(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】送風システムの異常診断装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20231003BHJP
B60H 1/00 20060101ALI20231003BHJP
B60K 11/06 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
B60H1/22 671
B60H1/00 102Z
B60H1/00 ZHV
B60H1/00 101H
B60K11/06
(21)【出願番号】P 2020136400
(22)【出願日】2020-08-12
【審査請求日】2022-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】高瀬 孝平
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-153278(JP,A)
【文献】特開2001-313092(JP,A)
【文献】特開2001-086601(JP,A)
【文献】特開平04-118314(JP,A)
【文献】特開2009-133606(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0370333(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00-3/06
B60K 11/00-15/10
F24F 11/00-11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気を複数の送風対象に送る送風システムの異常診断を行う異常診断装置であって、
前記送風対象への送風を調整する送風調整装置の目標作動状態を取得する作動状態取得部と、
前記送風対象のうちの一つである第1送風対象へ送られる空気の温度又は該第1送風対象の温度である第1温度を検出する温度センサによって検出された温度を取得する温度取得部と、
前記送風調整装置の目標作動状態に基づいて前記第1温度を推定する温度推定部と、
前記送風調整装置の異常を診断する異常診断部とを備え、
前記異常診断部は、前記温度取得部によって取得された第1温度と前記温度推定部によって推定された第1温度との差が予め定められた第1基準値以上であるときには、前記送風調整装置に異常があると判定
し、
前記送風調整装置は、前記第1送風対象への空気の流量を制御する第1送風調整装置及び第2送風調整装置を備え、前記異常診断部は、前記第1温度以外のパラメータに基づいて前記第2送風調整装置の異常を診断すると共に、前記第2送風調整装置に異常が無いと判定された場合に、前記温度取得部によって取得された第1温度と前記温度推定部によって推定された第1温度との差が前記第1基準値以上であるときには、前記第1送風調整装置に異常があると判定する、送風システムの異常診断装置。
【請求項2】
前記第1送風対象は前記送風調整装置の下流側に位置する空気通路であり、前記第1温度は前記空気通路内の空気の温度であり、
前記異常診断部は、前記送風対象へ流れる空気を加熱又は冷却する温度調整器によって前記送風対象へ流れる空気が加熱又は冷却されている場合に、前記温度取得部によって取得された第1温度と前記温度推定部によって推定された第1温度との差が前記第1基準値以上であるときには、前記第1送風調整装置に異常があると判定する、請求項
1に記載の送風システムの異常診断装置。
【請求項3】
前記第1送風対象は、車両の室内への吹出し口に連通する空気通路である、請求項
2に記載の送風システムの異常診断装置。
【請求項4】
前記第1送風調整装置は、前記第1送風対象へ通じる二つの空気通路のうち第2空気通路の開度を制御する空調ドアであり、
前記第2送風調整装置は、前記空気通路へ空気を流すブロワ又は前記第1送風対象へ通じる第1空気通路及び第2空気通路の開度の比率を制御するエアミックスドアである、請求項
1~3のいずれか1項に記載の送風システムの異常診断装置。
【請求項5】
前記第1送風対象は発熱機器であり、前記第1温度は前記発熱機器の温度である、請求項
1に記載の送風システムの異常診断装置。
【請求項6】
前記温度推定部は、前記発熱機器からの放熱量に基づいて前記発熱機器の温度を推定し、前記発熱機器からの放熱量は、前記送風調整装置の目標作動状態に基づいて算出された前記発熱機器への空気の流量と、前記発熱機器の温度と前記発熱機器へ送られる空気の温度との差とに基づいて算出される、請求項
5に記載の送風システムの異常診断装置。
【請求項7】
前記発熱機器はバッテリである、請求項
6に記載の送風システムの異常診断装置。
【請求項8】
前記第1送風調整装置は、前記第1送風対象であるバッテリに連通する分岐空気通路の開度を制御するバッテリドアであり、
前記第2送風調整装置は、前記分岐空気通路へ空気を流すブロワである、請求項
1に記載の送風システムの異常診断装置。
【請求項9】
前記異常診断部によって前記送風調整装置に異常があると判定されたときには、当該送風システムのユーザに警告を発するように警告器へ信号を送信する警告送信部を更に備える、請求項1~
8のいずれか1項に記載の送風システムの異常診断装置。
【請求項10】
前記温度取得部は、前記送風対象のうち前記第1送風対象とは異なる第2送風対象へ送られる空気の温度又は該第2送風対象の温度である第2温度を検出する温度センサによって検出された温度を取得し、
前記温度推定部は、前記送風調整装置の目標作動状態に基づいて前記第2温度を推定し、
前記異常診断部は、前記温度取得部によって取得された第2温度と前記温度推定部によって推定された第2温度との差が予め定められた第2基準値以上であるときには、前記送風調整装置に異常があると判定する、請求項1~
9のいずれか1項に記載の送風システムの異常診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送風システムの異常診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば車両用の空調システム等、送風対象に送風する送風システムが知られている(例えば、特許文献1~3)。特に、特許文献1では、空調システムに用いられる空調用アクチュエータの故障診断を行う故障診断装置が開示されている。特許文献1に記載の故障診断装置では、空調用アクチュエータを故障診断パターンに対応した作動状態に制御すると共に、このときの空調システムの状態が故障診断パターンに対応した状態になっているかを点検者が確認することによって故障診断が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平09-286223号公報
【文献】特開2009-083672号公報
【文献】特開平11-291407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の故障診断装置では、空調用アクチュエータを故障診断パターンに対応した作動状態に制御した上で、最終的に点検者が確認を行うことによって空調用アクチュエータの故障診断を行っている。したがって、特許文献1に記載の故障診断装置では、故障診断装置が自ら空調用アクチュエータを含む送風システムの異常を診断することはできない。
【0005】
上記課題に鑑みて、本開示の目的は、送風システムの異常を点検者によらずに自動的に診断することができる異常診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の要旨は以下のとおりである。
【0007】
(1)空気を複数の送風対象に送る送風システムの異常診断を行う異常診断装置であって、
