ光ゲート列を生成し、入力された、光パルスが時間軸上に周期的に並ぶ光パルス列が、前記光ゲート列を通過した通過光パルス列を出力する光ゲート部と、
前記通過光パルス列が入力される処理部と
を備え、
前記処理部は、
いずれか1つの光ゲートといずれか1つの光パルスの時間位置が同じ場合の、通過光パルス列の平均光強度Gated(0)と、いずれか1つの光パルスからいずれか1つの光ゲートが+τ1遅延している場合の、通過光パルス列の平均光強度Gated(+τ1)と、いずれか1つの光パルスからいずれか1つの光ゲートが-τ1遅延している場合の、通過光パルス列の平均光強度Gated(-τ1)と、光ゲート列が一定のピーク透過率g0である場合の、通過光パルス列の出力光強度G
onと、光ゲート列が一定の最小透過率bである場合の、通過光パルス列の出力光強度G
offを取得する光強度取得手段と、
前記光強度取得手段で取得された平均光強度Gated(0)及びGated(τ)から、被測定光パルス列の光パルスに相当するエネルギー成分Xと、バックグラウンド光に相当するエネルギー成分Yとの比を算出する演算手段と
を備え、
前記光ゲート列のピーク透過率がg
0であり、前記光ゲート列の最小透過率がbであり、光パルス列の繰返し周期がTであり、光ゲート列の繰返し周期がkT(kは1以上の整数)であるとき、
前記演算手段は、前記エネルギー成分X及びYの比は、以下の式(III)を用いて算出する
ことを特徴とする光パルス列エネルギー測定装置。
【数3】
【請求項5】
光パルスのパルス幅Δtと、パルス波形に応じた補正値Cを用いて、
前記演算手段は、前記エネルギー成分X及びYの比から以下の式(IV)を用いて、消光比1/pを算出する
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の光パルス列エネルギー測定装置。
【数4】
【請求項6】
光ゲートが時間軸上に周期的に並ぶ光ゲート列を生成し、入力された、光パルスが時間軸上に周期的に並ぶ光パルス列が、前記光ゲート列を通過した通過光パルス列を出力する光ゲート過程と、
いずれか1つの光ゲートといずれか1つの光パルスの時間位置が同じ場合の、通過光パルス列の平均光強度Gated(0)と、いずれか1つの光パルスからいずれか1つの光ゲートがτ遅延している場合の、通過光パルス列の平均光強度Gated(τ)を取得する光強度取得過程と、
前記光強度取得過程で取得された平均光強度Gated(0)及びGated(τ)から、被測定光パルス列の光パルスに相当するエネルギー成分Xと、バックグラウンド光に相当するエネルギー成分Yを算出する演算過程と
を備え
、
前記光ゲートのゲート幅Δτは、前記被測定光パルス列のパルス幅Δtより大きく、
前記光ゲートのゲート幅Δτは、前記被測定光パルス列のパルス周期Tより小さく、
前記光ゲートの遅延τが、前記ゲート幅Δτより大きく、
前記光ゲートの遅延τが、前記被測定光パルス列のパルス周期Tから前記ゲート幅Δτを減算したものより小さい
ことを特徴とする光パルス列エネルギー測定方法。
【請求項7】
前記光ゲート列のピーク透過率がg
0であり、前記光ゲート列の最小透過率がbであり
、光ゲート列の繰返し周期がkT(kは1以上の整数)であり、及び、光ゲート列の平均透過率がG
outであるとき、
前記エネルギー成分X及びYは、以下の式(I)で算出される
ことを特徴とする請求項6に記載の光パルス列エネルギー測定方法。
【数5】
【請求項8】
前記光ゲート列のピーク透過率がg
0であり、前記光ゲート列の最小透過率がbであり
、光ゲート列の繰返し周期がkT(kは1以上の整数)であるとき、
前記光強度取得過程において、さらに、光ゲート列が一定のピーク透過率g
0である場合の、通過光パルス列の出力光強度G
onと、光ゲート列が一定の最小透過率bである場合の、通過光パルス列の出力光強度G
offを取得し、
前記エネルギー成分X及びYの比は、以下の式(II)を用いて算出される
ことを特徴とする請求項6に記載の光パルス列エネルギー測定方法。
【数6】
【請求項9】
光ゲートが時間軸上に周期的に並ぶ光ゲート列を生成し、入力された、光パルスが時間軸上に周期的に並ぶ光パルス列が、前記光ゲート列を通過した通過光パルス列を出力する光ゲート過程と、
いずれか1つの光ゲートといずれか1つの光パルスの時間位置が同じ場合の、通過光パルス列の平均光強度Gated(0)と、いずれか1つの光パルスからいずれか1つの光
