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特許7359115オプション用分岐配線の固定構造及びオプション用分岐配線の固定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-10-02
(45)【発行日】2023-10-11
(54)【発明の名称】オプション用分岐配線の固定構造及びオプション用分岐配線の固定方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 16/02 20060101AFI20231003BHJP
   H02G 1/06 20060101ALI20231003BHJP
   F16L 3/14 20060101ALI20231003BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20231003BHJP
   H01B 13/012 20060101ALI20231003BHJP
   B60K 37/00 20060101ALI20231003BHJP
【FI】
B60R16/02 620B
H02G1/06
F16L3/14 Z
H01B7/00 301
H01B13/012 B
B60K37/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020155511
(22)【出願日】2020-09-16
(65)【公開番号】P2022049349
(43)【公開日】2022-03-29
【審査請求日】2022-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西郡 健太
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-102952(JP,A)
【文献】実開昭57-141955(JP,U)
【文献】特開平11-176243(JP,A)
【文献】特開2014-011008(JP,A)
【文献】実開昭58-165807(JP,U)
【文献】特開平11-234845(JP,A)
【文献】特開2016-004686(JP,A)
【文献】特開2001-287602(JP,A)
【文献】特開2002-281646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 16/02
H02G 1/06
F16L 3/14
H01B 7/00
H01B 13/012
B60K 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両内で用いられる複数の配線が束ねられて前記車両内に収容されたワイヤハーネス幹線から分岐された配線であるオプション用分岐配線が、前記ワイヤハーネス幹線の長手方向に沿って配置されてあるいは前記長手方向に沿って折り畳まれた状態とされて、前記ワイヤハーネス幹線にテープで固定された、オプション用分岐配線の固定構造において、
前記テープは、
片面のみに粘着剤が塗布された連続する1本であり、
前記ワイヤハーネス幹線が前記車両内に収容された状態から前記オプション用分岐配線を利用するために前記車両内の開口部に引き出された状態とされた場合に前記開口部に対して前記オプション用分岐配線の前記長手方向の奥側となる位置である長手方向奥側位置にて、前記ワイヤハーネス幹線に前記オプション用分岐配線を固定するように周方向に巻回された後、
前記長手方向奥側位置にて周方向に巻回された前記テープの巻回個所から前記長手方向に離間するように前記開口部に対して前記オプション用分岐配線の前記長手方向の手前側へと延ばされて、前記開口部に対して前記オプション用分岐配線の前記長手方向の前記手前側となる位置である長手方向手前側位置にて前記ワイヤハーネス幹線に前記オプション用分岐配線を固定するように周方向に巻回されている、
オプション用分岐配線の固定構造。
【請求項2】
請求項1に記載のオプション用分岐配線の固定構造であって、
前記長手方向手前側位置にて周方向に巻回された後の前記テープの終端部は、接着面同士が接着されるように折り返されて、前記ワイヤハーネス幹線及び前記オプション用分岐配線から突出されている、
オプション用分岐配線の固定構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載のオプション用分岐配線の固定構造であって、
前記オプション用分岐配線における前記ワイヤハーネス幹線からの分岐個所とは反対側となる一方端には、オプションの対象となるオプション機器に接続するためのコネクタが設けられており、
