(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】冷却ユニット
(51)【国際特許分類】
H01L 23/467 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
H01L23/46 C
(21)【出願番号】P 2020119351
(22)【出願日】2020-07-10
【審査請求日】2022-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植山 稔正
(72)【発明者】
【氏名】芝 健史郎
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-187754(JP,A)
【文献】米国特許第10401681(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L23/29
H01L23/34 -23/36
H01L23/373-23/427
H01L23/44
H01L23/467-23/473
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却ユニットであって、
複数の冷却フィンを有する被冷却部材と、
前記被冷却部材に固定されており、複数の前記冷却フィンに対向する隔壁を有し、複数の前記冷却フィンの周囲に流体を流すダクトと、
前記隔壁と複数の前記冷却フィンの間に配置されており、前記隔壁に固定されている緩衝材と、
を有
し、
前記隔壁の内側表面が、凹部を有しており、
前記緩衝材が前記凹部内に配置されており、
前記緩衝材が、前記内側表面の前記凹部の周囲の部分よりも複数の前記冷却フィンに近い側に突出している、
冷却ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、冷却ユニットに関する。
【0002】
特許文献1には、自動車用エンジンの吸気ダクトが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の冷却フィンを有する被冷却部材を冷却する場合に、被冷却部材にダクトを取り付けることができる。すなわち、ダクトの隔壁が複数の冷却フィンに対向するようにダクトを被冷却部材に取り付け、複数の冷却フィンの周囲に流体を流すことができる。この構成によれば、冷却フィンを流体によって効率的に冷却することができる。但し、この構造では、複数の冷却フィンに対向する隔壁に反りが生じた場合に、隔壁が冷却フィンに接触する。隔壁が冷却フィンに接触すると、その接触部が異音の発生源となる。本明細書では、冷却ユニットにおいて、異音の発生を抑制する技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する冷却ユニットは、被冷却部材とダクトと緩衝材を有している。前記被冷却部材は、複数の冷却フィンを有する。前記ダクトは、前記被冷却部材に固定されており、複数の前記冷却フィンに対向する隔壁を有し、複数の前記冷却フィンの周囲に流体を流す。前記緩衝材は、前記隔壁と複数の前記冷却フィンの間に配置されており、前記隔壁に固定されている。
【0006】
なお、上記の流体は、気体であってもよいし液体であってもよい。
【0007】
この冷却ユニットは、ダクトの隔壁に固定された緩衝材を有している。緩衝材は、隔壁と複数の冷却フィンの間に配置されている。したがって、隔壁に反りが生じると、緩衝材が冷却フィンに接触する。これによって、隔壁が冷却フィンに直接接触することが防止される。緩衝材は柔軟性を有するので、緩衝材が冷却フィンに接触してもその接触部は異音の発生源とはならない。したがって、この冷却ユニットによれば、異音の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書が開示する技術要素を、以下に列記する。なお、以下の各技術要素は、それぞれ独立して有用なものである。
【0010】
本明細書が開示する一例の冷却ユニットでは、複数の前記冷却フィンが、前記隔壁に沿う一方向に線状に伸びていてもよい。前記ダクトが、前記一方向に沿って前記流体を流すように構成されていてもよい。
【0011】
この構成によれば、複数の冷却フィンを効率的に冷却することができる。
【0012】
本明細書が開示する一例の冷却ユニットでは、前記緩衝材がその内部に前記流体を通さない構造を有していてもよい。
【0013】
この構成によれば、複数の冷却フィンの周囲に流体が流れやすくなり、複数の冷却フィンを効率的に冷却することができる。
【0014】
本明細書が開示する一例の冷却ユニットでは、前記緩衝材が、独立気泡のスポンジにより構成されていてもよい。
【0015】
独立気泡のスポンジは、その内部に流体をほとんど通さない。したがって、この構成によれば、複数の冷却フィンの周囲に流体が流れやすくなり、複数の冷却フィンを効率的に冷却することができる。