ゲートが+τ1遅延している場合の、通過光パルス列の平均光強度Gated(+τ1)と、いずれか1つの光パルスからいずれか1つの光ゲートが-τ1遅延している場合の、通過光パルス列の平均光強度Gated(-τ1)と、光ゲート列が一定のピーク透過率g0である場合の、通過光パルス列の出力光強度G
onと、光ゲート列が一定の最小透過率bである場合の、通過光パルス列の出力光強度G
offを取得する光強度取得過程と、
前記光強度取得過程で取得された平均光強度Gated(0)及びGated(τ)から、被測定光パルス列の光パルスに相当するエネルギー成分Xと、バックグラウンド光に相当するエネルギー成分Yとの比を算出する演算過程とを
備え、
前記光ゲート列のピーク透過率がg
0であり、前記光ゲート列の最小透過率がbであり、光パルス列の繰返し周期がTであり、光ゲート列の繰返し周期がkT(kは1以上の整数)であるとき、
前記エネルギー成分X及びYの比は、以下の式(III)を用いて算出される
ことを特徴とする光パルス列エネルギー測定方法。
【数7】
【請求項10】
光パルスのパルス幅Δtと、パルス波形に応じた補正値Cを用いて、
前記演算過程では、前記エネルギー成分X及びYの比から以下の式(IV)を用いて、消光比1/pを算出する
ことを特徴とする請求項6~9のいずれか一項に記載の光パルス列エネルギー測定方法。
【数8】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、光ファイバ通信システム及び光ファイバセンシングシステムなどで利用される光パルスの消光比を高精度に測定する、光パルス列エネルギー測定装置及び光パルス列エネルギー測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光パルスは、物質の時間応答特性の測定、大容量光ファイバ通信、及び、時間領域反射測定(OTDR:Optical Time Domain Reflectrometry)を用いた光ファイバセンシング技術等、様々な科学実験や産業応用技術上の利用分野で必要とされ、また利用されている。
【0003】
光パルスの性能指数の中で、消光比は重要な性能指数の一つである。ここで一般的に光パルスの消光比は、光パルスの強度時間波形の最大値Imaxと最小値Iminの比Imax/Iminとして定義される。
【0004】
消光比が低い場合、光パルス光源から出力される全光エネルギーのうち多くの部分がバックグラウンド光として出力されていることを意味する。ここで、バックグラウンド光は、光パルス以外の余分な成分である。バックグラウンド光の成分の存在は、ほとんどの光パルスの利用形態において好ましくない。
【0005】
また、バックグランド光の成分は、同じ消光比の光パルスであっても、デューティ比が小さくなると、デューティ比に反比例して増加する。このことは、デューティ比が小さくなるに従って、バックグラウンド光の成分を十分抑制するために必要な消光比が増加することを意味する。
【0006】
ここで、デューティ比を、光パルス列を構成する光パルスのパルス幅Δtとパルス周期Tの比Δt/Tとする。なお、光パルス列との表現は、時間軸上で一定の周期間隔で並ぶ光パルスの総体を指すものとする。
【0007】
高い消光比を有する光パルス光源の開発には、高い消光比まで消光比を測定できる高精度な測定装置が必要である。光パルスの消光比を測定する従来例では、光パルスをフォトディテクタ等で受光し電気信号に変換した後、電気信号の時間波形をオシロスコープなどで測定し、その消光比から被測定光パルスの消光比を求める(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述の従来例では、フォトディテクタの時間応答特性が、入力される光パルスのパルス幅に対して遅い場合、光電変換後の電気信号波形が帯域制限の為に劣化する。この結果、従来例では、電気信号の時間波形において光パルスのピーク値が低下し、消光比が過少見積となる。電気信号変換後の信号処理系の周波数帯域が十分広くない場合も同様である。
【0010】
従って、上述の従来例では、入力される光パルスのパルス幅より十分高速なフォトディテクタや信号処理系が必要となる。しかし、パルス幅が数十ピコ秒以下になると、パルス幅より十分高速な測定系の実現は一般に困難かつ高コストとなる。
【0011】
また、一般にオシロスコープのダイナミックレンジは20dBからせいぜい30dB程度である。従って30dB以上の消光比を測定するのは困難である。
【0012】