前記コネクタは前記開口部に対して前記オプション用分岐配線の前記長手方向の前記奥側に配置されており、
前記テープは、
前記テープの開始部である始端部が前記コネクタの近傍における前記一方端の側の前記オプション用分岐配線のみに周方向に巻回された後、前記長手方向奥側位置にて前記ワイヤハーネス幹線に前記オプション用分岐配線を固定するように周方向に巻回されている、
オプション用分岐配線の固定構造。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載のオプション用分岐配線の固定構造であって、
前記テープの色は、前記ワイヤハーネス幹線の色及び前記オプション用分岐配線の色に対して識別可能な色とされている、
オプション用分岐配線の固定構造。
【請求項5】
車両内で用いられる複数の配線が束ねられて前記車両内に収容されたワイヤハーネス幹線から分岐された配線であるオプション用分岐配線が、前記ワイヤハーネス幹線の長手方向に沿って配置されてあるいは前記長手方向に沿って折り畳まれた状態とされて、前記ワイヤハーネス幹線にテープで固定する際の、オプション用分岐配線の固定方法において、
片面のみに粘着剤が塗布された連続する1本の前記テープを用い、
前記ワイヤハーネス幹線が前記車両内に収容された状態から前記オプション用分岐配線を利用するために前記車両内の開口部に引き出された状態とされた場合に前記開口部に対して前記オプション用分岐配線の前記長手方向の奥側となる位置である長手方向奥側位置にて、前記ワイヤハーネス幹線に前記オプション用分岐配線を固定するように前記テープを周方向に巻回した後、
前記長手方向奥側位置にて周方向に巻回された前記テープの巻回個所から前記長手方向に離間するように前記開口部に対して前記オプション用分岐配線の前記長手方向の手前側へと前記テープを延ばして、前記開口部に対して前記オプション用分岐配線の前記長手方向の前記手前側となる位置である長手方向手前側位置にて前記ワイヤハーネス幹線に前記オプション用分岐配線を固定するように前記テープを周方向に巻回する、
オプション用分岐配線の固定方法。
【請求項6】
請求項5に記載のオプション用分岐配線の固定方法であって、
前記長手方向手前側位置にて周方向に巻回した後の前記テープの終端部を、接着面同士が接着されるように折り返して、前記ワイヤハーネス幹線及び前記オプション用分岐配線から突出させる、
オプション用分岐配線の固定方法。
【請求項7】
請求項5または6に記載のオプション用分岐配線の固定方法であって、
前記オプション用分岐配線における前記ワイヤハーネス幹線からの分岐個所とは反対側となる一方端に、オプションの対象となるオプション機器に接続するためのコネクタを設け、
前記コネクタを前記開口部に対して前記オプション用分岐配線の前記長手方向の前記奥側に配置し、
前記テープの開始部である始端部が前記コネクタの近傍における前記一方端の側の前記オプション用分岐配線のみに前記テープを周方向に巻回した後、前記長手方向奥側位置にて前記ワイヤハーネス幹線に前記オプション用分岐配線を固定するように前記テープを周方向に巻回する、
オプション用分岐配線の固定方法。
【請求項8】
請求項5~7のいずれか一項に記載のオプション用分岐配線の固定方法であって、
前記テープの色を、前記ワイヤハーネス幹線の色及び前記オプション用分岐配線の色に対して識別可能な色とする、
オプション用分岐配線の固定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両内に収容されたワイヤハーネス幹線から分岐されたオプション用分岐配線を、ワイヤハーネス幹線にテープで固定する、オプション用分岐配線の固定構造及びオプション用分岐配線の固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両には多数の電装品が設けられており、各電装品への電力や制御信号等を伝達するために、ワイヤハーネスが用いられている。当該ワイヤハーネスは、各電装品に接続するための配線が束ねられてワイヤハーネス幹線とされて、配線の先端には電装品に接続するためのコネクタが設けられている。
【0003】
