(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
H01G4/30 201K
H01G4/30 201M
H01G4/30 201N
H01G4/30 201C
H01G4/30 512
H01G4/30 513
(21)【出願番号】P 2020022428
(22)【出願日】2020-02-13
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】吉田 大介
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佑生
(72)【発明者】
【氏名】平林 輝
(72)【発明者】
【氏名】岡本 拓人
(72)【発明者】
【氏名】木村 仁士
【審査官】木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-114097(JP,A)
【文献】特開2011-165935(JP,A)
【文献】特開2011-233696(JP,A)
【文献】特開2019-102578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向している一対の端面と、一対の前記端面を連結している四つの側面と、を有している素体と、
前記側面及び前記端面に配置されている外部電極と、
前記素体内に配置されている複数の内部電極と、を備え、
前記素体は、前記端面と前記側面との間に設けられていると共に湾曲している稜線面を有し、
前記外部電極は、前記端面と前記側面の一部とにわたって設けられている電極層と、前記電極層を覆っているめっき層と、を有し、
複数の前記内部電極のそれぞれは、他の前記内部電極と対向して配置されている電極部と、前記電極部と前記外部電極とを接続している接続部と、を有し、
一対の前記端面の対向方向に沿うと共に複数の前記内部電極の積層方向に沿い、かつ、前記電極部及び前記接続部を含む第一断面において、前記稜線面の曲率半径がR1であり、前記積層方向において前記側面と前記内部電極とが最も近接する位置での当該側面と当該内部電極との間の厚みがTである場合、
R1<T
の関係を満た
し、
一対の前記端面の前記対向方向に沿うと共に複数の前記内部電極の積層方向に沿い、かつ、前記電極部を含む第二断面において、前記稜線面の曲率半径がR2である場合、
R2>T
の関係を満たす、電子部品。
【請求項2】
前記積層方向に平行な前記側面は、角部が湾曲している長方形状を呈しており、
前記側面の前記角部の曲率半径がR3である場合、
R1<R3
の関係を満たす、請求項
1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記接続部の幅は、前記電極部の幅よりも小さい、請求項1
又は2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記第一断面は、前記端面に露出している前記接続部の端部を含む、請求項
3に記載の電子部品。
【請求項5】
前記積層方向に平行な前記側面に直交する方向から見て、前記第二断面における前記電極部は、前記稜線面に対応する領域に位置する部分を有している、請求項
1~4のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項6】
前記積層方向に平行な前記側面に直交する方向から見て、複数の前記内部電極の積層方向の端部に配置されている二つの前記内部電極の前記第二断面における前記電極部において、一対の前記端面の対向方向の端部は、前記稜線面に対応する領域に位置する部分を有している、請求項
5に記載の電子部品。
【請求項7】
前記積層方向に平行な前記側面に直交する方向から見て、前記第一断面における前記電極部は、
前記端面と前記積層方向に平行な前記側面との間に設けられている前記稜線面に対応する領域に位置する部分を有している、請求項1~
4のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項8】
前記積層方向に平行な前記側面に直交する方向から見て、複数の前記内部電極の積層方向の端部に配置されている二つの前記内部電極の前記第一断面における前記電極部において、一対の前記端面の対向方向の端部は、
前記端面と前記積層方向に平行な前記側面との間に設けられている前記稜線面に対応する領域に位置する部分を有している、請求項