この発明は、上述の問題点に鑑みてなされたものである。この発明の目的は、高速な測定系を必要とせず、また、光パルスの従来よりも高い消光比の測定を可能とする、光パルス列エネルギー測定装置及び光パルス列エネルギー測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した目的を達成するために、この発明の光パルス列エネルギー測定装置は、光ゲート部と、処理部とを備える。光ゲート部は、光ゲートが時間軸上に周期的に並ぶ光ゲート列を生成し、入力された、光パルスが時間軸上に周期的に並ぶ光パルス列が、光ゲート列を通過した通過光パルス列を出力する。処理部には、通過光パルス列が入力される。
【0014】
処理部は、光強度取得手段と、演算手段とを備える。光強度取得手段は、いずれか1つの光ゲートといずれか1つの光パルスの時間位置が同じ場合の、通過光パルス列の平均光強度Gated(0)と、いずれか1つの光パルスからいずれか1つの光ゲートがτ遅延している場合の、通過光パルス列の平均光強度Gated(τ)を取得する。演算手段は、光強度取得手段で取得された平均光強度Gated(0)及びGated(τ)から、被測定光パルス列の光パルスに相当するエネルギー成分Xと、バックグラウンド光に相当するエネルギー成分Yを算出する。
【0015】
また、この発明の光パルス列エネルギー測定方法は、光ゲート過程と、光強度取得過程と、演算過程とを備える。光ゲート過程では、光ゲートが時間軸上に周期的に並ぶ光ゲート列を生成し、入力された、光パルスが時間軸上に周期的に並ぶ光パルス列が、光ゲート列を通過した通過光パルス列を出力する。光強度取得過程では、いずれか1つの光ゲートといずれか1つの光パルスの時間位置が同じ場合の、通過光パルス列の平均光強度Gated(0)と、いずれか1つの光パルスからいずれか1つの光ゲートがτ遅延している場合の、通過光パルス列の平均光強度Gated(τ)を取得する。演算過程では、光強度取得過程で取得された平均光強度Gated(0)及びGated(τ)から、被測定光パルス列の光パルスに相当するエネルギー成分Xと、バックグラウンド光に相当するエネルギー成分Yを算出する。
【発明の効果】
【0016】
この発明の光パルス列エネルギー測定装置及び光パルス列エネルギー測定方法によれば、光ゲートを通過した、通過光パルス列の平均光強度を測定することで、高速な測定系が必要とされず、また、光パルスの従来よりも高い消光比の測定が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】消光比測定方法を説明するための模式図(1)である。
【
図4】パルス繰り返し周波数が1kHzであるときのGated(τ)を計算した結果を示す図である。
【
図5】消光比測定方法を説明するための模式図(2)である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態について説明するが、各構成要素の形状、大きさ及び配置関係については、この発明が理解できる程度に概略的に示したものに過ぎない。また、以下、この発明の好適な構成例につき説明するが、各構成要素の材質及び数値的条件などは、単なる好適例にすぎない。従って、この発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、この発明の構成の範囲を逸脱せずにこの発明の効果を達成できる多くの変更又は変形を行うことができる。
【0019】
(測定装置の構成)
図1を参照して、この発明の第1実施形態に係る光パルス列エネルギー測定装置(以下、単に測定装置とも称する。)について説明する。
図1は、測定装置の構成例を示す模式図である。
【0020】
測定装置は、光ゲート部10と、処理部30とを備えて構成される。
【0021】
光ゲート部10は、光ゲートが時間軸上で一定の周期で並ぶ光ゲート列を生成する。光ゲート部10には、測定対象である光パルス列(被測定光パルス列)が入力される。光ゲート部10は、光ゲート列によりゲートとして機能し、入力された被測定光パルス列に対して、通過光パルス列を出力する。通過光パルス列は、処理部30に送られる。光ゲート部10は、例えば、変調器、光スイッチ、シャッターなどで構成される。例えば、光パルスと光ゲートが同じ時間位置に配置されているとき、光パルスは光ゲート部10を通過して出力され、光パルスと光ゲートが同じ時間位置に配置されていないとき、光パルスは光ゲート部10を通過できず出力されない。
【0022】
被測定光パルス列は、パルス幅Δtのパルスが、周期Tで並ぶものとする。この被測定光パルス列の、単位時間当たりの平均光強度をPout、光パルスに対応する成分をX、及び、バックグラウンド光に対応する成分をYとする。従って、Pout=X+Yである。