車両には、ユーザの希望に応じて追加できるオプションが用意されており、ユーザは車両の購入時にオプションを追加するか否かを選択できる。ワイヤハーネス(ワイヤハーネス幹線)には、ユーザがオプションを追加した場合にオプション機器に接続するためのオプション用分岐配線が予め用意されている。オプション用分岐配線は、ワイヤハーネス幹線から分岐されており、オプションが追加されなかった場合に車両の振動等にて異音が発生しないように、ワイヤハーネス幹線にテープ等にて固定されている。なおオプションが追加された場合では、車両販売店の作業者は、車両にオプション機器を取り付け、ワイヤハーネス幹線にテープ等にて固定されているオプション用分岐配線のテープ等を取り外してオプション用分岐配線を引き出してオプション機器に接続している。
【0004】
ワイヤハーネスは、ユーザから見えないように車両内に収容されており、車両販売店の作業者がオプション用分岐配線を引き出す際の作業が困難な場所に収容されている場合があり、作業時間が長時間となる場合がある。従って、オプション用分岐配線を引き出す際の作業を、手間なく容易に、より短時間に行うことができる、オプション用分岐配線の固定構造及び固定方法が望まれている。
【0005】
例えば特許文献1には、オプション用電線(オプション用分岐配線)を折り畳んでワイヤハーネス幹線に固定する、オプション用電線の処理構造が開示されている。特許文献1では、オプション用電線を、寸法調整された複数の短尺チューブに挿通し、隣り合う短尺チューブの間を屈曲させて折り畳むことで、折り畳まれた状態の寸法精度の確保と、折り畳みの作業性を向上させている。また、折り畳まれたオプション用電線の各屈曲部にテープを巻回して屈曲状態を保持し、屈曲状態が保持されたオプション用電線の長手方向の中央部とワイヤハーネス幹線とをまとめてテープで巻回することで、屈曲状態のオプション用電線をワイヤハーネス幹線に固定している。
【0006】
また特許文献2には、三次元形状に折り曲げた形状が保持される形状保持力を有する樹脂材からなる結束保護用のテープを電線群(ワイヤハーネス幹線)の外周面に螺旋状に巻き付けて、車両内の配策経路に沿って直線状あるいは屈曲させるワイヤハーネスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-281646号公報
【文献】特開2015-97432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載のオプション用電線の処理構造では、折り畳まれたオプション用電線(オプション用分岐配線)の長手方向の中央部のみがテープにてワイヤハーネス幹線に固定されている(ほぼ1個所で固定されている)。従って、折り畳まれたオプション用電線が、車両の振動等によって、固定された中央部を中心として旋回するように揺動し、先端のコネクタが周辺部材に衝突して異音が発生する可能性がある。また車両販売店の作業者がオプション用電線を引き出してオプション機器に接続する際、折り畳まれたオプション用電線をワイヤハーネス幹線に固定しているテープと、折り畳まれた屈曲状態を保持するためのテープと、の複数のテープを剥がす必要があり、手間及び時間がかかる。
【0009】
また特許文献2に記載のワイヤハーネスでは、オプション用分岐配線が記載されていないが、仮にオプション用分岐配線が有る場合では、オプション用分岐配線が、折り畳まれてあるいは折り畳まれることなく、ワイヤハーネス(ワイヤハーネス幹線)の長手方向に沿って配置されると推定される。そして形状保持力を有するテープを螺旋状に巻き付けることで、ワイヤハーネス幹線にオプション用分岐配線を固定するものと推定される。この場合、車両販売店の作業者がオプション用分岐配線を引き出してオプション機器に接続する際、螺旋状に巻き付けられたテープを取り外してオプション用分岐配線を引き出し、取り外したテープを元通りとなるように螺旋状に巻き戻す必要があり、手間及び時間がかかる。
【0010】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、オプション用分岐配線がワイヤハーネス幹線に固定されている状態では、車両の振動等による異音が発生しないようにしっかりと固定されており、かつ、作業者がオプション用分岐配線を利用するために引き出す際には、手間なくより短時間に引き出し作業を行うことができる、オプション用分岐配線の固定構造及びオプション用分岐配線の固定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の第1の発明は、車両内で用いられる複数の配線が束ねられて前記車両内に収容されたワイヤハーネス幹線から分岐された配線であるオプション用分岐配線が、前記ワイヤハーネス幹線の長手方向に沿って配置されてあるいは前記長手方向に沿って折り畳まれた状態とされて、前記ワイヤハーネス幹線にテープで固定された、オプション用分岐配線の固定構造である。