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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】補強構造
(51)【国際特許分類】
   B65D 5/44 20060101AFI20231003BHJP
   B65D 83/08 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
B65D5/44 E
B65D83/08 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020060316
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021155114
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-08-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-204094(JP,A)
【文献】特開2011-240981(JP,A)
【文献】特開2016-108041(JP,A)
【文献】登録実用新案第3124305(JP,U)
【文献】特開2009-073559(JP,A)
【文献】特開2015-137103(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/44
B65D 83/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状をなす複数の壁部で囲繞された内部空間に衛生用紙を収容するカートンの補強構造であって、
前記衛生用紙の使用時に前記内部空間を外部と連通させる開口として開放される部位であり、前記複数の壁部のうち少なくとも一つである穴壁部に設けられた開口予定部と、
前記穴壁部において前記開口予定部とは異なる箇所で前記穴壁部の端辺が延在する方向とは異なる方向に延在し、前記異なる方向の両端のうち一端が少なくとも前記端辺の近傍まで形成され、前記穴壁部を補強するリブ部と、を備え
前記リブ部は、前記一端が前記端辺に接続された
ことを特徴とする補強構造
【請求項2】
前記リブ部は、前記両端のうち他端が前記端辺に接続された
ことを特徴とする請求項に記載の補強構造。
【請求項3】
前記リブ部は、前記穴壁部の平面視において前記開口予定部を挟んだ両側に一対が配置されたリブ対を有する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の補強構造。
【請求項4】
前記端辺が第一端辺,第二端辺,第三端辺,第四端辺の順に隣り合う矩形状の前記穴壁部を備えた前記カートンの補強構造であって、
前記リブ対は、
前記第一端辺の中間部に接続されるとともに前記第二端辺の中間部よりも前記第一端辺側に接続された第一リブ部と、前記第三端辺の中間部に接続されるとともに前記第四端辺の中間部よりも前記第三端辺側に接続された第二リブ部とからなる第一リブ対と、
前記第一端辺の中間部に接続されるとともに前記第四端辺の中間部よりも前記第一端辺側に接続された第三リブ部と、前記第三端辺の中間部に接続されるとともに前記第二端辺の中間部よりも前記第三端辺側に接続された第四リブ部とからなる第二リブ対と、を有する
ことを特徴とする請求項を引用する請求項に記載の補強構造。
【請求項5】
前記リブ部は、前記穴壁部の平面視において交差しない配置に設けられた
ことを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の補強構造。
【請求項6】
前記リブ部は、前記穴壁部の一部が窪んだ溝状の押罫である
ことを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の補強構造。
【請求項7】
前記開口予定部の前記開口には、前記衛生用紙の使用時に前記穴壁部の一部が取り除かれる取除口として開放される部位が含まれる
