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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】荷役車両の制御装置
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20231003BHJP
【FI】
B66F9/24 L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020132533
(22)【出願日】2020-08-04
(65)【公開番号】P2022029275
(43)【公開日】2022-02-17
【審査請求日】2022-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】円山 尚
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-058856(JP,A)
【文献】特開昭61-051486(JP,A)
【文献】特開2008-195519(JP,A)
【文献】特開2005-112540(JP,A)
【文献】特開昭62-004190(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0229988(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作動油の給排により対象物を昇降させる昇降用のリフトシリンダのストローク量を検出するストローク検出部と、
前記リフトシリンダの内圧を検出する内圧検出部と、
前記ストローク検出部で検出された前記ストローク量及び前記内圧検出部で検出された前記内圧に基づいて、前記ストローク量に対する前記内圧の変化率を演算する演算部と、
前記リフトシリンダが前記対象物を昇降させるときに、前記演算部で演算された前記変化率に基づいて、前記対象物と当該対象物の載置面との接触状態を判定する判定部と、を備える、荷役車両の制御装置。
【請求項2】
前記判定部は、前記演算部で演算された前記変化率が所定の閾値以上である場合、前記対象物が前記載置面と接触している状態であると判定する、請求項1に記載の荷役車両の制御装置。
【請求項3】
前記荷役車両の駆動部を制御する駆動制御部を更に備え、
前記判定部によって前記対象物と前記載置面とが接触していると判定された場合、前記駆動制御部は前記荷役車両の前後進を規制する、請求項1又は2に記載の荷役車両の制御装置。
【請求項4】
情報を出力する出力部を更に備え、
前記判定部によって前記対象物と前記載置面とが接触していると判定された場合、前記出力部は、注意喚起情報を出力する、請求項1~3の何れか一項に記載の荷役車両の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷役車両の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
荷役車両の制御装置として、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。特許文献1に記載の荷役車両は、作動油の給排により昇降物を昇降させるリフトシリンダと、リフトシリンダを作動させるための操作レバーと、リフトシリンダに対する作動油の給排を行う油圧ポンプと、を備える。荷役車両は、フォークをパレットの穴へ差し込んで、リフトシリンダを操作することで、フォークを介してパレットを持ち上げる。ここで、特許文献1に記載の荷役車両の制御装置は、画像認識によって、フォークのパレットの穴への地切り可能差込位置に対する現在位置のずれ量を検知している。これにより、安全に荷役作用を行うことができるフォークの差込位置を検知している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-7059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述のような従来の荷役車両の制御装置においては、以下の問題点が存在する。すなわち、荷役作業のとき、荷役車両が棚の中などに置かれた対象物(パレットに置かれた荷物)を取り出す場合に、対象物を棚の載置面から十分な高さに上昇させられないことがある。例えば、荷物が重い場合などには、荷役車両の前輪の沈み込みやフォークのたわみなどによって、荷物を載せたパレットが前方へ大きく傾く場合がある(例えば図3(b)に示すような状態)。このような場合、運転者から見えるパレットの手前側は載置面から離間していても、運転者から見えないパレットの奥側は、載置面と接触、すなわち完全に地切りできていないことがある。この状態で荷役車両が前後進を行うと、パレットの損傷や荷物の落下が発生する可能性がある。従って、このように、対象物が載置面に接触した状態での荷役車両の前後進を抑制することで、荷役車両の荷役作業の確実性を向上することが求められている。
