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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】プラントのアラーム情報管理システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20231003BHJP
   B21C 51/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
G05B23/02 301Y
B21C51/00 Q
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020120688
(22)【出願日】2020-07-14
(65)【公開番号】P2022017874
(43)【公開日】2022-01-26
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(72)【発明者】
【氏名】長尾 英紀
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/132479(WO,A1)
【文献】特開2018-151955(JP,A)
【文献】特開2002-236516(JP,A)
【文献】特開2008-112209(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0323926(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
B21C 51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材の加工プロセスが行われるプラントのアラーム情報管理システムであって、
前記加工プロセスの全体を管理し、前記加工プロセスが停止されたときにプラント停止情報を出力する上位制御階層と、
前記上位制御階層に接続され、前記プラントを構成する加工設備を制御するコントローラ群およびその周辺機器を含む中位制御階層と、
前記上位制御階層に直接的にまたは前記中位制御階層を介して間接的に接続され、前記加工プロセスが行われる加工ラインに設けられたアクチュエータ群および特殊計装品群を含む下位制御階層と、
前記上位、中位および下位制御階層に接続され、前記上位制御階層からのアラーム情報を示す上位層情報、前記中位制御階層に含まれる前記コントローラ群およびその周辺機器の少なくとも一方から出力されたアラーム情報を示す中位層情報、および、前記下位制御階層に含まれる前記アクチュエータ群および特殊計装品群の少なくとも一方から出力されたアラーム情報を示す下位層情報の解析処理を行う解析装置と、
を備え、
前記解析装置は、前記解析処理において、
前記上位層、中位層および下位層情報に基づいて、前記加工プロセスの停止に関わるアラーム情報が出力された合計時間を示すアラーム期間を制御階層ごとに計算し、
前記プラント停止情報に基づいて、前記加工プロセスの停止期間を計算し、
前記アラーム期間および前記停止期間に基づいて、前記停止期間に占める前記アラーム期間の制御階層別の割合を、前記加工プロセスの停止に対する制御階層の各影響度として計算する
ことを特徴とするプラントのアラーム情報管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載のプラントのアラーム情報管理システムであって、
前記解析装置に接続された表示装置を更に備え、
前記解析装置は、前記制御階層の各影響度を含む前記解析処理の結果を前記表示装置に表示する表示処理を更に行う
ことを特徴とするプラントのアラーム情報管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属材の加工プロセスが行われるプラントにおけるアラーム情報を管理するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
金属材の加工プロセスが行われるプラントでは、アラーム情報(故障情報)を収集するのが一般的である。アラーム情報としては、加工プロセスの全体を管理する計算機の異常を示すもの、加工プロセスを行う加工設備の異常を示すもの、加工ラインに設置されたセンサの異常を示すもの等が例示される。
【0003】