前記送風対象への送風を調整する送風調整装置の目標作動状態を取得する作動状態取得部と、
前記送風対象のうちの一つである第1送風対象へ送られる空気の温度又は該第1送風対象の温度である第1温度を検出する温度センサによって検出された温度を取得する温度取得部と、
前記送風調整装置の目標作動状態に基づいて前記第1温度を推定する温度推定部と、
前記送風調整装置の異常を診断する異常診断部とを備え、
前記異常診断部は、前記温度取得部によって取得された第1温度と前記温度推定部によって推定された第1温度との差が予め定められた第1基準値以上であるときには、前記送風調整装置に異常があると判定する、送風システムの異常診断装置。
(2)前記送風調整装置は、前記第1送風対象への空気の流量を制御する第1送風調整装置及び第2送風調整装置を備え、
前記異常診断部は、前記第1温度以外のパラメータに基づいて前記第2送風調整装置の異常を診断すると共に、前記第2送風調整装置に異常が無いと判定された場合に、前記温度取得部によって取得された第1温度と前記温度推定部によって推定された第1温度との差が前記第1基準値以上であるときには、前記第1送風調整装置に異常があると判定する、上記(1)に記載の送風システムの異常診断装置。
(3)前記第1送風対象は前記送風調整装置の下流側に位置する空気通路であり、前記第1温度は前記空気通路内の空気の温度であり、
前記異常診断部は、前記送風対象へ流れる空気を加熱又は冷却する温度調整器によって前記送風対象へ流れる空気が加熱又は冷却されている場合に、前記温度取得部によって取得された第1温度と前記温度推定部によって推定された第1温度との差が前記第1基準値以上であるときには、前記第1送風調整装置に異常があると判定する、上記(2)に記載の送風システムの異常診断装置。
(4)前記第1送風対象は、車両の室内への吹出し口に連通する空気通路である、上記(3)に記載の送風システムの異常診断装置。
(5)前記第1送風調整装置は、前記第1送風対象へ通じる二つの空気通路のうち第2空気通路の開度を制御する空調ドアであり、
前記第2送風調整装置は、前記空気通路へ空気を流すブロワ又は前記第1送風対象へ通じる第1空気通路及び第2空気通路の開度の比率を制御するエアミックスドアである、上記(2)~(4)のいずれか1つに記載の送風システムの異常診断装置。
(6)前記第1送風対象は発熱機器であり、前記第1温度は前記発熱機器の温度である、上記(1)又は(2)に記載の送風システムの異常診断装置。
(7)前記温度推定部は、前記発熱機器からの放熱量に基づいて前記発熱機器の温度を推定し、前記発熱機器からの放熱量は、前記送風調整装置の目標作動状態に基づいて算出された前記発熱機器への空気の流量と、前記発熱機器の温度と前記発熱機器へ送られる空気の温度との差とに基づいて算出される、上記(6)に記載の送風システムの異常診断装置。
(8)前記発熱機器はバッテリである、上記(7)に記載の送風システムの異常診断装置。
(9)前記第1送風調整装置は、前記第1送風対象であるバッテリに連通する分岐空気通路の開度を制御するバッテリドアであり、
前記第2送風調整装置は、前記分岐空気通路へ空気を流すブロワである、請求項2に記載の送風システムの異常診断装置。
(10)前記異常診断部によって前記送風調整装置に異常があると判定されたときには、当該送風システムのユーザに警告を発するように警告器へ信号を送信する警告送信部を更に備える、上記(1)~(9)のいずれか1つに記載の送風システムの異常診断装置。
(11)前記温度取得部は、前記送風対象のうち前記第1送風対象とは異なる第2送風対象へ送られる空気の温度又は該第2送風対象の温度である第2温度を検出する温度センサによって検出された温度を取得し、
前記温度推定部は、前記送風調整装置の目標作動状態に基づいて前記第2温度を推定し、
前記異常診断部は、前記温度取得部によって取得された第2温度と前記温度推定部によって推定された第2温度との差が予め定められた第2基準値以上であるときには、前記送風調整装置に異常があると判定する、上記(1)~(10)のいずれか1つに記載の送風システムの異常診断装置。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、送風システムの異常を点検者によらずに自動的に診断することができる異常診断装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、送風システムの構成を概略的に示す図である。
【
図2】
図2は、送風システムがバッテリの冷却のみに用いられているバッテリ冷却モードにおける送風システムの状態を示している。
【
図3】
図3は、送風システムが車両の室内の冷房に用いられている冷房モードにおける送風システムの状態を示している。
【
図4】
図4は、送風システムが車両の室内の暖房に用いられている暖房モードにおける送風システムの状態を示している。
【
図5】
図5は、送風システムが車両の室内の除湿に用いられている除湿モードにおける送風システムの状態を示している。
【
図6】
図6は、送風システムに関するアクチュエータの異常診断に関する、ECUのプロセッサの機能ブロック図である。
【
図7】
図7は、ダクトにおける抵抗曲線とブロワ性能曲線とを示す図である。
【
図8】
図8は、異常診断部によって実行される異常診断処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、
図8のステップS16において実行される空調関連ドアの異常診断処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、
図8のステップS18において実行されるバッテリドアの異常診断処理の制御ルーチンを示すフローチャートである
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0011】
<送風システムの構成>
まず、
図1を参照して、電気自動車又はハイブリッド自動車などの車両用の送風システム1の構成について説明する。送風システム1は、車両の空調のために車両の室内へ空気を送風すると共に、車両の発熱機器の冷却のために発熱機器へ空気を送風するために用いられる。本実施形態では、車両の発熱機器は、車両を駆動するモータに電力を供給するバッテリである。
【0012】
図1は送風システム1の構成を概略的に示す図である。
図1に示すように、送風システム1は、空気が流れるダクト10を備える。ダクト10は、メインダクト11と、メインダクト11から分岐した分岐ダクト12と、メインダクト11から複数に分割された分割ダクト13とを備える。これらダクト10は、空気の流れる空気通路を形成する。メインダクト11、分岐ダクト12及び分割ダクト13は、それぞれメイン空気通路、分岐空気通路及び分割空気通路を形成する。
【0013】
メインダクト11は、内気導入口15及び外気導入口16に連通しており、よってメインダクト11には車両の室内の空気又は室外の空気が導入される。内気導入口15又は外気導入口16から送風システム1に導入された全ての空気は、メインダクト11を通って流れ、分岐ダクト12及び分割ダクト13のいずれかに流入する。
【0014】
メインダクト11には一部の領域にメインダクト内11のメイン空気通路を部分的に二つの空気通路に分ける仕切板14が設けられる。したがって、メイン空気通路は、仕切板14が設けられた領域以外では一つのまとまった通路であり、仕切板14が設けられた領域では第1空気通路11aと第2空気通路11bとに分けられる。本実施形態では、仕切板14は、分岐ダクト12への分岐部よりも下流側に配置される。
【0015】
分岐ダクト12は、その一方の端部がメインダクト11に連通すると共に、他方の端部が車両の室外の大気中に開放される。したがって、分岐ダクト12では、メインダクト11から大気中に向かって空気が流れる。本実施形態では、送風システム1は一つの分岐ダクト12のみを有する。
