(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】操船制御装置
(51)【国際特許分類】
B63H 25/02 20060101AFI20231003BHJP
B63H 21/21 20060101ALI20231003BHJP
B63H 21/22 20060101ALI20231003BHJP
B63H 25/42 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
B63H25/02 Z
B63H21/21
B63H21/22 Z
B63H25/42 N
(21)【出願番号】P 2020114496
(22)【出願日】2020-07-01
【審査請求日】2022-08-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100187078
【氏名又は名称】甲原 秀俊
(74)【代理人】
【識別番号】100195534
【氏名又は名称】内海 一成
(72)【発明者】
【氏名】山崎 貴睦
(72)【発明者】
【氏名】都築 尚幸
(72)【発明者】
【氏名】岩月 誠
(72)【発明者】
【氏名】西村 康孝
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-109693(JP,A)
【文献】特開2016-083972(JP,A)
【文献】特開2011-140272(JP,A)
【文献】米国特許第10633072(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 25/02
B63H 21/21
B63H 21/22
B63H 25/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進装置を有する船舶の移動を制御する制御部と、
前記船舶の位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記船舶の方位情報を取得する方位情報取得部と、
前記船舶の操作量の入力を受け付ける操作部と
を備え、
前記制御部は、
前記操作部が操作入力モードに移行するときの状態、又は、前記操作部が前記操作入力モードにおいて前記船舶の操作量を受け付ける前の状態のいずれかの状態における前記船舶の位置及び方位に、前記操作部が受け付けた操作量を加えて目標位置及び目標方位を算出し、
前記船舶の現在位置と前記目標位置との間の位置偏差、及び、前記船舶の現在方位と前記目標方位との間の方位偏差のうち少なくとも一方の偏差に基づいて、前記推進装置を制御
し、
前記操作部が前記船舶の操作量の入力を受け付けた後、所定時間が経過する第1条件、又は、前記方位偏差が第1所定値以下になること若しくは前記位置偏差が第2所定値以下になることのうち少なくとも1つを含む第2条件、のうち少なくとも1つの条件が満たされるまで、前記操作部で受け付ける次の入力を無効にする、
操船制御装置。
【請求項2】
前記操作部が受け付けた操作量は、前記操作部に入力された1回の操作で前記船舶が移動又は回転する量である、請求項1に記載の操船制御装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記位置偏差及び前記方位偏差のうち少なくとも一方の偏差に基づく前記推進装置の制御開始からの時間である収束時間が前記所定時間を超えた場合、又は、前記収束時間が前記所定時間以下であるものの、前記方位偏差が前記第1所定値より大きい、若しくは、前記位置偏差が前記第2所定値より大きい場合に、前記操作部に入力された1回の操作に基づく前記目標位置及び前記目標方位の算出を再度実行し、
前記位置偏差及び前記方位偏差のうち少なくとも一方の偏差に基づく前記推進装置の制御開始からの時間である収束時間が前記所定時間以下であり、前記方位偏差が前記第1所定値以下であり、かつ、前記位置偏差が前記第2所定値以下である場合に、前記操作部に入力された1回の操作に応じた前記船舶の移動を完了したとみなす、請求項2に記載の操船制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記位置偏差及び前記方位偏差の両方に基づいて前記推進装置を制御する、請求項1から3までのいずれか一項に記載の操船制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、操船制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ジョイスティックレバーの操作量に基づいて目標座標及び目標方位を算出し、船舶が目標座標に移動し、目標方位に回頭するように推進装置に推力を発生させる操船装置が知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ジョイスティック操作に基づいて船舶の挙動を制御する場合、操作と制御との相互作用によって船舶の制御が発散することがある。