【0005】
本発明の目的は、荷役車両の荷役作業の確実性を向上できる荷役車両の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る荷役車両の制御装置は、作動油の給排により対象物を昇降させる昇降用のリフトシリンダのストローク量を検出するストローク検出部と、リフトシリンダの内圧を検出する内圧検出部と、ストローク検出部で検出されたストローク量及び内圧検出部で検出された内圧に基づいて、ストローク量に対する内圧の変化率を演算する演算部と、リフトシリンダが対象物を昇降させるときに、演算部で演算された変化率に基づいて、対象物と当該対象物の載置面との接触状態を判定する判定部と、を備える。
【0007】
荷役車両の制御装置は、ストローク検出部で検出されたストローク量及び内圧検出部で検出された内圧に基づいて、ストローク量に対する内圧の変化率を演算する演算部を備えている。荷役車両が対象物の昇降を行っているとき、対象物が完全に載置面から離間している状態では、ストローク量に対して内圧は一定となり、ストローク量に対する内圧の変化率はゼロとなる。その一方、対象物の一部が載置面と接触している状態では、ストローク量に対して内圧が変化し、ストローク量に対する内圧の変化率が所定の値となる。そのため、判定部は、リフトシリンダが対象物を昇降させるときに、演算部で演算された変化率に基づいて、対象物と当該対象物の載置面との接触状態を判定することができる。これにより、制御装置は、対象物が載置面と接触しているときには、所定の運転支援を行うことが可能となる。以上より、荷役車両の荷役作業の確実性を向上できる。
【0008】
また、判定部は、演算部で演算された変化率が所定の閾値以上である場合、対象物が載置面と接触している状態であると判定してよい。これにより、判定部は、対象物が載置面と接触している状態を正確に判定することができる。
【0009】
荷役車両の制御装置は、荷役車両の駆動部を制御する駆動制御部を更に備え、判定部によって対象物と載置面とが接触していると判定された場合、駆動制御部は荷役車両の前後進を規制してよい。この場合、対象物が載置面と接触している状態にて、荷役車両が誤って前後進することを抑制できる。
【0010】
荷役車両の制御装置は、情報を出力する出力部を更に備え、判定部によって対象物と載置面とが接触していると判定された場合、出力部は、注意喚起情報を出力してよい。この場合、運転者は、対象物が載置面と接触している状態であることに気付くことができるため、当該状態で荷役車両を前後進させないようにすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、荷役車両の荷役作業の確実性を向上できる荷役車両の制御装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係る制御装置を備えた荷役車両を示す側面図である。
図2】本発明の実施形態に係る荷役車両の制御装置を示すブロック図である。
図3】(a)(b)はフォークでパレット及び荷物を昇降させる様子を示す概略図であり、(c)はリフトシリンダの概略図である。
図4】上段はリフトシリンダのストローク量と内圧との関係を示すグラフ、下段はリフトシリンダのストローク量と内圧の変化率との関係を示すグラフである。
図5】内圧の変化率と閾値とを比較する様子を示すグラフである。
図6】本発明の実施形態に係る荷役車両の制御装置の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る荷役車両の制御装置の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0014】
図1は、本発明の実施形態に係る制御装置を備えた荷役車両を示す側面図である。同図において、本実施形態に係る荷役車両1は、フォークリフトである。荷役車両1は、車体フレーム2と、この車体フレーム2の前部に配置されたマスト3とを備えている。マスト3は、車体フレーム2に傾動可能に支持された左右1対のアウターマスト3aと、これらのアウターマスト3aの内側に配置され、アウターマスト3aに対して昇降可能なインナーマスト3bとからなっている。
【0015】
マスト3の後側には、昇降用油圧シリンダとしてのリフトシリンダ4が配置されている。リフトシリンダ4のピストンロッド4pの先端部は、インナーマスト3bの上部に連結されている。
【0016】
