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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】路面傾斜角算出装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/076 20120101AFI20231003BHJP
【FI】
B60W40/076
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020109676
(22)【出願日】2020-06-25
(65)【公開番号】P2022007028
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】樗澤 英明
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0263414(US,A1)
【文献】特開2007-283882(JP,A)
【文献】特開2009-006834(JP,A)
【文献】特開2002-104158(JP,A)
【文献】特開平07-259974(JP,A)
【文献】特開2002-013620(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 30/00 ~ 60/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記憶装置と、実行装置とを備え、
前記記憶装置には、車両が走行している路面における前記車両の進行方向に関する傾斜角を示す変数である傾斜角変数を出力変数として出力する写像を規定する写像データが記憶されており、
前記写像は、入力変数として、前記車両の前後方向の加速度を示す変数である前後加速度変数と、前記車両の駆動輪のトルクを示す変数である駆動輪トルク変数とを含み、
前記写像は、学習済みのニューラルネットワークであり、
前記実行装置は、
前記入力変数の値を取得する取得処理と、
前記取得処理によって取得した前記入力変数の値を前記写像に入力することによって前記出力変数の値を算出する算出処理とを実行する
路面傾斜角算出装置。
【請求項2】
記憶装置と、実行装置とを備え、
前記記憶装置には、車両が走行している路面における前記車両の進行方向に関する傾斜角を示す変数である傾斜角変数を出力変数として出力する写像を規定する写像データが記憶されており、
前記写像は、入力変数として、前記車両の前後方向の加速度を示す変数である前後加速度変数と、前記車両の駆動源の出力トルクを示す変数である駆動源トルク変数と、前記車両における前記駆動源から駆動輪へと至る動力伝達系のギヤ比を示す変数であるギヤ比変数と、前記車両の制動装置の制動力を示す変数である制動変数とを含み、
前記写像は、学習済みのニューラルネットワークであり、
前記実行装置は、
前記入力変数の値を取得する取得処理と、
前記取得処理によって取得した前記入力変数の値を前記写像に入力することによって前記出力変数の値を算出する算出処理とを実行する
路面傾斜角算出装置。
【請求項3】
前記入力変数には、前記車両の走行速度に応じた変数である車速変数が含まれる
請求項1又は2に記載の路面傾斜角算出装置。
【請求項4】
前記入力変数には、前記車両の重量に応じた変数である重量変数が含まれる
請求項1~3のいずれか一項に記載の路面傾斜角算出装置。
【請求項5】
前記入力変数には、前記車両の現在位置における、道路の延設方向に関する路面の傾斜角を示す変数である延設傾斜角変数が含まれ、
前記延設傾斜角変数は、前記記憶装置に記憶された地図情報として予め定められている
請求項1~4のいずれか一項に記載の路面傾斜角算出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、路面傾斜角算出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された路面傾斜角算出装置は、車速が所定車速以下になってから車両が停止するまでの間、車速、ブレーキ油圧、走行負荷トルクの各パラメータについての積算値を算出する。そして、路面傾斜角算出装置は、車両が停止すると、積算した各パラメータに基づいて、上記の間に車両に作用する走行抵抗や制動力、また走行負荷トルクを算出する。そして、路面傾斜角算出装置は、算出した各パラメータに基づいて路面の傾斜角を算出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-021786号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の路面傾斜角算出装置では、路面の傾斜角を算出するにあたって、車両が減速して停止することを要する。そのため、特許文献1に記載の路面傾斜角算出装置では、車両の走行中に路面の傾斜角を算出することはできない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための路面傾斜角算出装置は、記憶装置と、実行装置とを備え、前記記憶装置には、車両が走行している路面における前記車両の進行方向に関する傾斜角を示す変数である傾斜角変数を出力変数として出力する写像を規定する写像データが記憶されており、前記写像は、入力変数として、前記車両の前後方向の加速度を示す変数である前後加速度変数と、前記車両の駆動輪のトルクを示す変数である駆動輪トルク変数とを含み、前記実行装置は、前記入力変数の値を取得する取得処理と、前記取得処理によって取得した前記入力変数の値を前記写像に入力することによって前記出力変数の値を算出する算出処理とを実行する。