【0005】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、船舶の制御が発散しにくいように船舶を制御することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る操船制御装置は、推進装置を有する船舶の移動を制御する制御部と、前記船舶の位置情報を取得する位置情報取得部と、前記船舶の方位情報を取得する方位情報取得部と、前記船舶の操作量の入力を受け付ける操作部とを備える。前記制御部は、前記操作部が操作入力モードに移行するときの状態、又は、前記操作部が前記操作入力モードにおいて前記船舶の操作量を受け付ける前の状態のいずれかの状態における前記船舶の位置及び方位に、前記操作部が受け付けた操作量を加えて目標位置及び目標方位を算出し、前記船舶の現在位置と前記目標位置との間の位置偏差、及び、前記船舶の現在方位と前記目標方位との間の方位偏差のうち少なくとも一方の偏差に基づいて、前記推進装置を制御する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一実施形態に係る操船制御装置によれば、船舶の制御が発散しにくいように船舶が制御され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係る操船制御装置の構成例を示すブロック図である。
【
図2】船舶における推進装置の配置例を示す平面図である。
【
図3】操船制御方法の手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
船舶10(
図1等参照)を操作する場合における問題点及び課題として、以下の点が挙げられる。例えば、操作量が過剰になったり過小になったりしやすい。また、操作部5に入力された船舶10の移動方向若しくは移動量、又は回転角度と、実際の船舶10の挙動とが異なり得る。また、操作部5に入力された操作内容に基づく船舶10の挙動の制御が、操作との相互作用によって発散し得る。
【0010】
上述の問題点及び課題が生じる理由として、以下の点が挙げられる。例えば、風若しくは潮流等の外的要因、又は、船舶10の搭載状態又はプロペラの汚れ等による推進装置が出力する推進力の低下等の内的要因による外乱が船舶10に対して加わる。外乱によって、船舶10の初期状態(例えば、流され状態等)が定まらない。また、船舶10の動きの応答の遅延、又は、応答速度の低下が生じる。また、船舶10の動きの応答の遅延量、又は、応答速度が定まらない。このように、船舶10の状態が定まらないことによって、船舶10が目標座標又は目標方位に到達する前に操作者がその意図を超えた操作を入力してしまうことがある。また、船舶10が操作者の意図を超えて移動したり回転したりした場合に、操作者が行き過ぎを戻すための逆方向への操作を引き起こすことがある。このような操作によって、船舶10の制御が発散し得る。外乱によって船舶10の状態が定まらない場合に、操作者は、外乱を考慮して操作の入力を補正するための熟練の経験を要する。
【0011】
以下、船舶10の挙動の制御が発散しにくくなる構成が説明される。
【0012】
図1に示されるように、本開示の一実施形態に係る操船制御装置1は、船舶10に搭載され、船舶10の操作者による操作に基づいて、船舶10の操船を制御する情報を生成して出力する。操船制御装置1は、制御部2と、位置情報取得部3と、方位情報取得部4と、操作部5と、記憶部6とを備える。
【0013】