7に記載の電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに隣り合う側面と端面とを有している素体と、側面及び端面に配置されている外部電極と、素体内に配置されている内部電極と、を備えている電子部品が知られている(たとえば、特許文献1参照)。素体は、角部及び稜線部が丸められている直方体形状を呈している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
素体には、たとえば、製造過程において、欠け(チッピング)が発生するおそれがある。素体同士が衝突する、又は、素体が素体以外の製造設備などと衝突することにより、素体に衝撃が加わる。素体の角部は、比較的強度が低いため、衝撃が加わると、欠けが発生する可能性が高い。そこで、素体の角部及び稜線部を曲面形状とすることにより、素体に欠けが発生することを抑制している。
【0005】
外部電極は、一般に、側面及び端面上に配置されている電極層と、電極層を覆うように配置されているめっき層と、を備えている。めっき層は、電極層上にめっき法によって形成されている。素体がめっき液に浸漬されると、外部電極(電極層)の外側と内側との圧力差により、めっき液は、外部電極を通り、外部電極と素体との界面に浸入し得る。内部電極は、外部電極と接続されるために、その端部は、素体の表面に露出している。このため、外部電極と素体との界面まで浸入しためっき液は、内部電極の端部又は内部導体と素体との界面を通り、素体内に浸入し得る。特に、素体の角部及び稜線部が曲面形状を呈している場合、角部及び稜線部の外部電極の厚みが薄くなるため、めっき液が浸入し易くなる。素体内へのめっき液の浸入は、電子部品の信頼性の低下を招来する。
【0006】
本発明は、信頼性の向上を図れる電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る電子部品は、互いに対向している一対の端面と、一対の端面を連結している四つの側面と、を有している素体と、側面及び端面に配置されている外部電極と、素体内に配置されている複数の内部電極と、を備え、素体は、端面と側面との間に設けられていると共に湾曲している稜線面を有し、外部電極は、端面と側面の一部とにわたって設けられている電極層と、電極層を覆っているめっき層と、を有し、複数の内部電極のそれぞれは、他の内部電極と対向して配置されている電極部と、電極部と外部電極とを接続している接続部と、を有し、一対の端面の対向方向に沿うと共に複数の内部電極の積層方向に沿い、かつ、電極部及び接続部を含む第一断面において、稜線面の曲率半径がR1であり、積層方向において側面と内部電極とが最も近接する位置での当該側面と当該内部電極との間の厚みがTである場合、
R1<T
の関係を満たす。
【0008】
本発明の一側面に係る電子部品では、第一断面における素体の稜線面の曲率半径R1は、側面と内部電極との間の厚みTよりも小さい。すななち、電子部品では、第一断面において、素体の稜線面の曲率よりも、素体の外層厚さが大きい。これにより、電子部品では、外部電極のめっき層を形成するめっき工程において、内部電極の接続部を介して素体内にめっき液が浸入することを抑制できる。その結果、電子部品では、信頼性の向上が図れる。
【0009】
一実施形態においては、一対の端面の対向方向に沿うと共に複数の内部電極の積層方向に沿い、かつ、電極部を含む第二断面において、稜線面の曲率半径がR2である場合、
R2>T
の関係を満たしてもよい。この構成では、稜線面の曲率半径を素体の角部に向かって大きくすることができる。そのため、電子部品では、素体の角部に向かうにつれて角部を湾曲形状とすることができる。したがって、電子部品では、素体において、欠けが発生することをより一層抑制することができる。
【0010】
一実施形態においては、積層方向に平行な側面は、角部が湾曲している長方形状を呈しており、側面の角部の曲率半径がR3である場合、
R1<R3
の関係を満たしていてもよい。この構成では、稜線面の曲率半径が素体の角部に向かって大きくなる。すなわち、電子部品では、素体の角部を湾曲形状とすることができる。そのため、電子部品では、素体において、欠けが発生することをより一層抑制することができる。
【0011】
一実施形態においては、接続部の幅は、電極部の幅よりも小さくてもよい。この構成では、接続部の幅を小さくすることで、接続部が素体の角部及び稜線部に位置する構成を回避できる。そのため、電子部品では、外部電極のめっき層を形成するめっき工程において、内部電極の接続部を介して素体内にめっき液が浸入することを抑制できる。したがって、電子部品では、信頼性の向上が図れる。一方で、電子部品では、電極部の幅を大きくすることで、電極部の面積を大きくすることができる。そのため、電子部品では、静電容量の増大が図れる。