【0016】
各分割ダクト13は、その一方の端部がメインダクト11に連通すると共に、他方の端部が車両の室内への各空気吹出し口に連通する。本実施形態では、送風システム1は四つの分割ダクト13を備えており、各分割ダクト13はそれぞれデフロスター吹出し口、前方吹出し口、側方吹出し口、足元吹出し口に連通する。デフロスター吹出し口は、フロントガラス等の内面に向けて風を吹き出す吹出し口である。前方吹出し口及び側方吹出し口は、車内のインストルメントパネルの中央及び側方から車内に向かって風を吹き出す吹出し口である。また、足元吹出し口は、車両の乗員の足元に向かって風を吹き出す吹出し口である。
【0017】
また、送風システム1は、フィルタ21、ブロワ22、エバポレータ23及びヒータコア24を備える。フィルタ21、ブロワ22、エバポレータ23及びヒータコア24は、メインダクト11内に上流側から下流側に向かってこの順番でメインダクト11内に設けられる。
【0018】
フィルタ21は、メインダクト11内を通って流れる空気中の塵や埃などを取り除いて空気を浄化する機器である。フィルタ21は、メインダクト11内において内気導入口15及び外気導入口16に近接して配置される。なお、フィルタ21は、設けられなくてもよい。
【0019】
ブロワ22は、メインダクト11内においてフィルタ21の下流側に配置される。ブロワ22は、ブロワモータ22aとブロワファン22bとを備える。ブロワ22は、ブロワモータ22aによってブロワファン22bが駆動されると、内気導入口15又は外気導入口16を介して車両の室内又は室外の空気がメインダクト11内に流入して、メインダクト11内を通って空気が流れるように構成される。したがって、ブロワ22は、空気を内気導入口15又は外気導入口16からメインダクト11へ、ひいては分岐ダクト12や分割ダクト13へ流すのに用いられる。
【0020】
エバポレータ23は、メインダクト11内においてブロワ22の下流側に配置される。エバポレータ23は、エバポレータ23内を流れる冷媒を蒸発させるための気化熱をエバポレータ23の周りの空気から奪うことで、空気を冷却する。したがって、エバポレータ23は、後述する送風対象へ流れる空気を加熱又は冷却する温度調節器の一例である。エバポレータ23は、冷凍サイクルを構成する冷却装置の一部である。この冷却装置は、他に、冷媒を圧縮するコンプレッサと、高温の冷媒を冷却して液化させるコンデンサと、液化した冷媒を霧状化させるエキスパンションバルブとを備える。この冷却装置では、コンプレッサを駆動することによって、冷媒が冷却装置内を循環し、エバポレータ23において空気が冷却される。
【0021】
ヒータコア24は、メインダクト11内においてエバポレータ23の下流側に配置され、また、分岐ダクト12への分岐部よりも下流側に配置される。特に、本実施形態では、ヒータコア24は、仕切板14に分けられたうちの一方の通路(第1空気通路11a)に設けられる。ヒータコア24には、内燃機関の冷却水が流れる。内燃機関の冷却水の温度は大気温度よりも高いことから、ヒータコア24を通って空気が流れると、熱交換により空気が過熱される。したがって、ヒータコア24は、後述する送風対象へ流れる空気を加熱又は冷却する温度調節器の一例である。
【0022】
なお、本実施形態では、メインダクト11内の空気を加熱する機器としてヒータコアが用いられている。しかしながら、メインダクト11内の空気を加熱することができれば、ヒータコア24の代わりに、上述した冷却装置のコンデンサや電気ヒータ等、他の加熱装置が用いられてもよい。
【0023】
加えて、送風システム1は、ダクト10を通って流れる空気の流れを制御する複数のドアを備える。本実施形態では、送風システム1は、内外気切換ドア31、エアミックスドア32、空調ドア33、デフロスタードア34、前方吹出しドア35、側方吹出しドア36、足元吹出しドア37、バッテリドア38を備える。
【0024】
内外気切換ドア31は、メインダクト11の内気導入口15及び外気導入口16の近傍に配置される。内外気切換ドア31は、内気導入口15及び外気導入口16のうち一方を選択的に閉じる。内外気切換ドア31によって内気導入口15が閉じられているときには外気導入口16が開かれ、内外気切換ドア31によって外気導入口16が閉じられているときには内気導入口15が開かれる。内外気切換ドア31は、切換ドアアクチュエータ31aによって駆動される。
【0025】
エアミックスドア32は、仕切板14の上流側端部近傍に配置される。エアミックスドア32は、仕切板14によって分けられた第1空気通路11a及び第2空気通路11bの開度の比率を制御する。換言すると、エアミックスドア32は、第1空気通路11a及び第2空気通路11bそれぞれに流入する空気の流量の割合を制御する。エアミックスドア32は、
図1に実線で示したように、第1空気通路11aが閉じられて第2空気通路11bが開かれた位置、第1空気通路11aが開かれて第2空気通路11bが閉じられた位置、及びこれらの間の任意の位置に設定可能である。エアミックスドア32は、ミックスドアアクチュエータ32aによって駆動される。なお、エアミックスドア32は、上述した二つの位置間で切換可能な切換ドアであってもよい。
【0026】
空調ドア33は、仕切板14の近傍に配置されて、仕切板14によって分けられたうちの一方の通路である第2空気通路11bの開度を制御する。換言すると、空調ドア33は、第2空気通路11bを流通する空気の流量を制御する。空調ドア33は、
図1に実線で示した第1空気通路11aを全開にする全開位置、
図1に破線で示した第1空気通路11aを閉じる全閉位置、及びこれらの間の任意の位置に設定可能である。空調ドア33は、空調ドアアクチュエータ33aによって駆動される。なお、空調ドア33は、上述した二つの位置間で切換可能な切換ドアであってもよい。
【0027】
デフロスタードア34、前方吹出しドア35、側方吹出しドア36、足元吹出しドア37は、第1空気通路11a及び第2空気通路11bの合流地点よりも下流側に設けられて、それぞれデフロスター吹出し口、前方吹出し口、側方吹出し口、足元吹出し口に連通する分割ダクト13への空気通路の開度を制御する。換言すると、デフロスタードア34、前方吹出しドア35、側方吹出しドア36、足元吹出しドア37は、それぞれ、デフロスター吹出し口、前方吹出し口、側方吹出し口、足元吹出し口に連通する分割ダクト13に流入する空気の流量を制御する。デフロスタードア34、前方吹出しドア35、側方吹出しドア36、足元吹出しドア37は、それぞれ対応するドアアクチュエータ34a、35a、36a、37aによって駆動される。なお、デフロスタードア34、前方吹出しドア35、側方吹出しドア36、足元吹出しドア37は、全開の状態と全閉の状態とで切換可能な切換ドアであってもよい。
【0028】
バッテリドア38は、メインダクト11から分岐ダクト12への分岐部に配置されて、分岐ダクト12によって画定される分岐空気通路の開度を制御する。換言すると、バッテリドア38は、分岐空気通路に流入する空気の流量を制御する。バッテリドア38は、
図1に実線で示した分岐空気通路を全開にする全開位置、
図1に破線で示した分岐空気通路を閉じる全閉位置、及びこれらの間の任意の位置に設定可能である。バッテリドア38は、バッテリドアアクチュエータ38aによって駆動される。なお、バッテリドア38は、上述した二つの位置間で切換可能な切換ドアであってもよい。
【0029】
また、本実施形態では、分岐ダクト12に画定される分岐空気通路はバッテリ25に連通する。すなわち、本実施形態では、分岐ダクト12の分岐空気通路が、バッテリ25の周りに形成された空気通路に連通する。したがって、分岐空気通路に流入した空気は、バッテリ25の周りを通って流れる。