そして前記テープは、片面のみに粘着剤が塗布された連続する1本であり、前記ワイヤハーネス幹線が前記車両内に収容された状態から前記オプション用分岐配線を利用するために前記車両内の開口部に引き出された状態とされた場合に前記開口部に対して前記オプション用分岐配線の前記長手方向の奥側となる位置である長手方向奥側位置にて、前記ワイヤハーネス幹線に前記オプション用分岐配線を固定するように周方向に巻回された後、前記長手方向奥側位置にて周方向に巻回された前記テープの巻回個所から前記長手方向に離間するように前記開口部に対して前記オプション用分岐配線の前記長手方向の手前側へと延ばされて、前記開口部に対して前記オプション用分岐配線の前記長手方向の前記手前側となる位置である長手方向手前側位置にて前記ワイヤハーネス幹線に前記オプション用分岐配線を固定するように周方向に巻回されている、オプション用分岐配線の固定構造である。
【0012】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係るオプション用分岐配線の固定構造であって、前記長手方向手前側位置にて周方向に巻回された後の前記テープの終端部は、接着面同士が接着されるように折り返されて、前記ワイヤハーネス幹線及び前記オプション用分岐配線から突出されている、オプション用分岐配線の固定構造である。
【0013】
次に、本発明の第3の発明は、上記第1の発明または第2の発明に係るオプション用分岐配線の固定構造であって、前記オプション用分岐配線における前記ワイヤハーネス幹線からの分岐個所とは反対側となる一方端には、オプションの対象となるオプション機器に接続するためのコネクタが設けられており、前記コネクタは前記開口部に対して前記オプション用分岐配線の前記長手方向の前記奥側に配置されている。そして前記テープは、前記テープの開始部である始端部が前記コネクタの近傍における前記一方端の側の前記オプション用分岐配線のみに周方向に巻回された後、前記長手方向奥側位置にて前記ワイヤハーネス幹線に前記オプション用分岐配線を固定するように周方向に巻回されている、オプション用分岐配線の固定構造である。
【0014】
次に、本発明の第4の発明は、上記第1の発明~第3の発明のいずれか1つに係るオプション用分岐配線の固定構造であって、前記テープの色は、前記ワイヤハーネス幹線の色及び前記オプション用分岐配線の色に対して識別可能な色とされている、オプション用分岐配線の固定構造である。
【0015】
次に、本発明の第5の発明は、車両内で用いられる複数の配線が束ねられて前記車両内に収容されたワイヤハーネス幹線から分岐された配線であるオプション用分岐配線が、前記ワイヤハーネス幹線の長手方向に沿って配置されてあるいは前記長手方向に沿って折り畳まれた状態とされて、前記ワイヤハーネス幹線にテープで固定する際の、オプション用分岐配線の固定方法である。片面のみに粘着剤が塗布された連続する1本の前記テープを用い、前記ワイヤハーネス幹線が前記車両内に収容された状態から前記オプション用分岐配線を利用するために前記車両内の開口部に引き出された状態とされた場合に前記開口部に対して前記オプション用分岐配線の前記長手方向の奥側となる位置である長手方向奥側位置にて、前記ワイヤハーネス幹線に前記オプション用分岐配線を固定するように前記テープを周方向に巻回した後、前記長手方向奥側位置にて周方向に巻回された前記テープの巻回個所から前記長手方向に離間するように前記開口部に対して前記オプション用分岐配線の前記長手方向の手前側へと前記テープを延ばして、前記開口部に対して前記オプション用分岐配線の前記長手方向の前記手前側となる位置である長手方向手前側位置にて前記ワイヤハーネス幹線に前記オプション用分岐配線を固定するように前記テープを周方向に巻回する、オプション用分岐配線の固定方法である。
【0016】
次に、本発明の第6の発明は、上記第5の発明に係るオプション用分岐配線の固定方法であって、前記長手方向手前側位置にて周方向に巻回した後の前記テープの終端部を、接着面同士が接着されるように折り返して、前記ワイヤハーネス幹線及び前記オプション用分岐配線から突出させる、オプション用分岐配線の固定方法である。
【0017】