位置情報取得部3は、船舶10の位置を検出し、位置情報として出力する。現在の船舶10の位置は、現船舶位置とも称される。位置情報取得部3は、現船舶位置を緯度及び経度によって表してよい。位置情報取得部3は、現船舶位置をブイ等の所定の目印からの相対的な位置として表してもよい。位置情報取得部3は、これらの例に限られず、現船舶位置を種々の形式で表してもよい。位置情報取得部3は、衛星測位システムに対応する受信機を含んでよい。衛星測位システムに対応する受信機は、例えばGPS(Global Positioning System)受信機を含んでもよいが、これに限られず、他の種々の受信機を含んでよい。
【0014】
方位情報取得部4は、船舶10の方位を検出し、方位情報として出力する。現在の船舶10の方位は、現船舶方位とも称される。現船舶方位は、船舶10の船首が向く方角を意味する。方位情報取得部4は、現船舶方位を所定方向に対する角度で表してよい。所定方向は、例えば、東西南北のいずれかの方向であってもよい。方位情報取得部4は、現船舶方位を、東西南北を含む8方位又は16方位等で表してよい。方位情報取得部4は、例えば、地磁気センサ等の種々のセンサを含んで構成されてもよい。
【0015】
操作部5は、船舶10の操作者による操作入力を受け付ける入力デバイスを含んで構成される。入力デバイスは、例えば、キーボード又は物理キーを含んでもよいし、タッチパネル若しくはタッチセンサ又はマウス等のポインティングデバイスを含んでもよい。入力デバイスは、例えば、音声の入力を受け付けるマイク等を含んでもよい。入力デバイスは、これらの例に限られず、他の種々のデバイスを含んでもよい。
【0016】
操作部5は、表示デバイスを含んで構成されてもよい。表示デバイスは、LED(Light Emission Diode)等の発光デバイスを含んでよい。表示デバイスは、例えば、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)であってよい。表示デバイスは、有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ又は無機ELディスプレイであってよい。表示デバイスは、プラズマディスプレイ(PDP:Plasma Display Panel)であってよい。表示デバイスは、これらのディスプレイに限られず、他の種々の方式のディスプレイであってもよい。表示デバイスは、タッチパネルとして入力デバイスと一体に構成されてもよい。
【0017】
制御部2は、操船制御装置1の各構成部から情報を取得するとともに、各構成部を制御するための情報を出力する。制御部2は、位置情報取得部3から現船舶位置を取得する。制御部2は、方位情報取得部4から現船舶方位を取得する。制御部2は、船舶10の移動を制御する情報を生成し、船舶10に出力する。
【0018】
制御部2は、1つ以上のプロセッサを含んでよい。本実施形態において「プロセッサ」は、汎用のプロセッサ、特定の処理に特化した専用のプロセッサ等であるが、これらに限られない。制御部2は、1つ以上の専用回路を含んでもよい。専用回路は、例えば、FPGA(Field-Programmable Gate Array)又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)を含んでよい。制御部2は、プロセッサの代わりに専用回路を含んでもよいし、プロセッサとともに専用回路を含んでもよい。
【0019】
記憶部6は、例えば半導体メモリ、磁気メモリ、又は光メモリ等を含んで構成されてよい。記憶部6は、磁気ディスク等の電磁記憶媒体を含んで構成されてよい。記憶部6は、これらに限られず、他の種々の記憶デバイスを含んで構成されてもよい。記憶部6は、例えば主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部6は、非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体を含んでよい。記憶部6は、操船制御装置1の各構成部の動作に用いられる任意の情報を格納する。例えば、記憶部6は、システムプログラム、又はアプリケーションプログラム等を格納してもよい。記憶部6は、制御部2に含まれてもよい。
【0020】
操船制御装置1は、船舶10に搭載されず、船舶10と通信可能に接続されてもよい。この場合、位置情報取得部3は、船舶10に搭載されている位置情報検出装置から船舶10の位置情報を取得する。方位情報取得部4は、船舶10に搭載されている方位情報検出装置から船舶10の方位情報を取得する。制御部2は、船舶10と通信するための通信モジュールを介して、船舶10の制御情報を送信してよい。通信モジュールは、例えば4G(4th Generation)及び5G(5th Generation)等の移動体通信規格に対応する通信モジュールを含んでよいが、これらに限られない。