【0012】
一実施形態においては、第一断面は、端面に露出している接続部の端部を含んでいてもよい。この構成では、端面に露出する接続部の全領域において、R1<Tの関係を満たす。したがって、電子部品では、外部電極のめっき層を形成するめっき工程において、内部電極の接続部を介して素体内にめっき液が浸入することをより一層抑制できる。
【0013】
一実施形態においては、積層方向に平行な側面に直交する方向から見て、第二断面における電極部は、稜線面に対応する領域に位置する部分を有していてもよい。この構成では、第二断面における電極部は、上記側面よりも一対の端面の対向方向において突出する部分を有している。これにより、電子部品では、電極部の面積を大きくすることができる。したがって、電子部品では、静電容量の増大を図ることができる。
【0014】
一実施形態においては、積層方向に平行な側面に直交する方向から見て、複数の内部電極の積層方向の端部に配置されている二つの内部電極の第二断面における電極部において、一対の端面の対向方向の端部は、稜線面に対応する領域に位置する部分を有していてもよい。この構成では、電極部の面積を大きくすることができる。したがって、電子部品では、静電容量の増大を図ることができる。
【0015】
一実施形態においては、積層方向に平行な側面に直交する方向から見て、第一断面における電極部は、稜線面に対応する領域に位置する部分を有していてもよい。この構成では、第一断面における電極部は、上記側面よりも一対の端面の対向方向において突出する部分を有している。これにより、電子部品では、電極部の面積を大きくすることができる。したがって、電子部品では、静電容量の増大を図ることができる。
【0016】
一実施形態においては、積層方向に平行な側面に直交する方向から見て、複数の内部電極の積層方向の端部に配置されている二つの内部電極の第一断面における電極部において、一対の端面の対向方向の端部は、稜線面に対応する領域に位置する部分を有していてもよい。この構成では、電極部の面積を大きくすることができる。したがって、電子部品では、静電容量の増大を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一側面によれば、信頼性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る積層コンデンサの斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る積層コンデンサの断面構成を示す図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る積層コンデンサの断面構成を示す図である。
【
図4】
図4は、積層コンデンサの素体の分解斜視図である。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)は、素体の断面構成を示す図である。
【
図7】
図7(a)及び
図7(b)は、素体の断面構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
図1に示されるように、積層コンデンサ(電子部品)1は、直方体形状を呈している素体3と、複数の外部電極5と、を備えている。本実施形態では、積層コンデンサ1は、一対の外部電極5を備えている。一対の外部電極5は、素体3の外表面に配置されている。一対の外部電極5は、互いに離間している。直方体形状は、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状を含む。
【0021】
素体3は、互いに対向している一対の主面3aと、互いに対向している一対の側面3cと、互いに対向している一対の端面3eと、を有している。一対の主面3a、一対の側面3c、及び、一対の端面3eは、長方形状を呈している。長方形状は、たとえば、各角が湾曲している形状、すなわち、各角が面取りされている形状、及び、各角が丸められている形状を含む。
【0022】
一対の主面3aが対向している方向が、第一方向D1である。一対の側面3cが対向している方向が、第二方向D2である。一対の端面3eが対向している方向が、第三方向D3である。積層コンデンサ1は、電子機器にはんだ実装される。電子機器は、たとえば、回路基板又は電子部品を含む。積層コンデンサ1では、一方の主面3aが、電子機器と対向する。一方の主面3aは、実装面を構成するように配置される。一方の主面3aは、実装面である。各主面3aは、直方体形状を呈している素体3が有する側面でもある。