アラーム情報を収集する従来技術として、国際公開第2016/132479号明細書に記載のシステムが例示される。この従来システムは、上述した計算機と、上述した加工設備を制御するコントローラと、計算機およびコントローラからアラーム情報を収集するアラーム管理装置と、を備えている。計算機とコントローラで取り扱われるアラーム情報のデータ形式が異なる場合、これらの解析に手間を要する。そこで、この従来システムでは、アラーム管理装置がアラーム情報に対して共通フォーマットを適用し、解析に必要な情報を抽出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2016/132479号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プラント全体を見渡した場合、アラーム情報の出処は3つの制御階層に大別される。第1の制御階層としては、上述した計算機を含む層が例示される。第2の制御階層としては、上述したコントローラを含む層が例示される。第3の制御階層としては、上述したコントローラにより制御される加工設備や、上述したセンサを含む層が例示される。
【0006】
アラーム情報の出処を制御階層別に分けると、プラント全体のアラーム情報が収集された場合に、制御階層に着目した解析が可能となる。しかしながら、従来におけるアラーム情報の解析は、アラーム情報が出された原因の特定に専ら注力されており、プラント全体を停止させるような故障に対して各制御階層がどの程度影響を及ぼしたかという観点からの解析を行ったものはない。故に、従来とは異なる観点からの評価を可能とする技術の開発に対する要求があるといえる。
【0007】
本発明の1つの目的は、プラント全体を停止させるような故障に対してそれぞれの制御階層がどの程度影響を及ぼしたのかを自動的に解析することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、金属材の加工プロセスが行われるプラントのアラーム情報管理システムであり、次の特徴を有する。
前記アラーム情報管理システムは、上位制御階層と、中位制御階層と、下位制御階層と、解析装置と、を備える。
前記上位制御階層は、前記加工プロセスの全体を管理する。前記上位制御階層は、前記加工プロセスが停止されたときにプラント停止情報を出力する。
前記中位制御階層は、前記上位制御階層に接続される。前記中位制御階層は、前記プラントを構成する加工設備を制御するコントローラ群およびその周辺機器を含む
前記下位制御階層は、前記上位制御階層に直接的にまたは前記中位制御階層を介して間接的に接続される。前記下位制御階層は、前記加工プロセスが行われる加工ラインに設けられるアクチュエータ群および特殊計装品群を含む
前記解析装置は、前記上位、中位および下位制御階層に接続される。前記解析装置は、上位層情報、中位層情報および下位層情報の解析処理を行う。前記上位層情報は、前記上位制御階層からのアラーム情報を示す。前記中位層情報は、前記中位制御階層に含まれる前記コントローラ群およびその周辺機器の少なくとも一方から出力されたアラーム情報を示す。前記下位層情報は、前記下位制御階層に含まれる前記アクチュエータ群および特殊計装品群の少なくとも一方から出力されたアラーム情報を示す。
前記解析装置は、前記解析処理において、
前記上位層、中位層および下位層情報に基づいて、前記加工プロセスの停止に関わるアラーム情報が出力された合計時間を示すアラーム期間を制御階層ごとに計算し、
前記プラント停止情報に基づいて、前記加工プロセスの停止期間を計算し、
前記アラーム期間および前記停止期間に基づいて、前記停止期間に占める前記アラーム期間の制御階層別の割合を、前記加工プロセスの停止に対する制御階層の各影響度として計算する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、解析装置において解析処理が行われる。解析処理では、加工プロセスの停止に関わるアラーム情報が出力された合計時間を示すアラーム期間が上位層、中位層および下位層情報に基づいて計算される。また、プラント停止情報に基づいて、加工プロセスの停止期間が計算される。更に、制御階層ごとのアラーム期間と、停止期間とに基づいて、停止期間に占めるアラーム期間の制御階層別の割合が、加工プロセスの停止に対する制御階層の各影響度として計算される。故に、本発明によれば、プラント全体を停止させるような故障に対して各制御階層がどの程度影響を及ぼしたのかを自動的に解析することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る管理システムの構成例を示す図である。
図2】プラント全体が正常に稼働している間の情報の流れの一例を示す図である。
図3】アクチュエータ群において故障が発生したときの情報の流れの一例を示す図である。
図4】特殊計装品群において故障が発生したときの情報の流れの一例を示す図である。