【0006】
車両の前後方向の加速度が一定であれば、駆動輪のトルクが増加するほど路面の傾斜角は大きくなる。すなわち、路面の傾斜角は、前後加速度変数及び駆動輪トルク変数に依存する。そのため、これらの入力変数を入力として算出処理を行うことで路面の傾斜角を算出できる。そして、車両の走行中にこれらの入力変数を入力として算出処理を行うことで、車両の走行中に随時路面の傾斜角を算出できる。
【0007】
上記課題を解決するための路面傾斜角算出装置は、記憶装置と、実行装置とを備え、前記記憶装置には、車両が走行している路面における前記車両の進行方向に関する傾斜角を示す変数である傾斜角変数を出力変数として出力する写像を規定する写像データが記憶されており、前記写像は、入力変数として、前記車両の前後方向の加速度を示す変数である前後加速度変数と、前記車両の駆動源の出力トルクを示す変数である駆動源トルク変数と、前記車両における前記駆動源から駆動輪へと至る動力伝達系のギヤ比を示す変数であるギヤ比変数と、前記車両の制動装置の制動力を示す変数である制動変数とを含み、前記実行装置は、前記入力変数の値を取得する取得処理と、前記取得処理によって取得した前記入力変数の値を前記写像に入力することによって前記出力変数の値を算出する算出処理とを実行する。
【0008】
駆動源トルク変数とギヤ比変数との積から制動変数を減じた値は、駆動輪のトルクを反映するものとなる。そして、車両の前後方向の加速度が一定であれば、駆動輪のトルクが増加するほど路面の傾斜角は大きくなる。すなわち、路面の傾斜角は、前後加速度変数、駆動源トルク変数、ギヤ比変数、及び制動変数に依存する。そのため、これらの入力変数を入力として算出処理を行うことで路面の傾斜角を算出できる。そして、車両の走行中にこれらの入力変数を入力として算出処理を行うことで、車両の走行中に随時路面の傾斜角を算出できる。
【0009】
路面傾斜角算出装置において、前記入力変数には、前記車両の走行速度に応じた変数である車速変数が含まれてもよい。
車両の走行中、車両には空気抵抗が作用する。この空気抵抗は、車両の走行速度に応じて増加する。したがって、上記構成のように車速変数を入力変数に含めることで、空気抵抗を加味した車両の走行状態に基づいて路面の傾斜角を算出できる。したがって、路面の傾斜角の算出精度が向上する。
【0010】
路面傾斜角算出装置において、前記入力変数には、前記車両の重量に応じた変数である重量変数が含まれてもよい。
車両の走行中、車両には路面と車輪との摩擦に因る転がり抵抗が生じる。転がり抵抗は、車両の重量に応じて増加する。したがって、上記構成のように重量変数を入力変数に含めることで、転がり抵抗を加味した車両の走行状態に基づいて路面の傾斜角を算出できる。したがって、路面の傾斜角の算出精度が向上する。
【0011】
路面傾斜角算出装置において、前記入力変数には、前記車両の現在位置における、道路の延設方向に関する路面の傾斜角を示す変数である延設傾斜角変数が含まれ、前記延設傾斜角変数は、前記記憶装置に記憶された地図情報として予め定められていてもよい。
【0012】
上記構成のように、道路の延設方向に関する路面の傾斜角という、大まかな路面の傾斜角を路面の傾斜角の算出に反映させることで、車両の進行方向における路面の傾斜角の算出精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】車両の概略構成図。
図2】路面傾斜角算出処理の処理手順を表したフローチャート。
図3】路面傾斜角算出システムの概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、路面傾斜角算出装置の一実施形態を、図面を参照して説明する。
先ず、車両の概略構成を説明する。
図1に示すように、車両500には、当該車両500の駆動源となる内燃機関10が搭載されている。内燃機関10は、燃料と吸気との混合気を燃焼させる気筒11を有している。なお、気筒11は複数設けられているが、図1では1つのみ示している。気筒11内には、往復動可能にピストン12が収容されている。ピストン12は、コネクティングロッド13を介してクランクシャフト14に連結されている。ピストン12の往復動に応じてクランクシャフト14は回転する。クランクシャフト14の近傍には、当該クランクシャフト14の回転位置であるクランク位置Scrを検出するクランク角センサ30が配置されている。
【0015】
気筒11には、外部からの吸気を当該気筒11内に導入するための吸気通路15が接続されている。吸気通路15の途中には、吸気通路15を流通する吸気量GAを検出するエアフロメータ32が取り付けられている。吸気通路15における、エアフロメータ32よりも下流側には、気筒11内に導入する吸気量GAを調節するスロットルバルブ16が配置されている。吸気通路15における、スロットルバルブ16よりも下流側には、燃料を噴射する燃料噴射弁17が取り付けられている。また、気筒11には、当該気筒11内の排気を外部へ排出するための排気通路21が接続されている。また、気筒11内には、当該気筒11内の混合気に点火を行う点火プラグ19の先端が位置している。