【0023】
第一方向D1は、各主面3aに直交する方向であり、第二方向D2と直交している。第三方向D3は、各主面3aと各側面3cとに平行な方向であり、第一方向D1と第二方向D2とに直交している。第二方向D2は、各側面3cに直交する方向であり、第三方向D3は、各端面3eに直交する方向である。本実施形態では、素体3の第二方向D2での長さは、素体3の第一方向D1での長さより大きい。素体3の第三方向D3での長さは、素体3の第一方向D1での長さより大きく、かつ、素体3の第二方向D2での長さより大きい。第三方向D3が、素体3の長手方向である。
【0024】
素体3の第一方向D1での長さは、素体3の高さである。素体3の第二方向D2での長さは、素体3の幅である。素体3の第三方向D3での長さは、素体3の長さである。本実施形態では、たとえば、素体3の高さは、1880μmであり、素体3の幅は、1840μmであり、素体3の長さは、3330μmである。積層コンデンサ1は、いわゆるC3216形状品である。
【0025】
一対の側面3cは、一対の主面3aを連結するように第一方向D1に延在している。一対の側面3cは、第三方向D3にも延在している。一対の端面3eは、一対の主面3aを連結するように第一方向D1に延在している。一対の端面3eは、第二方向D2にも延在している。
【0026】
素体3は、四つの稜線面3gと、四つの稜線面3iと、四つの稜線面3jと、を有している。稜線面3gは、端面3eと主面3aとの間に位置している。稜線面3iは、端面3eと側面3cとの間に位置している。稜線面3jは、主面3aと側面3cとの間に位置している。本実施形態では、各稜線面3g,3i,3jは、凸状に湾曲するように丸められている。各稜線面3g,3i,3jは、所定の曲率半径を有する湾曲面である。素体3には、いわゆるR面取り加工が施されている。端面3eと主面3aとは、稜線面3gを介して、間接的に隣り合っている。端面3eと側面3cとは、稜線面3iを介して、間接的に隣り合っている。主面3aと側面3cとは、稜線面3jを介して、間接的に隣り合っている。
【0027】
素体3は、角部3kを有している。角部3kは、湾曲するように丸められている。すなわち、各角部3kは、曲面形状を有している。角部3kは、稜線面3gと稜線面3iとの交差部分である。すなわち、稜線面3gと稜線面3iとは、角部3kを構成している。角部3kの曲率半径は、140μm~160μmである。なお、積層コンデンサ1がC1005形状品である場合、角部3kの曲率半径R1は、20μm~45μmである。積層コンデンサ1がC1608形状品である場合、角部3kの曲率半径R1は、60μm~80μmである。積層コンデンサ1がC2012形状品である場合、角部3kの曲率半径R1は、100μm~120μmである。積層コンデンサ1がC3225形状品である場合、角部3kの曲率半径R1は、200μm~250μmである。
【0028】
図4に示されるように、素体3は、第一方向D1に複数の誘電体層6が積層されて構成されている。素体3は、積層されている複数の誘電体層6を有している。素体3では、複数の誘電体層6の積層方向が第一方向D1と一致する。各誘電体層6は、たとえば、誘電体材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成されている。誘電体材料は、たとえば、BaTiO
3系、Ba(Ti,Zr)O
3系、又は(Ba,Ca)TiO
3系などの誘電体セラミックを含む。実際の素体3では、各誘電体層6は、各誘電体層6の間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0029】
積層コンデンサ1は、
図2及び
図3に示されるように、複数の内部電極7と、複数の内部電極9と、を備えている。本実施形態では、積層コンデンサ1は、四つの内部電極7及び4個の内部電極9を備えている。各内部電極7,9は、素体3内に配置されている内部導体である。各内部電極7,9は、積層型電子部品の内部電極として通常用いられる導電性材料からなる。導電性材料は、たとえば、卑金属を含む。導電性材料は、たとえば、Ni又はCuを含む。内部電極7,9は、上記導電性材料を含む導電性ペーストの焼結体として構成されている。
【0030】
内部電極7と内部電極9とは、第一方向D1において異なる位置(層)に配置されている。内部電極7と内部電極9とは、素体3内において、第一方向D1に間隔を有して対向するように交互に配置されている。内部電極7と内部電極9とは、互いに極性が異なる。
【0031】