【0023】
光ゲート列は、光ゲート幅がΔτの光ゲートが、周期kTで並ぶものとする。ここで、kは1以上の整数である。kが1であるとき、被測定光パルス列の周期と、光ゲート列の周期が一致する。また、kが1より大きいときは、光ゲートが、光パルスに対して数個おきに発生する。
【0024】
光ゲート列の波形、光ゲート幅Δτ、周期kTは、制御信号により制御される。制御信号は、制御部20で生成されて、光ゲート部10に送られる。
【0025】
ここで、光ゲート幅Δτは被測定光パルス列の光パルスのパルス幅Δtより十分大きく設定するのがよい。また、光ゲートの波形は、矩形状であることが望ましい。ここで、十分大きいとは、光ゲート部10に入力される光パルスの波形と、光ゲート部から出力される光パルスの波形とが、ほぼ同じであることを意味する。そのために光ゲート幅Δτは、パルス幅Δtに対して少なくとも1~2倍以上に設定されることが望ましい。
【0026】
また、光ゲート幅Δτは、被測定光パルス列の周期Tよりも十分小さく設定するのが良い。
【0027】
処理部30は、光強度取得手段32と、演算手段34とを備えて構成される。
【0028】
光強度取得手段32は、光ゲート部10から出力される通過光パルス列の平均光強度を取得する。光強度取得手段32として、任意好適な従来公知の光パワーメータを用いることができる。光強度取得手段32で取得された平均光強度は、演算手段40に送られる。
【0029】
演算手段40としては、例えば、市販のパーソナルコンピュータ(PC)を利用できる。ここでは、一例として、演算手段34が、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)及び記憶手段を備えて構成されるものとして説明する。CPUは、ROMに格納されているプログラムを実行することにより、後述する第1測定方法の実行に用いられる各機能手段を実現する。各機能手段での処理結果は、一時的にRAMに格納される。
【0030】
(第1測定方法)
図2を参照して、この発明の第1実施形態に係る光パルス列エネルギー測定方法(以下、単に第1測定方法とも称する。)について説明する。第1測定方法の一例として消光比測定方法について説明する。
図2は、第1測定方法、ここでは、消光比測定方法を説明するための模式図である。
図2(A)は、被測定対象光パルス列を示す模式図である。また、
図2(B)及び(C)は、光ゲート列を示す模式図である。
図2(B)は、被測定光パルス列のいずれか一つの光パルスの時間位置と一致した時間位置に光ゲートを配置した例を示している。また、
図2(C)は、被測定光パルス列のいずれか一つの光パルスの時間位置と一致した時間位置から遅延時間τずれた位置に光ゲートを配置した例を示している。
【0031】
先ず、
図2(A)に示す光パルス列に対して、被測定光パルス列のいずれか一つの光パルスの時間位置と一致した時間位置に光ゲートを配置した光ゲート列を生成する(
図2(B)参照)。光強度取得手段32は、このときの、光ゲート部10から出力される通過光パルス列の平均光強度Gated(0)を取得する。
【0032】
次に、被測定光パルス列のいずれか一つの光パルスの時間位置と一致した時間位置から遅延時間τずれた位置に光ゲートを配置した光ゲート列を生成する(
図2(C)参照)。光強度取得手段32は、このときの、光ゲート部10から出力される通過光パルス列の平均光強度Gated(τ)を取得する。
【0033】
ここで、遅延時間τは、光ゲートのゲート幅Δτより十分大きく、また、被測定光パルス列のパルス周期Tより小さいものとする。
【0034】
被測定光パルス列の強度時間波形I(t)は、強度pI0の連続光状のバックグラウンド成分と、ピーク光強度(1-p)I0の光パルス成分との和で表される。ここで、1/pがこの被測定光パルス列の消光比となる。
【0035】
光パルス成分の強度時間波形はf(t)に比例するとする。なお、f(t)は、f(0)=1と規格化されており、またパルス幅Δtより十分大きい時間tにおいてf(t)=0に収束するものとする。このとき、光パルス列の強度時間波形I(t)は、以下の式(1)で表すことができる。
【0036】
【0037】
上記式(1)の光パルス列の平均光強度Poutは、式(1)を測定時間Tmeasの間で積分した値を測定時間Tmeasで除したものとなる。測定時間Tmeasが十分長い場合、Poutは、以下の式(2)で与えられる。
【0038】
【0039】