【0030】
バッテリ25は、空気を流通させることによる冷却が必要な発熱機器の一例である。本実施形態では、バッテリ25は、車両を駆動するモータに電力を供給するために用いられる。バッテリ25への充電は、内燃機関を有する車両であれば内燃機関によってジェネレータが駆動され、駆動されたジェネレータにより発電された電力がバッテリ25に供給されることによって行われる。或いは、バッテリ25への充電は、外部の電源プラグに接続されることによって行われる。バッテリ25は、充電又は放電する際に発熱すると共に、その熱によって温度が高くなると劣化する。したがって、バッテリ25の劣化を抑制するためにはバッテリ25の冷却が必要であり、本実施形態では分岐ダクト12を介してバッテリ25に空気を供給すると、空気との熱交換によりバッテリ25が冷却される。
【0031】
このように構成された送風システム1は、バッテリ25への送風を行う。したがって、バッテリ25は送風システム1の送風対象であるといえる。加えて、送風システム1は、空気吹出し口を介して車両の室内への送風を行う。したがって、車両の室内は送風システム1の送風対象であるといえる。また、送風システム1では、車両の室内へ送られる空気は、空気吹出し口に連通するメインダクト11内の空気通路(特に、ヒータコア24及び空調ドア33よりも下流側の領域。以下、「吹出し連通空気通路」という)11cを通る。したがって、送風システム1は、吹出し連通空気通路11cへの送風を行っていると考えることもでき、よって吹出し連通空気通路11cも送風システム1の送風対象であるといえる。以上より、本実施形態では、送風システム1は、空気を複数の送風対象に送風する。
【0032】
このように構成された送風システム1では、送風対象への送風は、ブロワ22、複数のドア31~38によって調整される。したがって、ブロワ22及び複数のドア31~38は、送風対象への送風を調整する送風調整装置として機能する。そして、送風対象である吹出し連通空気通路11cは、少なくとも一部の送風調整装置よりも下流側に位置する空気通路である。したがって、本実施形態では、送風対象は、送風調整装置よりも下流側に位置する空気通路を含む。
【0033】
また、送風システム1は、電子制御ユニット(ECU)40と、各種センサ51~57を備える。ECU40は、各種演算を行うプロセッサと、プログラムや各種情報を記憶するメモリと、各種アクチュエータや各種センサと接続されるインタフェースとを備える。ECU40は、送風システム1に関する各種アクチュエータ(ブロワ22、エバポレータ23を備える冷凍装置のコンプレッサ、ドア31~38用のアクチュエータ31a~38a等)の作動を制御する制御装置として機能すると共に、送風システム1の異常、特に送風システム1に関する各種アクチュエータの異常を診断する異常診断装置としても機能する。
【0034】
また、送風システム1は、吸気温度センサ51と、ブロワ回転速度センサ52と、エバポレータ温度センサ53と、エアミックスドアの作動監視センサ54と、吹出し温度センサ55と、バッテリ流入空気温度センサ56と、バッテリ温度センサ57とを備える。これらセンサ51~57は、ECU40に接続されて、ECU40に出力信号を送信する。
【0035】
吸気温度センサ51は、メインダクト11に流入した空気の温度を検出する温度センサである。吸気温度センサ51は、内気導入口15及び外気導入口16よりも下流側であってエバポレータ23よりも上流側においてメインダクト11内に配置される。ブロワ回転速度センサ52は、ブロワ22の回転速度を検出するセンサである。ブロワ回転速度センサ52は、ブロワ22のブロワモータ22a又はブロワファン22bに取り付けられる。エバポレータ温度センサ53は、エバポレータ23の温度を検出する温度センサである。エバポレータ温度センサ53は、エバポレータ23に取り付けられる。
【0036】
エアミックスドアの作動監視センサ54は、エアミックスドア32の作動位置(作動角度)を検出するセンサである。作動監視センサ54は、エアミックスドア32に取り付けられる。吹出し温度センサ55は、吹出し連通空気通路11c内の空気の温度を検出する温度センサである。吹出し温度センサ55は、ヒータコア24及び空調ドア33よりも下流であってデフロスタードア34、前方吹出しドア35、側方吹出しドア36及び足元吹出しドア37においてメインダクト11内に配置される。
【0037】
バッテリ流入空気温度センサ56は、分岐ダクト12に流入してバッテリ25へと流れる空気の温度を検出する温度センサである。バッテリ流入空気温度センサ56は、バッテリ25よりも上流側の分岐ダクト12内に配置される。バッテリ温度センサ57は、バッテリ25の温度を検出する温度センサである。バッテリ温度センサ57は、バッテリ25に取り付けられる。
【0038】
<送風システムの作動モード>
次に、
図2~
図5を参照して、送風システム1における作動モードについて説明する。
図2は、送風システム1がバッテリ25の冷却のみに用いられているバッテリ冷却モードにおける送風システム1の状態を示している。なお、
図2~
図5において、矢印は空気の流れを示している。
【0039】
バッテリ冷却モードでは、内外気切換ドア31が外気導入口16を閉じ、よって内気導入口15が開かれる。またブロワ22が駆動され、よって空気が内気導入口15から流入すると共にメインダクト11内のメイン空気通路を通って空気が流れる。エアミックスドア32は、ヒータコア24が設けられた第1空気通路11aを閉じると共に、空調ドア33は第2空気通路11bを閉じる。加えて、バッテリ冷却モードでは、バッテリドア38が開かれる。また、エバポレータ23を備える冷却装置は作動されず、よってエバポレータ23は空気を冷却しない。
【0040】
この結果、バッテリ冷却モードでは、内気導入口15から流入した空気が、ブロワ22の吸引によりメインダクト11を通って流れる。その後、メインダクト11内を流れる空気の全量が分岐ダクト12に流入して、送風対象であるバッテリ25へと流れる。このようにバッテリ25へ空気が流れることで、バッテリ25が冷却される。一方、第1空気通路11aがエアミックスドア32に閉じられ且つ第2通路が空調ドア33に閉じられるため、送風対象である吹出し連通空気通路11cには空気は流入しない。なお、バッテリ25の冷却のために、エバポレータ23を備える冷却装置が作動されてもよい。
【0041】
図3は、送風システム1が車両の室内の冷房に用いられている冷房モードにおける送風システム1の状態を示している。冷房モードでは、内外気切換ドア31は内気導入口15及び外気導入口16のいずれを閉じてもよい。
図3に示した例では、外気導入口16が閉じられている。また、ブロワ22が駆動されてメインダクト11内のメイン空気通路を通って空気が流れる。エアミックスドア32は、ヒータコア24が設けられた第1空気通路11aを閉じると共に、空調ドア33が開かれる。また、バッテリドア38は、バッテリ25の温度が高いときには開かれ、低いときには閉じられる。加えて、エバポレータ23を備える冷却装置が作動され、よってエバポレータ23により空気が冷却される。
【0042】
この結果、冷房モードでは、内気導入口15又は外気導入口16から流入した空気が、ブロワ22の吸引によりメインダクト11内を通って流れる。このとき空気はエバポレータにより冷却される。バッテリドア38が閉じられているときには、メインダクト11内を流れる空気全量が、第2空気通路11bを通って、送風対象である吹出し連通空気通路11cに流入する。そして、ドア34~37の開度に応じて各分割通路へと冷えた空気が流れる。また、バッテリドア38が開かれているときには、メインダクト11内を流れる一部の空気は分岐ダクト12に流入し、送風対象であるバッテリ25へと流れ、これによりバッテリ25が冷却される。