ことを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の補強構造。
【請求項8】
前記開口予定部の前記開口には、前記穴壁部においてフラップ状の部位が折り立てられることで形成されるフラップ口として開放される部位が含まれる
ことを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の補強構造。
【請求項9】
前記リブ部は、前記壁部のうち延在面積が最も大きい前記穴壁部に設けられた
ことを特徴とする請求項1~の何れか1項に記載の補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生用紙を収容するカートンの補強構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ティシュペーパやキッチンペーパといった衛生用紙を内部空間に収容するカートンとして、直方体状の箱が知られている。このカートンに収容された衛生用紙の使用時には、カートンの一部に開口が開放されることも知られている。たとえば、カートンの天壁部における一部が取り除かれることで衛生用紙を取り出すための開口が開放されたり、底壁部の一部が内部へ折り立てられることで使用中の衛生用紙を底上げするための開口が開放されたりする。
【0003】
上記のように衛生用紙の使用時に一部が開口として開放されるカートンに関し、天壁部における開口の周囲に天壁部を囲繞する端縁から離れた箇所に線状の罫線を設けた構造が提案されている。この構造によれば、開口から衛生用紙を取り出す際に天壁部に印加される上方への折り曲げ力に罫線が対抗することができ、天壁部の変形が抑えられるとされる。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-267987号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように開口の開放される壁部の端縁に対して離れた箇所に設けられた罫線では、壁部を変形させる荷重に対して十分に対抗することができず、このような荷重を十分に分散させることができない。そのため、カートンの変形を十分に抑制することができず、カートンの破損を招くおそれもある。
よって、カートンを補強するうえで改善の余地がある。
【0006】
本件の補強構造は、上記の課題に鑑みて創案されたものであり、カートンの補強を目的の一つとする。なお、この目的に限らず、後述する「発明を実施するための形態」に示す各構成から導き出される作用および効果であって、従来の技術では得られない作用および効果を奏することも、本件の他の目的として位置付けることができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここで開示する補強構造は、平面状をなす複数の壁部で囲繞された内部空間に衛生用紙を収容するカートンを補強する構造である。本補強構造は、前記衛生用紙の使用時に前記内部空間を外部と連通させる開口として開放される部位であり、前記複数の壁部のうち少なくとも一つである穴壁部に設けられた開口予定部と、前記穴壁部において前記開口予定部とは異なる箇所で前記穴壁部の端辺が延在する方向とは異なる方向に延在し、前記異なる方向の両端のうち一端が少なくとも前記端辺の近傍まで形成され、前記穴壁部を補強するリブ部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本件の補強構造によれば、カートンを補強することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】カートンの補強構造を示す斜視図である。
図2】カートンの補強構造を示す底面図である。
図3】変形例にかかるカートンの要部を示す斜視図であり、(A)に第一変形例を示し、(B)に第二変形例を示す。
図4】補強構造が設けられる対象のカートンを示す図であり、(A)に分解斜視図を示し、(B)に底面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施形態としての補強構造を説明する。