ここで、上記式(2)の最右辺の第1項が光パルスに相当するエネルギー成分Xであり、第2項がバッググラウンド光に相当するエネルギー成分Yである。従って、上記式(2)は、以下の式(3-a)~(3-b)のように表すことができる。
【0040】
【0041】
図2(B)及び
図2(C)は、光ゲート部10で発生させる光ゲートの透過率時間波形を表す。即ち、この光ゲート列の透過率は光ゲートに対応する部分のピーク透過率g
0と、それ以外の部分の最小透過率bの間で時間的に変調されている。
【0042】
ゲート波形はg(t)で表されるとする。ここでg(t)はg(0)=1と規格化されており、またゲート幅Δτより十分大きい時間tにおいてg(t)=0に収束するものとする。この結果、光ゲート部10の透過率時間波形G(t)は、以下の式(4)のように表すことができる。
【0043】
【0044】
ここで、この光ゲート部に連続光を入力した場合を考える。入力される連続光の平均光強度とゲート出力光の平均光強度の比を平均ゲート透過率Goutと定義する。測定時間Tmeasが十分長い場合、上記式(4)を用いると、Goutは、以下の式(5)で与えられる。
【0045】
【0046】
ここで、上記式(5)の最右辺第1項をZ/kと定義すると、上記式(5)は、以下の式(6)のように表すことができる。
【0047】
【0048】
図2(A)に示す光パルス列を
図2(B)及び
図2(C)に示す光ゲート部10を通過させて得られる通過光パルス列の平均光強度を考える。通過光パルス列の平均光強度は、光パルスの時間位置と光ゲートの時間位置の相対関係によって変化する。
【0049】
Gated(τ)は、ある時刻tにおける入力光(光パルス列)強度I(t)とその時のゲート透過率G(t-τ)の積を測定時間Tmeasの間で積分した値を測定時間Tmeasで除したものである。この結果、Gated(τ)は以下の式(7)で表される。
【0050】
【0051】
上記式(7)に上記式(1)-(6)を代入すると、以下の式(8)が得られる。
【0052】
【0053】
ここで、先ず、τ=0、すなわち、光パルスと光ゲートの時間位置が一致している場合を考える(
図2(B)参照)。ここで光ゲート波形g(t)が矩形波等、flat topな形状をしており、かつゲート幅Δτがパルス幅Δtより十分広い場合、式(8)の右辺第4項の時間積分項は単純にf(t)の積分と考えてよい。光ゲートが、光パルスに対してk-1個おきに発生することを考慮すると、上記式(8)から、以下の式(9-a)が得られる。次に、τが光ゲート幅Δτより十分大きい場合を考える(
図2(C)参照)。このとき、f(t)g(t-τ)~0と考えることができる。すなわち、上記式(8)の右辺第4項は0と考えることができる。従って、ゲート幅Δτより十分大きな遅延τに対しては、上記式(8)から、以下の式(9-b)が得られる。
【0054】
【0055】
上記式(6-b)を用いてZを消去すれば、上記式(9-a)及び(9-b)はX及びYの連立方程式となる。この連立方程式を解けば、以下の式(10)が得られる。
【0056】
【0057】
従って、光ゲートにおける、ピーク透過率g0、最小透過率b及び平均ゲート透過率G
outが既知であれば、平均光強度Gated(0)及びGated(τ)の測定値から、エネルギー成分X及びYを算出することができる。
【0058】
一般に、光パルスの波形に応じた補正値Cを用いて、f(t)の時間積分は以下の式(11)のように表すことができる。
【0059】
【0060】
例えば、光パルスが矩形波の場合C=1となり、光パルスがガウス波形の場合、C=[π/4/ln(2)]0.5~1.064となり、概ね1前後の値をとる。このとき、上記式(3-a)及び(3-b)から、以下の式(12-a)及び(12-b)が得られる。
【0061】
【0062】
また、上記式(12-a)及び(12-b)から以下の式(13)が得られる。
【0063】
【0064】
従って、パルス周期T、パルス幅Δtが既知であれば、X/Y比から消光比1/pを算出できる。
【0065】
図3を参照して、数値計算を用いたGated(0)及びGated(τ)の試算について説明する。
図3は、試算結果を示す図である。
図3では、横軸に消光比1/p(dB)を取って示し、縦軸にゲート出力光強度(dBm)を取って示している。
【0066】
ここでは光パルス光源を、市販のLiNbO3強度変調器などのマッハツェンダ干渉計型強度変調器を利用した光源としている。マッハツェンダ干渉計型強度変調器の透過率は、挿入損失をα、干渉計の2つの光路間の位相差をφとおくとαsin2(φ/2)であたえられる。