複数の内部電極7と複数の内部電極9とは、第一方向D1で交互に並んでいる。各内部電極7,9は、主面3aと略平行な面内に位置している。内部電極7と内部電極9とは、第一方向D1で互いに対向している。内部電極7と内部電極9とが対向している方向(第一方向D1)は、主面3aと平行な方向(第二方向D2及び第三方向D3)と直交している。本実施形態では、一方の主面3aに最も近接する内部電極7と、他方の主面3aに最も近接する内部電極9との間の距離は、たとえば、1500μmである。
【0032】
図4及び
図5に示されるように、内部電極7は、電極部7aと、接続部7bと、を有している。電極部7aは、長方形状を呈している。接続部7bは、長方形状を呈している。接続部7bは、電極部7aの一辺から延び、対応する一方の端面3eに露出している。接続部7bは、当該接続部7bの第二方向D2の中央部と、電極部7aの第二方向D2の中央部とが略一致するように、電極部7aの一方の端面3e側の一辺から延びている。内部電極7は、一方の端面3eに露出した接続部7bが外部電極5に接合されている。接続部7bは、電極部7aと外部電極5とを接続している。これにより、内部電極7は、外部電極5に電気的に接続されている。
【0033】
図5に示されるように、内部電極7では、電極部7aの第二方向D2における幅W1は、接続部7bの幅W2よりも大きい。言い換えれば、接続部7bの幅W2は、電極部7aの幅W1よりも小さい。本実施形態では、たとえば、電極部7aの幅W1は、1500μmであり、接続部7bの幅W2は、750μmである。すなわち、電極部7aの幅W1は、接続部7bの幅W2の2倍である。たとえば、電極部7aの第三方向D3における長さは、2990μmであり、接続部7bの第三方向D3における長さは、170μmである。
【0034】
図4に示されるように、内部電極9は、電極部9aと、接続部9bと、を有している。電極部9aは、長方形状を呈している。接続部9bは、長方形状を呈している。接続部9bは、電極部9aの一辺から延び、対応する他方の端面3eに露出している。接続部9bは、当該接続部9bの第二方向D2の中央部と、電極部9aの第二方向D2の中央部とが略一致するように、電極部9aの他方の端面3e側の一辺から延びている。内部電極9は、他方の端面3eに露出した接続部9bが外部電極5に接合されている。接続部9bは、電極部9aと外部電極5とを接続している。これにより、内部電極9は、外部電極5に電気的に接続されている。
【0035】
内部電極9では、電極部9aの第二方向D2における幅W1は、接続部9bの幅W2よりも大きい。言い換えれば、接続部9bの幅W2は、電極部9aの幅W1よりも小さい。本実施形態では、たとえば、電極部9aの幅W1は、1500μmであり、接続部9bの幅W2は、750μmである。すなわち、電極部9aの幅W1は、接続部9bの幅W2の2倍である。たとえば、電極部9aの第三方向D3における長さは、2990μmであり、接続部9bの第三方向D3における長さは、170μmである。
【0036】
外部電極5は、
図1に示されるように、素体3の第三方向D3での両端部にそれぞれ配置されている。各外部電極5は、素体3における、対応する端面3e側に配置されている。各外部電極5は、一対の主面3a、一対の側面3c、及び一つの端面3eに配置されている。外部電極5は、
図2及び
図3に示されるように、複数の電極部分5a,5c,5eを有している。電極部分5aは、主面3a上及び稜線面3g上に配置されている。各電極部分5cは、側面3c上及び稜線面3i上に配置されている。電極部分5eは、端面3e上に配置されている。外部電極5は、稜線面3j上に配置されている電極部分も有している。
【0037】
外部電極5は、一対の主面3a、一つの端面3e、及び一対の側面3cの五つの面、並びに、稜線面3g,3i,3jに形成されている。互いに隣り合う電極部分5a,5c,5eは、接続されており、電気的に接続されている。電極部分5eは、対応する内部電極7,9の一端をすべて覆っている。電極部分5eは、対応する内部電極7,9と直接的に接続されている。外部電極5は、対応する内部電極7,9と電気的に接続されている。外部電極5は、第一電極層E1、第二電極層E2、及び第三電極層E3を有している。第三電極層E3は、外部電極5の最外層を構成している。各電極部分5a,5c,5eは、第一電極層E1、第二電極層E2、及び第三電極層E3を有している。
【0038】
第一電極層E1は、主面3aの一部、側面3cの一部及び端面3eの上に配置されている。主面3aの一部及び側面3cの一部は、たとえば、主面3aにおける端面3e寄りの一部である。第一電極層E1は、各稜線面3g,3i,3jを覆うように形成されている。第一電極層E1は、稜線面3g及び稜線面3iの全体を覆うように形成されている。第一電極層E1は、稜線面3g及び稜線面3iの全体と接している。