図5】中位制御階層において故障が発生したときの情報の流れの一例を示す図である。
図6】上位制御階層において故障が発生したときの情報の流れの一例を示す図である。
図7】解析装置において定期的に行われる処理の流れを示すフローチャートである。
図8】アラーム期間および停止期間の計算例を説明する図である。
図9】表示装置における表示例を示す図である。
図10】表示装置における別の表示例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態に係るプラントのアラーム情報管理システム(以下、単に「管理システム」とも称す。)ついて説明する。
【0012】
1.アラーム情報管理システムの構成例
図1は、本発明の実施の形態に係る管理システムの構成例を示す図である。図1に示される例では、管理システム1が、上位制御階層2(LV2)と、中位制御階層3(LV1)と、アクチュエータ群4と、特殊計装品群5と、解析装置6と、表示装置7と、記憶装置8a~8eと、を備えている。
【0013】
上位制御階層2は、プラントにおいて行われる加工プロセスの全体を管理する計算機群およびそれらの周辺機器を含む。計算機群の周辺機器としては、データベースおよびルータが例示される。データベースには、加工プロセスに関連する情報(例えば、金属材の情報、金属材の加工条件の情報)が格納されている。ルータには、中位制御階層3、アクチュエータ群4、特殊計装品群5および解析装置6が接続されている。計算機群の周辺機器には、記憶装置8aも含まれる。記憶装置8aには、加工プロセスの最中に上位制御階層2が外部に出力し、または、当該外部から上位制御階層2に入力された各種情報が格納される。
【0014】
中位制御階層3は、プラントを構成する加工設備を制御するコントローラ群およびその周辺機器を含む。加工設備としては、再加熱炉、スケールブレーカー、粗圧延機、コイルボックス、クロップ切断機、仕上げ圧延機、ランアウトテーブル、巻取り機および搬送コンベアが例示される。コントローラ群の周辺機器としては、記憶装置8bが例示される。記憶装置8bには、加工プロセスの最中に中位制御階層3が外部に出力し、または、当該外部から中位制御階層3に入力された各種情報が格納される。
【0015】
アクチュエータ群4(ACT)は、加工設備を駆動するためのモータ、バルブ、電源装置などの駆動装置である。特殊計装品群5(SI)は、加工ラインに設けられるセンサその他の計装品である。アクチュエータ群4および特殊計装品群5は、両者に共通する制御LANに接続されている。この共通制御LANは、上位制御階層2に接続されている制御LANや、中位制御階層3に接続されているそれとは異なる。アクチュエータ群4および特殊計装品群5は、「下位制御階層(LV0)」に分類される。
【0016】
アクチュエータ群4は、記憶装置8cを有している。特殊計装品群5は、記憶装置8dを有している。記憶装置8cには、加工プロセスの最中にアクチュエータ群4が外部に出力し、または、当該外部からアクチュエータ群4に入力された各種情報が格納される。記憶装置8dの機能は、記憶装置8cのそれと同じである。記憶装置8cおよび8dは、省略されていてもよい。つまり、アクチュエータ群4は記憶装置8cを有していなくてもよいし、特殊計装品群5は記憶装置8dを有していなくてもよい。
【0017】
解析装置6は、上位制御階層2、中位制御階層3および下位制御階層に、それぞれの制御階層の制御LANを介して接続されている。解析装置6は、これらの制御階層が出力した各種情報を制御LAN経由で適宜受け取り、記憶装置8eに格納する。解析装置6は、更に、記憶装置8eに格納された各種情報を用いた解析処理を定期的に行う。解析装置6は、また更に、解析処理の結果を表示装置7に表示するための処理を行う。解析装置6が定期的に行う処理の詳細は後述される。
【0018】
上述した3区分の制御階層から解析装置6が受け取る各種情報としては、アラーム情報およびプラント停止情報が例示される。アラーム情報は、これらの制御階層の何れかから出力された故障に関する情報である。アラーム情報は、軽微なものから、プラント全体を停止させるような重大なものまで多岐にわたる。プラント停止情報は、プラント全体が停止した場合に上位制御階層2から出力される情報である。
【0019】
表示装置7は、解析装置6に接続されている。表示装置7と解析装置6の接続方式は有線でもよいし無線でもよい。両装置が無線方式で接続される場合、例えば、解析装置6はプラントの近傍に設置され、表示装置7はプラントから離れた管理室に設置される。この管理室には、例えば、プラントの遠隔作業者、製品の品質管理者が駐在する。表示装置7は、解析装置6が行った解析処理の結果を表示する。