【0043】
図4は、送風システム1が車両の室内の暖房に用いられている暖房モードにおける送風システム1の状態を示している。暖房モードでも、内外気切換ドア31は内気導入口15及び外気導入口16のいずれを閉じてもよい。また、ブロワ22が駆動されてメインダクト11内のメイン空気通路を通って空気が流れる。エアミックスドア32は、ヒータコア24が設けられた第1空気通路11aを開くと共に、第2空気通路11bを閉じる。また、バッテリドア38は、バッテリ25の温度が高いときには開かれ、低いときには閉じられる。エバポレータ23を備える冷却装置は作動されず、ヒータコア24には高温の冷却水が流される。
【0044】
この結果、暖房モードでは、内気導入口15又は外気導入口16から流入した空気が、ブロワ22の吸引によりメインダクト11内を通って流れる。バッテリドア38が閉じられているときには、メインダクト11内を流れる空気全量が第1空気通路11aを通って流れ、ヒータコア24において加熱される。加熱された空気は、送風対象である吹出し連通空気通路11cに流入し、ドア34~37の開度に応じて各分割通路へと流れる。また、バッテリドア38が開かれているときには、メインダクト11内を流れる一部の空気はヒータコア24を通って流れる前に分岐ダクト12に流入し、送風対象であるバッテリ25へと流れ、これによってバッテリ25が冷却される。
【0045】
図5は、送風システム1が車両の室内の除湿に用いられている除湿モードにおける送風システム1の状態を示している。除湿モードでは、ブロワ22及びドア31~37は基本的に暖房モードと同様に制御されるが、暖房モードとは異なりエバポレータ23を備える冷却装置が作動される。したがって、メインダクト11内を通って流れる空気は、エバポレータ23において冷却されると共にヒータコア24によって加熱される。このため、吹出し連通空気通路11cに流入する空気の温度はメインダクト11に流入した空気の温度と同程度の温度になっている。
【0046】
また、除湿モードでは、エアミックスドア32は、第1空気通路11aにも第2空気通路11bにも空気が流れる作動位置に位置する。第1空気通路11a及び第2空気通路11bを通って流れる空気の流量の比率は、設定温度等に応じて変化すする。
【0047】
このような送風システム1における作動モードの制御は、制御装置として機能するECU40によって行われる。ECU40は、ユーザによって設定された室内温度、車両の室内の温度を検出する温度センサ(図示せず)の出力、バッテリ温度センサ57によって検出された温度等に基づいて、ブロワ22のブロワモータ22a、エバポレータ23を備えた冷却装置、ドア31~38のアクチュエータ31a~38aなどの送風システム1の送風に関するアクチュエータを制御する。
【0048】
なお、
図2~
図5に示した送風システム1の作動モードは一例である。送風システム1は、各ドアが全閉と全開との間の作動状態にある作動モードなど、
図2~
図5に示した作動モードとは異なる複数の作動モードで作動することができる。
【0049】
<異常診断>
本実施形態に係るECU40は、上述したように、送風システム1の異常を診断する異常診断雄値として機能する。以下では、ECU40による異常診断について説明する。
【0050】
ところで、送風調整装置が目標となる作動状態(以下、「目標作動状態」という)にあるときの送風対象(例えば、バッテリ25)の温度や送風対象(例えば、吹出し連通空気通路11c)へ送られる空気の温度は或る程度推定することができる。このようにして推定された温度は、送風調査装置が目標作動状態に一致した作動状態になっていれば、実際に検出された温度にほぼ一致する。ところが、送風調整装置に異常があって実際の作動状態が目標作動状態とは異なる作動状態になっているときには、上述したようにして推定された温度は実際に検出された温度とは異なる温度になる。そこで、本実施形態に係る異常診断装置は、上述したようにして推定された温度(推定温度)と検出された実際の温度(実温度)とが大きく異なる場合には、送風調整装置に異常があると判定する。
【0051】
図6は、送風システム1に関するアクチュエータの異常診断に関する、ECU40のプロセッサの機能ブロック図である。ECU40のプロセッサは、機能ブロックとして、作動状態取得部41と、温度取得部42と、温度推定部43と、異常診断部44と、警告送信部45とを備える。
【0052】
作動状態取得部41は、送風調整装置の目標作動状態、すなわち送風調整装置の各アクチュエータの目標作動状態を取得する。本実施形態では、各アクチュエータの目標作動状態は、ECU40から各アクチュエータへの制御信号に基づいて取得される。したがって、例えば、送風調整装置の一つのアクチュエータであるブロワ22の目標作動状態は、ECU40からブロワ22のブロワモータ22aへ送信される制御信号(例えば、目標回転速度を示す信号又は目標供給電力を示す信号)に基づいて取得される。また、例えば、送風調整装置の一つのアクチュエータである空調ドア33の空調ドアアクチュエータ33aの目標作動状態は、ECU40から空調ドアアクチュエータ33aへの制御信号に基づいて取得される。
【0053】
温度取得部42は、送風対象の温度を検出する温度センサ又は送風対象へ送られる空気の温度を検出する温度センサ(例えば、吹出し温度センサ55)によって検出された温度を取得する。特に、本実施形態では、温度取得部42は、複数の送風対象それぞれの温度を検出する温度センサ又は複数の送風対象それぞれへ送られる空気の温度を検出する温度センサによって検出された温度を取得する。例えば、送風対象であるバッテリ25の温度はバッテリ温度センサ57によって検出され、温度取得部42はこのバッテリ温度センサ57によって検出された温度を取得する。また、送風対象である吹出し連通空気通路11cへ送られる空気の温度は吹出し温度センサ55によって検出され、温度取得部42は、この吹出し温度センサ55によって検出された温度を取得する。
【0054】
温度推定部43は、送風調整装置の目標作動状態に基づいて、送風対象の温度又は送風対象へ送られる空気の温度を推定する。特に、本実施形態では、温度推定部43は、複数の送風対象それぞれの温度又は複数の送風対象へ送られる空気の温度を推定する。具体的には、本実施形態では、温度推定部43は、送風調整装置の目標作動状態に基づいて、バッテリ25の温度を推定する。加えて、温度推定部43は、送風調整装置の目標作動状態に基づいて、吹出し連通空気通路11cへ送られる空気の温度を推定する。以下では、バッテリ25の温度や、吹出し連通空気通路11cへ送られる空気の温度の推定方法について説明する。
【0055】
まず、バッテリ25の温度の推定方法について説明する。本実施形態では、温度推定部43は、下記式(1)によってバッテリ25の温度を推定する。
Tbe(t)=Tbs(t-Δt)+ΔTbe(t) …(1)
上記式(1)において、Tbe(t)は時刻tにおけるバッテリ25の推定温度(℃)を示している。また、Tbsは、時刻tよりも所定時間Δtだけ前の時刻におけるバッテリ温度センサ57によって検出されたバッテリ25の実温度(℃)を示している。
【0056】
加えて、式(1)におけるΔTbeは、時刻tよりもΔtだけ前の時点から時刻tまでの間のバッテリ25の温度の変化量(℃)を示している。具体的には、ΔTbeは、下記式(2)~(4)に基づいて算出される。
ΔTbe(t)=(Qh(t)-Qc(t))/C …(2)
Qh(t)=Ib2×R …(3)
Qc(t)=K×Vb×ΔT …(4)
【0057】