次に、本発明の第7の発明は、上記第5の発明または第6の発明に係るオプション用分岐配線の固定方法であって、前記オプション用分岐配線における前記ワイヤハーネス幹線からの分岐個所とは反対側となる一方端に、オプションの対象となるオプション機器に接続するためのコネクタを設け、前記コネクタを前記開口部に対して前記オプション用分岐配線の前記長手方向の前記奥側に配置し、前記テープの開始部である始端部が前記コネクタの近傍における前記一方端の側の前記オプション用分岐配線のみに前記テープを周方向に巻回した後、前記長手方向奥側位置にて前記ワイヤハーネス幹線に前記オプション用分岐配線を固定するように前記テープを周方向に巻回する、オプション用分岐配線の固定方法である。
【0018】
次に、本発明の第8の発明は、上記第5の発明~第7の発明のいずれか1つに係るオプション用分岐配線の固定方法であって、前記テープの色を、前記ワイヤハーネス幹線の色及び前記オプション用分岐配線の色に対して識別可能な色とする、オプション用分岐配線の固定方法である。
【発明の効果】
【0019】
第1の発明及び第5の発明によれば、片面のみに粘着剤が塗布された1本のテープを用い、開口部に対してオプション用分岐配線の長手方向の奥側の位置と、開口部に対して奥側の位置から離間した手前側の位置にて、オプション用分岐配線がワイヤハーネス幹線にテープで固定されている。従って、1個所で固定されている場合と比較してオプション用分岐配線が揺動等することが防止され、車両の振動等による異音が発生しないようにしっかりと固定されている。またテープは1本であるので、開口部に対して手前側となる位置に巻回された1本のテープを逆方向に巻回してテープを剥がしていくことで、オプション用分岐配線の固定を解除することが可能である。従って、複数本のテープで固定されている場合と比較して、作業者がオプション用分岐配線を利用するために引き出す際には、手間なくより短時間に引き出し作業を行うことができる。
【0020】
第2の発明及び第6の発明によれば、作業者がオプション用分岐配線を引き出すためにテープを剥がす際、開口部に対して手前側となる位置にて折り返されて接着面同士が接着されて突出している個所を指でつまんで即座に剥がし始めることができる。従って、作業者がオプション用分岐配線を利用するために引き出す際には、手間なくより短時間に引き出し作業を行うことができる。
【0021】
第3の発明及び第7の発明によれば、作業者がオプション用分岐配線を引き出すためにワイヤハーネス幹線に巻回されたテープを逆方向に巻回して剥がしていき、ワイヤハーネス幹線へのオプション用分岐配線の固定を解除した後、当該テープを引張るだけで、テープの先に接続されているコネクタを引き寄せることができる。従って、手間なくより短時間に引き出し作業を行うことができる。
【0022】
第4の発明及び第8の発明によれば、作業者がオプション用分岐配線を引き出すためにテープを剥がす際、剥がすべきテープを容易かつ瞬時に識別できるので、より短時間に引き出し作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】車両の室内から見た車載機器(オーディオ一体型ナビ等)の周囲の例を示す図である。
図2図1に対して、作業者が、車載機器を取り外した開口部にオプション機器を取り付けた状態、及び開口部から見えるワイヤハーネス幹線とオプション用分岐配線、の例を示す図である。
図3図2から、オプション用分岐配線が固定されたワイヤハーネス幹線を抽出して拡大した図である。
図4】ワイヤハーネス幹線にオプション用分岐配線が固定された図3に示す状態にするためのテープの巻回手順を説明する図であり、第1の手順(テープの開始部である始端部を、コネクタの近傍のオプション用分岐配線のみに巻回)を説明する図である。
図5図4に示した第1の手順に続く、第2の手順(開口部に対してオプション用分岐配線の長手方向の奥側の位置にてオプション用分岐配線をワイヤハーネス幹線に固定するようにテープを巻回)を説明する図である。
図6図5に示した第2の手順に続く、第3の手順(開口部に対してオプション用分岐配線の長手方向の奥側の位置から手前側の位置へとテープを延ばす)を説明する図である。
図7図6に示した第3の手順に続く、第4の手順(開口部に対してオプション用分岐配線の長手方向の手前側の位置にてオプション用分岐配線をワイヤハーネス幹線に固定するようにテープを巻回)を説明する図である。
図8図7に示した第4の手順に続く、第5の手順(テープの終端部を接着面同士が接着されるように折り返して把持部を形成)を説明する図である。
図9図2におけるオプション用分岐配線の周囲の拡大図であり、作業者がテープを剥がす際に指でつまむ把持部と、把持部をつまんでテープを剥がす際の巻回方向の例を説明する図である。