インナーマスト3bには、リフトブラケット5が昇降可能に支持されている。リフトブラケット5には、荷物を積載するフォーク6が取り付けられている。フォーク6は、リフトシリンダ4によって昇降される昇降物として構成される。インナーマスト3bの上部にはチェーンホイール7が設けられ、チェーンホイール7にはチェーン8が掛装されている。チェーン8の一端部はリフトシリンダ4に連結され、チェーン8の他端部はリフトブラケット5に連結されている。リフトシリンダ4を伸縮させると、チェーン8を介してフォーク6がリフトブラケット5と共に昇降する。
【0017】
車体フレーム2の左右両側には、傾動用油圧シリンダとしてのティルトシリンダ9がそれぞれ支持されている。ティルトシリンダ9のピストンロッド9pの先端部は、アウターマスト3aの高さ方向ほぼ中央部に回動可能に連結されている。ティルトシリンダ9を伸縮させると、マスト3が傾動する。
【0018】
車体フレーム2の上部には、運転室10が設けられている。運転室10の前部には、リフトシリンダ4を作動させてフォーク6を昇降させるためのリフト操作レバー11と、ティルトシリンダ9を作動させてマスト3を傾動させるためのティルト操作レバー12とが設けられている。
【0019】
また、運転室10の前部には、操舵を行うためのステアリング13が設けられている。ステアリング13は、油圧式のパワーステアリングであり、パワーステアリング(PS)用油圧シリンダとしてのPSシリンダにより運転者の操舵をアシストすることが可能である。
【0020】
さらに、運転室10には、特に図示はしないが、荷役車両1の走行方向(前進/後進/ニュートラル)を切り換えるためのディレクションスイッチが設けられている。
【0021】
図2は、本発明の実施形態に係る荷役車両1の制御装置100を示すブロック図である。本実施形態の制御装置100は、荷役車両1を制御する装置である。
【0022】
制御装置100は、リフト操作検出部30と、ストローク検出部31と、内圧検出部32と、駆動部33と、出力部34と、制御部20と、を備える。
【0023】
リフト操作検出部30は、リフト操作レバー11(図1参照)の操作を検出する。リフト操作検出部30は、リフト操作レバー11の操作がなされたことを検出すると共に、操作方向も検出する。従って、リフト操作検出部30は、リフトシリンダ4に対して上昇及び下降のどちらの操作がなされたかを検出できる。リフト操作検出部30は、リフト操作レバー11に設けられてよく、あるいは、リフト操作レバー11以外の箇所に設けられて、操作内容を示す信号を検出してもよい。リフト操作検出部30は、検出結果を制御部20へ送信する。
【0024】
ストローク検出部31は、リフトシリンダ4のストローク量を検出する。ここで、リフトシリンダ4のストローク量について図3(c)を参照して説明する。図3(c)に示すように、リフトシリンダ4の底壁4bとピストン4aとの間の内部空間に対して作動油50の給排が行われることによって、ピストン4a及びピストンロッド4pが昇降し、それによってフォーク6(図3(a)(b)参照)が昇降する。ここで、リフトシリンダ4のストローク量は、底壁4bとピストン4aとの間の距離(図中「S」で示される寸法)で定義される。内部空間に対して作動油50が供給されると、例えば、ピストン4aは仮想線で示す位置から実線で示す位置まで上昇し、ストローク量が大きくなる。一方、内部空間から作動油50が排出されると、例えば、ピストン4aは実線で示す位置から仮想線で示す位置まで下降し、ストローク量が小さくなる。なお、ストローク検出部31は、ストローク量を直接検出してもよいし、ストローク量を間接的に示すパラメータを検出してもよい。例えば、ストローク検出部31は、リフトシリンダ4に設けられたセンサなどで直接ストローク量を検出してもよいし、チェーン8の移動量などからストローク量を検出してもよいし、リフト操作レバー11の操作量などからストローク量を検出してもよい。ストローク検出部31は、検出結果を制御部20へ送信する。
【0025】
図2に戻り、内圧検出部32は、リフトシリンダ4の内圧を検出する。リフトシリンダ4の内圧は、リフトシリンダ4の内部空間で発生している圧力の大きさである。リフトシリンダ4の内圧は、フォーク6に作用する荷重が大きくなるほど大きくなり、フォーク6に作用する荷重が小さくなるほど小さくなる。内圧検出部32は、内圧を直接検出してもよいし、内圧を間接的に示すパラメータを検出してもよい。内圧検出部32は、例えば、リフトシリンダ4に作用する油圧を検出する圧力センサで構成されてもよく、フォーク6に作用する荷重を検出する歪みケージや圧力センサなどによって構成されてもよい。内圧検出部32は、検出結果を制御部20へ送信する。
【0026】
駆動部33は、荷役車両1が走行するための駆動力を付与する。駆動部33は、モータやエンジンなどの駆動源、及び当該駆動源の駆動力を車輪に伝達する伝達機構などによって構成される。
【0027】
出力部34は、各種情報を出力する部分である。出力部34は、運転支援のための情報を出力してよい。出力部34は、モニタ、スピーカ、警告灯などによって構成されてよい。
【0028】