【0016】
内燃機関10の出力軸である上記クランクシャフト14には、自動変速機50の入力軸51が連結されている。図示は省略するが、自動変速機50の入力軸51と出力軸52との間には、係合要素としての複数のクラッチ及びブレーキと、複数の遊星歯車機構とが介在している。そして、自動変速機50においては、各係合要素の断接状態を切り替えることにより、変速比が変更される。自動変速機50の入力軸51の近傍には、当該入力軸51の回転位置51Vを検出する入力軸回転センサ64が取り付けられている。また、自動変速機50の出力軸52の近傍には、当該出力軸52の回転位置52Vを検出する出力軸回転センサ65が取り付けられている。自動変速機50の出力軸52は、ディファレンシャル56等を介して駆動輪58に連結されている。
【0017】
駆動輪58には、油圧式のブレーキ71が取り付けられている。ブレーキ71には、図示しない接続通路を介してマスタシリンダ72が接続されている。マスタシリンダ72は、ブレーキペダル74の操作量に応じた油圧を発生する。マスタシリンダ72内で発生した油圧がブレーキ71の油圧シリンダに供給されることにより、駆動輪58に制動力が与えられる。マスタシリンダ72には、当該マスタシリンダ72内の圧力であるブレーキ油圧BKを検出するブレーキ圧センサ76が取り付けられている。ブレーキ71、マスタシリンダ72、ブレーキペダル74、及びブレーキ圧センサ76は、制動装置を構成している。
【0018】
車両500には、当該車両500の前後方向の加速度である前後加速度AFを検出する加速度センサ61が取り付けられている。加速度センサ61は、車両500の左右方向の加速度である左右加速度ALも検出する。車両500には、当該車両500の走行速度である車速SPを検出する車速センサ63が取り付けられている。車両500には、当該車両500の現在位置座標PXを検出するGPS受信機69が取り付けられている。
【0019】
次に、車両500の制御構成を説明する。
内燃機関10や自動変速機50などの各種制御は、車両500に搭載された制御装置100によって実行される。制御装置100は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサとして構成し得る。なお、制御装置100は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する、特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路、またはそれらの組み合わせを含む回路(circuitry)として構成してもよい。プロセッサは、CPU102及び、RAM並びにROM104等のメモリを含む。メモリは、処理をCPU102に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。また、制御装置100は、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリである記憶装置106を有する。CPU102やROM104や記憶装置106は、互いに内部バス108を通じて通信可能とされている。なお、本実施形態において、CPU102とROM104は実行装置を構成している。
【0020】
記憶装置106には、写像データMが記憶されている。写像データMは、後述する各種の入力変数を入力として出力変数を出力する写像を規定するデータである。出力変数は、車両500が走行している路面における、車両500の進行方向に関する傾斜角Rである。上記傾斜角Rは、詳細には、車両500の進行方向と水平面とが成す角のうち鋭角側の角度である。
【0021】
記憶装置106には、地図データNが記憶されている。地図データNには、道路情報が含まれている。地図データNにおいて、道路は、複数のノードと、隣り合うノード間を結ぶリンクとによって示されている。ノードは、例えば交差点毎に付されていたり、所定の距離間隔で付されていたりする。地図データNにおいては、各ノードの位置座標が設定されている。また、地図データNには、道路の延設方向に関する路面の傾斜角(以下、延設傾斜角と記す。)Qの情報が含まれている。延設傾斜角Qは、地図データN上の特定のノードからその隣のノードまでの範囲における道路の延設方向に関する路面の平均傾斜角である。つまり、延設傾斜角Qは、例えば100[m]程度のスケールでみたときの路面の平均傾斜角である。延設傾斜角Qは、地図データN上の道路毎に設定されている。
【0022】
また、記憶装置106には、車両500の重量(以下、車両重量と記す。)Wが記憶されている。また、記憶装置106には、内燃機関10の出力トルクを算出するためのマップ等、各種のマップが記憶されている。
【0023】
制御装置100には、車両500に取り付けられている各種センサからの検出信号が入力される。具体的には、制御装置100には、次の各パラメータについての検出信号が入力される。
・クランク角センサ30が検出するクランク位置Scr
・エアフロメータ32が検出する吸気量GA
・加速度センサ61が検出する前後加速度AF
・加速度センサ61が検出する左右加速度AL
・車速センサ63が検出する車速SP
・入力軸回転センサ64が検出する自動変速機50の入力軸51の回転位置51V
・出力軸回転センサ65が検出する自動変速機50の出力軸52の回転位置52V