図10図9に示した状態に続き、テープをワイヤハーネス幹線から剥がし終えた後、テープを引張ってオプション用分岐配線のコネクタを引き寄せた状態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[車両1の室内から見た車載機器10の周囲(図1)と、車載機器10を取り外した状態(図2)]
以下、本発明を実施するための形態を図面を用いて説明する。図1は、車両1の室内から見た車載機器10の周囲の例を示している。また図2は、図1に対して、作業者が車載機器10を取り外した状態の例を示している。本実施の形態では、車両1の室内(車両内)のセンタコンソール(またはダッシュボード)に取り付けられた車載機器10(この例では、オーディオ一体型ナビ)に対してオプション機器11(図2参照)を追加した例で説明する。図2に示すように、オプション機器11に接続するべきオプション用分岐配線30(図3参照)は、車載機器10を取り外した後の開口部50の奥の側に配置されているワイヤハーネス幹線20(図3参照)にテープ40(図3参照)にて固定されている。
【0025】
図1に示すように、車載機器10は、ユーザが使い易い位置(この場合、センタコンソールまたはダッシュボード)に配置されている。そして図2に示すように、当該車載機器10に接続されている配線を束ねたワイヤハーネス幹線20は、見栄えをよくするためにユーザから見えないように、車両内に収容されている。
【0026】
図2に示す例は、車両販売店の作業者が、車載機器10を取り外し、車載機器10のオプションであるオプション機器11を取り付けた状態の例を示している。図2に示す例では、車載機器10を取り外した後の開口部50の左側となる作業者から見えない位置、及び開口部50の奥側となる作業者から見える位置にワイヤハーネス幹線20が配置されている(車両内に収容されている)。
【0027】
[オプション用分岐配線30の固定構造(図3)]
次に図3を用いて、ワイヤハーネス幹線20にオプション用分岐配線30がテープ40にて固定された固定構造について説明する。図3は、図2からワイヤハーネス幹線20、21、22及びオプション用分岐配線30を抽出して拡大した図である。ワイヤハーネス幹線20、21、22は、車両内で用いられる複数の配線が束ねられて車両内に収容されている。またワイヤハーネス幹線20、21、22の合流部は、樹脂等で箱状に形成されたプロテクタ23にて保護されている。またワイヤハーネス幹線20からは、オプション用分岐配線30が分岐されている。図3に示すようにワイヤハーネス幹線20から分岐された配線であるオプション用分岐配線30は、ワイヤハーネス幹線20の長手方向に沿って折り畳まれた状態とされて、テープ40にてワイヤハーネス幹線20に固定されている。なお、本実施の形態の説明では、オプション用分岐配線30が前記長手方向に沿って折り畳まれた例を説明するが、折り畳まれることなく前記長手方向に沿って配置されていてもよい。なお図3においてコネクタ20A~20Cは、例えば車載機器10(図1参照)に接続されるコネクタである。
【0028】
図3において、ワイヤハーネス幹線20にオプション用分岐配線30を固定しているテープ40は、片面のみに粘着剤が塗布された連続する1本である。またテープ40の色は、ワイヤハーネス幹線20の色(例えば黒色)及びオプション用分岐配線30の色(例えば黒色)に対して識別可能な色(例えば黄緑色)であると、作業者が容易にかつ瞬時にテープ40を認識できるので、より好ましい。さらに、識別可能な色に加えて蛍光色にすると、作業者が、さらに容易に、かつ、さらに瞬時にテープ40を認識できるので、さらに好ましい。
【0029】
図1に示すようにワイヤハーネス幹線20が車両内に収容されている状態から、図2に示すようにオプション用分岐配線30を利用するために、作業者によって車載機器10が取り外されて車両内の開口部50にワイヤハーネス幹線20が引き出された状態とされた場合について説明する。
【0030】
オプション用分岐配線30におけるワイヤハーネス幹線20からの分岐個所30Zとは反対側となる一方端には、オプションの対象となるオプション機器11(図2参照)に接続するためのコネクタ30Aが設けられている。そしてコネクタ30Aは、図2に示すように開口部50に対して、オプション用分岐配線30の長手方向の奥側に配置されている。
【0031】
テープ40の開始部である始端部は、図3に示すように、コネクタ30Aの近傍における一方端の側のオプション用分岐配線30のみに周方向に巻回されて、開始巻回部41(図4参照)を形成している。
【0032】