本実施形態の補強構造は、衛生用紙を内部空間に収容するカートンを補強する構造である。カートンに収容される衛生用紙の具体例としては、ティシュペーパをはじめ,キッチンペーパ,ペーパウェスなどが挙げられる。
本実施形態では、衛生用紙としてティシュペーパを例に挙げ、ティシュペーパが収容されたカートン(いわゆる「箱ティシュ」)の補強構造を例説する。
【0011】
本実施形態では、カートンが水平面に載置されたものとし、説明で用いる方向を下記のように定義する。
水平方向を前後方向(図中には前方を「F」で示すとともに後方を「B」で示す)および左右方向(図中には左方を「L」で示すとともに右方を「R」で示す)に細別して説明する。左右方向については、前方から後方へ向いた状態を基準に左右を定める。また、鉛直方向のうち重力の作用方向を下方(図中には「D」で示す)とし、下方の反対方向を上方(図中には「U」で示す)とする。さらに、カートンの内部空間に向かう側を内側とし、内側の反対側を外側とする。
【0012】
[I.一実施形態]
下記の一実施形態では、カートンの補強構造に関する構成を項目[1]で述べる。
この項目[1]では、補強構造が設けられる対象(前提構成)のカートンを小項目[1-1]で説明し、このカートンに設けられた補強構造を小項目[1-2]で説明する。そして、項目[1]の構成による作用および効果を項目[2]で述べる。
【0013】
[1.構成]
[1-1.カートン]
図4(A)に示すように、補強構造が設けられる対象のカートン1には、内部空間2にティシュペーパ3が収容されている。
内部空間2には、ティシュペーパ3の積み重ねられた束が収容される。この束は、いわゆるポップアップ方式で取り出されるように折り重ねられ、ティシュペーパ3が取り出されるにつれて上下方向(積み重ねられた方向)の寸法が減少する。
【0014】
上記の内部空間2は、カートン1を形成する複数の壁部1U,1B,1X,1Yによって囲繞されている。このカートン1では、矩形状の壁部1U,1B,1X,1Yが直方体の表面に沿って平面状に設けられている。
これらの壁部1U,1B,1X,1Yは、配置箇所および延在方向によって下記の四つに大別される。
【0015】
・天壁部1U:カートン1の上方で前後方向かつ左右方向に延在する壁部(穴壁部)
・底壁部1B:カートン1の下方で前後方向かつ左右方向に延在する壁部(穴壁部)
・側壁部1X:カートン1の左右で上下方向かつ前後方向に延在する一対の壁部
・端壁部1Y:カートン1の前後で上下方向かつ左右方向に延在する一対の壁部
ここで例示するカートン1では、天壁部1Uおよび底壁部1Bが側壁部1Xや端壁部1Yよりも大きな領域に延在している。このように壁部1U,1B,1X,1Yのうちで最大の延在面積を有する天壁部1Uおよび底壁部1Bどうしの間には、側壁部1X(立壁部1S)および端壁部1Y(立壁部1S)が設けられている。
【0016】
また、本実施形態で例示するカートン1では、天壁部1U,底壁部1Bおよび側壁部1Xがたとえば一枚の資材で形成された一重構造をなすのに対し、端壁部1Yが複数枚の資材が重ね合わせられた多重構造をなしている。
この端壁部1Yには外フラップ部FUおよび内フラップ部FDが設けられ、内フラップ部FDの外側に外フラップ部FUが配置されている。
【0017】
外フラップ部FUは、天壁部1Uの前後方向の端部から延在するフラップと、底壁部1Bの前後方向の端部から延在するフラップとの一対で構成される。この外フラップ部FUは、天壁部1U側のフラップの一部が底壁部1B側のフラップの一部と重なるいわゆるオーバーフラップタイプである。ここでは、天壁部1U側のフラップのほうが底壁部1B側のフラップよりも大きい例を示す。
内フラップ部FDは、側壁部1Xの前後方向の各端部から延在する一対のフラップで構成される。内フラップ部FDが内側に折り倒され、外フラップ部FUが内フラップ部FDを覆うように折り倒されることにより、端壁部1Yが形成される。
【0018】