【0021】
(船舶10の構成例)
船舶10は、第1推進装置31と、第2推進装置32と、第3推進装置33とを備える。
図2に示されるように、第1推進装置31及び第2推進装置32は、船舶10に対して前進方向又は後退方向の推進力を加えるように船舶10に設置されるとする。第3推進装置33は、船舶10に対して左右方向の推進力を加えるように船舶10に設置されるとする。第1推進装置31、第2推進装置32及び第3推進装置33は、推進装置とも総称される。推進装置は、例えば、プロペラ等の旋回式推進装置を含んで構成されてよいし、ウォータージェット推進装置を含んで構成されてもよい。推進装置は、これらの例に限られず、ポッドドライブ又は船内外機等の種々の装置を含んで構成されてよい。
【0022】
船舶10は、第1アクチュエータ21と、第2アクチュエータ22と、第3アクチュエータ23とを更に備える。第1アクチュエータ21は、第1推進装置31が出力する推進力を制御する。第2アクチュエータ22は、第2推進装置32が出力する推進力を制御する。第3アクチュエータ23は、第3推進装置33が出力する推進力を制御する。第1アクチュエータ21、第2アクチュエータ22及び第3アクチュエータ23は、アクチュエータとも総称される。アクチュエータは、例えばプロペラを回転させるモータ又はエンジン等を含んで構成されてよい。アクチュエータは、ウォータージェット推進装置から水を噴出させるポンプそのものを含んで構成されてもよいし、ポンプを制御する装置を含んでもよい。
【0023】
船舶10は、第1推進装置31又は第2推進装置32の推進力によって前進したり後退したりできる。また、船舶10は、第1推進装置31の推進力と第2推進装置32の推進力とが異なることによっても、左右に旋回できる。船舶10は、第3推進装置33の推進力によって、左右に旋回できる。制御部2は、各推進装置の推進力を制御することによって、船舶10の位置及び速度、並びに方位を制御し、船舶10の前進若しくは後退又は旋回を制御できる。
【0024】
図1及び
図2の例において、船舶10は、3つの推進装置を備える。船舶10は、少なくとも2つの、独立に制御可能な推進装置を備えることによって、船舶10の位置及び速度、並びに方位を変更できる。つまり、制御部2は、少なくとも2つの推進装置の推進力を制御することによって、船舶10の位置及び速度、並びに方位を制御し、船舶10の前進若しくは後退又は旋回を制御できる。
【0025】
(操船制御動作)
操船制御装置1は、例えば以下のように動作することによって、船舶10の位置及び方位を制御できる。操船制御装置1は、操船者による操作入力に基づいて船舶10を移動させることができる。操作入力に基づいて船舶10を制御するモードは、操作入力モードとも称される。
【0026】
操作部5は、船舶10の操作者から、制御部2が操作入力モードに移行することを指示する操作の入力を受け付ける。制御部2は、操作に基づいて操作入力モードに移行する。制御部2は、操作入力モードに移行した時点の船舶10の位置及び方位をそれぞれ位置情報取得部3及び方位情報取得部4で取得する。
【0027】
記憶部6は、操作入力モードに移行した時点の船舶10の位置及び方位をそれぞれ初期位置及び初期方位として格納する。また、記憶部6は、1回の操作で船舶10が移動したり回転したりする量を目標到達量として格納してよい。例えば、記憶部6は、1回の操作で船舶10が前後方向又は左右方向に移動する距離を目標到達量として格納してよい。記憶部6は、1回の操作で船舶10が回転する角度を目標到達量として格納してよい。
【0028】
制御部2は、操作部5が操作者による操作入力を受け付けるまで、初期位置及び初期方位を変更しない。制御部2は、操作部5が操作者による操作入力を受け付けた場合、操作入力に対応する目標到達量に基づいて初期位置又は初期方位を更新する。具体的には、制御部2は、操作入力の種類毎に定められた動作によって初期位置又は初期方位を更新する。
【0029】
制御部2は、操作部5が船舶10を前後方向に移動させる操作入力を受け付けた場合、前後方向の移動距離を目標到達量として取得する。制御部2は、初期方位に沿う直線上において船舶10が初期位置から前後方向の移動量だけ離れた位置を算出して、算出した位置で初期位置を更新する。また、制御部2は、初期方位を更新しない。