制御部20は、CPU、RAM、ROM等により構成されている。制御部20は、情報取得部21(ストローク検出部、内圧検出部)と、演算部22と、判定部23と、駆動制御部24と、運転支援部25と、を備える。制御部20は、プログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASIC等の1つ以上の専用のハードウェア回路、あるいは、それらの組み合わせを含む回路として構成し得る。プロセッサはCPU、並びにRAM及びROM等のメモリを有する。メモリには、情報の処理を行うための種々のプログラムが記憶され、CPUは各種プログラムの読み出し、による演算を行う。
【0029】
情報取得部21は、荷役車両1の制御のために必要な各種情報を取得する。情報取得部21は、リフト操作検出部30、ストローク検出部31、及び内圧検出部32からの検出結果を取得する。
【0030】
演算部22は、ストローク検出部31で検出されたストローク量及び内圧検出部32で検出された内圧に基づいて、ストローク量に対する内圧の変化率を演算する。ここで、図3(a)(b)及び図4を参照して、ストローク量と内圧の関係について説明する。図3(a)は、荷物60(対象物)が載せられたパレット61(対象物)が、載置面62に完全に接触した状態を示している。図3(b)は、パレット61が、載置面62から完全に離間した状態を示している。図3(b)に示すように、荷物60の重量の影響により、前輪の沈み込みやフォーク6のたわみなどが発生することで、フォーク6は、基端側よりも先端側の方が低い位置に配置されるように傾斜する。そのため、パレット61の手前側の下端61aよりも、パレット61の奥側の下端61bが低い位置に配置される。そのため、図3(a)から図3(b)へ至る途中の状態では、パレット61の手前側の下端61aが載置面62から浮く一方で、奥側の下端61bが載置面62に接触する(図3(a)の仮想線で示されたパレット61を参照)。なお、以降の説明では、図3(b)に示す状態を「地切りされた状態」と称し、下端61aが浮いて下端61bが載置面62に接触した状態を「地切り前の状態」と称する場合がある。
【0031】
図4の上段のグラフは、リフトシリンダ4のストローク量と内圧の関係を示すグラフであり、横軸はストローク量を示し、縦軸は内圧を示す。図3(a)に示すようなパレット61が完全に載置面62に接触した状態では、フォーク6がパレット61に接触していない。従って、内圧は、ストローク量の増加に対して、基準値にて一定となる(「ストローク量<S1」の領域E1)。ストローク量がS1となると、フォーク6がパレット61に接触することで、パレット61の奥側の下端61bが載置面62に接触しながら、手前側の下端61aが載置面62から離間する。このとき、フォーク6が上昇するに従ってパレット61及び荷物60の荷重がフォーク6に多く作用するため、内圧が上昇する(「S1≦ストローク量<S2」の領域E2)。ストローク量がS2となると、パレット61が地切りされて、図3(b)に示すようにパレット61全体が載置面62から離間した状態となる。この状態では、フォーク6がパレット61及び荷物60の荷重を全て支持した状態が維持されるため、内圧は、ストローク量の増加に対して、P1の値にて一定となる(「S2≦ストローク量」の領域E3)。
【0032】
演算部22は、図4の上段のようなストローク量と内圧との関係に基づいて、ストローク量に対する内圧の変化率を演算する。演算結果を図4の下段のグラフに示す。このグラフの横軸はストローク量を示し、縦軸は内圧の変化率を示す。当該グラフが示すように、領域E1及び領域E3では、内圧が一定となるため、変化率は0となる。一方、領域E2では、ストローク量の増加に合わせて内圧が上昇する。従って、内圧の変化率は、ストローク量に対してP’2の値にて一定となる。
【0033】
なお、フォーク6を上昇させるときとフォーク6を下降させるときとでは、図4に示すような同様のグラフを描く。すなわち、フォーク6を上昇させるときは、図4のグラフに示す内圧及び変化率は、ストローク量が大きくなる方向に推移していくが、フォーク6を下降させるときは、図4のグラフに示す内圧及び変化率は、ストローク量が小さくなる方向に推移する。
【0034】
判定部23は、リフトシリンダ4がパレット61及び荷物60を昇降させるときに、演算部22で演算された変化率に基づいて、パレット61と載置面62との接触状態を判定する。判定部23は、演算部22で演算された変化率が所定の閾値以上である場合、パレット61が載置面62と接触している状態であると判定する。具体的には、図5に示すように、内圧の変化率に対して閾値TVが設定される。また、内圧の変化率が閾値TV以上の領域が不具合判定領域JEとして設定される。判定部23は、内圧の変化率が不具合判定領域JEに存在している状態は、荷役車両1の前後進をすると不具合が生じると判定する。不具合とは、荷役車両1が、地切り前の状態にて、パレット61を載置面62に接触させた状態で前後進をすることである。図5に示すように、領域E2での変化率は、閾値TV以上のP’2であるため、判定部23は、領域E2の状態は、パレット61と載置面62とが接触した状態であると判定する。