・GPS受信機69が検出する車両500の現在位置座標PX
・ブレーキ圧センサ76が検出するブレーキ油圧BK
制御装置100のCPU102は、車両500が走行している路面の傾斜角Rを算出する路面傾斜角算出処理を実行可能である。上記のとおり、路面の傾斜角Rは、車両500の進行方向に関する路面の傾斜角である。CPU102は、ROM104に記憶されているプログラムを実行することによって路面傾斜角算出処理の各処理を実現する。CPU102は、車両500のイグニッションスイッチがオンになってからオフにならまでの間、路面傾斜角算出処理を所定の制御周期で繰り返し実行する。
【0024】
図2に示すように、CPU102は、路面傾斜角算出処理を開始すると、ステップS10の処理を実行する。ステップS10において、CPU102は、路面の傾斜角Rの算出に必要な各種の算出用の変数を取得する。算出用の変数は、具体的には、駆動輪58のトルク(以下、駆動輪トルクと記す。)Tin、前後加速度AFin、左右加速度ALin、車速SPin、車両重量Win、及び延設傾斜角Qinである。なお、本明細書では、上記の各変数に関して、算出用であることを示す場合には符号の最後に「in」を付し、それ以外の場合には「in」を省略する。
【0025】
ここで、登坂路において車両500が一定の前後加速度AFを維持しながら走行する場合、路面の傾斜角Rが大きいほど、大きな駆動輪トルクTが必要である。すなわち、前後加速度AFと、駆動輪トルクTと、路面の傾斜角Rとの間には、前後加速度AFが一定であれば、駆動輪トルクTが大きいほど、路面の傾斜角Rは大きいという関係がある。そこで、前後加速度AFを示す変数である前後加速度変数と、駆動輪トルクTを示す変数である駆動輪トルク変数とを路面の傾斜角Rの算出に利用するのが好適である。本実施形態では、前後加速度変数として前後加速度AFそのものを採用し、駆動輪トルク変数として駆動輪トルクTそのものを採用している。
【0026】
また、車両500の走行中、車両500には空気抵抗が作用する。空気抵抗は、空気によって車両500の進行方向とは逆方向に車両に作用する走行抵抗である。ここで、車両500が一定の前後加速度AFを維持することを前提としたとき、路面の傾斜角Rが同一であっても、空気抵抗が大きければ、その分大きな駆動輪トルクTが必要になる。したがって、路面の傾斜角Rを精度よく算出する上では、単に駆動輪トルクTの大小との兼ね合いで傾斜角Rを決定するのではなく、空気抵抗の大小を加味することが好ましい。空気抵抗は、車両500の前面投影面積と、空気抵抗係数と、車速SPの二乗と、の積として算出される変数である。すなわち、空気抵抗は、車速SPに応じて変化する変数である。本実施形態では、空気抵抗を示す変数として車速SPを採用している。
【0027】
また、車両500の走行中、車両500には転がり抵抗が作用する。転がり抵抗は、車両500と路面との間に生じる摩擦による走行抵抗である。空気抵抗の場合と同様、車両500が一定の前後加速度を維持することを前提としたとき、路面の傾斜角Rが同一であっても、転がり抵抗が大きければ、その分大きな駆動輪トルクTが必要になる。したがって、路面の傾斜角Rを精度よく算出する上では、転がり抵抗を加味することが好ましい。転がり抵抗は、転がり抵抗係数と、車両重量Wと、の積として算出される変数である。すなわち、転がり抵抗は、車両重量Wに応じて変化する変数である。本実施形態では、転がり抵抗を示す変数として車両重量Wを採用している。
【0028】
また、車両500が旋回する場合、駆動輪トルクTは、車両500を前後方向及び左右方向の双方に動作させる力として作用する。そのため、車両500が直進していることを前提とした駆動輪トルクTと路面の傾斜角Rとの関係性を車両500が旋回しているときの傾斜角Rの算出に適用すると、路面の傾斜角Rを適切に算出し得ない。こうした事情を踏まえ、車両500の旋回動作を示す変数を路面の傾斜角Rの算出に加味することが好ましい。本実施形態では、車両の旋回動作を示す変数として左右加速度ALを採用している。
【0029】
また、車両500が走行している路面の大まかな傾斜角を把握した上で路面の傾斜角Rを算出すれば、路面の傾斜角Rの算出精度は向上する。そこで、延設傾斜角Qを示す変数である延設傾斜角変数を路面の傾斜角Rの算出に加味することが好ましい。上記のとおり、延設傾斜角Qは、地図データN上で設定された隣り合うノード間の平均傾斜角である。車両500が走行している実際の路面の傾斜角Rは、地図データNで設定されているノード間のスケールよりも小さいスケールで緩やかに凹んでいたり緩やかに凸になっていたりしており、こうした小さいスケールでの凹凸も含めてCPU102は路面の傾斜角Rを算出する。また、傾斜角Rは、上述したとおり、車両500の進行方向に関する路面の傾斜角であるので、道路に対して斜めに走行しているときには、その道路の延設傾斜角Qとは一致しない。本実施形態では、延設傾斜角変数として、延設傾斜角Qの値そのものを採用している。
【0030】