上記式(2)において、Cは、バッテリ25の熱容量(W/℃)であり、予め実験的に又は計算によって求められた定数である。上記式(2)において、Qhは、時刻tよりもΔtだけ前の時点から時刻tまでの間のバッテリ25の推定発熱量(W)を示している。すなわち、Qhは、バッテリ25への充放電によってバッテリ25に電流が流れることによる発熱量を示しており、上記式(3)によって算出される。上記式(3)において、Ibは、バッテリ25への充放電に伴ってバッテリ25に流れる電流(A)を示しており、Rは、バッテリ25の内部抵抗(Ω)を示している。バッテリ25に流れる電流(A)は例えばバッテリ25に接続された電流計等によって検出され、バッテリ25の内部抵抗は予め実験的に又は計算によって求められる。
【0058】
一方、上記式(2)におけるQcは、時刻tよりもΔtだけ前の時点から時刻tまでの間のバッテリ25からの推定放熱量(W)を示している。すなわちQcは、バッテリ25へ送られることによってバッテリ25から放出される熱量を示しており、上記式(4)によって算出される。上記式(4)におけるKは、単位流量及び単位温度差当たりの放熱量を表しており(W/(m3/h・℃))、予め実験的に又は計算によって求められた定数である。また、式(4)におけるΔTは、時刻tよりもΔtだけ前の時点におけるバッテリ25の実温度T(t-Δt)とバッテリ25に流入する空気の温度との差(℃)である。本実施形態では、バッテリ25に流入する空気の温度は、バッテリ流入空気温度センサ56によって検出される。
【0059】
加えて、式(4)におけるVbは、バッテリ25を通って流れる空気の推定流量(m
3/h)である。バッテリ25を通って流れる空気の推定流量は、送風調整装置の目標作動状態に基づいて、
図7に示したような抵抗曲線及びブロワ性能曲線を用いて算出される。
【0060】
図7は、ダクト10内の空気通路を空気が流れるときの流量と圧損との関係を示す抵抗曲線と、ブロワ22の出力を任意の値に設定したときの圧損(流路抵抗)と流量との関係であるブロワ性能曲線とを示す図である。
図7において、横軸はダクト10内を流れる空気の流量を、縦軸は空気の流れに対する圧力損失を、それぞれ示している。
【0061】
バッテリ25に流入する空気に対する抵抗を表すバッテリ抵抗曲線からわかるように、バッテリ25に流入する空気が増えるほどこの空気に対する圧力損失が大きくなる。このバッテリ抵抗曲線は予め実験的に又は計算によって求められる共に、ECU40のメモリに記憶されている。バッテリ抵抗曲線は、バッテリドア38の開度に応じて変化するため、バッテリドア38の開度毎に求められて記憶されている。
【0062】
同様に、吹出し連通空気通路11cに流入する空気に対する抵抗を表す空調抵抗曲線からわかるように、吹出し連通空気通路11cを通って流れる空気が増えるほどこの空気に対する圧力損失が大きくなる。この空調抵抗曲線も予め実験的に又は計算によって求められる共に、ECU40のメモリに記憶されている。空調抵抗曲線は、エアミックスドア32の作動位置(作動角度)、空調ドア33の作動位置(開度)、及び分割ダクトに通じるドア34~37の作動位置(開度)に応じて変化するため、これらドア32~37の作動位置毎に求められて記憶されている。
【0063】
全体抵抗曲線は、ダクト10全体を通って流れる空気に対する抵抗を表す抵抗曲線である。したがって、任意の圧損においてバッテリ抵抗曲線の流量と空調抵抗曲線の流量とを合計した流量が全体抵抗曲線の流量になっている。
【0064】
また、ブロワ22の出力を任意の値に設定したときの圧損と流量との関係を表すブロワ性能曲線からわかるように、空気通路を通って流れる空気の圧損が大きくなるほど空気通路を通って流れる流量が少なくなる。このブロワ性能曲線も予め実験的に又は計算によって求められると共に、ECU40のメモリに記憶されている。ブロワ性能曲線は、ブロワ22の設定出力に応じて変化するため、ブロワ22の設定出力毎に求められて記憶されている。
【0065】
バッテリ25を通って流れる空気の流量Vbを推定するときには、作動状態取得部41によって取得されたブロワ22の目標作動状態に基づいて、この目標作動状態に対応するブロワ性能曲線が算出される。さらに、作動状態取得部41によって取得されたドア32~38のアクチュエータ32a~37aの目標作動状態に基づいて、この目標作動状態に対応するバッテリ抵抗曲線及び空調抵抗曲線が算出される。加えて、このようにして算出されたバッテリ抵抗曲線と空調抵抗曲線とに基づいて全体抵抗曲線が求められる。そして、全体抵抗曲線とブロワ性能曲線との交点における流量が、ブロワ22から送出されたダクト10内を流れる空気の総流量Vallとして算出される。また、この交点と圧損が同じバッテリ抵抗曲線上の点における空気の流量が、分岐ダクト12を通ってバッテリ25へと流れる空気の流量Vbとして算出される。加えて、この交点と圧損が同じ空調抵抗曲線上の点における空気の流量が、吹出し連通空気通路11cへと流れる空気の流量Vaとして算出される。このようにして算出されたバッテリ25を通って流れる空気の流量Vbが上記式(4)に代入され、最終的にバッテリ25の温度が推定される。
【0066】
なお、バッテリ25以外の発熱機器が送風対象である場合には、温度推定部43は、バッテリ25以外の発熱機器の温度を推定してもよい。その場合であっても、温度推定部43は、発熱機器の発熱量及び放熱量に基づいて発熱機器の温度を推定する。このうち発熱機器からの放熱量は、送風調整装置の目標作動状態に基づいて算出された発熱機器への空気の流量と、発熱機器の温度と発熱機器へ送られる空気の温度との差とに基づいて算出される。
【0067】
次に、吹出し連通空気通路11cへ送られる空気の温度の推定方法について説明する。本実施形態では、温度推定部43は、下記式(5)によって吹出し連通空気通路11cへ送られる空気の温度Tatを推定する。
Tat=(1-X)×Tcool+X×Thot …(5)
上記式(5)において、Xは、吹出し連通空気通路11cに流入した空気のうちヒータコア24が設けられた第1空気通路11aを通って流れた空気の割合を示している。したがって、1-Xは、吹出し連通空気通路11cに流入した空気のうちヒータコア24のない第2空気通路11bを通って流れた空気の割合を示している。割合Xは、エアミックスドア32及び空調ドア33の目標作動状態に基づいて算出される。
【0068】
また、Tcoolは、エバポレータ23から流出した空気の推定温度を示している。Tcoolは、例えば、メインダクト11に流入する空気の温度と、ブロワ22から送出されたダクト10内を流れる空気の総流量Vallと、エバポレータ23の温度とに基づいて算出される。
【0069】
具体的には、これらパラメータの値とエバポレータ23から流出した空気の温度Tcoolとの関係が予め実験的に又は計算により求められ、マップとしてECU40のメモリに保存される。そして、メインダクト11に流入する空気の温度は吸気温度センサ51によって検出され、ブロワ22から送出されたダクト10内を流れる空気の総流量Vallは上述したように
図7に示した関係に基づいて算出され、エバポレータ23の温度はエバポレータ温度センサ53によって検出される。このようにして検出又は算出された値と、上述したマップとに基づいて、エバポレータ23から流出した空気の推定温度Tcoolが算出される。
【0070】
また、Thotは、ヒータコア24から流出した空気の推定温度を示している。Thotは、例えば、エバポレータ23から流出した空気の推定温度Tcoolと、ヒータコア24を通って流れる空気の流量と、ヒータコア24の温度とに基づいて算出される。
【0071】
具体的には、これらパラメータの値とヒータコア24から流出した空気の温度Thotとの関係が予め実験的に又は計算により求められ、マップとしてECU40のメモリに保存される。そして、エバポレータ23から流出した空気の推定温度Tcoolは上述したように算出される。また、ヒータコア24を通って流れる空気の流量は、上述したようにして算出された吹出し連通空気通路11cへと流れる空気の流量Vaに上述した割合Xを乗算することによって算出される。さらに、ヒータコア24の温度は、ヒータコアに流れる冷却水の温度を検出する水温センサ(図示せず)によって検出される。