テープ40は、開始巻回部41を形成した後、長手方向奥側位置31にて、ワイヤハーネス幹線20にオプション用分岐配線30を固定するように周方向に巻回されて、奥側巻回部42(図3参照)を形成している。なお「長手方向奥側位置31」は、図2に示す開口部50に対してオプション用分岐配線30の長手方向の奥側となる位置である。
【0033】
テープ40は、長手方向奥側位置31にて奥側巻回部42を形成した後、テープ40の巻回個所(奥側巻回部42)から長手方向に離間するように開口部50(図2参照)に対してオプション用分岐配線30の長手方向の手前側へと延ばされて手前側延長部43(図3参照)を形成している。
【0034】
テープ40は、手前側延長部43を形成した後、オプション用分岐配線30の長手方向手前側位置32にて、ワイヤハーネス幹線20にオプション用分岐配線30を固定するように周方向に巻回されて、手前側巻回部44(図3参照)を形成している。なお「長手方向手前側位置32」は、図2に示す開口部50に対してオプション用分岐配線30の長手方向の手前側となる位置である。
【0035】
テープ40は、手前側巻回部44を形成した後(長手方向手前側位置32にて周方向に巻回された後)、カットされた終端部が、接着面同士が接着されるように折り返されて(図8参照)、ワイヤハーネス幹線20及びオプション用分岐配線30から突出されて、把持部45を形成している。
【0036】
[オプション用分岐配線30の固定方法(図4図8)]
次に図4図8を用いて、オプション用分岐配線30の固定構造(図3参照)を実現するための、オプション用分岐配線30の固定方法(テープ巻回方法)について説明する。なおワイヤハーネス幹線20を作成する作業者は、片面のみに粘着剤が塗布された1本のテープ40を用いて、下記の第1の手順~第5の手順にて、オプション用分岐配線30をワイヤハーネス幹線20に固定する。
【0037】
[第1の手順]
作業者は、図4に示すように、テープ40の開始部である始端部が、コネクタ30Aの近傍における一方端の側(分岐個所30Zとは反対側)のオプション用分岐配線30のみにテープ40を巻回して開始巻回部41を形成する。
【0038】
[第2の手順]
作業者は、開始巻回部41を形成した後、図5に示すように、オプション用分岐配線30を、ワイヤハーネス幹線20の長手方向に沿って折り畳む。なお本実施の形態の例では、図2に示すように開口部50に対して、オプション用分岐配線30の長手方向の奥側となるように、コネクタ30Aを配置する。そして作業者は、オプション用分岐配線30の長手方向奥側位置31にて、ワイヤハーネス幹線20にオプション用分岐配線30を固定するようにテープ40を周方向に巻回して奥側巻回部42を形成する。なお「長手方向奥側位置31」は、図2に示す開口部50に対してオプション用分岐配線30の長手方向の奥側となる位置である。
【0039】
[第3の手順]
作業者は、奥側巻回部42を形成した後、図6に示すように、テープ40の巻回個所(奥側巻回部42)から長手方向に離間するように開口部50(図2参照)に対してオプション用分岐配線30の長手方向の手前側へとテープ40を延ばして手前側延長部43を形成する。
【0040】
[第4の手順]
作業者は、手前側延長部43を形成した後、図7に示すように、オプション用分岐配線30の長手方向手前側位置32にて、ワイヤハーネス幹線20にオプション用分岐配線30を固定するように周方向に巻回して手前側巻回部44を形成してテープ40をカットする。なお「長手方向手前側位置32」は、図2に示す開口部50に対してオプション用分岐配線30の長手方向の手前側となる位置である。
【0041】
[第5の手順]
作業者は、手前側巻回部44を形成してテープ40をカットした後、図8に示すように、テープ40の終端部を、接着面同士が接着されるように折り返して把持部45を形成し、ワイヤハーネス幹線20及びオプション用分岐配線30から把持部45を突出させる。
【0042】
[テープ40にて固定されているオプション用分岐配線30の解放と引き出し(図9図10)]
次に、図9図10を用いて、車両販売店の作業者が、ワイヤハーネス幹線20にテープ40で固定されたオプション用分岐配線30を解放して引き出す手順について説明する。オプション機器11(図2参照)を追加する場合、作業者は、図1に示す状態から車載機器10を取り外して図2に示す状態にする。そして作業者は、図2に示す開口部50の壁面にオプション機器11を固定する。
【0043】