さて、ステップS10の処理において、CPU102は、次のようにして算出用の駆動輪トルクTinを取得する。CPU102は、先ず、内燃機関10の出力トルクを算出する。ここで、路面傾斜角算出処理におけるステップS10の処理を前回実行してから今回ステップS10の処理を実行するまでの期間をデータ取得期間としたとき、CPU102は、データ取得期間にクランク角センサ30から制御装置100に入力されたクランク位置Scrの一連のデータを参照し、当該期間における、単位時間当たりのクランクシャフト14の回転数(以下、機関回転数と称する。)NEの平均値を算出する。また、CPU102は、データ取得期間にエアフロメータ32から制御装置100に入力された吸気量GAの一連のデータを参照し、当該期間における吸気量GAの平均値を算出する。そして、CPU102は、記憶装置106に記憶されているエンジントルクマップを参照する。エンジントルクマップにおいては、機関回転数NEと吸気量GAと内燃機関10の出力トルクとの関係性が示されている。CPU102は、エンジントルクマップに基づいて、機関回転数NEの平均値と吸気量GAの平均値とに対応する内燃機関10の出力トルクを平均出力トルクとして算出する。
【0031】
次に、CPU102は、機関回転数NEを算出した場合と同様の手法で、入力軸回転センサ64が検出する自動変速機50の入力軸51の回転位置51Vに基づいて、データ取得期間における、入力軸51の単位時間当たりの回転数の平均値を算出する。また、CPU102は、出力軸回転センサ65が検出する自動変速機50の出力軸52の回転位置52Vに基づいて、データ取得期間における、出力軸52の単位時間当たりの回転数の平均値を算出する。そして、CPU102は、入力軸51の回転数を出力軸52の回転数で除すことで、変速比を算出する。そして、CPUは102、平均出力トルクに変速比とディファレンシャル56のギヤ比とを乗じた値を平均伝達トルクとして算出する。
【0032】
次に、CPU102は、制動装置の制動トルクを算出する。具体的には、CPU102は、吸気量GAの平均値を算出する場合と同様の手法で、ブレーキ圧センサ76が検出するブレーキ油圧BKに基づいてデータ取得期間におけるブレーキ油圧BKの平均値を算出する。この後、CPU102は、記憶装置106に記憶されているブレーキトルクマップを参照する。ブレーキトルクマップにおいては、ブレーキ油圧BKと、制動トルクとの関係性が示されている。制動トルクは、制動装置の制動力をトルクに換算した値である。ブレーキ油圧が大きいほど、制動トルクの値は大きくなっている。CPU102は、ブレーキトルクマップに基づいて、ブレーキ油圧BKの平均値に対応する制動トルクを平均制動トルクとして算出する。
【0033】
CPU102は、平均伝達トルクと平均制動トルクとを算出すると、平均伝達トルクから平均制動トルクを減算し、その値を算出用の駆動輪トルクTinを算出する。CPU102が算出用の駆動輪トルクTinを算出することは、CPU102が算出用の駆動輪トルクTinを取得することに相当する。
【0034】
CPU102は、前後加速度AF、左右加速度AL、及び車速SPについても、データ取得期間の平均値として算出用の値を算出する。すなわち、CPU102は、加速度センサ61が検出する前後加速度AFに基づいて、データ取得期間の平均値として算出用の前後加速度AFinを算出する。CPU102が算出用の前後加速度AFinを算出することは、CPU102が算出用の前後加速度AFinを取得することに相当する。また、CPU102は、加速度センサ61が検出する左右加速度ALに基づいて、データ取得期間の平均値として算出用の左右加速度ALinを算出する。CPU102が算出用の左右加速度ALinを算出することは、CPU102が算出用の左右加速度ALinを取得することに相当する。また、CPU102は、車速センサ63が検出する車速SPに基づいて、データ取得期間の平均値として算出用の車速SPinを算出する。CPU102が算出用の車速SPinを算出することは、CPU102が算出用の車速SPinを取得することに相当する。
【0035】
また、CPU102は、記憶装置106に記憶されている車両重量Wを参照し、その値を算出用の車両重量Winとして取得する。
また、CPU102は、次のようにして算出用の延設傾斜角Qinを取得する。CPU102は、GPS受信機69によって検出された最新の現在位置座標PXを参照するとともに、記憶装置106に記憶されている地図データNを参照する。そして、CPU102は、地図データN上において、現在位置座標PXがどのノード間の道路に属するかを判定する。そして、CPU102は、現在位置座標PXが属する道路の延設傾斜角Qを、算出用の延設傾斜角Qinとして取得する。CPU102は、路面の傾斜角Rの算出に必要となる上記の各算出用の変数を取得すると、処理をステップS20に進める。なお、ステップS10の処理は取得処理である。
【0036】
ステップS20において、CPU102は、路面の傾斜角Rを算出するための写像の入力変数x(1)~x(6)に、ステップS10の処理で取得した各算出用の変数の値を代入する。具体的には、CPUは、入力変数x(1)に駆動輪トルクTinを代入し、入力変数x(2)に前後加速度AFinを代入し、入力変数(3)に左右加速度ALinを代入する。また、CPUは、入力変数x(4)に車速SPinを代入し、入力変数x(5)に車両重量Winを代入し、入力変数(6)に延設傾斜角Qinを代入する。この後、CPUは、処理をステップS30に進める。
【0037】
ステップS30において、CPUは、記憶装置106に記憶されている写像データMによって規定される写像に入力変数x(1)~x(6)を入力することによって、路面の傾斜角Rを算出する。
【0038】