【0039】
第一電極層E1は、素体3の表面に付与された導電性ペーストを焼き付けることにより形成されている。第一電極層E1は、導電性ペーストに含まれる金属成分(金属粉末)が焼結することにより形成されている。第一電極層E1は、焼結金属層(電極層)である。第一電極層E1は、素体3に形成された焼結金属層である。本実施形態では、第一電極層E1は、Cuからなる焼結金属層である。第一電極層E1は、Niからなる焼結金属層であってもよい。第一電極層E1は、卑金属を含んでいる。導電性ペーストは、たとえば、Cu又はNiからなる粉末、ガラス成分、有機バインダ、及び有機溶剤を含んでいる。各電極部分5a,5c,5eが有している第一電極層E1は、一体的に形成されている。
【0040】
第二電極層E2は、第一電極層E1上に配置されている。第二電極層E2は、第一電極層E1の全体を覆っている。第二電極層E2は、第一電極層E1の全体と接している。第二電極層E2は、主面3aの一部及び側面3cの一部と接している。第二電極層E2は、第一電極層E1上にめっき法により形成されている。本実施形態では、第二電極層E2は、第一電極層E1上にNiめっきにより形成されている。第二電極層E2は、Niめっき層である。第二電極層E2は、Snめっき層、Cuめっき層、又はAuめっき層であってもよい。第二電極層E2は、Ni、Sn、Cu、又はAuを含んでいる。Niめっき層は、第一電極層E1に含まれる金属よりも耐はんだ喰われ性に優れている。
【0041】
第三電極層E3は、第二電極層E2上に配置されている。第三電極層E3は、第二電極層E2の全体を覆っている。第三電極層E3は、第二電極層E2の全体と接している。第三電極層E3は、主面3aの一部及び側面3cの一部と接している。第三電極層E3は、第二電極層E2上にめっき法により形成されている。第三電極層E3は、はんだめっき層である。本実施形態では、第三電極層E3は、第二電極層E2上にSnめっきにより形成されている。第三電極層E3は、Snめっき層である。第三電極層E3は、Sn-Ag合金めっき層、Sn-Bi合金めっき層、又はSn-Cu合金めっき層であってもよい。第三電極層E3は、Sn、Sn-Ag合金、Sn-Bi合金、又はSn-Cu合金を含んでいる。
【0042】
第二電極層E2と第三電極層E3とは、めっき層PLを構成している。本実施形態では、めっき層PLは、二層構造を有している。めっき層PLは、第一電極層E1を覆っている。各電極部分5a,5c,5eが有している第二電極層E2は、一体的に形成されている。各電極部分5a,5c,5eが有している第三電極層E3は、一体的に形成されている。
【0043】
図6(a)及び
図6(b)に示されるように、一対の端面3eの対向方向(第三方向D3)に沿うと共に複数の内部電極7,9の積層方向(第一方向D1)に沿い、かつ、電極部7a,9a及び接続部7b,9bを含む第一断面(第一方向D1及び第三方向D3に沿い、かつ、第二方向D2から見た断面)において、稜線面3gの曲率半径がR1(μm)であり、積層方向において主面3aと内部電極7,9とが最も近接する位置での主面3aと内部電極7,9との間の厚みがT(μm)である場合、
R1<T
の関係を満たす。すなわち、曲率半径R1は、厚みTよりも小さい。第一断面は、素体3の第二方向D2において端面3eに露出する接続部7b,9bの幅W1の範囲内の断面である。すなわち、第一断面は、接続部7b,9bの第三方向D3の端部を含む断面である。本実施形態では、曲率半径R1は、たとえば、150μmである。厚みTは、たとえば、190μmである。なお、
図6(b)では、内部電極7,9の図示を省略している。
【0044】
図7(a)及び
図7(b)に示されるように、一対の端面3eの対向方向(第三方向D3)に沿うと共に複数の内部電極7,9の積層方向(第一方向D1)に沿い、かつ、電極部7a,9aを含む第二断面において、稜線面3gの曲率半径がR2(μm)であり、積層方向において主面3aと内部電極7,9とが最も近接する位置での主面3aと内部電極7,9との間の厚みがT(μm)である場合、
R2>T
の関係を満たす。すなわち、曲率半径R2は、厚みTよりも大きい。第二断面は、接続部7b,9bを含まない断面であり、素体3の第二方向D2において接続部7b,9bと側面3cとの間の範囲内の断面である。詳細には、第二断面は、素体3の第二方向D2において、接続部7b,9bと電極部7a,9aの第二方向D2の端部との間の範囲内の断面である。本実施形態では、曲率半径R2は、たとえば、200μmである。なお、