【0035】
駆動制御部24は、荷役車両1の駆動部33を制御する。駆動制御部24は、荷役車両1が前進を行うときには、前進する旨の信号を駆動部33へ送信し、荷役車両1が後進を行うときには、後進する旨の信号を駆動部33へ送信する。判定部23によってパレット61と載置面62とが接触していると判定された場合、駆動制御部24は荷役車両1の前後進を規制する。駆動制御部24は、前後進規制モードに設定されたときは、運転者が前進または後進する旨の操作の入力を行っても、駆動部33への信号を送信しないようにする。
【0036】
運転支援部25は、運転者による荷役車両1の運転の支援を行う。運転支援部25は、判定部23によってパレット61と載置面62とが接触していると判定された場合、当該状態での荷役車両1の前後進が抑制されるような運転支援を行う。例えば、運転支援部25は、判定部23によってパレット61と載置面62とが接触していると判定された場合、上述のような前後進規制モードを設定する。また、運転支援部25は、判定部23によってパレット61と載置面62とが接触していると判定された場合、出力部34にて注意喚起情報を出力する。注意喚起情報は、例えばパレット61が載置面62と接触したままの状態である旨の警告などである。例えば、出力部34が警告ランプなどで構成されている場合、運転支援部25は、当該警告ランプを発光させてよい。
【0037】
次に、図6を参照して、本実施形態に係る荷役車両1の制御装置100の制御処理の内容について説明する。図6の処理は、制御部20において所定のタイミングで繰り返し実行される。図6に示すように、制御部20の情報取得部21は、リフト操作検出部30の検出結果に基づいて、リフト操作を検出する(ステップS10)。情報取得部21は、フォーク6が荷物60及びパレット61を上昇させる操作であるか、下降させる操作であるかを検出することができる。次に、制御部20の情報取得部21は、リフトシリンダ4のストローク量及び内圧を検出する(ステップS20)。情報取得部21は、ストローク検出部31の検出結果に基づいて、リフトシリンダ4のストローク量を取得する。情報取得部21は、内圧検出部32の検出結果に基づいて、リフトシリンダ4の内圧を取得する。これにより、演算部22は、図4の上段に示すようなグラフを描くことができる。
【0038】
次に、制御部20の演算部22は、ステップS20で取得したリフトシリンダ4のストローク量及び内圧に基づいて、内圧の変化率を演算する(ステップS30)。これにより、演算部22は、図4の下段に示すようなグラフを描くことができる。次に、制御部20の判定部23は、ステップS30で演算された変化率が所定の閾値より小さいか否かを判定する(ステップS40)。
【0039】
ステップS40において、判定部23によって変化率が閾値以上であると判定された場合、パレット61が地切り前の状態であると判断できる。例えば、図5に示すように、ストローク量が領域E2の範囲である場合、内圧の変化率が閾値TVよりも大きいP’2であるため、地切り前の状態であると判断される。従って、制御部20の運転支援部25は、地切り前の状態で荷役車両1が前後進を行うことを抑制できるような、運転支援を行う(ステップS60)。具体的に、運転支援部25は、出力部34より注意喚起情報を出力する。それに代えて、またはそれに加えて、運転支援部25は、荷役車両1の前後進を規制する前後進規制モードを設定する。これにより、駆動制御部24は、駆動部33に前進の信号及び後進の信号を送信することを規制する。
【0040】
一方、ステップS40において、判定部23によって変化率が閾値より小さいと判定された場合、パレット61が完全に載置面62に接触している(図3(a)参照)か、パレット61が完全に載置面62から離間している(図3(b)参照)ことで、荷役車両1が前後進しても不具合が起きない状態であると判断できる。例えば、図5に示すように、ストローク量が領域E1または領域E3の範囲である場合、内圧の変化率が閾値TVよりも小さい0であるため、不具合が起きない状態であると判断できる。従って、制御部20の運転支援部25は、ステップS60で設定した運転支援を解除する(ステップS50)。すなわち、運転支援部25は、出力部34から注意喚起情報を出力しているときは当該出力を停止し、前後進規制モードに設定していた場合は当該モードを解除する。なお、運転支援がなされていなかった場合は、ステップS50では、運転支援部25は特段の処理を行わない。ステップS50が終了したら、ステップS10から再び処理を繰り返す。
【0041】