本実施形態において、写像は、中間層が一層の全結合順伝播型ニューラルネットワークとして構成されている。上記ニューラルネットワークは、入力側係数wFjk(j=0~n,k=0~6)と、入力側係数wFjkによって規定される線形写像である入力側線形写像の出力のそれぞれを非線形変換する入力側非線形写像としての活性化関数h(x)を含む。本実施形態では、活性化関数h(x)として、ハイパボリックタンジェント「tanh(x)」を例示する。また、上記ニューラルネットワークは、出力側係数wSj(j=0~n)と、出力側係数wSjによって規定される線形写像である出力側線形写像の出力のそれぞれを非線形変換する出力側非線形写像としての活性化関数f(x)を含む。本実施形態では、活性化関数f(x)として、ハイパボリックタンジェント「tanh(x)」を例示する。なお、値nは、中間層の次元を示すものである。本実施形態において、値nは、入力変数xの次元である6よりも小さい。入力側係数wFj0は、バイアスパラメータであり、入力変数x(0)の係数となっている。入力変数x(0)は「1」として定義される。また、出力側係数wS0は、バイアスパラメータである。
【0039】
写像データMは、車両500に実装される以前に、車両500と同一仕様の車両を用いて学習された学習済みモデルである。ここで、写像データMの学習に際しては、事前に教師データと訓練データとを取得しておく。すなわち、実際に車両を走行させて、車両が走行している路面の傾斜角Rを教師データとして取得する。路面の傾斜角Rは、例えばGPS速度計によって計測される。また、車両の走行中、駆動輪トルクTや前後加速度AF等、写像への入力として利用する各種の入力変数の値を訓練データとして取得する。様々な傾斜角の路面を車両で走行することで、路面の傾斜角毎の、教師データと訓練データとの組を生成する。そして、こうした教師データと訓練データを用いて写像データMが学習される。すなわち、様々な傾斜角の路面に関して、訓練データを入力として写像データMが出力する値と、実際の路面の傾斜角Rである教師データの値との差が所定値以下になるように、入力側係数及び出力側係数を調整する。そして、上記の差が所定値以下になることにより、学習が完了したものとする。
【0040】
CPU102は、ステップS30において路面の傾斜角Rを算出すると、路面傾斜角算出処理の一連の処理を一旦終了する。そして、CPU102は、再度ステップS10の処理を実行する。なお、ステップS30の処理は、算出処理である。
【0041】
次に、本実施形態の作用について説明する。
車両500の走行中、写像への入力変数x(1)~x(6)に算出用の駆動輪トルクTin、前後加速度AFin、左右加速度ALin、車速SPin、車両重量Win、延設傾斜角Qinを入力すると、路面の傾斜角Rが算出される。
【0042】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)上記作用に記載したとおり、上記構成によれば、車両500の走行中、車両500が走行している路面の傾斜角Rを随時算出できる。このように傾斜角Rを逐次算出できれば、車両500の走行中に路面の傾斜角Rを加味して車両500の走行状態を制御するといったことも可能になる。このことは、例えば車両500の走行に必要となる要求駆動力の算出や、自動変速機の係合要素に作用させる油圧の制御において好適である。
【0043】
(2)上記構成では、写像への入力変数に駆動輪トルクTと前後加速度AFとが含まれている。駆動輪トルクTと前後加速度AFと路面の傾斜角Rとには、前後加速度AFが一定であれば駆動輪トルクTが大きいほど路面の傾斜角Rが大きいという関係がある。したがって、駆動輪トルクTと前後加速度AFとを入力変数に含めることで、路面の傾斜角Rを精度よく算出できる。
【0044】
(3)上記構成では、入力変数に、空気抵抗を示す車速SPが含まれている。したがって、空気抵抗を加味した車両500の走行状態に基づいて路面の傾斜角Rを算出できる。そのため、空気抵抗を加味せずに路面の傾斜角Rを算出する場合に比べて、路面の傾斜角Rの算出精度が向上する。
【0045】
(4)上記構成では、入力変数に、転がり抵抗を示す車両重量Wが含まれている。したがって、転がり抵抗を加味した車両500の走行状態に基づいて路面の傾斜角Rを算出できる。そのため、転がり抵抗を加味せずに路面の傾斜角Rを算出する場合に比べて、路面の傾斜角Rの算出精度が向上する。
【0046】
(5)上記構成では、入力変数に、延設傾斜角Qが含まれている。したがって、大まかな路面の傾斜角を反映させた値として、実際の路面の傾斜角Rを算出できる。この場合、大まかな路面の傾斜角の情報なしで路面の傾斜角Rを算出する場合に比べて、路面の傾斜角Rの算出精度が向上する。
【0047】
(6)上記構成では、入力変数に、左右加速度ALが含まれている。したがって、車両500の旋回を加味した車両500の走行状態に基づいて路面の傾斜角Rを算出できる。そのため、車両500の旋回を加味せずに路面の傾斜角Rを算出する場合に比べて、路面の傾斜角Rの算出精度が向上する。
【0048】
(7)上記構成では、データ取得期間の平均値として、各入力変数の値を算出している。したがって、各入力変数の値に関してセンサによる誤差やノイズの影響を低減できる。こうした入力変数を用いて路面の傾斜角Rを算出することで、路面の傾斜角Rの算出精度が向上する。