天壁部1Uおよび底壁部1Bのそれぞれには、内部空間2を外部と連通させる開口が設けられる。具体的には、ティシュペーパ3を引き出すための開口として取除口11が天壁部1Uに設けられ、図4(B)に示すようにティシュペーパ3を底上げするための開口としてフラップ口14が底壁部1Bに設けられる。これらの取除口11およびフラップ口14は、未使用のカートン1には設けられておらず、ティシュペーパ3の使用時に穿設される「穴」とも言える。
【0019】
図4(A)に示すように、取除口11は、天壁部1Uの一部をなす天開口予定部10(開口予定部)が取り除かれることで形成される。詳細に言えば、天開口予定部10が破断線(図1参照)に沿って切り離されると、天壁部1Uにおける天開口予定部10の領域が取り除かされ、取除口11が開放される(図4(A)参照)。
この取除口11には、天壁部1Uの内側に、取除口11を覆うようにプラスチック製のフィルム12が貼付されている。フィルム12には、前後方向に沿ってスリットが形成されており、スリットを介してティシュペーパ3を取り出せるようになっている。
【0020】
図4(B)に示すように、フラップ口14は、ティシュペーパ3の使用時に、底壁部1Bの一部をなす底開口予定部13(開口予定部)が折り立てられることで形成される。詳細に言えば、底開口予定部13の一部を囲繞する破断線16に沿って破断されるとともに底開口予定部13の他部を囲繞する罫線15で底開口予定部13が内側に折り立てられると、底壁部1Bの一部が折り立てられ、フラップ口14が開放される。
【0021】
このフラップ口14は、罫線15を揺動軸として破断線16で囲まれた底壁部1Bの一部を開閉するフラップ状になっている。
上記のようにカートン1を形成する壁部1U,1B,1X,1Yどうしが接する部位には、端辺Eが設けられている。
カートン1の上方において、側壁部1Xおよび端壁部1Yに対する天壁部1Uの境界には以下に列挙する四つの端辺Eが形成されている。
【0022】
・前上辺EFU(第一端辺):天壁部1Uにおいて前方で左右に延在する端辺E
・右上辺ERU(第二端辺):天壁部1Uにおいて右方で前後に延在する端辺E
・後上辺EBU(第三端辺):天壁部1Uにおいて後方で左右に延在する端辺E
・左上辺ELU(第四端辺):天壁部1Uにおいて左方で前後に延在する端辺E
前上辺EFU,右上辺ERU,後上辺EBU,左上辺ELUは、この順番で隣り合って矩形の輪郭をなしている。これらの前上辺EFU,右上辺ERU,後上辺EBU,左上辺ELUによって、天壁部1Uが囲繞されている。
【0023】
また、図4(B)に示すように、カートン1の下方において、側壁部1Xおよび端壁部1Yに対する底壁部1Bの境界には以下に列挙する四つの端辺Eが形成されている。
・前下辺EFD(第一端辺):底壁部1Bにおいて前方で左右に延在する端辺E
・右下辺ERD(第二端辺):底壁部1Bにおいて右方で前後に延在する端辺E
・後下辺EBD(第三端辺):底壁部1Bにおいて後方で左右に延在する端辺E
・左下辺ELD(第四端辺):底壁部1Bにおいて左方で前後に延在する端辺E
【0024】
前下辺EFD,右下辺ERD,後下辺EBD,左下辺ELDは、この順番で隣り合って矩形をなしている。これらの前下辺EFD,右下辺ERD,後下辺EBD,左下辺ELDによって、底壁部1Bが囲繞されている。
上記のように端辺Eが設けられたカートン1には、つぎに説明する補強構造が設けられている。
【0025】
[1-2.補強構造]
補強構造は、取除口11の開放された天壁部1Uおよびフラップ口14の開放された底壁部1Bを補強するための構造である。
このように使用時のカートン1を補強する構造には、補強対象の壁部1U,1Bにおいて開放される開口予定部10,13とは異なる箇所に補強用のリブをなすリブ部4が設けられている。
【0026】
ここで例示するリブ部4は、補強対象の天壁部1U,底壁部1Bの一部が窪んだ溝状の押罫(罫線)から形成されている。なお、以下の説明で参照する図1図2では、リブ部4を誇張した太線で示す。
以下、リブ部4について、天壁部1Uに設けられた構成を主に説明する。
【0027】
――天壁部のリブ部――
図1に示すように、天壁部1Uには、以下に示す四本のリブ部41~44が直線状に設けられている。
・右前リブ部41(第一リブ部):天壁部1Uにおいて右前方のリブ部4