【0072】
なお、本実施形態では、バッテリ25の温度を推定する際に用いられるバッテリ25に流入する空気の温度として、バッテリ流入空気温度センサ56によって検出された温度が用いられる。しかしながら、バッテリ流入空気温度センサ56が設けられていない場合には、バッテリ25の温度を推定する際に用いられるバッテリ25に流入する空気の温度として、上述したようにして算出されたエバポレータ23から流出した空気の推定温度Tcoolが用いられてもよい。
【0073】
異常診断部44は、送風システム1の異常、特に送風調整装置の異常を診断する。具体的には、異常診断部44は、温度取得部42によって取得された送風対象の実温度と温度推定部43によって推定された同じ送風対象の推定温度との差が基準値以上であるときには、その送風調整装置に異常があると判定する。また、異常診断部44は、温度取得部42によって取得された送風対象へ送られる空気の実温度と、温度推定部43によって推定された同じ送風対象へ送られる空気の推定温度との差が基準値以上であるときには、送風調整装置に異常があると判定する。
【0074】
まず、空調ドア33の異常診断について具体的に説明する。ところで、空調ドア33に異常が生じていない場合には、除湿モードにおいて、吹出し連通空気通路11cへ送られる空気の実温度と推定温度とはほぼ同一の温度になる。ところが、空調ドア33に異常が生じていると、ヒータコア24が設けられた第1空気通路11aを流れる空気とヒータコア24のない第2空気通路11bを流れる空気との比率が目標比率からずれ、その結果、吹出し連通空気通路11cへ送られる空気の推定温度が実温度から大きくずれることになる。
【0075】
また、本実施形態では、ブロワ22にはブロワ回転速度センサ52が取り付けられている。したがって、異常診断部44は、ブロワ回転速度センサ52の出力に基づいて、ブロワ22に異常があるか否かを判定することができる。加えて、本実施形態では、エアミックスドア32には作動監視センサ54が取り付けられている。したがって、異常診断部44は、作動監視センサ54の出力に基づいてエアミックスドア32に異常があるか否かを判定することができる。
【0076】
したがって、本実施形態では、ブロワ22及びエアミックスドア32には異常が無いと判定されている場合、
図5に示した除湿モードにおいて、温度取得部42によって取得された吹出し連通空気通路11cへ送られる空気の実温度と、温度推定部43によって推定された吹出し連通空気通路11cへ送られる空気の推定温度との差が基準値以上である場合には、異常診断部44は、空調ドア33に異常があると判定する。ここで、基準値は、例えば、空調ドア33に異常が生じているときにのみ取り得る、吹出し連通空気通路11cへ送られる空気の実温度と推定温度との差の最小値又はそれ以上の温度に設定される。
【0077】
すなわち、本実施形態では、ブロワ22、エアミックスドア32及び空調ドア33が送風対象である吹出し連通空気通路11cへの空気の流量を調整する送風調整装置として機能する。このうち、ブロワ22及びエアミックスドア32は、連通空気通路11cへ送られる空気の温度以外のパラメータであるブロワ22の回転速度や作動監視センサ54の出力に基づいて異常診断可能な送風調整装置(第2送風調整装置)であり、一方、本実施形態では、空調ドア33は、連通空気通路11cへ送られる空気の温度以外のパラメータに基づいて異常診断することができない送風調整装置(第1送風調整装置)である。そして、異常診断部44は、吹出し連通空気通路11cへ送られる空気の温度以外のパラメータであるブロワ22の回転速度や作動監視センサ54の出力に基づいて、ブロワ22及びエアミックスドア32の異常を診断する。加えて、異常診断部44は、ブロワ22及びエアミックスドア32には異常が無いと判定された場合に、吹出し連通空気通路11cへ送られる空気の実温度と推定温度との差が基準値以上であるときには、空調ドア33に異常があると判定する。
【0078】
なお、上述した例では、
図5に示した除湿モードにおける吹出し連通空気通路11cへ送られる空気の温度に基づいて空調ドア33の異常診断が行われている。しかしながら、空調ドア33の異常診断は、除湿モード以外のモードにおける吹出し連通空気通路11cへ送られる空気の温度に基づいて空調ドア33の異常診断が行われてもよい。しかしながら、吹出し連通空気通路11cへ送られる空気の温度は、吹出し連通空気通路11cへ到達するまでにエバポレータ23によって冷却されるか又はヒータコア24によって加熱されない場合、流入する空気の温度と同一である。したがて、この場合、吹出し連通空気通路11cへ送られる空気の実温度は、送風調整装置の作動状態に無関係に、吸気温度センサ51によって検出された温度に基づいて算出された吹出し連通空気通路11cへ送られる空気の推定温度に一致する。したがって、異常診断部44は、送風対象が送風調整装置の下流側に位置する吹出し連通空気通路11cである場合には、吹出し連通空気通路11cへ流れる空気を加熱又は冷却する温度調整器(例えば、エバポレータ23、ヒータコア24)によって吹出し連通空気通路11cへ流れる空気が加熱又は冷却されているときにおける、吹出し連通空気通路11cへ送られる空気の実温度と推定温度との差が基準値以上であるときには、空調ドア33に異常があると判定する。一方で、吹出し連通空気通路11cへ流れる空気を加熱又は冷却する温度調整器によって吹出し連通空気通路11cへ流れる空気が加熱又は冷却されていないときには、吹出し連通空気通路11cへ送られる空気の実温度と推定温度との差が基準値未満であっても、空調ドア33が正常であるとは判定しない。
【0079】
次に、バッテリドア38の異常診断について具体的に説明する。ところで、バッテリドア38に異常が生じてない場合には、エアミックスドア32が開く作動モードにおいて、バッテリ25の実温度とバッテリ25の推定温度とはほぼ同一となる。ところが、バッテリドア38に異常が生じていると、バッテリ25を流れる空気の流量が目標値から大きくずれ、その結果、バッテリ25の推定温度がバッテリ25の実温度から大きくずれることになる。
【0080】
したがって、本実施形態では、ブロワ22及びエアミックスドア32には異常がないと判定されている場合、エアミックスドア32が開く作動モードにおいて、温度取得部42によって取得されたバッテリ25の実温度と、温度推定部43によって推定されたバッテリ25の推定温度との差が基準値以上である場合には、異常診断部44は、バッテリドア38に異常があると判定する。ここで、基準値は、例えば、バッテリドア38に異常が生じているときにのみ取り得る、バッテリ25の実温度と推定温度との差の最小値又はそれ以上の温度に設定される。
【0081】
すなわち、本実施形態では、ブロワ22、エアミックスドア32及びバッテリドア38が送風対象であるバッテリ25への空気の流量を調整する送風調整装置として機能する。このうち、ブロワ22及びエアミックスドア32は、バッテリ25へ送られる空気の温度以外のパラメータであるブロワ22の回転速度や作動監視センサ54の出力に基づいて異常診断可能な送風調整装置(第2送風調整装置)であり、一方、本実施形態では、バッテリドア38は、バッテリ25へ送られる空気の温度以外のパラメータに基づいて異常診断することができない送風調整装置(第1送風調整装置)である。そして、異常診断部44は、バッテリ25へ送られる空気の温度以外のパラメータであるブロワ22の回転速度や作動監視センサ54の出力に基づいて、ブロワ22及びエアミックスドア32の異常を診断する。そして、異常診断部44は、ブロワ22及びエアミックスドア32には異常が無いと判定された場合に、バッテリ25の実温度と推定温度との差が基準値以上であるときには、バッテリドア38に異常があると判定する。