【0020】
2.管理システムにおける情報の流れ
次に、上述した管理システムの構成例において、制御階層の間、または、制御階層と解析装置の間でやり取りされる各種情報の流れについて説明する。
【0021】
2-1.正常稼働時
図2は、プラント全体が正常に稼働している間の情報の流れの一例を示す図である。図2に示される例では、上位制御階層2から中位制御階層3に加工指令FPIが出力される。加工指令FPIは、加工プロセスに関連する情報に基づいて生成された情報である。中位制御階層3は、加工指令FPIに基づいて、各加工設備のアクチュエータの制御指令CTIを生成する。制御指令CTIは、中位制御階層3からアクチュエータ群4に出力される。
【0022】
プラントの稼働中、特殊計装品群5は、加工プロセスの状況を検出する。特殊計装品群5が検出した加工プロセスの実績情報HSDは、中位制御階層3および上位制御階層2に出力される。中位制御階層3に出力された実績情報HSDは、記憶装置8bに適宜格納され、コントローラ群が実行するフィードバック制御やシーケンス制御における計算に用いられる。上位制御階層2に出力された実績情報HSDは、記憶装置8aに適宜格納され、計算機群によるプラント全体の管理に用いられる。
【0023】
2-2.故障時
2-2-1.下位制御階層の故障時
図3は、アクチュエータ群4において故障が発生したときの情報の流れの一例を示す図である。図3に示される例では、アクチュエータ群4から中位制御階層3にアラーム情報ALM4が出力される。アラーム情報ALM4は、アクチュエータ群4の故障に関する情報である。アラーム情報ALM4の生成および出力は、故障の発生源であるアクチュエータにおいて行われる。アラーム情報ALM4が生成されるタイミングは、故障の発生が検出されたタイミングと同時でもよいし、発生源であるアクチュエータの作動が停止されるタイミングでもよい。
【0024】
中位制御階層3は、アクチュエータ群4から受け取ったアラーム情報ALM4を、上位制御階層2に出力する。中位制御階層3は、アクチュエータ群4から受け取ったアラーム情報ALM4のうちの一部のみを、上位制御階層2に出力してもよい。
【0025】
アクチュエータ群4は、アラーム情報ALM4を解析装置6にも出力する。解析装置6は、アラーム情報ALM4を記憶装置8eに適宜格納する。上位制御階層2は、アラーム情報ALM4がプラント全体を停止させるような重大な情報を含む場合、プラント停止情報ALPを生成し、これを解析装置6に出力する。解析装置6は、上位制御階層2から受け取ったプラント停止情報ALPを記憶装置8eに適宜格納する。つまり、アラーム情報ALM4がプラントの停止に関わる情報である場合、記憶装置8eにはアラーム情報ALM4およびプラント停止情報ALPが格納される。そうでない場合、記憶装置8eにはアラーム情報ALM4のみが格納される。
【0026】
アラーム情報ALM4の生成および出力は、中位制御階層3において行われてもよい。この場合、中位制御階層3は、実績情報HSDに基づいてアクチュエータ群4の故障を検出する。中位制御階層3がアラーム情報ALM4を生成した場合、中位制御階層3はこれを上位制御階層2および解析装置6に出力する。アラーム情報ALM4を受け取った上位制御階層2および解析装置6の動作例については、この直前で説明した例と同じである。
【0027】
図4は、特殊計装品群5において故障が発生したときの情報の流れの一例を示す図である。図4に示される例では、特殊計装品群5から中位制御階層3にアラーム情報ALM5が出力される。アラーム情報ALM5は、特殊計装品群5の故障に関する情報である。アラーム情報ALM5の生成および出力は、故障の発生源である特殊計装品において行われる。アラーム情報ALM5が生成されるタイミングは、故障の発生が検出されたタイミングと同時でもよいし、発生源である特殊計装品の作動が停止されるタイミングでもよい。
【0028】
中位制御階層3は、特殊計装品群5から受け取ったアラーム情報ALM5を、上位制御階層2に出力する。特殊計装品群5から受け取ったアラーム情報ALM5のうちの一部のみが、上位制御階層2に出力されてもよい。ここまでの説明は、図3に示した例と同じである。図4に示される例では、更に、特殊計装品群5から直接、上位制御階層2にアラーム情報ALM5が出力される。つまり、この例では、特殊計装品群5から直接的または間接的に、上位制御階層2にアラーム情報ALM5が出力される。
【0029】