・左後リブ部42(第二リブ部):天壁部1Uにおいて左後方のリブ部4
・左前リブ部43(第三リブ部):天壁部1Uにおいて左前方のリブ部4
・右後リブ部44(第四リブ部):天壁部1Uにおいて右後方のリブ部4
【0028】
これらのリブ部41~44は、天壁部1Uの四隅に配置されている。言い換えれば、天開口予定部10を挟んだ両側に右前リブ部41および左後リブ部42で一対のリブ対5(以下「第一リブ対51」と称する)が配置されている。また、天開口予定部10を挟んだ両側に左前リブ部43および右後リブ部44で一対のリブ対5(以下「第二リブ対52」と称する)が配置されている。つまり、二組のリブ対51,52がリブ部41~44に設けられている。
【0029】
<共通する構成>
まず、四本のリブ部41~44について、共通する構成を説明する。
リブ部41~44は、天壁部1Uの端辺EFU,ERU,EBU,ELUが延在する方向とは異なる方向に延在する。言い換えると、リブ部4は、前後方向および左右方向の双方に対して交差する方向に延在して設けられている。
【0030】
これらのリブ部41~44は、延在方向の両端が天壁部1Uの端辺EFU,ERU,EBU,ELUの何れかに接続されている。言い換えれば、リブ部41~44は、両持ち梁(いわば「火打ち梁」)のように補強構造として機能する。具体的に言えば、各リブ部41~44は、延在方向の一端4aが左右方向に延在する前後の端辺EFU,EBUの一方に接続され、他端4bが前後方向に延在する左右の端辺ELU,ERUの一方に接続されている。
なお、リブ部41~44は、天壁部1Uの上面視(平面視)で交差しない配置に設けられている。
【0031】
<各リブ部の構成>
つぎに、リブ部41~44のそれぞれについての構成を説明する。
第一リブ対51の右前リブ部41は、一端4aが前上辺EFUの中間部に接続されるとともに、他端4bが右上辺ERUの中間部よりも前上辺EFU側に接続されている。第一リブ対51の左後リブ部42は、一端4aが後上辺EBUの中間部に接続されるとともに、他端4bが左上辺ELUの中間部よりも後上辺EBU側に接続されている。
右前リブ部41は、前上辺EFUの中点と右上辺ERUの中点よりも前上辺EFU側に位置する点とを結んだ罫線と言える。左後リブ部42は、後上辺EBUの中点と左上辺ELUの中点よりも後上辺EBU側に位置する点とを結んだ罫線と言える。
【0032】
第二リブ対52の左前リブ部43は、一端4aが前上辺EFUの中間部に接続されるとともに、他端4bが左上辺ELUの中間部よりも前上辺EFU側に接続されている。第二リブ対52の右後リブ部44は、一端4aが後上辺EBUの中間部に接続されるとともに、他端4bが右上辺ERUの中間部よりも後上辺EBU側に接続されている。
左前リブ部43は、前上辺EFUの中点と左上辺ELUの中点よりも前上辺EFU側に位置する点とを結んだ罫線と言える。右後リブ部44は、後上辺EBUの中点と右上辺ERUの中点よりも後上辺EBU側に位置する点とを結んだ罫線と言える。
【0033】
リブ対51,52のそれぞれでは、各リブ部4どうしが略平行に延在している。
さらに、右前リブ部41の一端4aと左前リブ部43の一端4aとが前上辺EFUの中間領域(ここでは中点)で接続され、上面視の右前リブ部41および左前リブ部43は後方に開放側を向けた「く」の字形をなす。
同様に、左後リブ部42の一端4aと右後リブ部44の一端4aとが後上辺EBUの中間領域(ここでは中点)で接続され、上面視の左後リブ部42および右後リブ部44が前方に開放側を向けた「く」の字形をなす。
【0034】
ここで、右上辺ERUにおいて右前リブ部41の他端4bと右後リブ部44の他端4bとの間の領域を「第一中間領域61」と称する。また、左上辺ELUにおいて左後リブ部42の他端4bと左前リブ部43の他端4bとの間の領域を「第二中間領域62」と称する。
右前リブ部41および右後リブ部44は、第一中間領域61を介して連接され、左後リブ部42および左前リブ部43は、第二中間領域62を介して連接されている。
【0035】