【0082】
このように、本実施形態では、異常診断部44は、複数の送風対象それぞれについて、送風対象の実温度と推定温度との差が対応する基準値以上であるときには、その送風対象への送風に関連する送風調整装置に異常があると判定する。
【0083】
警告送信部45は、異常診断部44によって送風調整装置に異常があると判定された場合には、ECU40は、送風システム1のユーザに対して警告を発するように、警告器へ信号を送信する。警告器としては、メータパネル内に設けられた警告等、ユーザに音声にて警告を行うスピーカ、警告を画面に表示するディスプレイなどが用いられる。
【0084】
<フローチャート>
図8~
図10を参照して、送風システム1に関するアクチュエータの異常を診断する異常診断処理について説明する。
図8は、異常診断部44によって実行される異常診断処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。図示した制御ルーチンは、一定の時間間隔毎に実行される。
【0085】
異常診断部44は、まず、ステップS11において、ブロワ22が作動中であるか否かを判定する。ブロワ22が作動中であるか否かは、ブロワ22への制御信号に基づいて判定される。ステップS11において、ブロワ22が作動中でないと判定された場合には、制御ルーチンが終了せしめられる。一方、ステップS11において、ブロワ22が作動中であると判定された場合には、制御ルーチンはステップS12へと進む。
【0086】
ステップS12では、異常診断部44は、ブロワ22の実回転速度Nsを取得すると共に、ブロワ22の目標回転速度Ntを取得する。ブロワ22の実回転速度Nsは、例えば、ブロワ回転速度センサ52によって検出され、目標回転速度Ntはブロワ22への制御信号に基づいて算出される。
【0087】
次いで、異常診断部44は、ステップS13において、実回転速度Nsと目標回転速度Ntとの差が基準値Nref未満であるか否かを判定する。実回転速度Nsと目標回転速度Ntとの差が基準値Nref以上である場合には、制御ルーチンはステップS14へと進む。ステップS14では、異常診断部44は、ブロワ22に異常があると判定し、ユーザに対する警告を行い、制御ルーチンが終了せしめられる。一方、ステップS13において、実回転速度Nsと目標回転速度Ntとの差が基準値Nref未満であると判定された場合には、制御ルーチンはステップS15へと進む。
【0088】
ステップS15では、異常診断部44は、冷房、暖房及び除湿などの空調を必要とする作動モードの実施要求があるか否かを判定する。ステップS15において、空調を必要とする作動モードの実施要求が無いと判定された場合には、ステップS16がスキップされる。一方、ステップS15において空調を必要とする作動モードの実施要求があると判定された場合にはステップS16へと進む。ステップS16では、異常診断部44は、
図9に示した空調関連ドアの異常診断処理を実行する。
【0089】
ステップS17では、異常診断部44は、バッテリ25の冷却要求があるか否かを判定する。ステップS17において、バッテリ25の冷却要求が無いと判定された場合には、ステップS18がスキップされる。一方、ステップS17においてバッテリ25の冷却要求があると判定された場合には、ステップS18へと進む。異常診断部44は、ステップS18では、
図10に示したバッテリドア38の異常診断処理を実行する。
【0090】
図9は、
図8のステップS16において実行される空調関連ドアの異常診断処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。
図9に示したように、異常診断部44は、まず、ステップS21において、吹出し連通空気通路11c内の空気の実温度Tas及び推定温度Taeを取得する。吹出し連通空気通路11c内の空気の実温度Tasは、吹出し温度センサ55から温度取得部42を介して取得される。吹出し連通空気通路11c内の空気の推定温度Taeは、温度推定部43から取得される。
【0091】
次いで、異常診断部44は、ステップS22において、吹出し連通空気通路11c内の空気の実温度Tasと推定温度Taeとの差が基準値Taref異常であるか否かを判定する。ステップS22において、実温度Tasと推定温度Taeとの差が基準値Taref未満であると判定された場合には、制御ルーチンが終了される。一方、ステップS22において、実温度Tasと推定温度Taeとの差が基準値Taref以上であると判定された場合には、制御ルーチンはステップS23へと進む。
【0092】
ステップS23において、異常診断部44は、エアミックスドア32の目標作動角度Dat及び実作動角度Dasを取得する。エアミックスドア32の目標作動角度Datは、ECU40からの制御信号に基づいて算出される。一方、エアミックスドア32の実作動角度は、作動監視センサ54によって検出される。
【0093】
次いで、ステップS24において、異常診断部44は、実作動角度Dasが目標作動角度Datとほぼ一致しているか否かを判定する。実作動角度Dasが目標作動角度Datとほぼ一致していると判定された場合には、制御ルーチンはステップS25へと進む。ステップS25では、異常診断部44は、空調ドア33に異常があると判定し、ユーザに対する警告を行う。一方、ステップS24において、実作動角度Dasが目標作動角度Datから大きくずれていると判定された場合には、制御ルーチンはステップS26へと進む。ステップS26では、異常診断部44は、エアミックスドア32に異常があると判定し、ユーザに対する警告を行う。
【0094】
図10は、
図8のステップS18において実行されるバッテリドア38の異常診断処理の制御ルーチンを示すフローチャートである。
図10に示したように、異常診断部44は、まず、ステップS31において、バッテリの実温度Tbs及びバッテリの推定温度Tbeを取得する。バッテリ25の実温度Tbsは、バッテリ温度センサ57から温度取得部42を介して取得される。バッテリ25の推定温度Taeは、温度推定部43から取得される。
【0095】
次いで、異常診断部44は、ステップS32において、バッテリ25の実温度Tbsと推定温度Tbeとの差が基準値Tbref以上であるか否かを判定する。ステップS32において、実温度Tbsと推定温度Tbeとの差が基準値Tbref未満であると判定された場合には、制御ルーチンが終了される。一方、ステップS32において、実温度Tbsと推定温度Tbeとの差が基準値Tbref以上であると判定された場合には、制御ルーチンはステップS33へと進む。
【0096】
ステップS33では、異常診断部44は、バッテリドア38以外の機器、すなわちブロワ22、エアミックスドア32及び空調ドア33に異常判定が既になされているか否かが判定される。バッテリドア38以外の機器に異常判定が既になされている場合には制御ルーチンが終了せしめられる。一方、ステップS33において、バッテリドア38以外の機器に異常判定は未だなされていないと判定された場合には、ステップS34へと進む。ステップS34では、異常診断部44は、バッテリドア38に異常があると判定し、ユーザに対する警告を行う。
【0097】
以上、本発明に係る好適な実施形態を説明したが、本発明はこれら実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内で様々な修正及び変更を施すことができる。
【符号の説明】
【0098】
1 送風システム
10 ダクト
22 ブロワ
25 バッテリ
32 エアミックスドア
33 空調ドア
38 バッテリドア
40 ECU