特殊計装品群5は、アラーム情報ALM5を解析装置6にも出力する。解析装置6は、アラーム情報ALM5を記憶装置8eに適宜格納する。上位制御階層2は、アラーム情報ALM5がプラント全体を停止させるような重大な情報を含む場合、プラント停止情報ALPを生成し、これを解析装置6に出力する。解析装置6は、上位制御階層2から受け取ったプラント停止情報ALPを記憶装置8eに適宜格納する。このように、アラーム情報ALM5がプラントの停止に関わる情報である場合、記憶装置8eにはアラーム情報ALM5およびプラント停止情報ALPが格納される。
【0030】
アラーム情報ALM5の生成および出力は、中位制御階層3において行われてもよい。この場合、中位制御階層3は、実績情報HSDに基づいて特殊計装品群5の故障を検出する。中位制御階層3がアラーム情報ALM5を生成した場合、中位制御階層3はこれを上位制御階層2および解析装置6に出力する。アラーム情報ALM5を受け取った上位制御階層2および解析装置6の動作例については、この直前で説明した例と同じである。
【0031】
2-2-2.中位制御階層の故障時
図5は、中位制御階層3において故障が発生したときの情報の流れの一例を示す図である。図5に示される例では、中位制御階層3から上位制御階層2にアラーム情報ALM3が出力される。アラーム情報ALM3は、中位制御階層3の故障に関する情報である。アラーム情報ALM3の生成および出力は、故障の発生源であるコントローラにおいて行われてもよいし、当該発生源と制御LANを介して接続されている別のコントローラにおいて行われてもよい。アラーム情報ALM5が生成されるタイミングは、故障の発生が検出されたタイミングと同時でもよいし、発生源であるコントローラの作動が停止されるタイミングでもよい。
【0032】
中位制御階層3は、アラーム情報ALM3を解析装置6にも出力する。解析装置6は、アラーム情報ALM3を記憶装置8eに適宜格納する。上位制御階層2は、アラーム情報ALM3がプラント全体を停止させるような重大な情報を含む場合、プラント停止情報ALPを生成し、これを解析装置6に出力する。解析装置6は、上位制御階層2から受け取ったプラント停止情報ALPを記憶装置8eに適宜格納する。このように、アラーム情報ALM3がプラントの停止に関わる情報である場合、記憶装置8eにはアラーム情報ALM3およびプラント停止情報ALPが格納される。
【0033】
2-2-3.上位制御階層の故障時
図6は、上位制御階層2において故障が発生したときの情報の流れの一例を示す図である。図6に示される例では、上位制御階層2においてアラーム情報ALM2が生成および出力される。アラーム情報ALM2は、上位制御階層2の故障に関する情報である。アラーム情報ALM2の生成および出力は、故障の発生源である計算機において行われてもよいし、当該発生源と制御LANを介して接続されている別の計算機(例えば、バックアップ用の計算機)において行われてもよい。アラーム情報ALM2が生成されるタイミングは、故障の発生が検出されたタイミングと同時である。
【0034】
上位制御階層2は、アラーム情報ALM2を解析装置6にも出力する。解析装置6は、アラーム情報ALM2を記憶装置8eに適宜格納する。上位制御階層2は、アラーム情報ALM2がプラント全体を停止させるような重大な情報を含む場合、プラント停止情報ALPを生成し、これを解析装置6に出力する。解析装置6は、上位制御階層2から受け取ったプラント停止情報ALPを記憶装置8eに適宜格納する。このように、アラーム情報ALM2がプラントの停止に関わる情報である場合、記憶装置8eにはアラーム情報ALM2およびプラント停止情報ALPが格納される。
【0035】
3.解析装置が行う処理
次に、解析装置6において定期的に行われる処理(解析処理および表示処理)について説明する。
【0036】
解析処理は、記憶装置8eに格納されたアラーム情報ALM2~ALM5と、プラント停止情報ALPと、を用いて行われる。なお、解析の対象期間(すなわち、アラーム情報およびプラント停止情報を抽出する期間)は、事前に設定されている。表示処理は、解析処理の実行に付随して行われる。表示処理は、解析処理の結果を表示装置7に表示するための処理である。解析処理の実行に付随して行われる他の処理として、記録処理が例示される。記録処理は、解析処理の結果を記憶装置8eに格納する処理である。
【0037】
図7は、解析装置6において定期的に行われる処理の流れを示すフローチャートである。図7に示されるフローチャートでは、まず、解析の対象期間におけるアラーム情報ALMn(n=2~5)と、プラント停止情報ALPとが読み出される(ステップS1)。
【0038】
ステップS1に続いて、アラーム期間APn(n=2~5)が計算される(ステップS2)。ここで、アラーム期間APnとは、プラント全体を停止させる重大なアラーム情報ALMnが出されていた期間である。アラーム期間APnの計算は、ステップS1で読み出されたアラーム情報ALMnを用いて行われる。