【0030】
制御部2は、操作部5が船舶10を左右方向に移動させる操作入力を受け付けた場合、左右方向の移動距離を目標到達量として取得する。制御部2は、初期方位に直交する直線上において船舶10が初期位置から左右方向の移動量だけ離れた位置を算出して、算出した位置で初期位置を更新する。また、制御部2は、初期方位を更新しない。
【0031】
制御部2は、操作部5が船舶10を回転させる操作入力を受け付けた場合、回転角度を目標到達量として取得する。制御部2は、初期方位から回転角度だけ回転した方位を算出して、算出した方位で初期方位を更新する。また、制御部2は、初期位置を更新しない。
【0032】
制御部2は、位置情報取得部3から現船舶位置を取得するとともに、方位情報取得部4から現船舶方位を取得する。制御部2は、現船舶位置と初期位置との間の位置偏差が0になり、かつ、現船舶方位と初期方位との間の方位偏差が0になるように、各推進装置に出力させる推進力の大きさ及び方向を算出する。制御部2は、算出した推進力に基づいて、各アクチュエータを制御する制御情報を生成して出力する。各アクチュエータは、制御情報に基づいて各推進装置に推進力を出力させる。これによって、船舶10は、初期位置及び初期方位に近づく。
【0033】
初期位置及び初期方位が更新されていない場合、制御部2は、操作入力モードに移行した時点の船舶10の位置及び方位を維持するように船舶10を制御する。つまり、制御部2は、船舶10を静止させるように船舶10を制御する。制御部2は、初期位置及び初期方位が更新された後、更新後の初期位置及び初期方位に船舶10を近づけるように、船舶10を制御する。
【0034】
<フローチャート例>
操船制御装置1の制御部2は、
図3に例示されるフローチャートの手順を含む操船制御方法を実行してもよい。操船制御方法は、制御部2のプロセッサに実行させる操船制御プログラムとして実現されてもよい。操船制御プログラムは、非一時的なコンピュータ読み取り可能な媒体に格納されてよい。
【0035】
制御部2は、位置情報取得部3から現船舶位置を取得するとともに、方位情報取得部4から現船舶方位を取得する(ステップS1)。
【0036】
制御部2は、操作部5から、船舶10の操作者による操作量の入力を受け付ける(ステップS2)。具体的には、船舶10の操作者は、操作量として、船舶10の回転角度、又は、船舶10の前後方向若しくは左右方向の移動距離を、操作部5から入力する。
【0037】
制御部2は、船舶10の目標位置及び目標方位を算出する(ステップS3)。具体的には、制御部2は、現船舶位置に、船舶10の前後方向若しくは左右方向の移動距離を加えることによって船舶10の目標位置を算出する。制御部2は、現船舶方位に、船舶10の回転角度を加えることによって船舶10の目標方位を算出する。
【0038】
制御部2は、船舶10の推進方向及び推進力を算出する(ステップS4)。具体的には、制御部2は、船舶10の目標位置及び目標方位と、現船舶位置及び現船舶方位とに基づいて、船舶10の推進方向及び推進力を算出する。
【0039】
制御部2は、アクチュエータの出力を算出する(ステップS5)。具体的には、制御部2は、船舶10の推進方向及び推進力に基づいて、各アクチュエータの出力を算出する。船舶10は、各アクチュエータの出力に応じて各推進装置が出力する推進力によって移動する。
【0040】
制御部2は、現船舶位置及び現船舶方位を更新する(ステップS6)。具体的には、制御部2は、位置情報取得部3から現船舶位置を新たに取得する。制御部2は、方位情報取得部4から現船舶方位を新たに取得する。
【0041】
制御部2は、方位偏差及び位置偏差を算出する(ステップS7)。具体的には、制御部2は、ステップS6の手順で取得した現船舶位置と目標位置との差を、位置偏差として算出する。制御部2は、ステップS6の手順で取得した現船舶方位と目標方位との差を、方位偏差として算出する。
【0042】
制御部2は、収束時間が所定時間以下であるか判定する(ステップS8)。収束時間は、船舶10の制御開始からの時間を意味する。制御部2は、収束時間が所定時間以下でない場合(ステップS8:NO)、つまり収束時間が所定時間を超えた場合、ステップS3の手順に戻る。
【0043】