【0016】
本明細書が開示する一例の冷却ユニットでは、前記隔壁の内側表面が、凹部を有していてもよい。前記緩衝材が前記凹部内に配置されていてもよい。
【0017】
なお、前記内側表面は、前記隔壁の表面のうち複数の冷却フィンに近い方の表面(複数の冷却フィンに対向する表面)である。
【0018】
本明細書が開示する一例の冷却ユニットでは、前記緩衝材が、前記内側表面の前記凹部の周囲の部分よりも複数の前記冷却フィンに近い側に突出していてもよい。
【0019】
この構成によれば、緩衝材と複数の冷却フィンの間をより狭くすることができ、複数の冷却フィンの周囲に流体が流れやすくなり、複数の冷却フィンを効率的に冷却することができる。
【0020】
図1に示す冷却ユニット10は、車両(本実施形態では、電動車量)に搭載されている。なお、
図1を含む各図において、矢印UPは車両上方向を示し、矢印FRは車両前方向(進行方向)を示し、矢印RHは車両右方向を示す。冷却ユニット10は、DC-DCコンバータ12と、ダクト20と、ブロワ30を有している。DC-DCコンバータ12は、車両のモータに電力を供給する。ダクト20は、DC-DCコンバータ12に取り付けられている。ブロワ30は、空気をダクト20内に送り込む。ダクト20の内部を流れる空気は、DC-DCコンバータ12を冷却する。
【0021】
図2、3に示すように、DC-DCコンバータ12は、ヒートシンク14を有している。ヒートシンク14は、DC-DCコンバータ12の後側の表面に設けられている。ヒートシンク14は、DC-DCコンバータ12の内部で生じる熱を放熱する。ヒートシンク14は、ベースプレート14aと、複数の冷却フィン14bを有している。各冷却フィン14bは、ベースプレート14a上に立設されている。各冷却フィン14bは、ベースプレート14aから後側に向かって突出している。各冷却フィン14bは、上下方向に沿って直線状に伸びている。
【0022】
図1に示すように、ダクト20は、流入口20aから排出口20bまで伸びる筒状の樹脂部品である。ダクト20は、上流部22と、メイン部24と、下流部26を有している。メイン部24は、箱形状を有している。上流部22は、流入口20aとメイン部24を接続している。下流部26は、メイン部24と排出口20bを接続している。
図2~4に示すように、メイン部24の前側の隔壁24aには矩形の貫通孔28が設けられている。ダクト20は、貫通孔28内に複数の冷却フィン14bが挿入された状態でDC-DCコンバータ12に固定されている。したがって、複数の冷却フィン14bは、箱状のメイン部24内に収容されている。
図2、3に示すように、メイン部24の後側の隔壁24bは、複数の冷却フィン14bの先端と対向している。ダクト20とDC-DCコンバータ12の接続箇所には、パッキン40が設けられている。パッキン40は、ダクト20とDC-DCコンバータ12の接続箇所を密閉している。パッキン40によって、接続箇所における空気の漏れが防止される。
【0023】
図1~3に示すように、隔壁24bには、段差部60が形成されている。
図2、3に示すように、段差部60は、隔壁24bがその厚さ方向に変位している部分である。段差部60によって、隔壁24bが補強されている。段差部60によって、隔壁24bの反りが抑制される。このように段差部60が設けられていることで、段差部60によって囲まれた範囲内の隔壁24bの内側表面に凹部62が形成されている。凹部62は、複数の冷却フィン14bに対向する位置に配置されている。
【0024】
図2、3に示すように、ダクト20の隔壁24bの内側表面に、緩衝材70が固定されている。緩衝材70は、凹部62内に固定されている。緩衝材70は、隔壁24bと複数の冷却フィン14bの間に配置されている。緩衝材70と複数の冷却フィン14bの間には、間隔C2が設けられている。緩衝材70は、隔壁24bの内側表面のうちの凹部62の周囲の部分64よりも複数の冷却フィン14bに近い方に突出している。このため、緩衝材70と複数の冷却フィン14bの間の間隔C2は狭い。緩衝材70は、独立気泡のスポンジにより構成されている。したがって、緩衝材70は、その内部に気体をほとんど通さない。
【0025】
図1、4に示すように、ブロワ30は、ダクト20の流入口20aに接続されている。ブロワ30は、電動のブロワであり、ダクト20の流入口20a内に空気を送り込む。ダクト20とブロワ30の接続箇所には、パッキン42が設けられている。パッキン42は、ダクト20とブロワ30の接続箇所を密閉している。パッキン42によって、接続箇所における空気の漏れが防止される。
【0026】
ブロワ30が動作すると、
図4の矢印100に示すように、ブロワ30からダクト20の上流部22に空気が送り込まれる。上流部22内を流れる空気は、