このように、右前リブ部41,第一中間領域61,右後リブ部44,左後リブ部42,第二中間領域62,左前リブ部43はこの順番で隣り合って互いに連接されている。これら四本のリブ部41~44と二つの中間領域61,62とは、閉じた六角形を構成する。そのため、四本のリブ部41~44および二つの中間領域61,62の六辺からなるハニカム構造のような補強構造が設けられたとも言える。
【0036】
――底壁部のリブ部――
図2に示すように、底壁部1Bにも天壁部1Uと同様に、四本のリブ部41~44が設けられている。
・右前リブ部41(第一リブ部):底壁部1Bにおいて右前方のリブ部4
・左後リブ部42(第二リブ部):底壁部1Bにおいて左後方のリブ部4
・左前リブ部43(第三リブ部):底壁部1Bにおいて左前方のリブ部4
・右後リブ部44(第四リブ部):底壁部1Bにおいて右後方のリブ部4
これらのリブ部41~44は、底開口予定部13を挟んだ両側に配置される点を除いて、天壁部1Uのリブ部4と同様である。
【0037】
[2.作用および効果]
本実施形態の補強構造は、上述のような構成を備えるため、下記のような作用および効果を得ることができる。
カートン1の補強構造によれば、天壁部1Uおよび底壁部1Bを変形させる荷重がリブ部41~44を通じて一端4aおよび他端4bから端辺Eへ効率よく伝達される。このようにして壁部1U,1Bに印加された荷重がリブ部41~44の延在方向に分散されることで、端辺Eだけでは抑えきれない方向に壁部1U,1Bが変形するのを抑えることができ、カートン1の破損を防止することもできる。
よって、カートン1の剛性が確保され、カートン1を補強することができる。
【0038】
天壁部1Uおよび底壁部1Bにおいて開口予定部10,13を挟んだ両側に配置されたリブ対51,52によれば、天壁部1Uおよび底壁部1Bに印加された荷重に対して開口予定部10,13を挟んだ両側でバランスよく対抗することができる。したがって、天壁部1Uおよび底壁部1Bの剛性を全体的に高めることができ、カートン1を全体的に補強することができる。
【0039】
さらに、リブ対51,52および中間領域61,62からなるハニカム構造のような補強構造によれば、天壁部1U,底壁部1Bの剛性をバランスよく確実に向上させることができる。この点からも、カートン1を確実に補強することができる。
なお、リブ部41~44は、天壁部1U,底壁部1Bの一部が窪んだ溝状の押罫であることから、端辺Eの押罫と同時にリブ部41~44を形成することができ、製造コストの上昇を抑制できる。
【0040】
リブ部41~44は、天壁部1U,底壁部1Bで交差しない配置に設けられているため、リブ部が交差する配置の補強構造と比較して、天壁部1U,底壁部1Bの変形を抑えることが可能となりうる。たとえば、天壁部1U,底壁部1Bを変形させる荷重が一点(リブ部の交差する点)に集中することを回避することができ、天壁部1U,底壁部1Bにおいて異なる位置に荷重を分散させることができる。よって、天壁部1U,底壁部1Bの剛性を効率よく高めることができ、カートン1の補強に資する。
【0041】
壁部のうち延在面積が最も大きい天壁部1U,底壁部1Bは、天壁部1U,底壁部1Bよりも延在面積の小さい壁部と比較して、延在面全体の剛性を確保するのが困難である。これに対し、天壁部1U,底壁部1Bにリブ部41~44が設けられることで、天壁部1U,底壁部1Bの変形が抑えられる。よって、カートン1を効率よく補強することができる。
さらに、取除口11,フラップ口14が開放されると天壁部1U,底壁部1Bの強度は大きく低下する。これに対し、取除口11,フラップ口14の周辺にリブ部41~44が配置されるため、天壁部1U,底壁部1Bの強度低下を抑えることができる。
【0042】
天壁部1Uについて言えば、ティシュペーパ3が取り出されるときに上方へ天壁部1Uが隆起する変形を抑えることができる。あるいは、天壁部1Uが下方へ陥没する変形も抑えることができる。よって、ティシュペーパ3の使用時に天壁部1Uの強度低下を抑えることができ、カートン1を適切に補強することができる。
底壁部1Bについて言えば、フラップ口14の周辺にリブ部41~44が配置されることで、底壁部1Bの強度低下を抑えることができる。この点からも、カートン1を補強することができる。