【0067】
従って、この強度変調器に連続光を入力し、2つの光路間の位相差を0とπの間で変調するように駆動させれば、原理的には消光比無限大の光パルスが得られる。2つの光路間の位相差がΔφ/2とΔφ/2+πの間で変調された場合、バックグラウンド成分が生じ、この時の消光比1/pはtan2(Δφ/2)で与えられる。数値計算ではΔφを変化させて消光比1/pを変化させ、この時のGated(0)及びGated(τ)を計算した。
【0068】
市販のマッハツェンダ干渉計型強度変調器の仕様を考慮して、入力連続光強度を1mW(0dBm)、挿入損失αを-6dBとした。光パルスについては、パルス幅Δtが20
nsecの矩形波とした。また、光ゲート列については、ピーク透過率g0を-10dB、最小透過率bを-16dB、ゲート幅Δτを100nsecの矩形波とした。
【0069】
光パルス繰り返し周波数1/Tを1kHzとし、ゲート繰り返し周波数はk=1として光パルス列の繰り返し周波数と一致させた。
【0070】
図3に示すように、Gated(0)及びGated(τ)の両者は、ともに消光比の増加とともに減少する。一方、その減少の仕方はGated(τ)の方が著しい。また、Gated(0)及びGated(τ)の両者は、消光比が増加していくと、やがて、その減少が鈍化する。しかし、Gated(0)の減少が鈍化する消光比が60dBを超えたあたりでもGated(τ)の減少は続いている。このため、この消光比測定方法によれば、例えば消光比が60dBであるか70dBであるかの測定は可能である。
【0071】
なお、Gated(0)及びGated(τ)の変化率はパルス繰り返し周波数1/Tに依存し、繰り返し周波数1/Tが小さいほど、より大きい消光比においても、精度よく消光比を測定できる。
【0072】
また、Gated(τ)の変化率は、光ゲート波形にも依存する。
図4は、パルス繰り返し周波数が1kHzであるときのGated(τ)を計算した結果を示す図である。
図4(A)は、消光比が0~80dBの範囲を示し、
図4(B)は、消光比が50~80dBの範囲を拡大して示している。また、
図4(A)及び(B)では、光ゲート幅Δτが100nsecを実線で示し、光ゲート幅が500μsecを破線で示している。
【0073】
例えば、光ゲート幅Δτが100nsecの場合、消光比が60dBの場合と70dBの場合とでのGated(τ)の変化はおよそ0.16dB程度であるのに対し、光ゲート幅Δτが500μsecの場合、Gated(τ)の変化はおよそ0.5dB程度まで増加する。このことは消光比測定の精度が上がることを意味している。Gated(τ)の変化量は光ゲートのゲート幅Δτを広く、またg
0/b比を高くすると増加する。例えば、
図4の例で、ゲート幅を500μsec、g
0=-10dB、b=-26dBとして計算すると消光比が60dBの場合と70dBの場合とでのGated(τ)の変化はおよそ2.5dB程度まで拡大し、消光比の測定精度がさらに良化する。
【0074】
図3及び
図4に示すように、Gated(0)及びGated(τ)の見積値は今回の数値計算では概ね-30dBmから-70dBmの範囲である。市販の光パワーメータの測定レンジは概ね+10dBmから-80dBm程度である。このことは平均光強度Gated(0)及びGated(τ)の測定は市販の安価な光パワーメータを用いて十分可能であることを意味している。
【0075】
すなわち上述した測定装置及び第1測定方法は、十分に広いダイナミックレンジで平均光強度を測定できる光パワーメータがあれば実現できる。そして市販の光パワーメータは概ねこの条件を十分満足できる。
【0076】
このように上述した測定装置及び第1測定方法によれば、市販のパワーメータ等の安価な測定器と簡易な測定系を用いて光パルス列の消光比を高精度に測定できる。
【0077】
(第2測定方法)
この発明の第2の実施形態に係る光パルス列エネルギー測定方法(以下、単に第2測定方法とも称する。)について説明する。第2測定方法の一例として消光比測定方法について説明する。第2測定方法では、光ゲート波形のパラメータが未知あるいは時間的に変動する場合においても被測定光パルス列の消光比測定を可能とする。測定装置は、第1測定
装置と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0078】