図7(b)では、内部電極7,9の図示を省略している。
【0045】
図8に示されるように、素体3の側面3cは、各角部3caが面取りされている長方形状を呈している。素体3の側面3cの角部3caの曲率半径R3は、稜線面3gの曲率半径R1よりも大きい(R3>R1)。言い換えれば、稜線面3gの曲率半径R1は、素体3の角部3kの曲率半径R3よりも小さい(R2<R3)。曲率半径R1は、たとえば、220μmである。素体3は、R1<R2<R3の関係を満たしている。
【0046】
図9に示されるように、複数の内部電極7,9の積層方向(第一方向D1)に平行な側面3cに直交する方向(第二方向D2)から見て、第一断面及び第二断面における電極部7a,9aは、稜線面3iに対応する領域に位置する部分を有している。具体的には、複数の内部電極7,9の積層方向に平行な側面3cに直交する方向(第二方向D2)から見て、第一断面及び第二断面における電極部7a,9aにおいて、一対の端面3e,3eの対向方向(第三方向D3)の端部は、稜線面3iに対応する領域に位置する部分を有している。すなわち、内部電極7,9の電極部7a,9aは、第二方向D2から見て、側面3cよりも第三方向D3において突出している。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係る積層コンデンサ1では、稜線面3gの曲率半径がR1であり、積層方向において主面3aと内部電極7,9とが最も近接する位置での主面3aと内部電極7,9との間の厚みがTである場合、
R1<T
の関係を満たす。このように、積層コンデンサ1では、第一断面における素体3の稜線面3gの曲率半径R1は、主面3aと内部電極7,9との間の厚みTよりも小さい。すななち、積層コンデンサ1では、第一断面において、素体3の稜線面3gの曲率よりも、素体3の外層厚さが大きい。これにより、積層コンデンサ1では、外部電極5のめっき層PLを形成するめっき工程において、内部電極7,9の接続部7b,9bを介して素体3内にめっき液が浸入することを抑制できる。その結果、積層コンデンサ1では、信頼性の向上が図れる。
【0048】
積層コンデンサ1には、素体3に稜線面3gが形成されている。この構成では、第一電極層E1を形成すると、稜線面3gに形成される第一電極層E1の厚みが、端面3eに形成される第一電極層E1の厚みよりも小さくなり得る。そのため、外部電極5のめっき層PLを形成するめっき工程においては、素体3に稜線面3gに配置されている第一電極層E1の方が、端面3eに配置されている第一電極層E1に比べて、めっき液の浸入が発生し易い。そこで、積層コンデンサ1では、上記関係を満たす構成を採用している。これにより、積層コンデンサ1では、外部電極5のめっき層PLを形成するめっき工程において、内部電極7,9の接続部7b,9bを介して素体3内にめっき液が浸入することを抑制できる。
【0049】
本実施形態に係る積層コンデンサ1では、一対の端面3eの対向方向に沿うと共に複数の内部電極7,9の積層方向に沿い、かつ、電極部7a,9aを含む第二断面において、稜線面3gの曲率半径がR2である場合、
R2>T
の関係を満たす。この構成では、稜線面3gの曲率半径を素体3の角部3kに向かって大きくすることができる。そのため、積層コンデンサ1では、素体3の角部3kに向かうにつれて角部3kを湾曲形状とすることができる。したがって、積層コンデンサ1では、素体3において、欠けが発生することをより一層抑制することができる。
【0050】
本実施形態に係る積層コンデンサ1では、複数の内部電極7,9 の積層方向に平行な側面3cは、角部3caが湾曲している長方形状を呈している。側面3cの角部3caの曲率半径がR3である場合、
R1<R3
の関係を満たしている。この構成では、稜線面3gの曲率半径が素体3の角部3kに向かって大きくなる。すなわち、積層コンデンサ1では、素体3の角部3kを湾曲形状とすることができる。そのため、積層コンデンサ1では、素体3において、欠けが発生することをより一層抑制することができる。
【0051】
本実施形態に係る積層コンデンサ1では、内部電極7,9の接続部7b,9bの幅W2は、電極部7a,9aの幅W2よりも小さい。この構成では、接続部7b,9bの幅W2を小さくすることで、接続部7b,9bが素体3の角部3k及び稜線面3iに対応する領域に位置する構成を回避できる。そのため、積層コンデンサ1では、外部電極5のめっき層PLを形成するめっき工程において、内部電極7,9の接続部7b,9bを介して素体3内にめっき液が浸入することを抑制できる。したがって、積層コンデンサ1では、信頼性の向上が図れる。一方で、積層コンデンサ1では、電極部7a,9aの幅を大きくすることで、電極部7a,9aの面積を大きくすることができる。そのため、積層コンデンサ1では、静電容量の増大が図れる。