制御部2は、収束時間が所定時間以下である場合(ステップS8:YES)、方位偏差が第1所定値以下であり、かつ、位置偏差が第2所定値以下であるか判定する(ステップS9)。制御部2は、方位偏差が第1所定値以下でない場合(つまり、方位偏差が第1所定値より大きい場合)、又は、位置偏差が第2所定値以下でない場合(つまり、位置偏差が第2所定値より大きい場合)の少なくとも一方の場合(ステップS9:NO)、ステップS3の手順に戻る。制御部2は、方位偏差が第1所定値以下であり、かつ、位置偏差が第2所定値以下である場合(ステップS9:YES)、船舶10が操作者の入力に基づく移動を完了したとみなして、
図3のフローチャートの手順の実行を終了する。制御部2は、ステップS2の手順に戻ってもよい。
【0044】
<小括>
以上述べてきたように、一実施形態に係る操船制御装置1は、偏差を所定値以下にするように船舶10を制御することによって、風又は潮流の有無にかかわらず、船舶10を安定して移動させるように制御できる。操船制御装置1は、例えば、船舶10が安定して着岸したり離岸したりできるように操船できる。具体的には、操船制御装置1は、船舶10が前後方向及び左右方向に平行移動するように操船できる。また、操船制御装置1は、船舶10がその重心と浮心との間を中心に回転するように操船できる。
【0045】
操船制御装置1は、前後方向及び左右方向、並びに回転方向に、離散的に目標到達距離又は目標到達角度を設定してよい。操船制御装置1は、1つの操作で1つの目標到達地点に船舶10を移動させたり、1つの目標到達角度に船舶10を回転させたりする。操船制御装置1は、船舶10を前後方向及び左右方向に船舶10の方位を維持したまま移動させてよい。操船制御装置1は、船舶10をその回転中心を維持したまま回転させてよい。
【0046】
具体的には、一実施形態に係る操船制御装置1は、以下のように構成されてよい。操船制御装置1は、推進装置を有する船舶10の移動を制御する制御部2と、船舶10の位置情報を取得する位置情報取得部3と、船舶10の方位情報を取得する方位情報取得部4と、船舶10の操作量の入力を受け付ける操作部5とを備える。制御部2は、操作部5が操作入力モードに移行するときの状態、又は、操作部5が操作入力モードにおいて船舶10の操作量を受け付ける前の状態のいずれかの状態における船舶10の位置及び方位を取得する。制御部2は、取得した船舶10の位置及び方位に、操作部5が受け付けた操作量を加えて目標位置及び目標方位を算出する。制御部2は、船舶10の現在位置と目標位置との間の位置偏差、及び、船舶10の現在方位と目標方位との間の方位偏差のうち少なくとも一方の偏差に基づいて、推進装置を制御する。
【0047】
制御部2は、船舶10の現在位置が目標位置に一致するように推進装置を制御してもよい。制御部2は、船舶10の現在方位が目標方位に一致するように推進装置を制御してもよい。
【0048】
操作部5は、船舶10の回転角度、船舶10の前後方向の移動距離、及び、船舶10の左右方向の移動距離の少なくとも1つを操作量として受け付けてよい。操作部5は、船舶10の回転角度、船舶10の前後方向の移動距離、及び、船舶10の左右方向の移動距離のうち選択された1つを操作量として受け付けてよい。操作部5は、操作量を固定値に設定してよい。
【0049】
制御部2は、操作部5が操作量の入力を受け付けた後、所定時間が経過することを含む第1条件が満たされるまで、次の入力を無効にしてよい。制御部2は、操作部5が操作量の入力を受け付けた後、方位偏差が第1所定値以下になること、又は、位置偏差が第2所定値以下になることのうち少なくとも1つを含む第2条件が満たされるまで、次の入力を無効にしてよい。制御部2は、第1条件又は第2条件のうち少なくとも1つの条件が満たされた場合に、次の入力を有効にしてもよい。
【0050】
本開示に係る実施形態を諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形及び修正を行うことが容易であることに注意されたい。したがって、これらの変形及び修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段又は各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段又はステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 操船制御装置(2:制御部、3:位置情報取得部、4:方位情報取得部、5:操作部、6:記憶部)
10 船舶
21~23 第1~第3アクチュエータ
31~33 第1~第3推進装置