第1測定方法は、光ゲート部10における、ピーク透過率g0、最小透過率b及び平均ゲート透過率Goutが既知であり、また常に安定な一定値を取る場合に適用できる。一方、光ゲート部10の仕様によってはピーク透過率g0、最小透過率b及び平均ゲート透過率Goutが既知であり、また常に安定な一定値を取ることは必ずしも保証されない。例えば、先に述べた市販のLiNbO3強度変調器などのマッハツェンダ干渉計型強度変調器を光ゲートとして使用する場合を考える。光ゲートのオン/オフ(すなわち透過率g0/b間の変調)を制御部20の発生する電気パルス信号によって制御することを考える。
【0079】
電気パルス信号がオンのとき、干渉計の2つの光路間の位相差をφonとするとg0=αsin2(φon/2)の関係式からg0が与えられる。一方、電気パルス信号がオフのとき、干渉計の2つの光路間の位相差をφoffとするとb=αsin2(φoff/2)の関係式からbが与えられる。
【0080】
ここで、マッハツェンダ干渉計においては、干渉計の2つの光路間の位相差に作製誤差等に起因するオフセット値δφが存在するのが一般的である。特にLiNbO3強度変調器においては強誘電性に起因するオフセット値が存在し、これが環境温度等により変動することが知られている。位相オフセットを加味したg0及びbは、それぞれ、g0=αsin2{(φon+δφ)/2}及びb=αsin2{(φoff+δφ)/2}となる。すなわち、オフセット値δφの変動により、ピーク透過率g0、最小透過率b及び平均ゲート透過率Goutが変動してしまう。このようなピーク透過率g0、最小透過率b及び平均ゲート透過率Goutの変動は、消光比測定に誤差を生じてしまう。
【0081】
そこで、第2測定方法においては、第1測定方法で測定した、Gated(τ)及びGated(0)に加えて、光ゲートの透過率をg0にして駆動したときの光ゲート出力光強度Gon、及び、光ゲートの透過率をbにして駆動したときの光ゲート出力光強度Goffを測定する。
【0082】
この一連の4つの測定は短時間のうちに行われ、測定中は、g0、b、及びGoutは変動しないものとする。このとき、Gon及びGoffは以下の式(14)で与えられる。
【0083】
【0084】
上記式(9-a)、(9-b)、(14-a)及び(14-b)から以下の式(15)が得られる。
【0085】
【0086】
この結果、ピーク透過率g0、最小透過率b及び平均ゲート透過率Goutが未知であっても、上記式(15)を用いて、Gated(0)、Gated(τ)、Gon、Go
ffから、X/Y比が求まる。このX/Y比と上記式(13)から消光比1/pを求めることができる。
【0087】
ここで光ゲートの透過率は制御部20の与える電気パルス信号によって決定されると仮定し、電気パルス信号の電圧値がVon時には光ゲート透過率はg0となり電圧値がVoff時には光ゲート透過率はbとなると仮定する。この場合、Gated(0)及びGated(τ)の測定時には制御部20から電圧Von/Voffの変調信号を発生させ、Gonの測定時には制御部20から電圧Vonの定電圧信号を発生させ、Goffの測定時には制御部20から電圧Voffの定電圧信号を発生させればよい。
【0088】
上述のように第2測定方法によれば、ピーク透過率g0、最小透過率b及び平均ゲート透過率Goutが未知であったり、経時的に変化したりしたとしても被測定光パルス列の消光比を高精度に測定できる。
【0089】
(第3測定方法)
第1測定方法及び第2測定方法では、被測定光パルス列は連続光状のバックグラウンド成分を有するとして説明した。一方、第3測定方法では、バックグラウンド成分が時間的に変動する場合においても被測定光パルス列の消光比測定を可能とする。このような時間的に変化するバックグラウンド成分は、例えば、光パルス列を光増幅器で増幅した際に該光増幅器の利得回復時間が光パルス周期と同程度である場合などに生じうる。
【0090】
図5を参照して、この発明の第3の実施形態に係る光パルス列エネルギー測定方法(以下、単に第3測定方法とも称する。)について説明する。第3測定方法の一例として消光比測定方法について説明する。
図5は、第3測定方法、ここでは、消光比測定方法を説明するための模式図である。
図5(A)は、被測定対象光パルス列を示す模式図である。また、
図5(B)及び(C)は、光ゲート列を示す模式図である。
図5(B)は、被測定光パルス列のいずれか一つの光パルスの時間位置と一致した時間位置から遅延時間-τ1ずれた位置に光ゲートを配置した例を示している。また、
図2(C)は、被測定光パルス列のいずれか一つの光パルスの時間位置と一致した時間位置から遅延時間+τ1ずれた位置に光ゲートを配置した例を示している。