【0043】
[II.変形例]
上述の実施形態はあくまでも例示に過ぎず、この実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、適宜組み合わせることもできる。
【0044】
たとえば、リブ部が平面視で交差しない配置に設けられる形態に限定されず、図3(A)に示すように、天壁部1Uや底壁部1Bでリブ部4′が交差する形態を採用してもよい。このように交差する形態のリブ部4′によれば、壁部1U,1Bに印加された荷重を種々の方向に分散させることができ、カートン1の補強に寄与する。
また、リブ部の両端が端辺に接続された形態に限定されず、図3(B)に示すように、一端4a″または他端4b″のみが端辺Eに接続された形態を採用してもよい。このようにリブ部4″が片持ち梁のように補強構造として機能する場合にも、カートン1を補強することができる。
【0045】
さらに、図3(B)に示すように、リブ部40は、その一端40aが少なくとも端辺Eの近傍まで形成されていればよい。
たとえば、リブ部40の一端40aおよび他端40bが端辺Eに対して接続されておらず、一端40aが少なくとも端辺Eの近傍に設けられていてもよい。換言すれば、リブ部40の一端40aと端辺Eとの間に天壁部1Uや底壁部1Bの一部をなす非接続領域Rが設けられていてもよい。
【0046】
ここでいう「近傍」とは、壁部1U,1Bに印加された荷重に対してリブ部40で対抗する荷重を一端40aから非接続領域Rを介して端辺Eへ十分に伝達することのできる程度に離間していることを意味する。このようにリブ部40の一端40aが端辺Eの近傍で端辺Eに対して離間する寸法は、ティシュペーパが収容される通常のカートンに採用されるサイズにおいては10[mm]以内であることが好ましく、5[mm]以内であることが更に好ましい。
上記のようにリブ部40の一端40aが端辺Eからやや離間して端辺E付近に配置されていた場合であっても、壁部1U,1Bに印加された荷重を端辺Eへ伝達することができ、カートン1を補強することができる。
【0047】
あるいは、カートン1の補強構造は、二組のリブ対を有する形態に限定されず、リブ対が一組だけの形態や、リブ対が存在しない形態を採用してもよい。
そのほか、壁部の延在面積は、カートンの形状に応じて種々のサイズに設計することができる。また、外フラップ部の一部には、カートンを解体するための破断線が設けられてもよい。
【0048】
リブ部の態様は、押罫に限定されず、天壁部や底壁部の内側に骨格部材を増設した対応であってもよい。具体例を挙げれば、リブ部をなす押罫に替えてまたは加えてリブ部をなすテープを貼り付けてもよい。
なお、上述のカートンは、取除口が上方に配置された配向に限定されず、任意の配向であってもよい。具体例を挙げれば、下記の表1に示すように、上述の実施形態に記された方向を配向1~5の方向に読み替えてもよい。
【0049】
【表1】
【符号の説明】
【0050】
1 カートン
1U 天壁部(穴壁部)
1B 底壁部(穴壁部)
1X 側壁部(立壁部1S)
1Y 端壁部(立壁部1S)
10 天開口予定部(開口予定部)
11 取除口(開口)
12 フィルム
13 底開口予定部(開口予定部)
14 フラップ口(開口)
15 罫線
16 破断線
2 内部空間
3 ティシュペーパ(衛生用紙)
4,4′,4″,40 リブ部
4a,4a″,40a 一端
4b,4b″,40b 他端
41 右前リブ部(第一リブ部)
42 左後リブ部(第二リブ部)
43 左前リブ部(第三リブ部)
44 右後リブ部(第四リブ部)
5 リブ対
51 第一リブ対(リブ対5)
52 第二リブ対(リブ対5)
61 第一中間領域
62 第二中間領域
E 端辺
FU 前上辺(第一端辺)
RU 右上辺(第二端辺)
BU 後上辺(第三端辺)
LU 左上辺(第四端辺)
FD 前下辺(第一端辺)
RD 右下辺(第二端辺)
BD 後下辺(第三端辺)
LD 左下辺(第四端辺)
FU 外フラップ部
FD 内フラップ部
R 非接続領域
図1
図2
図3
図4