【0049】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・路面傾斜角算出処理の一部を車両500の外部のコンピュータで行ってもよい。例えば、図3に示すように、車両500の外部にサーバ600を設けてもよい。そして、サーバ600で路面傾斜角算出処理の算出処理を行う構成としてもよい。この場合、サーバ600は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って各種処理を実行する1つ以上のプロセッサとして構成し得る。なお、サーバ600は、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する、特定用途向け集積回路(ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路、またはそれらの組み合わせを含む回路(circuitry)として構成してもよい。プロセッサは、CPU602及び、RAM並びにROM604等のメモリを含む。メモリは、処理をCPU602に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。また、サーバ600は、電気的に書き換え可能な不揮発性メモリである記憶装置606を有する。記憶装置606には、上記実施形態で説明した写像データMが記憶されている。また、サーバ600は、外部通信回線網700を通じてサーバ600の外部と接続するための通信機610を有する。CPU602、ROM604、記憶装置606、及び通信機610は、互いに内部バス608を通じて通信可能とされている。
【0050】
路面傾斜角算出処理の算出処理をサーバ600で行う場合、車両500の制御装置100は、外部通信回線網700を通じて制御装置100の外部と通信するための通信機110を有する。なお、制御装置100の構成は、通信機110を有することを除いて上記実施系形態のものと同じである。そのため、制御装置100についての詳細な説明は割愛する。なお、図3において図1と同一に機能する箇所には、図1と同一の符号を付している。制御装置100はサーバ600とともに、路面傾斜角算出システムZを構成する。
【0051】
路面傾斜角算出処理の算出処理をサーバ600で行う場合、先ず、車両500の制御装置100は、上記実施形態のステップS10の処理である取得処理を行う。制御装置100は、ステップS10の処理によって算出用の各変数を取得すると、取得した各変数の値をサーバ600に送信する。サーバ600のCPU602は、各変数の値を受信すると、上記実施形態のステップS20及びステップS30の処理を行うことによって路面の傾斜角Rを算出する。サーバ600のCPU602は、ROM604に記憶されたプログラムを実行することによって、ステップS20及びステップS30の処理を行う。
【0052】
この変更例のように、車両500の制御装置100とサーバ600とで路面傾斜角算出処理を行う場合、車両500の制御装置100のCPU102及びROM104と、サーバ600のCPU602及びROM604とが実行装置を構成する。
【0053】
・路面傾斜角算出処理の全ての処理を車両500の外部のコンピュータで行ってもよい。例えば、上記変更例のように、車両500の外部にサーバ600を設ける場合において、車両500の制御装置100は、車両500に取り付けられている各種センサの検出信号をサーバ600に送信する。そして、サーバ600のCPU602は、上記実施形態のステップS10に相当する処理を行うことで、算出用の各変数の値を取得する。この後、上記変更例と同様、サーバ600のCPU602は、ステップS20及びステップS30に相当する処理を行う。こうした構成では、サーバ600で取得処理及び算出処理を行うことになる。サーバ600で取得処理を行う場合には、エンジントルクマップや地図データ等、取得処理に必要な情報を記憶装置606に記憶しておけばよい。
【0054】
・ステップS10における算出用の各種の変数の算出方法は、上記実施形態に示したような平均値を利用するものに限定されない。例えば、各種センサから制御装置100に入力される検出信号の時系列に対して移動平均等のフィルタを施した上で適切な値を算出してもよい。
【0055】
・算出用の各種の変数を算出する上で、上記実施形態のように平均値を算出するのではなく、駆動輪トルクTや車速SPの瞬時値を算出してもよい。例えば、各種のセンサから制御装置100に入力される検出信号に関して、ステップS10の処理を実行する時点での最新の値を利用して各変数の瞬時値を算出すればよい。
【0056】
・入力用の前後加速度AFinを算出する上で、車速SPの微分値を利用してもよい。
・入力用の車速SPinを算出する上で、自動変速機50の出力軸52の回転位置52Vを利用してもよい。
【0057】
・車両500の構成は、上記実施形態の例に限定されない。例えば、車両500の駆動源として、内燃機関10のみならずモータが搭載されていてもよい。また、車両500の駆動源として、内燃機関10を有さず、モータのみを搭載していてもよい。車両500の駆動源としてモータが搭載されている場合、駆動輪トルクTの算出に際して、モータの出力トルクを考慮すればよい。
【0058】
・駆動輪トルク変数として採用する変数は、上記実施形態の例に限定されない。駆動輪トルク変数として、例えば、駆動輪トルクTに車輪径を乗じた値を採用してもよい。駆動輪トルク変数は、駆動輪トルクTを示す変数であればよい。