図3、4の矢印100、102に示すように、上側からメイン部24内に流入する。メイン部24内では、ダクト20とヒートシンク14によって囲まれた空間によって空気の流路が構成されている。メイン部24内では、空気は、上から下へ流れる。空気がメイン部24内を流れるときに、空気と冷却フィン14bとの熱交換によって冷却フィン14bが冷却される。すなわち、メイン部24内でDC-DCコンバータ12が冷却される。上述したように、複数の冷却フィン14bは上下方向に沿って直線状に伸びている。メイン部24内では、冷却フィン14bが伸びる方向(上下方向)に沿って空気が流れる。このため、メイン部24内では、空気が滞留し難く、冷却フィン14bが空気によって効率的に冷却される。また、上述したように、緩衝材70は、その内部に気体をほとんど通さない。したがって、メイン部24内では、空気が、緩衝材70を避けて、ヒートシンク14の間の間隔C1(
図2参照)、及び、緩衝材70と複数の冷却フィン14bの間の間隔C2に流れる。このように、緩衝材70がその内部に空気をほとんど通さないことで、間隔C1、C2により空気が流れやすくなっている。さらに、緩衝材70が凹部62の周囲の部分64よりも冷却フィン14bに近い側に突出しているので、間隔C2は狭い。このため、メイン部24内では、空気は、ヒートシンク14の間の間隔C1により流れ易い。このように、冷却フィン14bの間の間隔C1により多くの空気が流れるようになっているので、冷却フィン14bをより効率的に冷却することができる。
図3の矢印102に示すように、メイン部24を通過した空気は、下流部26を通って排出口20bから外部に排出される。
【0027】
隔壁24bは面積が広い平板形状を有しているため、反り易い。なお、段差部60によって隔壁24bが補強されているものの、隔壁24bで反りが生じる場合がある。例えば、ダクト20を射出成型によって成形するときに、隔壁24bで反りが生じやすい。緩衝材70を有さない冷却ユニット(以下、比較例の冷却ユニットという)では、隔壁24bで反りが生じているときに、異音が発生し易い。これに対し、実施形態の冷却ユニット10では、隔壁24bで反りが発生しても、異音の発生を抑制できる。以下に、比較例の冷却ユニットと実施形態の冷却ユニット10の特性について説明する。
【0028】
比較例の冷却ユニットは、隔壁24bと冷却フィン14bの間に緩衝材を有さない。したがって、隔壁24bが反ることで隔壁24bが冷却フィン14bに近づくと、
図5に示すように、隔壁24bが一部の冷却フィン14bと接触する。このように隔壁24bが一部の冷却フィン14bと接触していると、振動により隔壁24bと冷却フィン14bとの接触部が擦れて異音が発生する。比較例の冷却ユニットにおいて異音の発生を防止するためには、隔壁24bと冷却フィン14bとの間の間隔C3を広く確保し、隔壁24bが反っても隔壁24bが冷却フィン14bと接触しないようにする必要がある。しかしながら、間隔C3を広く確保すると、隔壁24bに反りが生じていないときに間隔C3に空気が流れやすくなり、冷却フィン14bの間の間隔C1(
図2参照)に空気が流れ難くなる。このため、冷却フィン14bの冷却効率が低下する。
【0029】
これに対し、実施形態の冷却ユニット10は、隔壁24bと冷却フィン14bの間に緩衝材70を有する。したがって、隔壁24bが反ることで隔壁24bが冷却フィン14bに近づくと、
図6に示すように、緩衝材70が一部の冷却フィン14bと接触する。緩衝材70が柔軟性を有するので、緩衝材70と冷却フィン14bが接触していても、その接触部で異音は発生しない。このように、実施形態の冷却ユニット10では、緩衝材70が冷却フィン14bと接触しても異音が発生しないので、緩衝材70と冷却フィン14bの間の間隔C2(
図2、3参照)を狭くすることができる。したがって、上述したように、冷却フィン14bの間の間隔C1に空気が流れ易く、効率的に冷却フィン14bを冷却することができる。
【0030】
なお、上述した実施形態では、緩衝材70が独立気泡のスポンジにより構成されていたが、緩衝材70がその他の部材により構成されていてもよい。但し、緩衝材70が、独立気泡のスポンジ構造、または、その他の内部に気体を通さない構造を有していると、冷却フィン14bをより効率的に冷却することができる。
【0031】
また、上述した実施形態では、ダクト20の内部に空気を流したが、ダクト20の内部に空気以外の気体を流してもよい。また、ダクト20の内部に液体(例えば、水)を流してもよい。すなわち、冷却ユニット10が液冷式であってもよい。
【0032】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0033】
10:冷却ユニット
12:DC-DCコンバータ
14:ヒートシンク
14b:冷却フィン
20:ダクト
22:上流部
24:メイン部
24b:隔壁
26:下流部
28:貫通孔
30:ブロワ
60:段差部
62:凹部
70:緩衝材