【0052】
本実施形態に係る積層コンデンサ1では、第一断面は、端面3eに露出している接続部7b,9bの端部を含んでいる。この構成では、端面3eに露出する接続部7b,9bの全領域において、R1<Tの関係を満たす。したがって、積層コンデンサ1では、外部電極5のめっき層PLを形成するめっき工程において、内部電極7,9の接続部7b,9bを介して素体3内にめっき液が浸入することをより一層抑制できる。
【0053】
本実施形態に係る積層コンデンサ1では、内部電極7,9の積層方向に平行な側面3cに直交する方向から見て、第一断面及び第二断面における電極部7a,9aは、稜線面3iに対応する領域に位置する部分を有している。この構成では、第一断面及び第二断面における電極部7a,9aは、側面3cよりも一対の端面3eの対向方向において突出する部分を有している。これにより、積層コンデンサ1では、電極部7a,9aの面積を大きくすることができる。したがって、積層コンデンサ1では、静電容量の増大を図ることができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0055】
上記実施形態では、
図5に示されるように、内部電極7において、電極部7aの幅W1が接続部7bの幅W2よりも大きい形態を一例に説明した。しかし、内部電極7は、電極部7aの幅W1と接続部7bの幅W2とが同じであってもよい。すなわち、内部電極7が、全体として長方形状を呈していてもよい。内部電極9についても同様である。
【0056】
上記実施形態では、複数の内部電極7,9の積層方向に平行な側面3cに直交する方向(第二方向D2)から見て、第一断面及び第二断面における電極部7a,9aにおいて、一対の端面3e,3eの対向方向(第三方向D3)の端部が、稜線面3iに対応する領域に位置する部分を有している形態を一例に説明した。しかし、複数の内部電極7,9の積層方向の端部に配置されている少なくとも二つの内部電極7,9の第一端面及び/又は第二断面における電極部7a,9aにおいて、一対の端面3e,3eの対向方向(第三方向D3)の端部が、稜線面3iに対応する領域に位置する部分を有していてもよい。
【0057】
上記実施形態では、積層コンデンサ1が、四つの内部電極7及び四つの内部電極9を備えている形態を一例に説明した。しかし、内部電極7及び内部電極9の数は、設計に応じて適宜設定されればよい。
【0058】
上記実施形態では、電子部品が積層コンデンサ1である形態を一例に説明した。しかし、電子部品は、積層コンデンサに限られない。適用可能な電子部品は、たとえば、積層バリスタ、積層圧電アクチュエータ、積層サーミスタ、もしくは積層複合部品などの積層電子部品、又は、積層電子部品以外の電子部品である。
【0059】
本明細書では、ある要素が他の要素上に配置されていると記述されている場合、ある要素は、他の要素上に直接配置されていてもよく、他の要素上に間接的に配置されていてもよい。ある要素が他の要素上に間接的に配置されている場合、介在要素が、ある要素と他の要素との間に存在している。ある要素が他の要素上に直接配置されている場合、介在要素は、ある要素と他の要素との間に存在しない。
【0060】
本明細書では、ある要素が他の要素上に位置していると記述されている場合、ある要素は、他の要素上に直接位置していてもよく、他の要素上に間接的に位置していてもよい。ある要素が他の要素上に間接的に位置している場合、介在要素が、ある要素と他の要素との間に存在している。ある要素が他の要素上に直接位置している場合、介在要素は、ある要素と他の要素との間に存在しない。
【0061】
本明細書では、ある要素が他の要素を覆うと記述されている場合、ある要素は、他の要素を直接覆っていてもよく、他の要素を間接的に覆っていてもよい。ある要素が他の要素を間接的に覆っている場合、介在要素が、ある要素と他の要素との間に存在している。ある要素が他の要素を直接覆っている場合、介在要素は、ある要素と他の要素との間に存在しない。
【符号の説明】
【0062】
1…積層コンデンサ(電子部品)、3…素体、3a…主面(側面)、3c…側面、3ca…角部、3e…端面、3g,3i…稜線面、5…外部電極、7,9…内部電極、7a,9a…電極部、7b,9b…接続部、E1…第一電極層(電極層)、PL…めっき層。