【0091】
なお、測定装置は、第1実施形態に係る測定装置と同様であるため、重複する説明を省略する。
【0092】
図5に示す光パルス列のバックグラウンド成分は時間的に一定ではない。バックグラウンド成分の強度時間波形は関数h(t)に比例するとする。またバックグラウンド成分はパルス成分と同様に周期Tでの周期性を有するとする。すなわち、nを整数としてh(t+nT)=h(t)であるとする。またその平均値はI
0pであるとする。光パルス成分の時間強度波形は本発明の第1測定方法及び第2測定方法で説明したのと同様であるとし、この光パルス列の消光比は1/pで表されるとする。
【0093】
このときの光パルス列の強度時間波形I(t)は、以下の、式(16)で与えられる。
【0094】
【0095】
また関数h(t)は、 以下の式(17)を満足するよう規格化されているものとする。
【0096】
【0097】
この時、上記式(16)の光パルス列の平均光強度Poutは第1測定方法で説明したのと同様に、上記式(16)を測定時間Tmeasの間で積分した値を測定時間Tmeasで除したものとなる。この結果、測定時間Tmeasが十分長い場合、Poutは、以下の式(18)で与えられる。
【0098】
【0099】
すなわち、第1測定方法で説明した上記式(2)及び(3)と同じ表記で与えられる。同様に上記式(18)の最右辺第1項が、上記式(3-a)で与えられるのと同様に光パルスに相当するエネルギー成分Xであり、再右辺第2項が、上記式(3-b)で与えられるのと同様にバッググラウンド光に相当するエネルギー成分Yである。
【0100】
上記式(16)で与えられる光パルス列を、第1測定方法及び第2測定方法と同様、
図2(B)で表されるような光ゲート特性を有する光ゲートを通過させ、この時光ゲートから出力される光パルス列の平均光強度を測定する。
【0101】
第1測定方法及び第2測定方法と同様、平均光強度は光パルスの時間位置と光ゲートの時間位置(透過率がg0となる時間位置)の相対関係によって変化する。
【0102】
第1測定方法の説明における上記式(8)及び(9)を用いた議論に基づいて、第3測定方法におけるGated(0)及びGated(τ)を計算すると、以下の式(19)が得られる。なお、τ>Δτとする。
【0103】
【0104】
ここで関数H(τ)は以下の式(20-a)で定義される。なお、光ゲート波形が理想的な矩形波で近似できる場合、H(τ)は以下の式(20-b)で与えられる。
【0105】
【0106】
遅延時間τをなるべく小さな、ゲート幅Δτ程度の値τ1に設定して、遅延時間+τ1及び-τ1における光ゲート出力強度Gated(τ1)及びGated(-τ1)を測定する。これらはそれぞれ、以下の式(21-a)及び(21-b)で与えられる。
【0107】
【0108】
バッググラウンド成分h(t)が連続的に変化すると仮定すれば、H(0)~[H(τ1)+H(-τ1)]/2と近似できる。従って、上記式(21-a)及び(21-b)から以下の式(22)が得られる。
【0109】
【0110】
上記式(14-a)、(14-b)、(19-a)、(22)から、以下の式(23)が得られ、この場合も X/Y比を求めることができる。
【0111】
【0112】
さらに、上記式(13)を用いて消光比1/pを求めることができる。第2測定方法で用いる上記式(15)の場合と比較していえば、光パルス列のバックグラウンド成分が時間的に変動する場合においても、Gated(-τ1)及びGated(τ1)の平均値をGated(τ)と考えることでエネルギー比X/Y比を求めることができる。
【0113】
上記式(19-b)に示すように、時間変動するバックグラウンド成分h(t)はその積分値H(τ)を介してGated(τ)の変化として現れる。従って、第3測定方法では、遅延時間τを変化させながらGated(τ)を測定することでバックグラウンド成分h(t)の時間変化を測定することができる。バックグラウンド成分h(t)の時間変化に比べてゲート幅Δτが十分小さければ、H(τ)は概ねh(τ)に比例するので、H(τ)の測定でh(τ)の時間変化を知ることができる。
【0114】
ここでは、光パルス光源ならびに光ゲートとして、LiNbO3強度変調器などのマッハツェンダ干渉計型光強度変調器を利用した場合の動作例について説明したが、第1~第3測定方法及び測定装置は一般の光パルス光源ならびに光ゲートに対しても適用できる。
【符号の説明】
【0115】
10 光ゲート部
20 制御部
30 処理部
32 光強度取得手段
34 演算手段