【0059】
・前後加速度変数として採用する変数は、上記実施形態の例に限定されない。前後加速度変数として、例えば前後加速度AFに適宜の係数を乗じた値でもよい。この係数は、例えば、加速度センサ61によって検出される前後加速度AFや車速センサ63の検出値に基づいて算出される前後加速度AFの信頼性に応じて大小するものでもよい。例えば、加速度センサ61によって検出される前後加速度AFと、車速SPの微分値として算出される前後加速度AFとの差が小さい場合は1に近く、上記の差が大きい場合にはゼロに近いような値を上記の係数として採用してもよい。
【0060】
・車速変数として採用する変数は、上記実施形態の例に限定されない。車速変数として、例えば、車速SPに空気抵抗係数と車両500の前面投影面積とを乗じた値を採用してもよい。車速変数は、車速SPに応じた変数、すなわち空気抵抗を反映した変数であればよい。
【0061】
・重量変数として採用する変数は、上記実施形態の例に限定されない。重量変数として、例えば、車両重量に転がり抵抗係数を乗じた値を採用してもよい。重量変数は、車両重量に応じた変数、すなわち転がり抵抗を反映した変数であればよい。
【0062】
・車両500の旋回を示す変数として採用する変数は、上記実施形態の例に限定されない。例えば、車両500の旋回を示す変数として、ステアリングホイールの旋回角を採用してもよい。車両500の旋回を示す変数は、車両500の旋回を把握できる変数であればよい。
【0063】
・延設傾斜角変数として採用する変数は、上記実施形態の例に限定されない。例えば、延設傾斜角Qの度合いに応じて複数のレベルを設定し、そうしたレベルを示す値を傾斜角変数として採用してもよい。延設傾斜角変数は、延設傾斜角Qを示す変数であればよい。
【0064】
・上記変更例と同様、駆動輪トルク変数や前後加速度変数等の他の変数についても、それぞれの度合いに応じて複数レベルを設定し、そうしたレベルを示す値を採用してもよい。
【0065】
・入力変数の種類は、上記実施形態の例に限定されない。入力変数は、上記実施形態に示したものに代えて、又は加えて、他のものを採用してもよい。また、入力変数の数を上記実施形態の数から減らしてもよい。入力変数の数はいくつでもよい。ただし、入力変数として前後加速度変数は必須である。
【0066】
・入力変数として、駆動輪トルク変数に代えて駆動輪トルクに関与する複数のパラメータを入力してもよい。この場合、内燃機関やモータといった、車両の駆動源の出力トルクを示す変数である駆動源トルク変数と、車両の駆動源から駆動輪へと至る動力伝達系でのギヤ比を示すギヤ比変数と、車両の制動装置の制動力を示す変数である制動変数と、を入力変数に含めればよい。
【0067】
・車速変数、重量変数、車両の旋回を示す変数、延設傾斜角変数は、入力変数として必須ではない。これらの変数が入力されない場合でも、駆動輪トルク変数又はそれに代わる各変数と、前後加速度変数とが入力変数に含まれていれば、路面の傾斜角Rを相応に高い精度で算出できる。なお、駆動輪トルク変数に代わる各変数とは、上記変更例に示した駆動源トルク変数、ギヤ比変数、制動変数である。
【0068】
・入力変数として、上記実施形態で示した変数以外の変数を採用してもよい。例えば、自動変速機50の変速中は、その変速動作に伴って車両500に前後加速度が生じる。このときの前後加速度AFは、路面の傾斜角Rと関連しない。そこで、自動変速機50の変速に伴う前後加速度AFと切り離して路面の傾斜角Rを算出すべく、自動変速機50が変速中であるか否かを示す変数を入力変数に含めてもよい。
【0069】
・入力変数として、車両500の上下方向の加速度を示す上下加速度変数を含めてもよい。入力変数に上下加速度変数を含めることで、例えば車両500の上下方向の移動量に関する情報を路面の傾斜角Rの算出に反映させることが可能になる。
【0070】
・出力変数は、上記実施形態の例に限定されない。出力変数は、路面の傾斜角Rを示す変数である傾斜角変数であればよい。例えば、路面の傾斜角Rの度合いに応じた複数のレベルを設定し、そうしたレベルを示す値を傾斜化変数として採用してもよい。
【0071】
・写像の構成は、上記実施形態の例に限定されない。例えば、ニューラルネットワークにおける中間層の数を2つ以上にしてもよい。
・ニューラルネットワークとして、例えば、回帰結合型のものを採用してもよい。この場合、過去の入力変数の値が今回新たに出力変数の値を算出する際に反映されることから、過去の履歴を反映して路面の傾斜角Rを算出するのに好適である。
【0072】
・写像データMの学習に利用する訓練データ及び教師データの取得方法は、上記実施形態の例に限定されない。例えば、教師データとしての路面の傾斜角Rを取得する上で、所定時間内における車両の走行距離と、同時間内において車両が移動した標高差とから路面の傾斜角Rを算出してもよい。また、訓練データ及び教師データを取得する上で、実際に車両を走行させるのではなく、シャシーダイナモメータに内燃機関や自動変速機を連結するなどして、車両が実際に走行している状態を模擬してもよい。そして、傾斜している路面を車両が走行している場合と同様の負荷を車両に与えることで、訓練データを取得してもよい。
【符号の説明】
【0073】
10…内燃機関
58…駆動輪
100…制御装置
102…CPU
104…ROM
106…記憶装置
500…車両
M…写像データ
図1
図2
図3