作業者は、図2及び図9に示す開口部50内に見えているワイヤハーネス幹線20を、必要であれば開口部50内に引き出す。そして作業者は、テープ40の手前側巻回部44及び把持部45の位置を確認する。テープ40の色が、ワイヤハーネス幹線20の色及びオプション用分岐配線30の色に対して識別可能な色であれば、作業者は容易にかつ瞬時に手前側巻回部44及び把持部45を確認することができる。テープ40の色が、識別可能な色に加えて蛍光色であれば、作業者は、さらに容易に、さらに瞬時に、手前側巻回部44及び把持部45を確認することができる。
【0044】
そして作業者は、把持部45を指でつまみ、手前側巻回部44の巻回方向とは反対方向にテープ40を巻回してテープ40を剥がしていく。テープ40は連続する1本のテープであるので、手前側巻回部44が剥がされた後は手前側延長部43のテープ40が剥がされ、さらに奥側巻回部42のテープ40が剥がされていく。奥側巻回部42のテープ40が剥がされた後、作業者がテープ40を引張ると、図10に示すように、テープ40の先端の開始巻回部41とともにコネクタ30Aが開口部50に引き出される。そして作業者は、引き出したコネクタ30Aをオプション機器11に接続する。
【0045】
以上、本実施の形態にて説明した、オプション用分岐配線30の固定構造及び固定方法によれば、オプション用分岐配線30は、長手方向に離間した長手方向奥側位置31と長手方向手前側位置32の2個所にてテープ40でワイヤハーネス幹線20に固定されている。1個所のみで固定した場合では固定個所を中心として旋回するように揺動して異音を発生する可能性があるが、2個所で固定されているので揺動しにくい。つまり、オプション用分岐配線30がワイヤハーネス幹線20に固定されている状態では、車両1の振動等による異音が発生しないようにしっかりと固定されている。
【0046】
また、作業者がオプション用分岐配線30を利用するために引き出す際には、上述したように、開口部50から見えているテープ40の把持部45をつまんで1本のテープ40を剥がし、テープ40を剥がし終えた後、当該テープ40を引張るだけでよい。従って、手間なくより短時間に引き出し作業を行うことができる。また、作業者は開口部50の奥の見えないところに手を差し入れる必要がないので、思わぬゲガの発生を防止できる。
【0047】
本発明のオプション用分岐配線の固定構造及びオプション用分岐配線の固定方法は、本実施の形態で説明した構成、構造、作業手順、方法等に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。また、ワイヤハーネス幹線20及びオプション用分岐配線30は、車両内のセンタコンソールやダッシュボードの位置のワイヤハーネス幹線に限定されるものではなく、車両内の種々の個所のワイヤハーネス幹線及びオプション用分岐配線に適用することが可能である。
【0048】
本実施の形態の説明では、オプション用分岐配線30を、ワイヤハーネス幹線20の長手方向に沿って折り畳んだ例を説明したが、折り畳むことなく延ばした状態でワイヤハーネス幹線20に沿って配置するようにしてもよい。また、本実施の形態の説明では、オプション用分岐配線30のコネクタ30Aを、長手方向奥側位置31に配置した例を説明したが、長手方向手前側位置32に配置してもよい。
【0049】
本実施の形態の説明では、オプション用分岐配線30を、長手方向に離間した長手方向奥側位置31と長手方向手前側位置32の2個所にてテープ40でワイヤハーネス幹線20に固定する例を説明したが、長手方向において当該2個所を含む3個所以上で固定するようにしてもよい。
【0050】
本実施の形態の説明では、テープ40の開始部にて開始巻回部41を形成し、テープ40の終端部にて把持部45を形成する例を説明したが、開始巻回部41の形成を省略してもよいし、把持部45の形成を省略してもよい。また開始巻回部41の巻回回数、奥側巻回部42の巻回回数、手前側巻回部44の巻回回数は、特に限定しない。
【0051】
本実施の形態の説明では、テープ40の色を、ワイヤハーネス幹線20の色及びオプション用分岐配線30の色に対して識別可能な色、さらに識別可能な蛍光色、とする例を説明したが、蛍光色でなくてもよいし、識別可能な色でなくてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 車両
10 車載機器
11 オプション機器
20、21、22 ワイヤハーネス幹線
23 プロテクタ
30 オプション用分岐配線
30A コネクタ
30Z 分岐個所
31 長手方向奥側位置
32 長手方向手前側位置
40 テープ
41 開始巻回部
42 奥側巻回部
43 手前側延長部
44 手前側巻回部
45 把持部
50 開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10