【0039】
ステップS2に続いて、プラント全体の停止期間PDTが計算される(ステップS3)。停止期間PDTの計算は、ステップS1で読み出されたプラント停止情報ALPを用いて行われる。
【0040】
図8は、アラーム期間APnおよび停止期間PDTの計算例を説明する図である。図8の上段には、中位制御階層(LV1)を構成する3台のコントローラPLCa~PLCcの状態が描かれている。“NML”は正常状態を示し、“BKDN”は故障状態を示す。つまり、図8は、時刻t1から時刻t2までの期間、コントローラPLCaが故障状態にあったことを示している。また、時刻t3から時刻t4までの期間、コントローラPLCbが故障状態にあり、時刻t5から時刻t6までの期間、コントローラPLCcが故障状態にあったことを示している。
【0041】
図8に示す例では、コントローラPLCa~PLCcの故障状態が何れもプラント全体を停止させるような重大なものであったと仮定する。そうすると、中位制御階層3全体としては、時刻t3から時刻t6までの期間がアラーム期間AP3であったとして計算される。なお、コントローラPLCa~PLCcの故障状態が何れも重大な故障状態でなかった時間帯が時刻t3から時刻t6までの期間に含まれる場合、その時間帯はアラーム期間AP3から除かれる。
【0042】
アラーム期間AP3の計算手法を、他の制御階層でのアラーム期間の計算に適用する。そうすると、図8に示されるように、上位制御階層2全体でのアラーム期間AP2は、時刻t7から時刻t8までの期間として計算される。また、アクチュエータ群4全体でのアラーム期間AP4は、時刻t9から時刻t10までの期間として計算される。更に、特殊計装品群5全体でのアラーム期間AP5は、時刻t11から時刻t12までの期間に、時刻t13から時刻t14までの期間を加えることで計算される。
【0043】
図8に示す例では、停止期間PDTは時刻t3から時刻t15までの期間として計算される。時刻t15は、プラントが停止状態から復帰した時刻である。なお、時刻t10と時刻t15が一致していない理由は、プラントの再稼働に時間を要したためである。
【0044】
再び図7に戻り、解析装置6で行われる処理の流れの説明を続ける。ステップS3に続いて、影響度IRn(n=2~5)が計算される(ステップS4)。影響度IRnは、停止期間PDTに占めるアラーム期間APnの割合であり、制御階層ごとに計算される(すなわち、IRn=APn/PDT)。ステップS2~S4の一連の処理は、「解析処理」に相当する。
【0045】
ステップS4に続いて、解析結果の記録および表示が行われる(ステップS5)。ステップS5の処理は、「記録処理」および「表示処理」に相当する。図9は、表示装置7における表示例を示す図である。図9に示される例では、解析結果として影響度IRnが円グラフで表示される。また、円グラフの下方には、アラーム期間APと停止期間PDTの詳細を示すタイムチャートが表示される。
【0046】
図10は、表示装置7における別の表示例を示す図である。図10に示される例では、円グラフの下方に棒グラフが表示される。この棒グラフは、解析の対象期間を細分化(具体的には、12分割)し、単位期間UP1~UP12ごとのアラーム期間APnの合計を制御階層ごとに示したものである。なお、単位期間UPとしては、日、週、月および年が例示される。
【0047】
4.効果
以上説明した実施の形態に係る管理システムによれば、制御階層ごとのアラーム情報ALM2~ALM25と、プラント停止情報ALPとが解析装置6に集約される。そして、解析装置6において解析処理が行われることにより、プラント全体を停止させるような故障に対する制御階層の影響度IRnが自動的に計算される。したがって、この影響度IRnを用い、プラント全体を停止させる故障の発生を抑えるために、どの制御階層での故障の発生を優先して抑えるべきなのかといった新たな観点からの評価を行うことが可能となる。また、影響度IRnを表示装置7に表示することで、評価を行う作業者や品質管理者の利便性を高めることも可能となる。
【符号の説明】
【0048】
1 アラーム管理装置システム
2 上位制御階層
3 中位制御階層
4 アクチュエータ群
5 特殊計装品群
6 解析装置
7 表示装置
8a~8e 記憶装置
ALM2~ALM5 アラーム情報
ALP プラント停止情報
AP1,AP2,APA,APS アラーム期間
APP 停止期間
CTI 制御指令
FPI 加工指令
HSD 実績情報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10