なお、図6に示す処理は、荷役車両1の運転中に常時実行されていてもよいし、リフト操作レバー11の操作がなされたタイミングで図6の処理が開始されてもよい。このとき、リフト操作レバー11の操作が停止されたら、制御部20は図6の処理を停止してよい。このとき、リフト操作レバー11の操作が再開されたら、前回の停止箇所から処理を再開してもよい。
【0042】
次に、本実施形態に係る荷役車両1の制御装置100の作用・効果について説明する。
【0043】
まず、比較例として、内圧の変化率に基づいて、パレット61の地切りを判定しない制御装置について説明する。荷役作業のとき、荷役車両1が棚の中などに置かれた荷物60を取り出す場合に、荷物60及びパレット61を棚の載置面62から十分な高さに上昇させられないことがある(例えば、上段の棚と干渉するなどの理由により)。荷物60が重い場合などには、荷役車両1の前輪の沈み込みやフォーク6のたわみなどによって、荷物60を載せたパレット61が前方へ大きく傾く場合がある(例えば図3(b)に示すような状態)。このような場合、運転者から見えるパレット61の手前側は載置面62から離間していても、運転者から見えないパレットの奥側は、載置面と接触、すなわち完全に地切りできていないことがある。この状態で荷役車両1が前後進を行うと、パレット61の損傷や荷物60の落下が発生する可能性がある。
【0044】
これに対し、本実施形態に係る荷役車両1の制御装置100は、ストローク検出部31で検出されたストローク量及び内圧検出部32で検出された内圧に基づいて、ストローク量に対する内圧の変化率を演算する演算部22を備えている。荷役車両1が荷物60及びパレット61の昇降を行っているとき、パレット61が完全に載置面62と接触している状態、及び載置面62から離間している状態では、ストローク量に対して内圧は一定となり、ストローク量に対する内圧の変化率はゼロとなる(図4の領域E1,E3参照)。その一方、パレット61の一部が載置面62と接触している状態では、ストローク量に対して内圧が変化し、ストローク量に対する内圧の変化率が所定の値となる(図4の領域E2参照)。そのため、判定部23は、リフトシリンダ4が荷物60及びパレット61を昇降させるときに、演算部22で演算された変化率に基づいて、パレット61と当該パレット61の載置面62との接触状態を判定することができる。これにより、制御装置100は、パレット61が載置面62と接触しているときには、所定の運転支援を行うことが可能となる。以上より、荷役車両1の荷役作業の確実性を向上できる。
【0045】
また、判定部23は、演算部22で演算された変化率が所定の閾値以上である場合、パレット61が載置面62と接触している状態であると判定してよい。これにより、判定部23は、パレット61が載置面62と接触している状態を正確に判定することができる。例えば、動作上の理由により、リフトシリンダ4の内圧の変化率が一時的に立ち上がったとしても、当該変化率が閾値VTまで達しなければ、判定部23は、不具合が生じる状態であると判定しない。このように、判定部23が、誤って不具合が生じる状態であると判定することを抑制できる。
【0046】
荷役車両1の制御装置100は、荷役車両1の駆動部33を制御する駆動制御部24を更に備え、判定部23によってパレット61と載置面62とが接触していると判定された場合、駆動制御部24は荷役車両1の前後進を規制する。この場合、パレット61が載置面62と接触している状態にて、荷役車両1が誤って前後進することを抑制できる。
【0047】
荷役車両1の制御装置100は、情報を出力する出力部34を更に備え、判定部23によってパレット61と載置面62とが接触していると判定された場合、出力部34は、注意喚起情報を出力する。この場合、運転者は、パレット61が載置面62と接触している状態であることに気付くことができるため、当該状態で荷役車両1を前後進させないようにすることができる。
【0048】
以上、本発明に係る荷役車両の制御装置の好適な実施形態について幾つか説明してきたが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0049】
また、図4及び図5に示すグラフは一例に過ぎず、荷役車両の構造や、荷役する対象物の種類や重量に応じて、適宜変更される。例えば、図4で扱った荷物より軽い荷物を荷役する場合、リフトシリンダの領域E3での内圧はP1より小さくなり、地切りのストローク量もS2より小さくなる。
【符号の説明】
【0050】
1…荷役車両、4…リフトシリンダ、31…ストローク検出部、32…内圧検出部、21…情報取得部(ストローク検出部、内圧検出部)、22…演算部、23…判定部、24…駆動制御部、34…出力部、100…制御装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6